角速度かくそくど

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平均へいきん運動うんどうから転送てんそう
角速度かくそくど
angular velocity
りょう記号きごう ωおめが
次元じげん T−1
種類しゅるい なずらえベクトル
SI単位たんい ラジアン毎秒まいびょう (rad/s)
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古典こてん力学りきがく

運動うんどうだい2法則ほうそく
歴史れきし英語えいごばん
円運動えんうんどうする物体ぶったいたいする角速度かくそくどベクトル Ωおめが位置いちベクトル r速度そくどベクトル v関係かんけい。それぞれのベクトルはたがいに直交ちょっこうしている。

運動うんどうがくにおいて、角速度かくそくど(かくそくど、えい: angular velocity)は、あるてんをまわる回転かいてん運動うんどう速度そくどを、単位たんい時間じかんすす角度かくどによってあらわした物理ぶつりりょうである。いいかえれば角速度かくそくどとは、原点げんてん物体ぶったいむす線分せんぶん、すなわちどうみち角度かくど時間じかん変化へんかりょうである。とくひとしそく円運動えんうんどうする物体ぶったい角速度かくそくどは、物体ぶったい速度そくどえん半径はんけいったものとしてあたえられる[1]したがって角速度かくそくどりょう次元じげん[ちゅう 1]は、通常つうじょう並進へいしん運動うんどう速度そくどとはことなり[ちゅう 2]時間じかん逆数ぎゃくすう T−1 となる。

概要がいよう[編集へんしゅう]

角速度かくそくど単位たんい角度かくど単位たんい時間じかん単位たんいによってあらわされる。たとえば国際こくさい単位たんいけいにおいては、角度かくど単位たんいはラジアン (rad)、時間じかん単位たんいびょう (s) であるため、角速度かくそくど単位たんいラジアン毎秒まいびょう (rad/s) となる。角速度かくそくどあらわ記号きごうとしてはしばしばギリシア文字もじωおめがΩおめがもちいられる[2]

角速度かくそくど関係かんけいする物理ぶつり現象げんしょうとしてはたとえば遠心えんしんりょくコリオリりょくがある。

角速度かくそくどは、ある座標ざひょうけいにおけるどうみち角度かくど時間じかん微分びぶんであるが、角速度かくそくど時間じかん微分びぶんすみ加速度かそくどばれる。また角速度かくそくど時間じかん積分せきぶんはある時刻じこくあいだにおける回転かいてんかくあたえる。

角速度かくそくどの「き」と「おおきさ」[編集へんしゅう]

角速度かくそくど物体ぶったい回転かいてん運動うんどうする平面へいめんたいして時計とけいまわはん時計とけいまわりかいずれかひとつの方向ほうこうただしとし、他方たほうまけとするように定義ていぎされる。また符号ふごう正負せいふは、幾何きか学的がくてきには角速度かくそくどきに対応たいおうづけることができる。標準ひょうじゅんてきもちいられる右手みぎてけい座標ざひょうけいでは、角速度かくそくど符号ふごうはん時計とけいまわりをせいとして定義ていぎされ、角速度かくそくどきは右手みぎて法則ほうそくしたがい、回転かいてんめんはん時計とけいまわりにえる方向ほうこうくようにさだめられる。

角速度かくそくどはしばしばスカラーベクトルとしてあつかわれるが、かがみうつ反転はんてんによりきがかわってしまう[ちゅう 3]などの性質せいしつから、厳密げんみつにいえばなずらえスカラーなずらえベクトルとしてあつかわれる。2次元じげん空間くうかんじょうでは回転かいてん平面へいめんじくひとつにかぎられるため、角速度かくそくどなずらえスカラーとなり、3次元じげん空間くうかんにおいては回転かいてん平面へいめんじく自由じゆう方向ほうこうくことができるため、角速度かくそくどなずらえベクトルとなる[ちゅう 4]

また、角速度かくそくど絶対ぜったい(またはノルム)をしばしば角速度かくそくどおおきさぶが、文脈ぶんみゃくによっては、角速度かくそくどおおきさをふくめてたんに「角速度かくそくど」とぶことがある。

定義ていぎ[編集へんしゅう]

質点しつてん位置いちベクトルを r速度そくどベクトルを v とするとき、質点しつてん原点げんてんまわりの角速度かくそくど ωおめが

定義ていぎされる。ここで r位置いちベクトルのおおきさ |r| であり、×ベクトルせきあらわす。この定義ていぎ以下いかのようにしめされる。

時刻じこく tt′ における質点しつてん位置いちベクトルをそれぞれ rr′ とする。これらのなす角度かくどφふぁい とすれば

である。時間じかん間隔かんかく Δでるたt = t'tちいさいときに

であることから、ベクトルせきかんする恒等こうとうしき r × r ≡ 0もちいれば

られ、うえしき両辺りょうへんにおける Δでるたt の1こう比較ひかくして

みちびかれる。回転かいてんかく φふぁい = ωおめがΔでるたtきを回転かいてんじく方向ほうこう(すなわちみぎねじのすす方向ほうこう)に一致いっちするようにさだめると[3]定義ていぎしきみちびかれる。

剛体ごうたい回転かいてん[編集へんしゅう]

位置いちベクトルと角速度かくそくどのベクトルせきは、三重みえせき公式こうしきから

となる。どうみち方向ほうこう単位たんいベクトル er = r/r導入どうにゅうすれば

である。どうみち方向ほうこう速度そくど成分せいぶんたないとき、すなわち原点げんてんからの距離きょり変化へんかしないとき

となる。とく原点げんてん固定こていてんとする剛体ごうたい回転かいてんでは、単一たんいつ角速度かくそくどによってすべての粒子りゅうし速度そくどおながたあらわされる。

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 物理ぶつりがくなどの文献ぶんけんにおいては、文脈ぶんみゃくじょうまぎれがないかぎり、たんに「次元じげん」とばれる。
  2. ^ 速度そくど次元じげんなが L に時間じかん T の逆数ぎゃくすうけた L⋅T−1 である。
  3. ^ zじくまわりの回転かいてん運動うんどうあらわす角速度かくそくどはzじく成分せいぶんしかもたないため、しんにベクトルであるならばx-zめんかがみうつめんとするかがみうつ反転はんてんにより不変ふへんたもたれるはずであるが、かがみうつ反転はんてんにより回転かいてん運動うんどう方向ほうこう反転はんてんされるため、zじく成分せいぶん符号ふごう反転はんてんする。
  4. ^ よりこう次元じげん空間くうかんふくn 次元じげん空間くうかんたいして統一とういつてき使つかえる方法ほうほうとしては、自由じゆう 1/2n(n − 1)かい反対称はんたいしょうテンソルとしてあらわす方法ほうほうがある。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 江沢えざわ 2005, p. 42, §6 きょくせん運動うんどう.
  2. ^ たとえば ωおめが について 江沢えざわ 2005, p. 42、新井あらい 2003, p. 167 など。Ωおめが について 江沢えざわ 2005, p. 254、ランダウ & リフシッツ 1974, p. 121 など。後者こうしゃとく運動うんどう座標ざひょうけいたいする一般いっぱん角速度かくそくどたいしてもちいられている。
  3. ^ ランダウ & リフシッツ 1974, p. 21, §9 かく運動うんどうりょう.

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 江沢えざわ, よう力学りきがく高校生こうこうせい大学生だいがくせいのために』(初版しょはん日本にっぽん評論ひょうろんしゃ、2005ねん2がつ20日はつかISBN 4-535-78501-5 
  • ランダウ, レフリフシッツ, エフゲニー力学りきがく広重ひろしげ, とおる (わけ); 水戸みと, いわお (わけ)(ぞうていだい3はん)、東京とうきょう図書としょ理論りろん物理ぶつりがく教程きょうてい〉、1974ねん10がつ1にちISBN 978-4-489-01160-3 
  • 新井あらい, 朝雄あさお物理ぶつり現象げんしょう数学すうがくてきしょ原理げんり現代げんだい数理すうり物理ぶつりがく入門にゅうもん共立きょうりつ出版しゅっぱん、2003ねん2がつ20日はつかISBN 4-320-01726-9 
  • 長倉ながくら, 三郎さぶろう井口いぐち, 洋夫ひろお江沢えざわ, よう岩村いわむら, しゅう佐藤さとう, 文隆ふみたか久保くぼ, あきら岩波いわなみ理化学りかがく辞典じてん』(だい5はん岩波書店いわなみしょてん、1998ねん2がつ20日はつか 

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