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ヒロイック・ファンタジー

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

ヒロイック・ファンタジーえい: heroic fantasy)は、ファンタジーのサブジャンルのひとつ。

1963ねんL・スプレイグ・ディ・キャンプ編集へんしゅうしたアンソロジーの副題ふくだいにこの言葉ことばはじめてもちいられた。また、その内容ないようから「けん魔法まほう英語えいごばん」(えい: sword and sorcery)という別名べつめいばれることもあり、こちらは1960年代ねんだい初頭しょとうフリッツ・ライバー命名めいめいしたものである[1][2]

定義ていぎ[編集へんしゅう]

ディ・キャンプ自身じしん言葉ことばりるならば、ヒロイック・ファンタジーとは「魔法まほうはたらき、近代きんだい科学かがく技術ぎじゅつがまだ発見はっけんされていない空想くうそう世界せかい舞台ぶたいにしたたたかいや冒険ぼうけん物語ものがたり」である。それはしばしばヒーローがくにときには世界せかい全体ぜんたい運命うんめいかかわる壮大そうだい冒険ぼうけんとなり、ぜんあく対立たいりつ最終さいしゅうてきぜん勝利しょうりをモチーフとする。

"Heroic fantasy" is the name I have given to a subgenre of fantasy, otherwise called the "sword-and-sorcery" story. It is a story of action and adventure laid in a more or less imaginary world, where magic works and where modern science and technology have not yet been discovered. The setting may (as in the Conan stories) be this Earth as it is conceived to have been long ago, or as it will be in the remote future, or it may be another planet or another dimension.

Such a story combines the color and dash of the Historical romance with the atavistic supernatural thrills of the weird, occult, or ghost story. When well done, it provides the purest fun of fiction of any kind. It is escape fiction wherein one escapes clear out of the real world into one where all men are strong, all women beautiful, all life adventurous, and all problems simple, and nobody even mentions the income tax or the dropout problem or socialized medicine.

— L. Sprague de Camp, introduction to the 1967 Ace Books edition of ''Conan The Barbarian (Robert E. Howard)'', p. 13.

和訳わやく

「ヒロイックファンタジー」は、わたしがファンタジーのサブジャンル、けん魔法まほう物語ものがたりけたです。それは、アクションと冒険ぼうけん物語ものがたりで、現代げんだい科学かがくとテクノロジーが発見はっけんされていない、おおかれすくなかれ空想くうそう世界せかい舞台ぶたいにしています。環境かんきょうは、(英雄えいゆうコナン〉シリーズのように)過去かこ地球ちきゅうか、あるいはとお未来みらい、あるいはべつ天体てんたいべつ次元じげんります。

そのような物語ものがたりは、時代じだい小説しょうせつ歴史れきしロマンスの色彩しきさい奇妙きみょうさ、オカルト、あるいは怪奇かいき小説しょうせつ先祖せんぞ伝来でんらいちょう自然しぜんてきなスリルをわせています。上手うまけばそれは、あらゆるフィクションの最上級さいじょうきゅう純粋じゅんすいたのしさを提供ていきょうするでしょう。それは、すべての男性だんせいつよく、すべての女性じょせいうつくしく、すべての人生じんせい冒険ぼうけんてきで、すべての問題もんだい単純たんじゅんで、だれ所得しょとくぜいやドロップアウト問題もんだい社会しゃかい医療いりょう制度せいどにさえ言及げんきゅうしない、現実げんじつ世界せかいからすエスケープフィクションです。

— L・スプレイグ・ディ・キャンプ, エースブックス 1967年版ねんばん ''蛮人ばんじんコナン(ロバート・E・ハワード)'' 13ページの紹介しょうかいぶんより

架空かくう世界せかいおも舞台ぶたいとしているてんではハイ・ファンタジー分類ぶんるいしうるものであるが、「ヒロイック・ファンタジー」という言葉ことば分類ぶんるいされた場合ばあい英雄えいゆうがそのちょう人的じんてきちからをもってあくたたか勝利しょうりする物語ものがたりという意味合いみあいがつよい。

デイヴィッド・プリングル英語えいごばん編集へんしゅうした『ファンタジー百科ひゃっか事典じてん』は、ヒロイック・ファンタジーというジャンルはヒーローについてのファンタジーというだけでなく、作者さくしゃによって創作そうさくされた背景はいけい世界せかいやストーリーの雄大ゆうだいさ(heroic scale)といったひろ意味いみ理解りかいされるべきであるとして、ハイ・ファンタジーあるいはエピック・ファンタジー(叙事詩じょじしファンタジー)ともばれる世界せかいファンタジーをヒロイック・ファンタジーとしてあつかっている(ただし、エピック・ファンタジーという用語ようごは500ぺーじえるような長大ちょうだい作品さくひんたいして使つかわれることがおおく、本来ほんらいパルプ・フィクション形式けいしきである「けん魔法まほう物語ものがたり」とは区別くべつされる)[3]


歴史れきし[編集へんしゅう]

発端ほったん[編集へんしゅう]

19世紀せいきから20世紀せいきにかけてのイギリスで、ウィリアム・モリスの『世界せかいのかなたのもり』などの疑似ぎじ中世ちゅうせいロマンスや、デイヴィッド・リンゼイの『アルクトゥールスへのたび』、E・R・エディスンの『ウロボロス』などの幻想げんそう小説しょうせつロード・ダンセイニ世界せかいふう作品さくひん執筆しっぴつされ、ファンタジー世界せかい基礎きそきずかれた。一方いっぽうアメリカにおいては、ジェイムズ・ブランチ・キャベル英語えいごばんの『ジャーゲン』が独特どくとく神話しんわ世界せかいえがし、ジャック・ロンドンの『太古たいこごえ』のような古代こだい冒険ぼうけん小説しょうせつ古代こだい世界せかいへの憧憬どうけいつよめた。

上記じょうきのような背景はいけいなかで1930年代ねんだいのアメリカで『ウィアード・テイルズ』、『アンノウン・ワールド』などのパルプおこると、

などの大衆たいしゅうけファンタジー冒険ぼうけん小説しょうせつ次々つぎつぎ発表はっぴょうされ、そのなかでも

おおいに人気にんきはくした。以後いご、『英雄えいゆうコナン』シリーズを模倣もほうして

などの作品さくひん発表はっぴょうされ、独特どくとく世界せかいかんった「ヒロイック・ファンタジー」というジャンルが確立かくりつされた(ただし用語ようごとしての成立せいりつ前述ぜんじゅつとおり1963ねん)。これらは、1940年代ねんだいにパルプ衰退すいたいとともに発表はっぴょううしない、いったん消滅しょうめつした。

さい流行りゅうこう[編集へんしゅう]

だい世界せかい大戦たいせん英国えいこく初版しょはんJ・R・R・トールキン大作たいさくファンタジー『指輪ゆびわ物語ものがたり』は、1960年代ねんだいなかばにペーパーバックばん北米ほくべい出版しゅっぱんされると爆発ばくはつてき流行りゅうこう[4]、また、かつてのヒロイック・ファンタジーの名作めいさくペーパーバックほん再版さいはんされ、1960年代ねんだいにファンタジー・ブームがこる。『ファンタスティック』などのファンタジー専門せんもんふたたあらわれ、出版しゅっぱんしゃバランタイン・ブックスはリン・カーター編集へんしゅうによる「バランタイン・アダルト・ファンタジー」としょうするシリーズでペーパーバックほん次々つぎつぎ発売はつばいした。そのなか

などのヒロイック・ファンタジーが発表はっぴょうされた。

1970年代ねんだいになると、ファンタジーは成熟せいじゅくむかえ、アーシュラ・K・ル=グウィンデイヴィッド・エディングスパトリシア・A・マキリップピアズ・アンソニイなどがハイ・ファンタジーの隆盛りゅうせいきずいた。これらの作品さくひんにもヒロイック・ファンタジーからいだ要素ようそすくなからずあるが、作品さくひん世界せかいかん・ストーリー・人物じんぶつ描写びょうしゃ・テーマなどは、すべ技巧ぎこうらした精緻せいちなものに変化へんかしており、もはやヒロイック・ファンタジーのごとき「すべての事柄ことがら単純たんじゅん明快めいかいである」お気楽きらく勧善懲悪かんぜんちょうあく物語ものがたり通用つうようしなくなっていった。かつての意味いみでのヒロイック・ファンタジーは衰退すいたいしたといえる。

日本にっぽんへの紹介しょうかい[編集へんしゅう]

日本にっぽんへの紹介しょうかいは、1970ねん昭和しょうわ45ねん)にだん精二せいじ荒俣あらまたひろし筆名ひつめい)とかがみあきらがロバート・E・ハワードの『英雄えいゆうコナン』シリーズを翻訳ほんやくしたことからはじまった。「魔道まどう」「魔道まどう」はこのときの荒俣あらまた造語ぞうごである。のヒロイック・ファンタジー作品さくひんおお翻訳ほんやくされたが、そのほとんどが絶版ぜっぱんとなった。 1970年代ねんだい以降いこうには、おもにSF作家さっかによってヒロイック・ファンタジー作品さくひん発表はっぴょうされ、おもなものとして

がある。

2000年代ねんだいはいりファンタジーブームは終息しゅうそくしたが、絶版ぜっぱんとなっていた『英雄えいゆうコナン』シリーズは2006ねん平成へいせい18ねん)に26ねんぶりに新訳しんやく再刊さいかんされた。また、2007ねん平成へいせい19ねん)には英雄えいゆうコナンをもとにしたアクションゲーム『CONAN』が発売はつばいされた。

2010年代ねんだいはいり、小説しょうせつ投稿とうこうサイト小説しょうせつになろう」に投稿とうこうされた複数ふくすう小説しょうせつをきっかけにふたたびファンタジーブームがき、一部いちぶ作品さくひん書籍しょせきかくメディア展開てんかいなどがおこなわれている。

ヒロイック・ファンタジーとロールプレイングゲーム[編集へんしゅう]

1974ねんの『D&D発売はつばいのち、そのブームにじょうじて『トンネルズ&トロールズ』、『ルーンクエスト』などが発売はつばいされ、ロールプレイングゲームおおいに普及ふきゅうした。これらのゲームのおおくが、ファンタジー世界せかいでのけん魔法まほうによる冒険ぼうけんをテーマにしており、ヒロイック・ファンタジーから多大ただい影響えいきょうけている。『ドラゴンクエスト』のように「ヒロイックアドベンチャーを体験たいけんしよう」と、ヒロイック・ファンタジーをテーマにしていることを標榜ひょうぼうしている商品しょうひんもある。そのうち『ドラゴンランス』シリーズや『フォーゴトン・レルム』シリーズのようにロールプレイングゲームをもとにしたファンタジー小説しょうせつ発表はっぴょうされた。日本にっぽんでは『ロードスとう戦記せんき』などが名高なだかい。これらの小説しょうせつは、ヒロイック・ファンタジーとしてかれたものでないにもかかわらず、ロールプレイングゲームをとおしておおくのヒロイック・ファンタジーてき要素ようそ隔世かくせい遺伝いでんしており、これらをヒロイック・ファンタジーの亜種あしゅとしてかんがえるきもある。『ウィザードリィ』や『ウルティマ』もこれらの影響えいきょうけて制作せいさくされている。これがこう日本にっぽんのRPGである『ドラゴンクエストシリーズ』や『女神めがみ転生てんせいシリーズ』の源流げんりゅうとなっていった。

また1980年代ねんだいになって、ロールプレイングゲームをもとにしたコンピュータRPGまれた。当初とうしょパーソナルコンピュータけのゲームとしてひろまったが、ファミリーコンピュータなどのコンシューマーゲーム流行りゅうこうなか爆発ばくはつてきひろまり、現在げんざいMMORPGなどを中心ちゅうしん隆盛りゅうせいきわめている。

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  1. ^ 図説ずせつ ファンタジー百科ひゃっか事典じてん』、60ぺーじ
  2. ^ 『ファンタジーの冒険ぼうけんだい3しょう ファンタジーのニューウェーブ、†リン・カーター登場とうじょう
  3. ^ 図説ずせつ ファンタジー百科ひゃっか事典じてん』、65-66ぺーじ
  4. ^ 図説ずせつ ファンタジー百科ひゃっか事典じてん』、67ぺーじ

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • デイヴィッド・プリングルへん図説ずせつ ファンタジー百科ひゃっか事典じてん日本語にほんごばん監修かんしゅう つじ朱美あけみ東洋とうよう書林しょりん、2002ねん
  • 小谷おたに真理まり 『ファンタジーの冒険ぼうけん筑摩書房ちくましょぼう筑摩ちくまeブックス〉(原著げんちょ1998ねん ちくま新書しんしょ

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]