西彼杵半島にしそのぎはんとう

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長崎ながさき半島はんとうした)と西彼杵半島にしそのぎはんとううえ)のランドサット衛星えいせい写真しゃしんスペースシャトル標高ひょうこうデータ使用しよう

西彼杵半島にしそのぎはんとう(にしそのぎはんとう)は、九州きゅうしゅう北西ほくせい長崎ながさきけんいきにある半島はんとうひとつ。西彼せいひ半島はんとう(せいひはんとう)ともばれる。

地理ちり[編集へんしゅう]

九州きゅうしゅう北西ほくせい長崎ながさき県域けんいきのうち、九州きゅうしゅう本土ほんどいきでは北松浦半島きたまつうらはんとうきたし、そのみなみではぎゃくまんじかたち西彼杵半島にしそのぎはんとう長崎ながさき半島はんとう島原半島しまばらはんとうみっつの半島はんとうす。西彼杵半島にしそのぎはんとうは3半島はんとうのうち北西ほくせいした半島はんとうである。

半島はんとう周辺しゅうへんふく長崎ながさきけんぞくする。市町村しちょうそん西海さいかい長崎ながさき北部ほくぶさんじゅう外海そとめ琴海ことみ地区ちく、および西彼杵にしそのきぐん時津とぎつまちの21まちがほぼ該当がいとうする。ただし、どこまでを西彼杵半島にしそのぎはんとうふくめるのかについては意見いけん相違そうい存在そんざいし、半島はんとうのつけ部分ぶぶんにあたる西彼杵にしそのきぐん長与ながよまち諫早いさはや長崎ながさき式見しきみ福田ふくだ地区ちくなどをふく場合ばあいもある。

針尾瀬戸はりおせと針尾島はりおじま早岐瀬戸はいきせとはさんで九州きゅうしゅう本土ほんどかいう。東岸とうがん大村湾おおむらわん北岸ほくがん佐世保湾させぼわん西岸せいがん五島ごしまなだめんする。なお五島ごしまなだ西彼杵半島にしそのぎはんとう南部なんぶから式見しきみ福田ふくだまでの沿岸えんがんとく角力灘すもうなだ(すもうなだ)とばれる。かく海域かいいきみなみ東シナ海ひがししなかいつながる。

自然しぜん[編集へんしゅう]

全体ぜんたいてきにはVだに多数たすうきざまれた隆起りゅうきじゅん平原へいげんである。五島ごしまなだめんした西部せいぶ海岸かいがん断層だんそうがけで、かく河口かこう小規模しょうきぼ平野へいやがあるほかった断崖だんがいつづく。一方いっぽう大村湾おおむらわんめんした東岸とうがんリアス式海岸りあすしきかいがんで、小島こじまおおい。

南部なんぶ中部ちゅうぶ結晶けっしょう片岩かたいわ主体しゅたいの「長崎ながさき変成岩へんせいがんるい」(西彼杵にしそのき変成岩へんせいがんるい)からなるが、北部ほくぶ玄武岩げんぶがんしつ溶岩ようがん台地だいちで、なか南部なんぶより標高ひょうこうひくく、起伏きふくすくない。堆積岩たいせきがんからなる部分ぶぶんすくないが、五島ごしまなだかくしまにおける炭鉱たんこう七釜しちかま鍾乳洞しょうにゅうどうなどはだい三紀みきそうである。

中央ちゅうおうには標高ひょうこう561mの長浦岳ながうらだけ最高峰さいこうほうに、飯盛山いいもりさん(531m)・タンポさん(473m)・三方山さんぼうやま(412m)・樫井岳かしいだけ(404m)・はくたけし(356m)・虚空蔵山きょくうぞうやま(307m)などのやまつらなる。半島はんとう全体ぜんたいわたって200-400mほどの丘陵きゅうりょうひろがり、それらは徐々じょじょ標高ひょうこうげながらも海岸かいがんまでせまる。平野ひらのかく河川かせんしも流域りゅういき沿ってわずかにひろがるのみである。

おも河川かせん神浦かみうらがわ雪浦川ゆきのうらがわ多以良たいらがわ伊佐いさ浦川うらかわ木場きばがわ大明だいめい寺川てらがわ中山川なかやまがわ)・西海さいかいがわなどがある。最大さいだい雪浦川ゆきのうらがわ延長えんちょう12.9km・流域りゅういき面積めんせき55.7km2たっするが、長崎ながさき県内けんない河川かせんれいれず、山間さんかん渓流けいりゅうちゅう流域りゅういきずそのまま河口かこうつながるようなしょう河川かせんおおい。

東シナ海ひがししなかい北上ほくじょうする対馬つしま海流かいりゅう影響えいきょうもあり、気候きこう温暖おんだんで、年間ねんかん降水こうすいりょうやく2,000mmほどとおおい。本来ほんらい植生しょくせいシイカシるいからなる照葉樹しょうようじゅりんだが、植林しょくりんによるスギヒノキはやしわった山林さんりんおおい。海浜かいひん植物しょくぶつアコウハマビワハマボウハマゴウツルナなどが各地かくち海沿うみぞいでられる。陸生りくせい哺乳類ほにゅうるいとしては、後述こうじゅつとお現在げんざいでもイノシシ生息せいそくするほか周辺しゅうへん地域ちいきふくめればホンドギツネけんのレッドリストでじゅん絶滅ぜつめつ危惧きぐしゅ指定してい[1]ニホンジカ[2]なども確認かくにんされている。

すぐれた自然しぜん景観けいかんから、長浦岳ながうらだけ西側にしがわ斜面しゃめんにはながさき県民けんみんもり整備せいびされ、周囲しゅうい島嶼とうしょふくめた3,065haが「西彼杵半島にしそのぎはんとう県立けんりつ公園こうえん英語えいごばん)」に指定していされている。九州きゅうしゅう自然しぜん歩道ほどう指定していされたみちもある。

江戸えど時代じだいから明治めいじ時代じだいまでは、西彼杵半島にしそのぎはんとう松島まつしま大島おおしま一帯いったいこしきとう列島れっとうにも捕鯨ほげい基地きち存在そんざいしており、それらのなかには著名ちょめいくじらぐみふくまれていた[3][4][5]古代こだいには有明海ありあけかい捕鯨ほげいおこなわれていた可能かのうせい示唆しささせる資料しりょう発見はっけんされている[6]。また、昭和しょうわ時代じだい初期しょきまでは天草あまくさ下島しもじま牛深うしぶかまち沿岸えんがんにも北上ほくじょうするクジラ来遊らいゆうしており[7]野間半島のまはんとう笠沙かささまちでは過去かこホエールウォッチングおこなわれていた[8]。これらの判断はんだん材料ざいりょうからも、西彼杵半島にしそのぎはんとう沿岸えんがんにも本来ほんらい多数たすうクジラとく沿岸えんがんせいヒゲクジラるい回遊かいゆうしていたことがうかがえる。

居住きょじゅう地域ちいき[編集へんしゅう]

大島おおしま大橋おおはし

各地かくち河口かこう周辺しゅうへん半農半漁はんのうはんぎょ起源きげんとする集落しゅうらくがあるが、半島はんとう中央ちゅうおう山間さんかんでは開拓かいたく集落しゅうらくもある。室町むろまち-江戸えどにはキリスト教きりすときょう布教ふきょうされたが、外海そとめ地区ちくではその迫害はくがいにより五島列島ごとうれっとうのがれたキリシタン住民じゅうみんもいた。江戸えど捕鯨ほげい産業さんぎょう明治めいじ-昭和しょうわ石炭せきたん産業さんぎょうさかえた時期じきもあったが、20世紀せいき後半こうはんからは長崎ながさき佐世保させぼ通勤つうきんするひとえた。

最近さいきんでは、長崎ながさき佐世保させぼから通勤つうきんするひとえている。

平地ひらちとぼしいため段々だんだんはたけおおく、神浦かみうらだい中尾なかお地区ちくなど棚田たなだつくられた地域ちいきもある。ミカンブドウ巨峰きょほう)・サツマイモスイカなどの栽培さいばいさかんである。また中央ちゅうおう山地さんち中心ちゅうしん畜産ちくさんぎょう大村湾おおむらわんでは真珠しんじゅ養殖ようしょくおこなわれている。

かつてはイノシシによる農作物のうさくもつ被害ひがいこっていたため、各地かくち山中さんちゅうにはイノシシの侵入しんにゅうめる目的もくてきつくられた「猪垣いのかけ」(ししがき)がられ、長崎ながさきけん有形ゆうけい民俗みんぞく文化財ぶんかざい指定していされている[9]。しかし、2000年代ねんだいはいってふたたびイノシシとヒトとの軋轢あつれき顕著けんちょになり、問題もんだいとなっている[10]

交通こうつう機関きかん[編集へんしゅう]

西部せいぶ北部ほくぶ海沿うみぞいを国道こくどう202ごう東部とうぶ海沿うみぞいを国道こくどう206ごうはしり、県道けんどう12ごう県道けんどう43ごうなどの県道けんどう広域こういき農道のうどう各所かくしょつなぐ。佐世保させぼ方面ほうめんには西海さいかいきょうしん西海さいかいきょうかり、大島おおしま崎戸さきとには大島おおしま大橋おおはし県道けんどう52ごう)がかる。

半島はんとうでは長崎自動車ながさきじどうしゃおよびさいかい交通こうつうによるバス運行うんこう公共こうきょう交通こうつうのメインである。船便せんびん松島まつしま池島いけじま五島ごしま福江ふくえ奈留なる)・佐世保させぼ大村おおむらなどの航路こうろがある。鉄道てつどう長崎本線ながさきほんせん半島はんとうはずれの長与ながよまち-長崎ながさき中部ちゅうぶいき大村線おおむらせん針尾はりおとうえた佐世保させぼまち近郊きんこうはしるにとどまる。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 角川かどかわ日本にっぽん地名ちめいだい辞典じてん編纂へんさん委員いいんかい角川かどかわ日本にっぽん地名ちめいだい辞典じてん 42 長崎ながさきけん』1987ねん ISBN 9784040014203
  • 長崎ながさきけん県民けんみん生活せいかつ環境かんきょう自然しぜん保護ほご大村湾おおむらわんさい発見はっけんガイドブック』長崎新聞社ながさきしんぶんしゃ 2007ねん ISBN 4-931493-80-7

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ キツネかい異変いへん? 採石さいせきじょう珍客ちんきゃく 「けんレッドリスト」のホンドギツネ
  2. ^ だいしゅ特定とくてい鳥獣ちょうじゅう(ニホンジカ)管理かんり計画けいかく
  3. ^ 西海にしうみ捕鯨ほげい漁場ぎょじょう
  4. ^ くじらうら黒瀬くろせむら大島郷おおしまごう くじらうら捕鯨ほげいしま西彼せいひ大島おおしま)にあったくじら地名ちめい
  5. ^ 長崎ながさき西海さいかいくじら伝説でんせつ民話みんわ
  6. ^ 小長井こながいまち文化財ぶんかざい”. 2023ねん12月5にち閲覧えつらん
  7. ^ 山下やました義満よしみつ, 1999ねん, きき「くじらいち天草てんぐさ地方ちほう牛深うしぶか事例じれいとして-, 日本海にほんかいセトロジー研究けんきゅう, だい9ごう, 59-60ぺーじ
  8. ^ はく俊哉としや, 「西部せいぶきた太平洋たいへいようとく南西なんせい日本にっぽん沿岸えんがんにおけるニタリクジラの資源しげん生態せいたいがくてき研究けんきゅう東京とうきょう海洋かいよう大学だいがく 博士はかせ論文ろんぶん, おつだい20ごう, 2012ねん, NAID 500000560728
  9. ^ 西彼杵半島にしそのぎはんとう猪垣いのかけ基点きてん
  10. ^ 米田よねだゆう一郎いちろう, 2020ねん12月16にち, イノシシ注意ちゅうい あきふゆ交通こうつう事故じこ多発たはつ、けがにん, 朝日新聞あさひしんぶん