聖典せいてん

聖典せいてん（せいてん）とは、神かみや神かみ的てき存在そんざい、聖人せいじんの言行げんこうが書かかれたもの、または教きょう説せつがつづられたものの内うち、それぞれの宗教しゅうきょう内うちで、特とくに権威けんいある書物しょもつをいう。教典きょうてん、啓けい典てんともいう。仏教ぶっきょうにおいては特とくに「仏典ぶってん」（仏教ぶっきょう典籍てんせき）と呼よび、神道しんとうにおいては「神典しんてん」と呼よぶ。

概要がいよう

聖典せいてんのあり方かたは、宗教しゅうきょうごと各かく聖典せいてんごとに様々さまざまである。

世界せかいで最もっとも多おおくの信者しんじゃを抱かかえる「アブラハムの宗教しゅうきょう」すなわちユダヤ教きょう、キリスト教きりすときょう、イスラム教いすらむきょうにあっては、テキスト（聖書せいしょ、クルアーン）がその宗教しゅうきょう内ないの中心ちゅうしん部ぶに位置いちし、常つねに読よまれ、朗読ろうどくされ、聞きかれ、事ことあるごとに引用いんようされ、その一いち字じ一いち句くを巡めぐって討論とうろんされる。聖典せいてんが特とくに重視じゅうしされているということから「啓けい典てん宗教しゅうきょう」という呼称こしょうも存在そんざいする。

仏教ぶっきょうにおいても、一般いっぱんに、出家しゅっけした者ものが（あるいは在家ありいえの者ものも）その全部ぜんぶあるいは一部いちぶを日々ひび唱となえる経典きょうてんがあるが、あまりにも膨大ぼうだいであるため、経典きょうてんの中なかで一部いちぶだけを重要じゅうよう視しする、重要じゅうよう度どのランキングを作つくる（教きょう相判あいばん釈しゃく）など、アブラハムの宗教しゅうきょうの聖典せいてんと仏教ぶっきょうのそれとでは、接せっし方かたや扱あつかい方かたが随分ずいぶんと異ことなっている点てんがある。日蓮宗にちれんしゅう系けいの教団きょうだんでは「南無妙法蓮華経なむみょうほうれんげきょう」として経典きょうてん自体じたいが崇拝すうはい対象たいしょうになっている一方いっぽう、禅宗ぜんしゅうは「不立文字ふりゅうもんじ」として経典きょうてんを重視じゅうししない。

他たの宗教しゅうきょうの大だい多数たすうも、何なんらかのテキストを持もっているものがほとんどである。その中なかで、何なんらかの重要じゅうような役割やくわりを果はたしているものについては「聖典せいてん」と呼よべよう。だが、宗教しゅうきょうによっては、テキストがせいぜい儀式ぎしきや教おしえについての備忘録びぼうろくやといった程度ていどのもので、宗教しゅうきょう的てき共同きょうどう体たいにとって重要じゅうような役割やくわりを果はたしていないこともある。そのようなものは「聖典せいてん」には当あてはまらないと考かんがえるほうが適切てきせつである。

なお、聖典せいてんの書かき手てに関かんしても、聖人せいじん自身じしん、聖人せいじんの言葉ことばを聴きいた弟子でし個人こじん、弟子でしたちの集団しゅうだん・教団きょうだん、民族みんぞくの長ながい歴史れきしの中なかで書かきつがれ編纂へんさんされたもの、神かみがかりになった個人こじんが書かいたもの、あるいは神かみ自身じしんとされるものまであり、多様たようである。よって詳細しょうさいについては各かく聖典せいてんの項目こうもくを参照さんしょうされたい。

各かく宗教しゅうきょうにおける聖典せいてん一覧いちらん

• ユダヤ教きょう - タナハ（ヘブライ語ご聖書せいしょ）、タルムード
• キリスト教きりすときょう
  • 正教会せいきょうかい、東方とうほう諸しょ教会きょうかい、カトリック、聖せい公会こうかい - 新約しんやく聖書せいしょ、旧約きゅうやく聖書せいしょ（いわゆる「続編ぞくへん」を含ふくむ）、聖ひじり伝つたえ
  • プロテスタント - 新約しんやく聖書せいしょ、旧約きゅうやく聖書せいしょ（続編ぞくへんを含ふくまず）
  • 末日まつじつ聖徒せいとイエス・キリスト教会きょうかい（モルモン教きょう） - 旧約きゅうやく聖書せいしょ、新約しんやく聖書せいしょ、モルモン書しょ、教義きょうぎと聖きよし約やく
  • 統一教会とういつきょうかい - 旧約きゅうやく聖書せいしょ、新約しんやく聖書せいしょ、原理げんり講こう論ろん、天てん聖せい経けい
• イスラム教いすらむきょう - クルアーン（コーラン）、ハディース、啓けい典てん（律りつ法ほう、詩篇しへん、福音ふくいん書しょ）
• 仏教ぶっきょう - 仏典ぶってん（三蔵さんぞう - 律蔵りつぞう、経蔵きょうぞう（スートラ）、論蔵ろんぞう）
  • 上座かみざ部ぶ仏教ぶっきょう - パーリ仏典ぶってん
  • 大乗だいじょう仏教ぶっきょう
    • 真言宗しんごんしゅう - 金きむ剛つよし頂いただき経けい、大だい日経にっけい、理り趣おもむき経けいなど
    • 天台宗てんだいしゅう - 法華ほっけ三さん部ぶ経けい、阿弥陀あみだ経けい、大だい日経にっけい、梵網経けいなど
    • 浄土宗じょうどしゅう、浄土真宗じょうどしんしゅう、時宗じしゅう - 浄土じょうど三さん部ぶ経けい
    • 日蓮にちれん系けい諸派しょは（日蓮宗にちれんしゅう、日蓮にちれん正宗まさむね、創価学会そうかがっかいなど） - 法華ほっけ三さん部ぶ経けい、日蓮にちれん御ご書しょ
    • 臨済宗りんざいしゅう、黄檗宗おうばくしゅう - （金きむ剛つよし般若はんにゃ経けいなど）
    • 曹洞宗そうとうしゅう - （法華経ほけきょう、金きむ剛つよし般若はんにゃ経けいなど）
• 神道しんとう - 神典しんてん（古事記こじき、日本書紀にほんしょき、古語こご拾遺しゅうい、先代せんだい旧きゅう事こと本紀ほんぎなど）
  • 天理教てんりきょう - みかぐらうた、おふでさき、おさしづ
  • 金光かねみつ教きょう - 金光かねみつ教きょう教典きょうてん（金光かねみつ大神おおがみ覚書おぼえがき、お知しらせ事ごと覚さとし帳ちょう、理解りかい、神かみ訓さとし、神かみ戒など）、金光かねみつ大神おおがみ言行げんこう録ろく
  • 黒住くろずみ教きょう - 生命せいめいのおしえ
  • 大本おおもと - 大本おおもと神かみ諭さとし、霊界れいかい物語ものがたり
• ヒンドゥー教きょう - ヴェーダ、バガヴァッド・ギーター、プラーナ文献ぶんけん
• ゾロアスター教きょう - アヴェスター
• 儒教じゅきょう - 経書けいしょ（詩経しきょう、礼れい記き、春秋しゅんじゅう、論語ろんごなど）
• 道教どうきょう - 道みち蔵ぞう
• シク教きょう - グル・グラント・サーヒブ
• バーブ教きょう - バヤーン
• バハイ教きょう - アクダスの書しょ（キターベ・アクダス）、イガンの書しょ
• 如来にょらい教きょう - お経けい様さま
• 生長せいちょうの家いえ - 甘露かんろの法ほう雨う、生命せいめいの実相じっそう、七ななつの灯台とうだいの点灯てんとう者しゃの神かみ示しめせ
• 幸福こうふくの科学かがく - 「正せい心しん法語ほうご」、救世きゅうせいの法ほう三さん部ぶ作さく（太陽たいようの法ほう、黄金おうごんの法ほう、永遠えいえんの法ほうなど）など
• 大山おおやまねずの命神示教会みことしんじきょうかい - 真実しんじつの光ひかり・神かみ示しめせ
• 神かみ慈秀明あかり会かい - 聖教せいきょう書しょ
• 霊れい波は之の光ひかり教会きょうかい - 御ご書しょ
• 甑こしき山道さんどう - 道みち典てん
• トゥルース教きょう - 「祈いのりの詞し」、「霊れい訓くん」、「みおしえのうた」
• 天心てんしん聖教せいきょう - 御ご諭さとし、由来ゆらい
• 聖心せいしん教会きょうかい - 真正しんしょう聖書せいしょ
• GLA - 生命せいめいの余白よはくに、心しん行ぎょう

比喩ひゆとしての聖典せいてん

上記じょうきのような聖典せいてんの位置いちづけを模もして、ある分野ぶんやの指針ししんとなるような書籍しょせきを比喩ひゆ的てきに「聖典せいてん」と呼よぶことがある（『古典こてん詰将棋つめしょうぎの聖典せいてん』など）。

外部がいぶリンク

• 『聖典せいてん』 - コトバンク