ユズリハ

ユズリハ
Daphniphyllum macropodum （イギリス）
分類ぶんるい（APG III）
界さかい : 植物しょくぶつ界かい Plantae 階級かいきゅうなし : 被子植物ひししょくぶつ angiosperms 階級かいきゅうなし : 真正しんしょう双そう子葉しよう類るい eudicots 階級かいきゅうなし : コア真正しんせい双そう子葉しよう類るい core eudicots 目め : ユキノシタ目め Saxifragales 科か : ユズリハ科か Daphniphyllaceae 属ぞく : ユズリハ属ぞく Daphniphyllum 種たね : ユズリハ D. macropodum
学名がくめい
Daphniphyllum macropodum Miq. subsp. macropodum (1867)
シノニム
Daphniphyllum himalaense (Benth.) Müll.Arg. subsp. macropodum (Miq.) T.C.Huang (1966) Daphniphyllum membranaceum Hayata (1916)
亜種あしゅ・品種ひんしゅ
エゾユズリハ D. m. subsp. humile フイリユズリハ D. m. f. variegatum アオジクユズリハ D. m. f. viridipes

ユズリハ（楪ゆずりは・交譲木ゆずりは・譲葉ゆずりは・杠ゆずりは、学名がくめい: Daphniphyllum macropodum）は、ユズリハ科かユズリハ属ぞくの常緑じょうりょく高木たかぎ。春はるに新あたらしい葉はが出でると古ふるい葉はが場所ばしょを譲ゆずるように落おちて生はえ替かわるようすが特とくに目立めだつことが特徴とくちょうで、和名わみょうの由来ゆらいになっている。別名べつめい、ウスバユズリハ。

花はなの形態けいたいがトウダイグサ科かに似にるので、古ふるくはトウダイグサ科かに含ふくめられたが、雌蕊めしべが2個こ（トウダイグサ科かは3個こ）などの違ちがいから、独立どくりつのユズリハ科か（学名がくめい: Daphniphyllaceae）とされた。APG分類ぶんるい体系たいけいではユキノシタ目めに入いれられている。

名称めいしょう

和名わみょうユズリハは、春はるに枝えだ先さきに若葉わかばが出でたあと、前年ぜんねんの葉はがそれに譲ゆずるように落葉らくようすることに由来ゆらいする。古名こみょうはユズルハ（弓弦ゆづる葉は）といわれ、葉はの中なかにある主脈しゅみゃくがはっきりと目立めだち、弓ゆみの弦つるのように見みえることに由来ゆらいする。そこから発展はってんした地方ちほう名めい（方言ほうげん）としてツルノハというものもある。

中国ちゅうごく名めいは、薄葉うすば虎とら皮がわ楠くすのき（別名べつめい：交讓木ゆずりは）。

分布ぶんぷと生育せいいく環境かんきょう

日本にっぽんの福島ふくしま県けん以南いなん・関東かんとう・東海とうかい地方ちほう以西いせいの本州ほんしゅう、四国しこく、九州きゅうしゅう、沖縄おきなわと、日本にっぽん国外こくがいでは朝鮮半島ちょうせんはんとう南部なんぶ、中国ちゅうごく（中部ちゅうぶから南西なんせい部ぶ）まで自然しぜん分布ぶんぷする。日本にっぽんの植うえ栽可能かのう地域ちいきでは、東北とうほく地方ちほう南部なんぶより沖縄おきなわの地域ちいきとなる。主おもに暖地だんちの山地さんちや広葉樹こうようじゅ林りん内ないに自生じせいする。

形態けいたい・生態せいたい

常緑じょうりょく広葉樹こうようじゅ。高木たかぎの中なかでも中高なかだか木きに分類ぶんるいされ、高たかさは4 - 10メートル (m) ほどになり、幹みきは直立ちょくりつして上部じょうぶは多おおく枝分えだわかれをし、前年ぜんねん葉はをつけたこんもりした樹き形がたとなる。樹皮じゅひは灰はい褐色かっしょくから茶褐色ちゃかっしょくで、縦たてに筋すじが入はいる。若わか枝えだは赤あかみを帯おびる。

常緑樹じょうりょくじゅでありながら、若葉わかばに座ざを譲ゆずるように、春はるに古ふるい葉はが落おちて新あたらしい葉はと入いれ替かわる。この生はえ替がわりのとき、古ふるい葉はのほうは、まだ濃こい緑色みどりいろをしていながらも、浅緑せんりょく色しょくの新しん葉はの下したに控ひかえて残のこっている。葉はは互生ごせいして、枝えだ先さきにらせん状じょうに集あつまってついて、葉は身みは垂たれ下さがる。葉は身みには光沢こうたくがあり、長ながさは8 - 20センチメートル (cm) ほどの長ちょう楕円だえん形がたから倒たおせ披針形ひしんけいで、先端せんたんは短みじかく尖とがり、基部きぶはくさび形がた。葉はの裏側うらがわは白しらみを帯おびる。長ながさ8 - 20 cmほどある葉柄ようへいは赤あか紫色むらさきいろを帯おび、本ほん種しゅの特徴とくちょうにもなっている。

花期かきは春はるから初夏しょか（4 - 6月がつ）、新しん葉はが出でるころに、前年ぜんねん枝えだの葉腋ようえきから長ながさ4 - 8 cmの総状そうじょう花序かじょを出だして、花はな被ひ（花弁はなびらと萼がく）がない小ちいさな花はなを多数たすうつける。雌雄しゆう異い株かぶで、雄花おばな・雌花めばなとも花色はないろは黄き緑色みどりいろをしている。

果はて期きは6 - 12月で、果実かじつは長ながさ15 - 20 cmで、枝えだ先さきに集あつまってつき、10月から11月に熟じゅくして黒褐色こっかっしょくになる。

冬芽とうがは葉柄ようへいの基部きぶにつき、紅色こうしょくを帯おびて、葉柄ようへいが変化へんかした芽め鱗うろこに包つつまれる。葉は痕こんは半円はんえん形がたで、維管束たば痕あとは3個こある。

• 
  成木なりきの梢こずえ
• 
  葉は
• 
  若葉わかばとその下したで落葉らくようを控ひかえる古こ葉は
• 
  雄花おばな
• 
  若わかい果実かじつ

ダフニフィリン、ダフニマクリン、ユズリミン、ダフェニリンなどの複雑ふくざつな骨格こっかく構造こうぞうのアルカロイド（ユズリハアルカロイド）を多数たすう含ふくみ、家畜かちくが誤あやま食しょくすると中毒ちゅうどくの原因げんいんとなる。さらに、ユズリハアルカロイドはその構造こうぞうから全ぜん合成ごうせいの対象たいしょうとしてよく取とり上あげられる。

人間にんげんとの関かかわり

ユズリハは、新あたらしい葉はが古ふるい葉はと入いれ替かわるように出でてくる性質せいしつから「親おやが子こを育そだてて家いえが代々だいだい続つづいていく」ことを連想れんそうさせる縁起えんぎ木きとされ、正月しょうがつの鏡餅かがみもち飾かざりや庭木にわきに使つかわれる。また、家紋かもんも同様どうようの由来ゆらいで使用しよう家かは桓武かんむ平たいら氏し良文よしふみ流りゅう千葉ちば支流しりゅうの原はら氏し、出自しゅつじ不ふ詳しょうの城本しろもと氏しが使用しようした。

防火ぼうかの機能きのうを有ゆうする樹き種しゅ（防火ぼうか樹じゅ）としても知しられる。

栽培さいばい

日陰ひかげか斑むらに影かげを好このむ性質せいしつで、根ねは深ふかく張はり、土壌どじょうは砂すな土どはよく乾燥かんそうにも強つよい。生育せいいくの速度そくどは遅おそい方ほうで、若木わかぎのうちは剪定せんていの必要ひつようもほとんどない。植うえ付つけは6月がつ中旬ちゅうじゅんから7月がつ中旬ちゅうじゅん、剪定せんていは6月がつ下旬げじゅんから11月がつ下旬げじゅんに行おこなうものとされる。ただし、刈かり込こみには弱よわいため、枝えだを軽かるく成形せいけいする程度ていどに留とめることとされる。木きが大おおきくなったら、混こみ合あう枝えだを間引まびきするようにし、切きり戻もどしの際さいは枝えだの分わかれ目めで行おこなうようにする。

大おおきく目立めだつ葉はは観賞かんしょう用ようにもされ、白しろい斑入ふいりが入はいる‘白しろ覆輪ふくりんユズリハ’のほか、黄き覆輪ふくりんや黄き中ちゅう斑むらなどの園芸えんげい品種ひんしゅがあり、斑むら色しょくの濃淡のうたんでいくつかの系統けいとうがある。

文化ぶんか

「譲ゆずり葉は」の縁起えんぎを担かついで正月しょうがつ飾かざりに用もちいられるが、これには歳としを譲ゆずるという意味いみもある。

ユズリハに乗のった年とし神しん（正月しょうがつ様さま）の降臨こうりんを歌うたった童謡どうようは日本にっぽん各地かくちで見みられる。ユズリハが年とし神しんの乗のり物ものになった理由りゆうは、祖そ霊れいは次々つぎつぎと代だいを譲ゆずって新あたらしい命いのちへ生せいを繋つなげていくように、春はるになるとユズリハの新しん葉はが芽吹めぶくと、あたかも古こ葉はが代だいを受うけ継つぐように落葉らくようする様子ようすを見みて、後世こうせいの人々ひとびとがそのユズリハの落おち葉ばに乗のって祖そ霊れいは天上てんじょう界かいへ昇のぼったと考かんがえた。祖そ霊れいが帰かえるときも同おなじ乗のり物ものの帰かえってくるだろうと想像そうぞうしたので、門松かどまつにユズリハを結むすんで帰かえるべき家いえの目印めじるしとした。また、常緑樹じょうりょくじゅ（常磐木ときわぎ）であることや、葉柄ようへいの赤あかい色いろが呪力じゅりょくがあると信しんじられたことも、ユズリハが正月しょうがつと結むすびついている理由りゆうである。

地方ちほう名めいの「ツルノハ」は「弦つるの葉は」から「鶴づるの葉は」へと変化へんかし、鶴づるは千せん年ねんの長寿ちょうじゅをもつおめでたい鳥とりとされていることから、ユズリハもめでたい葉はとなった。

花言葉はなことばは「若返わかがえり」である。

ユズリハ属ぞく

ユズリハ属ぞく（ユズリハぞく、学名がくめい: Daphniphyllum）は、ユズリハ科かで唯一ゆいいつの属ぞくである。東ひがしアジアの温帯おんたいから東南とうなんアジア・インドに分布ぶんぷし、35種たねからなる。

• Daphniphyllum beddomei
• Daphniphyllum glaucescens
  • Daphniphyllum glaucescens subsp. oldhamii var. lanyuense - 中国ちゅうごく名めい：蘭あららぎ嶼虎皮がわ楠くすのき。
• Daphniphyllum himalense
• ユズリハ Daphniphyllum macropodum
  • エゾユズリハ Daphniphyllum macropodum subsp. humile - ユズリハの矮性わいせいの亜種あしゅ。日本にっぽんの寒冷かんれい地ち（北海道ほっかいどうから中部ちゅうぶ地方ちほうの日本海にほんかい側がわ）に分布ぶんぷする。高たかさ1 mほどの灌木で、ユズリハと同様どうように葉柄ようへいが赤あかい。
  • アオジクユズリハ Daphniphyllum macropodum subsp. macropodum f. viridipes - 別名べつめいイヌユズリハ。ユズリハの一いち品種ひんしゅ。
  • フイリユズリハ Daphniphyllum macropodum f. variegatum - ユズリハの品種ひんしゅ。別名べつめいフクリンユズリハ。
• Daphniphyllum pentandrum
• ヒメユズリハ Daphniphyllum teijsmannii - 別名べつめいオヤコグサ、オオバユズリハ、アマミユズリハ、オキナワヒメユズリハ。ユズリハより小ちいさく、花はなにはがくがある。日本にっぽんの暖地だんち（福島ふくしま県けん以南いなん、沖縄おきなわ）・台湾たいわんまでの海岸かいがん近ちかくに分布ぶんぷする。
  • スルガヒメユズリハ Daphniphyllum teijsmannii var. hisautii - ヒメユズリハの一いち変種へんしゅ。
  • シマユズリハ Daphniphyllum teijsmannii var. oldhamii - 別名べつめいナガバノヒメユズリハ。ヒメユズリハの変種へんしゅ。

参考さんこう文献ぶんけん

• 鈴木すずき庸夫みちお・高橋たかはし冬ふゆ・安やす延のべ尚文なおふみ『樹皮じゅひと冬芽とうが：四季しきを通つうじて樹木じゅもくを観察かんさつする 431種しゅ』誠まこと文ぶん堂どう新光しんこう社しゃ〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年ねん10月がつ10日とおか、216頁ぺーじ。ISBN 978-4-416-61438-9。 
• 田中たなか潔きよし『知しっておきたい100の木き：日本にっぽんの暮くらしを支ささえる樹木じゅもくたち』主婦しゅふの友社ともしゃ〈主婦しゅふの友ともベストBOOKS〉、2011年ねん7月がつ31日にち、12 - 13頁ぺーじ。ISBN 978-4-07-278497-6。 
• 辻井つじい達一たついち『続ぞく・日本にっぽんの樹木じゅもく』中央公論ちゅうおうこうろん新しん社しゃ〈中公新書ちゅうこうしんしょ〉、2006年ねん2月がつ25日にち、112 - 114頁ぺーじ。ISBN 4-12-101834-6。 
• 平野ひらの隆久たかひさ監修かんしゅう 永岡書店ながおかしょてん編へん『樹木じゅもくガイドブック』永岡書店ながおかしょてん、1997年ねん5月がつ10日とおか、129頁ぺーじ。ISBN 4-522-21557-6。 
• 正木まさき覚さとし『ナチュラルガーデン樹木じゅもく図鑑ずかん』講談社こうだんしゃ、2012年ねん4月がつ26日にち、110頁ぺーじ。ISBN 978-4-06-217528-9。 
• 山やま﨑誠子こ『植うえ栽大図鑑ずかん［改訂かいてい版ばん］』エクスナレッジ、2019年ねん6月がつ7日にち、94 - 95頁ぺーじ。ISBN 978-4-7678-2625-7。 
• 山本やまもと規ただし詔みことのり『明度めいどと高たかさの組くみ合あわせで庭にわをグレードアップする カラーリーフ図鑑ずかん』講談社こうだんしゃ、2017年ねん11月15日にち、57頁ぺーじ。ISBN 978-4-06-220810-9。 

• 茂木もき透とおる 写真しゃしん『樹きに咲さく花はな 離はなれ弁べん花はな2』高橋たかはし秀男ひでお・勝山かつやま輝男てるお 監修かんしゅう、山やまと溪谷社けいこくしゃ〈山やま溪けいハンディ図鑑ずかん〉、2000年ねん、222-224頁ぺーじ。ISBN 4-635-07004-2。 
• 佐々木ささき教きょう祐ゆう「ユズリハに含ふくまれる新しんアルカロイドの分子ぶんし構造こうぞう」（PDF）『健康けんこう文化ぶんか』第だい10号ごう、健康けんこう文化ぶんか振興しんこう財団ざいだん、1994年ねん、2014年ねん1月がつ27日にち閲覧えつらん。 

関連かんれん項目こうもく

• 木きの一覧いちらん
• 成分せいぶん本質ほんしつ (原材料げんざいりょう) では医薬品いやくひんでないもの-植物しょくぶつ由来ゆらい物ぶつ等とう-後半こうはん
• 照葉樹しょうようじゅ林りん
• 鏡餅かがみもち
• 河井酔茗かわいすいめい - 1932年ねんに発表はっぴょうした詩し「ゆずり葉は」が国語こくごの教科書きょうかしょに採用さいようされている。

外部がいぶリンク

• "Daphniphyllum macropodum". National Center for Biotechnology Information（NCBI） (英語えいご). （英語えいご）
• "Daphniphyllum macropodum" - Encyclopedia of Life （英語えいご）
• 波田なみた善夫よしお. “ユズリハ”. 植物しょくぶつ雑学ざつがく事典じてん. 岡山理科大学おかやまりかだいがく生物せいぶつ地球ちきゅう学部がくぶ. 2014年ねん1月がつ27日にち閲覧えつらん。
• 樹きげむ. “樹木じゅもく図鑑ずかん(ユズリハ)”. 木きのぬくもり・森もりのぬくもり. 2014年ねん1月がつ27日にち閲覧えつらん。