(Translated by https://www.hiragana.jp/)
報復 - Wikipedia コンテンツにスキップ

報復ほうふく

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
から転送てんそう

報復ほうふく(ほうふく、えい: revenge リベンジ)とは、自分じぶんがいあたえた相手あいてたいして、それとがいかえすこと。仕返しかえ(しかえし)、復讐ふくしゅう(ふくしゅう)ともいう。

概説がいせつ[編集へんしゅう]

攻撃こうげき行動こうどうとの関係かんけいせい[編集へんしゅう]

攻撃こうげき行動こうどうとの関係かんけいせいについては、「攻撃こうげき行動こうどう(心理しんりがく」の記事きじ参照さんしょうのこと。[注釈ちゅうしゃく 1]

児童じどうによる攻撃こうげきなかでの復讐ふくしゅう位置いちづけ
越中えっちゅう康治こうじ幼稚園ようちえん児童じどう研究けんきゅうによれば、児童じどうからものをとりあげるなどの挑発ちょうはつてき攻撃こうげきうばわれたものをかえ報復ほうふくてき攻撃こうげき、さらにべつ児童じどうかえしてあげるなどの制裁せいさいてき攻撃こうげきの3つの概念がいねん提出ていしゅつしている[1]。また幼児ようじらは、挑発ちょうはつてき攻撃こうげきわるいと判断はんだんする一方いっぽうで、報復ほうふくてき攻撃こうげき制裁せいさいてき攻撃こうげき許容きょようすることが観察かんさつされており、幼児ようじにおいても「報復ほうふくてき公正こうせい」への理解りかいがあるとされる[1]
また越中えっちゅうらは目的もくてき自己じこ他者たしゃ動機どうき回避かいひ報復ほうふくとしたうえでつぎの4つの攻撃こうげきがあるとする[2]
  • 防衛ぼうえい自己じこ目的もくてき回避かいひ
  • 報復ほうふく自己じこ目的もくてき報復ほうふく
  • 擁護ようご他者たしゃ目的もくてき回避かいひ
  • 制裁せいさい他者たしゃ目的もくてき報復ほうふく
攻撃こうげき行動こうどうは「わるい」行動こうどうとして道徳どうとく背反はいはん行為こういとされるが、実際じっさいにはつねに「わるい」と判断はんだんされない[2]社会しゃかい心理しんりがく研究けんきゅうでは、被害ひがい回避かいひ目的もくてきとした正当せいとう防衛ぼうえいなどの攻撃こうげき行動こうどうや、加害かがいしゃへの報復ほうふく行為こうい報復ほうふくてき攻撃こうげきについてはかならずしもわるいとは判断はんだんされずに、文脈ぶんみゃく考慮こうりょして判断はんだんされ、攻撃こうげき行動こうどう許容きょようされることもある[2]

歴史れきし[編集へんしゅう]

原始げんし社会しゃかいにおいては、報復ほうふく権益けんえき侵害しんがいするものたいして、一般いっぱんてきおこなわれた。報復ほうふくされたがわ報復ほうふくをやりかえし、結果けっかめどなく報復ほうふく連鎖れんさまねくこともあった。[よう出典しゅってん]

為政者いせいしゃは、自分じぶん統治とうちする国内こくない人々ひとびと報復ほうふく感情かんじょう報復ほうふく連鎖れんさきて国内こくない混乱こんらんしてしまうことに、為政者いせいしゃとしてどのように対処たいしょすべきか、苦心くしんしてきた。

古代こだいモーセなど、民族みんぞく指導しどうしゃ同時どうじ宗教しゅうきょうてき指導しどうしゃでもあることはおおかったので、この歴史れきしふしで、復讐ふくしゅうについて宗教しゅうきょう経典きょうてんでどのような規定きてい記述きじゅつがされてきたかについてもあわせて解説かいせつする。

ハンムラビ法典ほうてん[編集へんしゅう]

復讐ふくしゅう歴史れきし関連かんれんしてしばしばげられるのが、ハンムラビおう在位ざいい紀元前きげんぜん1792ねん-1750ねんわりころ成立せいりつしたとされるハンムラビ法典ほうてん復讐ふくしゅうかんする規定きていであり、「タリオのほう」(同等どうとうほう)ともいわれ、一般いっぱんに「にはを、にはを」とやくされている。これは復讐ふくしゅう奨励しょうれいしているほうというわけではなく、もし復讐ふくしゅうする場合ばあいに その上限じょうげん設定せっていするほうである。自分じぶんけたがい以上いじょう相手あいてがいくわえてはいけない、ということを規定きていしている。[注釈ちゅうしゃく 2] [注釈ちゅうしゃく 3]

ユダヤきょう(ヘブライ聖書せいしょ[編集へんしゅう]

ユダヤきょうでは復讐ふくしゅうをどうとらえていたか、ヘブライ聖書せいしょ紀元前きげんぜん4〜5世紀せいきころに成立せいりつしたとされる)に記載きさいされているれいげる。

  • ダビデサウル復讐ふくしゅうする機会きかいがあったがそうはせず、かみかなら復讐ふくしゅうされると確信かくしんしていた
サムエルじょう(口語こうごやく) 24しょう12せつ
サムエルじょう(口語こうごやく) 26しょう8せつから11せつ

キリスト教きりすときょう新約しんやく聖書せいしょ[編集へんしゅう]

キリスト教きりすときょうでは、復讐ふくしゅうをどのようにかんがえていたか、新約しんやく聖書せいしょ中心ちゅうしんれいげる。

マタイによる福音ふくいんしょ(口語こうごやく) 5しょう43せつから44せつ
ルカによる福音ふくいんしょ(口語こうごやく) 6しょう35せつ
  • 使徒しとパウロ自分じぶん復讐ふくしゅうせず、かみいかりにまかせるようにといた
ローマじんへの手紙てがみ(口語こうごやく) 12しょう19しょう
ヘブルじんへの手紙てがみ(口語こうごやく) 10しょう30しょう

キリスト教きりすときょうでは「復讐ふくしゅうかみのもの」とされており、ひと自分じぶん復讐ふくしゅうしてはならないとおしえている。

イスラム教いすらむきょう[編集へんしゅう]

イスラム教いすらむきょうでは「にはを、にはを」につづきがあり、報復ほうふくおこなわないことを善行ぜんこうとして推奨すいしょうしている。これはディーヤというかたちイスラムほう制度せいどになっている。

  • クルアーンだい5しょう45せつ
  • いのちにはいのちを,にはを,はなにははなを,みみにはみみを,にはを,すべての傷害しょうがいおな報復ほうふくを。
  • しかし報復ほうふくせずゆるすならば,それは自分じぶんつみつぐないとなる

中世ちゅうせい近代きんだいヨーロッパ[編集へんしゅう]

中世ちゅうせいヨーロッパでは、キリストきょうおしえがひろまったが、一方いっぽうフェーデによる報復ほうふくおこなわれていた。

中世ちゅうせいヨーロッパでは動物どうぶつたいしても一部いちぶ復讐ふくしゅうおこなわれ、それは「動物どうぶつ裁判さいばん」の名前なまえられている。

(ヨーロッパでは)復讐ふくしゅうげき復讐ふくしゅう悲劇ひげきというジャンルがある[3]

きん現代げんだいのこるヨーロッパなどの復讐ふくしゅう[編集へんしゅう]

  • ジャクマリャ - アルバニアふるくからあった復讐ふくしゅうのおきて。
  • オメルタ - シチリアふるくからある復讐ふくしゅうのおきて。
  • ヴェンデッタ - コルシカふるくからある復讐ふくしゅうのおきて。
  • チェチェンにおける復讐ふくしゅうについて2013ねん西部せいぶ評論ひょうろん)はつぎのようにべた。「以前いぜん新聞しんぶんんだのですが、チェチェンでは、自分じぶん肉親にくしんころされると7だいにわたって復讐ふくしゅう義務ぎむ発生はっせいするというんです。7だいといえば、かりに25ねん世代せだい交代こうたいするとして175ねんですよ。175ねんまれたおとこは、175ねんまえ復讐ふくしゅうをしなければいけない。ぼくはそれをいて、いいはなしだなあとおもった。」[4]

日本にっぽん国内こくない歴史れきし[編集へんしゅう]

日本にっぽんでも、敵討かたきうちかたきち)は平安へいあん時代じだい鎌倉かまくら時代じだいでもおこなわれていた。徳川とくがわ幕府ばくふかたきちは私闘しとうとして抑制よくせいくわえた。

報復ほうふく関連かんれんする法律ほうりつ[編集へんしゅう]

私事しじせいてき画像がぞう記録きろく提供ていきょうとうによる被害ひがい防止ぼうしかんする法律ほうりつ(リベンジポルノ防止ぼうしほう)によりリベンジポルノ禁止きんしされている[5]

刑罰けいばつ目的もくてきかんしては2つのかんがかたがあり、ひとつは教育きょういくする目的もくてきおこなうというかんがかた教育きょういくけい)で、もうひとつは「つみたいして報復ほうふくをする」という目的もくてきおこなうというかんがかたで(応報おうほうけい)である[6]

殺人さつじんはん)にたいして死刑しけい判決はんけつがくだされ執行しっこうされる場合ばあい殺人さつじんたいする報復ほうふく、と解釈かいしゃくされることもある。

死刑しけい制度せいど報復ほうふく[編集へんしゅう]

欧州おうしゅうでは近年きんねん死刑しけい制度せいど廃止はいしするくにすくなくない。

現在げんざいでは報復ほうふく行為こういくに代行だいこうするかわりに国民こくみんから報復ほうふくけんげている(応報おうほうけいろん)。そのため、もし死刑しけいがなくなったとき、被害ひがいしゃ遺族いぞく報復ほうふくけん不当ふとう制限せいげんされるという、死刑しけい存廃そんぱい問題もんだいにおける存続そんぞく有力ゆうりょく意見いけんがある。

殺人さつじんなどの凶悪きょうあく犯罪はんざい加害かがいしゃが、国家こっかにより保護ほごされるのに、被害ひがいしゃがわには報復ほうふくみとめられないのはおかしいとかんがえ、近代きんだい以前いぜんのように報復ほうふくほうみとめ、合法ごうほうすべきという意見いけんがある[7]

近代きんだいほう制度せいどでは、「私刑しけい」はみとめられておらず、相手あいて誤認ごにんして無関係むかんけい第三者だいさんしゃ殺傷さっしょうしたり、報復ほうふく連鎖れんさまね危険きけんから反対はんたい意見いけんおおく、現在げんざいではひろ論議ろんぎにはいたっていない。

報復ほうふく事件じけん[編集へんしゅう]

いじめ問題もんだいなどでも、いじめ被害ひがいしゃが、いじめ加害かがいしゃ報復ほうふくする事件じけん発生はっせいしている。

復讐ふくしゅうなどとしょうする、報復ほうふく代行だいこうする業者ぎょうしゃもある。

報復ほうふく殺人さつじん事件じけん[編集へんしゅう]

報復ほうふく殺人さつじん事件じけんとなったれいげる。

日本にっぽん[編集へんしゅう]

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく[編集へんしゅう]

スペイン[編集へんしゅう]

  • 2005ねんに、スペインではむすめ強姦ごうかんしたおとこむすめ母親ははおやガソリンをかけてころ事件じけん発生はっせいした[8]

国家こっかあいだ報復ほうふく[編集へんしゅう]

事例じれい
軍事ぐんじてき報復ほうふく

攻撃こうげきまた攻撃こうげき行動こうどう他者たしゃへの損害そんがいをおよぼすために道徳的どうとくてきには違背いはい行為こういともされるが、他方たほう戦争せんそうなどで攻撃こうげきけたがわ報復ほうふくする場合ばあいなどは肯定こうていてき評価ひょうかされることもある[1]

テロリズム相互そうご確証かくしょう破壊はかい正当せいとう防衛ぼうえいカウンターアタック逆襲ぎゃくしゅう)も参照さんしょう

競技きょうぎでの報復ほうふくあつか[編集へんしゅう]

  • 野球やきゅうおもMLB)においては、味方みかた選手せんしゅ頭部とうぶ死球しきゅうけたり、侮辱ぶじょくてき行為こういをされたさい報復ほうふく行為こういとして相手あいてチームの選手せんしゅたいして故意こい死球しきゅうあたえる投手とうしゅ一部いちぶにいる(いた。だが最近さいきんでは、報復ほうふくせず、意図いとてき死球しきゅうあたえない投手とうしゅおおい)。報復ほうふく死球しきゅうあたえた場合ばあい審判しんぱんいんによって故意こい復讐ふくしゅう死球しきゅうあたえたと判断はんだんされると、退場たいじょう処分しょぶんされることがおおい。

動物どうぶつ[編集へんしゅう]

動物どうぶつにも報復ほうふくする行動こうどうられる。チンパンジーでは、過去かこ被害ひがいあたえた相手あいてにより攻撃こうげきてきとなり、悪意あくいからのいやがらせからはおこなわない結果けっかている[10]。また、シャチなどが過去かこ攻撃こうげきたいして攻撃こうげきしたりする[11][12]

ちょう自然しぜん報復ほうふく[編集へんしゅう]

かみなどのちょう自然しぜんてき現象げんしょうによる報復ほうふくたたんだ[13]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 攻撃こうげき行動こうどう中心ちゅうしんテーマとした説明せつめいと、復讐ふくしゅう中心ちゅうしんテーマとした説明せつめいことなる。ぎゃく概念がいねんから説明せつめいしてはいけない。またウィキペディアない記事きじをまるで出典しゅってんであるかのように表示ひょうじすることは禁止きんしされている。
  2. ^ ひと感情かんじょうられると、ついつい、いわゆる「ばいがえし(ばいがえし)」や「3ばいがえし」をしたくなるが、このタリオのほうは、たとえ復讐ふくしゅうするにしても、どう程度ていどめなければいけない、という法律ほうりつである。これにより、ハンムラビは為政者いせいしゃとして、かれ統治とうちするくにうち復讐ふくしゅうがエスカレートしてゆくことを抑制よくせいした。
  3. ^ にはを、にはを」で有名ゆうめいな、古代こだいメソポタミアの、『ハンムラビ法典ほうてん』は報復ほうふく奨励しょうれいしたものではなく、制限せいげん報復ほうふく一般いっぱんてきだった原始げんし社会しゃかいにおいて過剰かじょう報復ほうふくきんじ、同等どうとう懲罰ちょうばつにとどめて報復ほうふく合戦かっせん拡大かくだい制限せいげんする目的もくてきがあった。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c [1] 越中えっちゅう康治こうじ攻撃こうげき行動こうどうたいする幼児ようじ善悪ぜんあく判断はんだん発達はったつてき変化へんか広島大学ひろしまだいがく大学院だいがくいん教育きょういくがく研究けんきゅう紀要きようだいさん55ごう、2006.
  2. ^ a b c 越中えっちゅう康治こうじ新見にいみ直子なおこあわ将太しょうた松田まつだ由希子ゆきこ前田まえだ健一けんいち攻撃こうげき行動こうどうたいする幼児ようじ善悪ぜんあく判断はんだんおよぼす動機どうき目的もくてき影響えいきょう」、『広島大学ひろしまだいがく大学院だいがくいん教育きょういくがく研究けんきゅう紀要きよう. だいさん, 教育きょういく人間にんげん科学かがく関連かんれん領域りょういきだい56ごう広島大学ひろしまだいがく大学院だいがくいん教育きょういくがく研究けんきゅう、2007ねん
  3. ^ 復讐ふくしゅうげき. コトバンクより。
  4. ^ 西部せいぶ邁、くろてつヒロシ『もはや、これまで: 経綸けいりん酔狂すいきょう問答もんどう』PHP研究所けんきゅうじょ、2013ねん、192ぺーじ 
  5. ^ 私事しじせいてき画像がぞう記録きろく提供ていきょうとうによる被害ひがい防止ぼうしかんする法律ほうりつ”. elaws.e-gov.go.jp. 2023ねん11月15にち閲覧えつらん
  6. ^ 日弁連にちべんれん裁判さいばんいん皆様みなさまへ って
  7. ^ 智英ともひで『ホントのはなし小学館しょうがくかん文庫ぶんこ、26ぺーじ 
  8. ^ むすめ強姦ごうかんしたおとこ母親ははおや復讐ふくしゅう。ガソリンをかけてころ”. デジタルマガジン (2009ねん2がつ26にち). 2011ねん11月19にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2013ねん8がつ28にち閲覧えつらん
  9. ^ [2]
  10. ^ 也, 山本やまもと (2011ねん). “利他りた協力きょうりょくのメカニズムと社会しゃかい進化しんか”. 霊長れいちょうるい研究けんきゅう. pp. 95–109. doi:10.2354/psj.27.013. 2023ねん11月15にち閲覧えつらん
  11. ^ simon (2021ねん10がつ15にち). “Do animals seek revenge? If they are fed up enough” (英語えいご). Wildlife in the Balance. 2023ねん11月15にち閲覧えつらん
  12. ^ シャチのふねへの集団しゅうだん攻撃こうげき多発たはつ沈没ちんぼつも、ケガの仕返しかえし? あそび?”. natgeo.nikkeibp.co.jp. 2023ねん11月15にち閲覧えつらん
  13. ^ 中分なかぶん, はるか (2022ねん12月2にち). “自然しぜん報復ほうふくするのか:「タタリ」伝承でんしょう計量けいりょう分析ぶんせきこころ”. じんもんこん2022論文ろんぶんしゅう. pp. 119–124. 2023ねん11月15にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]