宇宙うちゅう速度そくど

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地表ちひょうから水平すいへいされた砲弾ほうだん重力じゅうりょくかれて地表ちひょう落下らっかする (A)。
射出しゃしゅつ速度そくどげてもだいいち宇宙うちゅう速度そくど未満みまんならいつかは地表ちひょう落下らっかする (B)。
だいいち宇宙うちゅう速度そくどされた場合ばあい人工じんこう衛星えいせいとなる (C)。
それ以上いじょう速度そくどでは楕円だえんえが (D)、
だい宇宙うちゅう速度そくど以上いじょう場合ばあい地球ちきゅう重力じゅうりょくる (E)。
(ただし大気たいき抵抗ていこうによる影響えいきょうなどは考慮こうりょしていない)。

宇宙うちゅう速度そくどうちゅうそくど英語えいご: Cosmic Velocity)とは、とく地球ちきゅうおよび太陽たいようたいして、軌道きどう力学りきがくてきに、地表ちひょうにおいて物体ぶったいにあるはつ速度そくどあたえたとして、衛星えいせい軌道きどうなどの「宇宙うちゅう飛行ひこう」とえるような軌道きどうせるために必要ひつよう速度そくどのことである。対象たいしょうわせて、だいいち宇宙うちゅう速度そくどだい宇宙うちゅう速度そくどだいさん宇宙うちゅう速度そくどばれている速度そくどがある。軌道きどう力学りきがく一般いっぱんてきには脱出だっしゅつ速度そくどばれる。なお、通常つうじょう重力じゅうりょくのみを考慮こうりょし、空気くうき抵抗ていこう浮力ふりょくとう加味かみしない。

だいいち宇宙うちゅう速度そくど[編集へんしゅう]

だいいち宇宙うちゅう速度そくどとは、地球ちきゅうにおいて、その高度こうど海抜かいばつゼロ(海面かいめんもしくは地表ちひょうすれすれ)とした(仮想かそうじょうの)円軌道えんきどう衛星えいせい軌道きどう軌道きどう速度そくどで、やく 7.9 km/s (= 28,400 km/h) である。地表ちひょうにおいて、ある物体ぶったいにあるはつ速度そくどあたえたと仮定かていした場合ばあい、その速度そくどがこの速度そくど未満みまん場合ばあいはどのようにしたとしても、弾道だんどう飛行ひこうえい: sub-orbital flight)ののちに、地球ちきゅう地表ちひょうもどってしまう。ぎゃくに、これをえて(えい: super-orbital)(だい宇宙うちゅう速度そくど未満みまんで)水平すいへいした場合ばあい、その地点ちてんきん地点ちてんとする楕円だえん軌道きどう投入とうにゅうされる。

だい宇宙うちゅう速度そくど地球ちきゅう脱出だっしゅつ速度そくど[編集へんしゅう]

だい宇宙うちゅう速度そくどとは、地球ちきゅう重力じゅうりょくるために必要ひつような、地表ちひょうにおけるはつ速度そくどである。やく 11.2 km/s(40,300 km/h)で、だいいち宇宙うちゅう速度そくどばいである。この速度そくど以上いじょう加速かそくすれば永久えいきゅう地球ちきゅうからはなれていくことができる。地球ちきゅうからげる宇宙うちゅうを、ふか宇宙うちゅう探査たんさなどのように太陽たいようまわ人工じんこう惑星わくせいにするためにはだい宇宙うちゅう速度そくど必要ひつようである。地球ちきゅう重力じゅうりょくけん脱出だっしゅつするという意味いみ地球ちきゅう脱出だっしゅつ速度そくどともばれる。

だいさん宇宙うちゅう速度そくど太陽系たいようけい脱出だっしゅつ速度そくど[編集へんしゅう]

だいさん宇宙うちゅう速度そくどとは、だい宇宙うちゅう速度そくど同様どうようかんがかた地球ちきゅう軌道きどう地表ちひょうにおいてあるはつ速度そくどあたえたとして、地球ちきゅうさらには太陽たいよう重力じゅうりょくるために必要ひつよう速度そくどで、やく 16.7 km/s (60,100 km/h) である。太陽たいよう質量しつりょう地球ちきゅう質量しつりょう太陽たいよう地球ちきゅう距離きょり地球ちきゅう半径はんけい万有引力ばんゆういんりょく定数ていすうからもとめることができる。現実げんじつてきには地球ちきゅう公転こうてん速度そくど利用りようするがわすかぎゃくかでΔでるたvとしてはちがってくる。この速度そくどたっするために必要ひつようなエネルギーが膨大ぼうだいになるため、惑星わくせい探査たんさではスイングバイ利用りようして加速かそくする。これまでにだいさん宇宙うちゅう速度そくどえた人工じんこう物体ぶったいおおくなく、太陽系たいようけいはなれる人工じんこうぶつ一覧いちらん記載きさいされている。

導出どうしゅつ[編集へんしゅう]

かく定数ていすうを、

  • 万有引力ばんゆういんりょく定数ていすう
  • 地球ちきゅう質量しつりょう
  • 地球ちきゅう半径はんけい
  • 太陽たいよう質量しつりょう
  • 地球ちきゅう公転こうてん半径はんけい

とする。

だいいち宇宙うちゅう速度そくど[編集へんしゅう]

地球ちきゅう重心じゅうしん中心ちゅうしんとしてはやひとしそく円運動えんうんどうをしたとき物体ぶったい質点しつてん原点げんてんとする慣性かんせいけい観測かんそくした場合ばあい質量しつりょう 物体ぶったいはたら遠心えんしんりょく である。このとき物体ぶったいはたら重力じゅうりょく である。だいいち宇宙うちゅう速度そくど 遠心えんしんりょく重力じゅうりょくうとしてもとめる。すなわち、

より、

である。

Google 検索けんさく天体てんたい半径はんけいなどの天文学てんもんがく定数ていすう計算けいさん可能かのうで、sqrt(天体てんたいめい質量しつりょう*万有引力ばんゆういんりょく定数ていすう/天体てんたいめい半径はんけい)という検索けんさくしきもとめることができる。

だい宇宙うちゅう速度そくど[編集へんしゅう]

地球ちきゅうから無限むげんとお基準きじゅんとすると、質量しつりょう m物体ぶったい地球ちきゅう表面ひょうめんにおける地球ちきゅう重力じゅうりょくによってしょうじる位置いちエネルギーは、

あらわされる。この物体ぶったいに、まけ位置いちエネルギーをはやv2運動うんどうエネルギー (1/2)mv 2
2
 
あたえれば無限むげんとおたっする、すなわ地球ちきゅう重力じゅうりょくけんから脱出だっしゅつすることができるとしてもとめる。すなわち、

より、

となる。なお、地球ちきゅう自転じてん速度そくどちいさいのでここでは無視むししている。

だいさん宇宙うちゅう速度そくど[編集へんしゅう]

だい宇宙うちゅう速度そくど同様どうように、地球ちきゅう公転こうてん軌道きどう近辺きんぺんにおける太陽たいようからの脱出だっしゅつ速度そくどは、

である。ただし、これは太陽たいようからはやさなので、地球ちきゅうからの場合ばあい地球ちきゅう公転こうてん運動うんどうかなければならない。地球ちきゅう公転こうてん速度そくど vE地球ちきゅう公転こうてんによる遠心えんしんりょく太陽たいよう地球ちきゅう引力いんりょくうという関係かんけいからもとめることができるので、

である。したがって地球ちきゅう公転こうてん軌道きどうからの脱出だっしゅつ速度そくど vE0

である。地表ちひょうからげる場合ばあいには地球ちきゅう重力じゅうりょくぶんだけはやくする必要ひつようがある。これは地表ちひょうでの位置いちエネルギーをしたのちvE0速度そくどになればよいということなので、質量しつりょう m物体ぶったい場合ばあい

という関係かんけいつ。したがって、

である。

精度せいど[編集へんしゅう]

以上いじょうは、ほしたま公転こうてん軌道きどうえんとして計算けいさんしたものである。実際じっさいには、地球ちきゅう赤道せきどう半径はんけいごく半径はんけいやく 2×104 m(平均へいきん半径はんけいの0.3%)、地球ちきゅう近日きんじつてん遠日点えんじつてんやく 5×109 m(どう3%)といったズレがあるので、3けた以降いこう正確せいかくもとめるには、これらを考慮こうりょする必要ひつようがある。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]