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乗員じょういん帰還きかん

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ISS乗員じょういん帰還きかん– CRV(X-38プロトタイプ)

乗員じょういん帰還きかん(じょういんきかんき、英語えいご: Crew Return VehicleCRV ))は、緊急きんきゅう乗員じょういん帰還きかん(きんきゅうじょういんきかんき、英語えいご: Assured Crew Return VehicleACRV ))とばれる。国際こくさい宇宙うちゅうステーション(ISS)専用せんよう救命きゅうめいボートまたは脱出だっしゅつモジュールとして提案ていあんされた。20ねん以上いじょうにわたって、いくつかのことなるビークルの設計せっけい検討けんとうされ、開発かいはつテストのプロトタイプとして飛行ひこうしたが、どれも運用うんよう可能かのういたらなかった。2000ねんにISSに最初さいしょ常勤じょうきんクルー到着とうちゃくして以来いらい緊急きんきゅう復帰ふっき機能きのうソユーズ宇宙船うちゅうせんと、最近さいきんではスペースXクルードラゴンによって実現じつげんした。それぞれが6かげつごとにローテーションをおこなう。

元々もともと宇宙うちゅうステーションの設計せっけいでは、緊急きんきゅう事態じたい場合ばあいは、米国べいこくスペースシャトルからの救助きゅうじょあいだ乗組のりくみいん避難ひなんできるステーションに「セイフティーエリア」をもうけることによって対処たいしょすることを目的もくてきとしていた。しかし、1986ねんスペースシャトルチャレンジャーごう爆発ばくはつとそれにつづコロンビアごう空中くうちゅう分解ぶんかいにより、ステーションプランナーはこの概念がいねん再考さいこうした[1]計画けいかく担当たんとうしゃは、つぎの3つの特定とくていのシナリオに対処たいしょするためのCRVの必要ひつようせい予測よそくした。

  • スペースシャトルまたはソユーズのカプセルが利用りようできない場合ばあい乗組のりくみいん帰還きかん
  • タイムクリティカルな主要しゅよう宇宙うちゅうステーションの緊急きんきゅう事態じたいからの迅速じんそく脱出だっしゅつ
  • 医療いりょう緊急きんきゅう事態じたい場合ばあいには、乗組のりくみいん全部ぜんぶまたは一部いちぶもど[2]

医学いがくてき考察こうさつ

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ISSには、特定とくていのレベルの医療いりょう状況じょうきょう処理しょりするための健康けんこう維持いじ機構きこう(HMF)が装備そうびされ、おもな3つに分類ぶんるいされる。

ただし、HMFは一般いっぱんてき外科げかてき能力のうりょくつようには設計せっけいされていないため、HMFの能力のうりょくえる医学いがくてき状況じょうきょう発生はっせいした場合ばあい乗組のりくみいん避難ひなんさせる手段しゅだん不可欠ふかけつである[2]

初期しょきのNASA概念がいねん

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HL-20コンセプトアート

ヴェルナー・フォン・ブラウン博士はかせは、1966ねん記事きじ最初さいしょ宇宙うちゅう救命きゅうめいボートの概念がいねん提起ていき[3] 、そのNASAの計画けいかく担当たんとうしゃ宇宙うちゅうステーション救命きゅうめいボートの初期しょき概念がいねんをいくつか開発かいはつした。

カプセルシステム

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  • ステーションクルーリターンオルタナティブモジュール英語えいご: Station Crew Return Alternative Module(SCRAM))は、最大さいだい6にん宇宙うちゅう飛行ひこう収容しゅうようできるカプセルであった。さい突入とつにゅうねつ保護ほごは、NASAバイキング火星かせい探査たんさよう設計せっけいされたねつシールドの使用しようによって提供ていきょうされた。6おくあめりかドルの費用ひようがかかるこの設計せっけいおも欠点けってん着陸ちゃくりくのg負荷ふかたかいことで、医学いがくてき必要ひつよう避難ひなん場合ばあいには理想りそうてきではなかった[1][2]
  • バイキングベースの概念がいねんつづくものとして、べい航空こうくう宇宙うちゅうきょく(NASA)は、ゼネラル・エレクトリックとNISスペース株式会社かぶしきがいしゃによる1986ねん提案ていあん検討けんとうした。すでに機密きみつあつかいの軍事ぐんじプロジェクトよう設計せっけいされ、当初とうしょ最大さいだい4にん乗員じょういん対象たいしょうとして計画けいかくされていた。MOSESとばれる米国べいこく空軍くうぐんどんたいディスカバラータイプの回収かいしゅうカプセルの商業しょうぎょうてき開発かいはつされた派生はせいぶつ場合ばあい、カプセルをスケールアップして8にん乗組のりくみいん収容しゅうようするというアイデアしばらくのあいだ検討けんとうしていたが、のち削除さくじょされた[1]。ただし、最大さいだい8gのg負荷ふかがあるため、このビークルは重大じゅうだい医療いりょう状況じょうきょうにはてきしていない[2]
  • 1989ねん、NASAエンジニアはカプセルタイプのACRVコンセプトの特許とっきょ取得しゅとくした[4]

HL-20 クルーレスキュービークルは、NASAが以前いぜんリフティングボディ研究けんきゅう成果せいかとして開発かいはつしたパーソネルローンチシステム(PLS)の概念がいねんもとづいていた。1989ねん10がつロックウェルインターナショナル宇宙うちゅうシステム部門ぶもん)は、ラングレー研究所けんきゅうじょ管理かんりする1年間ねんかん契約けいやく作業さぎょう開始かいしし、調査ちょうさのベースラインとしてHL-20コンセプトを使用しようしてPLSの設計せっけい運用うんよう詳細しょうさい調査ちょうさ実施じっしした。1991ねん10がつ、ロッキードアドバンストデベロップメントカンパニー(スカンクワークスとしてられる)は、プロトタイプと運用うんようシステムの開発かいはつ実現じつげん可能かのうせい判断はんだんするための調査ちょうさ開始かいしした。NASA、ノースカロライナ州立しゅうりつ大学だいがくおよびノースカロライナA&T大学だいがく英語えいごばんあいだ協力きょうりょく協定きょうていにより、この概念がいねんかんするさらなるヒューマンファクター研究けんきゅうのためのHL-20PLSの実物じつぶつだいモデルが構築こうちくされた[1][5]。すべてのオプションのなかで、リフティングボディは、制御せいぎょされた環境かんきょうと、さい突入とつにゅうおよび着陸ちゃくりくていg負荷ふか観点かんてんから、もっと理想りそうてき医療いりょう環境かんきょう提供ていきょうした[2]。ただし、HL-20プロジェクトの費用ひようは20おくあめりかドル。議会ぎかいは1990ねんにNASAの予算よさんからプログラムを削減さくげんしている[1]

欧州おうしゅう宇宙うちゅう機関きかん概念がいねん

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欧州おうしゅう宇宙うちゅう機関きかん(ESA)は、有人ゆうじん宇宙うちゅう飛行ひこうプログラムの可能かのうせいかんする幅広はばひろ研究けんきゅう一環いっかんとして、1992ねん10がつに6かげつあいだだい1段階だんかいのACRV研究けんきゅう開始かいしした。この研究けんきゅうおも請負うけおい業者ぎょうしゃは、アエロスパシアルタレス・アレーニア・スペースおよびダイムラークライスラー・エアロスペースであった[6]

ESAは、CRVのいくつかの概念がいねん研究けんきゅうしました。

  • アポロがたカプセル:これは、8にん宇宙うちゅう飛行ひこうはこぶことができる1960年代ねんだいアポロカプセル拡大かくだいばんであった。カプセルの上部じょうぶにあるタワーには、ドッキングトンネルと、カプセルのロケットエンジンがふくまれる。これも、アポロの構成こうせい同様どうようで、タワーはさい突入とつにゅう直前ちょくぜん投棄とうきされる。着陸ちゃくりく減速げんそくパラシュートとエアバッグをかいしておこなわれる[6][7]
  • また、フェーズ1の調査ちょうさちゅうに、ESAは「バイキング」としてられる円錐えんすいがたのカプセルを調しらべた。アポロスタイルのコンセプトのように、それはベースファーストにふたたはいった。しかし、それはよりそらりょくてきかたちをしていました 「バイキング」モジュールのロケットエンジンは、アリアン宇宙うちゅう輸送ゆそう派生はせいであった。設計せっけい作業さぎょうは1995ねん3がつのフェーズ1のわりまでつづいた[6][8]
  • ブラントバイコニックの概念がいねんは、1993ねんから1994ねん研究けんきゅうされ、この設計せっけいはより機動きどうせいたかいと期待きたいされていたが、よりおもく、高価こうかであった[6][9]

ESAの17おくあめりかドルのACRVプログラムは、1995ねんにキャンセルされたが、フランスの抗議こうぎにより、さらなる研究けんきゅう実施じっしするための2年間ねんかん契約けいやくむすばれた。これにより、1997ねん飛行ひこうした大気たいきさい突入とつにゅうデモンストレーターカプセルが縮小しゅくしょうされた[6][10]。ESAは、わりに、1996ねん5がつにNASAのX-38 CRVプログラムに参加さんかすることを選択せんたくした。その、そのプログラムはフェーズAの調査ちょうさ終了しゅうりょうした[6]

ライフボート・アルファ

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ロシアせい航空機こうくうきをCRVとして使用しようするというアイデアは、ビル・クリントン大統領だいとうりょうがNASAにフリーダム宇宙うちゅうステーションさい設計せっけいし、ロシアの要素ようそふくめることを検討けんとうするように指示しじした1993ねん3がつにさかのぼる。そのなつ設計せっけい修正しゅうせいされ、宇宙うちゅうステーションアルファ国際こくさい宇宙うちゅうステーション)が誕生たんじょうした。さい設計せっけい一環いっかんとして考慮こうりょされたロシアの要素ようその1つは、ソユーズの「救命きゅうめいボート」の使用しようであった。CRVの目的もくてきでソユーズカプセルを使用しようすると、NASAがフリーダムの予定よていされるコストよりも5おくあめりかドル節約せつやくできると推定すいていされた[11]

しかし、1995ねんに、 エネルギアロックウェル・インターナショナルおよびクルニチェフ合弁ごうべん事業じぎょうが、ザーリャさい突入とつにゅうビークルから派生はせいしたライフボート・アルファ設計せっけい提案ていあんした。さい突入とつにゅうモーターは固体こたい推進すいしんざいであり、操縦そうじゅうスラスタは低温ていおんガスを利用りようしていたため、5年間ねんかんのオンステーションライフサイクルがあった。しかし、1996ねん6がつにNASA CRV / X-38プログラムを支持しじし、設計せっけい却下きゃっかされている[12]

ISSプログラムない一般いっぱんてき役割やくわりすだけでなく、乗員じょういん帰還きかんという名前なまえは、NASAによって開始かいしされ、ESAによって参加さんかされた特定とくてい設計せっけいプログラムもす。コンセプトは、CRVの役割やくわりのみにとくしたスペースプレーンを製造せいぞうすることであった。そのため、医療いりょう返還へんかん、ISSが居住きょじゅうできなくなった場合ばあい乗組のりくみいん返還へんかん、ISSの補給ほきゅう不可能ふかのう場合ばあい乗組のりくみいん返還へんかんという3つの特定とくてい任務にんむがあった[13]

CRVの概要がいようとコンセプト開発かいはつ

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HL-20プログラムの続編ぞくへんとして、NASAの意図いとは、管理かんりしゃダニエル・ゴールディンの「よりく、よりはやく、よりやすく」という概念がいねんをプログラムに適用てきようすることであった[14]。 CRVの設計せっけいコンセプトには、リフティングボディのさい突入とつにゅう国際こくさいてき停泊ていはく/ドッキングモジュール、軌道きどう離脱りだつ推進すいしんステージの3つの主要しゅよう要素ようそまれている。このビークルは、シャツスリーブ環境かんきょう英語えいごばん最大さいだい7にん乗組のりくみいん収容しゅうようできるように設計せっけいされていた。パイロットではない乗組のりくみいん一緒いっしょ操作そうさできる必要ひつようがあるため、飛行ひこう着陸ちゃくりく操作そうさ自律じりつてき実行じっこうされるようになっていた[13]。CRVの設計せっけいには、宇宙うちゅう操縦そうじゅう推進すいしんシステムが装備そうびされていなかった[15]

X-38先端せんたん技術ぎじゅつデモンストレーター

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NASAは、宇宙船うちゅうせんすうぶんの1のコストで運用うんようCRVの設計せっけい技術ぎじゅつ開発かいはつするために、X-38 Advanced TechnologyDemonstrators指定していされた一連いちれんていコストの高速こうそくプロトタイプビークルを開発かいはつするプログラムを開始かいしした[16]EAS Bulletin 101説明せつめいされているように、X-38プログラムは、「複数ふくすうのアプリケーション技術ぎじゅつのデモンストレーションおよびリスク軽減けいげんプログラムであり、国際こくさい宇宙うちゅうステーション(ISS)の運用うんよう乗員じょういん帰還きかん(CRV)のパスファインダーとしての最初さいしょのアプリケーションをつける」[13][17]

NASAは、ジョンソン宇宙うちゅうセンターがプロジェクトを主導しゅどうし、X-38プログラムの独自どくじ元請もとうけ業者ぎょうしゃとして行動こうどうした。開発かいはつ製造せいぞうのすべての側面そくめん社内しゃない管理かんりされていたが、特定とくていのタスクは委託いたくされていた[17]。CRV生産せいさん場合ばあい、NASAは、航空機こうくうき製造せいぞうするために外部がいぶ元請もとうけ業者ぎょうしゃ選択せんたくすることを予定よていしていた[18]

テストビークルが4だい計画けいかくされたが、2だいだけが製造せいぞうされ、どちらも大気たいきテストビークルであった。おもふくあい材料ざいりょうつくられた機体きたいは、スケールド・コンポジッツ契約けいやくした製造せいぞうされた。1998ねん3がつ12にち最初さいしょはつ飛行ひこう英語えいごばんおこなった。X-38は、パイオニア・エアロスペース英語えいごばんによって設計せっけいされた独自どくじパラフォイル着陸ちゃくりくシステムを利用りようした。飛行ひこう試験しけんプログラムで使用しようされたラムエアインフレータブルパラフォイルは、世界せかい最大さいだいで、表面積ひょうめんせきは7,500 sq ft (700 m2) 。パラフォイルは、GPSナビゲーションにもとづく搭載とうさい誘導ゆうどうシステムによって能動のうどうてき制御せいぎょされていた[19]

論争ろんそう

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NASAの開発かいはつプログラムの計画けいかくには、実際じっさいのCRVの運用うんようテストはふくまれていなかった。これには、ISSにげられ、最大さいだい3かげつあいだドッキングされたままになり、その地球ちきゅうに「そらの」帰還きかんおこなうことがふくまれていた。わりに、NASAはX-38の軌道きどう試験しけん結果けっかもとづいて宇宙船うちゅうせん「ヒューマンレート」を計画けいかくしていた。 3つの独立どくりつしたレビューグループとNASA監察かんさつかん事務所じむしょ英語えいごばんは、この計画けいかく知恵ちえ安全あんぜんせいについて懸念けねん表明ひょうめいした[18]

順次じゅんじ設計せっけい開発かいはつ、テスト、およびエンジニアリング評価ひょうかのアプローチとは対照たいしょうてきに、開発かいはつのラピッドプロトタイピング方法ほうほうも、プログラムのリスクにかんするいくつかの懸念けねんこした[17]

関連かんれん項目こうもく

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脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b c d e NASA ACRV history from Astronautix.com
  2. ^ a b c d e Stepaniak, Philip, MD (July 2001). “Considerations for Medical Transport From the Space Station via an Assured Crew Return Vehicle (ACRV)”. Johnson Space Center. NASA. October 5, 2006てんオリジナルよりアーカイブ。November 6, 2006閲覧えつらん
  3. ^ "Lifeboats in Space Popular Science, September 1966, pp. 96–97.
  4. ^ アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく特許とっきょだい 5,064,151ごう NASA patent for a capsule-type CRV (First page)
  5. ^ NASA HL-20 web site Archived October 18, 2006, at the Wayback Machine.
  6. ^ a b c d e f ESA ACRV review
  7. ^ Image of Apollo-type capsule
  8. ^ Image of Viking ACRV
  9. ^ Image of Blunt Biconic capsule
  10. ^ EADS ARD page Archived October 26, 2006, at the Wayback Machine.
  11. ^ GAO (June 1994). “Space Station: Impact of the Expanded Russian Role on Funding and Research”. GAO. November 3, 2006閲覧えつらん
  12. ^ Mark Wade. “Alpha Lifeboat”. Encyclopedia Astronautica. October 18, 2006てんオリジナルよりアーカイブ。November 3, 2006閲覧えつらん
  13. ^ a b c E. D. Graf (February 2000). “The X-38 and Crew Return Vehicle Programmes”. ESA Bulletin 101. European Space Administration. October 3, 2006てんオリジナルよりアーカイブ。October 31, 2006閲覧えつらん
  14. ^ NASA Developing Crew-Return Vehicle”. October 31, 2006閲覧えつらん
  15. ^ X-38 Crew Return Vehicle”. GlobalSecurity.org. October 27, 2006閲覧えつらん
  16. ^ X-38 Technology Demonstrator Arrives At Dryden”. October 27, 2006閲覧えつらん
  17. ^ a b c Audit Report: X-38/Crew Return Vehicle Project Management”. NASA Office of Inspector General. NASA (February 6, 2000). November 2, 2006閲覧えつらん
  18. ^ a b NASA Office of Inspector General (September 20, 1999). “Audit Report: X-38/Crew Return Vehicle Operational Testing”. NASA. November 2, 2006閲覧えつらんNASA Office of Inspector General (September 20, 1999). "Audit Report: X-38/Crew Return Vehicle Operational Testing" (PDF). NASA. Retrieved November 2, 2006.
  19. ^ Pioneer Aerospace”. October 29, 2006てんオリジナルよりアーカイブ。October 31, 2006閲覧えつらん

外部がいぶリンク

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