横須賀よこすか海軍かいぐん施設しせつドック

1874年ねんの完成かんせい当時とうじの原形げんけいをほぼとどめている現役げんえきドライドックである、横須賀よこすか海軍かいぐん施設しせつ3号ごうドック。

横須賀よこすか海軍かいぐん施設しせつドック（よこすかかいぐんしせつドック）は、神奈川かながわ県けん横須賀よこすか市しの在日ざいにちアメリカ海軍かいぐん横須賀よこすか海軍かいぐん施設しせつ内うちにあり、米べい海軍かいぐんおよび海上かいじょう自衛隊じえいたいの艦艇かんてい修理しゅうりに使用しようされている6基きのドライドックである。最古さいこの1号ごうドックは横須賀造船所よこすかぞうせんじょ時代じだいの明治めいじ4年ねん（1871年ねん）に完成かんせいしているが、現在げんざいもなお使用しようされている。最大さいだいの6号ごうドックは大和やまと型がた戦艦せんかんの建造けんぞうならびに修理しゅうり・改造かいぞうを行おこなうことを目的もくてきとし、昭和しょうわ15年ねん（1940年ねん）に完成かんせいしたドックであり、現在げんざいは米べい海軍かいぐん空母くうぼの修理しゅうりなどに使用しようされている。

• 文中ぶんちゅうの年代ねんだいについては、明治めいじ6年ねん以前いぜんは参考さんこう文献ぶんけんから何なん日にちの出来事できごとであったかわかるものは和わ暦れき（西暦せいれき）の形かたちで日ひまで表記ひょうきし、日ひまでわからないものは和わ暦れきの年号ねんごうをもとに和わ暦れき（西暦せいれき）で標示ひょうじした。また明治めいじ6年ねんの明治めいじ改暦かいれき以降いこうについても、明治めいじ6年ねん以前いぜんの表記ひょうきと統一とういつ性せいを持もたせるために和わ暦れき（西暦せいれき）の表記ひょうきとした。

概要がいよう

開国かいこく後ご、江戸えど幕府ばくふは西洋せいよう式しきの艦船かんせんの建造けんぞうを開始かいしし、また諸しょ外国がいこくから艦船かんせんの購入こうにゅうを進すすめるようになった。そのような中なかで西洋せいよう式しきの艦船かんせんを建造けんぞうし改修かいしゅう、修理しゅうりする施設しせつの必要ひつよう性せいが高たかまっていった。江戸えど幕府ばくふは主おもにフランスの援助えんじょを仰あおぎ、小栗おぐり忠順ただまさ、レオン・ロッシュらが適所てきしょを検討けんとうした結果けっか、現在げんざいの横須賀よこすかの地ちに慶応けいおう元年がんねん（1865年ねん）に横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょ（後ごの横須賀造船所よこすかぞうせんじょ）が開設かいせつされた。そして艦船かんせんを改修かいしゅう、修理しゅうりする横須賀よこすか製鉄せいてつ所内しょないの主要しゅよう施設しせつとして、慶応けいおう3年ねん（1867年ねん）にドライドックの建設けんせつが開始かいしされた。現在げんざいの横須賀よこすか海軍かいぐん施設しせつ1号ごうドックである。

大政奉還たいせいほうかんから王政おうせい復古ふっこの大だい号令ごうれいに至いたる一連いちれんの流ながれにより江戸えど幕府ばくふが廃はいされ、明治めいじ政府せいふが成立せいりつするが、横須賀造船所よこすかぞうせんじょの建設けんせつは幕府ばくふ時代じだいと同様どうように進すすめられることになった。1号ごうドックは明治めいじ4年ねん（1871年ねん）に完成かんせいし、引ひき続つづき3号ごうドック、2号ごうドックが建設けんせつされた。1号ごうドック、3号ごうドックの建設けんせつ時じまではレオンス・ヴェルニーなどフランス人じん技術ぎじゅつ者しゃのもとでドック建設けんせつが進すすめられていたが、2号ごうドックについては設計せっけい段階だんかいではフランス人じんが携たずさわったものの、実際じっさいの工事こうじ場面ばめんでは横須賀造船所よこすかぞうせんじょで技術ぎじゅつを学まなんだ恒川つねかわ柳作りゅうさくが総そう責任せきにん者しゃとなってドックを完成かんせいへと導みちびいた。その後ご恒川つねかわは日本にっぽん各地かくちでドック建造けんぞうに携たずさわることになり、日本にっぽんのドライドック建設けんせつの草分くさわけ的てきな存在そんざいとなった。

横須賀造船所よこすかぞうせんじょは組織そしき改革かいかくなどを経へて、横須賀よこすか海軍かいぐん工廠こうしょうとなり、日本にっぽんの海軍かいぐん力りょく増強ぞうきょうに伴ともない規模きぼの拡大かくだいが進すすんだ。そのような中なか、明治めいじ38年ねん（1905年ねん）には軍艦ぐんかんの大型おおがた化かに対応たいおうした4号ごうドックが完成かんせいし、さらに大正たいしょう5年ねんには第だい5号ごうドックが完成かんせいした。5号ごうドックは当時とうじ激はげしさを増ましていた列強れっきょうの建けん艦かん競争きょうそうの中なか、完成かんせい直後ちょくごに延長えんちょう工事こうじが行おこなわれることになり、大正たいしょう13年ねん（1924年ねん）に延長えんちょう工事こうじは完成かんせいした。なお4号ごうドックも昭和しょうわ3年ねん（1928年ねん）に艦艇かんていの大型おおがた化かなどに対応たいおうするために延長えんちょう工事こうじが開始かいしされ、翌よく昭和しょうわ4年ねん（1929年ねん）に完成かんせいした。

日本にっぽんは昭和しょうわ9年ねん（1934年ねん）にワシントン海軍かいぐん軍縮ぐんしゅく条約じょうやくからの脱退だったいを宣言せんげんし、昭和しょうわ11年ねん（1936年ねん）にはロンドン海軍かいぐん軍縮ぐんしゅく条約じょうやくからも脱退だったいし、その結果けっか激はげしい海軍かいぐんの軍拡ぐんかく競争きょうそうが行おこなわれることになった。そのような中なか、昭和しょうわ10年ねん（1935年ねん）に大和やまと型がた戦艦せんかんの建造けんぞうおよび改修かいしゅう、修理しゅうりが可能かのうな大だい規模きぼなドックとして、6号ごうドックの建設けんせつが開始かいしされ、また昭和しょうわ11年ねん（1936年ねん）には、明治めいじ初年しょねんに完成かんせいした1号ごうドックの延長えんちょう工事こうじが行おこなわれた。6号ごうドックは昭和しょうわ15年ねん（1940年ねん）に完成かんせいし、6号ごうドックを使用しようして当初とうしょ大和やまと型がた戦艦せんかんの三さん番ばん艦かんとなる予定よていであった信濃しなのが建造けんぞうされたが、進水しんすい後ご呉ご海軍かいぐん工廠こうしょうへ回航かいこうされる途中とちゅう、米べい潜水せんすい艦かんアーチャーフィッシュの魚雷ぎょらい攻撃こうげきを受うけ沈没ちんぼつした。なお、4号ごうドックでは昭和しょうわ18年ねん（1943年ねん）から昭和しょうわ19年ねん（1944年ねん）にかけて再さい延長えんちょう工事こうじが行おこなわれ、1号ごうから6号ごうドックは現在げんざいの規模きぼとなった。

終戦しゅうせん後ご、横須賀よこすか海軍かいぐん工廠こうしょうはアメリカを中心ちゅうしんとした連合れんごう国軍こくぐんに接収せっしゅうされることになり、1号ごうから6号ごうドックもまた接収せっしゅうされた。昭和しょうわ22年ねん（1947年ねん）には米べい海軍かいぐん艦船かんせん修理しゅうり廠しょうが発足ほっそくし、各かくドックではアメリカ海軍かいぐん艦船かんせんの改修かいしゅう、修理しゅうりが行おこなわれるようになった。特とくに横須賀よこすかが米べい第だい七なな艦隊かんたいの事実じじつ上じょうの母港ぼこうとして空母くうぼの配備はいびが開始かいしされると、最大さいだいの6号ごうドックでは米べい空母くうぼの改修かいしゅう、修理しゅうりが行おこなわれるようになった。令れい和わ初期しょきの現在げんざいも、明治めいじ初年しょねんに完成かんせいした1号ごうドックを始はじめとする、戦前せんぜんに造つくられたドライドックでは米べい海軍かいぐん、海上かいじょう自衛隊じえいたいの艦船かんせんの改修かいしゅう、修理しゅうりが行おこなわれ続つづけている。

ドライドック建設けんせつに至いたる経緯けいい

鎖国さこくの終焉しゅうえんと艦船かんせん修理しゅうり需要じゅようの発生はっせい

嘉よしみ永ひさし6年ねん（1853年ねん）、ペリー艦隊かんたいが来航らいこうし、翌よく嘉よしみ永なが7年ねん（1854年ねん）には日米にちべい和親わしん条約じょうやくが締結ていけつされ、日本にっぽんの鎖国さこく体制たいせいは終焉しゅうえんを迎むかえた。そのような中なか、江戸えど幕府ばくふは嘉よしみ永なが6年ねん（1853年ねん）9月がつ、これまで禁止きんししていた荷物にもつ船せん以外いがいの大型おおがた船せんの建造けんぞうを認みとめることとした。これは諸しょ外国がいこくの船ふねが相次あいついで日本にっぽんへ来航らいこうする状況じょうきょうを踏ふまえ、軍艦ぐんかんの建造けんぞうを可能かのうとすることを狙ねらったものであった。早速さっそく幕府ばくふは浦賀うらがにて鳳凰ほうおう丸まるの建造けんぞうを開始かいしし、その後ごも艦船かんせんの建造けんぞうを継続けいぞくし、さらに欧米おうべい各国かっこくから艦船かんせんの購入こうにゅうを進すすめた。

幕府ばくふが艦船かんせんの建造けんぞうと購入こうにゅうを進すすめていく中なかで、保有ほゆうする艦船かんせんの修理しゅうりを行おこなう必要ひつよう性せいが高たかまってきた。幕府ばくふが購入こうにゅうした艦船かんせんの多おおくが中古ちゅうこ船せんであったうえ、慣なれない西洋せいよう式しきの艦船かんせんの操船そうせんで、事故じこによって船ふねが損傷そんしょうすることも多おおかったことが修理しゅうりの必要ひつよう性せいをより高たかめた。幕府ばくふはまず、湾わんが深ふかくかつ水深すいしんもあるため、風待かざまちの港みなととして利用りようされてきた浦賀うらがに艦船かんせんの修理しゅうり場所ばしょを設もうけた。しかし浦賀うらがは狭せまい湾わんの周囲しゅういに山やまが迫せまっている上うえに、これまで港町みなとちょうとして繁栄はんえいしていたために広ひろい土地とちが取とれず、恒久こうきゅう的てきな艦船かんせんの修復しゅうふく場所ばしょとしては適てきさないとの意見いけんが出だされるようになった。

そのような中なか、注目ちゅうもくされるようになってきたのが横須賀よこすかと長浦ながうらであった。特とくに横須賀よこすかでは万延まんえん元年がんねん（1860年ねん）に座礁ざしょうしたアメリカ船せんの修理しゅうりを行おこなって以降いこう、オランダ船せんやイギリス船せんの修理しゅうりが行おこなわれており、港湾こうわんとしての有用ゆうよう性せいが注目ちゅうもくされるようになっていた。

幕府ばくふは安政あんせい2年ねん（1855年ねん）に長崎ながさき海軍かいぐん伝習でんしゅう所しょを開ひらき、文久ぶんきゅう元年がんねん（1861年ねん）には長崎ながさき製鉄せいてつ所しょとなり、製鉄せいてつ所しょ、造船ぞうせん所しょに当あたる設備せつびを持もつようになっていた。しかし長崎ながさきは江戸えどから遠とおい九州きゅうしゅうにあって外様とざま大名だいみょうの勢力せいりょくに囲かこまれており、また設備せつび的てきにも本格ほんかく的てきなものにはほど遠とおく、江戸えどに近ちかい場所ばしょで本格ほんかく的てきな製鉄せいてつや造船ぞうせんの機能きのうを備そなえた施設しせつの建設けんせつが望のぞまれるようになった。

文久ぶんきゅう2年ねん（1862年ねん）、幕府ばくふは長崎ながさきでオランダ人じん技師ぎしから江戸えど近辺きんぺんで製鉄せいてつ所しょの建設けんせつを開始かいしするに当あたり、アドバイスを受うけた。オランダ人じんの技師ぎしからは、当時とうじの長崎ながさき製鉄せいてつ所しょの設備せつびは貧弱ひんじゃくであり大だい規模きぼな船ふねの建造けんぞうや修復しゅうふくは出来できないこと、そしてフランスのトゥーロン、シェルブールなど、当時とうじのヨーロッパ最先端さいせんたんの製鉄せいてつ、造船ぞうせん施設しせつのあらましについて説明せつめいを受うけた。さらに江戸えどの周辺しゅうへんは水深すいしんが浅あさく、また河川かせんからの砂すなの流入りゅうにゅうで砂すな底そこのため、製鉄せいてつ所しょの建設けんせつには適てきさないとの意見いけんを受うけた。

同年どうねん、幕府ばくふは横浜よこはまから三浦半島みうらはんとう付近ふきんを視察しさつして製鉄せいてつ所しょの適所てきしょを探さがす試こころみも行おこなった。しかし文久ぶんきゅう2年ねん8月がつ21日にち（1862年ねん9月がつ14日にち）、生麦なまむぎ事件じけんが発生はっせいし、幕府ばくふと諸しょ外国がいこくとの外交がいこう関係かんけいが緊迫きんぱくする中なか、江戸えどに近ちかい場所ばしょでの製鉄せいてつ所しょ建設けんせつ計画けいかくはいったん中断ちゅうだんされた。

横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょの建設けんせつ開始かいしとヴェルニーの登場とうじょう

1983年ねん撮影さつえいの横須賀よこすか港こう航空こうくう写真しゃしん。周囲しゅういが丘陵きゅうりょう地ちに囲かこまれ波なみが静しずかな上うえに、湾内わんないの水深すいしんも深ふかい。
国土こくど交通省こうつうしょう 国土こくど地理ちり院いん 地図ちず・空中くうちゅう写真しゃしん閲覧えつらんサービスの空中くうちゅう写真しゃしんを基もとに作成さくせい

いったん頓挫とんざした江戸えど近ちかくでの本格ほんかく的てきな製鉄せいてつ所しょ建設けんせつ計画けいかくであるが、元治もとはる元年がんねん（1864年ねん）に入はいって動うごき出だした。まず元治もとはる元年がんねん3月がつ22日にち（1864年ねん4月がつ27日にち）、フランスの新あたらしい公使こうしとしてレオン・ロッシュが着任ちゃくにんした。ロッシュはイギリスが幕府ばくふから距離きょりを置おく立場たちばを取とるようになる中なか、逆ぎゃくに幕府ばくふへ接近せっきんする姿勢しせいを見みせた。また同年どうねん8月がつには小栗おぐり忠順ただまさが幕府ばくふの勘定かんじょう奉行ぶぎょうに再任さいにんされ、同おなじ頃ごろ、フランス語ふらんすごが堪能かんのうである栗本くりもと鋤雲じょううんが目付めつけに抜擢ばってきされた。

当時とうじ幕府ばくふが諸しょ外国がいこくから購入こうにゅうした艦船かんせんは中古ちゅうこ船せんが多おおく、幕府ばくふはその修復しゅうふくに頭あたまを悩なやませていた。そこでフランス語ふらんすごが堪能かんのうな栗本くりもとに白羽しらはの矢やが立たてられ、幕府ばくふが所有しょゆうしていた蒸気じょうき船せん翔しょう鶴丸つるまるの修復しゅうふくについてフランスに依頼いらいするように命めいじられた。栗本くりもとはロッシュと交渉こうしょうしたところ、日本にっぽん側がわと接近せっきんする好こう機会きかいと捉とらえたロッシュは、横浜よこはま港こうに停泊ていはくしていたフランス艦隊かんたいに赴おもむき、艦隊かんたいの司令しれい官かんジョレスに翔しょう鶴丸つるまる修理しゅうりの了承りょうしょうを取とり付つけ、フランスの手てによって修復しゅうふく作業さぎょうが行おこなわれることになった。その結果けっか2か月げつ足たらずで完璧かんぺきな修理しゅうりが行おこなわれ、勘定かんじょう奉行ぶぎょうの小栗ささぐりらがフランスの技術ぎじゅつを導入どうにゅうして製鉄せいてつ所しょの建設けんせつを進すすめるきっかけとなった。

元治もとはる元年がんねん11月がつ3日にち（1864年ねん12月1日にち）、小栗ささぐりは栗本くりもととともにロッシュと面会めんかいした。小栗ささぐりは日本にっぽん独自どくじの造船ぞうせん所しょ建設けんせつへの意欲いよくを述のべ、造船ぞうせん所しょ建設けんせつに当あたり技術ぎじゅつ指導しどうを行おこなえる人材じんざいの紹介しょうかいを依頼いらいした。ロッシュはフランス艦隊かんたい司令しれい官かんのジョレスと相談そうだんした上うえ、翌日よくじつ小栗ささぐりに対たいし、フランスにあるような本格ほんかく的てきな造船ぞうせん所しょや修おさむ船場ふなばの建設けんせつを勧すすめ、本格ほんかく的てきな造船ぞうせん所しょや修おさむ船場ふなばを建設けんせつするのならば最初さいしょに良よい技師ぎし、機械きかいを精選せいせんすることが重要じゅうようであることを指摘してきし、フランスがそのための協力きょうりょくを惜おしまないこと、これまでナポレオン3世せいの命いのちで上海しゃんはいにて5艘そうの船ふねを建造けんぞうしたレオンス・ヴェルニーという造船ぞうせん技師ぎしが任務にんむを終おえて帰国きこくするところなので、日本にっぽん側がわからの正式せいしき要請ようせいがあれば日本にっぽんへ来くるように斡旋あっせんすることを回答かいとうした。ロッシュの提案ていあんに対たいする幕府ばくふの回答かいとうはすばやかった。元治もとはる元年がんねん11月がつ10日とおか（1864年ねん12月8日にち）、ロッシュに対たいして製鉄せいてつ所しょ建設けんせつと船舶せんぱく建造けんぞうの経験けいけんを持もつフランス士官しかんの派遣はけんを正式せいしきに依頼いらいする文章ぶんしょうを交付こうふした。

フランスのトゥーロン遠景えんけい。横須賀よこすかはその地形ちけいがトゥーロンに似にているとされた。

元治もとはる元年がんねん11月がつ26日にち（1864年ねん12月24日にち）、フランス艦隊かんたい司令しれい官かんジョレスらフランス海軍かいぐんの関係かんけい者しゃ、ロッシュ、小栗おぐり、栗本くりもとらは造船ぞうせん所しょの建設けんせつ候補こうほ地ちの見分けんぶんを行おこなった。まず幕府ばくふが第だい一いちの候補こうほ地ちとしていた長浦ながうらへ向むかい、測量そくりょうを実施じっししたところ湾内わんないに浅瀬あさせがあって大型おおがた艦船かんせんの航行こうこうに問題もんだいがあることが判明はんめいした。続つづいて隣となりの横須賀よこすかへ向むかい、湾内わんないを測量そくりょうしてみたところ水深すいしんが深ふかく、また地形ちけい的てきな立地りっち条件じょうけんがフランス最大さいだいの軍港ぐんこうの一ひとつであったトゥーロンに類似るいじしていることから、横須賀よこすかを建設けんせつ候補こうほ地ちとすることとした。そして元治もとはる元年がんねん12月がつ2日にち（1864年ねん12月30日にち）から翌よく元もと治ち2年ねん（1865年ねん）正月しょうがつにかけて、幕府ばくふ独自どくじに横須賀よこすかの測量そくりょうを実施じっしした。

元治もとはる元年がんねん12月がつ8日にち（1865年ねん1月がつ5日にち）、ロッシュは老中ろうじゅう諏訪すわ忠誠ちゅうせいの屋敷やしきで、諏訪すわと老中ろうじゅう阿部あべ正ただし外がい、老中ろうじゅう水野みずの忠ただし精せいの3名めいの老中ろうじゅうと会見かいけんした。ロッシュは幕府ばくふの造船ぞうせん所しょ建設けんせつ計画けいかくに対たいし、多額たがくの費用ひようと長ながい期間きかんがかかることを認みとめた上うえで、日本にっぽんを強国きょうこくにするための基礎きそとなるものなので、必かならず建設けんせつすべきであるとの意見いけんを述のべた。すると老中ろうじゅうらからは必要ひつよう性せいについては十分じゅうぶんに認識にんしきしているものの、破綻はたん状態じょうたいに近ちかかった幕府ばくふの財政ざいせい事情じじょうをロッシュに説明せつめいし、困難こんなんさを訴うったえた。当時とうじの厳きびしい財政ざいせい事情じじょうもあって造船ぞうせん所しょ建設けんせつには反対はんたい意見いけんも出だされていたが、結局けっきょく小栗ささぐりらが押おし切きった。またこの時ときの会談かいだんで、ロッシュから先日せんじつ推薦すいせんした造船ぞうせん技師ぎしヴェルニーが近日きんじつ中ちゅうに来日らいにちすることが伝つたえられ、ヴェルニーが来日らいにちしたら幕府ばくふが所有しょゆうする機械きかい類るいについて確認かくにんしてもらい、足たりない機械きかい類るいはフランスで購入こうにゅうすることを提案ていあんし、了承りょうしょうを得えた。

ヴェルニーは元もと治ち2年ねん（1865年ねん）1月がつ、上海しゃんはいから来日らいにちした。ヴェルニーは当時とうじ27歳さいの海軍かいぐんの技術ぎじゅつ士官しかんであった。彼かれはまず幕府ばくふが所有しょゆうしている機械きかい類るいの確認かくにんと、造船ぞうせん所しょ建設けんせつ予定よてい地ちである横須賀よこすかを視察しさつした。ヴェルニーは横須賀よこすかを造船ぞうせん所しょ建設けんせつの好こう適地てきちと認みとめ、幕府ばくふから依頼いらいされた造船ぞうせん所しょ建設けんせつ事業じぎょうを引ひき受うける決心けっしんを固かため、横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょ建設けんせつの原案げんあんを作成さくせいした。建設けんせつ原案げんあんの中なかで横須賀よこすかについて、周囲しゅういが丘おかに囲かこまれた広ひろくて波なみが静しずかであり、かつ水深すいしんが深ふかく、船舶せんぱくを泊とめるに適てきした湾わんである上うえに、地質ちしつが粘土ねんど質しつであるため、山やまを削けずって海うみを埋うめ立たてて、ドックや工場こうじょうを建設けんせつするのに都合つごうが良よい場所ばしょであるとした上うえで、2基きのドライドックの建設けんせつなどを提案ていあんした。このヴェルニーの提案ていあんはほぼ認みとめられ、元もと治ち2年ねん1月がつ29日にち（1865年ねん2月がつ25日にち）、幕府ばくふはロッシュに『製鉄せいてつ所しょ約定やくじょう書しょ』を交付こうふし、フランス側がわと正式せいしきに横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょの建設けんせつに関かんする契約けいやくを取とり交かわした。そして元もと治ち2年ねん2月がつ4日にち（1865年ねん3月がつ1日にち）、ロッシュから幕府ばくふ側がわに横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょの土木どぼく工事こうじ計画けいかく図ずが示しめされた。計画けいかく図ずにはヴェルニーが提案ていあんした通とおり、2基きのドライドックが計画けいかくされていた。ロッシュの示しめした土木どぼく工事こうじ計画けいかく図ずに基もとづき、元もと治ち2年ねん3月がつ12日にち（1865年ねん4月がつ7日にち）、横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょの建設けんせつ用地ようち約やく23.76ヘクタールが正式せいしき決定けっていされた。

元もと治ち元年がんねん（1865年ねん）2月がつ、ヴェルニーは製鉄せいてつ所しょで使用しようする機械きかいの購入こうにゅうや、製鉄せいてつ所しょ建設けんせつを担になう技師ぎしを募集ぼしゅうするためにいったんフランスへ帰国きこくした。製鉄せいてつ所しょ建設けんせつの責任せきにん者しゃであるヴェルニーの帰国きこく中ちゅう、アメリカが巻まき返かえしを図はかった。慶応けいおう元年がんねん（1865年ねん）8月がつ、アメリカ公使館こうしかんはフランスが推薦すいせんするドライドックではなく、浮うわきドックの採用さいようを勧すすめてきたのである。結局けっきょく万延元年遣米使節がアメリカで浮うわきドックを見学けんがくした際さいなどで得えられた、「浮うわきドックは耐用たいよう年数ねんすうが短みじかい」と言いう知見ちけんを基もとに、アメリカ側がわの提案ていあんを拒絶きょぜつすることになった。

しかしドックの建設けんせつ計画けいかくが進すすめられていく中なかでヴェルニーにも迷まよいが生しょうじた。ヴェルニーを悩なやませたのはドックの耐震たいしん性せいの問題もんだいであった。ヴェルニーと幕府ばくふ側がわはドックの耐震たいしん性せいの問題もんだいについて協議きょうぎしていた。ヴェルニーは浮うわきドックは耐用たいよう年数ねんすうや維持いじ管理かんり費用ひようのことを考かんがえると望のぞましくないとしたものの、建設けんせつ費用ひようがドライドックの約やく三さん分ぶんの二にであり、しかも耐震たいしん性せいの問題もんだいを考慮こうりょすると必かならずしも不利ふりとは言いえないのではないかと考かんがえたのである。ヴェルニーはフランス海軍かいぐん省しょうにドック建設けんせつについての技術ぎじゅつ的てきな検討けんとうを依頼いらいした。結局けっきょく、当初とうしょの建設けんせつ計画けいかくでは浅瀬あさせを埋うめ立たてて建設けんせつする予定よていであったものを、丘おかを崩くずし、その上うえで更さらに地面じめんを掘ほり込こんで建設けんせつする計画けいかくに改あらためられた。

ところで幕府ばくふ側がわに浮うきドック建設けんせつを勧すすめたアメリカ側がわはすぐには引ひき下さがらなかった。その後ごも横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょのドライドック建設けんせつには長ながい日時にちじを要ようするとして、製鉄せいてつ所しょのドライドック建設けんせつと並行へいこうして近隣きんりんに別べつに浮うきドックを設もうける提案ていあんを行おこなったり、更さらには横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょ近ちかくにアメリカ商船しょうせんの修理しゅうり用ようのドライドック建設けんせつをほのめかしたりした。結局けっきょくアメリカ側がわの要求ようきゅうを幕府ばくふ側がわは最後さいごまで認みとめることはなく、ヴェルニーを責任せきにん者しゃとするフランスの支援しえんを受うけてドライドックが建設けんせつされた。

1号ごうドックの建設けんせつ

ヴェルニーの奔走ほんそう

レオンス・ヴェルニー

わずか27歳さいにして一大いちだいプロジェクトを任まかされたヴェルニーは、フランスで横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょ建設けんせつに必要ひつようとなる機械きかいと人材じんざいの確保かくほに奔走ほんそうした。ヴェルニーの前まえには一いち儲もうけをもくろむ機械きかいを売うり込こもうとする商人しょうにんや、技術ぎじゅつ者しゃが大勢おおぜいおしかけたというが、ヴェルニーは彼かれらを一切いっさい相手あいてにすることなく自みずからの目めで機械きかいと技術ぎじゅつ者しゃを選えらんでいった。当初とうしょ若わかいヴェルニーに一大いちだいプロジェクトを任まかせることに不安ふあんを感かんじていた多おおくの幕府ばくふ要人ようじんたちも、そのようなヴェルニーの姿すがたに信頼しんらい感かんを深ふかめていった。

ヴェルニーがフランスで横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょ建設けんせつに必要ひつようとなる機械きかいと人材じんざいの確保かくほに奔走ほんそうする間あいだ、横須賀よこすかでは製鉄せいてつ所しょの建設けんせつ工事こうじが始はじまっていた。慶応けいおう元年がんねん9月がつ27日にち（1865年ねん11月15日にち）には横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょの鍬入くわいれ式しきが挙行きょこうされ、製鉄せいてつ所しょ建設けんせつ予定よてい地ちの整地せいちが開始かいしされた。土木どぼく作業さぎょうでは経費けいひ節減せつげんのために人足ひとあし寄場よせばの人足ひとあしを動員どういんしてみたが、土木どぼく作業さぎょうの経験けいけんが全まったくない者ものが多おおかったため著いちじるしく作業さぎょう効率こうりつが悪わるく、1年ねんほどで中止ちゅうしとなった。なお後ごの明治めいじ政府せいふも財政難ざいせいなんのため改あらためて人足ひとあし寄場よせばの人足ひとあしを動員どういんする。そのような中なか、慶応けいおう2年ねん（1866年ねん）5月がつ、ヴェルニーは日本にっぽんに戻もどり、本格ほんかく的てきに横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょ建設けんせつ事業じぎょうに取とり組くむことになる。

ヴェルニーは横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょの中核ちゅうかく施設しせつとなるドライドックの建設けんせつに際さいし、様々さまざまな点てんについて検討けんとうし、決定けっていしていった。まずその立地りっちである。1号ごう、2号ごう、3号ごうドックはそれぞれ隣接りんせつしているが、ドック建設けんせつ時じに小ちいさな入江いりえをいくつか埋うめ立たてはしたものの、基本きほん的てきに埋立うめたて地ちではなく地ち山やまであり、特とくに2号ごうドックから3号ごうドックにかけては標高ひょうこう約やく45メートル程度ていどの白しろ仙山せんのやまと呼よばれていた丘おかを切きり崩くずしている。続つづいて建設けんせつ予定よてい地ちの土質どしつについては、更新こうしん世よに形成けいせいされた、粘着ねんちゃく度どが強つよくかつ水みずを通とおしにくいシルトが固かた結ゆいした軟岩の土ど丹にと呼よばれる種類しゅるいの強固きょうこな土質どしつであり、掘削くっさくが困難こんなんという欠点けってんはあるものの、ドックの建設けんせつ中ちゅうに大だい規模きぼな土留どどめを必要ひつようとせず、さらに建設けんせつ後ごはほぼ全体ぜんたいが海水かいすい面めん下かとなるドック本体ほんたいが生うみ出だす浮力ふりょくによって発生はっせいする不等ふとう沈下ちんかが起おこりにくい、ドックの安定あんてい性せい、耐久たいきゅう性せいを保たもつには最高さいこうといえるものであった。1号ごうドックは1877年ねん（明治めいじ10年ねん）に渠みぞ口こう部ぶが崩壊ほうかいする事故じこが発生はっせいしたものの、その後ご関東大震災かんとうだいしんさい時ときにも地盤じばんの液状えきじょう化か現象げんしょうなどによる大おおきな破損はそんを生しょうじることはなく、これはドック建設けんせつ場所ばしょの地盤じばんの良よさを示しめしている。

さらにドライドックを建設けんせつするに当あたり、考慮こうりょせねばならないのが風向かざむきである。通常つうじょうドライドックは主おもに風ふうが吹ふく向むきに建設けんせつされる。これは船舶せんぱくが出で入渠にゅうきょする際さいに横風おうふうが当あたるのを防ふせぎ、船舶せんぱくが入渠にゅうきょして排水はいすいが終おわってから船体せんたい全体ぜんたいが乾かわくまでの時間じかんをなるだけ短みじかくして作業さぎょうの効率こうりつ化かを図はかり、さらに作業さぎょう中ちゅう常つねに風ふうが吹ふき込こむようにして入渠にゅうきょした船舶せんぱくとドックの床ゆか面めんや側面そくめんが常つねに乾かわいた状態じょうたいにして、作業さぎょうが進すすめやすい環境かんきょうにする意味合いみあいがある。そのため建設けんせつ地ちでの風向かざむきを把握はあくした上うえで、ドックの設計せっけいがなされることになる。

ヴェルニーがドライドック建設けんせつに際さいしてとりわけ心しんを砕くだいたのが、ドライドックに用もちいる石いしの選定せんていであった。ヴェルニーは慶応けいおう3年ねん（1867年ねん）の4月がつから5月がつにかけて、武蔵むさし、相模さがみ、伊豆いずの各地かくちの石材せきざい産地さんちを回まわり、ドック建設けんせつに適てきした石材せきざい探さがしに奔走ほんそうした。結局けっきょく現在げんざいの神奈川かながわ県けん真鶴まなづる町まちから静岡しずおか県けん熱海あたみ市しにかけて産さんする、安山岩あんざんがん質しつの本ほん小松こまつ石せきが最適さいてきであると判断はんだんし、ドック建設けんせつに使用しようされることになった。

1号ごうドックの建設けんせつ開始かいし

明治めいじ期きの1号ごうドック

1871年ねんに完成かんせいし、現在げんざいも使用しようされている横須賀よこすか海軍かいぐん施設しせつ1号ごうドック。

ヴェルニーがドックに使用しようする石材せきざい探さがしに奔走ほんそうする直前ちょくぜんの慶応けいおう3年ねん（1867年ねん）3月がつ、第だい1号ごうドックが着工ちゃっこうされた。着工ちゃっこう後ごの慶応けいおう3年ねん10月がつ14日にち（1867年ねん11月9日にち）、大政奉還たいせいほうかんが行おこなわれ、続つづいて慶応けいおう3年ねん12月9日にち（1868年ねん1月がつ3日にち）に王政おうせい復古ふっこが宣言せんげんされ、徳川とくがわ幕府ばくふが終焉しゅうえんし、新しん政府せいふが樹立じゅりつされることになった。慶応けいおう4年ねん閏うるう4月がつ1日にち（1868年ねん5月がつ22日にち）には新しん政府せいふの東ひがし久世くせ通どおり禧、鍋島なべしま直ただし大だい、寺島てらしま宗はじめ則のりらが横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょに来所らいしょし、横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょの接収せっしゅうを行おこなった。接収せっしゅう後ご、横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょ事業じぎょうの重要じゅうよう性せいを認識にんしきしていた新しん政府せいふは、これまでと変かわることなく事業じぎょうを推進すいしんしていくようヴェルニーに通告つうこくした。

1号ごうドックの設計せっけいはヴェルニーとヴェルニーのもと建築けんちく課長かちょうを務つとめていたL.F.フロランが行おこなったものと考かんがえられている。1号ごうドックは当初とうしょ全長ぜんちょう約やく115メートルの計画けいかくであったが、工事こうじ途中とちゅうに設計せっけいが変更へんこうされ、約やく9メートル長ながい全長ぜんちょう約やく124メートルとなった。工事こうじ監督かんとくは当初とうしょツーロンの造船ぞうせん所しょで働はたらいていたペリコが務つとめていたが、能力のうりょく的てきに問題もんだいがあったようでわずか2か月げつで同おなじくツーロンの造船ぞうせん所しょで働はたらいていたデュモンと交代こうたいした。なお施工しこうは幕府ばくふ海軍かいぐん御用達ごようたしであった橋本はしもと長ちょう左衛門さえもんらが請うけ負おった。

1号ごうドックの工事こうじは、まずドック予定よてい地ち前まえの海うみを締切しめきり堤つつみで仕切しきることから始はじめられた。続つづいて締切しめきり堤つつみの内部ないぶの海水かいすいを抜ぬき、ドック本体ほんたいの掘削くっさくが開始かいしされた。ドック本体ほんたいの掘削くっさくに続つづいてドックに石いしを組くむ作業さぎょうが行おこなわれた。先述せんじゅつのように真鶴まなづるから熱海あたみ付近ふきんから運はこばれた安山岩あんざんがん質しつの新しん小松こまつ石せきが石材せきざいとして使用しようされた。石材せきざいの購入こうにゅう代金だいきんは当時とうじの金額きんがくで18370両りょうであった。一般いっぱん的てきに船ふねの修復しゅうふく用ようのドックは船ふねの建設けんせつ用ようドックよりも底そこの部分ぶぶんが厚あつく造つくられる。これは既すでに完成かんせいされた船ふねの方ほうが建造けんぞう中ちゅうの船ふねよりも重おもいことによる。船ふねの修復しゅうふく用ようドックとして建設けんせつされた第だい1号ごうドックも、そのあたりの事情じじょうが考慮こうりょされて造つくられたと考かんがえられるが、現在げんざいに至いたるまで現役げんえきで使用しようされ続つづけているために石組いしぐみの具体ぐたい的てきな方法ほうほうや厚あつさなどはこれまで確認かくにんされていない。また1号ごうドックの石積いしつみについては、東京とうきょう大学だいがく生産せいさん技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょの調査ちょうさによれば、西洋せいよう式しきの直方体ちょくほうたいの石材せきざいを隙間すきま無なく組くむ方式ほうしきと、日本にっぽん式しきの「間あいだ知ち積づみ」と呼よばれる城しろの石垣いしがきを組くむ際さいに行おこなわれた方式ほうしきの折衷せっちゅうであったと推察すいさつされている。なお、1号ごうドック建設けんせつ中ちゅうの1867年ねん（慶応けいおう3年ねん）11月に、建設けんせつ現場げんばからナウマンゾウの下しも顎あご部分ぶぶんの化石かせきが発見はっけんされている。

1号ごうドックが完成かんせいし、使用しようされ続つづけてすでに百ひゃく数すう十じゅう年ねんが経過けいかしているが、一部いちぶに風化ふうか、磨耗まもうが認みとめられるものの、ドックを形成けいせいしている石材せきざいは全体ぜんたいとして健全けんぜんな状態じょうたいが保たもたれており、ヴェルニーが選えらび抜ぬいた石材せきざいの耐久たいきゅう性せい、耐たい水性すいせいの高たかさは明あきらかである。2013年ねんに行おこなわれた1号ごうドックの石材せきざいの侵食しんしょく状じょう況きょうについての調査ちょうさによれば、最もっとも侵食しんしょくが進すすんだ石材せきざいでも侵食しんしょくの深ふかさは約やく10センチメートルであり、石材せきざい全体ぜんたいから見みて約やく四よん分ぶんの一いちの深ふかさであることが明あきらかとなった。この程度ていどの侵食しんしょくではドックの強度きょうど的てきに大おおきな問題もんだいが発生はっせいするとは考かんがえられない。

1号ごうドックで使用しようしたセメントの購入こうにゅう代金だいきんは石材せきざいの約やく3倍ばいの56000両りょうに達たっしており、ドック本体ほんたい建設けんせつ総そう費用ひようの約やく45パーセントにも及およんだ、これは当時とうじ日本にっぽんで生産せいさんが不可能ふかのうであった、水中すいちゅうでも固かたまる性質せいしつがあるポルトランドセメントを全量ぜんりょう輸入ゆにゅうしたためと考かんがえられる。またポルトランドセメント以外いがいにも消石灰しょうせっかいおよび火山灰かざんばいからなるセメントも併用へいようしたとの説せつもある。セメントは掘削くっさくしたドック断面だんめんに石組いしぐみを構築こうちくする際さい、裏うら込こめとされた。つまりセメントは現在げんざいの基礎きそコンクリートないし捨すてコンクリートと同様どうようの役割やくわりと、掘削くっさくされたドックの壁面へきめんと石組いしぐみとの充填じゅうてん剤ざいの役割やくわりを果はたしていると考かんがえられる。

ドック本体ほんたいの石組いしぐみが完成かんせいするとドックの入いり口くち部分ぶぶんの建設けんせつが行おこなわれた。そこまで工事こうじが進すすんだ後のちに締切しめきり堤つつみの撤去てっきょがなされる。締切しめきり堤つつみの撤去てっきょ後ご、船舶せんぱくがドックに出入でいりする際さいに支障ししょうとならぬよう、締切しめきり堤つつみがあった部分ぶぶんを中心ちゅうしんとしたドック入いり口くち付近ふきんの海底かいていを浚渫しゅんせつした。浚渫しゅんせつ終了しゅうりょう後ご、ドック入いり口くちを閉とじる扉とびら船せんがドック入いり口くちに設置せっちされ、完成かんせいとなった。なお扉とびら船せんの購入こうにゅう費用ひようは29568両りょうに及および、他たの工事こうじ費用ひようと比較ひかくするとかなりの高額こうがくであったことがわかる。

1号ごうドックは明治めいじ4年ねん（1871年ねん）1月がつ、完成かんせいした。明治めいじ4年ねん2月がつ8日にち（1871年ねん3月がつ27日にち）には有栖川宮熾仁親王ありすがわのみやたるひとしんのう、伊達だて宗城むねなりらが出席しゅっせきして1号ごうドックの開業かいぎょう式しきが行おこなわれた。1号ごうドックの特徴とくちょうとしてはドックの底面ていめんが水平すいへいとなっている点てんが挙あげられる。一般いっぱん的てきにドライドックは排水はいすいを効率こうりつ的てきに行おこなうために、ドックの奥おくから入いり口くちに向むかってゆるやかな坂さかをなすように建造けんぞうされる。1号ごうドックの底面ていめんが水平すいへいに施工しこうされた理由りゆうは、ドック底面ていめんを均一きんいつな勾配こうばいで傾斜けいしゃをつけることが技術ぎじゅつ的てきに困難こんなんであったからと考かんがえられる。しかしやはりドック底そこが水平すいへいであると作業さぎょう上じょう都合つごうが悪わるかったようで、1号ごうドックに続つづいて建造けんぞうされた3号ごうドックの底面ていめんは勾配こうばいがつけられた。また現在げんざいのドックと比較ひかくしてもうひとつ大おおきな差さは、ドックの壁面へきめんが階段かいだん状じょうをしている点てんが挙あげられる。これはフランスの技術ぎじゅつ指導しどうのもと建設けんせつされた1号ごうドックは、フランスが好このんで建設けんせつしていたドックの壁面へきめんが階段かいだん状じょうをしたタイプになったものと考かんがえられる。階段かいだん式しきのドライドックは船底ふなそこが平たいらでない船舶せんぱくのドック入いりに便利べんりであり、そのような船舶せんぱくはドック入いり後ご、排水はいすい時じに船体せんたいを両側りょうがわから支持しじ棒ぼうで固定こていする必要ひつようがあり、支持しじ棒ぼうの設置せっちのためにドックの壁面へきめんが階段かいだん状じょうに施工しこうされる必要ひつようがあったためである。また施工しこう上じょうも階段かいだん式しきの方ほうが容易よういであった。

1号ごうドック建設けんせつ場所ばしょは地盤じばんが良よく湧水わきみずも少量しょうりょうであったと考かんがえられ、土留どどめや止とめ水すい壁かべを用もちいることなく工事こうじが可能かのうであったと考かんがえられるが、例たとえば海うみを締切しめきり堤つつみで仕切しきるような大だい規模きぼな海上かいじょうでの工事こうじは、これまで日本にっぽんでは行おこなわれた経験けいけんがないもので、やはり工事こうじは困難こんなんであったと考かんがえられる。またこのような大おおきな近代きんだい的てきな海洋かいよう土木どぼく工事こうじを、幕末ばくまつから明治めいじ初年しょねんという時期じきに初はじめて取とり組くむこと自体じたい、工事こうじを進すすめていく組織そしき作づくりと運営うんえい、材料ざいりょうの輸送ゆそうと搬入はんにゅうなどにも大おおきな困難こんなんが伴ともなったと考かんがえられる。1号ごうドックは完成かんせい後ご百ひゃく数すう十じゅう年ねん余あまり、これまで改修かいしゅうと補修ほしゅうは行おこなわれているものの、今いまなお現役げんえきで使用しようされ続つづけている。これは財政ざいせいが破綻はたん状態じょうたいであった幕末ばくまつ期きにあえて建設けんせつが開始かいしされたことを始はじめ、数すう多おおくの大おおきな困難こんなんの中なかで建設けんせつされた1号ごうドックであるが、ヴェルニーの選定せんていした建設けんせつ場所ばしょや石材せきざいの優秀ゆうしゅうさ、そして施工しこうの確たしかさ、技術ぎじゅつ力りょくの高たかさを示しめしている。

なお、1号ごうドックの排水はいすいポンプは2号ごうドックと兼用けんようであり、ドックの石積いしつみ護岸ごがんの一部いちぶは補修ほしゅう等とうは行おこなわれているが、ドック建設けんせつ当初とうしょの幕末ばくまつから明治めいじ初年しょねんのものが残のこっている。

3号ごうドックの建設けんせつ

1983年ねん撮影さつえいの横須賀よこすか海軍かいぐん施設しせつの1号ごう、2号ごう、3号ごうドック。画面がめん右側みぎがわから1号ごう、2号ごう、3号ごうドックで、3基きのドックが並ならんで建設けんせつされた状況じょうきょうがわかる。
国土こくど交通省こうつうしょう 国土こくど地理ちり院いん 地図ちず・空中くうちゅう写真しゃしん閲覧えつらんサービスの空中くうちゅう写真しゃしんを基もとに作成さくせい

1号ごうドックの完成かんせい後ごまもなく、明治めいじ4年ねん（1871年ねん）5月がつには第だい3号ごうドックの建設けんせつが開始かいしされた。なお1号ごうドックが完成かんせいし、3号ごうドックが着工ちゃっこうされた明治めいじ4年ねん（1871年ねん）、横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょは横須賀造船所よこすかぞうせんじょと改称かいしょうされた。

ヴェルニーは当初とうしょの横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょ建設けんせつ計画けいかくで2基きのドライドック建設けんせつを予定よていしていたが、少すくなくとも3号ごうドック建設けんせつ開始かいし時じまでには3基きのドックを建設けんせつする計画けいかくとなったものと想定そうていされる。当時とうじドライドックを建設けんせつする場合ばあい、大だい中小ちゅうしょうの3基きを建設けんせつするのが常識じょうしきであった。それは19世紀せいき後半こうはんに成立せいりつした海軍かいぐんの艦隊かんたい編成へんせいに理由りゆうがあった。当時とうじの海軍かいぐんは戦艦せんかんを中心ちゅうしんとした編成へんせいとなり、補助ほじょ艦船かんせんとして巡洋艦じゅんようかん、そして奇襲きしゅう攻撃こうげきの際さいなどに活躍かつやくする駆逐くちく艦かんなどで編成へんせいされるようになってきた。従したがってその艦隊かんたい編成へんせいに合あわせて、ドックも船体せんたいの大おおきさに合あわせて大だい中小ちゅうしょうの3基きを建設けんせつすることが効率こうりつ的てきであった。当初とうしょ横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょで2基きのみのドライドック建設けんせつ計画けいかくが立たてられた最大さいだいの理由りゆうは資金しきん難なんであったと考かんがえられる。また1号ごうの建設けんせつが終了しゅうりょうした後のちに3号ごう、そして3号ごうの建設けんせつが終おわってから2号ごうと、ドックの建設けんせつが順番じゅんばんに行おこなわれ同時どうじ進行しんこうされなかった理由りゆうも、やはり幕末ばくまつから明治めいじ初期しょきにかけての深刻しんこくな財政難ざいせいなんに加くわえ、労働ろうどう力不足ちからぶそくの影響えいきょうも大おおきかったものと推察すいさつされている。

3号ごうドックは1号ごうドックの西側にしがわに建設けんせつされたが、両りょうドックの間あいだがかなり開ひらいており、そこに2号ごうドックが建設けんせつされることになる。これは明あきらかに3つのドックを並ならべて建設けんせつし、しかも最大さいだいのドックとなる2号ごうドックを3基きのドックの中央ちゅうおうとする計画けいかくが存在そんざいしたものといえる。それは1号ごうドックと2号ごうドックの間あいだと、2号ごうドックと3号ごうドックの間あいだにポンプ室しつを設置せっちして、最大さいだいのドックである2号ごうドックの船舶せんぱく入渠にゅうきょ時じには、両方りょうほうのポンプを同時どうじに使用しようして効率こうりつ的てきな排水はいすいを行おこなう仕組しくみとするためであった。このような点てんから、3号ごうドック建設けんせつ開始かいし時じには3基きのドックを並ならべて建設けんせつする計画けいかくがあったものと推定すいていされる。現状げんじょうでも2号ごうドックのポンプ室しつは、1号ごうとの兼用けんようのポンプが1号ごうドックとの間あいだに、3号ごうとの兼用けんようポンプが3号ごうドックとの間あいだに2つ設もうけられている。

3号ごうドックの設計せっけい者しゃは1号ごうドックと同おなじく、ヴェルニーとL.F.フロランと考かんがえられている。なお施工しこう指導しどうはL.F.フロランの弟おとうとであるV.C.フロランが行おこなった。V.C.フロランは第だい3号ごうドックでの施工しこう指導しどうが評価ひょうかされ、3号ごうドックの完成かんせい直後ちょくごに工事こうじが開始かいしされた、長崎ながさき市しの工こう部ぶ省しょう長崎造船所なかざきぞうせんじょ1号ごうドックの設計せっけいを行おこなうことになった。なお3号ごうドックは明治めいじ7年ねん（1874年ねん）1月がつに完成かんせいしている。

V.C.フロランが設計せっけいを担になった長崎造船所なかざきぞうせんじょ第だい1号ごうドックが明治めいじ12年ねん（1879年ねん）に完成かんせいするまで、日本にっぽんにドライドックは横須賀よこすかの1号ごう、3号ごうドックしかなかった。そのため多おおくの明治めいじ政府せいふの軍艦ぐんかん修復しゅうふくを請うけ負おうこととなったが、商船しょうせんの修理しゅうりも行おこなっていた。当時とうじドックの修理しゅうり需要じゅようは極きわめて高たかく、半年はんとし待まちとなることもあった。1号ごう、3号ごうドックの後のちに2号ごうドックを建造けんぞうすることは、計画けいかくされていたことと考かんがえられるとはいえ、1号ごう、3号ごうドックの需要じゅようの高たかさも2号ごうドックの建造けんぞう開始かいしの理由りゆうとなった。

3号ごうドックの工事こうじでは、1号ごうドックと異ことなりセメント代だいが低額ていがくとなっている。これは1号ごうドックでは主おもに輸入ゆにゅう品ひんのポルトランドセメントを使用しようしたものが、3号ごうドックでは石灰せっかいなどを用もちいてセメントも現地げんち生産せいさんを行おこなったものと考かんがえられる。ドックに用もちいられた石材せきざいについては、1号ごうドックと同おなじく真鶴まなづるから熱海あたみ周辺しゅうへんで採石さいせきされた安山岩あんざんがん質しつの新しん小松こまつ石せきを用もちいている。また1号ごうドックよりも小型こがたの全長ぜんちょう約やく90メートルの3号ごうドック建造けんぞうでは、工事こうじ中ちゅうの締切しめきり堤つつみが1号ごうドック建造けんぞうの際さいより簡略かんりゃくなものであり、またドック底そこや側面そくめんの厚あつさが1号ごうドックよりも小ちいさいと推定すいていされるなど、小型こがたのドックであったことによる違ちがいが見みられる。

3号ごうドックの特徴とくちょうとしては、まず1号ごうドックでは行おこなわれなかったドック底面ていめんの傾斜けいしゃがつけられたことが挙あげられる。しかし今度こんどは傾斜けいしゃが急きゅうすぎたようで、次つぎに建造けんぞうされた2号ごうドックでは3号ごうドックの底面ていめんにつけられた傾斜けいしゃの約やく半分はんぶんとなった。

続つづいてドック入いり口くち部分ぶぶんに扉とびら船せんを繋つなぐ戸と当あたりが2か所しょ設もうけられたことが挙あげられる。これはドックに入渠にゅうきょする船舶せんぱくの大おおきさによって扉とびら船せんの位置いちを変かえ、排水はいすい量りょうを少すくなくして作業さぎょうの効率こうりつ化かを図はかったものと考かんがえられている。そして扉とびら船せんを繋つなげる戸と当あたりが2か所しょあるドライドックは、3号ごうドックの後のち、各地かくちに建設けんせつされるようになる。

3号ごうドックの奥おくの部分ぶぶん、半円はんえん形がたをしていることと斜はす路ろが設もうけられていることがわかる。

また3号ごうドックでは、ドックの奥おくの部分ぶぶんが半はん円形えんけいをしており、また斜はす路ろが設もうけられていることも特徴とくちょうとして挙あげられる。当時とうじのドライドックはドックの奥おくの部分ぶぶんは半はん円形えんけいないし尖とんが頭あたまアーチ形がたとなっていた。これは船体せんたいの形状けいじょうに合あわせることによって無駄むだな空間くうかんを出来できる限かぎり少すくなくし、艦船かんせんのドック入いりの際さいに必要ひつようとされる排水はいすい量りょうを減へらすことと、もしドック奥おくを矩形くけいとした場合ばあい、ドック奥おくの部分ぶぶんと側面そくめんとの間あいだに角かくが出来できることになるが、石造せきぞうのドックの場合ばあい、角かくを構築こうちくすることが技術ぎじゅつ的てきに難むずかしかったため、角かくが生しょうじない半はん円形えんけいないし尖とんが頭あたまアーチ形がたを採用さいようしたと考かんがえられている。後年こうねん、ドライドックがコンクリートで建造けんぞうされるようになると、半円はんえん形がたや尖とんが頭あたまアーチ形がたはコストがかかるためドック奥おくは矩形くけいを採用さいようするようになった。

1号ごうドックの延長えんちょう工事こうじ部分ぶぶん。画面がめん左ひだりの石造せきぞう部分ぶぶんはドック建設けんせつ当時とうじのままの部分ぶぶんで、右側みぎがわのコンクリート部分ぶぶんが延長えんちょう部分ぶぶん。

またドック奥おくに斜はす路ろが設もうけられた理由りゆうは、クレーンなどの重機じゅうきが発達はったつしていなかった19世紀せいき後半こうはん、船舶せんぱく修理しゅうりに必要ひつような資材しざいを、ドック奥おくに設もうけられた斜はす路ろを滑すべらせてドック底そこに降おろすためである。1号ごうドックも当初とうしょはドック奥おくは半円はんえん形がたをしており、斜はす路ろも設もうけられていたが、昭和しょうわ10年ねん（1935年ねん）から昭和しょうわ11年ねん（1936年ねん）にかけて延長えんちょうされた際さい、コンクリート製せいとなった延長えんちょう部分ぶぶんの奥おくは矩形くけいとなり、クレーンが発達はったつした昭和しょうわ時代じだいには斜はす路ろの必要ひつよう性せいも無なかったために斜はす路ろも設もうけられなかった。3号ごうドックは明治めいじ7年ねん（1874年ねん）の完成かんせい以降いこう、風化ふうかした石材せきざいのコンクリートによる補修ほしゅうが行おこなわれたのみで大おおきな改修かいしゅうは行おこなわれておらず、ドック完成かんせい時じの形かたちのまま現在げんざいも用もちいられており、建設けんせつ当時とうじの姿すがたを残のこしているドライドックとしては日本にっぽん最古さいこのものであり大変たいへん貴重きちょうといえる。

ドック付帯ふたい設備せつびとしては、現在げんざいの3号ごうドックポンプ室しつは2号ごうドックと兼用けんようであり、現在げんざいの2号ごう、3号ごう兼用けんようのポンプ室しつは昭和しょうわ16年ねん（1941年ねん）竣工しゅんこうのものとの記録きろくが残のこっている。

2号ごうドックの建設けんせつ

横須賀よこすか海軍かいぐん施設しせつ2号ごうドック

3号ごうドックが完成かんせいした後のちの明治めいじ8年ねん（1875年ねん）末まつ、ヴェルニーは横須賀造船所よこすかぞうせんじょの長ちょうを退任たいにんし、翌よく明治めいじ9年ねん（1876年ねん）、短期間たんきかん顧問こもんを務つとめた後のち、同年どうねん3月がつにはフランスへ帰国きこくした。帰国きこく前まえ、ヴェルニーは報告ほうこく書しょを提出ていしゅつしているが、その中なかで「東京とうきょう湾わんを出入でいりする大型おおがた船せんの修理しゅうりが可能かのうである、大だい規模きぼなドライドックを建設けんせつする必要ひつよう性せいがある」との内容ないようを記しるしていた。折おりしも明治めいじ政府せいふは明治めいじ8年ねん（1875年ねん）から海軍かいぐん力りょくの増強ぞうきょう計画けいかくを開始かいししていた。また当時とうじ保有ほゆうしていた軍艦ぐんかんの多おおくが老朽ろうきゅう艦かんであり、海軍かいぐんの増強ぞうきょうに伴ともない艦船かんせんの数かずも増加ぞうかしていた。そのため横須賀よこすかのドライドックの需要じゅようは増大ぞうだいしていき、修理しゅうりが追おいつかない状態じょうたいになっていた。

明治めいじ政府せいふの財政難ざいせいなんが原因げんいんで、待まち望のぞまれた大型おおがたドックの着工ちゃっこうは遅おくれることになったが、明治めいじ11年ねん（1878年ねん）1月がつに横須賀造船所よこすかぞうせんじょ長ちょう中ちゅう牟田むた倉之助くらのすけから海軍かいぐん大輔だいすけ川村かわむら純じゅん義よしに提出ていしゅつされた、財政難ざいせいなんによって着工ちゃっこうが先さき延のばしになっている3基き目めのドライドックを建設けんせつしたい旨むねの上申じょうしん書しょに基もとづき、2号ごうドックの着工ちゃっこうが決定けっていされた。

建設けんせつが決定けっていした2号ごうドックの設計せっけいは、フランス人じん建築けんちく課長かちょうのジュエットが担になった。明治めいじ11年ねん（1878年ねん）5月がつ1日にち、ジュエットは契約けいやく期間きかんが満了まんりょうしたが、建設けんせつ予定よていの2号ごうドックの設計せっけいに携たずさわっていたため契約けいやくが延長えんちょうされた。ジュエットは明治めいじ13年ねん（1881年ねん）5月がつ1日にちに契約けいやく満了まんりょうとなり、2号ごうドックの着工ちゃっこうを前まえにして帰国きこくすることとなった。

ジゥエットの後任こうにんとして2号ごうドックの建設けんせつを指揮しきしたのは、ヴェルニーの発案はつあんによって横須賀よこすか製鉄せいてつ所内しょないに設もうけられた技術ぎじゅつ者しゃ養成ようせい施設しせつである「黌舎」で、造船ぞうせん工学こうがくと土木どぼく工学こうがくを学まなんだ技術ぎじゅつ者しゃの恒川つねかわ柳作りゅうさくであった。1号ごう、3号ごうドックはフランス人じん技術ぎじゅつ者しゃを中心ちゅうしんとして建設けんせつが進すすめられたものが、2号ごうドック建設けんせつ時じには設計せっけいこそフランス人じん技術ぎじゅつ者しゃによってなされたが施工しこうは日本人にっぽんじんが担になうこととなり、日本人にっぽんじんが技術ぎじゅつを着実ちゃくじつに習得しゅうとくしてきたことを示しめしている。なお恒川つねかわは2号ごうドック建設けんせつ終了しゅうりょう後ご、呉ご鎮守ちんじゅ府ふ、佐世保させぼ鎮守ちんじゅ府ふ、舞鶴まいづる鎮守ちんじゅ府ふへ異動いどうしていき、それぞれの地ちでドライドック建設けんせつに携たずさわり、さらに横浜よこはまで横浜よこはま船渠せんきょの設計せっけいも行おこなうなど、まさに日本にっぽんのドライドック建設けんせつの草分くさわけ的てきな存在そんざいとなった。このように横須賀よこすかでヴェルニーなどから学まなんだ技術ぎじゅつは日本にっぽん各地かくちへと広ひろまっていった。

2号ごうドックは明治めいじ13年ねん（1880年ねん）7月がつに着工ちゃっこうされた。建設けんせつ予定よてい地ちには白しろ仙山せんのやまと呼よばれた標高ひょうこう約やく45メートルの硬かたい土質どしつの丘おかがあり、まず丘おかを崩くずしその後ごにドック本体ほんたいの開削かいさくが始はじめられた。なお建設けんせつ時じに生しょうじた残土ざんどは横須賀造船所よこすかぞうせんじょの東側ひがしがわの埋うめ立たてに利用りようされ、約やく7000坪つぼの埋立うめたて地ちが造成ぞうせいされた。

工事こうじ記録きろくによればドック建設けんせつの際さい、最もっとも難航なんこうしたのがドック予定よてい地ち前まえの海うみを締切しめきり堤つつみで仕切しきる工事こうじであったという。海うみを締しめ切きる堤つつみを建設けんせつする工事こうじは難なん工事こうじであり、しかも1号ごうドック、3号ごうドックの時ときと異ことなり日本人にっぽんじんのみで作業さぎょうに取とり掛かからねばならなかった。排水はいすいポンプ2基きを作動さどうさせながら作業さぎょうを進すすめ、成功裏せいこうりに工事こうじが行おこなわれると多おおくの人ひとから賞賛しょうさんを受うけたと伝つたえられる。

ドックに用もちいられる石材せきざいは、1号ごう、3号ごうドックと同おなじく真鶴まなづるから熱海あたみにかけて産さんする、安山岩あんざんがん質しつの新しん小松こまつ石せきが用もちいられた。なお明治めいじ8年ねん（1875年ねん）には日本にっぽん国内こくないにセメント工場こうじょうが完成かんせいしており、2号ごうドックではイギリス産さんと並ならんで国産こくさんのポルトランドセメントが用もちいられた。また第だい3号ごうドックで用もちいられたと見みられる、石灰せっかいなどを原料げんりょうとしたセメントも用もちいられたと考かんがえられる。

2号ごうドックは明治めいじ17年ねん（1884年ねん）7月がつ21日にちに完成かんせい式しきが行おこなわれ、北白川宮能久親王きたしらかわのみやよしひさしんのう、海軍かいぐん卿きょう川村かわむら純じゅん義よしらが参列さんれつした。2号ごうドックの全長ぜんちょうは156.5メートルに達たっし、これは当時とうじ明治めいじ初期しょきに日本にっぽんで建設けんせつされた最大さいだい規模きぼのドライドックであり、東洋とうよう一いちの大おおきさであったと考かんがえられる。

2号ごうドックは3号ごうドックと同おなじくドック床ゆか面めんに傾斜けいしゃがつけられているが、傾斜けいしゃは3号ごうドックの約やく半分はんぶんとなっている。またドック奥おくは半円はんえん形がたをしていて斜はす路ろが設もうけられている点てんも共通きょうつうしている。2号ごうドックの周囲しゅういには軌間きかん1078ミリの線路せんろが巡めぐっている。この線路せんろの用途ようとは不明ふめいであるが、ドック建設けんせつ時じに石材せきざい運搬うんぱん用ように線路せんろが敷設ふせつされたとの記録きろくが残のこっているためその線路せんろであるか、またはドック入いりした船舶せんぱくの修理しゅうり用よう資材しざいを運搬うんぱんするために敷設ふせつされた線路せんろであると考かんがえられている。

2号ごうドックの最大さいだいの特徴とくちょうは、ドック中央ちゅうおう部ぶにも扉とびら船せんを繋つなぐ戸と当あたりが構築こうちくされ、ドックを2分割ぶんかつして60-70メートル級きゅうの船舶せんぱく2隻せきを同時どうじにドック入いりすることが可能かのうな構造こうぞうであったことである。このため2号ごうドックではドック前部ぜんぶと後部こうぶの2か所しょに排水はいすい口こうを設もうけていた。このような2分割ぶんかつして利用りようできる仕組しくみを備そなえたドライドックは、日本にっぽんでは第だい2号ごうドックしか作つくられなかったが、増大ぞうだいする船舶せんぱく修理しゅうり需要じゅようを満みたすため、このような構造こうぞうを採用さいようしたものと考かんがえられている。しかし艦船かんせんの規模きぼの大型おおがた化かに伴ともない、明治めいじ30年ねん（1897年ねん）に改修かいしゅう工事こうじが実施じっしされ、ドック中央ちゅうおう部ぶの戸と当あたりが撤去てっきょされてドックを2分割ぶんかつで使用しようすることは出来できなくなり、通常つうじょうの全長ぜんちょう156.5メートルのドックとして使用しようされるようになった。

明治めいじ20年ねん（1887年ねん）までに完成かんせいした日本にっぽんのドライドックは、横須賀造船所よこすかぞうせんじょで建設けんせつされたドック以外いがいに、工こう部ぶ省しょう長崎造船所なかざきぞうせんじょ1号ごうドック、大阪おおさか鉄工てっこう所しょドックがあったが、両りょうドックとも現在げんざいは既すでに存在そんざいせず、横須賀よこすか海軍かいぐん施設しせつに現存げんそんし、現役げんえきドックとして稼動かどうし続つづけている1号ごうドック、2号ごうドック、3号ごうドックは極きわめて貴重きちょうな土木どぼく遺産いさんであり、東京とうきょう大学だいがく生産せいさん技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょの村松むらまつ貞次郎ていじろう教授きょうじゅは、「もし他たの自由じゆうな場所ばしょにあったら文句もんく無なく国くにの第だい一いち級きゅう史跡しせきであり、文化財ぶんかざいである」と高たかく評価ひょうかした。

軍艦ぐんかんの大型おおがた化かと4号ごうドックの建設けんせつ

明治めいじ末期まっきに軍艦ぐんかんの大型おおがた化かに対応たいおうするドックとして建設けんせつされた横須賀よこすか海軍かいぐん施設しせつ4号ごうドック

2号ごうドックが完成かんせいした明治めいじ17年ねん（1884年ねん）12月には横須賀よこすか鎮守ちんじゅ府ふが設立せつりつされた。明治めいじ19年ねん（1886年ねん）4月がつには横須賀よこすか鎮守ちんじゅ府ふに造船ぞうせん部ぶが設置せっちされ、これまで民間みんかんの造船ぞうせん業ぎょうが未み発達はったつであったこともあって、民間みんかんや外国がいこく籍せきの船舶せんぱくも修理しゅうりを請うけ負おっていたものが、海軍かいぐん艦船かんせんの造船ぞうせん、艤装ぎそうそして修理しゅうりをその目的もくてきとされるようになった。明治めいじ22年ねん（1889年ねん）5月がつには横須賀造船所よこすかぞうせんじょは廃止はいしされ、横須賀よこすか鎮守ちんじゅ府ふ造船ぞうせん部ぶに統合とうごうされた。そして横須賀よこすか鎮守ちんじゅ府ふ造船ぞうせん部ぶは明治めいじ30年ねん（1897年ねん）に横須賀よこすか海軍かいぐん造船ぞうせん廠しょうとなり、明治めいじ36年ねん（1903年ねん）11月には横須賀よこすか海軍かいぐん工廠こうしょうとなった。

日本にっぽん海軍かいぐんでは海軍かいぐん力りょくの増強ぞうきょうに伴ともない、軍艦ぐんかんの大型おおがた化かが進すすんでいた。そのような中なか、横須賀よこすか海軍かいぐん工廠こうしょう第だい四よん船渠せんきょとして4号ごうドックの建設けんせつが開始かいしされることになった。新しんドック建設けんせつ予定よてい地ちには旗はた山やまと呼よばれていた丘おかがあったが、明治めいじ31年ねん（1898年ねん）10月がつから旗はた山やまを崩くずしてその土砂どしゃで海うみの埋うめ立たてを行おこない、ドック建設けんせつ予定よてい地ちの整地せいちを行おこなった。明治めいじ34年ねん（1901年ねん）3月がつには予定よてい地ちの整地せいちが完了かんりょうし、同年どうねん11月がつ、4号ごうドックは起工きこうされた。工事こうじの施工しこう管理かんりは主任しゅにん技師ぎしの井上いのうえ親雄ちかおが行おこなった。4号ごうドックは日にち露ろ戦争せんそう終了しゅうりょう後ごの明治めいじ38年ねん（1905年ねん）9月がつに完成かんせいし、横須賀よこすか海軍かいぐん工廠こうしょうでは軍艦ぐんかんの大型おおがた化かに対応たいおうした最初さいしょのドックとなった。

4号ごうドックは建設けんせつ当初とうしょ、ドック主体しゅたい部ぶについてはコンクリート造づくり、ドック入いり口くち部ぶは石組いしぐみによる石造せきぞうとなっており、コンクリートと石造せきぞうの併用へいようであった。またこれまで建造けんぞうされたドックと同おなじく、ドック奥おくには物資ぶっし運搬うんぱん用ようの斜はす路ろが設もうけられたが、昭和しょうわ3年ねん（1928年ねん）から昭和しょうわ4年ねん（1929年ねん）にかけてに行おこなわれたドック長ちょうを40.6メートル延長えんちょうする改修かいしゅうの際さい、1号ごうドックと同おなじく斜はす路ろは撤去てっきょされた。4号ごうドックは昭和しょうわ18年ねん（1943年ねん）から昭和しょうわ19年ねん（1944年ねん）に再さい延長えんちょう工事こうじが行おこなわれ、また平成へいせい17年ねん（2005年ねん）には、ドック入渠にゅうきょの際さいに船体せんたいとドック壁かべを保護ほごすることを目的もくてきとし、ドック入いり口くち部分ぶぶんに防ぼう舷ふなばた材ざいの設置せっち工事こうじが行おこなわれ、防ぼう舷ふなばた材ざいが設置せっちされる部分ぶぶんの石組いしぐみが撤去てっきょされた。なお当とう工事こうじ中ちゅうに工事こうじ箇所かしょの4号ごうドックの石組いしぐみとコンクリートについて調査ちょうさが実施じっしされ、石組いしぐみは1号ごうから3号ごうドックで推定すいていされるのと同おなじく、西洋せいよう式しきの直方体ちょくほうたいの石材せきざいを隙間すきま無なく組くむ方式ほうしきと、日本にっぽん式しきの「間あいだ知ち積づみ」と呼よばれる城しろの石垣いしがきを組くむ際さいに行おこなわれた方式ほうしきの折衷せっちゅうであったと考かんがえられることと、石組いしぐみの裏うら込こみはコンクリートによって行おこなわれていたことが明あきらかとなった。

4号ごうドックには艦船かんせん修理しゅうりの材料ざいりょうや部品ぶひんを搬入はんにゅうするためのクレーンが設置せっちされ、戦後せんごの米べい海軍かいぐん艦船かんせん修理しゅうり廠しょうでも使用しようされ続つづけてきたが、設備せつびの老朽ろうきゅう化かが進すすんだために徐々じょじょに撤去てっきょが行おこなわれた。4号ごうドックのクレーンは平成へいせい13年ねん（2001年ねん）に撤去てっきょされ、新あらたなクレーンに交換こうかんされた。なお5号ごう、6号ごうドックにも戦前せんぜんから使用しようされ続つづけていたクレーンが存在そんざいしたが、平成へいせい15年ねん（2003年ねん）までには全すべて撤去てっきょされ、現在げんざいは新あたらしいクレーンが使用しようされている。

5号ごうドックと建けん艦かん競争きょうそう

横須賀よこすか海軍かいぐん施設しせつ5号ごうドック

1983年ねん撮影さつえいの横須賀よこすか海軍かいぐん施設しせつの4号ごう、5号ごうドック。画面がめん右側みぎがわが4号ごうドック、左ひだりが5号ごうドック。
国土こくど交通省こうつうしょう 国土こくど地理ちり院いん 地図ちず・空中くうちゅう写真しゃしん閲覧えつらんサービスの空中くうちゅう写真しゃしんを基もとに作成さくせい

日にち露ろ戦争せんそう後ご、日本にっぽんは海軍かいぐんの更さらなる充実じゅうじつを図はかることとし、その中なかで軍艦ぐんかんの国産こくさん化かを進すすめていくこととした。明治めいじ38年ねん（1905年ねん）5月がつには戦艦せんかん薩摩さつまが起工きこうされ、翌年よくねん11月がつに進水しんすいした。そのような中なか、明治めいじ39年ねん（1906年ねん）、イギリス海軍かいぐんはそれまでの戦艦せんかんを旧式きゅうしき化かさせる革命かくめい的てきな戦艦せんかんドレッドノートを完成かんせいさせた。ドレッドノートの誕生たんじょうは各国かっこくの海軍かいぐん関係かんけい者しゃに強つよい衝撃しょうげきを与あたえ、建けん艦かん競争きょうそうが開始かいしされることとなった。日本にっぽん海軍かいぐんも明治めいじ41年ねん（1908年ねん）、戦艦せんかん河内かわうちと摂津せっつの建造けんぞうを開始かいしし、建けん艦かん競争きょうそうに加くわわっていった。

このような情勢じょうせい下か、日本にっぽん海軍かいぐんの艦船かんせん数すうは著いちじるしく増加ぞうかし、また大型おおがた化かした。明治めいじ38年ねん（1905年ねん）に完成かんせいした4号ごうドックに入はいらない艦船かんせんの建造けんぞうも始はじまったため、明治めいじ44年ねん（1911年ねん）7月がつには5号ごうドックの建設けんせつが開始かいしされることになった。工事こうじ主任しゅにんは澄田すみた勘かん作さくが務つとめた。5号ごうドック建設けんせつ前まえも、4号ごうドックと同おなじく建設けんせつ予定よてい地ちにあった丘おかを全すべて崩くずし、近ちかくの海うみを埋うめ立たててドック建設けんせつ予定よてい地ちの整地せいちが行おこなわれた。5号ごうドックの建設けんせつ時じはドック前面ぜんめんの海うみの締切しめきりに単たん層そう鉄てつ矢板やいたが用もちいられたとの記録きろくが残のこっている。

5号ごうドックは建設けんせつ途中とちゅうに設計せっけい変更へんこうが行おこなわれ、ドックの規模きぼが拡大かくだいされたことが明あきらかになっている。また設計せっけい変更へんこうは一いち回かいだけでなく再度さいど実施じっしされた可能かのう性せいもある。なお5号ごうドックは4号ごうドックと同おなじく、コンクリートと石造せきぞうの併用へいようであった。そして5号ごうドックは大正たいしょう5年ねん（1916年ねん）3月がつに完成かんせいしたが、新しん艦かん山城やましろの改修かいしゅう工事こうじの早期そうき実施じっしを迫せまられたため、ドック完成かんせい直後ちょくごには昼夜ちゅうや兼行けんこうの改修かいしゅう工事こうじが実施じっしされたとの記録きろくが残のこっている。

大正たいしょう6年ねん（1917年ねん）、日本にっぽん海軍かいぐんは長門ながと型がた戦艦せんかんの長門ながとを起工きこうした。続つづいて大正たいしょう7年ねん（1918年ねん）には、長門ながと型がた戦艦せんかんの二に番ばん艦かんである陸奥みちのくの建造けんぞうが開始かいしされた。このような中なかで完成かんせい間あいだもない5号ごうドックは延長えんちょう工事こうじが実施じっしされることとなった。5号ごうドックの延長えんちょう工事こうじは大正たいしょう13年ねん（1924年ねん）10月がつに完成かんせいし、ドック長ちょうが約やく70メートル延長えんちょうされ、全長ぜんちょう320メートルを越こえる規模きぼとなった。大和やまと型がた戦艦せんかんが出現しゅつげんする以前いぜん、日本にっぽん海軍かいぐんの艦船かんせんで長ながさは空母くうぼ赤城あかぎ、幅はばは戦艦せんかん長門ながと、そして喫水きっすいは戦艦せんかん扶桑ふそうが最大さいだいであったが、改修かいしゅうされた5号ごうドックは呉ご海軍かいぐん工廠こうしょうの4号ごうドックとともに、それら三さん艦艇かんていの修理しゅうり改修かいしゅうに対応たいおう可能かのうな大型おおがたドックであった。

なお、4号ごうドックと5号ごうドックの間あいだにあるポンプ室しつは、並列へいれつしている4号ごう、5号ごう両りょうドックの排水はいすいを行おこなっているが、ポンプ室しつの建物たてものは大正たいしょう5年ねん（1916年ねん）の5号ごうドック完成かんせい当時とうじの建物たてものをそのまま使用しようしており、鉄骨てっこつで柱はしらや梁はりを構築こうちくした後のちに壁面へきめんに煉瓦れんがを積つみ上あげられた鉄骨てっこつ煉瓦れんが造づくりの建造けんぞう物ぶつである。現在げんざい横須賀よこすか海軍かいぐん施設しせつ内ないに残のこる鉄骨てっこつ煉瓦れんが造づくりの建造けんぞう物ぶつは、4号ごうドックと5号ごうドックの間あいだにあるポンプ室しつのみであり、貴重きちょうな建造けんぞう物ぶつである。

6号ごうドックと空母くうぼ信濃しなの

6号ごうドックの建設けんせつ

空母くうぼの入渠にゅうきょも可能かのうな横須賀よこすか海軍かいぐん施設しせつ6号ごうドック

第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん後こうも列強れっきょうの建けん艦かん競争きょうそうは激はげしさを増まし、過重かじゅうな海軍かいぐん軍事ぐんじ費ひは各国かっこくの財政ざいせいを圧迫あっぱくするようになった。そのような中なか、大正たいしょう10年ねん（1921年ねん）にワシントン海軍かいぐん軍縮ぐんしゅく条約じょうやくが締結ていけつされ、日本にっぽんの主力しゅりょく艦かん、航空こうくう母艦ぼかんの保有ほゆう量りょうはアメリカの6割わりとされた。続つづいて昭和しょうわ5年ねん（1930年ねん）にはロンドン海軍かいぐん軍縮ぐんしゅく条約じょうやくが締結ていけつされ、主力しゅりょく艦かん以外いがいの補助ほじょ艦艇かんていの保有ほゆう量りょうにも制限せいげんが加くわえられることになった。ワシントン海軍かいぐん軍縮ぐんしゅく条約じょうやく以降いこうの海軍かいぐん休日きゅうじつによって建けん艦かん競争きょうそうは一段落いちだんらくした。日本にっぽん海軍かいぐんは艦艇かんていの保有ほゆう量りょうに制限せいげんが加くわえられたことにより、既存きそんの艦艇かんていの補修ほしゅう・改良かいりょうに奔走ほんそうすることとなった。また日本にっぽん海軍かいぐんのアメリカ、イギリスの二に大だい海軍かいぐん大国たいこくに対たいして艦艇かんていの質しつの高たかさで対抗たいこうしようとした方針ほうしんにより、攻撃こうげき型がた艦艇かんていに重じゅう武装ぶそうをする傾向けいこうが強つよかったが、過重かじゅうな武装ぶそうは艦艇かんていの欠陥けっかんとなって現あらわれ、横須賀よこすか海軍かいぐん工廠こうしょうのドライドックでは艦艇かんていの補修ほしゅうや改良かいりょうが相次あいつぎ、繁忙はんぼうを極きわめた。そのような中なか、大型おおがた艦艇かんていの修理しゅうりに対応たいおうするために、4号ごうドックでは昭和しょうわ3年ねん（1928年ねん）から昭和しょうわ4年ねん（1929年ねん）にかけてドック長ちょうを40.6メートル延長えんちょうする改修かいしゅうが行おこなわれた。

日本にっぽんは昭和しょうわ9年ねん（1934年ねん）12月、ワシントン海軍かいぐん軍縮ぐんしゅく条約じょうやくからの脱退だったいを宣言せんげんし、昭和しょうわ11年ねん（1936年ねん）1月がつ15日にちにはロンドン海軍かいぐん軍縮ぐんしゅく条約じょうやくの改正かいせいを目指めざした第だい二に次じロンドン海軍かいぐん軍縮ぐんしゅく会議かいぎからも脱退だったいし、昭和しょうわ12年ねん（1937年ねん）以降いこういわゆる無む条約じょうやく時代じだいとなり、海軍かいぐん休日きゅうじつは終焉しゅうえんした。このような情勢じょうせい下かで日本にっぽん海軍かいぐんは大幅おおはばな軍備ぐんび増強ぞうきょうを計画けいかくし、その中なかで排水はいすい量りょう65000トンクラスの大和やまと型がた戦艦せんかんの建造けんぞうが決定けっていされた。大和やまと型がた戦艦せんかんを建造けんぞうするに当あたり、当時とうじ世界せかい屈指くっしの大型おおがたドックであった呉ご海軍かいぐん工廠こうしょうの4号ごうドックでは建造けんぞう、修理しゅうり等とうが可能かのうであったが、他たに大和やまと型がた戦艦せんかんの建造けんぞう、修理しゅうりが可能かのうなドックがなかったため、大和やまと型がた戦艦せんかんの効率こうりつ的てきな建造けんぞうと完成かんせい後ごのドック入いりの便宜べんぎを考慮こうりょした結果けっか、昭和しょうわ10年ねん（1935年ねん）7月がつに横須賀よこすか海軍かいぐん工廠こうしょう内ないで6号ごうドックの建設けんせつが開始かいしされることとなった。6号ごうドックは海軍かいぐん省しょう建築けんちく局長きょくちょうの吉田よしだ直ただしが管轄かんかつした海軍かいぐん技術ぎじゅつ部門ぶもんのほぼ総力そうりょくを挙あげたチームが、日本にっぽん国内こくないはもとより日本にっぽん国外こくがいからも参考さんこう文献ぶんけんを収集しゅうしゅうし、設計せっけいを進すすめていった。

6号ごうドックは船ふねの修理しゅうり用ように建造けんぞうされたこれまでの1号ごうから5号ごうドックとは異ことなり、呉ご海軍かいぐん工廠こうしょうで建造けんぞうされた戦艦せんかん大和やまと、長崎造船所なかざきぞうせんじょで建造けんぞうされた戦艦せんかん武蔵むさしに次つぐ大和やまと型がた戦艦せんかんの三さん番ばん艦かんが建造けんぞうされる予定よていとなり、まず造船ぞうせん用ようとして建造けんぞうされることになった。6号ごうドックは昭和しょうわ10年ねん（1935年ねん）7月がつに起工きこうされた。まずドック入口いりくち付近ふきんの海うみは築堤ちくてい鋼こう矢板やいたによって締切しめきられ、そしてドック建設けんせつ予定よてい地ちにあった牡蠣かきヶ浦うらの丘陵きゅうりょうを削そぎ岩がん爆破ばくはによって切きり崩くずし、その後ごドック本体ほんたい部分ぶぶんの掘削くっさくに取とり掛かかった。当時とうじ150万まん立方りっぽうメートルに及およぶ岩盤がんばんの掘削くっさくは未み経験けいけんの大だい工事こうじであり、スチームショベル、電動でんどうショベルなどの機械きかいを用もちい、6号ごうドック建設けんせつ時じに発生はっせいした大量たいりょうの残土ざんどは周辺しゅうへん海域かいいきの埋うめ立たてに用もちいられることとなり、スチームロコに牽引けんいんされたダンプカーによって運搬うんぱんされた。

ドック本体ほんたいの掘削くっさくが終了しゅうりょう後ご、ドック底面ていめんと側面そくめんでのコンクリート打うちが行おこなわれた。平成へいせい17年ねん（2005年ねん）の6号ごうドック修理しゅうり時じに行おこなわれた調査ちょうさの結果けっか、ドック底面ていめんに鉄筋てっきんが確認かくにんされ、6号ごうドックは鉄筋てっきんコンクリート造づくりであると推定すいていされた。またドック底面ていめんに二に列れつの大理石だいりせきが埋うめ込こまれていることも確認かくにんされた。6号ごうドックは丘陵きゅうりょう地ちを切きり崩くずした後のちに掘削くっさくされたので、地盤じばんは非常ひじょうに良好りょうこうであり湧水わきみずは少量しょうりょうであり、ドック底部ていぶに設もうけられた排水溝はいすいこうから湧水わきみずを排水はいすいするようにして、水圧すいあつの影響えいきょうが小ちいさいためにドック底部ていぶ、側面そくめんのコンクリート厚あつは1メートル以内いないとなっている。ただ、ドック入口いりくち部ぶは底部ていぶでは水深すいしん20メートルに近ちかい水圧すいあつがかかることを考慮こうりょして5メートル以上いじょうのコンクリート厚あつとなっている。

また昭和しょうわ13年ねん（1938年ねん）、ドック建設けんせつ現場げんばに20トンハンマーヘッドクレーン2基きが設置せっちされ、続つづく昭和しょうわ14年ねん（1939年ねん）には、60トンジブクレーンが設置せっちされ、工事こうじが進すすむにつれて掘削くっさく場所ばしょが深ふかくなったドック建設けんせつ現場げんばから出でる建設けんせつ発生はっせい土どを地表ちひょうに上あげる作業さぎょうなどに使用しようされた。そしてこれら4基きのクレーンは6号ごうドック完成かんせい後ご、引ひき続つづき行おこなわれた空母くうぼ信濃しなのの建造けんぞうに活躍かつやくすることになった。

空母くうぼ信濃しなのの建造けんぞう

6号ごうドックで建造けんぞうされた空母くうぼ信濃しなの、竣工しゅんこう後ごわずか10日とおかで米べい潜水せんすい艦かんの攻撃こうげきを受うけ沈没ちんぼつした。

詳細しょうさいは「信濃しなの (空母くうぼ)」を参照さんしょう

6号ごうドックは昭和しょうわ15年ねん（1940年ねん）5月がつ4日にちに完成かんせいした。そしてドック完成かんせいと同時どうじに戦艦せんかん信濃しなのの起工式きこうしきが行おこなわれた。6号ごうドックにはドック建設けんせつ時じに設もうけられた4基きのクレーンの他ほかに、新あらたに100トンジブクレーンが2基き設置せっちされ、信濃しなのの建設けんせつに用もちいられることになった。なお6号ごうドックに設置せっちされた6基きのクレーンは、6号ごうドック本体ほんたいとともに、戦後せんごはアメリカ海軍かいぐん艦船かんせんの補修ほしゅう、修理しゅうりに活用かつようされることになる。

しかし信濃しなのの工事こうじは横須賀よこすか海軍かいぐん工廠こうしょう内ないで進すすめられていた空母くうぼの改造かいぞう工事こうじなどに手間てまを取とられ、遅おくれ気味ぎみとなっていた。そして昭和しょうわ16年ねん（1941年ねん）12月8日にちの第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんの参戦さんせん後ご、軍令ぐんれい部ぶは信濃しなのの戦艦せんかんとしての建設けんせつ工事こうじを中断ちゅうだんし、6号ごうドックを空あけて他たの艦船かんせんの改修かいしゅう・修理しゅうりに利用りようするために、6号ごうドック出で渠みぞが可能かのうとなる工事こうじのみを進すすめるよう命令めいれいした。これはタラント空襲くうしゅう、真珠湾しんじゅわん攻撃こうげき、マレー沖おき海戦かいせんなど第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんの前半ぜんはんに、戦艦せんかんの有用ゆうよう性せいに疑問ぎもんが出だされる戦せん例れいが相次あいついだための方針ほうしん変更へんこうであった。信濃しなのは切断せつだん分解ぶんかいして他た艦かんに資材しざいを流用りゅうようするには工事こうじが進すすみすぎていたため、止やむを得えない措置そちではあったが、ドックを空あけるためだけの工事こうじを進すすめることとなった信濃しなのの建造けんぞう工事こうじは、工事こうじ関係かんけい者しゃの熱意ねついも低下ていかし、工事こうじははかばかしく進すすまなかった。

信濃しなのの運命うんめいを大おおきく変かえたのが昭和しょうわ17年ねん（1942年ねん）のミッドウェー海戦かいせんで日本にっぽんが敗北はいぼくし、多おおくの空母くうぼを失うしなったことであった。多おおくの空母くうぼを失うしなった日本にっぽん海軍かいぐんは早急そうきゅうに体制たいせいの立たて直なおしに迫せまられ、その中なかで信濃しなのは戦艦せんかんではなく空母くうぼとして建造けんぞうされることが決きまった。途中とちゅう横須賀よこすか海軍かいぐん工廠こうしょうへ損傷そんしょう艦かんの修理しゅうりが殺到さっとうし、約やく3か月げつ間あいだ建造けんぞうの中断ちゅうだんをしなければならない事態じたいは発生はっせいしたが、空母くうぼ信濃しなのはこれまでとは異ことなり急きゅうピッチで建造けんぞうが進すすめられた。戦況せんきょうが厳きびしさを増まし物資ぶっし不足ふそくが激はげしくなる中なか、文字通もじどおり横須賀よこすか海軍かいぐん工廠こうしょうの余力よりょくを全すべて投入とうにゅうして信濃しなのの建造けんぞうは進すすめられ、昭和しょうわ19年ねん（1944年ねん）11月19日にち、竣工しゅんこうした。

しかし信濃しなのは実際じっさいにはまだ工事こうじ中ちゅう状態じょうたいであり、残のこりの部分ぶぶんの工事こうじを進すすめるため、呉ご海軍かいぐん工廠こうしょうへ回送かいそうされる途中とちゅう、アメリカ海軍かいぐんの潜水せんすい艦かんアーチャーフィッシュから魚雷ぎょらい攻撃こうげきを受うけ、昭和しょうわ19年ねん（1944年ねん）11月29日にち、沈没ちんぼつした。

横須賀よこすか海軍かいぐん施設しせつとドライドック

横須賀よこすか海軍かいぐん施設しせつ内ないのドライドックに入渠にゅうきょしたブルーリッジ

終戦しゅうせん後ご、昭和しょうわ20年ねん（1945年ねん）8月がつ30日にち、連合れんごう軍ぐんが横須賀よこすかに進駐しんちゅうし、横須賀よこすかの海軍かいぐん関連かんれん施設しせつは全すべて接収せっしゅうされた。そして横須賀よこすか海軍かいぐん工廠こうしょうは多おおくの人員じんいんが解雇かいこされたが、ドックなどの保守ほしゅ要員よういん約やく150名めいはアメリカ海軍かいぐんを中心ちゅうしんとした進駐軍しんちゅうぐん関連かんれんの業務ぎょうむを行おこなうため、残留ざんりゅうが命めいじられた。これは横須賀よこすか占領せんりょうの主力しゅりょくを担になったアメリカ海軍かいぐんは随時ずいじ艦船かんせん修理しゅうりを行おこなってはいたが、修理しゅうり状態じょうたいが十分じゅうぶんなものではなかったので横須賀よこすかの基地きち機能きのうを利用りようすることにしたためであった。やがて復員ふくいん引ひき揚あげに用もちいられる艦船かんせんや、連合れんごう軍ぐん、その中なかでもアメリカ海軍かいぐんの艦艇かんてい修理しゅうりの仕事しごとが増加ぞうかしていったため、旧きゅう海軍かいぐん工廠こうしょうの技術ぎじゅつ者しゃが改あらためて再さい雇用こようされるようになった。そのような中なか、昭和しょうわ22年ねん（1947年ねん）4月がつ27日にちには米べい海軍かいぐん艦船かんせん修理しゅうり廠しょう（SRF）が発足ほっそくする。

昭和しょうわ27年ねん（1952年ねん）4月がつ28日にち、サンフランシスコ講和こうわ条約じょうやくと日米にちべい安全あんぜん保障ほしょう条約じょうやくが発効はっこうしたことにより、連合れんごう国こくの占領せんりょう軍ぐんから在ざい日米にちべい軍ぐんとしてアメリカ軍ぐんが駐留ちゅうりゅうするようになった。その後ご横須賀よこすか海軍かいぐん施設しせつは米べい海軍かいぐんの艦船かんせん修理しゅうりを行おこなう場所ばしょとして、その重要じゅうよう性せいを増ますようになった。ベトナム戦争せんそう時とき、横須賀よこすか海軍かいぐん施設しせつは米べい海軍かいぐんのあらゆる艦船かんせんの補修ほしゅう、修理しゅうりが可能かのうであるハワイオアフ島とうのパールハーバー以西いせいの唯一ゆいいつの施設しせつであると評価ひょうかされた。

その後ご昭和しょうわ45年ねん（1970年ねん）には、アメリカ側がわはいったん横須賀よこすか海軍かいぐん施設しせつからの事実じじつ上じょうの撤退てったいと佐世保させぼへの移転いてんを検討けんとうし、日本にっぽん側がわとの交渉こうしょうに入はいった。アメリカ側がわは横須賀よこすか海軍かいぐん施設しせつの6基きのドック全すべてを日本にっぽん側がわに返還へんかんし、民間みんかんないし自衛隊じえいたいが米べい海軍かいぐん艦船かんせん修理しゅうり廠しょう（SRF）の業務ぎょうむを引ひき継つぎ、米べい海軍かいぐん艦船かんせんの横須賀よこすか寄よせ航こう時じには米べい艦船かんせんの修理しゅうりをそこで行おこなうことを提案ていあんした。しかし日本にっぽん側がわの受うけ入いれ態勢たいせいが整ととのわないため、空母くうぼの改修かいしゅう、修理しゅうりが行おこなうことが可能かのうである6号ごうドックはしばらくアメリカ側がわが維持いじする方向ほうこうで話はなしが進すすめられていた。アメリカがこのような提案ていあんをした理由りゆうとしては、当時とうじのアメリカの財政難ざいせいなんがあった。しかしまもなくアメリカの財政ざいせい状況じょうきょうが好転こうてんを見みせる中なか、これらの話はなしは立たち消ぎえとなり、昭和しょうわ49年ねん（1974年ねん）10月がつ2日にちには日米にちべい共同きょうどう使用しよう現地げんち協定きょうていが締結ていけつされ、1号ごう、2号ごう、3号ごうドックはアメリカ海軍かいぐんと海上かいじょう自衛隊じえいたい、4号ごう、5号ごうドックについてはアメリカ海軍かいぐんと住友重機械工業すみともじゅうきかいこうぎょうとの共同きょうどう利用りようを行おこなうこととなった、しかし住友重機械工業すみともじゅうきかいこうぎょうは3回かいドックを使用しようしたのみで共同きょうどう使用しようから撤退てったいし、現在げんざいまで米べい軍ぐんと海上かいじょう自衛隊じえいたいの共同きょうどう利用りようが続つづけられている。

そして横須賀よこすか海軍かいぐん施設しせつを米べい空母くうぼの事実じじつ上じょうの母港ぼこうとする計画けいかくが進すすめられるようになった。昭和しょうわ48年ねん（1973年ねん）10月がつ、空母くうぼミッドウェイが横須賀よこすかに初はつ入港にゅうこうし、以後いご横須賀よこすかを事実じじつ上じょうの母港ぼこうとした。その後ご平成へいせい3年ねん（1991年ねん）には空母くうぼインディペンデンス、平成へいせい10年ねん（1998年ねん）には空母くうぼキティホークが横須賀よこすかを母港ぼこうとした。平成へいせい20年ねん（2008年ねん）からは原子力げんしりょく空母くうぼジョージ・ワシントンが母港ぼこうとした後のち、平成へいせい27年ねん(2015年ねん)から原子力げんしりょく空母くうぼロナルド・レーガンが横須賀よこすかを母港ぼこうとするようになり、横須賀よこすか海軍かいぐん施設しせつの機能きのうは現在げんざいも維持いじされ続つづけている。

横須賀よこすか海軍かいぐん施設しせつの6基きのドライドックでは、海上かいじょう自衛隊じえいたいの艦船かんせんとともに空母くうぼを始はじめとする米べい海軍かいぐんの艦船かんせんの補修ほしゅう、修理しゅうりが行おこなわれており、平成へいせい13年ねん（2001年ねん）から平成へいせい15年ねん（2003年ねん）にかけて、4号ごう、5号ごう、6号ごうドックで戦前せんぜんから使用しようされ続つづけてきたクレーンが撤去てっきょされ、新あらたなクレーンが設置せっちされるなど、設備せつびの更新こうしんや補修ほしゅうが継続けいぞくして実施じっしされている。横須賀造船所よこすかぞうせんじょ、横須賀よこすか海軍かいぐん工廠こうしょうからの伝統でんとうを引ひき継つぐ米べい海軍かいぐん艦船かんせん修理しゅうり廠しょう（SRF）の技術ぎじゅつ力りょくの高たかさはアメリカ海軍かいぐんから高たかく評価ひょうかされており、横須賀よこすか海軍かいぐん施設しせつドックは米べい海軍かいぐんの重要じゅうよう拠点きょてんである横須賀よこすか海軍かいぐん基地きちの重要じゅうよう施設しせつとして使用しようされ続つづけている。

影響えいきょう

横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょで慶応けいおう3年ねん（1867年ねん）に開始かいしされたドライドックの建設けんせつは、まずヴェルニーらフランス人じんの指導しどうの下した行おこなわれたが、ドライドックの建設けんせつと同おなじ慶応けいおう3年ねん（1867年ねん）に横須賀よこすか製鉄せいてつ所内しょないに設もうけられた専門せんもん学校がっこうである「学舎がくしゃ」で土木どぼく工学こうがく、造船ぞうせん工学こうがくを学まなんだ恒川つねかわ柳作りゅうさくは、フランス人じんジュエットが設計せっけいを担当たんとうした2号ごうドックの建設けんせつ指揮しきを引ひき継ついで完成かんせいへと導みちびいた。その後ごドライドックの建設けんせつは日本人にっぽんじん技術ぎじゅつ者しゃのもとで進すすめられるようになり、恒川つねかわは呉ご鎮守ちんじゅ府ふ、佐世保させぼ鎮守ちんじゅ府ふ、舞鶴まいづる鎮守ちんじゅ府ふでドライドックの建設けんせつを指揮しきし、また東日本ひがしにっぽんで最初さいしょの商船しょうせん用ようのドライドックとなった横浜よこはま船渠せんきょ2号ごうドックの建設けんせつを指揮しきした。恒川つねかわ以外いがいにもジュエットらの下したでドライドックの設計せっけい、施工しこうを学まなんだ杉浦すぎうら栄次郎えいじろうが浦賀うらが船渠せんきょの建設けんせつに携たずさわっており、幕末ばくまつから明治めいじ前半ぜんはん期きに行おこなわれた1号ごう、2号ごう、3号ごうのドライドック建設けんせつは、その後ご日本にっぽん各地かくちで進すすめられるようになったドライドック建設けんせつのまさに先駆せんく的てきな存在そんざいである。

横須賀よこすかで始はじまった大だい規模きぼなドライドック建設けんせつは、その後ご、呉ご、佐世保させぼ、舞鶴まいづるという鎮守ちんじゅ府ふや、神戸こうべや横浜よこはま、長崎ながさきなどという貿易ぼうえき港こうへと広ひろまっていった。海軍かいぐん力りょくや海運かいうん業ぎょうの発展はってんには修おさむ船せんを行おこなうドックの整備せいびが不可欠ふかけつであり、明治めいじ半なかば以降いこう、日本にっぽんが海運かいうん王国おうこくと呼よばれるまでに海運かいうん業ぎょうの隆盛りゅうせいが見みられるようになった背景はいけいには、横須賀よこすかの1号ごうドックで始はじまり日本にっぽん全国ぜんこくへと広ひろがっていったドライドックが大おおきく貢献こうけんしている。

海軍かいぐん力りょくの増強ぞうきょうに日本にっぽんのドライドックが果はたした役割やくわりを見みると、例たとえば日にち露ろ戦争せんそう時じに当時とうじの日本にっぽん海軍かいぐん主力しゅりょく艦船かんせんの入渠にゅうきょが可能かのうであったドライドックは13基きあったがロシア海軍かいぐんは3基きに過すぎず、しかも3基きのうち大連たいれんと旅順りょじゅんのドライドックは日本にっぽん軍ぐんに占領せんりょうされたため、最後さいごまでロシア海軍かいぐんが使用しよう可能かのうであったドライドックはウラジオストックの1基きのみとなってしまった。日本海にほんかい海戦かいせん時とき、ドライドックで行いき届とどいた整備せいびが行おこなわれた艦船かんせんで臨のぞんだ日本にっぽん海軍かいぐんに対たいし、ロシア海軍かいぐんは整備せいびが満足まんぞくに行おこなわれていないバルチック艦隊かんたいで対抗たいこうせざるを得えず、これは明あきらかに日本にっぽん海軍かいぐんに有利ゆうりに働はたらいたと考かんがえられる。

またドライドックの建設けんせつは大だい規模きぼな土木どぼく工事こうじを伴ともない、現存げんそんする各かくドライドックは日本にっぽんにおける岩盤がんばん掘削くっさく技術ぎじゅつ、排水はいすい技術ぎじゅつ、水中すいちゅう工事こうじ技術ぎじゅつなどという近代きんだい技術ぎじゅつの習得しゅうとく、発展はってんを示しめしている。そして 明治めいじ4年ねん（1871年ねん）に開始かいしされた3号ごうドック建設けんせつでは、ドック建造けんぞうを担当たんとうしていた工こう部ぶ省しょう造船ぞうせん寮りょうの造船ぞうせん頭あたまであった平岡ひらおか通義みちよしは、ドック建設けんせつ用ようのポルトランドセメントの輸入ゆにゅう代金だいきんが高額こうがくであることに驚おどろき、工こう部ぶ省しょうの化学かがく技師ぎしであった宇都宮うつのみや三郎さぶろうにポルトランドセメントの国産こくさん化か研究けんきゅうを命めいじ、更さらに工こう部ぶ大輔だいすけであった伊藤いとう博文ひろぶみにセメント工場こうじょう建設けんせつを建議けんぎした。その結果けっか、翌よく明治めいじ5年ねん（1872年ねん）に東京とうきょうの深川ふかがわ清澄きよすみ町まちにセメント工場こうじょう（後ごの深川ふかがわセメント製造せいぞう所しょ）の建設けんせつが開始かいしされ、やがてポルトランドセメントの国産こくさん化かが始はじまることになった。

そして1867年ねん（慶応けいおう3年ねん）7月がつ、1号ごうドック建設けんせつに際さいして白しろ仙山せんのやまの丘おかを崩くずしている最中さいちゅうに、横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょで働はたらいていた植物しょくぶつ学がくに詳くわしい医師いし、サヴァティエによってゾウの下しも顎あご部分ぶぶんの化石かせきが発見はっけんされた。ナウマンゾウの化石かせきは中部ちゅうぶ更新こうしん統みつるの横須賀よこすか層そう大津おおつ砂すな泥どろ部ぶ層そうから発見はっけんされたと推定すいていされている。この化石かせきは1871年ねん（明治めいじ4年ねん）5月がつに、サヴァティエと親交しんこうがあった田中たなか芳男よしおらが中心ちゅうしんとなって東京とうきょうで開催かいさいした大学南だいがくみなみ校こう物産ぶっさん会かいに展示てんじされ、1881年ねん（明治めいじ14年ねん）、ハインリッヒ・エドムント・ナウマンが横須賀よこすか白しろ仙山せんのやまのゾウの化石かせきなどをまとめた論文ろんぶんを発表はっぴょうした。その後ごの研究けんきゅうによって、1号ごうドック建設けんせつ時じに発見はっけんされた化石かせきは独立どくりつ種しゅナウマンゾウの化石かせきであるとされた。

各かくドックのデータ

各かくドックのデータについては参考さんこう文献ぶんけん間あいだによって差さが見みられる、当とう記事きじでは1号ごう、2号ごう、3号ごうドックについては昭和しょうわ60年ねん（1985年ねん）から昭和しょうわ62年ねん（1987年ねん）にかけて東大とうだい生産せいさん技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょが行おこなった実測じっそく値ち、4号ごう、5号ごう、6号ごうドックについては横須賀よこすか市し（2009）が採用さいようしているともに現在げんざいの数値すうちを記載きさいし、必要ひつように応おうじて他たの文献ぶんけんの数値すうち等とうを掲載けいさいすることとする。

入渠にゅうきょ可能かのう艦船かんせんの項こうは、各かく資料しりょうから確認かくにんできる最大さいだい規模きぼのものを記しるした。実際じっさいに各かくドックに入渠にゅうきょした船舶せんぱくの種類しゅるいは多種たしゅ多様たようで、横須賀よこすか海軍かいぐん工廠こうしょう会かい（1998）によれば、特とくに最小さいしょうの3号ごうドックは雑役ざつえき船せんの入渠にゅうきょが極きわめて多おおい。

	1号ごうドック（北緯ほくい35度ど17分ふん6.98秒びょう 東経とうけい139度ど39分ふん42.08秒びょう）	2号ごうドック（北緯ほくい35度ど17分ふん8.57秒びょう 東経とうけい139度ど39分ふん40.56秒びょう）	3号ごうドック（北緯ほくい35度ど17分ふん8.66秒びょう 東経とうけい139度ど39分ふん37.66秒びょう）
主体しゅたい構造こうぞう	石造せきぞう（1936年ねんの延長えんちょう工事こうじ部分ぶぶんは コンクリート造づくり）	石造せきぞう	石造せきぞう
起工きこう	慶応けいおう3年ねん（1867年ねん）3月がつ	明治めいじ13年ねん（1880年ねん）7月がつ	明治めいじ4年ねん（1871年ねん）6月がつ
竣工しゅんこう	明治めいじ4年ねん（1871年ねん）1月がつ	明治めいじ17年ねん（1884年ねん）6月がつ	明治めいじ7年ねん（1874年ねん）1月がつ
設計せっけい者しゃ	ヴェルニー、L.F.フロラン	ジュエット	ヴェルニー、L.F.フロラン
施工しこう管理かんり		恒川つねかわ柳作りゅうさく
全長ぜんちょう	137.502 m	150.803 m	96.008 m
幅はば	28.674 m	31.768 m	18.145 m
深ふかさ	（ドック入口いりくちから200ft地点ちてん） 9.091 m	（ドック入口いりくちから200ft地点ちてん） 11.415 m	（ドック入口いりくちから100ft地点ちてん） 7.474 m
延長えんちょう工事こうじ	昭和しょうわ10年ねん（1935年ねん）6月がつ～昭和しょうわ11年ねん（1936年ねん）10月がつ。全長ぜんちょうが約やく14.5m延長えんちょうされた。
入渠にゅうきょ可能かのう艦船かんせん	青島ちんたお、厳島いつくしま (敷設ふせつ艦かん)、満州まんしゅう	迅鯨、洲しま埼、夕張ゆうばり	厳島いつくしま (防護ぼうご巡洋艦じゅんようかん)、勝かつ力つとむ、松江まつえ

	4号ごうドック（北緯ほくい35度ど17分ふん21.13秒びょう 東経とうけい139度ど39分ふん36.66秒びょう）	5号ごうドック（北緯ほくい35度ど17分ふん24.08秒びょう 東経とうけい139度ど39分ふん36.14秒びょう）	6号ごうドック（北緯ほくい35度ど17分ふん43.69秒びょう 東経とうけい139度ど39分ふん57.15秒びょう）
主体しゅたい構造こうぞう	コンクリート造づくり、石造せきぞう	コンクリート造づくり、石造せきぞう	鉄筋てっきんコンクリート造づくりと考かんがえられる
起工きこう	明治めいじ34年ねん（1901年ねん）11月	明治めいじ44年ねん（1911年ねん）7月がつ	昭和しょうわ10年ねん（1935年ねん）7月がつ
竣工しゅんこう	明治めいじ38年ねん（1905年ねん）9月がつ	大正たいしょう5年ねん（1916年ねん）3月がつ	昭和しょうわ15年ねん（1940年ねん）5月がつ
設計せっけい者しゃ	石黒いしぐろ五十二いそじ		吉田よしだ直ただし
施工しこう管理かんり	井上いのうえ親雄ちかお	澄田すみた勘かん作さく
全長ぜんちょう	240.49 m	323.7 m	365.80 m
幅はば	38.1 m	49.99 m	67.50 m
深ふかさ	13.41 m	15.24 m	17.00 m
延長えんちょう工事こうじ	昭和しょうわ3年ねん（1928年ねん）5月がつ～昭和しょうわ4年ねん（1929年ねん）5月がつ。全長ぜんちょうが40.60m延長えんちょうされた。	大正たいしょう13年ねん（1924年ねん）10月がつ完成かんせい。全長ぜんちょうが約やく70m延長えんちょうされた。
再さい延長えんちょう工事こうじ	昭和しょうわ18年ねん（1943年ねん）4月がつ～昭和しょうわ19年ねん（1944年ねん）3月がつ。全長ぜんちょうが約やく27 m延長えんちょうされた。
入渠にゅうきょ可能かのう艦船かんせん	大だい鯨くじら、高雄たかお	赤城あかぎ、扶桑ふそう、長門ながと	信濃しなの

参考さんこう文献ぶんけん

• 赤塚あかつか正明まさあき、小泉こいずみ昭裕あきひろ「地学ちがく教育きょういくと科学かがく運動うんどう 33号ごう」『E.Naumannが記載きさいしたナウマンゾウ下か顎あご化石かせき標本ひょうほんの再さい発見はっけん』地学ちがく団体だんたい研究けんきゅう会かい、2000年ねん
• 梅林うめばやし宏道ひろみち「在日ざいにち米まい軍ぐん」岩波書店いわなみしょてん、2002年ねん ISBN 4-00-430783-X
• 大林組おおばやしぐみプロジェクトチーム「季刊きかん大林おおばやしNO.47」『日本にっぽん最古さいこのドライドックを擁ようする横須賀造船所よこすかぞうせんじょ、考察こうさつと想定そうてい復元ふくげん』株式会社かぶしきがいしゃ大林組おおばやしぐみ、2000年ねん
• 蟹江かにえ康光やすみつ「横須賀よこすか市し博物館はくぶつかん研究けんきゅう報告ほうこく（自然しぜん科学かがく）第だい63号ごう」『横須賀よこすか軍港ぐんこう地域ちいき（横須賀よこすか市し楠くすのきヶ浦うら町まち・泊とまり町まち、稲岡いなおか町まち）の地質ちしつおよびナウマンゾウの化石かせき産地さんち』横須賀よこすか市し自然しぜん・人文じんぶん博物館はくぶつかん、2016年ねん
• 菊池きくち勝広かつひろ「横須賀よこすか市し博物館はくぶつかん研究けんきゅう報告ほうこく（人文じんぶん科学かがく）第だい54号ごう」『慶応けいおう元年がんねん柴田しばた日向ひなた守もり一いち行ぎょうのフランス軍港ぐんこう視察しさつと横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょの建設けんせつ事業じぎょうについて-横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょにおけるフランス系けい技術ぎじゅつの導入どうにゅうに関かんする研究けんきゅう（その1）』横須賀よこすか市し自然しぜん・人文じんぶん博物館はくぶつかん、2009年ねん
• 菊池きくち勝広かつひろ「横須賀よこすか市し博物館はくぶつかん研究けんきゅう報告ほうこく（人文じんぶん科学かがく）第だい55号ごう」『1873年ねん刊行かんこうフランス海事かいじ雑誌ざっしにみる横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょの建築けんちく技術ぎじゅつ-横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょにおけるフランス系けい技術ぎじゅつの導入どうにゅうに関かんする研究けんきゅう（その2）』横須賀よこすか市し自然しぜん・人文じんぶん博物館はくぶつかん、2010年ねん
• 栗田くりた尚弥なおや「米べい軍ぐん基地きちと神奈川かながわ」有隣堂ゆうりんどう、2011年ねん ISBN 978-4-89660-210-4
  • 高村たかむら聡史さとし「横須賀よこすかとSRF」
• 駒崎こまざき博美ひろみ「港湾こうわん荷役にやく第だい52巻かん第だい2号ごう」『わが国くにの歴史れきし的てきクレーン（その5） 世界せかい最大さいだいの空母くうぼ信濃しなのを建造けんぞうしたクレーン群ぐん』社団しゃだん法人ほうじん港湾こうわん荷役にやく機械きかいシステム協会きょうかい、2006年ねん
• 竹中たけなか祐ゆう典てん「横須賀よこすか市し博物館はくぶつかん研究けんきゅう報告ほうこく（人文じんぶん科学かがく）第だい53号ごう」『横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょの創設そうせつ-その建設けんせつにかかわった在日ざいにちフランス人じんたち-』横須賀よこすか市し自然しぜん・人文じんぶん博物館はくぶつかん、2008年ねん
• 寺谷てらたに武明たけあき「近代きんだい日本にっぽんの造船ぞうせんと海軍かいぐん」成山なりやま堂どう書店しょてん、1996年ねん ISBN 4-425-30131-5
• 東京大学とうきょうだいがく生産せいさん技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょ「横須賀よこすか市し文化財ぶんかざい調査ちょうさ報告ほうこく書しょ第だい17集しゅう」『米べい海軍かいぐん横須賀よこすか基地きち内ない洋風ようふう建造けんぞう物ぶつ調査ちょうさ報告ほうこく書しょ』横須賀よこすか市し教育きょういく委員いいん会かい、1988年ねん
• 土木どぼく学会がっかい「日本にっぽん土木どぼく史し 大正たいしょう元年がんねん-昭和しょうわ15年ねん」土木どぼく学会がっかい、1965年ねん
• 日本にっぽん土木どぼく会かい「明治めいじ工業こうぎょう史し土木どぼく編へん」原はら書房しょぼう、1995年ねん（原著げんちょは1929年刊ねんかん） ISBN 4-562-02630-8
• 西澤にしざわ泰彦やすひこ「土木どぼく史し研究けんきゅう第だい19号ごう」 『明治めいじ時代じだいに建設けんせつされた日本にっぽんのドライドックに関かんする研究けんきゅう』土木どぼく学会がっかい土木どぼく史し研究けんきゅう委員いいん会かい、1999年ねん
• 西澤にしざわ泰彦やすひこ「未来みらいにつなぐ人類じんるいの技わざ5・大型おおがた構造こうぞう物ぶつの保存ほぞんと修復しゅうふく」 『近代きんだい化か遺産いさんとしてのドライドック』独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじん文化財ぶんかざい研究所けんきゅうじょ東京とうきょう文化財ぶんかざい研究所けんきゅうじょ、2006年ねん
• 藤井ふじい幸泰ゆきやす、正せい垣かき孝こう晴はれ、宮川みやがわ真しん国こく、渡邉わたなべ邦夫くにお「地盤じばん工学こうがくジャーナル10（4）」『写真しゃしん測量そくりょうによる旧きゅう横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょ第だい1号ごうドライドックの記録きろくと石材せきざい表面ひょうめん侵食しんしょく量りょうの測定そくてい』公益社こうえきしゃ団だん法人ほうじん地盤じばん工こう学会がっかい、2015年ねん
• 藤本ふじもと博ひろし、島川しまかわ雅史まさし『アメリカの戦争せんそうと在日ざいにち米まい軍ぐん』社会しゃかい評論ひょうろん社しゃ、2003年ねん ISBN 4-7845-1430-9
  • 藤本ふじもと博ひろし「ヴェトナム戦争せんそうと在日ざいにち米まい軍ぐん・米べい軍ぐん基地きち」
• 村松むらまつ貞次郎ていじろう「新しん建築けんちく技術ぎじゅつ叢書そうしょ8 日本にっぽん近代きんだい建築けんちく技術ぎじゅつ史し」彰あきら国こく社しゃ、1976年ねん
• 安やす池いけ尋ひろ幸こう「横須賀よこすか市し博物館はくぶつかん資料集しりょうしゅう第だい18号ごう」『石井いしい頴一郎氏寄贈近代造船所建設図面資料目録』横須賀よこすか市し自然しぜん・人文じんぶん博物館はくぶつかん、1992年ねん
• 安やす池いけ尋ひろ幸こう「横須賀よこすか市し博物館はくぶつかん研究けんきゅう報告ほうこく（人文じんぶん科学かがく）第だい54号ごう」『造船ぞうせん所しょをめぐる幕末ばくまつの日米にちべい外交がいこう関係かんけい素描そびょう-万延元年遣米使節から横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょ起工きこうへ』横須賀よこすか市し自然しぜん・人文じんぶん博物館はくぶつかん、2009年ねん
• 横須賀よこすか海軍かいぐん工廠こうしょう「横須賀よこすか海軍かいぐん工廠こうしょう史し2」原はら書房しょぼう、1983年ねん（原著げんちょは1935年刊ねんかん、横須賀よこすか海軍かいぐん工廠こうしょう史し第だい五ご巻かん）
• 横須賀よこすか海軍かいぐん工廠こうしょう「横須賀よこすか海軍かいぐん工廠こうしょう史し3」原はら書房しょぼう、1983年ねん（原著げんちょは1935年刊ねんかん、横須賀よこすか海軍かいぐん工廠こうしょう史し第だい六ろく巻かん）
• 横須賀よこすか海軍かいぐん工廠こうしょう「横須賀よこすか海軍かいぐん工廠こうしょう史し4」原はら書房しょぼう、1983年ねん（原著げんちょは1935年刊ねんかん、横須賀よこすか海軍かいぐん工廠こうしょう史し第だい七なな巻かん）
• 横須賀よこすか海軍かいぐん工廠こうしょう会かい「横須賀よこすか海軍かいぐん工廠こうしょう史し第だい8巻かん」横須賀よこすか海軍かいぐん工廠こうしょう会かい、1998年ねん
• 横須賀よこすか市し「横須賀よこすか市し史し」横須賀よこすか市し、1988年ねん
• 横須賀よこすか市し『新しん横須賀よこすか市し史し、別べつ編へん文化ぶんか遺産いさん』、横須賀よこすか市し、2009年ねん
• 横須賀よこすか市し『新しん横須賀よこすか市し史し、通史つうし編へん・近世きんせい』、横須賀よこすか市し、2011年ねん
• 横須賀よこすか市し教育きょういく委員いいん会かい『旧きゅう横須賀よこすか海軍かいぐん工廠こうしょう200トンクレーン調査ちょうさ報告ほうこく書しょ』横須賀よこすか市し教育きょういく委員いいん会かい、2004年ねん
• 横須賀よこすか市し教育きょういく委員いいん会かい「横須賀よこすか市し文化財ぶんかざい調査ちょうさ報告ほうこく書しょ第だい44集しゅう」 『近代きんだい遺跡いせき・近代きんだい化か遺産いさん調査ちょうさ概がい報ほう集しゅうI』横須賀よこすか市し教育きょういく委員いいん会かい、2007年ねん
• 横須賀よこすか市し教育きょういく委員いいん会かい「横須賀よこすか市し文化財ぶんかざい調査ちょうさ報告ほうこく書しょ第だい45集しゅう」 『近代きんだい化か遺産いさん・近代きんだい遺跡いせき調査ちょうさ概がい報ほう集しゅうII』横須賀よこすか市し教育きょういく委員いいん会かい、2008年ねん
• 横須賀よこすか市し自然しぜん・人文じんぶん博物館はくぶつかん「横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょ（造船ぞうせん所しょ）創設そうせつ150周年しゅうねん記念きねん展てん すべては製鉄せいてつ所しょから始はじまった-Made in Japanの原点げんてん-」横須賀よこすか市し自然しぜん・人文じんぶん博物館はくぶつかん、2015年ねん

外部がいぶリンク

• 21世紀せいきに伝つたえたい『港湾こうわん遺産いさん』［No.6］ 神奈川かながわ・横須賀よこすかドライドック - 一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん日本にっぽん埋立うめたて浚渫しゅんせつ協会きょうかい