特性とくせい曲線きょくせんほう

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数学すうがくにおいて特性とくせい曲線きょくせんほう(とくせいきょくせんほう、えい: method of characteristics)とは、へん微分びぶん方程式ほうていしきたいするひとつの解法かいほうである。一般いっぱんにはいちかいへん微分びぶん方程式ほうていしきたいして適用てきようされるが、任意にんいそうきょくがたへん微分びぶん方程式ほうていしきたいするより一般いっぱん特性とくせい曲線きょくせんほう存在そんざいする。この方法ほうほうではへん微分びぶん方程式ほうていしきを、常微分じょうびぶん方程式ほうていしきぞくくだし、適切てきせつちょう曲面きょくめんうえあたえられたいくつかの初期しょきデータより積分せきぶんされることによってそのせん沿ったかいられる。

いちかいへん微分びぶん方程式ほうていしき特性とくせい曲線きょくせん[編集へんしゅう]

いちかいへん微分びぶん方程式ほうていしき(PDE)にたいする特性とくせい曲線きょくせんほうでは、それが常微分じょうびぶん方程式ほうていしき(ODE)となるようなある曲線きょくせん特性とくせい曲線きょくせんあるいはたん特性とくせいせんばれる)をさがすことになる。そのようなODEがつかれば、特性とくせい曲線きょくせん沿っていたのちもとのPDEにたいしてかい変換へんかんすればいことになる。

ここで、ふたつの独立どくりつ変数へんすう xy函数かんすうのケースをげる。つぎかたちじゅん線型せんけい[よう曖昧あいまい回避かいひ]へん微分びぶん方程式ほうていしきかんがえる:

(1)

ここで、かい zられたとして、R3 うち曲面きょくめんのグラフ z = z(x,y) をかんがえる。この曲面きょくめんたいする法線ほうせんベクトルつぎあたえられる。

これはつぎのようにしてかる。x,y方向ほうこうせっベクトルをそれぞれ,とすると、これらはたとえば,となる。これらの外積がいせきから上述じょうじゅつ法線ほうせんベクトル(と平行へいこうなベクトル)がられる。

したがって[1]しき (1) は、ベクトルじょう

すべてのてんにおいて曲面きょくめん z = z(x, y) にせっするという幾何きかがくてき内容ないよう意味いみする。いいかえると、かいはこのベクトルじょう積分せきぶん曲線きょくせん合併がっぺいとなる。これらの積分せきぶん曲線きょくせんは、もとへん微分びぶん方程式ほうていしき特性とくせい曲線きょくせんばれる。

特性とくせい曲線きょくせん方程式ほうていしきは、ラグランジュ=シャルピ方程式ほうていしきによってつぎのように不変ふへんかたちあらわすことが出来でき[2]

また、この曲線きょくせんのパラメータ t固定こていされた場合ばあい、これらの方程式ほうていしきx(t), y(t), z(t) にたいするつぎ連立れんりつ常微分じょうびぶん方程式ほうていしきとしてくことが出来できる。

これらをもとへん微分びぶん方程式ほうていしき特性とくせい方程式ほうていしき (characteristic equation) という。

線型せんけいじゅん線型せんけい場合ばあい[編集へんしゅう]

つぎ形式けいしきのPDEをかんがえる。

このPDEを線型せんけいとするためには、係数けいすう ai空間くうかん変数へんすうのみに依存いぞんし、u には独立どくりつとすればよい。じゅん線型せんけいとするためには、ai はその函数かんすうにも依存いぞんするが、しるべ函数かんすうには依存いぞんしないものとすればよい。これらふたつのケースの区別くべつは、ここでの議論ぎろんでは本質ほんしつてきではない。

線型せんけいあるいはじゅん線型せんけいのPDEにたいし、特性とくせい曲線きょくせんはパラメータてきつぎあたえられる。

ただつぎ常微分じょうびぶん方程式ほうていしきけいたされるものとする。

(2)
(3)

しき (2) と (3) が、もとのPDEの特性とくせい曲線きょくせんである。

完全かんぜん線型せんけい場合ばあい[編集へんしゅう]

つぎへん微分びぶん方程式ほうていしきかんがえる。

(4)

ここで変数へんすう piつぎへん微分びぶん略記りゃっきしたものである。

Rn+1 うちちょう曲面きょくめん (xi, u) がへん微分びぶん方程式ほうていしきかいであるとする。かいちょう曲面きょくめんうえにある任意にんいなめらかな(微分びぶん可能かのうな)曲線きょくせん特性とくせい曲線きょくせんい、s曲線きょくせんながさに沿うパラメータとして、曲線きょくせんじょうかくてんつぎのようにあらわされるものとする。

また、かい曲面きょくめん方向ほうこうは、この特性とくせい曲線きょくせんかくてんでの接線せっせんかたむ により指定していされているとする。かい沿って (4)を sかんして微分びぶんすると、つぎられる。

(5)
(6)
(7)

しき(6)は、かい uたいして連鎖れんさりつ適用てきようすることでられる。またしき(7)の括弧かっこない

だからしき(7)が成立せいりつする。

λらむだ をある定数ていすうとして λらむだ×(5)+(7)/dsつくるとつぎしき(8)となる。

(8)

しき(8)はそのてんとお任意にんい特性とくせい曲線きょくせん xi (s)にたいしてつ。特性とくせい曲線きょくせん xi(s)が任意にんいわると、dxi/dsおよびdpi/dsはそれにおうじてわってしまう変数へんすうである。それでもしき(8)がつためには、dxi/dsおよびdpi/ds係数けいすうは 0 でなければならない。よって

このしき(6)にれると

ここに λらむだ はある定数ていすうである。これらのしきをより対称たいしょうてきくと、特性とくせい曲線きょくせんたいするつぎのラグランジュ=シャルピ方程式ほうていしきられる。

(9)

幾何きかがくてきに、完全かんぜん線型せんけい場合ばあい特性とくせい曲線きょくせんほうは、微分びぶん方程式ほうていしきモンジュきり英語えいごばんいたところかいのグラフにせっすることを要求ようきゅうするものとして解釈かいしゃくされる。

れい[編集へんしゅう]

いちれいとして、つぎ移流いりゅう方程式ほうていしきげられる(このれいではPDEの記法きほう基本きほんてきなODEのかいについてはよくっているものと仮定かていする)。

ここに 定数ていすうで、函数かんすうである。この線型せんけいいちかいへん微分びぶん方程式ほうていしきを、適切てきせつ曲線きょくせん沿って常微分じょうびぶん方程式ほうていしき変換へんかんすることをかんがえる。すなわち、つぎ形状けいじょう常微分じょうびぶん方程式ほうていしきかんがえる。

,

ここに 特性とくせい曲線きょくせんである。はじめに、連鎖れんさりつよりつぎられる。

いま and とすると、つぎられる。

これははじめのPDEの左辺さへんである。したがって

られる。したがって、特性とくせい曲線きょくせん 沿って、もとの PDE は ODE になる。すなわち、特性とくせい曲線きょくせん沿ってかい定数ていすうである。すると、 となる。ただ同一どういつ特性とくせい曲線きょくせんじょう存在そんざいする。したがって、一般いっぱんかい決定けっていするじょうで、つぎのような常微分じょうびぶん方程式ほうていしき特性とくせいシステムをけば十分じゅうぶんである。

  • とすることで られる。
  • とすることで られる。
  • とすることで られる。

この場合ばあい特性とくせい曲線きょくせんかたむきが であるような直線ちょくせんで、任意にんい特性とくせい曲線きょくせん沿って 定数ていすうとなる。

線型せんけい微分びぶん作用素さようそ特性とくせい曲線きょくせん[編集へんしゅう]

X微分びぶん多様たようたいとし、P次数じすう k線型せんけい微分びぶん作用素さようそ

とする。局所きょくしょ座標ざひょうけい xi においては

とする。ここで αあるふぁ多重たじゅう指数しすうである。Pしゅ表象ひょうしょうσしぐまPあらわされ、これはそれらの局所きょくしょ座標ざひょうけいにおいて定義ていぎされるせったば TXかんするつぎ函数かんすうである。

ここに ξくしーi座標ざひょう微分びぶん dxi によってみちびかれるせったばじょうのファイバー座標ざひょうである。これは特定とくてい座標ざひょうけいもちいることで定義ていぎされるが、ξくしーixi関連かんれんづける変換へんかんそくσしぐまP がそのせったばじょうで well-defined な函数かんすうであることを保証ほしょうするものである。

函数かんすう σしぐまP変数へんすう ξくしー について次数じすう kひとし函数かんすうである。σしぐまP のゼロかいは、TX のゼロ切断せつだんとははなれたところにあり、P特性とくせい曲線きょくせんである。しき F(x) = c によって定義ていぎされる Xちょう曲面きょくめんが、x での特性とくせいちょう曲面きょくめんであるとは、

成立せいりつすることをう。特性とくせいちょう曲面きょくめんは、ほうたば英語えいごばんP特性とくせい集合しゅうごうぞくするちょう曲面きょくめんである。

特性とくせい曲線きょくせん定性的ていせいてき解析かいせき[編集へんしゅう]

特性とくせい曲線きょくせんはまた、PDEへの定性的ていせいてき洞察どうさつうえでの強力きょうりょく道具どうぐとなる。

圧縮あっしゅくせい流体りゅうたいにおけるポテンシャルフローにたいする衝撃波しょうげきはつけるために、特性とくせい曲線きょくせん交点こうてん利用りようすることが出来できる。直感ちょっかんてきうと、かく特性とくせい曲線きょくせんはそれ自身じしん沿った かい意味いみするものであるとかんがえられる。したがって、ふたつの特性とくせい曲線きょくせんまじわる場合ばあいには、函数かんすう複数ふくすうということになりこれは物理ぶつりてきかいである。物理ぶつりてきにはこのような矛盾むじゅんは、衝撃波しょうげきは構成こうせい接線せっせん不連続ふれんぞくせいあるいはじゃく不連続ふれんぞくせいによって除外じょがいすることが出来できる。その結果けっかはじめの仮定かていたさないポテンシャルフローがられる。

特性とくせい曲線きょくせんは、PDEの定義ていぎいき一部分いちぶぶんをカバーしないこともある。この事実じじつ希薄きはく英語えいごばんばれ、よわ意味いみ、すなわち積分せきぶん方程式ほうていしきたいしてのみかい存在そんざいすることを意味いみする。

特性とくせい曲線きょくせん方向ほうこうは、上述じょうじゅつれいしめしたように、かい沿ったのフローをしめすものである。このたね知識ちしきは、問題もんだいたいして有限ゆうげん差分さぶん最適さいてきであるようにしめすものであるため、PDEを数値すうちてきうえ有用ゆうようとなる。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ John 1991
  2. ^ Delgado 1997

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • Courant, Richard; Hilbert, David (1962), Methods of Mathematical Physics, Volume II, Wiley-Interscience 
  • Delgado, Manuel (1997), “The Lagrange-Charpit Method”, SIAM Review 39 (2): 298–304, Bibcode1997SIAMR..39..298D, doi:10.1137/S0036144595293534, JSTOR 2133111, https://jstor.org/stable/2133111 
  • Evans, Lawrence C. (1998), Partial Differential Equations, Providence: American Mathematical Society, ISBN 0-8218-0772-2 
  • John, Fritz (1991), Partial differential equations (4th ed.), Springer, ISBN 978-0-387-90609-6 
  • Polyanin, A. D.; Zaitsev, V. F.; Moussiaux, A. (2002), Handbook of First Order Partial Differential Equations, London: Taylor & Francis, ISBN 0-415-27267-X 
  • Polyanin, A. D. (2002), Handbook of Linear Partial Differential Equations for Engineers and Scientists, Boca Raton: Chapman & Hall/CRC Press, ISBN 1-58488-299-9 
  • Sarra, Scott (2003), “The Method of Characteristics with applications to Conservation Laws”, Journal of Online Mathematics and its Applications .
  • Streeter, VL; Wylie, EB (1998), Fluid mechanics (International 9th Revised ed.), McGraw-Hill Higher Education 

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]