出羽でわノ花はな國こく市し

出羽でわノ花はな 國こく市し
基礎きそ情報じょうほう
四股しこ名めい	出羽でわノ花はな 國こく市し
本名ほんみょう	市川いちかわ 國一くにいち（旧姓きゅうせい：駒澤こまざわ）
愛称あいしょう	蔵前くらまえの陰かげの天皇てんのう 相撲すもう界かいの今こん太閤たいこう 相撲すもう界かいの代議士だいぎし
生年月日せいねんがっぴ	1909年ねん3月がつ1日にち
没ぼつ年月日ねんがっぴ	(1987-05-30) 1987年ねん5月30日にち（78歳さい没ぼつ）
出身しゅっしん	石川いしかわ県けん能美のみ郡ぐん（現げん：石川いしかわ県けん小松こまつ市し） （出生しゅっしょう地ちは東京とうきょう都と江東こうとう区く）
身長しんちょう	173cm
体重たいじゅう	110kg
BMI	36.75
所属しょぞく部屋へや	出羽海でわのうみ部屋へや
得意とくい技わざ	左ひだり四よっつ、寄より
成績せいせき
現在げんざいの番付ばんづけ	引退いんたい
最高さいこう位い	東ひがし前頭まえがしら筆頭ひっとう
生涯しょうがい戦歴せんれき	96勝しょう104敗はい47休きゅう（24場所ばしょ）
幕内まくうち戦歴せんれき	68勝しょう77敗はい47休きゅう（16場所ばしょ）
データ
初はつ土俵どひょう	1925年ねん1月がつ場所ばしょ
入幕にゅうまく	1932年ねん1月がつ場所ばしょ
引退いんたい	1940年ねん5月場所ばしょ
引退いんたい後ご	第だい4代だい日本にっぽん相撲すもう協会きょうかい理事りじ長ちょう
備考びこう
2015年ねん9月がつ2日にち現在げんざい ■テンプレート  ■プロジェクト 相撲すもう

出羽でわノ花はな 國こく市し（でわのはな くにいち、1909年ねん3月1日にち - 1987年ねん5月30日にち）は、石川いしかわ県けん能美のみ郡ぐん（現げん：石川いしかわ県けん小松こまつ市し）出身しゅっしん（出生しゅっしょう地ちは東京とうきょう都と江東こうとう区く）で出羽海でわのうみ部屋へやに所属しょぞくした大相撲おおずもう力士りきし。本名ほんみょうは市川いちかわ 國一くにいち（いちかわ くにいち）（旧姓きゅうせい：駒澤こまざわ）。

経歴けいれき

現役げんえき力士りきしとして

1909年ねん3月1日にちに東京とうきょう府ふ南みなみ葛飾かつしか郡ぐん大島おおしま町まち（現げん：東京とうきょう都と江東こうとう区く大島おおしま）で肥料ひりょう会社かいしゃを営いとなむ家いえに生うまれ、石川いしかわ県けん能美のみ郡ぐん（現げん：石川いしかわ県けん小松こまつ市し）で育そだつ。既すでに9歳さいで体重たいじゅうが60kgに達たっして怪童かいどうと話題わだいになり、実家じっかの得意とくい先さきの世話せわで出羽でわノ海部かいふ屋やを紹介しょうかいされた。毎週まいしゅう土曜日どようびには地元じもとの巡査じゅんさの迎むかえで部屋へやに行いって関取せきとりと相撲すもうを取とらせてもらったり、出羽海でわのうみによって遊あそびに連つれて行いってもらったり、部屋へやに宿泊しゅくはくする時ときは豪華ごうかな文房具ぶんぼうぐをお土産みやげに貰もらったりするなど可愛かわいがられた。

その後ご、本格ほんかく的てきに相撲すもうに取とり組くむこととなり、1925年ねん1月がつ場所ばしょで「出羽でわノ子こ」という四股しこ名めいで初はつ土俵どひょうを踏ふむ。1930年ねん5月場所ばしょに十じゅう両りょう昇進しょうしんを果はたすが、1932年ねん1月がつに勃発ぼっぱつした春秋しゅんじゅう園えん事件じけんによって、一度いちど幕下まくしたへ降格こうかくしていながら抜擢ばってきされて一気いっきに新しん入幕にゅうまくを果はたす（同期どうき入幕にゅうまくに双そう葉山はやま定次さだじがいた）。この時ときに「出羽でわノ花はな」に改名かいめいしたが、新しん入幕にゅうまくの直後ちょくごに腸ちょうチフスによって2月がつ場所ばしょ、3月がつ場所ばしょを休場きゅうじょうしたため、十じゅう両りょうに降格こうかくとなった。

チフスを完かん治なおさせて1934年ねん1月がつ場所ばしょに再さい入幕にゅうまくするが、出羽でわノ花はなの相撲すもうは正攻法せいこうほう過すぎて上位じょうい力士りきしにまるで通用つうようせず、出羽海でわのうみも「あいつ（出羽でわノ花はな）に駒こまノ里さとの出足であしでもあれば大関おおぜきになれるのに」と嘆なげいたこともあるという。1940年ねん1月がつ場所ばしょ3日にち目めの幡はた瀬川せかわ邦くに七郎しちろう戦せんで内うち掛かけを受うけて敗やぶれた際さいに右みぎ膝ひざ関節かんせつ内ない出血しゅっけつの重傷じゅうしょうを負おい、同年どうねん5月がつ場所ばしょを全休ぜんきゅうしたのを最後さいごに現役げんえきを引退いんたいした。通常つうじょう通どおり歩あるけるまでに一いち年ねんも要ようし、この怪我けがの後遺症こういしょうによって足あしが曲まがってしまい、両足りょうあしを揃そろえて立たつことが出来できなくなった。

1936年ねん5月場所ばしょでは初日しょにちに敗やぶれてから勝かち・負まけが交互こうごに続つづく「ヌケヌケ」だったことがある。この当時とうじは一いち場所ばしょ11日間にちかん興行こうぎょうのため、最終さいしゅう的てきには5勝しょう6敗はいで負まけ越こした。

親方おやかた時代じだい～蔵前くらまえ国技こくぎ館かん建設けんせつまでの苦難くなん

現役げんえき引退いんたい後ごは年寄としより・武藏川むさしがわを襲名しゅうめいし、武藏川むさしがわ喜き偉えらと名乗なのる。戦前せんぜんの巡業じゅんぎょうで満州まんしゅうへ遠征えんせいした際さいに、日本にっぽん相撲すもう協会きょうかいが勧進元かんじんもとに対たいしてい値いねをそのまま支払しはらう様子ようすを見みて愕然がくぜんとし、経済けいざい学がくや簿記ぼき・経理けいり、算盤そろばんを学まなんで協会きょうかいの財政ざいせい運営うんえいに貢献こうけんした。算盤そろばんはプライドを捨すてて幼児ようじに交まじって習ならったという。現役げんえき時代じだいは大おおきな活躍かつやくが無なかった出羽でわノ花はなだが、これ以降いこうは協会きょうかいの金庫きんこ番ばん・知恵袋ちえぶくろとしての大だい活躍かつやくを見みせることとなる。

1945年ねん8月がつに終戦しゅうせんを迎むかえた直後ちょくご、敗戦はいせんによって旧きゅう・両国りょうこく国技こくぎ館かんが接収せっしゅうされて使用しようできず、本場所ほんばしょを天候てんこうに左右さゆうされやすい野外やがいでの興行こうぎょうにせざるを得えない間あいだ、武藏川むさしがわの自宅じたくを担保たんぽにする(他たの親方おやかたも自宅じたくを担保たんぽにした者ものが数すう名めいいる)などの懸命けんめいな資金しきんの工面くめんを行おこない、その中なかから蔵前くらまえ仮設かせつ国技こくぎ館かん建設けんせつ資金しきんを捻出ひねりだした。1949年ねんには日本橋にほんばし浜町はまちょう公園こうえんに仮設かせつの国技こくぎ館かんを建設けんせつしたが、GHQから取とり壊こわし命令めいれいを受うけた武藏川むさしがわは、いったん仮設かせつ国技こくぎ館かんの外壁がいへきを剥はがして取とり壊こわしたように見みせかけ、後あとで新あたらしい外壁がいへきで覆おおって新築しんちくとい張いはる苦肉くにくの策さくを思おもいつき、実行じっこうして同年どうねん1月がつ場所ばしょ・5月場所ばしょの興行こうぎょうをやり抜ぬいた。蔵前くらまえ国技こくぎ館かんを建設けんせつする際さいには、神奈川かながわ県けん相模原さがみはら市しのアメリカ陸軍りくぐん相模さがみ総合そうごう補給ほきゅう廠しょうで眠ねむっていた旧きゅう大日本帝国だいにっぽんていこく海軍かいぐん飛行機ひこうき工場こうじょうの廃材はいざいに着目ちゃくもくし、GHQからの払はらい下さげを受うけて念願ねんがんの鉄筋てっきん鉄骨てっこつでの国技こくぎ館かん建設けんせつを果はたした。この直後ちょくごに朝鮮ちょうせん戦争せんそうによる朝鮮ちょうせん特需とくじゅで鉄てつの価格かかくが急騰きゅうとうしたため、絶妙ぜつみょうのタイミングで買かい抜ぬけたこととなった。

国会こっかい答弁とうべん、海外かいがい公演こうえんの成功せいこう

1957年ねん3月2日にち、衆議院しゅうぎいん予算よさん委員いいん会かいにおいて、公益こうえき法人ほうじんたる相撲すもう協会きょうかいのあり方かたについて疑義ぎぎが出だされ、世論せろんが喚起かんきされた。続つづく4月がつ3日にちの衆議院しゅうぎいん文教ぶんきょう委員いいん会かいでは参考さんこう人じんとして呼よばれた協会きょうかい理事りじ長ちょうである出羽海でわのうみは病気びょうき療養りょうようと称しょうして欠席けっせきし（出羽海でわのうみはその後ご5月がつ4日にちに割腹かっぷく自殺じさつ未遂みすいを図はかる騒さわぎを起おこす）、代かわって武蔵川むさしがわらが出席しゅっせきする。委員いいん会かいの冒頭ぼうとう、「相撲すもう専修せんしゅう学校がっこう」の設置せっちが依然いぜん為なされていないことに対たいする答弁とうべんはしどろもどろであったが、武蔵川むさしがわは事前じぜんに8項目こうもくにわたる改善かいぜん案あんを提示ていじしていて、その後ごの質問しつもんに対たいしてはそつなく意見いけんを述のべ、今後こんごも財団ざいだん法人ほうじんとして協会きょうかいを続つづけていく決意けついを示しめした。質疑しつぎの最後さいご、質問しつもんに立たった柳田やなぎだ秀一ひでかずは武蔵川むさしがわに対たいし「あなたの答弁とうべんを聞きいておると、同僚どうりょう諸君しょくんは大臣だいじん以上いじょうだと言いっておる。おそらく普通ふつうの人ひとで青あおいものをつけて国会こっかい議員ぎいんの前まえに参考さんこう人じんとして呼よばれますと上のぼるものです。そしていいことを言いってみたり、答弁とうべんもなかなかうまくいきませんが、あなたの答弁とうべんを聞きいてみると大臣だいじん以上いじょうです。実じつにりっぱな答弁とうべんをされておる。むしろあやまって相撲すもう界かいに入はいられたのか惜おしいくらいです。」「非常ひじょうにりっぱな、むしろ相撲すもう界かいに珍めずらしい優秀ゆうしゅうな頭脳ずのう明晰めいせきな方ほう」と述のべている。

出羽海でわのうみは1960年ねん11月に急死きゅうししたことで、年寄としより名跡みょうせきを「出羽海でわのうみ（8代だい）」に変更へんこうして部屋へやを継承けいしょうした。この際さい、先代せんだいは九重ここのえに部屋へやを継承けいしょうさせたかったと言いったようだが、現役げんえき時代じだいの最高さいこう位いが低ひくかった武藏川むさしがわが部屋へやを継承けいしょうしたことで、後ごの問題もんだいへの火種ひだねとなった。継承けいしょう直後ちょくごは佐田さだの山やま晋すすむ松まつに次つぐ関取せきとりがなかなか出でていない状況じょうきょうのため、幕下まくしたの古参こさん力士りきしに対たいして「うちは下宿げしゅく屋やじゃないんだぞ」と通達つうたつして廃業はいぎょう（リストラ）させ、その結果けっかとして北きたの富士ふじ勝昭かつあき、福ぶくの花はな孝一こういちなど数すう人にんが十じゅう両りょう昇進しょうしんを果はたした。北きたの富士ふじの著書ちょしょによると、「稽古けいこ中ちゅうに（武藏川むさしがわが）千せん円えん札さつの山やまをそばに置おいて『勝かった方ほうにやるぞ』と言いった。これで頑張がんばって稽古けいこに励はげんだ」「親方おやかたから100万まん円えん（現在げんざいの500万まん円えんに相当そうとう）ほどの借金しゃっきんをしたが、九重ここのえ部屋へやに移籍いせきする時ときに返かえしに行いったら全額ぜんがく帳消ちょうけしにしてもらった」など、先代せんだいより気前きまえの良よいところがあり、部屋へやの食事しょくじ事情じじょうも改善かいぜんされたという。その一方いっぽうで、力士りきしがタニマチに食事しょくじなどを御馳走ごちそうになることを好このましく思おもっていなかったという証言しょうげんも残のこる。

1965年ねんには、日本にっぽん相撲すもう協会きょうかいとして戦後せんご初はつの海外かいがい公演こうえんとなるソビエト連邦れんぽう公演こうえんの団長だんちょうに就任しゅうにんし、モスクワにあるボリショイ劇場げきじょうとハバロフスクのレーニンスポーツ宮殿きゅうでんでの興行こうぎょうを成功せいこうさせた。

明晰めいせきな頭脳ずのうと雄弁ゆうべんぶりから、「角界かくかいの代議士だいぎし」と言いわれることもあり、また一方いっぽうでは「力士りきしになっていなかったら、大だい実業じつぎょう家かになっていたのではないか」という声こえもあった。これによって生うまれた才覚さいかくを勤勉きんべんと努力どりょくにより開花かいかさせ、大相撲おおずもうの為ために余あますところなく発揮はっきした。

九重ここのえ独立どくりつ問題もんだい

1961年ねん夏場所なつばしょ優勝ゆうしょうの佐田さだの山やまに、い酒わいざけを振ふる舞まう出羽海でわのうみ（出羽でわノ花はな）

ソビエト連邦れんぽう公演こうえんからの帰国きこく後ご、長女ちょうじょ・恵津子えつこが佐田さだの山やま晋すすむ松まつと結婚けっこんした。そして佐田さだの山やまを出羽海でわのうみ部屋へやの後継こうけい者しゃに指名しめいし、土地とち建物たてものの名義めいぎも全すべて「市川いちかわ 晋すすむ松まつ」（佐田さだの山やま）に書かき換かえた。これは周囲しゅういの「今度こんどこそ後継こうけい者しゃは九重ここのえだろう」という予想よそうを完全かんぜんに覆くつがえすものとなった。これに対たいし、1967年ねん1月がつ場所ばしょの直前ちょくぜんに、横綱よこづなへ昇進しょうしんしていた佐田さだの山やま晋すすむ松まつへの後継こうけい決定けっていを不服ふふくとして、九重ここのえが弟子でし13名めいを連つれての独立どくりつを申もうし出でた。出羽海でわのうみは悩なやんだあげく即答そくとうを避さけ、1月がつ場所ばしょ終了しゅうりょう後ごの回答かいとうを約束やくそくした。1月場所ばしょの終了しゅうりょう後ごの1月がつ31日にち、出羽海でわのうみ一門いちもんの全ぜん年寄としよりを出羽海でわのうみ部屋へや大広間おおひろまに呼よび集あつめ、九重ここのえ部屋へやの創設そうせつは「出羽海でわのうみ一門いちもんからの破門はもん」を条件じょうけんに認みとめると回答かいとう、北きたの富士ふじ勝昭かつあきを筆頭ひっとうに10名めい（3名めいは親おやによる反対はんたいを理由りゆうに認みとめず）の現役げんえき力士りきしが高砂たかさご一門いちもんへ移籍いせきした。

破門はもんとする理由りゆうは出羽海でわのうみ部屋へや中興ちゅうこうの祖そにして、一門いちもんの創設そうせつ者しゃである常陸山ひたちやま谷右衛門たにえもんの「不ふ許もと分家ぶんけ独立どくりつ」の不文ふぶん律りつが背景はいけいにあることは間違まちがいないが、破門はもんまでして独立どくりつを許ゆるした経緯けいいについては諸説しょせつあり、「九重ここのえの希望きぼうは叶かなえたいが、一門いちもんの掟おきてには背そむけない中なかでの苦渋くじゅうの決断けつだん」「北きたの富士ふじが移籍いせきすることで対たい佐田さだの山やま戦せんが可能かのうとなり、好こう取組とりくみを増ふやすため」といった好意こうい的てきな見方みかたがあるが、その一方いっぽうで「先代せんだいから『出羽海でわのうみ』を継承けいしょうした際さいに『独立どくりつしたい者ものはいないか』と言いったのに不服ふふくのある者ものを一門いちもんから追おい出だす狙ねらいがある」といった否定ひてい的てきな見方みかたもあった。さらに、北きたの富士ふじに対たいしては「本当ほんとうに（移籍いせきで）いいのか？残のこってもいいんだぞ」と言いったとも伝つたわり、これが事実じじつなら「対たい佐田さだの山やま戦せんを可能かのうにして好こう取組とりくみを増ふやす」という目的もくてきは否定ひていされることとなる。先代せんだい・出羽海でわのうみの遺族いぞくは九重ここのえを支持しじしていたことから、それに影響えいきょうを受うけたのは間違まちがいないと思おもわれる。なお、一門いちもんからの破門はもんを条件じょうけんに独立どくりつを許ゆるされた例れいとしては、立浪たつなみ一門いちもんへ移籍いせきした武隈たけくま部屋へやが存在そんざいするが、今回こんかいの九重ここのえ独立どくりつ騒動そうどうとの関連かんれんは不明ふめいである。

相撲すもう協会きょうかい理事りじ長ちょう就任しゅうにん

1968年ねん3月がつ場所ばしょを最後さいごに佐田さだの山やま晋すすむ松まつが引退いんたいすると、出羽海でわのうみの名跡みょうせきを譲ゆずって武蔵川むさしがわ（こちらの「蔵くら」は現在げんざいの字じ）に戻もどした。また、同年どうねん12月16日にちに時津風ときつかぜ理事りじ長ちょうが死去しきょすると、死去しきょ翌日よくじつに後任こうにんの理事りじ長ちょうに就任しゅうにんした。理事りじ長ちょう就任しゅうにん後ごは日本にっぽん相撲すもう協会きょうかいの近代きんだい化かに尽つくし、1969年ねん5月場所ばしょから勝負しょうぶ判定はんていの参考さんこうとしてビデオ映像えいぞうの導入どうにゅうを決断けつだんしたほか、1971年ねんには蔵前くらまえ国技こくぎ館かん改装かいそうの竣工しゅんこうにこぎ着つけた。また、文部省もんぶしょうから中学生ちゅうがくせい力士りきしの学校がっこう欠席けっせき問題もんだいが指摘してきされたのを機きに、1972年ねん1月がつ場所ばしょから中学校ちゅうがっこう卒業そつぎょう前まえの入門にゅうもんを禁止きんしし、義務ぎむ教育きょういくを修了しゅうりょうさせることを最さい優先ゆうせんとした。

この時期じきの日本にっぽん相撲すもう協会きょうかいは土俵どひょうの内外ないがいで大おおきな動うごきが相次あいつぎ、本場所ほんばしょでは大鵬たいほう幸喜ゆきよしの現役げんえき引退いんたい、玉たまの海うみ正洋まさひろの横綱よこづな昇進しょうしんと急逝きゅうせいを経へて、元もと弟子でし・北きたの富士ふじ勝昭かつあき、琴きん櫻さくら傑すぐる將しょうの横綱よこづな昇進しょうしん、そして輪島わじま大まさる士し・北きたの湖うみ敏さとし満みつるの台頭たいとうを導みちびいたほか、1972年ねんには外国がいこく（ハワイ州しゅう出身しゅっしん）力士りきしである高見山たかみやま大だい五郎ごろうが幕内まくうち最高さいこう優勝ゆうしょうを果はたした。海外かいがい公演こうえんも、1973年ねんには前年ぜんねんの国交こっこう回復かいふくを受うけて中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく公演こうえん（北京ぺきん市しと上海しゃんはい市し）を実現じつげんさせ、大相撲おおずもうの国際こくさい化かを推進すいしんした。このような矢継やつぎ早ばやの行動こうどうによる大相撲おおずもうの活性かっせい化かが、後ごの両国りょうこく国技こくぎ館かん建設けんせつにつながる大相撲おおずもう人気にんきの隆盛りゅうせいの礎いしずえとなる。

一方いっぽうで、相撲すもう茶屋ちゃや問題もんだいの改革かいかくについて、1957年ねんの国会こっかい答弁とうべんでは「熱意ねついを持もっております」と述のべたものの本質ほんしつ的てきな改善かいぜんには至いたらなかった。国技こくぎ館かんサービス株式会社かぶしきがいしゃの下したで最大さいだい規模きぼの相撲すもう茶屋ちゃや「四よんツ万まん｣（相撲すもう案内あんない所しょ十じゅう二に番ばん）を経営けいえいする市川いちかわ家かと養子ようし縁組えんぐみを行おこなったため、多額たがくの権利けんり金きん（1957年ねんの国会こっかい質疑しつぎで示しめされた金額きんがくとして、年寄としより株かぶが120万まん円えんであるのに対たいし茶屋ちゃやの権利けんり金きんは700万まん円えんとされ、天竜てんりゅうから「利益りえきをむさぼっておる」と評ひょうされた）が絡からむ茶屋ちゃや問題もんだいには手てを付つけられなかった。自身じしんと養子ようし縁組えんぐみを行おこなった佐田さだの山やま晋すすむ松まつも、後のちに就任しゅうにんする理事りじ長ちょう時代じだいに年寄としより株かぶ改革かいかくを提言ていげんした時ときは、相撲すもう茶屋ちゃやによる既得きとく権益けんえきで退職たいしょく後ごの生活せいかつが保障ほしょうされている点てんを角界かくかい内部ないぶ、マスコミ、好角家こうかくかなどから難詰なんきつされた。

1974年ねんに理事りじ長ちょうを春日野かすがのへ譲ゆずり、自身じしんは相談役そうだんやくとなった。同年どうねん2月がつ28日にち付づけで停年ていねんを迎むかえた後のちも引ひき続つづき相談役そうだんやくを務つとめ、1976年ねん1月がつに日本にっぽん相撲すもう協会きょうかいを退職たいしょくした。同年どうねん2月がつからは日本にっぽん相撲すもう協会きょうかい嘱託しょくたくとして相撲すもう博物館はくぶつかん館長かんちょうを務つとめ、1987年ねん5月30日にちに死去しきょ、78歳さい没ぼつ。死去しきょ後ご、日本にっぽん相撲すもう協会きょうかいは功績こうせきを称となえて同年どうねん6月がつ2日にちに協会きょうかい葬そうを行おこない、同年どうねん6月がつ9日にちに正せい五ご位い勲くん三さん等とう瑞宝章ずいほうしょうが追贈ついぞうされた。

人物じんぶつ

色白いろじろの人形にんぎょうのような体格たいかくで人気にんきがあり、生来せいらいの器用きようさとちゃんこ番ばんを散々さんざんやらされたので料理りょうりが上手うまく、自宅じたくでフグを捌さばいて家族かぞくや来客らいきゃくに振ふる舞まったとされる。また着物きものに凝こり、普段ふだんも大島紬おおしまつむぎを愛用あいようした。

現役げんえき時代じだいはあまり活躍かつやくできなかったが、その真価しんかは力士りきし引退いんたい後ごに発揮はっきされた。上記じょうきで述のべたように日本にっぽん相撲すもう協会きょうかいの理事りじとして協会きょうかい運営うんえいに尽力じんりょくし、蔵前くらまえ国技こくぎ館かんの建設けんせつの立役者たてやくしゃとなった。その後ご、日本にっぽん相撲すもう協会きょうかいの理事りじ長ちょうに就任しゅうにんし、大相撲おおずもうと協会きょうかいの近代きんだい化か・国際こくさい化かに手腕しゅわんを振ふるい、その功績こうせきはいまでも高たかく評価ひょうかされている。理事りじ長ちょう職しょくは２代目だいめの出羽海でわのうみから元もと力士りきしが務つとめるようになっていたが、現在げんざいまで彼かれ以外いがいはすべて元もと横綱よこづなか元もと大関おおぜきであり、平幕ひらまくどまりでありながら角界かくかいのトップに昇のぼりつめたことから、政界せいかいの田中たなか角栄かくえいに擬ぎされることもある。田中たなか内閣ないかくによる日にち中ちゅう国交こっこう回復かいふくの翌年よくねんに中国ちゅうごく公演こうえんを実現じつげんさせ、理事りじ長ちょうを退任たいにんした1974年ねんには田中たなかも首相しゅしょうを辞任じにんしている。

エピソード

• 初代しょだい両国りょうこく国技こくぎ館かんを博物館はくぶつかん明治めいじ村むらに移築いちくすることを希望きぼうしていたが、「大おおき過すぎて運はこべない」と言いわれた時ときには落胆らくたんしていた。
• 現役げんえき時代じだいは”ゆるふんの出羽でわノ花はな”と評ひょうされるほど締しめ込こみの緩ゆるい力士りきしであったが、引退いんたい後ごは稽古けいこ場じょうで力士りきしたちに廻まわしをしっかり締しめるように指導しどうしていた。
• 親方おやかた時代じだいの名前なまえ「喜き偉えら」の「偉えら」は、その後ごの武蔵川むさしがわにも引ひき継つがれている（三重みえノ海うみ剛司たけしは「晃あきら偉えら」、武蔵丸むさしまる光洋みつひろは「光ひかり偉えら」）。
• 春日野かすがの（元もと横綱よこづな・栃とち錦にしき）と共ともに、部屋へや別べつ総そう当あたり制せいには反対はんたいであった。部屋へや別べつ総そう当あたり制せいの導入どうにゅうが論ろんじられていた1964年ねんごろの出羽海でわのうみ部屋へやと春日野かすがの部屋へやは本家ほんけ・分家ぶんけの関係かんけいとして普段ふだんからともに稽古けいこを行おこなう間柄あいだがらであり、春日野かすがのも「佐田さだの山やまがこの一番いちばんで横綱よこづなになろうとしているとき、ウチの栃とちノ海うみや栃とち光ひかりが、人情にんじょうとして力ちからいっぱいの相撲すもうが取とれますか？見みる人ひとはそういう相撲すもうを八百長やおちょうだと言いいますよ」と話はなしていた。

主おもな成績せいせき

• 通算つうさん成績せいせき：96勝しょう104敗はい47休きゅう 勝率しょうりつ.480
• 幕内まくうち成績せいせき：68勝しょう77敗はい47休きゅう 勝率しょうりつ.469
• 現役げんえき在位ざいい：24場所ばしょ
• 幕内まくうち在位ざいい：16場所ばしょ

場所ばしょ別べつ成績せいせき

出羽でわノ花はな 國こく市し

	春場所はるばしょ	三さん月がつ場所ばしょ	夏場所なつばしょ	秋場所あきばしょ
1925年ねん （大正たいしょう14年ねん）	（前ぜん相撲すもう）	x	新しん序じょ 0–2	x
1926年ねん （大正たいしょう15年ねん）	東ひがし序ノ口じょのくち12枚まい目め 2–3	x	西にし序ノ口じょのくち5枚まい目め 4–2	x
1927年ねん （昭和しょうわ2年ねん）	東ひがし序じょ二に段だん29枚まい目め 4–2	東ひがし序じょ二に段だん29枚まい目め 5–1	西にし三さん段だん目め49枚まい目め 3–3	西にし三さん段だん目め31枚まい目め 3–3
1928年ねん （昭和しょうわ3年ねん）	西にし三さん段だん目め37枚まい目め 2–4	西にし三さん段だん目め17枚まい目め 3–3	東ひがし三さん段だん目め41枚まい目め 4–2	東ひがし三さん段だん目め41枚まい目め 3–3
1929年ねん （昭和しょうわ4年ねん）	西にし三さん段だん目め12枚まい目め 4–2	西にし三さん段だん目め12枚まい目め 4–2	西にし幕下まくした25枚まい目め 3–3	西にし幕下まくした25枚まい目め 4–2
1930年ねん （昭和しょうわ5年ねん）	西にし幕下まくした11枚まい目め 6–0	西にし幕下まくした11枚まい目め 3–3	西にし十じゅう両りょう9枚まい目め 2–9	西にし十じゅう両りょう9枚まい目め 5–6
1931年ねん （昭和しょうわ6年ねん）	東ひがし幕下まくした3枚まい目め 3–3	東ひがし幕下まくした3枚まい目め 3–3	東ひがし幕下まくした5枚まい目め 5–1	東ひがし幕下まくした5枚まい目め 2–4
1932年ねん （昭和しょうわ7年ねん）	東ひがし前頭まえがしら5枚まい目め 0–0–8	東ひがし前頭まえがしら5枚まい目め 0–0–10	東ひがし十じゅう両りょう5枚まい目め 0–0–11	東ひがし十じゅう両りょう5枚まい目め 6–5
1933年ねん （昭和しょうわ8年ねん）	西にし十じゅう両りょう11枚まい目め 8–3	x	東ひがし十じゅう両りょう3枚まい目め 7–4	x
1934年ねん （昭和しょうわ9年ねん）	西前にしまえ頭あたま14枚まい目め 6–5	x	東ひがし前頭まえがしら10枚まい目め 6–5	x
1935年ねん （昭和しょうわ10年ねん）	東ひがし前頭まえがしら7枚まい目め 6–5	x	西前にしまえ頭あたま4枚まい目め 7–4	x
1936年ねん （昭和しょうわ11年ねん）	東ひがし前頭まえがしら筆頭ひっとう 2–9	x	東ひがし前頭まえがしら9枚まい目め 5–6	x
1937年ねん （昭和しょうわ12年ねん）	東ひがし前頭まえがしら10枚まい目め 5–6	x	西前にしまえ頭あたま13枚まい目め 6–4–3	x
1938年ねん （昭和しょうわ13年ねん）	西前にしまえ頭あたま9枚まい目め 7–6	x	東ひがし前頭まえがしら8枚まい目め 5–8	x
1939年ねん （昭和しょうわ14年ねん）	東ひがし前頭まえがしら13枚まい目め 7–6	x	西前にしまえ頭あたま10枚まい目め 6–9	x
1940年ねん （昭和しょうわ15年ねん）	西前にしまえ頭あたま12枚まい目め 0–4–11	x	西前にしまえ頭あたま19枚まい目め 引退いんたい 0–0–15	x
各かく欄らんの数字すうじは、「勝かち-負まけ-休場きゅうじょう」を示しめす。    優勝ゆうしょう 引退いんたい 休場きゅうじょう 十じゅう両りょう 幕下まくした 三さん賞しょう：敢=敢闘かんとう賞しょう、殊こと=殊勲賞しゅくんしょう、技わざ=技能ぎのう賞しょう     その他た：★=金星かなぼし 番付ばんづけ階級かいきゅう：幕内まくうち - 十じゅう両りょう - 幕下まくした - 三さん段だん目め - 序じょ二に段だん - 序ノ口じょのくち 幕内まくうち序列じょれつ：横綱よこづな - 大関おおぜき - 関脇せきわけ - 小結こむすび - 前頭まえがしら（「#数字すうじ」は各位かくい内ないの序列じょれつ）

• 1932年ねん1月がつ番付ばんづけでは幕下まくした西にし筆頭ひっとう

著書ちょしょ

• 「武蔵川むさしがわ回顧かいこ録ろく」ベべースボすぼール・マガジン社るまがじんしゃ、1974年ねん発行はっこう

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