協奏曲きょうそうきょく

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協奏曲きょうそうきょく（きょうそうきょく、伊い: 英えい: 仏ふつ: concerto、独どく: Konzert）は、今日きょうでは主しゅとして一ひとつまたは複数ふくすうの独奏どくそう楽器がっき（群ぐん）と管弦楽かんげんがくによって演奏えんそうされる多た楽章がくしょうからなる楽曲がっきょくを指さす。イタリア語ごのままコンチェルトともいう。

概要がいよう

古典こてん派は以降いこうの独奏どくそう協奏曲きょうそうきょくは原則げんそくとして3つの楽章がくしょうによって構成こうせいされる。交響曲こうきょうきょく同様どうように、第だい1楽章がくしょうは基本きほん的てきにソナタ形式けいしきであり、それに加くわえて、終おわり楽章がくしょうがソナタ形式けいしきであることも多おおいが、ソナタ形式けいしきとしての展開てんかいが凝縮ぎょうしゅくされているよりも、独奏どくそう者しゃの技巧ぎこうを聴衆ちょうしゅうに示しめすための遊あそびの多おおい楽らく句くが諸処しょしょに見みられる傾向けいこうが強つよく、独奏どくそう者しゃとの様々さまざまなやりとりが盛もり込こまれる。ロマン派は音楽おんがく以降いこうは協奏曲きょうそうきょくにおいても自由じゆうな楽章がくしょう構成こうせいが見みられるようになり、リストのピアノ協奏曲きょうそうきょく第だい2番ばんのように楽章がくしょうが1つしかないものや、ブラームスのピアノ協奏曲きょうそうきょく第だい2番ばんのように楽章がくしょうが4つある大だい規模きぼなものもある。

作品さくひん名めいの付つけ方かたや呼よび方かたには、大おおきく分わけて2方式ほうしきある。例たとえばピアノ・トリオを「ピアノ三さん重奏じゅうそう曲きょく」と呼よぶ場合ばあいと「ヴァイオリンとチェロ、ピアノのための三重奏さんじゅうそう曲きょく」と呼よぶこともあるように、「○○（独奏どくそう楽器がっき名めい）協奏曲きょうそうきょく」と呼よぶ場合ばあい以外いがいに、「○○と管弦楽かんげんがく・弦楽げんがく・管かん楽らくのための協奏曲きょうそうきょく」と呼よぶことも多おおい。

また、単一たんいつ楽章がくしょうのものが多おおいが小規模しょうきぼな協奏曲きょうそうきょくを、コンチェルティーノ（伊い: concertino、小しょう協奏曲きょうそうきょく）と呼よぶ。

古典こてん派はの時代じだいより劇場げきじょうには優すぐれた管楽器かんがっき奏者そうしゃが多おおかったため、管楽器かんがっきによる協奏曲きょうそうきょくはオペラの作曲さっきょく家かによるものが多おおい。^{[要よう出典しゅってん]}

独奏どくそうと管弦楽かんげんがくの組くみ合あわせによる作品さくひん全体ぜんたいを、広義こうぎに協奏曲きょうそうきょくと呼よぶこともあるが、狭義きょうぎの協奏曲きょうそうきょくに含ふくまれないものは「協奏きょうそう的てき作品さくひん」と呼よぶ場合ばあいもある。ベートーヴェンのロマンス第だい2番ばん、サラサーテの『ツィゴイネルワイゼン』（いずれもヴァイオリンと管弦楽かんげんがくのための小品しょうひん）など有名ゆうめいな楽曲がっきょくが多数たすうある。詳細しょうさいは「カテゴリ：ピアノ協奏曲きょうそうきょく」など、各かくカテゴリページを参照さんしょう。

歴史れきし

初期しょき

16世紀せいき半なかばにイタリアでコンチェルトと呼よばれる曲きょくがあらわれている。これは、モテットなど声楽せいがく曲きょくの演奏えんそうに際さいし、主しゅとしてオルガンなどの楽器がっきがともに演奏えんそうする演奏えんそう様式ようしきを指さしていた。このような曲きょくの様式ようしきとしてコンチェルタート様式ようしきが生うまれ、様々さまざまな楽曲がっきょくに応用おうようされた。楽器がっき演奏えんそうの部分ぶぶんの重要じゅうよう性せいが増ましてきた17世紀せいき初頭しょとうには、楽器がっきだけの演奏えんそうにも「ソナタ・コンチェルタータ」などの名なで、通つう奏そう低音ていおん付つき器楽きがく曲きょくとして「コンチェルト」の名なが使つかわれるようになり、後ごの器楽きがく合奏がっそう協奏曲きょうそうきょくが生うまれる背景はいけいとなった。このような初期しょきのコンチェルト、特とくに声楽せいがくコンチェルトは、のちのいわゆる協奏曲きょうそうきょくと区別くべつするために、コンチェルトの語かたりを訳やくさずに用もちいる。宗教しゅうきょうコンチェルトなどと称しょうされる楽曲がっきょくがこれに相当そうとうする。詳細しょうさいはコンチェルタートを参照さんしょう。

バロック時代じだい

バロック音楽おんがく後期こうきの17世紀せいき末すえには、数個すうこの独奏どくそう楽器がっきと弦楽げんがく合奏がっそうによる合奏がっそう協奏曲きょうそうきょく（コンチェルト・グロッソ）の形態けいたいが、アレッサンドロ・ストラデッラやアルカンジェロ・コレッリらによって作つくられた。これは、ヴィヴァルディ、ヘンデル、J.S.バッハのブランデンブルク協奏曲きょうそうきょくなどによって発展はってんさせられた。多おおくリトルネロ形式けいしきで書かかれた。独奏どくそうと合奏がっそう群ぐんが対比たいひされる独奏どくそう協奏曲きょうそうきょくも合奏がっそう協奏曲きょうそうきょくと同時どうじに発展はってんし^[1]、ヴィヴァルディの『四季しき』やバッハのヴァイオリン協奏曲きょうそうきょく第だい2番ばんなどのヴァイオリン協奏曲きょうそうきょくや、バッハのチェンバロ協奏曲きょうそうきょくやヘンデルのオルガン協奏曲きょうそうきょくなどが書かかれ、ヴィヴァルディの頃ころから「急きゅう―緩なる―急きゅう」の3楽章がくしょう制せいが確立かくりつされた。バッハの「イタリア協奏曲きょうそうきょく BWV971」はチェンバロ独奏どくそうのために書かかれている。

古典こてん派は時代じだい

古典こてん派はの時代じだい、合奏がっそう協奏曲きょうそうきょくは下火したびとなり、協奏曲きょうそうきょくは独奏どくそう協奏曲きょうそうきょくが主流しゅりゅうとなった。円熟えんじゅく期きのハイドンや、モーツァルトの頃ころ確立かくりつされた古典こてん派は協奏曲きょうそうきょくの形式けいしきでは、第だい1楽章がくしょうは交響曲こうきょうきょくと同様どうようソナタ形式けいしきで作つくられたが、独奏どくそう協奏曲きょうそうきょくでは次つぎのような特徴とくちょうを持もつ。まず、オーケストラのみで第だい1主題しゅだいと第だい2主題しゅだいが共ともに主調しゅちょうで提示ていじされ、この提示ていじ部ぶが反復はんぷくされる際さいにはじめて独奏どくそう楽器がっきが加くわわる。独奏どくそう楽器がっきの加くわわった提示ていじ部ぶでは基本きほん通どおり、長調ちょうちょうの曲きょくでは第だい2主題しゅだいが属ぞく調ちょうで、短調たんちょうの曲きょくでは平行へいこう長調ちょうちょうで現あらわれる。また、再現さいげん部ぶの後のちのコーダでは、独奏どくそう楽器がっきが伴奏ばんそう無なしで即興そっきょうで音楽おんがくを奏かなでるカデンツァ（伊い: cadenza、独どく: Kadenz）が取とり入いれられるようになった。カデンツァでは独奏どくそう者しゃは演奏えんそう技巧ぎこうを凝こらして「見みせ場ば」を作つくり、属ぞく七ななの和音わおんを合図あいずにオーケストラが終結しゅうけつ部ぶに入はいる。カデンツァはまた終おわり楽章がくしょうでも入はいることがある。

第だい2楽章がくしょうは複ふく合あい三さん部ぶ形式けいしきや時ときに変奏曲へんそうきょく形式けいしき、第だい3楽章がくしょうはロンド形式けいしきあるいはロンドソナタ形式けいしきで書かかれることが多おおかった。

古典こてん派はの作曲さっきょく家かにとって協奏曲きょうそうきょくは主要しゅような活動かつどう分野ぶんやであった。作曲さっきょくと演奏えんそうの両方りょうほうをこなす音楽家おんがくかが多おおかったこの時代じだいに、特とくにピアノ協奏曲きょうそうきょくの初演しょえんは作曲さっきょく者しゃが独奏どくそう楽器がっきを受うけ持もって行おこなわれることが意図いとされたためでもある。モーツァルトは27曲きょくのピアノ協奏曲きょうそうきょくと5曲きょくのヴァイオリン協奏曲きょうそうきょくを、ベートーヴェンは5曲きょくのピアノ協奏曲きょうそうきょくを残のこしている。

ロマン派は

ロマン派はの時代じだいになると、より自由じゆうな形式けいしきになっていった。一方いっぽうで、18世紀せいき中頃なかごろまではテレマン、ヴィヴァルディ、ハイドン、モーツァルトなどがさまざまな楽器がっきのために協奏曲きょうそうきょくを作曲さっきょくしたものの、ロマン派はの時代じだいには名めい技わざ性せいへの関心かんしんの高たかまりから、必然ひつぜん的てきにピアノ協奏曲きょうそうきょくとヴァイオリン協奏曲きょうそうきょくに創作そうさくが集中しゅうちゅうするようになった。これらの楽器がっきほど、高度こうどな表現ひょうげん力りょくや優秀ゆうしゅうな演奏えんそう家かに恵めぐまれなかった他ほかの楽器がっきには、協奏曲きょうそうきょくが作つくられることはあまりなかった。また標題ひょうだい音楽おんがくが盛さかんになった時代じだいでも協奏曲きょうそうきょくが標題ひょうだいを持もつことは滅多めったになかった。

ベルリオーズの交響こうきょう曲きょく「イタリアのハロルド」はヴィオラ協奏曲きょうそうきょくの一種いっしゅ、ダンディの「フランス山人さんじんの歌うたによる交響曲こうきょうきょく」はピアノ協奏曲きょうそうきょくの一種いっしゅと考かんがえられるなど、境界きょうかい的てきな作品さくひんもある。なお、ラロの「スペイン交響曲こうきょうきょく」は、形式けいしきこそ変則へんそく的てきであるが事実じじつ上じょうヴァイオリン協奏曲きょうそうきょくである。

ピアノ1台だいで協奏曲きょうそうきょく的てきな効果こうかを出だそうと試こころみた作曲さっきょく家かも現あらわれた。シューマンの「管弦楽かんげんがくのない協奏曲きょうそうきょく」（ピアノソナタ第だい3番ばん op.14の初版しょはん時じの題名だいめい）やアルカンの「ピアノ独奏どくそうのための協奏曲きょうそうきょく」（短調たんちょうによる12の練習れんしゅう曲きょく op.39より第だい8 - 10曲きょく）などである。この試こころみは20世紀せいきになって再さい評価ひょうかされ、マイケル・フィニスィーなどが復活ふっかつさせた。

多様たよう化かした協奏曲きょうそうきょく

20世紀せいきになると、演奏えんそう技法ぎほうや楽器がっきの改良かいりょうによって楽器がっきの表現ひょうげん力りょくが豊ゆたかになり、いろいろな楽器がっきのための協奏曲きょうそうきょくが盛さかんに作曲さっきょくされるようになった。打楽器だがっきやコントラバスのように、独奏どくそう楽器がっきとして用もちいられることが多おおくない楽器がっきにも、あるいはギターやサクソフォーンのようにオーケストラでほとんど用もちいられることのない楽器がっきにも、光ひかりが当あたるようになる。またグリエールのように、独奏どくそう楽器がっきの代かわりに声楽せいがくを用もちいる者もの（コロラトゥーラ・ソプラノ協奏曲きょうそうきょく）などがあり、その外そと、笙しょう(Cheng)、琵琶びわ(Pipa)、三味線しゃみせん、シタール、サロード、ガムラン、バンジョー、アフリカの太鼓たいこなどの世界せかい各地かくちの民族みんぞく楽器がっきや、近代きんだい以降いこうに発明はつめいされた新あたらしい楽器がっき（オンド・マルトノ、エレクトリック・ギター、ウォーター・パーカッションなど）を使つかったものも生うまれてくる。

更さらに、伴奏ばんそうの面めんでもジャズ・ビッグ・バンドによる伴奏ばんそう、吹奏楽すいそうがくによる伴奏ばんそう、弦楽げんがく合奏がっそうによる伴奏ばんそう、室内しつないアンサンブルによる伴奏ばんそうなどさまざまなものがある。日本にっぽんの一部いちぶの作曲さっきょく家かのように、和楽わらく器きのみ（つまり独奏どくそう和楽わらく器きと和楽わらく器き群ぐん）による協奏曲きょうそうきょくを手てがける者ものも現あらわれた。

オーケストラの中なかで個別こべつにさまざまな楽器がっきが活躍かつやくする管弦楽かんげんがくのための協奏曲きょうそうきょくというジャンルが、ヒンデミットによって生うみ出だされたが、これはバロック時代じだいの合奏がっそう協奏曲きょうそうきょくを現代げんだい管弦楽かんげんがくに蘇よみがえらせたものだといえる。後のちにバルトーク、コダーイ、ルトスワフスキらによって一大いちだい分野ぶんやに発展はってんした。

代表だいひょう的てき作品さくひん

Wikibooksの鑑賞かんしょうの手引てびきを参照さんしょう。

メディア

Vivaldi Spring mvt 1: Allegro

アントニオ・ヴィヴァルディの「四季しき」から。John Harrison, Violin
うまく聞きけない場合ばあいは、サウンド再生さいせいのヒントをご覧らんください。

主おもな協奏曲きょうそうきょくの作曲さっきょく家か

バロック時代じだい

コレッリ - 作品さくひん6『コンチェルト・グロッソ集しゅう』（1,712年ねん献呈けんてい、1714年ねん出版しゅっぱん）　
トレッリ - 作品さくひん６『4声こえのヴァイオリンのための協奏曲きょうそうきょく』（1698年ねん）
ヴィヴァルディ - 協奏曲きょうそうきょく　作品さくひん３『調和ちょうわの霊感れいかん』、作品さくひん８『和声わせいと創意そういの試こころみ』（『四季しき』を含ふくむ）、作品さくひん９『ラ・チェトラ』、作品さくひん10『フルート協奏曲きょうそうきょく集しゅう』（「海うみの嵐あらし」「夜よる」「ごしきひわ」を含ふくむ全ぜん6曲きょく）、マンドリン協奏曲きょうそうきょく、ヴィオラ・ダモーレ協奏曲きょうそうきょくなど
ヘンデル - ハープ協奏曲きょうそうきょく、オルガン協奏曲きょうそうきょく(作品さくひん4、作品さくひん7)
J・S・バッハ - ブランデンブルク協奏曲きょうそうきょく（6曲きょく）、ヴァイオリン協奏曲きょうそうきょく（2曲きょくが現存げんそん）、チェンバロ協奏曲きょうそうきょく(14曲きょく)、2つのヴァイオリンのための協奏曲きょうそうきょくなど
テレマン - 合奏がっそう協奏曲きょうそうきょく、オーボエ協奏曲きょうそうきょく、ヴィオラ協奏曲きょうそうきょくなど多数たすう

現代げんだい

ピアソラ - バンドネオン協奏曲きょうそうきょく
リゲティ - チェロ協奏曲きょうそうきょく、室内しつない協奏曲きょうそうきょく（13奏者そうしゃのための）、フルート・オーボエ二に重じゅう協奏曲きょうそうきょく、ピアノ協奏曲きょうそうきょく、ヴァイオリン協奏曲きょうそうきょく
武満たけみつ徹とおる - 『ノヴェンバー・ステップス』（尺八しゃくはちと琵琶びわの二に重じゅう協奏曲きょうそうきょく）、『遠とおい呼よび声ごえの彼方かなたへ!』（ヴァイオリン協奏曲きょうそうきょく)、『ア・ストリング・アラウンド・オータム』（ヴィオラ協奏曲きょうそうきょく）
北爪きたづめ道夫みちお - クラリネット協奏曲きょうそうきょく、チェロ協奏曲きょうそうきょく、シタール協奏曲きょうそうきょく《誕生たんじょう》
シャンカル - シタール協奏曲きょうそうきょく（2曲きょく）
尹いん伊い桑くわ - フルート協奏曲きょうそうきょく
シュニトケ - ヴァイオリン協奏曲きょうそうきょく（4曲きょく）、ヴィオラ協奏曲きょうそうきょく、チェロ協奏曲きょうそうきょく（2曲きょく）、合奏がっそう協奏曲きょうそうきょく（6曲きょく）他た

出典しゅってん

^ ウルリヒ・ミヒェルス編へん『図解ずかい音楽おんがく事典じてん』角すみ倉くら一朗いちろう日本語にほんご版ばん監修かんしゅう、白水しろみず社しゃ、1989年ねん、ISBN 4-560-03686-1、123頁ぺーじ。

[1] ウルリヒ・ミヒェルス編へん『図解ずかい音楽おんがく事典じてん』角すみ倉くら一朗いちろう日本語にほんご版ばん監修かんしゅう、白水しろみず社しゃ、1989年ねん、ISBN 4-560-03686-1、123頁ぺーじ。

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表ひょう話はなし編へん歴れき協奏曲きょうそうきょく
種類しゅるい	コンチェルティーノ - コンツェルトシュテュック - コンチェルト・グロッソ（合奏がっそう協奏曲きょうそうきょく） - 協奏きょうそう交響曲こうきょうきょく - 管弦楽かんげんがくのための協奏曲きょうそうきょく - リピエーノ協奏曲きょうそうきょく（英語えいご版ばん） - 独奏どくそう協奏曲きょうそうきょく（英語えいご版ばん） - 合唱がっしょう聖歌せいかコンチェルト - 学生がくせいのための協奏曲きょうそうきょく
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