反乱はんらん

反乱はんらん・叛乱はんらん（はんらん、英語えいご: rebellion、insurgency、uprising）とは、国家こっか等ひとしの支配しはい者しゃに対たいして被ひ支配しはい層そうが個人こじんで、もしくは徒党ととうを組くみ、暴力ぼうりょく的てき・破壊はかい的てき・示威じい的てき行動こうどうによって何なんらかの不満ふまんを表明ひょうめいし、その不満ふまんの原因げんいん解決かいけつを迫せまり、あるいは被ひ支配しはい層そうみずからの手てで不満ふまんの原因げんいんを解決かいけつしようとする行為こういである。

また、歴史れきしの中なかでこの行為こういの際さいに陣営じんえいの旗はたが必かならず掲かかげられており、この旗はたが「反旗はんき」と呼よばれたことや、その旗はたが風ふうになびいている様子ようすから「反旗はんきを翻ひるがえす」という語かたりが生うまれたともされている^[1]。

概要がいよう[編集へんしゅう]

国家こっか的てき規模きぼでなくとも、軍隊ぐんたいの構成こうせい員いんや船ふねの乗組のりくみ員いんなどが共謀きょうぼうして公然こうぜんと上官じょうかん等とうの権威けんいに対抗たいこうする場合ばあいも反乱はんらんという。この場合ばあいの反乱はんらんには、英語えいごでは「mutiny」の語かたりが充あてられる。

なお、この語かたりはあくまで反乱はんらんを「起おこされる側がわ」の表現ひょうげんであり、実際じっさいに「起おこす側がわ」が自みずから反乱はんらんと言いうことはなく^{[要よう出典しゅってん]}「決起けっき」などと呼よぶ。

漢字かんじ圏けんの歴史れきし上じょうの叛乱はんらんには「～の乱らん（らん）」とのみ呼よばれるものもあるが、「乱らん」に反乱はんらんの意味いみはなく、この場合ばあいの「乱らん」は単たんに「世よが乱みだれること」を意味いみしている^[2]。

フィクションにおいては人間にんげん同士どうしにとどまらず、人間にんげん以外いがいの動物どうぶつなどの人間にんげんと同等どうとうの意思いしや知性ちせい等とうを持もたない生物せいぶつや人工じんこう知能ちのうなどの無生物むせいぶつが、人間にんげんに対たいして牙きばをむくような場合ばあいも反乱はんらんとして扱あつかわれる。

最古さいこの反乱はんらん[編集へんしゅう]

人類じんるいがいつどこで反乱はんらんという行為こういを最初さいしょに起おこしたのかについては分わかっていないが、文明ぶんめいを築きずき、集団しゅうだん生活せいかつの中なかに「社会しゃかい」を構成こうせいし始はじめた4大だい文明ぶんめいの時代じだいから近代きんだいまで、常つねに反乱はんらんは発生はっせいしてきた。

シュメール王朝おうちょうを吸収きゅうしゅうして北部ほくぶメソポタミア地方ちほうに興おこったアッカド帝国ていこく第だい2の王おう、リムシュが生いきた紀元前きげんぜん2300年代ねんだいにはすでに、旧きゅうシュメール王朝おうちょう派はの都市とし国家こっかウルの王おう、カクを中心ちゅうしんにした勢力せいりょくがリムシュに対たいして反乱はんらんを起おこし「シュメールと激はげしく戦たたかった。8742人にんの兵士へいしを殺ころし都市としを破壊はかいし、城壁じょうへきを崩くずした」と記録きろくが残のこされている。

この反乱はんらんの原因げんいんが、旧きゅうシュメール王朝おうちょう派はによるクーデター的てきなものだったのか、帝国ていこくによる旧きゅうシュメール王朝おうちょう派はへの何なんらかの迫害はくがいの結果けっかなのかは判明はんめいしていないが、より詳くわしく歴史れきしをつづるようになったその後ごの人類じんるいによる反乱はんらんの記録きろくを見みてゆくと、反乱はんらんが発生はっせいした国家こっかの支配しはい層そうには、常つねに公的こうてきな部分ぶぶんに何なんらかの問題もんだいがあることが読よみとれる。

反乱はんらんの背景はいけい[編集へんしゅう]

問題もんだいとは時ときに被ひ支配しはい層そうへのある種しゅの弾圧だんあつであったり、貧困ひんこんが原因げんいんの食糧しょくりょう不足ふそくであったり、非ひ政治せいじ的てきで、比較的ひかくてき原始げんし的てきなものである。こうした一時いちじ的てきあるいは慢性まんせい的てきな問題もんだいを、被ひ支配しはい層そうが選挙せんきょやデモ、請願せいがんなどの平和へいわ的てき主張しゅちょうによって訴うったえることができ、支配しはい者しゃがその訴うったえを受うけ止とめる国家こっかならば、反乱はんらんは発生はっせいしづらい。あるいは、支配しはい者しゃが有能ゆうのうであり、被ひ支配しはい層そうの生活せいかつを考慮こうりょして善政ぜんせいを行おこなう場合ばあいも、反乱はんらんが起おきる可能かのう性せいは低ひくいと言いえる。

逆ぎゃくに、被ひ支配しはい層そうから支配しはい者しゃへの訴うったえを権利けんりとして認みとめない国家こっか、訴うったえを弾圧だんあつする国家こっか、あるいは平和へいわ的てき手段しゅだんによって訴うったえる事ことはできるが、支配しはい者しゃが常つねにそれを黙殺もくさつするような状態じょうたいの国家こっか、深刻しんこくすぎて平和へいわ的てきに訴うったえる次元じげんを過すぎたような問題もんだいのある国家こっかでは、反乱はんらんの可能かのう性せいは高たかまる。

歴史れきし的てきに、選挙せんきょ・請願せいがん・デモなどの平和へいわ的てき主張しゅちょうが被ひ支配しはい層そうの「権利けんり」として認みとめられるのは、民主みんしゅ政せいが定着ていちゃくし始はじめた19世紀せいきから20世紀せいきを待またねばならず、それ以前いぜんの帝政ていせい・王政おうせいが主流しゅりゅうの世界せかいでは、被ひ支配しはい層そうには支配しはい者しゃを批判ひはんしたり、不満ふまんを表明ひょうめいする手段しゅだんがなく、またその権利けんりを自覚じかくしていなかったため、幸運こううんが有能ゆうのうな支配しはい者しゃをもたらさない限かぎり、被ひ支配しはい層そうは支配しはい者しゃに対たいする不満ふまんを蓄積ちくせきし続つづけ、結果けっかとして反乱はんらんを起おこす可能かのう性せいが非常ひじょうに高たかい時代じだいだったと言いえるだろう。

「反乱はんらん」と類るい義よし・近似きんじの言葉ことばは、日本語にほんごにも英語えいごにも数多かずおおくあるので「反乱はんらんとは何なにか」を考かんがえるとき、その境界きょうかいを見みつけるのが多少たしょう難むずかしい。英語えいごでは、反乱はんらんを大おおきく rebellion とし、民衆みんしゅうが非ひ武装ぶそうなら nonviolent resistance（市民しみん的てき不ふ服従ふくじゅう）、武装ぶそうしていれば uprising と呼よぶ。

反乱はんらんとリーダー[編集へんしゅう]

反乱はんらんにはときに、現状げんじょうを正たださねばならないという主張しゅちょうがあり、行動こうどう力りょくまたはカリスマ性せいのあるリーダーが現あらわれ、被ひ支配しはい層そうを統率とうそつして進行しんこうする場合ばあいがある。リーダーは反乱はんらんの象徴しょうちょうであり、中心ちゅうしんであるため、リーダーが倒たおれると同時どうじに、その反乱はんらんは失速しっそくし、終息しゅうそくに向むかう場合ばあいがある。

19世紀せいき後半こうはんから20世紀せいき前半ぜんはんにかけ、アジア・アフリカ地域ちいきの民族みんぞく主義しゅぎが高たかまってゆく中なかで、欧米おうべいによる植民しょくみん地ち支配しはいに対抗たいこうして起おきた独立どくりつ運動うんどうの盛もり上あがりの中なかには、インドのマハトマ・ガンディーなどのような歴史れきし上じょう特筆とくひつされるリーダーは少すくないが、反乱はんらんによって圧制あっせい者しゃの手てから国家こっかの独立どくりつを勝かち取とらねばならない場合ばあいには、1人ひとりのリーダーよりも「民族みんぞくの誇ほこり」が、大衆たいしゅう全体ぜんたいをより強つよく動うごかしうる。

当事とうじ者しゃの支配しはい層そうから見みれば、規模きぼの大小だいしょうや、そこにどのような大義たいぎがあるかは関係かんけいなく、それまで下したに見みていた者ものが上うえに向むかって弓ゆみを引ひく行為こういはすべて反乱はんらんとしか見みえない。イギリス側がわがインドの独立どくりつ運動うんどうを「インド大だい反乱はんらん」と呼よび、インド側がわは「第だい一いち次じインド独立どくりつ戦争せんそう」と呼よぶのは非常ひじょうに象徴しょうちょう的てきである。

主おもな反乱はんらん一覧いちらん[編集へんしゅう]

戦争せんそう一覧いちらん、内戦ないせん一覧いちらんおよび独立どくりつ戦争せんそう一覧いちらんも参照さんしょう。

複数ふくすう年ねんにわたる反乱はんらんは、蜂起ほうきした年としのみ挙あげる。

紀元前きげんぜん685年ねん第だい二に次じメッセニア戦争せんそう（古代こだいギリシア）
紀元前きげんぜん498年ねんイオニアの反乱はんらん（古代こだいギリシア）
紀元前きげんぜん209年ねん陳ちん勝まさる・呉ご広ひろの乱らん（秦はた）
紀元前きげんぜん181年ねん第だい一いち次じケルティベリア戦争せんそう（古代こだいローマ）
紀元前きげんぜん167年ねんマカバイ戦争せんそう（イスラエル）
紀元前きげんぜん154年ねん呉ご楚すわえ七なな国こくの乱らん（前漢ぜんかん）
紀元前きげんぜん135年ねん第だい一いち次じ奴隷どれい戦争せんそう（古代こだいローマ）
紀元前きげんぜん104年ねん第だい二に次じ奴隷どれい戦争せんそう（古代こだいローマ）
紀元前きげんぜん73年ねん第だい三さん次じ奴隷どれい戦争せんそう（古代こだいローマ）
60年ねんワトリング街道かいどうの戦たたかい（古代こだいローマ）
66年ねんユダヤ戦争せんそう（古代こだいローマ）
83年ねんまたは84年ねんグラウピウス山さんの戦たたかい（古代こだいローマ）
184年ねん黄き巾はばの乱らん（後こう漢かん）
291年ねん八はち王おうの乱らん（晋すすむ）
532年ねんニカの乱らん（東ひがしロろーマ帝国まていこく）
756年ねん安史やすしの乱らん（唐とう）
780年ねん宝亀ほうきの乱らん（日本にっぽん）
874年ねん黄き巣すの乱らん（唐とう）
878年ねん元もと慶けいの乱らん（日本にっぽん）
1120年ねん方ほう臘の乱らん（北きた宋そう）
1266年ねんカイドゥの乱らん（モンゴル帝国ていこく）
1296年ねんスコットランド独立どくりつ戦争せんそう（スコットランド）
1335年ねん中ちゅう先代せんだいの乱らん（日本にっぽん）
1351年ねん紅べに巾はばの乱らん（元もと）
1358年ねんジャックリーの乱らん（フランス）
1378年ねんチョンピの乱らん（イタリア）
1381年ねんワット・タイラーの乱らん（イングランド）
1467年ねん李り施ほどこせ愛あいの乱らん（李り氏し朝鮮ちょうせん）
1506年ねん中ちゅう宗むね反はん正せい（李り氏し朝鮮ちょうせん）
1520年ねんコムネロスの反乱はんらん（スペイン）
1524年ねんドイツ農民のうみん戦争せんそう（ドイツ）
1537年ねん鶏にわとり戦争せんそう（ポーランド）
1562年ねんユグノー戦争せんそう（フランス）
1575年ねんグダニスクの反乱はんらん（ポーランド）
1606年ねんゼブジドフスキの反乱はんらん（ポーランド）
1631年ねん李り自じ成なりの乱らん（明あきら）
1637年ねん島原しまばらの乱らん（日本にっぽん）
1837年ねん大塩おおしお平八郎へいはちろうの乱らん
1648年ねんフロンドの乱らん（フランス）
1648年ねんフメリニツキーの乱らん（ポーランド）
1665年ねんルボミルスキの反乱はんらん（ポーランド）
1667年ねんステンカ・ラージンの乱らん（ロシア）
1673年ねん三さん藩はんの乱らん（清国きよくに）
1676年ねんベイコンの反乱はんらん（イギリス領りょうアメリカ植民しょくみん地ち）
1773年ねんプガチョフの乱らん（ロシア）
1789年ねんバウンティ号ごうの反乱はんらん（イギリス）
1793年ねんヴァンデの反乱はんらん（フランス）
1793年ねんリヨンの反乱はんらん（フランス）
1794年ねんコシチュシコ蜂起ほうき（リトアニア）
1796年ねん白蓮びゃくれん教徒きょうとの乱らん（清きよし）
1797年ねんスピットヘッドとノアの反乱はんらん（イギリス）
1825年ねんデカブリストの乱らん（ロシア）
1850年ねん太平たいへい天国てんごくの乱らん（清きよし）
1857年ねんインド大だい反乱はんらん（インド）
1874年ねん士族しぞく反乱はんらん（日本にっぽん）
1878年ねん竹橋たけばし事件じけん（日本にっぽん）
1888年ねんアブシリの反乱はんらん（タンザニア）
1900年ねん義和よしかず団だんの乱らん（清きよし）
1905年ねんマジ・マジ反乱はんらん（タンザニア）
1914年ねんマリッツ反乱はんらん（南みなみアフリカ）
1916年ねんイースター蜂起ほうき（アイルランド）
1917年ねんポルボートク衆しゅの叛乱はんらん（ウクライナ）
1918年ねん米べい騒動そうどう（日本にっぽん）
1918年ねんキエフ1月がつ蜂起ほうき（ウクライナ）
1932年ねん五ご・一いち五ご事件じけん（日本にっぽん）
1936年ねん二・二六事件ににろくじけん（日本にっぽん）
1943年ねんサレルノの反乱はんらん（イタリア）
1945年ねん宮城みやぎ事件じけん（日本にっぽん）
1945年ねん松江まつえ騒擾そうじょう事件じけん（日本にっぽん）
1952年ねんマウマウ団だんの乱らん（ケニア）
1954年ねんカム反乱はんらん（中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくチベット自治じち区く）
1973年ねん 1973年ねんアフガニスタンのクーデター（アフガニスタン王国おうこく）
1994年ねんサパティスタの反乱はんらん（メキシコ)
2023年ねんワグネルの反乱はんらん (ロシア)

出典しゅってん[編集へんしゅう]

^ ことわざ「反旗はんきを翻ひるがえす」の意味いみと使つかい方かた：例文れいぶん付つき　2018年ねん8月がつ20日はつか - 2018年ねん11月がつ10日とおか　スッキリ世よの中なかのギモンを解決かいけつするメディア
^ 『広辞苑こうじえん』第だい5版はん「乱らん」。「乱らん」に叛乱はんらんの意味いみがないことは、各種かくしゅの漢和かんわ辞典じてんでも確認かくにんできる。