スキップ再 さい 突入 とつにゅう の局面 きょくめん を示 しめ す。
ブースト・グライド 軌道 きどう (英語 えいご : boost-glide trajectory )[1] [2] とは宇宙 うちゅう 機 き の誘導 ゆうどう や再 さい 突入 とつにゅう で用 もち いる軌道 きどう の一 ひと つである。この軌道 きどう は、大気 たいき 上層 じょうそう で空気 くうき 力学 りきがく 的 てき な揚力 ようりょく を用 もち いることで、準 じゅん 軌道 きどう 飛行 ひこう を行 おこな う宇宙 うちゅう 機 き や再 さい 突入 とつにゅう 機 き の飛行 ひこう 距離 きょり を伸 の ばす。最大 さいだい の例 れい では、ブースト・グライドは飛行 ひこう 距離 きょり を純粋 じゅんすい な弾道 だんどう 飛行 ひこう の2倍 ばい に延長 えんちょう する。他 た の例 れい では、一連 いちれん の「スキップ」によりさらなる飛行 ひこう 距離 きょり の延長 えんちょう を可能 かのう とし、「スキップ・グライド」や「スキップ再 さい 突入 とつにゅう 」などの用語 ようご となった。
この概念 がいねん が最初 さいしょ に真剣 しんけん に研究 けんきゅう されたのは弾道 だんどう ミサイルの飛行 ひこう 距離 きょり を伸 の ばすためだったが、射程 しゃてい を延長 えんちょう した伝統 でんとう 的 てき な形状 けいじょう のミサイルが導入 どうにゅう されたために作戦 さくせん に採用 さいよう されることはなかった。根幹 こんかん となる空気 くうき 力学 りきがく 上 じょう の概念 がいねん は機動 きどう 式 しき 再 さい 突入 とつにゅう 体 たい (MARV)の製造 せいぞう に採用 さいよう されている。これはパーシングIIなど数種類 すうしゅるい のミサイルでは命中 めいちゅう 精度 せいど の向上 こうじょう のためであり、アバンガルド (極 ごく 超 ちょう 音速 おんそく 滑空 かっくう 体 たい ) のようなミサイルでは迎撃 げいげき の回避 かいひ のためであった。さらに最近 さいきん の例 れい では、射程 しゃてい の延長 えんちょう が低空 ていくう を飛行 ひこう する手段 しゅだん のために使 つか われており、もっと高 たか い弾道 だんどう 経路 けいろ を描 えが くのと比較 ひかく して、より長時間 ちょうじかん レーダー探知 たんち を避 さ ける助 たす けになっている。
さらにこの概念 がいねん は、月 つき から地球 ちきゅう へ帰還 きかん する機体 きたい の、再 さい 突入 とつにゅう の時間 じかん を延長 えんちょう するためにも採用 さいよう されている。さもなければ過大 かだい な速力 そくりょく を短 みじか い時間 じかん で落 お とさねばならず、極 きわ めて高 たか い加熱 かねつ 比 ひ に悩 なや まされた。アポロ司令 しれい 船 せん は基本 きほん 的 てき にワンスキップ再 さい 突入 とつにゅう (パーシャル・スキップ)を用 もち い、ソビエト連邦 れんぽう のゾンドや中国 ちゅうごく の嫦娥 じょうが 5号 ごう T1 も同 おな じである。もっと複雑 ふくざつ な複数 ふくすう スキップ再 さい 突入 とつにゅう が、オリオン のような新 あたら しい機体 きたい のために提案 ていあん されている。
ブースト・グライドの基礎 きそ 概念 がいねん が初 はじ めて注目 ちゅうもく を受 う けたのはドイツの砲兵 ほうへい 将校 しょうこう たちによってであり、彼 かれ らの「ペーネミュンダー・プファイルゲショセ」が高 こう 高度 こうど に放 はな たれた際 さい 、砲弾 ほうだん をさらに遠 とお くへと投射 とうしゃ できることを発見 はっけん した。これは幾何 きか 学 がく や上層 じょうそう の薄 うす い大気 たいき を理由 りゆう として完全 かんぜん に予期 よき できるものではなく、こうした要因 よういん を考慮 こうりょ してなお、彼 かれ らは射程 しゃてい の延長 えんちょう が見 み られるのを説明 せつめい できなかった。ペーネミュンデでの調査 ちょうさ により彼 かれ らはある発見 はっけん に至 いた った。これは、高 こう 高度 こうど の薄 うす い大気 たいき 中 ちゅう の長 なが い弾道 だんどう では、砲弾 ほうだん が迎 むかい 角 かく を持 も ち、超 ちょう 音速 おんそく において揚力 ようりょく を生 う み出 だ すという結果 けっか だった。当時 とうじ これは非常 ひじょう に好 この ましくないものに思 おも われ、理由 りゆう はそれが弾道 だんどう 計算 けいさん を極 きわ めて難 むずか しいものにしたためである。ただ、射程 しゃてい 延長 えんちょう のための応用 おうよう の可能 かのう 性 せい を研究 けんきゅう 者 しゃ が捨 す てることはなかった。
1939年 ねん 6月 がつ 、ペーネミュンデにあるクラウス・リーデル設計 せっけい 局 きょく に所属 しょぞく していたクルト・パットは、ロケット推進 すいしん の速度 そくど と高度 こうど を、揚力 ようりょく と航続 こうぞく 距離 きょり に変換 へんかん する主翼 しゅよく を提案 ていあん した。彼 かれ はこの効果 こうか を算出 さんしゅつ し、A-4ロケットの射程 しゃてい が275kmから550kmにおおよそ倍加 ばいか するとした。初期 しょき の開発 かいはつ はA-9の名称 めいしょう のもとで検討 けんとう され、ツェッペリン・シュターケン社 しゃ での風洞 ふうどう 実験 じっけん のほかに小規模 しょうきぼ な作業 さぎょう が行 おこな われ、以後 いご 数 すう 年間 ねんかん その状態 じょうたい が続 つづ いた。不 ふ 活発 かっぱつ な研究 けんきゅう が1942年 ねん まで継続 けいぞく されたのちに開発 かいはつ は停止 ていし された。
真 しん に長 ちょう 航続 こうぞく 距離 きょり のためにブースト・グライドの概念 がいねん を用 もち いた最初 さいしょ 期 き の提案 ていあん は、1941年 ねん のジルバーフォーゲル である。オイゲン・ゼンガーによる提案 ていあん であり、ドイツの基地 きち からニューヨーク市 し を攻撃 こうげき できるロケット動力 どうりょく 機 き が飛行 ひこう し、それから日本 にっぽん 軍 ぐん が確保 かくほ している太平洋 たいへいよう のどこかに着水 ちゃくすい するという構想 こうそう だった。この構想 こうそう では、機体 きたい の主翼 しゅよく を用 もち いて揚力 ようりょく を生 う み出 だ し、機 き を引 ひ き起 お こして新 あたら しい弾道 だんどう 飛行 ひこう の軌道 きどう へと入 はい り、大気 たいき を再 ふたた び離 はな れ、スキップの間 あいだ に機体 きたい に冷却 れいきゃく の猶予 ゆうよ を与 あた えている[6] 。のちに構想 こうそう がデモンストレーションされ、スキップ中 ちゅう の加熱 かねつ 量 りょう は当初 とうしょ の計算 けいさん よりももっと大 おお きいもので、宇宙 うちゅう 機 き を溶 と かすだろうと予見 よけん された[7] 。
1943年 ねん 、A-9の研究 けんきゅう に再 ふたた び着手 ちゃくしゅ 、今回 こんかい はA-4bの名称 めいしょう のもとに行 おこな われた。これは、開発 かいはつ が今 いま やその他 た の点 てん では未 み 改修 かいしゅう のA-4に基 もと づいていたこと、またA-4計画 けいかく が当時 とうじ 「国家 こっか 優先 ゆうせん 課題 かだい 」であり、この開発 かいはつ がA-4の名 な の下 した で資金 しきん 提供 ていきょう が確実 かくじつ 化 か された立場 たちば に置 お かれたことを示唆 しさ している。A-4bはV2ロケットの射程 しゃてい を十分 じゅうぶん に延長 えんちょう し、ドイツ領内 りょうない 深 ふか くからイギリスのミッドランド、つまりイングランド中部 ちゅうぶ 地域 ちいき の都市 とし か、ロンドンに達 たっ するよう後退 こうたい 翼 つばさ を用 もち いている。A-9はもともと同様 どうよう であったが、後 のち には従来 じゅうらい 的 てき な後退 こうたい 翼 つばさ ではなく、長 なが くて流 ながれ 線形 せんけい の後退 こうたい 翼 つばさ を装備 そうび した。この設計 せっけい は有人 ゆうじん のA-9/A-10大陸 たいりく 間 あいだ 弾道弾 だんどうだん の上段 じょうだん 用 よう として採用 さいよう されている。これは大西洋 たいせいよう を過 す ぎたある点 てん 、ニューヨーク市 し を爆撃 ばくげき するのに十分 じゅうぶん な距離 きょり で滑空 かっくう を始 はじ め、その後 ご に乗員 じょういん は脱出 だっしゅつ する[注釈 ちゅうしゃく 1] 。
戦後 せんご 期 き の開発 かいはつ [ 編集 へんしゅう ]
X-20ダイノソア は、有人 ゆうじん 型 がた ブースト・グライド機 き の計画 けいかく の中 なか で最 もっと も実機 じっき の製造 せいぞう に近 ちか かった。この画像 がぞう は再 さい 突入 とつにゅう 中 ちゅう のX-20を示 しめ している。
第 だい 二 に 次 じ 世界 せかい 大戦 たいせん の後 のち すぐ、ソビエト連邦 れんぽう のロケット技術 ぎじゅつ 者 しゃ アレクセイ・イサエフはある報告 ほうこく 書 しょ を発見 はっけん した。これは1944年 ねん 8月 がつ の「ジルバーフォーゲル」計画 けいかく の最新 さいしん 版 ばん だった。彼 かれ は書類 しょるい をロシア語 ご に翻訳 ほんやく し、最終 さいしゅう 的 てき にヨシフ・スターリン の注意 ちゅうい を惹 ひ いた。彼 かれ は対蹠 たいしょ 地 ち 爆 ばく 撃 げき の概念 がいねん に強 つよ く興味 きょうみ を示 しめ した。1946年 ねん 、彼 かれ は自 みずか らの息子 むすこ であるヴァシリー・スターリンと、戦前 せんぜん に有 ゆう 翼 つばさ ロケット機 き の作業 さぎょう を手掛 てが けていた科学 かがく 者 しゃ のグリゴリー・トカティをパリに送 おく り、ゼンガーとイレーネ・ブレットを訪問 ほうもん した。ソビエト連邦 れんぽう に参加 さんか し、努力 どりょく するよう説得 せっとく を試 こころ みるためであったが、ゼンガーとブレットは誘 さそ いを断 ことわ った。[10] 。
1946年 ねん 11月、ソ連 それん ではゼンガーとブレットなしに国産 こくさん の機体 きたい を開発 かいはつ するため、ムスティスラフ・ケルディシュの率 ひき いるNII-1設計 せっけい 局 きょく を編成 へんせい した[11] 。彼 かれ らの初期 しょき の研究 けんきゅう は、同 どう 時期 じき のアメリカで開発 かいはつ 中 ちゅう だったSM-64ナバホとは異 こと なり、ロケット動力 どうりょく の極 きょく 超 ちょう 音速 おんそく スキップ・グライド機 き のコンセプトがラムジェット駆動 くどう の超 ちょう 音速 おんそく 巡航 じゅんこう ミサイル に変 か わることを確信 かくしん させた。開発 かいはつ はある程度 ていど のあいだケルディシュ爆撃 ばくげき 機 き として続 つづ けられたものの、従来 じゅうらい 的 てき な弾道 だんどう ミサイルの改良 かいりょう は最終 さいしゅう 的 てき にこの計画 けいかく を不要 ふよう なものとした[10] [注釈 ちゅうしゃく 2] 。
アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく でのスキップ・グライドの概念 がいねん は、渡米 とべい した多数 たすう のドイツ人 じん 科学 かがく 者 しゃ により提唱 ていしょう されていた。主 おも な提唱 ていしょう 者 しゃ はベル・エアクラフトに勤 つと めるヴァルター・ドルンベルガーやクラフト・エーリッケである。1952年 ねん 、ベル社 しゃ はある爆 ばく 撃 げき 機 き のコンセプトを提示 ていじ した。これは基本 きほん 的 てき に「ジルバーフォーゲル」の垂直 すいちょく 発射 はっしゃ バージョンで、bomiとして知 し られた。この計画 けいかく は1950年代 ねんだい を通 つう じて数種類 すうしゅるい のコンセプトに引 ひ き継 つ がれ、Robo、ハイウォーズ、ブラス・ベル、そして最終 さいしゅう 的 てき にX-20ダイノソアに至 いた った[12] 。初期 しょき の設計 せっけい は一般 いっぱん 的 てき に爆 ばく 撃 げき 機 き であり、後 ご のモデルは偵察 ていさつ や他 た の任務 にんむ を狙 ねら っていた。ドルンベルガーやエーリッケは1955年 ねん に『ポピュラー・サイエンス』誌 し の記事 きじ で共同 きょうどう して働 はたら き、定期 ていき 旅客機 りょかくき に使 つか うためのアイデアを投 とう じた[13] [14] 。
成功 せいこう を収 おさ めた大陸 たいりく 間 あいだ 弾道弾 だんどうだん (ICBM)の攻撃 こうげき 任務 にんむ への導入 どうにゅう は、スキップ・グライド爆撃 ばくげき 機 き の概念 がいねん への関心 かんしん を終 お わらせ、偵察 ていさつ 機 き としての任務 にんむ も偵察 ていさつ 衛星 えいせい が同様 どうよう に果 は たした。X-20宇宙 うちゅう 戦闘 せんとう 機 き は1960年代 ねんだい を通 つう じて関心 かんしん を惹 ひ き続 つづ けたが、最後 さいご には予算 よさん 削減 さくげん の犠牲 ぎせい となった。1963年 ねん 3月 がつ に行 おこな われた別 べつ の再 さい 検討 けんとう の後 のち 、ロバート・マクナマラ 国防 こくぼう 長官 ちょうかん は12月に計画 けいかく を中止 ちゅうし した。4億 おく ドルを費 つい やした後 のち 、彼 かれ らは未 いま だに果 は たすべき任務 にんむ がないことが注目 ちゅうもく された[15] 。
1960年代 ねんだい を通 つう じ、スキップ・グライドの概念 がいねん は関心 かんしん を持 も たれていたが、射程 しゃてい 延長 えんちょう の手段 しゅだん としてではなく、現代 げんだい 的 てき なミサイルに懸念 けねん はないものの、ICBM用 よう の機動 きどう 可能 かのう な再 さい 突入 とつにゅう 体 たい の基礎 きそ としてだった。最初 さいしょ の目標 もくひょう は再 さい 突入 とつにゅう 体 たい が再 さい 突入 とつにゅう の最中 さいちゅう に経路 けいろ を変更 へんこう し、それにより対 たい 弾道 だんどう ミサイル(ABM) が、こうした機 き の動 うご きを、迎撃 げいげき 成功 せいこう に十分 じゅうぶん なほど速 すみ やかに追尾 ついび できなくすることである。よく知 し られる最初 さいしょ の例 れい は1959年 ねん のアルファ・デルコの実験 じっけん であり、これにブースト・グライド再 さい 突入 とつにゅう 機 き (BGRV)の一連 いちれん の試験 しけん であるASSET(Aerothermodynamic Elastic Structural Systems Environmental Tests)[16] やPRIME が続 つづ いた[17] 。
後 ご 、この研究 けんきゅう はパーシングIIのMARVに使 つか われた。この場合 ばあい 、滑空 かっくう 段階 だんかい での射程 しゃてい 延長 えんちょう はない。弾頭 だんとう は短時間 たんじかん 、弾道 だんどう を調整 ちょうせい するために揚力 ようりょく を用 もち いる。これはシンガー・カーフォット慣性 かんせい 航法 こうほう 装置 そうち とグッドイヤー・エアロスペース社 しゃ のアクティブレーダーとのデータを組 く み合 あ わせ、再 さい 突入 とつにゅう の過程 かてい の後期 こうき に行 おこな われる[18] [19] 。同 おな じコンセプトが、核 かく 武装 ぶそう した多 おお くの国家 こっか の装備 そうび する戦域 せんいき 弾道 だんどう ミサイル のために開発 かいはつ されている。
ソビエト連邦 れんぽう でもアメリカ側 がわ のABMを回避 かいひ するためのMARVの開発 かいはつ にいくばくかの努力 どりょく を費 つい やした。しかし、1970年代 ねんだい にアメリカの防衛 ぼうえい 力 りょく の整備 せいび が打 う ち切 き られ、この計画 けいかく を続 つづ ける理由 りゆう は無 な くなった。2000年代 ねんだい には アメリカ側 がわ が地上 ちじょう 配備 はいび 型 がた ミッドコース防衛 ぼうえい を導入 どうにゅう したためにこの図式 ずしき が変 か わり、ロシア側 がわ はこの研究 けんきゅう 作業 さぎょう の復活 ふっかつ に至 いた った。ソビエト連邦 れんぽう 期 き にはこの機体 きたい は「オブイェークト4202」と呼 よ ばれ、2016年 ねん 10月 がつ に試験 しけん に成功 せいこう していることが報告 ほうこく された[20] 。2018年 ねん 3月 がつ 1日 にち 、アバンガルド (極 ごく 超 ちょう 音速 おんそく 滑空 かっくう 体 たい ) (ロシア語 ご : Авангард )としてシステムが公開 こうかい され、2019年 ねん 12月27日 にち にはICBMに積 つ まれるものとしておおやけに就役 しゅうえき した[21] 。ウラジーミル・プーチン はアバンガルドが実際 じっさい の任務 にんむ に就 つ いたことを発表 はっぴょう し、この滑空 かっくう 体 たい の機動 きどう 性 せい は現用 げんよう の全 すべ てのミサイル防衛 ぼうえい を無力 むりょく 化 か すると主張 しゅちょう した[22] 。
中華人民共和国 ちゅうかじんみんきょうわこく でもブースト・グライドを行 おこな う弾頭 だんとう 、DF-ZF (アメリカの諜報 ちょうほう 機関 きかん には「WU-14」として知 し られる)を開発 かいはつ した[23] 。アメリカとロシアのMARVの設計 せっけい と対照 たいしょう 的 てき に、DF-ZFの主 おも な目標 もくひょう は、従来 じゅうらい 的 てき な弾道弾 だんどうだん が描 えが く軌道 きどう を用 もち いて標的 ひょうてき に到達 とうたつ するよりも低 ひく い高度 こうど を飛 と び続 つづ ける間 あいだ 、ブースト・グライドを射程 しゃてい 延長 えんちょう のために使 つか うことだった。低空 ていくう 飛行 ひこう の目的 もくてき はアメリカ海軍 かいぐん のイージスシステム のレーダー探知 たんち 領域 りょういき からできる限 かぎ り長 なが く逃 のが れるためであり、それによってシステムが攻撃 こうげき に対応 たいおう する時 とき 間 あいだ を短 みじか くすることである。DF-ZFは2019年 ねん 10月 がつ 1日 にち に公開 こうかい された。ロシア連邦 れんぽう による同様 どうよう の努力 どりょく はKholod、およびGLL-8 Iglaの極 きょく 超 ちょう 音速 おんそく 実験 じっけん 計画 けいかく に至 いた った。さらに近年 きんねん ではRS-28 Sarmat に搭載 とうさい 可能 かのう なYu-71極 きょく 超 ちょう 音速 おんそく 滑空 かっくう 体 たい を計画 けいかく している[24] [25] 。
ブースト・グライドは、アメリカの「即時 そくじ 全 ぜん 地球 ちきゅう 規模 きぼ 攻撃 こうげき 」 (PGS ) 計画 けいかく の要件 ようけん を満 み たす解決 かいけつ 法 ほう として、いくらか関心 かんしん を集 あつ める話題 わだい となった。この計画 けいかく では、アメリカから発射 はっしゃ した兵器 へいき を地球 ちきゅう 上 じょう のいかなる地点 ちてん でも1時間 じかん 以内 いない に命中 めいちゅう させる兵器 へいき を模索 もさく していた。PGS計画 けいかく では作戦 さくせん の方法 ほうほう を定義 ていぎ しておらず、また現行 げんこう の研究 けんきゅう には先進 せんしん 極 ごく 超 ちょう 音速 おんそく 兵器 へいき のブースト・グライド弾頭 だんとう や、ファルコンHTV-2極 きょく 超 ちょう 音速 おんそく 機 き 、また潜水艦 せんすいかん 発射 はっしゃ ミサイル等 とう が含 ふく まれている[26] 。アメリカ軍 ぐん では、地上 ちじょう 発射 はっしゃ 型 がた ・艦上 かんじょう 発射 はっしゃ 型 がた としては1970年代 ねんだい 末 すえ のサンディア国立 こくりつ 研究所 けんきゅうじょ の研究 けんきゅう 結果 けっか を踏 ふ まえた共通 きょうつう 極 ごく 超 ちょう 音速 おんそく 滑空 かっくう 体 たい (C-HGB)を用 もち いたミサイルを開発 かいはつ する一方 いっぽう 、空中 くうちゅう 発射 はっしゃ 型 がた としてはHTV-2の成果 せいか を踏 ふ まえたAGM-183 ARRW (英語 えいご 版 ばん ) を開発 かいはつ している[27] [28] 。
ブースト・グライド兵器 へいき は普通 ふつう 、継続 けいぞく 的 てき に機動 きどう を続 つづ けるか、警戒 けいかい 時間 じかん を短縮 たんしゅく するために大気圏 たいきけん 外縁 がいえん 付近 ふきん の低空 ていくう を飛行 ひこう することで既存 きそん のミサイル防衛 ぼうえい システムを回避 かいひ するよう設計 せっけい されている。これは一般 いっぱん 的 てき に、低空 ていくう の「低層 ていそう 」目標 もくひょう の迎撃 げいげき を意図 いと した防衛 ぼうえい システムを使 つか うことで、これらの兵器 へいき の迎撃 げいげき が容易 ようい になる。短距離 たんきょり 弾道 だんどう ミサイルの弾頭 だんとう よりも低速 ていそく で飛行 ひこう させると、その迎撃 げいげき は容易 ようい である[29] 。非常 ひじょう な低空 ていくう での攻撃 こうげき 態勢 たいせい を用 もち いるこのような接近 せっきん 方法 ほうほう は、現用 げんよう の高 こう 初速 しょそく 砲 ほう やレールガンの迎撃 げいげき さえも受 う けやすい[30] 。
しかしながらロシア側 がわ の情報 じょうほう では、アバンガルドHGVはマッハ27で飛行 ひこう し、また「大気 たいき 中 ちゅう を飛行 ひこう する間 あいだ にはコンスタントにコースと高度 こうど を変更 へんこう し、目標 もくひょう への経路 けいろ において無秩序 むちつじょ にジグザグ運動 うんどう を行 おこな い、この兵器 へいき の位置 いち の予測 よそく を不可能 ふかのう にする」と主張 しゅちょう している[31] 。
再 さい 突入 とつにゅう 機 き への採用 さいよう [ 編集 へんしゅう ]
ソ連 それん はこの技術 ぎじゅつ をゾンド計画 けいかく の種々 しゅじゅ の月 つき 周回 しゅうかい 宇宙 うちゅう 機 き に用 もち い、これらは着陸 ちゃくりく の前 まえ に一 いち 回 かい だけスキップを行 おこな った。この場合 ばあい 、より高 たか い緯度 いど の着陸 ちゃくりく 地域 ちいき へと宇宙 うちゅう 機 き を到達 とうたつ させるという条件 じょうけん があり、本当 ほんとう の意味 いみ でのスキップが求 もと められた。ゾンド6、ゾンド7、そしてゾンド8がスキップ再 さい 突入 とつにゅう に成功 せいこう した。ただしゾンド5は失敗 しっぱい した[32] [33] 。嫦娥 じょうが 5号 ごう T1の飛行 ひこう 計画 けいかく のあらましはゾンドと同様 どうよう であり、この技術 ぎじゅつ も用 もち いている。
アポロ司令 しれい 船 せん では、機体 きたい の加熱 かねつ 負荷 ふか を少 すく なくし、再 さい 突入 とつにゅう の時間 じかん を延長 えんちょう するためにスキップに似 に た概念 がいねん を用 もち いているが、この宇宙 うちゅう 機 き は大気 たいき から再 ふたた び離脱 りだつ することはなく、これが本当 ほんとう のスキップのかたちを取 と っているのかには論議 ろんぎ がある。NASA では単 たん に「リフティングエントリー」と呼 よ んでいる。真正 しんせい な複 ふく 数 すう 回 かい スキップのかたちは、アポロ司令 しれい 船 せん のスキップ誘導 ゆうどう コンセプトの部分 ぶぶん にあると考 かんが えられているものの、これはいかなる有人 ゆうじん 飛行 ひこう にも採用 さいよう されたことがない[34] 。この概念 がいねん は機内 きない 搭載 とうさい コンピューターを利用 りよう し、オリオン宇宙 うちゅう 機 き のようなより現代 げんだい 的 てき な機体 きたい にも繰 く り返 かえ し現 あらわ れている[35] [36] [37] 。
飛行 ひこう 時 じ の力学 りきがく [ 編集 へんしゅう ]
簡略 かんりゃく 化 か された運動 うんどう 方程式 ほうていしき を用 もち いて、大気 たいき 中 ちゅう の飛行 ひこう では、抗力 こうりょく と揚力 ようりょく の双方 そうほう とも機体 きたい に働 はたら く重力 じゅうりょく よりも大 おお きいと仮定 かてい すると、次 つぎ のようにスキップ再 さい 突入 とつにゅう 時 じ の分析 ぶんせき 関係 かんけい を導 みちび きだせる[38] 。
γ がんま
F
=
−
γ がんま
E
{\displaystyle \gamma _{F}=-\gamma _{E}}
ガンマがその地域 ちいき の水平 すいへい 線 せん に対 たい する飛行 ひこう 経路 けいろ の角度 かくど であるとき、Eは突入 とつにゅう 開始 かいし 時 じ の状態 じょうたい を示 しめ し、Fは突入 とつにゅう 飛行 ひこう の終了 しゅうりょう 時 じ の状態 じょうたい を示 しめ している。
突入 とつにゅう 前後 ぜんこう の速度 そくど Vは次 つぎ のように関連 かんれん して導 みちび きだせる。
V
F
V
E
=
e
2
γ がんま
E
L
/
D
{\displaystyle {\frac {V_{F}}{V_{E}}}=e^{\frac {2\gamma _{E}}{L/D}}}
ここでL/Dは機体 きたい の揚 あげ 抗 こう 比 ひ に等 ひと しい。
開発 かいはつ 完了 かんりょう 、または開発 かいはつ 途上 とじょう の機材 きざい [ 編集 へんしゅう ]
ロシアの極 きょく 超 ちょう 音速 おんそく 滑空 かっくう 体 たい アバンガルド 、開発 かいはつ 完了 かんりょう し配備 はいび 済 ず み。
中国 ちゅうごく の極 きょく 超 ちょう 音速 おんそく 滑空 かっくう 体 たい DF-ZF 、開発 かいはつ 完了 かんりょう し配備 はいび 済 ず み。
アメリカの極 きょく 超 ちょう 音速 おんそく 滑空 かっくう 体 たい Falcon HTV2 、開発 かいはつ 中 ちゅう 。
インドの極 きょく 超 ちょう 音速 おんそく 滑空 かっくう 体 たい HGV-202F 。
日本 にっぽん の極 きょく 超 ちょう 音速 おんそく 滑空 かっくう 体 たい Hyper Velocity Gliding Projectile (HVGP) [39] 。
ブラジルの極 きょく 超 ちょう 音速 おんそく 滑空 かっくう 体 たい 14-X 、開発 かいはつ 中 ちゅう 。
フランスの極 きょく 超 ちょう 音速 おんそく 滑空 かっくう 体 たい VMAX、開発 かいはつ 中 ちゅう 。[40]
^ YengstのA-4シリーズの兵器 へいき 年表 ねんぴょう は、多 おお くの書籍 しょせき と相当 そうとう な差異 さい がある。例 れい として彼 かれ はA-9とA-10は2つの完全 かんぜん に別々 べつべつ の開発 かいはつ であると示唆 しさ し、単一 たんいつ のICBM設計 せっけい の上段 じょうだん と下段 げだん とする説 せつ と対照 たいしょう 的 てき である。また彼 かれ は翼 つばさ 付 つ きのA-4とは対照 たいしょう 的 てき に、A-4bがSLBMの開発 かいはつ 計画 けいかく であったと述 の べる。
^ ナバホもまた1958年 ねん に同様 どうよう の運命 うんめい となった。この年 とし 、SM-65アトラスが選 えら ばれたために開発 かいはつ 中止 ちゅうし となっている。
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