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ロキソプロフェン

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ロキソプロフェン
IUPAC命名めいめいほうによる物質ぶっしつめい
臨床りんしょうデータ
販売はんばいめい ロキソニン
法的ほうてき規制きせい
  • JP: OTC
  • Red Stripe(ブラジル)
薬物やくぶつ動態どうたいデータ
血漿けっしょうタンパク結合けつごう97%
代謝たいしゃ肝臓かんぞう グルコヌリド
半減はんげん75ふん
排泄はいせつ腎臓じんぞう
データベースID
CAS番号ばんごう
68767-14-6
ATCコード M01AE (WHO)
PubChem CID: 3965
KEGG D08149
化学かがくてきデータ
化学かがくしきC15H18O3
分子ぶんしりょう246.302g/mol
304.314 g/mol(ナトリウムしお
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ロキソプロフェンLoxoprofen)は、プロピオンさんけい解熱げねつ消炎しょうえん鎮痛ちんつうざい商品しょうひんめいロキソニンLoxonin)で、だいいち三共さんきょう開発かいはつ発売はつばいし、後発こうはつ医薬品いやくひん各社かくしゃから発売はつばいされている。現在げんざい日本にっぽんメキシコブラジルでよく使用しようされているこう炎症えんしょうやくひとつである。

経緯けいい

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当時とうじ三共さんきょう創製そうせい。1986ねん医療いりょうよう医薬品いやくひん「ロキソニンじょうほそつぶ」として日本にっぽん国内こくない発売はつばいされた。先発せんぱつひんとしての外用がいようざいとしてはパップざいが2006ねん、テープが2008ねん、ゲルざいは2010ねん発売はつばいされた。後述こうじゅつする、市販しはんけの一般いっぱんよう医薬品いやくひんは2011ねんから発売はつばいされている。

従来じゅうらい尿にょうりょう減少げんしょう急性きゅうせい腎不全じんふぜん)、全身ぜんしんせい浮腫ふしゅ(ネフローゼ症候群しょうこうぐん)、発熱はつねつあいだしつせいじんえん)の副作用ふくさよう疑義ぎぎにより劇薬げきやく指定していされていたが、2009ねん10がつ21にち開催かいさいされた医薬品いやくひんだい一部いちぶかいにおいて、22年間ねんかんにわたる医療いりょうよう医薬品いやくひんとしての使用しよう実績じっせきから蓄積ちくせきされた知見ちけんにより、「毒薬どくやく劇薬げきやく指定してい基準きじゅん」のいずれにも該当がいとうしないと判断はんだんされ、2010ねん1がつ20にち以降いこう医薬品いやくひん添付てんぷ文書ぶんしょ規制きせい区分くぶんから劇薬げきやく記載きさい解除かいじょされる[1]

適用てきよう

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変形へんけいせい関節かんせつしょう慢性まんせい関節かんせつリウマチ頸肩うで症候群しょうこうぐんかた関節かんせつ周囲しゅういえん筋肉きんにくつう腰痛ようつう急性きゅうせい上気じょうきどうえん歯痛しつう手術しゅじゅつ鎮痛ちんつう[2]

禁忌きんき事項じこう

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  • 消化しょうかせい潰瘍かいようのある患者かんじゃ[プロスタグランジンせい合成ごうせい抑制よくせいにより、流量りゅうりょう減少げんしょう消化しょうかせい潰瘍かいよう悪化あっかすることがある。][3]
  • じゅうあつし血液けつえき異常いじょうのある患者かんじゃ血小板けっしょうばん機能きのう障害しょうがいこし、悪化あっかするおそれがある。][3]
  • じゅうあつしかん障害しょうがいのある患者かんじゃ副作用ふくさようとしてかん障害しょうがい報告ほうこくされており、悪化あっかするおそれがある。][3]
  • じゅうあつしじん障害しょうがいのある患者かんじゃ急性きゅうせい腎不全じんふぜん、ネフローゼ症候群しょうこうぐんとう副作用ふくさよう発現はつげんすることがある。][3]
  • おもあつこころ機能きのう障害しょうがいのある患者かんじゃじんのプロスタグランジンせい合成ごうせい抑制よくせいにより浮腫ふしゅ循環じゅんかん体液たいえきりょう増加ぞうかこり、心臓しんぞう仕事しごとりょう増加ぞうかするため症状しょうじょう悪化あっかさせるおそれがある。][3]
  • ほんざい成分せいぶん過敏かびんしょう既往きおうれきのある患者かんじゃ[3]
  • アスピリン喘息ぜんそくステロイドせい消炎しょうえん鎮痛ちんつうざいとうによる喘息ぜんそく発作ほっさ誘発ゆうはつ)またはその既往きおうれきのある患者かんじゃ[アスピリン発作ほっさ誘発ゆうはつすることがある。][3]
  • 妊娠にんしん末期まっき女性じょせい[3]

一般いっぱんてき注意ちゅうい副作用ふくさよう

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報告ほうこくされている副作用ふくさよう

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医薬品いやくひん添付てんぷ文書ぶんしょ記載きさいされている、臨床りんしょう試験しけんちゅう報告ほうこくされた、一般いっぱんてき副作用ふくさようつぎとおりである:消化しょうか不良ふりょう消化しょうか潰瘍かいよう出血しゅっけつ肝臓かんぞう酵素こうそ増大ぞうだい下痢げり、ふらつき、しおおよび体液たいえき停留ていりゅう高血圧こうけつあつ[3]。また、まれな副作用ふくさようつぎとおりである:食道しょくどう潰瘍かいよう心不全しんふぜんこうカリウムしょう腎臓じんぞう障害しょうがい昏迷こんめい気管支きかんし痙攣けいれん発疹はっしん小腸しょうちょう大腸だいちょう狭窄きょうさく閉塞へいそく排尿はいにょう困難こんなん[3]急性きゅうせいひろしはつせい発疹はっしんせい膿疱のうほうしょう[3]

2016ねん3がつ厚生こうせい労働省ろうどうしょうから日本にっぽん製薬せいやく団体だんたい連合れんごうかいたいして「使用しようじょう注意ちゅうい」の改訂かいていくすりせいやすはつ0322だい1ごう)が通知つうちされ[5]、そのなかでロキソプロフェンナトリウムの含有がんゆう製剤せいざい経口けいこうざい)について「小腸しょうちょう大腸だいちょう狭窄きょうさく閉塞へいそく」の副作用ふくさようかんしての追加ついかがなされ、あわせて「消化しょうかかん穿孔せんこう」、「小腸しょうちょう大腸だいちょう潰瘍かいよう」、「排尿はいにょう困難こんなん」が記載きさいされた[6]。これをけ、一般いっぱんよう医薬品いやくひん同様どうよう使用しようじょう注意ちゅうい改訂かいていおこなわれ、「相談そうだんすること」の服用ふくよう副作用ふくさよう可能かのうせいがある症状しょうじょうに「小腸しょうちょう大腸だいちょう狭窄きょうさく閉塞へいそく嘔吐おうと腹痛はらいた腹部ふくぶ膨満とうがあらわれる)」が追記ついきされた[7]

消化しょうかかん障害しょうがいかんする報告ほうこく

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NSAIDs服用ふくようによる消化しょうかかん障害しょうがいかんして、2013ねんに、ほんざい十二指腸じゅうにしちょう潰瘍かいよう発現はつげんりつかんする日本にっぽん臨床りんしょうデータが発表はっぴょうされた[8]

対象たいしょう方法ほうほう:40 - 74さい健康けんこう成人せいじんたいし(試験しけんまえ内視鏡ないしきょう検査けんさ十二指腸じゅうにしちょう潰瘍かいようがないことが確認かくにんされている)、COX-2選択せんたくてき阻害そがいやくであるセレコキシブ bidとロキソプロフェン tid、およびプラセボを2週間しゅうかん投与とうよし、投与とうよ終了しゅうりょう内視鏡ないしきょう検査けんさ実施じっしし、十二指腸じゅうにしちょう潰瘍かいよう発現はつげんりつについて検討けんとうした。

結果けっか上部じょうぶ消化しょうかかん内視鏡ないしきょう確認かくにんされた、十二指腸じゅうにしちょう潰瘍かいよう発現はつげんりつ

セレコキシブbidぐん→1.4%(1/74れい
ロキソプロフェンtidぐん→27.6%(21/76れい
プラセボぐん→2.7%(1/37れい

セレコキシブぐんはロキソプロフェンぐんよりも、十二指腸じゅうにしちょう潰瘍かいよう発現はつげんりつ有意ゆういひくく(p<0.0001、Cochran-Mantel-Haenszel検定けんてい)、プラセボぐんどう程度ていどであった。

結論けつろん:この試験しけんでは、対象たいしょう健康けんこう成人せいじんであること、試験しけん期間きかん短期たんきであるという限界げんかいはあるものの、十二指腸じゅうにしちょう潰瘍かいよう発現はつげんりつかんして、セレコキシブはロキソプロフェンにたいする優越ゆうえつせいみとめられた。副作用ふくさようかんしては、セレコキシブぐんが31.6%(24/76れい)、ロキソプロフェンぐんが50.0%(38/76れい)、プラセボぐんが18.9%(7/37れい)であった。かく副作用ふくさよう重症じゅうしょうはいずれもひくかった。

相互そうご作用さよう

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下記かき薬剤やくざいとの薬物やくぶつ相互そうご作用さよう報告ほうこくされている[2]

  • クマリンけいこう凝血ぎょうけつざいだいXa因子いんし阻害そがいざい、スルホニル尿素にょうそけい血糖けっとう降下こうかざい、 ニューキノロンけい抗菌こうきんざい、メトトレキサート、リチウム製剤せいざい、チアジドけい利尿りにょうやく、ACE阻害そがいざい、アンジオテンシンII受容じゅようたい拮抗きっこうざい

代謝たいしゃ

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プロドラッグであり、肝臓かんぞう皮膚ひふ筋肉きんにくでのカルボニル還元かんげん酵素こうそ代謝たいしゃにより、体内たいないすみやかに活性かっせいたかtrans-OHがた変換へんかんされる。発熱はつねつ炎症えんしょうこす原因げんいんとなるプロスタグランジンなま合成ごうせい抑制よくせいすることで炎症えんしょうしずめ、れのおさえ、鎮痛ちんつう解熱げねつ作用さようなどをしめす。

薬理やくりてきにはプロスタグランジンの合成ごうせい酵素こうそであるシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害そがいすることによる。

こうしたステロイドせいこう炎症えんしょうやく (NSAIDs) は、特徴とくちょうとして、鎮痛ちんつう作用さようつよ消化しょうかへの副作用ふくさようつよいが、ロキソプロフェンはプロドラッグであるため、体内たいない吸収きゅうしゅうされるまで作用さようしめさず、これによりNSAIDsの副作用ふくさようである胃腸いちょう障害しょうがい軽減けいげんしている[よう出典しゅってん]

種類しゅるい

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種類しゅるいとしては、内服ないふくざい錠剤じょうざい散剤さんざい液剤えきざい)と外用がいようざい貼付ちょうふざい塗布とふざい)がある。

従来じゅうらい処方箋しょほうせん医薬品いやくひんのみであったが、一般いっぱんよう医薬品いやくひんへのスイッチOTCみとめられ、2011ねん1がつにはだいいち三共さんきょうヘルスケアから解熱げねつ鎮痛ちんつうやく「ロキソニンS」がだい一類いちるい医薬品いやくひんとして発売はつばい広告こうこくなど一般いっぱん消費しょうひしゃけマーケティングがなされ、薬剤師やくざいし常駐じょうちゅうしているドラッグストアでの購入こうにゅう可能かのうとなり、その効果こうかとともに商品しょうひんめい一挙いっきょおおくのひとるところとなった[9]。2015ねんはいるとライオン興和こうわなどの同業どうぎょう他社たしゃからも、後発こうはつ医薬品いやくひん発売はつばいされるようになり、有効ゆうこう成分せいぶんわせたごうざいも、一般いっぱんよう医薬品いやくひんとして発売はつばいされた。

2016ねん8がつには、外用がいようざいもスイッチOTCされて「ロキソニンSテープ」・「ロキソニンSテープL」・「ロキソニンSパップ」・「ロキソニンSゲル」が一般いっぱんよう医薬品いやくひんとして発売はつばいされ、内服ないふくざい同様どうよう薬剤師やくざいしのいる薬局やっきょくでの購入こうにゅう可能かのうとなった[10]外用がいようざいについては、発売はつばい当初とうしょよう指導しどう医薬品いやくひん区分くぶんされていたが、だい一類いちるい医薬品いやくひん区分くぶん変更へんこうて、2020ねん8がつ25にちづけだいるい医薬品いやくひん再度さいど区分くぶん変更へんこう[11]され、登録とうろく販売はんばいしゃ常駐じょうちゅうするドラッグストア一般いっぱんよう医薬品いやくひんあつか店舗てんぽスーパーマーケットディスカウントストア)での購入こうにゅう可能かのうとなった。


OTCの種類しゅるい

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2024ねん3がつ時点じてん以下いか製品せいひんだい一類いちるい医薬品いやくひんおよよう指導しどう医薬品いやくひんとして市販しはんされている。

だいいち三共さんきょうヘルスケア
  • ロキソニンS
  • ロキソニンSプラス
  • ロキソニンSクイック
  • ロキソニンSプレミアム
  • ロキソニンSプレミアムファイン
  • ロキソニン総合そうごうかぜやくよう指導しどう医薬品いやくひん
興和こうわ
  • コルゲンコーワ鎮痛ちんつう解熱げねつLXαあるふぁ
  • コルゲンコーワLXじょうよう指導しどう医薬品いやくひん
大正製薬たいしょうせいやく
  • ナロンLoxy
  • ロキソプロフェンTえき

出典しゅってん

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  1. ^ 平成へいせい21ねん11月25にち薬事やくじ食品しょくひん衛生えいせい審議しんぎかい一般用医薬品部会議事録
  2. ^ a b KEGG.
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o pmds.
  4. ^ Küster, Michael; Renner, Bertold; Oppel, Pascal; Niederweis, Ursula; Brune, Kay (2013). “Consumption of analgesics before a marathon and the incidence of cardiovascular, gastrointestinal and renal problems: a cohort study”. BMJ open (British Medical Journal Publishing Group) 3 (4): e002090. doi:10.1136/bmjopen-2012-002090. https://doi.org/10.1136/bmjopen-2012-002090. 
  5. ^ 使用しようじょう注意ちゅうい」の改訂かいていについて” (PDF). 厚生こうせい労働省ろうどうしょう生活せいかつ衛生局えいせいきょく安全あんぜん対策たいさく (2016ねん3がつ22にち). 2016ねん4がつ9にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2016ねん3がつ25にち閲覧えつらん
  6. ^ 使用しようじょう注意ちゅうい改訂かいていのおらせ ロキソニンじょう60mg・ロキソニンほそつぶ10%”. だいいち三共さんきょう株式会社かぶしきがいしゃ (2016ねん3がつ). 2021ねん7がつ3にち閲覧えつらん
  7. ^ ロキソプロフェンNaみず和物あえもの含有がんゆうする弊社へいしゃの「解熱げねつ鎮痛ちんつうやく使用しようじょう注意ちゅうい改訂かいていのおらせ”. だいいち三共さんきょうヘルスケア株式会社かぶしきがいしゃ (2016ねん3がつ23にち). 2016ねん3がつ25にち閲覧えつらん
  8. ^ Sakamoto C, Kawai T, Nakamura S, Sugioka T, Tabira J (2013). “Comparison of gastroduodenal ulcer incidence in healthy Japanese subjects taking celecoxib or loxoprofen evaluated by endoscopy: a placebo-controlled, double-blind 2-week study.”. Aliment Pharmacol Ther 37 (3): 346-54. doi:10.1111/apt.12174. PMID 23216412. http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/apt.12174/abstract. 
  9. ^ 頭痛ずつう生理せいりつうやくに「大型おおがた新人しんじん医療いりょうようから「寡占かせん市場いちば」に参入さんにゅう. J-CASTニュース. (2011ねん1がつ18にち). https://www.j-cast.com/2011/01/18085710.html?p=all 2011ねん1がつ19にち閲覧えつらん 
  10. ^ ロキソニンS外用がいようやくシリーズをしん発売はつばい』(プレスリリース)だいいち三共さんきょうヘルスケア株式会社かぶしきがいしゃ、2016ねん8がつ19にちhttp://www.daiichisankyo-hc.co.jp/release/loxonin-s160819.html2016ねん8がつ25にち閲覧えつらん 
  11. ^ リスク区分くぶん変更へんこうのおらせ/適正てきせい使用しよう推進すいしんのおねがい「外用がいよう鎮痛ちんつう消炎しょうえんやく ロキソニンS外用がいようやく”. だいいち三共さんきょうヘルスケア株式会社かぶしきがいしゃ (2020ねん8がつ25にち). 2020ねん12月30にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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  • イブプロフェン
  • ナプロキセン
  • ジクロフェナク - 商品しょうひんめいボルタレン。ロキソニンとならしょうされるNSAIDs鎮痛ちんつうやく
  • アセトアミノフェン - ふるくからある薬品やくひんだが、ロキソニンなみつよ効果こうか薬剤やくざいとして、どう成分せいぶんおもとした「SG配合はいごう顆粒かりゅう」が塩野義製薬しおのぎせいやくから製造せいぞう販売はんばいされている(医師いし処方箋しょほうせん必要ひつよう)。
  • レバミピド - ロキソプロフェンと同時どうじ処方しょほうされることおお胃薬いぐすり

外部がいぶリンク

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