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欧州おうしゅうのための憲法けんぽう制定せいていする条約じょうやく

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欧州おうしゅう憲法けんぽうから転送てんそう
欧州おうしゅうのための憲法けんぽう制定せいていする条約じょうやく
スペイン: Tratado por el que se establece una Constitución para Europa
チェコ: Smlouva o Ústavě pro Evropu
デンマーク: Traktat om en forfatning for Europa
ドイツ: Vertrag über eine Verfassung für Europa
エストニア: Euroopa põhiseaduse leping
ギリシア: Συνθήκη γがんまιいおたαあるふぁ τたうηいーた θέσπιση Συντάγματος της Ευρώπης
英語えいご: Treaty establishing a Constitution for Europe
フランス語ふらんすご: Traité établissant une Constitution pour l'Europe
アイルランド: Conradh ag bunú Bunreachta don Eoraip
イタリア: Trattato che adotta una Costituzione per l'Europa
ラトビア: Līgums par Konstitūciju Eiropai
リトアニア: Sutartis dėl Konstitucijos Europai
ハンガリー: Szerződés európai alkotmány létrehozásáról
マルタ: Trattat Li Jistabbilixxi kostituzzjoni għall-Ewropa
オランダ: Verdrag tot vaststelling van een Grondwet voor Europa
ポーランド: Traktat ustanawiający Konstytucję dla Europy
ポルトガル: Tratado que estabelece uma Constituição para a Europa
スロバキア: Zmluva o ústave pre európu
スロベニア: Pogodba o Ustavi za Evropo
フィンランド: Sopimus Euroopan perustuslaista
スウェーデン: Fördrag om upprättande av en konstitution för Europa
欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく英語えいごばんひだり)とスペインばんみぎ
通称つうしょう略称りゃくしょう 欧州おうしゅう憲法けんぽう欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく、2004ねんローマ条約じょうやく
署名しょめい 2004ねん10がつ29にち
署名しょめい場所ばしょ ローマ
発効はっこう 発効はっこう
おも内容ないよう 欧州おうしゅう連合れんごう設立せつりつおよび運営うんえい域内いきないにおける基本きほんけん規定きてい
関連かんれん条約じょうやく ローマ条約じょうやくマーストリヒト条約じょうやく欧州おうしゅう連合れんごう基本きほんけん憲章けんしょうリスボン条約じょうやく
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欧州おうしゅうのための憲法けんぽう制定せいていする条約じょうやく(おうしゅうのためのけんぽうをせいていするじょうやく、英語えいご:Treaty establishing a Constitution for Europe(TCE)、通称つうしょう:欧州おうしゅう憲法けんぽうまたは憲法けんぽう条約じょうやく)は、欧州おうしゅう連合れんごう統合とうごう憲法けんぽう制定せいていすることを目的もくてきとした批准ひじゅん国際こくさい条約じょうやくである。この条約じょうやくは、既存きそん欧州おうしゅう連合れんごう条約じょうやく単一たんいつ文書ぶんしょえ、基本きほんけん憲章けんしょう法的ほうてき効力こうりょくあたえ、従来じゅうらい加盟かめいこくあいだ全会ぜんかい一致いっち決定けっていされていた政策せいさく分野ぶんやにも特定とくてい多数決たすうけつ拡大かくだいするものであった。

この条約じょうやくは、2004ねん10がつ29にち当時とうじ欧州おうしゅう連合れんごう加盟かめいこく25カ国かこく代表だいひょうしゃによって署名しょめいされた。その、18カ国かこく批准ひじゅんし、スペインとルクセンブルクの国民こくみん投票とうひょうでも承認しょうにんされた。しかし、2005ねん5がつと6がつにフランスとオランダの有権者ゆうけんしゃがこの文書ぶんしょ否決ひけつしたため、批准ひじゅんプロセスは終了しゅうりょうした。

反省はんせい期間きかんて、憲法けんぽう条約じょうやくわるものとしてリスボン条約じょうやく制定せいていされた。この条約じょうやくには、もともと憲法けんぽう条約じょうやくまれていた変更へんこうてんおおくがふくまれていたが、既存きそん条約じょうやく修正しゅうせいあんとして策定さくていされた。2007ねん12月13にち調印ちょういんされ、リスボン条約じょうやくは2009ねん12月1にち発効はっこうした。

経緯けいい[編集へんしゅう]

起草きそう[編集へんしゅう]

「欧州の将来に関するコンベンション」議長 ヴァレリー・ジスカール・デスタン 欧州委員会委員長 ロマーノ・プローディ
欧州おうしゅう将来しょうらいかんするコンベンション」議長ぎちょう ヴァレリー・ジスカール・デスタン
欧州おうしゅう委員いいんかい委員いいんちょう ロマーノ・プローディ

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくアムステルダム条約じょうやくニース条約じょうやくによって修正しゅうせいされた主要しゅような2つの基本きほん条約じょうやくであるローマ条約じょうやく欧州共同体おうしゅうきょうどうたい設立せつりつ条約じょうやく)とマーストリヒト条約じょうやく欧州おうしゅう連合れんごう条約じょうやく)をひとつの条約じょうやくにまとめるということを原点げんてんとしていた。近年きんねんのヨーロッパの将来しょうらいかんする協議きょうぎは、欧州統合おうしゅうとうごう最終さいしゅうてき目標もくひょうについての議論ぎろんもとめていたドイツ外相がいしょうヨシュカ・フィッシャーによる2000ねんベルリンにおける演説えんぜつによりつよ後押あとおしされたとされている[1]

具体ぐたいてき作業さぎょうは2001ねん12月のラーケン宣言せんげんけて着手ちゃくしゅされ、このときもとフランス大統領だいとうりょうヴァレリー・ジスカール・デスタン議長ぎちょうとする、欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく草案そうあん作成さくせいする「欧州おうしゅう将来しょうらいかんするコンベンション」が設置せっちされた。ジスカール・デスタンはコンベンションの参加さんかしゃたいして「あなたかたまれ故郷こきょうにおいてうまったあなたのぞうてることをのぞむのならば、欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく起草きそうかすことができないことである」とびかけたが、このジスカール・デスタンの発言はつげんはのちにみずからの出身しゅっしんこく草案そうあんたいする支持しじ明確めいかくとなったさいに失笑しっしょうまねくものとなった。そして2003ねん7がつに「欧州おうしゅうのための憲法けんぽう制定せいていする条約じょうやくあん」は発表はっぴょうされた。

その欧州おうしゅう委員いいんかい委員いいんちょうロマーノ・プローディ諸国しょこく統合とうごう深化しんかやより明快めいかい機構きこうモデルをんだ欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくあんについて支持しじ表明ひょうめいし、条約じょうやくを「ペネロペ・プロジェクト」と表現ひょうげんした[2]

イタリア議長ぎちょうこく任期にんきちゅうにおける政府せいふあいだ協議きょうぎ長期ちょうきにわたった議論ぎろんののち、特定とくてい多数決たすうけつ方式ほうしき枠組わくぐみについて対立たいりつきたが、欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく最終さいしゅう草案そうあんが2004ねん6がつりまとめられた。

調印ちょういん[編集へんしゅう]

2004ねん10がつ29にち加盟かめい25かこく代表だいひょうしゃ53めいローマにおいて欧州おうしゅうのための憲法けんぽう制定せいていする条約じょうやく署名しょめいした。おおくは元首げんしゅ指名しめいした首相しゅしょう外相がいしょうなどの特命とくめい全権ぜんけん大使たいし出席しゅっせきしたが、共和きょうわせい加盟かめいこく元首げんしゅである大統領だいとうりょう署名しょめいした。

批准ひじゅん[編集へんしゅう]

加盟かめいこくおよび加盟かめい候補こうほこくにおける批准ひじゅん状況じょうきょう
  承認しょうにん - 加盟かめい条約じょうやく規定きていによる
  承認しょうにん - 議会ぎかいにおける手続てつづきによる
  承認しょうにん - 国民こくみん投票とうひょう結果けっかによる
  拒否きょひ - 国民こくみん投票とうひょう結果けっかによる
  国民こくみん投票とうひょう実施じっし期限きげん延期えんき
  国民こくみん投票とうひょう実施じっし予定よていなし

憲法けんぽう規定きていおよび最高裁判所さいこうさいばんしょ過去かこ判決はんけつ実施じっし義務ぎむとなっているアイルランドのぞくほかのほぼすべての加盟かめいこくは、政権せいけん支持しじけて議会ぎかいまたは高度こうど政治せいじ手続てつづきにより欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく批准ひじゅんし、また欧州おうしゅう議会ぎかい圧倒的あっとうてき多数たすう承認しょうにんするはずであった。実際じっさい議会ぎかいでの手続てつづき欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく承認しょうにんした加盟かめいこくかず多数たすうめていた。ところが欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく発効はっこうにはすべての加盟かめいこくにおける批准ひじゅん承認しょうにん必要ひつようとされていた。

最初さいしょ国民こくみん投票とうひょう市民しみん意見いけんしめそうとしたのはスペインであった。スペインでの国民こくみん投票とうひょうは、投票とうひょうりつは43%にとどまったものの、およそ77%が賛成さんせいして批准ひじゅん承認しょうにんされた。

しかしイギリスでは首相しゅしょうトニー・ブレアが2004ねん4がつ20日はつかに、予想よそうされていなかった国民こくみん投票とうひょう実施じっし約束やくそくした。これは条約じょうやく反対はんたいする保守党ほしゅとう賛成さんせい自由民主党じゆうみんしゅとうがともに国民こくみん投票とうひょう実施じっし賛成さんせいしており、このりょうとう貴族きぞくいんにおいて多数たすうめていた。そのため貴族きぞくいんそう選挙せんきょまで批准ひじゅん手続てつづきおくらせることができたのである。もしそうなれば労働党ろうどうとう国民こくみん投票とうひょう実施じっし反対はんたいする唯一ゆいいつ政党せいとうという不利ふり立場たちばそう選挙せんきょむかえるということになりかねなかった。イギリスが国民こくみん投票とうひょう実施じっしすることをめたことはフランス大統領だいとうりょうジャック・シラクたいする圧力あつりょくとなり、シラクもまたフランスで国民こくみん投票とうひょう実施じっし決断けつだんすることとなった。

2004ねん10がつ29にち、ローマにおいて欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく調印ちょういんしきおこなわれたが、欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく発効はっこうにはすべての加盟かめいこくによる批准ひじゅん必要ひつようとされた。批准ひじゅん手続てつづき加盟かめいこくごとに、ほう習慣しゅうかん憲法けんぽうじょうめ、政治せいじ過程かていなどによってことなる形式けいしきゆうしている。いくつかの加盟かめいこくでは議会ぎかい国民こくみん投票とうひょう承認しょうにんすれば元首げんしゅ欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく承認しょうにんもとめられることになる。しかしドイツでは、議会ぎかい批准ひじゅん承認しょうにんしても、国民こくみん投票とうひょう実施じっしせずに批准ひじゅん手続てつづきおこなうということにたいして裁判所さいばんしょ審議しんぎしていたため、連邦れんぽう大統領だいとうりょうはただちに批准ひじゅん承認しょうにんすることはしなかった。スロバキアでも憲法けんぽう裁判所さいばんしょ要求ようきゅうけて、大統領だいとうりょう条約じょうやく承認しょうにんするということが保留ほりゅうされていた。

2005ねん1がつ12にち欧州おうしゅう議会ぎかい法的ほうてき効力こうりょくたないものの欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくについて審議しんぎし、賛成さんせい500、反対はんたい137、棄権きけん40で承認しょうにんした[3]

リトアニアハンガリースロベニア、イタリア、ギリシャスロバキアオーストリア、ドイツ、ラトビアキプロスマルタベルギーエストニアフィンランド当時とうじ加盟かめい予定よていしていたブルガリアとルーマニアは欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく批准ひじゅん議会ぎかいでの手続てつづき完了かんりょうさせていた。

25加盟かめいこくと2加盟かめい予定よていこくのなかで10かこく欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくについての国民こくみん投票とうひょう実施じっし表明ひょうめいしていた。そのうちいくつかは、国民こくみん投票とうひょう結果けっか法的ほうてき拘束こうそくりょくたせるとする一方いっぽうで、オランダなどの一部いちぶくにではあくまでも諮問しもんてきなものとするとしていた。このうち5かこくでの国民こくみん投票とうひょう実施じっしされ、スペイン、ルクセンブルク、ルーマニアでは欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく批准ひじゅん支持しじされたが、フランスとオランダでは批准ひじゅん拒否きょひされた。オランダの国民こくみん投票とうひょう法的ほうてき効力こうりょくたないものであったが、政府せいふ投票とうひょう結果けっかけて欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく批准ひじゅんしないと表明ひょうめいした。

フランスでの国民こくみん投票とうひょうけて、一部いちぶ加盟かめいこく国民こくみん投票とうひょう中止ちゅうしまたは延期えんきめ、イギリスでは外相がいしょうジャック・ストローがフランスとオランダでの結果けっかけて国民こくみん投票とうひょう実施じっしすることに「意味いみがない」と発言はつげんした[4]他方たほう国民こくみん投票とうひょう手続てつづきすすめたくにもあり、ルクセンブルクでは2005ねん7がつ10日とおか実施じっしして僅差きんさではあったが批准ひじゅん賛成さんせいという結果けっかとなった[5]

2005ねん9がつ15にち欧州おうしゅう議会ぎかい議員ぎいんヨハネス・フォッゲンフーバーオーストリアみどりとう)とアンドリュー・ダフ(イギリス自由民主党じゆうみんしゅとう)はつぎのような行動こうどう計画けいかくあん提示ていじした。

  • 2006ねんまつまでに賛否さんぴかれていない項目こうもく人権じんけん憲章けんしょう、ヨーロッパ規模きぼでの市民しみん投票とうひょう、「議会ぎかいなしでのほうみとめない」原則げんそく)のみをんでいる大幅おおはば削減さくげんした条約じょうやく起草きそう
  • 2009ねんまつまでに欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくコンベンションによる「支持しじされている社会しゃかい制度せいど」と共通きょうつう外交がいこう安全あんぜん保障ほしょう政策せいさくについてのあらたな欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくのとりまとめ
  • 2009ねん欧州おうしゅう議会ぎかい議員ぎいん選挙せんきょ欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくのヨーロッパ規模きぼでの市民しみん投票とうひょう同時どうじ実施じっし

2議員ぎいん提案ていあん欧州おうしゅう議会ぎかいにおいて賛同さんどうされず、2006ねん1がつ19にちには「熟慮じゅくりょ期間きかんちゅう反対はんたいとする国民こくみん投票とうひょう結果けっか加盟かめいこくしたがうということについて意見いけん保留ほりゅうするという決議けつぎ賛成さんせい385ひょう反対はんたい125ひょう採択さいたくされた。

2007ねん加盟かめいこく欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく断念だんねん既存きそん基本きほん条約じょうやく修正しゅうせいすることで合意ごういした。2007ねん6がつ欧州おうしゅう理事りじかい会合かいごう各国かっこく首脳しゅのう政府せいふあいだ協議きょうぎ既存きそん条約じょうやく(ローマ条約じょうやくおよびマーストリヒト条約じょうやく)を修正しゅうせいするしん条約じょうやくについての協議きょうぎもとめることとなった。しん条約じょうやくは2007ねんまつ協議きょうぎ終了しゅうりょうし、リスボンにおいて署名しょめいされた。署名しょめい、「改革かいかく条約じょうやく」と位置いちづけられるしん条約じょうやくリスボン条約じょうやく」は各国かっこくにおいて批准ひじゅん手続てつづきすすめられている。

各国かっこくでの批准ひじゅん手続てつづき結果けっか[編集へんしゅう]

調印ちょういんこく[注釈ちゅうしゃく 1] 賛否さんぴ決定けってい 議会ぎかい 賛成さんせい 反対はんたい 棄権きけん 批准ひじゅんしょ寄託きたく[6]
 リトアニア 2004ねん11月11にち チェック セイマス 84 4 3 2004ねん12月17にち
 ハンガリー 2004ねん12がつ20日はつか チェック 国民こくみん議会ぎかい 323 12 8 2004ねん12月30にち
スロベニアの旗 スロベニア 2005ねん2がつ1にち チェック 国民こくみん議会ぎかい 79 4 0 2005ねん5がつ9にち
イタリアの旗 イタリア 2005ねん1がつ25にち チェック 代議だいぎいん 436 28 5 2005ねん5がつ25にち
2005ねん4がつ6にち チェック 元老げんろういん 217 16 0
スペインの旗 スペイン 2005ねん2がつ20日はつか チェック 国民こくみん投票とうひょう法的ほうてき拘束こうそくりょくなし、投票とうひょうりつ:42.32%) 76.73% 17.24% 6.03% 2005ねん6がつ15にち
2005ねん4がつ28にち チェック 下院かいん 311 19 0
2005ねん5がつ18にち チェック 上院じょういん 225 6 1
 オーストリア 2005ねん5がつ11にち チェック 国民こくみん議会ぎかい 挙手きょしゅによる。反対はんたい1 2005ねん6がつ17にち
2005ねん5がつ25にち チェック 連邦れんぽう議会ぎかい 挙手きょしゅによる。反対はんたい3
ギリシャの旗 ギリシャ 2005ねん4がつ19にち チェック ギリシャ議会ぎかい 268 17 15 2005ねん7がつ28にち
マルタの旗 マルタ 2005ねん7がつ6にち チェック 代議だいぎいん 採決さいけつなしで承認しょうにん 2005ねん8がつ2にち
キプロスの旗 キプロス 2005ねん6がつ30にち チェック 代議だいぎいん 30 19 1 2005ねん10がつ6にち
 ラトビア 2005ねん6がつ2にち チェック サエイマ 71 5 6 2006ねん1がつ3にち
ルクセンブルクの旗 ルクセンブルク 2005ねん7がつ10日とおか チェック 国民こくみん投票とうひょう法的ほうてき拘束こうそくりょくなし、投票とうひょうりつ:87.77%) 56.52% 43.48% 2006ねん1がつ30にち
2005ねん10がつ25にち チェック 代議だいぎいん 57 1 0
ベルギーの旗 ベルギー 2005ねん4がつ28にち チェック 連邦れんぽう元老げんろういん 54 9 1 2006ねん6がつ13にち
2005ねん5がつ19にち チェック 連邦れんぽう代議だいぎいん 118 18 1
2005ねん6がつ17にち チェック ブリュッセル首都しゅとけん地域ちいき議会ぎかい 70 10 0
2005ねん6がつ20日はつか チェック ドイツ共同きょうどうたい議会ぎかい 21 2 0
2005ねん6がつ29にち チェック ワロン地域ちいき議会ぎかい 55 2 0
2005ねん7がつ19にち チェック フランス語ふらんすご共同きょうどうたい議会ぎかい 79 0 0
2006ねん2がつ8にち チェック フランデレン地域ちいき議会ぎかい 84 29 1
 エストニア 2006ねん5がつ9にち チェック リーギコグ 73 1 0 2006ねん9がつ26にち
 ブルガリア 2007ねん1がつ1にち チェック 加盟かめい条約じょうやく規定きていにより承認しょうにん n/a
 ルーマニア 2007ねん1がつ1にち チェック 加盟かめい条約じょうやく規定きていにより承認しょうにん n/a
スロバキアの旗 スロバキア 2005ねん5がつ11にち チェック 国民こくみん議会ぎかい 116 27 4 保留ほりゅう
大統領だいとうりょう署名しょめいによる
ドイツの旗 ドイツ 2005ねん5がつ12にち チェック 連邦れんぽう議会ぎかい 569 23 2 保留ほりゅう
連邦れんぽう憲法けんぽう裁判所さいばんしょ審議しんぎ未了みりょうにより連邦れんぽう大統領だいとうりょう署名しょめい
2005ねん5がつ27にち チェック 連邦れんぽう参議院さんぎいん 66 0 3
 フィンランド 2006ねん12月5にち チェック エドゥスクンタ 125 39 4 保留ほりゅう
オーランド諸島しょとう [注釈ちゅうしゃく 2] ラーグティング 中止ちゅうし
フランスの旗 フランス 2005ねん5がつ29にち × 国民こくみん投票とうひょう法的ほうてき拘束こうそくりょくあり、投票とうひょうりつ:69.34%) 45.32% 54.68%
国民こくみん議会ぎかい 中止ちゅうし
元老げんろういん 中止ちゅうし
オランダの旗 オランダ 2005ねん6がつ1にち × 国民こくみん投票とうひょう法的ほうてき拘束こうそくりょくはない、投票とうひょうりつ:63.30%) 38.46% 61.54%
だい二院にいん 中止ちゅうし
だい一院いちいん 中止ちゅうし
 チェコ 国民こくみん投票とうひょう法的ほうてき拘束こうそくりょくあり) 中止ちゅうし
代議だいぎいん 中止ちゅうし
元老げんろういん 中止ちゅうし
 デンマーク 国民こくみん投票とうひょう法的ほうてき拘束こうそくりょくなし) 中止ちゅうし
フォルケティング 中止ちゅうし
アイルランドの旗 アイルランド 国民こくみん投票とうひょう法的ほうてき拘束こうそくりょくあり) 中止ちゅうし
ドイル・エアラン 中止ちゅうし
シャナズ・エアラン 中止ちゅうし
ポーランドの旗 ポーランド 国民こくみん投票とうひょう投票とうひょうりつ50%ちょう法的ほうてき拘束こうそくりょくあり) 中止ちゅうし
共和きょうわこく下院かいん 中止ちゅうし
共和きょうわこく上院じょういん 中止ちゅうし
ポルトガルの旗 ポルトガル 国民こくみん投票とうひょう投票とうひょうりつ50%ちょう法的ほうてき拘束こうそくりょくあり) 中止ちゅうし
共和きょうわこく議会ぎかい 中止ちゅうし
 スウェーデン リクスダーゲン 中止ちゅうし
イギリスの旗 イギリス 国民こくみん投票とうひょう 法的ほうてき拘束こうそくりょくなし) 中止ちゅうし
庶民しょみんいん 中止ちゅうし
貴族きぞくいん 中止ちゅうし
欧州連合の旗 欧州おうしゅう連合れんごう 2005ねん1がつ12にち チェック 欧州おうしゅう議会ぎかい 500 137 40 n/a

拒否きょひ[編集へんしゅう]

フランスとオランダで拒否きょひされたことにより欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく将来しょうらい発効はっこうはきわめて不透明ふとうめいなものとなった。欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく構想こうそうたいする進退しんたいらぎ、停滞ていたい状態じょうたいとなった。しかしながら欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく発効はっこうなしで27かこくにまで拡大かくだいしても欧州おうしゅう連合れんごう機能きのうしつづけており、その観点かんてんからするとニース条約じょうやくでの改革かいかく重要じゅうようせい際立きわだっている。フランスとオランダでの結果けっかにかかわらずルクセンブルクではかねてより計画けいかくされていた国民こくみん投票とうひょう実施じっしされたが、賛成さんせいひょう上回うわまわったもののその予想よそうはんしてわずかであるという結果けっかになった。そのイギリスなどほかのくにでは国民こくみん投票とうひょう実施じっし中止ちゅうしすることになった。フランスとオランダで拒絶きょぜつされるという事態じたいけて、そのような政治せいじてき状況じょうきょう欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくたいして国民こくみん投票とうひょう支持しじ確保かくほできるかということについて日増ひましに不安ふあん増大ぞうだいしていったのである。

フランスでは欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく拒否きょひがジャック・シラクにとって屈辱くつじょくであるとされた。欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくシャルル・パスクワフィリップ・ド・ヴィリエといった国家こっか主権しゅけん擁護ようごしようとする右派うはや、社会党しゃかいとうローラン・ファビウス共産党きょうさんとう革命かくめいてき共産きょうさん主義しゅぎしゃ同盟どうめい労働ろうどうしゃ闘争とうそうとうなどがあつまったはんグローバリゼーション運動うんどうから反対はんたいされた。社会党しゃかいとうぜん党員とういんによる内部ないぶでの投票とうひょう賛成さんせいすることを表明ひょうめいしていたが、一部いちぶ支持しじしゃだいいち書記しょきフランソワ・オランドではなくローラン・ファビウスと行動こうどうをともにした。

イギリス首相しゅしょうトニー・ブレアは欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく支持しじし、イギリスでの国民こくみん投票とうひょう批准ひじゅんびかけようとうごこうとしていた。ところがフランスとオランダでの批准ひじゅん拒否きょひ結果けっかけてブレアは2006ねん2がつオックスフォおっくすふぉド大学どだいがくでの演説えんぜつつぎのようにべている。

われわれはとうのてっぺんにある部屋へやなかじこもってしまい、議論ぎろんされてきたことを一般いっぱん市民しみんだれ理解りかいすることができなくなってしまっていました。ですが欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくは「ヨーロッパを市民しみんちかづける」という合言葉あいことばすすめられてきたものであることをみなさんにつたえたいのです。(中略ちゅうりゃく)フランスでの投票とうひょう結果けっかあきらかになったばんわたし友人ゆうじんとイタリアにいました。そしてだれかがやけになってこういったのです。「いったいかれらはどうしたというんだ?」と。この「かれら」というのは 'non' に投票とうひょうしたひとたちのことです。そこでわたしはこうこたえたのです。「ひょっとしたら『わたしたちがどうかしているのか?』ということなのかもしれない」ここでの「わたしたち」というのはヨーロッパの首脳しゅのうのことです。 — トニー・ブレア。翻訳ほんやく引用いんようしゃによる[7]

改革かいかく条約じょうやく発効はっこう失敗しっぱいした欧州おうしゅう憲法けんぽう打開だかいさくとして提示ていじされた2007ねん6がつ時点じてんで、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、キプロス、エストニア、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、ルーマニア、スロベニアが議会ぎかい国民こくみん投票とうひょうなどの手続てつづきませて欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく批准ひじゅん完了かんりょうしていた。フィンランド、ドイツ、スロバキアは議会ぎかいでの批准ひじゅん手続てつづき完了かんりょうさせていた。これら以外いがい加盟かめいこくはフランスとオランダでの拒否きょひけて批准ひじゅん手続てつづき凍結とうけつしていた。最終さいしゅうてきには18かこく批准ひじゅんしょ寄託きたくまたは国内こくないでの批准ひじゅん手続てつづき完了かんりょうさせ、7かこく批准ひじゅん手続てつづき期限きげん延期えんき、2かこく批准ひじゅん拒否きょひという結果けっかになった。

修正しゅうせい模索もさく[編集へんしゅう]

フランスとオランダでの欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく否決ひけつは、両国りょうこく欧州おうしゅう連合れんごうでも中心ちゅうしんてき役割やくわりたしているとかんがえられていたことから、ヨーロッパちゅう動揺どうようをもたらした。両国りょうこく市民しみん支持しじることに失敗しっぱいしたことにより欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくさい検討けんとう余儀よぎなくされた。

さい検討けんとう結果けっか、4つのかんがかた提示ていじされた。ひとつめとして、事態じたい収拾しゅうしゅうのために当面とうめんなにもしないというもので、これにはイギリスとドイツが賛成さんせいした。つぎに、反対はんたい勢力せいりょく欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくをそのまま、あるいはほぼわらないかたちれるよう説得せっとくこころみるというもので、当時とうじ議長ぎちょうこくだったオーストリアがこのあん意欲いよくしめしていたがこのあん現実げんじつてきであるとされた。3つめとして欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくれやすいように全面ぜんめんてきなおあんげられたが、1からやりなおそうとかんがえるくにはなかった。最後さいごに、フランス大統領だいとうりょうジャック・シラクはドイツ連邦れんぽう首相しゅしょうアンゲラ・メルケルに「ばらばらにする」、つまり欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく消化しょうかしやすいものにし手続てつづき賛否さんぴかれにくくなるようなかたちにすることを提案ていあんしたが、メルケルはドイツが議長ぎちょうこくとなる2007ねんまでったほうがいと判断はんだんした。2006ねん6がつイタリア首相しゅしょうもどっていたロマーノ・プローディは欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく大幅おおはば改訂かいていされるだろうが、一方いっぽう翌年よくねんのフランス大統領だいとうりょう選挙せんきょわるまでは保留ほりゅうするべきだとべた。

アマート・グループは2007ねん6がつ4にち現行げんこうのマーストリヒト条約じょうやくえ、現行げんこうのローマ条約じょうやく修正しゅうせい欧州おうしゅう連合れんごう基本きほんけん憲章けんしょう法的ほうてき拘束こうそくりょく付与ふよ提案ていあんした。2007ねん6がつ欧州おうしゅう理事りじかいでは欧州おうしゅう憲法けんぽう将来しょうらいについて協議きょうぎされ、議長ぎちょうこくドイツは欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくえて改革かいかく条約じょうやく採択さいたく提案ていあんした。

構成こうせい[編集へんしゅう]

欧州おうしゅうのための憲法けんぽう制定せいていする条約じょうやく前文ぜんぶん、4つの附属ふぞく議定ぎていしょからなる。

前文ぜんぶん
前文ぜんぶんは「ヨーロッパの文化ぶんかてき宗教しゅうきょうてき人道的じんどうてき継承けいしょうぶつ」に言及げんきゅうして「ヨーロッパの市民しみんがますます緊密きんみつ結合けつごうし、共通きょうつう運命うんめい想像そうぞうすることを決意けついする(一部いちぶりゃく)」とうたっている。この前文ぜんぶんではポーランド、イタリア、アイルランドなどのキリスト教きりすときょう厳格げんかく加盟かめいこくからは「かみ」についての明確めいかく言及げんきゅうもとめられていたが、実際じっさいにはまれなかった。
だいI 連合れんごう定義ていぎ目的もくてき
だいIでは欧州おうしゅう連合れんごう原則げんそくについて規定きていしている。つまり連合れんごう定義ていぎ目的もくてき権限けんげん民主みんしゅ主義しゅぎ政治せいじ機構きこう財政ざいせいについての原則げんそくがうたわれている。また近隣きんりんとの関係かんけい連合れんごう加盟かめいこくについてもさだめがある。ただだいIですべてが説明せつめいされているものではなく、このあとにつづ総論そうろんしめしているものである。まただいIでは連合れんごうのシンボルについてさだめている。すなわち欧州おうしゅう連合れんごうはた青地あおじに12金色きんいろかがやほし)、欧州おうしゅう連合れんごううたルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン歓喜かんきうた」)、ヨーロッパ・デー(5がつ9にち)、通貨つうかユーロ欧州おうしゅう連合れんごう標語ひょうご In varietate concordia多様たようせいにおける統一とういつ)をうたっている。
だいII 基本きほんけんおよび連合れんごうにおける市民しみんけん
だいIIでは欧州おうしゅう連合れんごう市民しみんとしての基本きほんけんについてさだめている。1999ねんから2000ねんにかけてローマン・ヘルツォーク議長ぎちょうとするコンベンションのした欧州おうしゅう連合れんごう基本きほんけん憲章けんしょう作成さくせいされていたが、従来じゅうらい基本きほん条約じょうやくとしてあつかわれていなかったこの憲章けんしょう欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく一部いちぶとして統合とうごうすることになった。欧州おうしゅう連合れんごう基本きほんけん憲章けんしょう欧州おうしゅう人権じんけん条約じょうやく沿ったかたちのものとなっており、基本きほんけん定義ていぎのほとんどは欧州おうしゅう人権じんけん条約じょうやく由来ゆらいするものである。
だいIII 連合れんごう政策せいさく機能きのう
欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくでもだいIIIはもっとも分量ぶんりょうがあるものになっている。だいIII従来じゅうらいのローマ条約じょうやく規定きていわるものであり、内容ないようめん修正しゅうせいのほかに既存きそん条文じょうぶん整理せいりおこなって条約じょうやく見通みとおしやすくなるよう調整ちょうせい構築こうちくされている。まただいIIIだいIしめされた原理げんり過程かてい詳細しょうさい規定きていしている。つまりだいIII欧州おうしゅう連合れんごう通常つうじょう業務ぎょうむにおける基本きほんてき規定きていがまとめられている。
だいIV 一般いっぱん最終さいしゅう規定きてい
だいIV正文せいぶん改正かいせい手続てつづきなどの最終さいしゅう規定きていがうたわれている。
附属ふぞく議定ぎていしょ
附属ふぞく議定ぎていしょ欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく一部いちぶとしてあつかわれる。

引用いんよう[編集へんしゅう]

協議きょうぎ段階だんかいにおいて欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく前文ぜんぶんだい1文目あやめつぎ言葉ことばもちいられていた。

われわれが憲法けんぽうは(…)民主みんしゅ主義しゅぎばれるものである。なぜなら国家こっか少数しょうすう国民こくみんではなくだい多数たすうわせるものだからである。 — ペリクレストゥキディデス戦史せんしだい2かん37

しかし戦史せんしでの文脈ぶんみゃく曖昧あいまいであるため、この言葉ことばもちいることに意見いけんかれた。結局けっきょく政府せいふあいだ協議きょうぎにおいて欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく最終さいしゅう草案そうあんからこの言葉ことば削除さくじょされた。

機構きこう改革かいかく[編集へんしゅう]

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくのそもそもの目的もくてき欧州おうしゅう連合れんごう機構きこう体制たいせいあらためるということにある。くわえて2004ねん東方とうほう拡大かくだい欧州おうしゅう連合れんごう行動こうどう能力のうりょく維持いじのために連合れんごう内部ないぶでの協力きょうりょく体制たいせい強化きょうかすることや個々ここ加盟かめいこく拒否きょひけん発動はつどうらすことや、民主みんしゅてき関与かんよふかめるために欧州おうしゅう議会ぎかい権限けんげんたかめることも目的もくてきとなっている。

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくだいI-1じょうによると、欧州おうしゅう連合れんごう正当せいとうせいはヨーロッパの市民しみん加盟かめいこくから賦与ふよされるものである。このことをしめすのが欧州おうしゅう議会ぎかい欧州おうしゅう連合れんごう理事りじかい並存へいそんである。すなわち欧州おうしゅう議会ぎかい市民しみんによる直接ちょくせつ選挙せんきょ選出せんしゅつされるのにたいして、欧州おうしゅう連合れんごう理事りじかい加盟かめいこく政府せいふによって構成こうせいされるというかたちあらわされているのである。欧州おうしゅう連合れんごう政策せいさく執行しっこう機関きかんちょう国家こっかてき権限けんげんあたえられている欧州おうしゅう委員いいんかいであり、その委員いいん欧州おうしゅう理事りじかい任命にんめいし、委員いいんかい人事じんじたいして欧州おうしゅう議会ぎかい承認しょうにんようする。

欧州おうしゅう議会ぎかい[編集へんしゅう]

欧州おうしゅう議会ぎかい欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくにおいてもっと権限けんげん強化きょうかされた機関きかんのひとつである。だいI-20じょうだい1こうでは欧州おうしゅう議会ぎかいについて、「欧州おうしゅう連合れんごう理事りじかいとともに立法りっぽうおこない、財政ざいせいについての権限けんげん行使こうしする」としている。立法りっぽう過程かていにおいて欧州おうしゅう議会ぎかい欧州おうしゅう連合れんごう理事りじかい同等どうとう権限けんげんつことになる共同きょうどう決定けってい手続てつづきあらたに「正式せいしき立法りっぽう手続てつづき」とされ、従来じゅうらい35の政策せいさく分野ぶんやについてしかもちいられなかったのが92分野ぶんやにおいてもちいられることになった。とりわけ共通きょうつう農業のうぎょう政策せいさく警察けいさつ刑事けいじ司法しほう協力きょうりょく分野ぶんやにおいては欧州おうしゅう議会ぎかいあつか権限けんげんたかめられた。ただしその一方いっぽう共通きょうつう外交がいこう安全あんぜん保障ほしょう政策せいさく分野ぶんやについては欧州おうしゅう連合れんごう理事りじかい排他はいたてきあつかうということに変更へんこうくわえられていない。

財政ざいせいかんしては、欧州おうしゅう議会ぎかいあらたな権限けんげんあたえられた。従来じゅうらい共通きょうつう農業のうぎょう政策せいさく以外いがいのすべての歳出さいしゅつについての権限けんげんあたえられていたが、予算よさん全体ぜんたいの46%をめる農業のうぎょう部門ぶもんにおいても欧州おうしゅう議会ぎかい関与かんよみとめられるようになった。これによって欧州おうしゅう議会ぎかい欧州おうしゅう連合れんごう支出ししゅつすべてについて決定けっていけんにぎることになったのである。しかしながら依然いぜんとして予算よさん総額そうがく独自どくじ増額ぞうがくしたり欧州おうしゅう連合れんごうとしてのあらたなぜい導入どうにゅうしたりすることはできない。これは歳入さいにゅうについての権限けんげん欧州おうしゅう連合れんごう理事りじかい付与ふよされているためである。

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくでは加盟かめいこくごとの欧州おうしゅう議会ぎかい議員ぎいん人数にんずう割当わりあてかんする規則きそくについて、欧州おうしゅう理事りじかい決定けっていすることとしている。議席ぎせき配分はいぶん逓減ていげん比例ひれい原則げんそくによってめられており、人口じんこうおおくにではその人口じんこう1にんたりの欧州おうしゅう議会ぎかい議員ぎいんすう人口じんこうちいさいくにのそれよりもすくなくなっている。全体ぜんたい定数ていすうについては、2009ねん選挙せんきょ選出せんしゅつされた欧州おうしゅう議会ぎかいにおいては750を下回したまわるようにしなければならないとさだめられた。

欧州おうしゅう議会ぎかいにおける採決さいけつ方法ほうほう欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくにおいても変更へんこうがなされなかった。立法りっぽう欧州おうしゅう委員いいんかい委員いいんちょう選任せんにんなどの通常つうじょう採択さいたくには投票とうひょうすう絶対ぜったい過半数かはんすう立法りっぽうについてのだい2読会どっかいでは選任せんにんされた議員ぎいん絶対ぜったい過半数かはんすう欧州おうしゅう委員いいんかいたいする不信任ふしんにん決議けつぎなどの一部いちぶ例外れいがいでは3ぶんの2以上いじょう多数たすうがそれぞれ必要ひつようとなる。

欧州おうしゅう理事りじかいおよび議長ぎちょう[編集へんしゅう]

加盟かめい各国かっこく国家こっか元首げんしゅまたは政府せいふなが構成こうせいされ、とし4かい定期ていき会合かいごうひら欧州おうしゅう理事りじかい欧州統合おうしゅうとうごう推進すいしんする重要じゅうよう役割やくわりつとされる機関きかんである。しかしながらこれまで欧州おうしゅう理事りじかい加盟かめいこく閣僚かくりょう構成こうせいされる欧州おうしゅう連合れんごう理事りじかいとはことなり、欧州おうしゅう連合れんごうない基本きほん条約じょうやくじょう機関きかんではなかった。そこで欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくでは欧州おうしゅう理事りじかい正式せいしき欧州おうしゅう連合れんごう機関きかんとすることをさだめていた。

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくでは、欧州おうしゅう理事りじかい欧州おうしゅう連合れんごうの「推進すいしんりょく」をあたえ「政治せいじてき方向ほうこうせい優先ゆうせん順位じゅんい」をさだめるが立法りっぽうてき機能きのうゆうさないとしている。欧州おうしゅう理事りじかい使命しめい連合れんごう構造こうぞう調整ちょうせいや、新規しんき加盟かめい連合れんごうにおけるあらたな役割やくわりについての基本きほんてき決定けっていおこなうことである。また欧州おうしゅう理事りじかい欧州おうしゅう委員いいんかい委員いいんちょう指名しめいする。欧州おうしゅう理事りじかい原則げんそくとして「全員ぜんいん一致いっち」で決定けっていおこなう。

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくにおける重要じゅうよう変更へんこうてん常任じょうにん欧州おうしゅう理事りじかい議長ぎちょう設置せっちすることである。議長ぎちょう欧州おうしゅう理事りじかい特定とくてい多数決たすうけつ選任せんにんされ、任期にんきは2ねんはん再任さいにん可能かのう)というものであり、従来じゅうらい議長ぎちょうこく首脳しゅのう半年はんとしごとの輪番りんばんせいになっていたものをあらためることになった。

これにより欧州おうしゅう理事りじかい活動かつどう効果こうか向上こうじょうすることになる。従来じゅうらいの「半年はんとしあいだ議長ぎちょうせい議長ぎちょう交替こうたいごとに政治せいじ方針ほうしん重心じゅうしんかんがかた変化へんかすることがこるために不都合ふつごうであり、また他方たほう欧州おうしゅう理事りじかい議長ぎちょう自国じこく首脳しゅのうとしての役割やくわり同時どうじにこなすためにじゅう負担ふたんとなっていた。常任じょうにん議長ぎちょうのもとでは任期にんき延長えんちょうされたことにより、欧州おうしゅう理事りじかい会合かいごうけた各国かっこく首脳しゅのうあいだでの効率こうりつてきかつ継続けいぞくてき調整ちょうせいおこなうことができるようなる。さらに常任じょうにん議長ぎちょう欧州おうしゅう連合れんごう主要しゅよう機関きかんのひとつとしての欧州おうしゅう理事りじかいの「かお」となり、国際こくさい紛争ふんそう重要じゅうよう内部ないぶ決定けっていなどにあたって、メディアや市民しみんたいして欧州おうしゅう連合れんごうとしての行動こうどうについての説明せつめいおこな役割やくわりになうことが期待きたいされた。

ところが欧州おうしゅう理事りじかいおよび議長ぎちょう日常にちじょうてき政策せいさく立法りっぽう過程かてい介入かいにゅうすることはできない。これらは欧州おうしゅう委員いいんかい欧州おうしゅう連合れんごう理事りじかい欧州おうしゅう議会ぎかいがそれぞれあつかうものである。このてんについては欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく起草きそう段階だんかいで、ぜん加盟かめいこく首脳しゅのう背後はいごにいる欧州おうしゅう理事りじかい議長ぎちょう欧州おうしゅう委員いいんかい委員いいんちょうとが競合きょうごうするという批判ひはんがなされていた。

欧州おうしゅう連合れんごう理事りじかい[編集へんしゅう]

欧州おうしゅう連合れんごう理事りじかいたん理事りじかいとも)は加盟かめいこく閣僚かくりょう構成こうせいされ、閣僚かくりょうはそれぞれの担当たんとう政策せいさく分野ぶんやごとの理事りじかいにおいて協議きょうぎおこなう。このため非公式ひこうしきではあるが「閣僚かくりょう理事りじかい」ともばれる。理事りじかいしゅたる使命しめい欧州おうしゅう議会ぎかいおなじく立法りっぽうおこなうことである。原則げんそくとして欧州おうしゅう議会ぎかい発言はつげんけんちいさい、あるいはまったくない場合ばあいには欧州おうしゅう連合れんごう理事りじかいでは全会ぜんかい一致いっちでの採決さいけつようし、共同きょうどう決定けってい手続てつづきにおいては欧州おうしゅう連合れんごう理事りじかいでは多数決たすうけつもちいられる。

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくでは後者こうしゃ方法ほうほう通常つうじょう立法りっぽう手続てつづきとなるため理事りじかいでは特定とくてい多数決たすうけつ方式ほうしきによる採択さいたくもちいられるが、一部いちぶ例外れいがいてき事案じあんにおいては個別こべつ加盟かめいこく拒否きょひけんみとめられる。また安全あんぜん保障ほしょう防衛ぼうえい政策せいさく税制ぜいせいについての事案じあんでは全会ぜんかい一致いっちでの採択さいたくようする。

欧州おうしゅう理事りじかいことなり、欧州おうしゅう連合れんごう理事りじかいにおいては半年はんとしごとに議長ぎちょうこく交替こうたいする輪番りんばんせい維持いじされる。一方いっぽう新設しんせつされる外務がいむ理事りじかい任期にんき5ねん連合れんごう外相がいしょう議長ぎちょうつとめる。

特定とくてい多数決たすうけつ[編集へんしゅう]

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくおおきく変更へんこうされたのは欧州おうしゅう連合れんごう理事りじかいにおける採決さいけつほうである。いわゆる「特定とくてい多数決たすうけつ方式ほうしき」において各国かっこく意思いしがより反映はんえいされるようになり、従来じゅうらいくらべて少数しょうすう意見いけん重視じゅうしされるようになった。ニース条約じょうやくさだめられた票数ひょうすう配分はいぶん恣意しいてきなものであり、欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくでは廃止はいしされることになった。ニース条約じょうやくしたでの特定とくてい多数決たすうけつ方式ほうしきでは

  1. 加盟かめいこく半数はんすう以上いじょう
  2. ぜん345ひょうちゅう255ひょう以上いじょう
  3. 賛成さんせいひょうとうじたくに人口じんこう合計ごうけい欧州おうしゅう連合れんごう域内いきない人口じんこうの62%以上いじょう

のすべてをたして可決かけつとされていたが、欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくではいわゆる「じゅう多数決たすうけつ」の原則げんそくにより

  1. 加盟かめいこくの55%以上いじょう
  2. 賛成さんせいひょうとうじたくに人口じんこう合計ごうけい欧州おうしゅう連合れんごう域内いきない人口じんこうの65%以上いじょう

両方りょうほうたして可決かけつとなる。

ニース条約じょうやくでは可決かけつのための要件ようけんが3つとなっていたが、欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくではそれが支持しじこくすう人口じんこう割合わりあいの2つとなった。これについてはまず、じゅう多数決たすうけつ欧州おうしゅう連合れんごう市民しみん加盟かめいこくという「じゅう性格せいかく "Doppelcharakter"」(ヨシュカ・フィッシャー)によるものとされている。つぎ可決かけつ阻止そし少数しょうすう要件ようけんなんしたことにより意思いし決定けってい容易よういになった。3つめとしてちから関係かんけい変動へんどうあたえ、大国たいこく小国しょうこく中間ちゅうかんてき規模きぼくに不利ふりとなるような影響えいきょうりょくつようになった。規模きぼてん不利ふりとなるくにはオーストリアからスペインのあいだ位置いちづけられるくにで、とくにスペインとポーランドはニース条約じょうやくしたでのひょう割当わりあてすうおおきな影響えいきょうりょくっていたが、欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくによって両国りょうこく反対はんたいとおすことが困難こんなんとなった。つまり2007ねん1がつ時点じてん事案じあん否決ひけつしようとすれば反対はんたいが91ひょう以上いじょうとなればよかったものが(スペインとポーランドであわせて54ひょうっていた)、欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく規定きていではみずからとみずからに同調どうちょうするくにけい13かこくあつめるか、みずからをふくめて同調どうちょうするくに人口じんこうがおよそ1おく7500まんにんとしなければならなくなる(スペインとポーランド両国りょうこく人口じんこう合計ごうけいはおよそ8200まんにん)。

欧州おうしゅう連合れんごう理事りじかい特定とくてい多数決たすうけつ方式ほうしき政府せいふあいだ協議きょうぎにおいて主要しゅよう議題ぎだいとなっていた。2004ねんのスペインそう選挙せんきょホセ・マリア・アスナール政権せいけんやぶれておや欧州おうしゅう連合れんごうホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロ首相しゅしょういたことで、この議論ぎろん合意ごういにこぎつけることができた。

外務がいむ理事りじかい連合れんごう外相がいしょう[編集へんしゅう]

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくによる変更へんこうでは外務がいむ理事りじかい連合れんごう外相がいしょうしょく新設しんせつされる。従来じゅうらい加盟かめいこく外相がいしょう総務そうむ対外たいがい関係かんけい理事りじかいにおいて連合れんごう全般ぜんぱんてき事案じあん外交がいこう政策せいさくについて協議きょうぎしてきたが、欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくだいI-24じょうでは「総務そうむ理事りじかい」と「外務がいむ理事りじかい」にけることをさだめた。

総務そうむ理事りじかい議長ぎちょう従来じゅうらいおなじく議長ぎちょうこく閣僚かくりょう半年はんとしとの輪番りんばんせいつとめることになっているが、外務がいむ理事りじかい議長ぎちょう新設しんせつされる連合れんごう外相がいしょうつとめることになる。連合れんごう外相がいしょう任期にんきを5ねんとし、欧州おうしゅう理事りじかいにおける特定とくてい多数決たすうけつ任命にんめいされる。

この変更へんこうにより、従来じゅうらいおこなわれてきた欧州おうしゅう連合れんごう外交がいこうについての調整ちょうせいという問題もんだい解消かいしょうされる。すくなくとも相手あいて通告つうこくするということをせずに独断どくだんてき決定けっていおこなうということが頻繁ひんぱんにあったため、これまで政府せいふあいだでの調整ちょうせい不足ふそくがたびたびこっていた。また欧州おうしゅう連合れんごうというひとつの組織そしきなか共通きょうつう外交がいこう安全あんぜん保障ほしょう政策せいさく上級じょうきゅう代表だいひょう欧州おうしゅう委員いいんかい対外たいがい関係かんけい担当たんとう委員いいん総務そうむ対外たいがい関係かんけい理事りじかい議長ぎちょうという3つの役職やくしょく並立へいりつし、それぞれに外交がいこう政策せいさくについての権限けんげん発言はつげんけんがあるということが状況じょうきょうをよりわかりにくいものとしていた。

連合れんごう外相がいしょう欧州おうしゅう連合れんごう外交がいこう政策せいさくにおける機構きこうあいだ対立たいりつのぞくために、これら3つの役職やくしょく統合とうごうして新設しんせつされることになる。さらに連合れんごう外相がいしょう外務がいむ理事りじかい議長ぎちょう欧州おうしゅう委員いいんかいふく委員いいんちょう対外たいがい関係かんけい担当たんとう委員いいんねることになる。この兼務けんむ体制たいせいにより欧州おうしゅう連合れんごう外交がいこう政策せいさくにおけるむずかしい調整ちょうせい牽引けんいんすることができるとされている。

さらにだいIII-296じょうだい3こうでは欧州おうしゅう対外たいがい活動かつどうきょく設置せっちさだめられており、欧州おうしゅう対外たいがい活動かつどうきょく連合れんごう外相がいしょうしたかれ、加盟かめいこく外務がいむ担当たんとう機関きかん権能けんのううばわないかぎりにおいて協力きょうりょくして任務にんむにあたる。欧州おうしゅう対外たいがい活動かつどうきょく職員しょくいん組織そしきめんにおいて既存きそん欧州おうしゅう委員いいんかい対外たいがい関係かんけい機関きかんよりも充実じゅうじつしたものとなるが、細部さいぶ運営うんえいにあたっては欧州おうしゅう連合れんごう理事りじかい決議けつぎゆだねられている。

欧州おうしゅう委員いいんかいおよび委員いいんちょう[編集へんしゅう]

欧州おうしゅう委員いいんかい従来じゅうらいおなじく、調整ちょうせい執行しっこう運営うんえいについての機能きのう実行じっこうする。また例外れいがいてき事案じあんのぞいては、連合れんごう立法りっぽう行為こうい欧州おうしゅう委員いいんかい提案ていあんもとづいてのみ採択さいたくされる。ただし発議はつぎけん例外れいがい欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくにおいて削減さくげんされているため、欧州おうしゅう委員いいんかい機能きのう強化きょうかされることになる。

委員いいんかい任命にんめい手続てつづきについてはおおきな変更へんこうがなされていない。委員いいんかい任期にんきは5ねんで、欧州おうしゅう議会ぎかい議員ぎいん選挙せんきょのあとに欧州おうしゅう理事りじかいあらたな欧州おうしゅう委員いいんかい委員いいんちょう指名しめいし、その委員いいんちょうあん欧州おうしゅう議会ぎかい承認しょうにんまたは拒否きょひのいずれかを採択さいたくしなければならない。欧州おうしゅう議会ぎかいしん委員いいんちょうあん否決ひけつした場合ばあいは、欧州おうしゅう理事りじかいあらためてしん委員いいんちょう候補こうほ提示ていじすることになるが、それにあたって欧州おうしゅう議会ぎかい独自どくじ候補こうほ指名しめいすることはできない。欧州おうしゅう議会ぎかい承認しょうにんをうけたのち、しん委員いいんちょうかく加盟かめいこくからされた意見いけん考慮こうりょして委員いいんかい構成こうせいいん指名しめいする。最終さいしゅうてきには委員いいんかい全体ぜんたいとして欧州おうしゅう議会ぎかい承認しょうにんけてしん委員いいんかい発足ほっそくとなる。任期にんきちゅう委員いいんちょう個別こべつ委員いいん解任かいにんすることができるが、欧州おうしゅう議会ぎかい不信任ふしんにん決議けつぎでもって委員いいんかい全体ぜんたいそう辞職じしょくさせるという方法ほうほうしかっていない。

欧州おうしゅう委員いいんかい関連かんれんして欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくおおきく変更へんこうされたのは委員いいんかず削減さくげんである。従来じゅうらい制度せいどにおいてはかく加盟かめいこくから1めいずつを欧州おうしゅう委員いいんかい委員いいんとしており、2007ねん拡大かくだい委員いいんかずは27にまで増加ぞうかした。ニース条約じょうやくにおいて各国かっこく首脳しゅのう加盟かめいこくすうが25をえたときには、もはや各国かっこくから委員いいん必要ひつようはないということで合意ごういしていたが、その代替だいたいとなる具体ぐたいてき制度せいどさだめられていなかった。欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくでは輪番りんばんせい原則げんそくとし、委員いいんかず加盟かめいこくすうの3ぶんの2とすることが規定きていされた。

とりわけ規模きぼちいさいくににとって委員いいんかい規模きぼ縮小しゅくしょうするということは非常ひじょう重大じゅうだいであった。欧州おうしゅう連合れんごう理事りじかいにおける多数決たすうけつについての制度せいどについでこの委員いいんかい削減さくげん政府せいふあいだ協議きょうぎおおきな争点そうてんとなった。そのため委員いいんすう削減さくげん実施じっしするのは2014ねん以降いこうとすることで妥結だけつされ、それまでは従来じゅうらいどおりかく加盟かめいこくから1めいずつ委員いいんすことになった。また輪番りんばんせい原則げんそくについてどのように実施じっしするかということは政府せいふあいだ協議きょうぎ明確めいかくにすることができず、その欧州おうしゅう理事りじかい決定けっていゆだねることとなった。輪番りんばんせい原則げんそくについてさだめられたのは、加盟かめいこく委員いいん選出せんしゅつにあたっては「完全かんぜん平等びょうどうなものとして」あつかわれるが、「将来しょうらいにおける歴代れきだい委員いいんかい連合れんごう加盟かめいこく人口じんこう統計とうけいてきかつ地理ちりてきはば満足まんぞくさせるように構成こうせいされるものとする」、ということにとどまった。この条文じょうぶんくに規模きぼ大小だいしょう北方ほっぽう南方みなかた富裕ふゆう貧困ひんこんといった均衡きんこうがとられていなければならないと解釈かいしゃくされている。

内容ないようめんでの変更へんこう[編集へんしゅう]

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくでは機構きこう改革かいかくのほかに、あらたに欧州おうしゅう連合れんごう権限けんげんについて整備せいびしたり加盟かめいこくあいだでの協力きょうりょく関係かんけいのありかたを構造こうぞうしたりすることが企図きとされている。以下いかはそれらのなかでも重要じゅうよう変更へんこうとなるものである。

権限けんげん定義ていぎ[編集へんしゅう]

欧州おうしゅう連合れんごう原則げんそくとして基本きほん条約じょうやく明文化めいぶんかされている権限けんげんしかゆうさないものとされている(個別こべつ授権原則げんそく)。従来じゅうらい基本きほん条約じょうやくでは、そのような権限けんげん特定とくてい条文じょうぶんにおいてではなく条約じょうやく全体ぜんたい記述きじゅつされていた。このため条約じょうやく解釈かいしゃく困難こんなんなものになっており、また詳細しょうさい連合れんごう権限けんげん範囲はんい明確めいかくであった。

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくではドイツ連邦れんぽう共和きょうわこく基本きほんほうにならい、連合れんごう権限けんげん体系たいけいした「権限けんげん類型るいけい」をむことでこの問題もんだい解決かいけつした。だいI-12じょうでは権限けんげん排他はいたてき共有きょうゆうてき支援しえんてきなものに区分くぶんしている。まず排他はいたてき権限けんげんとは、連合れんごうだけが単独たんどく権限けんげんつものである。つぎに共有きょうゆうてき権限けんげんとは連合れんごう権限けんげんつものの、加盟かめいこくがその根拠こんきょとなるほう採択さいたくするものであって連合れんごうではほう作成さくせいないものである。最後さいご支援しえんてき権限けんげんとは連合れんごう加盟かめいこく行動こうどう支援しえん調整ちょうせい補完ほかんするための権限けんげんで、連合れんごうがそのための立法りっぽうおこなわないものである。このほか国家こっかあいだ経済けいざい雇用こよう政策せいさく外交がいこう安全あんぜん保障ほしょう政策せいさく分野ぶんやについて言及げんきゅうされており、連合れんごう欧州おうしゅう連合れんごう理事りじかいにおける全会ぜんかい一致いっちでの採択さいたくでもってのみ指針ししん策定さくていすることができるとされている。

だいI-13じょうから17じょうでは、連合れんごう政策せいさく分野ぶんやごとにどのような権限けんげんつのかということについてまとめて列挙れっきょされている。排他はいたてき権限けんげんなかには通商つうしょう政策せいさく関税かんぜい同盟どうめいげられ、つぎに共有きょうゆうてき権限けんげんでは域内いきない市場いちば農業のうぎょうエネルギー運輸うんゆ環境かんきょう消費しょうひしゃ保護ほご対象たいしょうとしている。最後さいご支援しえんについての領域りょういきには保健ほけん産業さんぎょう教育きょういく防災ぼうさいふくまれている。

連合れんごう目的もくてき価値かち[編集へんしゅう]

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくでは欧州おうしゅう連合れんごう総体そうたいとして義務ぎむてきおこな活動かつどうのための「連合れんごう目的もくてき価値かち」がだいI-2じょうにおいて以下いかのように定義ていぎされている。

日本語にほんごかりやく連合れんごうは、個人こじん尊厳そんげん自由じゆう民主みんしゅ主義しゅぎ平等びょうどうほう支配しはい少数しょうすうしゃとされる人々ひとびと権利けんりふく人権じんけん尊重そんちょう基礎きそとしてつものとする。これらの価値かちは、多元たげん主義しゅぎ差別さべつ寛容かんよう正義まさよし社会しゃかい連帯れんたい男女だんじょ同権どうけん特色とくしょくとする社会しゃかいにある加盟かめいこくすべてに共通きょうつうするものである。

だいI-3じょうでは連合れんごう目的もくてきがうたわれており、そのなかには平和へいわ推進すいしん自由じゆう歪曲わいきょくのない競争きょうそうがなされる単一たんいつ市場いちば創設そうせつ経済けいざい成長せいちょう価格かかく安定あんていせい社会しゃかいてき市場いちば経済けいざい環境かんきょう保護ほご社会しゃかい正義まさよし文化ぶんか多様たようせい世界せかい規模きぼでの貧困ひんこん撲滅ぼくめつ国際こくさいほう発展はってんげられている。

補完ほかんせい原則げんそく[編集へんしゅう]

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくだいI-12じょうにおいて規定きていされた補完ほかんせい原則げんそく比例ひれい原則げんそくはすでにマーストリヒト条約じょうやくにおいてうたわれていた。補完ほかんせい原則げんそくとは、加盟かめいこく行動こうどう目標もくひょう中央ちゅうおう次元じげんおよび地域ちいき地方ちほう次元じげんのいずれにおいても十分じゅうぶん達成たっせいできないもので、連合れんごう次元じげんにおいてならばよりよく達成たっせいできるものである場合ばあいかぎって連合れんごう行動こうどうすることができるというものである。つまり連合れんごう地方ちほう政府せいふ加盟かめいこく中央ちゅうおう政府せいふといった下位かい次元じげん適切てきせつ実施じっしできないが、欧州おうしゅう連合れんごうとしてならば十分じゅうぶん実行じっこうすることができるというような場合ばあいにのみ、加盟かめいこく任務にんむ実行じっこうすることができるのである。このときの「十分じゅうぶん」というものは個別こべつ事案じあんごとに欧州おうしゅう司法しほう裁判所さいばんしょ判断はんだんする。

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく変更へんこうされたてんについては補完ほかんせいおよび比例ひれい原則げんそく適用てきようかんする議定ぎていしょにおいて詳細しょうさい記述きじゅつされている。補完ほかんせい確保かくほのために、とりわけ加盟かめいこく国内こくない議会ぎかい権限けんげん強化きょうかされた。欧州おうしゅう委員いいんかい法案ほうあん提出ていしゅつしてから6週間しゅうかん以内いない国内こくない議会ぎかいはその法案ほうあんたいして反対はんたいする理由りゆうべることができる。一院制いちいんせい議会ぎかいにおいては2ひょうが、二院にいんせい議会ぎかいにおいてはかくいんに1ひょうずつがてられ、全体ぜんたいの3ぶんの1以上いじょう反対はんたいとした場合ばあい欧州おうしゅう委員いいんかい法案ほうあんさい検討けんとうしなければならない。欧州おうしゅう委員いいんかい国内こくない議会ぎかいによる反対はんたい拒否きょひすることができるが、その場合ばあい理由りゆうげなければならない。

最終さいしゅうてき補完ほかんせい原則げんそく確保かくほする役割やくわりになうのは、従来じゅうらいおなじく欧州おうしゅう司法しほう裁判所さいばんしょである。加盟かめいこくあるいは地域ちいき委員いいんかい欧州おうしゅう司法しほう裁判所さいばんしょたいして訴訟そしょう提起ていきすることができるが、国内こくない議会ぎかいみずからが提訴ていそすることはできず、加盟かめいこく政府せいふとおしたかたち欧州おうしゅう司法しほう裁判所さいばんしょうったえることになる。

強化きょうかされた協力きょうりょく[編集へんしゅう]

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくではだいI-44じょうにおいて「強化きょうかされた協力きょうりょく」があらたに制度せいどされた。この制度せいどは、ある行動こうどう計画けいかく欧州おうしゅう連合れんごう全体ぜんたいとして実施じっしすることができない場合ばあいにおける複数ふくすう一部いちぶ加盟かめいこくでの統合とうごう措置そち解釈かいしゃくされている。

強化きょうかされた協力きょうりょくのモデルとなっているのはシェンゲン協定きょうてい経済けいざい通貨つうか統合とうごうであり、これらはほかの欧州おうしゅう連合れんごう統合とうごう過程かてい先駆さきがけて一部いちぶ加盟かめいこくですでに実施じっしされているものである。欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくでははじめて、必要ひつよう場合ばあいにおいて欧州おうしゅう連合れんごう統一とういつされた法令ほうれい基本きほんほう枠組わくぐみにおいて実行じっこうにずれがるような統合とうごうについての手続てつづき規定きていされた。加盟かめいこくの3ぶんの1があつまった場合ばあいにおいて、その参加さんかこくみずからのみに有効ゆうこう法令ほうれいさだめ、欧州おうしゅう連合れんごう機関きかん利用りようすることができるようになった。また強化きょうかされた協力きょうりょくあたらしい特殊とくしゅ形態けいたいとしてだいI-41じょうだい6こう規定きていされている、共通きょうつう外交がいこう安全あんぜん保障ほしょう政策せいさく枠組わくぐないにおける、恒久こうきゅうてき構造こうぞうされた協力きょうりょくがある。

法人ほうじんかく[編集へんしゅう]

従来じゅうらい基本きほん条約じょうやく体制たいせいにおいて、国際こくさい法人ほうじんかくゆうしていたのは欧州共同体おうしゅうきょうどうたいであって、欧州おうしゅう連合れんごうには法人ほうじんかくがなかった。そのため欧州共同体おうしゅうきょうどうたいは授権された範囲はんいない法的ほうてき拘束こうそくりょく決定けっていおこなうことができるが、欧州おうしゅう連合れんごうはあくまでも「統括とうかつ機関きかん」としてしか活動かつどうすることができなかった。とくに外交がいこう政策せいさくにおいて国際こくさい法人ほうじんかくがなかったために欧州おうしゅう連合れんごう独立どくりつした機関きかんとして行動こうどうすることができず、ただ加盟かめいこく集合しゅうごうたいというものにぎなかった。

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくでは欧州おうしゅう連合れんごう法人ほうじんかく付与ふよされることになっている。これにより欧州おうしゅう連合れんごう国際こくさいほう主体しゅたいとして、外務がいむ理事りじかい全会ぜんかい一致いっちでの決議けつぎがなされたうえ国際こくさい条約じょうやく協定きょうてい署名しょめいし、また欧州おうしゅう対外たいがい関係かんけいきょくつうじて他国たこくとの外交がいこう関係かんけい構築こうちくしたり、欧州おうしゅう評議ひょうぎかい国際こくさい連合れんごうといった国際こくさい機関きかん正式せいしき参加さんかしゃとして加入かにゅうしたりすることができるようになる。

欧州おうしゅう連合れんごう基本きほんけん憲章けんしょう欧州おうしゅう人権じんけん条約じょうやくへの加入かにゅう[編集へんしゅう]

欧州おうしゅう連合れんごう基本きほんけん憲章けんしょう

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくだいIIとしてまれることになる欧州おうしゅう連合れんごう基本きほんけん憲章けんしょうにおいておおきな変更へんこうがなされることになる。基本きほんけん憲章けんしょうは2000ねんのニース欧州おうしゅう理事りじかいにおいて採択さいたく公布こうふされたものだが、憲章けんしょう自体じたい法的ほうてき効力こうりょくつものではなかった。

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくによって基本きほんけん憲章けんしょう欧州おうしゅう連合れんごう全体ぜんたいにおいて拘束こうそくりょくつものとなる。基本きほんけん憲章けんしょう内容ないよう人権じんけん基本きほんてき自由じゆう保護ほごのための条約じょうやく欧州おうしゅう人権じんけん条約じょうやく)にならい、一部いちぶ発展はってんさせたものとなっており、ドイツ基本きほんほうのように基本きほんけん類型るいけいしたようなものにちかくなっている。ただしだいII-113じょうでは「有利ゆうりせい原則げんそく」について規定きていされており、基本きほんけん憲章けんしょう基本きほんけん障害しょうがいとなることがあってはならないとしている。つまり基本きほんけん憲章けんしょう加盟かめいこく憲法けんぽうのようなほかの基本きほんけん類型るいけいさだめたものとが競合きょうごうする場合ばあい原則げんそくとしてそのいずれかのうちでより有利ゆうり規定きてい適用てきようされることになる。

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくだいI-9じょうだい2こうでは欧州おうしゅう人権じんけん条約じょうやくへの欧州おうしゅう連合れんごう加入かにゅう企図きとされている。欧州おうしゅう人権じんけん条約じょうやく加入かにゅうについては、とりわけ欧州おうしゅう評議ひょうぎかいかんがかた関連かんれんして連合れんごう政治せいじてき価値かち定義ていぎ言及げんきゅうした1961ねんのビルケルバッハ報告ほうこく以来いらいすうじゅうねんにわたって議論ぎろんされてきたが、そのあいだ欧州おうしゅう人権じんけん条約じょうやく加入かにゅうすることはなかった。もっとも欧州おうしゅう連合れんごう欧州おうしゅう人権じんけん条約じょうやく加入かにゅうするには、欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくによって付与ふよされることになる独自どくじ法人ほうじんかく必要ひつようである。

また欧州おうしゅう連合れんごう人権じんけん条約じょうやく加入かにゅうするには、人権じんけん条約じょうやくだい59じょうだい1こう欧州おうしゅう評議ひょうぎかい加盟かめいこくにのみ開放かいほうされているという規定きてい修正しゅうせいする必要ひつようがある。この修正しゅうせい人権じんけん条約じょうやくだい14議定ぎていしょでなされることになっているが、ロシア批准ひじゅん完了かんりょうしていないために議定ぎていしょはいまだ発効はっこうしていない。

結局けっきょくのところ欧州おうしゅう連合れんごう欧州おうしゅう人権じんけん条約じょうやく加入かにゅうしようとするには特別とくべつ国際こくさい条約じょうやくについての協議きょうぎがなされなければならず、またそのためには欧州おうしゅう連合れんごう理事りじかいにおいて加盟かめいこく全会ぜんかい一致いっち批准ひじゅん決議けつぎしなければならない。最終さいしゅうてき欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく発効はっこうしてもそれぞれの加盟かめいこく具体ぐたいてき加入かにゅう条件じょうけん反対はんたいすることができるため、加盟かめいこく欧州おうしゅう連合れんごう欧州おうしゅう人権じんけん条約じょうやく加入かにゅうすることについての拒否きょひけんつことになる。

市民しみんによる請願せいがん[編集へんしゅう]

直接ちょくせつ民主みんしゅてき要素ようそ追加ついかてんとして、だいI-47じょうだい4こうにおいてヨーロッパ規模きぼでの市民しみん請願せいがんについての規定きてい導入どうにゅうされた。これにより欧州おうしゅう委員いいんかいたいして特定とくてい問題もんだいについて適切てきせつ法案ほうあん提出ていしゅつするようもとめることができるようになる。請願せいがん提出ていしゅつするには100まんにん署名しょめい必要ひつようである(くにかずについての要件ようけん事後じご法令ほうれい制定せいていする)。市民しみん請願せいがん提出ていしゅつされた場合ばあい欧州おうしゅう委員いいんかいみずからの権限けんげん範囲はんいないにおいて行動こうどうすることができる。ただし欧州おうしゅう連合れんごう枠組わくぐみをえた権限けんげん拡張かくちょうみとめられない。

任意にんい脱退だったい加盟かめい要件ようけん[編集へんしゅう]

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくだいI-60じょうでは加盟かめいこく任意にんい脱退だったいについて規定きていされ、これにより従来じゅうらい明文化めいぶんかされていなかった脱退だったい可能かのうかどうかについてのあいまいな状態じょうたい解決かいけつされることになった。

くわえて欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくでは厳格げんかく加盟かめい基準きじゅんによる要件ようけんまれた。だいI-58じょうによると将来しょうらいにおいて加盟かめい希望きぼうするくに欧州おうしゅう連合れんごう価値かち民主みんしゅ主義しゅぎ人権じんけんほう支配しはいなど)を「尊重そんちょうし、その価値かちをともに実現じつげんさせていくことを確約かくやく」しなければならない。これにたいしてニース条約じょうやくによる修正しゅうせいがなされたマーストリヒト条約じょうやくだい49じょうによると、「(欧州おうしゅう連合れんごうの)原理げんり尊重そんちょうするどのようなくに」ならば加盟かめい申請しんせいすることができるとされている。つまり原理げんり推進すいしんについての明確めいかく義務ぎむふくまれていないのである。

連合れんごう強制きょうせい[編集へんしゅう]

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくでは、ある加盟かめいこくにおいてそのくに政治せいじ連合れんごう価値かち民主みんしゅ主義しゅぎほう支配しはい人権じんけんなど)に合致がっちしないという場合ばあいについての規定きてい新設しんせつされている。だいI-59じょうでは当事とうじこく以外いがいのすべての加盟かめいこく欧州おうしゅう議会ぎかいの3ぶんの2による採択さいたくにより、当事とうじこく投票とうひょう資格しかく停止ていしすることができるとさだめている。

ドイツ基本きほんほう連邦れんぽう強制きょうせい (Bundeszwang) にちなんで、この手続てつづきぞくに「連合れんごう強制きょうせい」 (Unionzwang) とばれることがある。ところがこの比喩ひゆてき表現ひょうげん誤解ごかいまねきかねないものである。ドイツの連邦れんぽう強制きょうせい連邦れんぽうのために連邦れんぽうしゅうたいする権限けんげんあたえるものであるが(とりわけ連邦れんぽうしゅう官庁かんちょうたいする命令めいれいけんがある)、欧州おうしゅう連合れんごうの「連合れんごう強制きょうせい」ではあらたな権限けんげん付与ふよするというものではなく、ただ加盟かめいこく既存きそん権限けんげん停止ていしするというものである。

連合れんごうのシンボル[編集へんしゅう]

欧州旗
欧州おうしゅうはた
歓喜かんきうた

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくでのさまざまな変更へんこうのなかでも特筆とくひつされるのは連合れんごうのシンボルである。欧州おうしゅう連合れんごうのシンボル(欧州おうしゅうはた欧州おうしゅううたヨーロッパ・デー欧州おうしゅう連合れんごう標語ひょうご通貨つうかユーロ)についてだいI-8じょう規定きていされ、欧州おうしゅう連合れんごう基本きほん条約じょうやくにおいてはじめて正式せいしき明記めいきされることになった。さらに欧州おうしゅう連合れんごうほうについての概念がいねんあらためられ、規則きそく指令しれいといった特殊とくしゅ表現ひょうげんえて欧州おうしゅうほう欧州おうしゅう枠組わくぐみほうといったものがもちいられることになった。

争点そうてん[編集へんしゅう]

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくはさまざまな政治せいじてき立場たちばとのあいだ衝突しょうとつしており、とくに加盟かめいこく市民しみんあいだでは批判ひはん増加ぞうかしていた。批判ひはんにはさまざまな要素ようそふくまれており、正当せいとうせいから条約じょうやく名称めいしょうといったものまで多岐たきにわたっている。

長大ちょうだい複雑ふくざつ[編集へんしゅう]

批判ひはんなかには欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく現行げんこう国内こくない憲法けんぽう比較ひかくして長大ちょうだい複雑ふくざつであるということを強調きょうちょうするものがある。れいげると、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく憲法けんぽうが4600であるのにたいして欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく附属ふぞく宣言せんげんしょ議定ぎていしょふくめて16まんにもおよんでいる。さらに条文じょうぶんもきわめて複雑ふくざつで、そのために欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく内容ないよう解説かいせつするためのほん出版しゅっぱんされているほどである[8][9][10]

これにたいして欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく支持しじする立場たちばからは、しん条約じょうやく廃止はいしされることになる従来じゅうらい基本きほん条約じょうやくよりもみじかくなると反論はんろんしている。

批准ひじゅん手続てつづきたいする批判ひはん[編集へんしゅう]

欧州おうしゅう将来しょうらいかんするコンベンション」にたいして、通常つうじょう民主みんしゅてき国家こっかとはことなり、参加さんかしゃ選挙せんきょえらばれたり承認しょうにんされていたりしていないてんについて批判ひはんがある。コンベンションにはかけだけの透明とうめいせいしかないというものである。おおやけ会議かいぎであるにもかかわらずなんらかの決定けっていおこなっておらず、また議事ぎじ記録きろくのこされていない。ルクセンブルク首相しゅしょうジャン=クロード・ユンケルは「コンベンションは壮大そうだい民主みんしゅ主義しゅぎショーと宣伝せんでんされることになるだろう。わたしはコンベンションよりもくら暗室あんしつたことがない」とべている[11]

国民こくみん投票とうひょう実施じっし議会ぎかいでの批准ひじゅん採択さいたく時間じかんがあることにより、もっと都合つごう時期じき批准ひじゅんすることが可能かのうである。これはすなわち国民こくみん投票とうひょう結果けっか欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく支持しじがわ都合つごうわせて操作そうさすることができるということを意味いみする。また国民こくみん投票とうひょうさき結果けっかしておくことで議会ぎかいたいして圧力あつりょくをかけることができる。れいげると、世論せろん調査ちょうさ試験しけん投票とうひょう賛成さんせいおおかったことをけてはや時期じき国民こくみん投票とうひょう実施じっししたスペインや、直前ちょくぜんのドイツの議会ぎかいにおける批准ひじゅん手続てつづき結果けっかを「必要ひつよう推進すいしんりょく (poussée nécessaire)」としてのぞんだフランスの国民こくみん投票とうひょうなどがある。

ドイツでは国民こくみん投票とうひょう実施じっしせず早期そうき批准ひじゅんしたことにより、批准ひじゅんへの影響えいきょうおよぼしかねないような欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくへの批判ひはん形成けいせい本格ほんかくてき議論ぎろん阻止そしされた。

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく賛成さんせい反対はんたいとのあいだで資金しきんめんでの後援こうえんやメディアでの露出ろしゅつおおきながあったが、このことはすべての加盟かめいこくにおいて批判ひはん対象たいしょうにはなっていなかった。フランスでは賛成さんせいがメディアにおいてあきらかにおおくの放送ほうそう時間じかんていた。またドイツでは欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく内容ないようについての公開こうかい討論とうろんかいがほとんどおこなわれていなかった。

憲法けんぽうという名称めいしょうたいする批判ひはん[編集へんしゅう]

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく、ユーロ、移動いどう自由じゆう(シェンゲン協定きょうてい)、国家こっか権限けんげん削減さくげんたいしての反対はんたい複数ふくすう言語げんごあらわしている

ほうなかでも最高さいこうのもので「啓蒙けいもうという意味いみにおける社会しゃかい契約けいやく」である「憲法けんぽう」という名称めいしょうもちいることにより、欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくがニース条約じょうやくといったこれまでの基本きほん条約じょうやくながれをくむものではなく、あたらしいものであるということを示唆しさしている。条約じょうやくであればその構成こうせい概念がいねん目的もくてきのための手段しゅだん(いわば目的もくてき規範きはん)となるが、憲法けんぽうという名称めいしょうもちいると定義ていぎじょう、その構成こうせい概念がいねん自己じこ目的もくてきとなる(いわば価値かち共同きょうどうたい公共こうきょうせいもとづく社会しゃかい)。ところが欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくでは欧州おうしゅう連合れんごう内部ないぶにおける公共こうきょうせい(ヨーロッパのアイデンティティ)ではなく、市場いちば通貨つうかけんといった目的もくてき定義ていぎするものとなっている。

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくについて批判ひはんする論拠ろんきょ欧州おうしゅう連合れんごう民主みんしゅせいについての構造こうぞうにあり、ギュンター・フェアホイゲンは「欧州おうしゅう連合れんごうがわれわれに参加さんかもとめるならば、それは民主みんしゅてき不十分ふじゅうぶんだといわなければならないだろう」とべている。民主みんしゅてき不十分ふじゅうぶんであるというものの具体ぐたいれいには以下いかのようなものがある。

  • 欧州おうしゅう議会ぎかい権限けんげん相対そうたいてき制限せいげんされている
    • 欧州おうしゅう議会ぎかい法案ほうあん提出ていしゅつすることができない。
    • 欧州おうしゅう議会ぎかい行政ぎょうせい機関きかん構成こうせいいん欧州おうしゅう委員いいんかい委員いいん)を選出せんしゅつできず、機関きかん全体ぜんたい承認しょうにんまたは拒否きょひし、あるいは不信任ふしんにん表明ひょうめいすることしかできない。
  • 欧州おうしゅう連合れんごう理事りじかい透明とうめいせいひく
    • 欧州おうしゅう連合れんごう理事りじかい会合かいごうだい多数たすう非公開ひこうかいおこなわれており、ただ議論ぎろんをせず投票とうひょう採決さいけつおこなうようなだい規模きぼ会合かいごうにおいてはブリュッセルの議場ぎじょうからモニターしに様子ようすることができるのみである。
    • 採択さいたくについての欧州おうしゅう連合れんごう理事りじかい文書ぶんしょ内部ないぶ厳重げんじゅう保管ほかんされている。

他方たほうでこの批判ひはんは「条約じょうやく」と「憲法けんぽう」という概念がいねんについての(それぞれの言語げんごにおいて)主観しゅかんてき知覚ちかくされる言語げんご表現ひょうげん内容ないよう、つまり内包ないほうてき意味いみ外延がいえんてき意味いみによるものである。マーストリヒト条約じょうやくやその基本きほん条約じょうやく法律ほうりつてき意味いみにおいて、字義じぎとはことなり、欧州おうしゅう連合れんごう憲法けんぽうである。そのために欧州おうしゅう司法しほう裁判所さいばんしょ法律ほうりつは「ヨーロッパの憲法けんぽうてき条約じょうやく」と表現ひょうげんする。どのような名称めいしょう(「憲法けんぽう」や「基本きほんほう」といった名称めいしょうのものや、あるいはイギリスのように不文法ふぶんほう名称めいしょうがないような「議会ぎかい制定せいていほう慣習かんしゅうほう」)であろうが、どのような機関きかん国家こっか団体だんたい国際こくさいちょう国家こっか機関きかんなど)に適用てきようされていようが、そのようなものには関係かんけいなく法学ほうがくてき視点してんからすれば憲法けんぽう歴史れきしてきほう秩序ちつじょにおける最初さいしょほう、つまりほう策定さくていする過程かていにおいて最初さいしょ段階だんかいであることにほかならない。 ほん条約じょうやくで「憲法けんぽう制定せいていする条約じょうやく」という表現ひょうげん使つかわれている理由りゆうには以下いかのようなものがげられる。

  • ほん条約じょうやくにより従来じゅうらいのすべての基本きほん条約じょうやくえる。
  • 欧州おうしゅう連合れんごう規則きそく採択さいたくするための要件ようけん大幅おおはば削減さくげんし、ほん条約じょうやくだい1ほうとなる。
  • 憲法けんぽう」という名称めいしょうは、従来じゅうらいあきらかに国民こくみん国家こっか独占どくせんしてきた経済けいざいてき戦略せんりゃくてき利益りえき条約じょうやく目的もくてきとし、だい世界せかい大戦たいせん(あるいはそれ以前いぜん)の平和へいわ主義しゅぎしゃ国際こくさい主義しゅぎしゃ左派さは世界せかい市民しみんなどによって展開てんかいされた統合とうごうヨーロッパの理念りねん次第しだい実現じつげんしようとする、未来みらいけた努力どりょく示唆しさしている。
  • ひろわれる「ヨーロッパのアイデンティティ」の「欠如けつじょ」というものは、「憲法けんぽう」においてかせない部分ぶぶん定義ていぎすれば不足ふそくというものではない。「多様たようせいにおける統一とういつ」という多元たげん主義しゅぎのアプローチはまさに、「アイデンティティ」の観念かんねん明記めいきをあきらめた欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく指向しこうするものをしめしている。必要ひつよう価値かち観念かんねん調整ちょうせい強制きょうせいし、存在そんざいとしての物質ぶっしつてき価値かち秩序ちつじょ相違そうい除去じょきょしなければならないアイデンティティの概念がいねんたいして、社会しゃかいてき制御せいぎょ装置そうちである組織そしき体制たいせい統制とうせい制限せいげんするような憲法けんぽう概念がいねんさだめられなければならない。
  • 法学ほうがくじょう厳密げんみつると「条約じょうやく」であろうが「憲法けんぽう」であろうが、加盟かめいこく国内こくないほうたいする欧州おうしゅう連合れんごう法令ほうれい合法ごうほうせいわることはまったくない。

条約じょうやく内容ないようたいする批判ひはん[編集へんしゅう]

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく内容ないようたいしてはさまざまな組織そしき団体だんたい政治せいじはげしく批判ひはんしている。

左翼さよく団体だんたいからの批判ひはん[編集へんしゅう]

批判ひはんでもおおくをめるのが、欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく社会しゃかい利益りえき民主みんしゅ主義しゅぎはんし、軍事ぐんじすすめるというものである。

また基本きほんけん憲章けんしょうにおける社会しゃかいけんはただたん一般いっぱんてき原則げんそくとみなされているものにぎない、つまり発効はっこうしても裁判さいばん主張しゅちょうできたり法的ほうてき拘束こうそくりょくっていたりするようなものではないため、基本きほんけん憲章けんしょう自体じたいやそのあとの具体ぐたいてき規定きていされている。さい重要じゅうようである労働ろうどうしゃ権利けんり実際じっさいには域内いきないにおける国境こっきょうえて行使こうしできるようなものではない。たしかにだいIIIだい3しょうだい2せつ社会しゃかい政策せいさく)のだいIII-210じょうだい1こうには以下いかのように規定きていされている。

  • (d) 雇用こよう契約けいやく終了しゅうりょうした労働ろうどうしゃ保護ほご
  • (f) 共同きょうどう決定けっていふく労使ろうし利益りえき代表だいひょう集団しゅうだんてき防衛ぼうえい

しかしどうじょうだい6こうにおいて、どうじょう賃金ちんぎん団結だんけつけんストライキけんロックアウトけんについては適用てきようしないとしている。だい1こうの (d) と (f) は規則きそく指令しれい、あるいは欧州おうしゅう司法しほう裁判所さいばんしょ判断はんだんによってはじめて有効ゆうこうとなり、だいIII-211じょう、212じょう連合れんごう全体ぜんたいとして対応たいおうすることになる。

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくでは、意思いし決定けってい法案ほうあん作成さくせいについて欧州おうしゅう議会ぎかい欧州おうしゅう理事りじかい欧州おうしゅう委員いいんかいあいだでの権限けんげん関係かんけい変更へんこうされておらず、民主みんしゅてき参加さんか機会きかい連合れんごうにおける確固かっことした権力けんりょく分立ぶんりつ導入どうにゅう軽視けいしされている。

だいIII-304じょうでは、欧州おうしゅう議会ぎかい連合れんごう軍事ぐんじ行動こうどうについて質問しつもんおこなうことをみとめているが、決定けっていおこなうことはできない。このことから、外交がいこう安全あんぜん保障ほしょう分野ぶんやにおける欧州おうしゅう議会ぎかい位置いちづけにより連合れんごう軍事ぐんじすすめられているということがだい3の批判ひはんとなっている。

ニース条約じょうやくでは欧州おうしゅう連合れんごう基金ききん軍事ぐんじ目的もくてき使用しようすることを明確めいかく禁止きんししていたが、欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくでは連合れんごう軍事ぐんじてき選択せんたくけん財政ざいせいめんにおいても保障ほしょうされている。

だいI-6じょうでは、連合れんごう法律ほうりつ加盟かめい国内こくない法律ほうりつ優先ゆうせんするということがさだめられている。ドイツ基本きほんほうでは侵略しんりゃく戦争せんそう禁止きんしし、そのような行為こうい処罰しょばつされる。欧州おうしゅう憲法けんぽうではだいI-41じょうにおいて連合れんごう軍事ぐんじてき統制とうせいについてうたい、軍事ぐんじ機関きかん(「防衛ぼうえい能力のうりょく研究けんきゅう調達ちょうたつ軍備ぐんび分野ぶんやにおける発展はってんのための機関きかん欧州おうしゅう防衛ぼうえい機関きかん」)と中核ちゅうかくヨーロッパの概念がいねん(「常設じょうせつ制度せいどてき協力きょうりょく」)を適切てきせつ機構きこう構築こうちくさだめている。さらに軍事ぐんじりょく向上こうじょうについての加盟かめいこく義務ぎむだいI-41じょうだい3こう)と連合れんごう軍事ぐんじてき使命しめい拡張かくちょう軍事ぐんじ行動こうどう要件ようけん緩和かんわ個別こべつ加盟かめいこくおよび連合れんごう防衛ぼうえいにとどまらず、原材料げんざいりょう軍事ぐんじ市場いちばといった権益けんえきからむものも対象たいしょうとする)にたいして批判ひはんされている。

だいIII-376じょうでは欧州おうしゅう司法しほう裁判所さいばんしょ連合れんごう軍事ぐんじ行動こうどうについて管轄かんかつしないということがさだめられている。

さらにだいIII-177じょう規定きていされている開放かいほうてき自由じゆう競争きょうそう市場いちば経済けいざい原則げんそくについても、しん自由じゆう主義しゅぎてき経済けいざい政策せいさくゆだねるものだという批判ひはんがある。開放かいほうてき自由じゆう競争きょうそう市場いちば経済けいざい政策せいさくだいI-3じょうだい3こうにある経済けいざい成長せいちょう欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく目的もくてきとしてめられている。そのため欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく社会しゃかい福祉ふくし環境かんきょう保護ほご労働ろうどう政策せいさくはげしく競合きょうごうするということができる。しかしながらこれについては欧州共同体おうしゅうきょうどうたい時代じだいから経済けいざいつうじて加盟かめいこく統合とうごうはかられてきており、だいIII-177じょう従来じゅうらい条約じょうやくうつしたものにぎないという反論はんろん可能かのうである。

域内いきない市場いちばにおけるサービスにかんする指令しれい[12]生産せいさん販売はんばい国法こくほう適用てきよう原則げんそくといった規定きてい欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく根拠こんきょもとめることができるが、このような規定きてい賃金ちんぎん社会しゃかい保障ほしょう品質ひんしつ管理かんり労働ろうどう安全あんぜん衛生えいせいめんでも競争きょうそうこすことになる。そのうえこれらの基準きじゅんたす企業きぎょう競争きょうそうちこたえられなくなり、その結果けっかとして自由じゆう市場いちば競争きょうそうゆがみをもたらすことになる。つまりあるくににおいてそのくに労働ろうどうしゃてい賃金ちんぎんこう物価ぶっかについていけず、企業きぎょう対応たいおうもままならずさらなる失業しつぎょうにつながっていき、ついには賃金ちんぎん品質ひんしつ水準すいじゅん社会しゃかい水準すいじゅん連合れんごうないでの最低さいていのところにまで低下ていかしていくことになるというものである。

また財産ざいさんけんたいする公共こうきょう福祉ふくしによる制限せいげん相当そうとうする規定きていがないことも批判ひはんされている。これについて欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく賛成さんせいは、だいII-77じょうだい1こうだいI-3じょうだい3こうはともに連合れんごう社会しゃかいてき目標もくひょうをうたっており、これらの規定きていから制限せいげんみちびすことができるという意見いけんっている。

リベラル団体だんたいからの批判ひはん[編集へんしゅう]

リベラル団体だんたいからは欧州おうしゅう議会ぎかい権限けんげん不足ふそくしているというてんからの批判ひはんがなされている。

またリベラル観点かんてんからは、欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくにおいて市民しみんけん制限せいげんされているという批判ひはんがなされる。たしかに子供こども権利けんりについてはれられているが、欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくでは保護ほご対象たいしょうとしてしかげられていない。若者わかもの(あるいは子供こども)の政治せいじ参加さんかみとめていないというものである。

リベラル一部いちぶには欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく長大ちょうだいすぎることについて批判ひはんしているものがいる。いわゆる「規制きせい狂乱きょうらん」という批判ひはんみとめられなかったのである。憲法けんぽうというものは枠組わくぐみだけを提示ていじするべきで、細部さいぶすべてにまでさだめる必要ひつようはないというかんがかたによるものである。

一方いっぽうでリベラル意見いけんによる「開放かいほうてき自由じゆう競争きょうそう市場いちば」については、社会しゃかいてき要請ようせいによりおさえられている。

保守ほしゅ教会きょうかいからの批判ひはん[編集へんしゅう]

保守ほしゅからは欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくキリスト教きりすときょう根底こんていてき要素ようそについての言及げんきゅうがないことについての批判ひはんおおきくなっていた。この批判ひはんバチカンだけでなく、ポーランドなどカトリックのおおくの地域ちいきからされた。またローマ=カトリック教会きょうかいのほかにドイツ福音ふくいん教会きょうかい欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくかみについて言及げんきゅうするようもとめた。ドイツ福音ふくいん教会きょうかいは、欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくにおいて「かみたいする責任せきにんとユダヤ=キリストの伝統でんとう意義いぎについて明確めいかくしめす」という立場たちばえることはなかった[13]。ところがドイツ連邦れんぽう首相しゅしょうアンゲラ・メルケルは欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくにおいてかみについての言及げんきゅうがなされるという見込みこみはないとべている。

さらに、保守ほしゅてき欧州おうしゅう懐疑かいぎからは国民こくみん国家こっか主権しゅけんせいトルコなどの新規しんき加盟かめいについて疑問ぎもんていされ、地域ちいき慣習かんしゅううしなわれるのではないかと危惧きぐする見方みかたされている。また基本きほんけん憲章けんしょうたいして保守ほしゅ団体だんたいから批判ひはんされている。だいII-75じょうにある労働ろうどう自由じゆうについて、キリスト教きりすときょう社会しゃかい同盟どうめいけい団体だんたいひがしドイツ名残なごりだとひょうしている。

批判ひはんしゃ[編集へんしゅう]

欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくたいして批判ひはんてき立場たちばをとっているとしてられている人物じんぶつには、哲学てつがくしゃジャン・ボードリヤール、キリストきょう社会しゃかい同盟どうめい所属しょぞく議員ぎいんペーター・ガウヴァイラー左翼さよくとう議員ぎいん団長だんちょうオスカー・ラフォンテーヌチェコ大統領だいとうりょうヴァーツラフ・クラウスがいる。

政党せいとう市民しみん団体だんたいからの批判ひはん[編集へんしゅう]

左翼さよくとう欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやくについてしん自由じゆう主義しゅぎてき軍事ぐんじ拡張かくちょう義務ぎむとしている条約じょうやくであるとみなしている。

市民しみん運動うんどう団体だんたい "Mehr Demokratie"(直訳ちょくやく:もっと民主みんしゅ主義しゅぎを)は批准ひじゅん手続てつづきについて民主みんしゅてきではなく、また投票とうひょう結果けっか操作そうさされやすいと非難ひなんし、また欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく権力けんりょく分立ぶんりつ不十分ふじゅうぶんで、外交がいこう安全あんぜん保障ほしょう政策せいさく分野ぶんやにおいて民主みんしゅてき土台どだいがなく、政策せいさく決定けっていだい部分ぶぶん固定こていされていると批判ひはんしている。

政府せいふ組織そしきATTAC反対はんたいしたおもな理由りゆうには、軍事ぐんじ拡張かくちょうすすめる性格せいかくしん自由じゆう主義しゅぎ経済けいざいてきなものもふくめたヨーロッパの利益りえき実現じつげんのための対外たいがい派兵はへい民主みんしゅてき原則げんそくける駐留ちゅうりゅう可能かのうせいげられる。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ だいIV-447じょうにおいて、条約じょうやく発効はっこうのためにはイタリア政府せいふ批准ひじゅんしょ寄託きたくされることがもとめられている。いずれの締結ていけつこく必要ひつようとされる機関きかん議会ぎかいおよび国家こっか元首げんしゅ)すべてにおける国内こくないでの批准ひじゅん過程かてい完了かんりょうしたのち、批准ひじゅんしょ寄託きたくすることになる。ここにおけるくに順番じゅんばん批准ひじゅんしょ寄託きたくじゅんとし、2以上いじょうくに同日どうじつ寄託きたくしたときは国名こくめいのアルファベットじゅんとする。
  2. ^ オーランド諸島しょとうはフィンランドの自治領じちりょうである。欧州おうしゅう連合れんごう領域りょういきふくまれているが一部いちぶ分野ぶんや例外れいがい規定きていされている。オーランド議会ぎかい承認しょうにん条約じょうやく当事とうじしゃではないが、だいIV-440じょうだい5こうにおいて条約じょうやく例外れいがい規定きていゆうするものの欧州おうしゅう憲法けんぽう条約じょうやく適用てきようされる。そのためラーグティングによる批准ひじゅん条約じょうやく発効はっこう必要ひつようではないが、どうじょう規定きてい適用てきようのためにはラーグティングによる承認しょうにん必要ひつようとなる。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ From Confederacy to Federation: Thoughts on the Finality of European Integration” (English) (2000ねん5がつ12にち). 2008ねん10がつ26にち閲覧えつらん
  2. ^ Riccardi, Ferdinando (2003-01). ““Penelope” project on constitution” (PDF). Acque&Terre (Venezia: Acque&Terre s.r.l.). http://www.politicainternazionale.it/file%20PDF/A&T%201.2003%20-%20en/2.pdf 2008ねん10がつ26にち閲覧えつらん. 
  3. ^ Report on the Treaty establishing a Constitution for Europe” (English). Daily Notebook : 12-01-2005 (2005ねん1がつ12にち). 2008ねん10がつ26にち閲覧えつらん
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  6. ^ 寄託きたくについては欧州おうしゅう連合れんごう理事りじかいのデータベース英語えいご)による。
  7. ^ Speech on future of Europe
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  9. ^ Werner Weidenfeld (März 2006) (Deutsch). Die Europäische Verfassung verstehen. Gütersloh: Bertelsmann Stiftung. ISBN 978-3892048763 
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  11. ^ Peter Schwarz (2003ねん10がつ14にち). “Rome conference on EU constitution reveals intra-European conflicts” (English). World Socialist Web Site. 2008ねん11月1にち閲覧えつらん
  12. ^ Directive 2006/123/EC of the European Parliament and of the Council of 12 December 2006 on services in the internal market
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関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

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外部がいぶリンク[編集へんしゅう]