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雨乞あまご

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日本にっぽん香川かがわけん三豊みとよ毎年まいとしおこなわれる「仁尾におりゅうまつり」では、わらでつくった「雨乞あまごりゅう」のものされる。やくひゃくねんまえ伊予いよこく旱魃かんばつ見舞みまわれたさい雨乞あまごいの行者ぎょうじゃ和蔵かずぞう発案はつあんで、人々ひとびとわらおおきなりゅうをつくってうみながしたところ、もなくあめった。その旱魃かんばつがあるとわらりゅうをつくって雨乞あまごいをおこない、こんにちもまいなつまつりとしてつづけられている[1]。(写真しゃしんは2010ねん撮影さつえい

雨乞あまご(あまごい)とは、旱魃かんばつ(かんばつ)がつづいたさいあめらせるためおこな呪術じゅじゅつてき宗教しゅうきょうてき儀礼ぎれいのこと。いのり(きう)ともいう。世界せかい各地かくちられるが、熱帯ねったい乾燥かんそう地域ちいきとくさかんにおこなわれる。

概要がいよう

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世界せかいおおくの文化ぶんかけんに「あめかみからのおくものであり、それが途絶とだえるのはかみばちである」という観念かんねんがあった。方法ほうほうちがえど、世界中せかいじゅう雨乞あまごいの儀式ぎしきかみ注意ちゅういき、よろこばせ、同情どうじょう目的もくてきおこなわれる[2]雨乞あまごいには実際じっさい旱魃かんばつになったときおこなうものと、定期ていきてきおこなわれるものがある。

雨乞あまごいは部族ぶぞくなか賢者けんじゃとして尊敬そんけいあつめている人物じんぶつ儀式ぎしき仕切しきり、かみ人々ひとびととのあいだつ。こうした人物じんぶつ雨乞あまごばれる。たとえば、『旧約きゅうやく聖書せいしょ』ではかみ旱魃かんばつこし預言よげんしゃエリヤつうじて異教いきょうかみバアルへの信仰しんこうてるように人々ひとびとさと場面ばめんがある。また、天候てんこうつきけと関係かんけいがあるとかんがえた社会しゃかいでは、雨乞あまごいで女性じょせい重要じゅうよう役割やくわりたした。

世界せかい様々さまざま文化ぶんかけんでカエル、ヘビ、サンショウウオ、カメなど、あめあめつかさどかみ関係かんけいがあるとかんがえられている生物せいぶつがあり、雨乞あまごいの儀式ぎしきではにえ小道具こどうぐとしてもちいられる。

世界せかい雨乞あまご

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イスラーム世界せかいには「イスティスカー」とばれる降雨こうう祈願きがんがあり、マムルークあさ時代じだいのエジプトでは増水ぞうすい祈願きがんばれるだい規模きぼ雨乞あまごいがおこなわれていた。

南方みなかた熊楠くまぐすによれば、モンゴルすし荅師(ヤダチ)とばれる雨乞あまごがおり、ぼんうし結石けっせき(すし荅とばれる)とみずれ、呪文じゅもんとなえながらあめらせたという[3]

古代こだいローマではかまどかみウェスタ使つかえる巫女ふじょたちが5月7にち以降いこう満月まんげつよるに、テヴェレがわに24たい等身とうしんだい人形にんぎょう雨乞あまごいの儀式ぎしきおこなっていた。ヨーロッパにはいまでもこれとたような儀式ぎしきおこなっている地域ちいきがある。

インドのある地方ちほうではくもふんした雨乞あまご地面じめんみずく。ロシアのドーパットではむらせいなるもみに3にん雨乞あまごがのぼり、薬缶やかんえさしみずらしたしょうえだ使つかってあらし再現さいげんする。いずれもこうなってほしいという状況じょうきょう再現さいげんしてみせる儀式ぎしきである。

メキシコユカタン半島はんとうではセノーテとばれる地底ちていみずうみに、あめかみチャックが宿やどるとマヤ文明ぶんめい時代じだいマヤ人々ひとびとしんじられており、雨乞あまごいのため生贄いけにえ儀式ぎしきおこなわれていたようで、現代げんだいでも現地げんち農民のうみんたちが供物くもつささげてかみいのりをささげる儀式ぎしきおこなわれている。

日本にっぽん雨乞あまご

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菅原すがわら道真みちざね雨乞あまご

日本にっぽんでも各地かくち様々さまざま雨乞あまごいがられる。大別たいべつすると、山野さんやく、神仏しんぶつ芸能げいのう奉納ほうのうして懇請こんせいする、禁忌きんきおかす、神社じんじゃ参籠さんろうする、るいかん模倣もほう呪術じゅじゅつおこなうなどがある。

山野やまのとく山頂さんちょうき、かね太鼓たいこらして大騒おおさわぎする形態けいたい雨乞あまごいは、日本にっぽん各地かくちひろられる。神仏しんぶつ芸能げいのう奉納ほうのうする雨乞あまごいは、近畿きんき地方ちほうおおられる。禁忌きんきおか雨乞あまごいとは、たとえば、通常つうじょう水神すいじんむとして清浄せいじょうたもつべき湖沼こしょうなどに、動物どうぶつ内臓ないぞう遺骸いがいみ、みずけがすことで水神すいじんおこらせてあめらせようとするものや、いし地蔵じぞうしばげ、あるいはみずけてあめらせるよう強請きょうせいするものであり、一部いちぶ地方ちほうられる。神社じんじゃへの参籠さんろうは、雨乞あまごいにかぎらず祈祷きとう一般いっぱんひろられるが、山伏やまぶし修験しゅげんどう行者ぎょうじゃなど、専門せんもんしょくものおこなうこともおおい。るいかん呪術じゅじゅつとは、霊験れいけんあらたかな神水じんずいいてあめ模倣もほうし、あるいはいてけむりくもあらわし、太鼓たいこだい音量おんりょう雷鳴らいめい真似まねるなど降雨こうう真似まねることで、実際じっさいあめいざなおうとするタイプの呪術じゅじゅつである。このタイプの雨乞あまごいは、中部ちゅうぶ地方ちほうから関東かんとう地方ちほうおおい。

王朝おうちょう時代じだい以前いぜん日本にっぽんでは、雨乞あまごいは国家こっかによる儀礼ぎれいとしておこなわれていた。仏教ぶっきょう伝来でんらい以前いぜんより、施政しせいしゃである天皇てんのうには国家こっか鎮護ちんごこえかみとどける能力のうりょくがあるとしんじられ、いのりもまた古来こらいより天皇てんのうみずからが神祇じんぎいのることによっておこなわれた[4]文献ぶんけんえる最古さいこ雨乞あまごいのれいは、『日本書紀にほんしょきすめらぎごく天皇てんのう元年がんねん642ねん)のじょう記述きじゅつである。

  • つちのえとら。羣臣しょういい曰。ずいむらしゅくしょきょうあるころせ牛馬ぎゅうばさいしょしゃしんあるしきうつりあるいのりかわはくすんでしょこう蘇我そが大臣だいじんほう曰。於寺てら轉讀てんどく大乘だいじょう經典きょうてん。悔過如佛しょ訟。けい而祈
  • かのえたつ於大おだいてら南庭なんていげん佛菩薩ぶつぼさつぞうあずか四天王してんのうぞうこごめ請衆そう。讀大くもけいとう。于時。蘇我そが大臣だいじんしゅこうたたら燒香しょうこう發願ほつがん
  • からし微雨びう
  • みずのえうま不能ふのういのりとま讀經どきょう
  • はちがつかぶとさるついたち天皇てんのう幸南こうなんふち河上かわかみ跪拜きはい四方しほう仰天ぎょうてん而祈。そくかみなり大雨おおあめとげにち。溥潤天下でんか。(あるほんうん五日いつかれんきゅうこくとうじゅく。)於是。天下てんか百姓倶稱萬歳曰至徳天皇。

これによると、7がつ25にちから蘇我蝦夷そがのえみし雨乞あまごいのため大乗だいじょうけい輪読りんどくさせたが、微雨びうのみでこうられなかったのでどう29にちめさせた。しかし、8がつ1にちすめらぎごく天皇てんのうてんいのると、突如とつじょ大雨おおあめり、天下てんか万民ばんみんとも天皇てんのうとなえたとある。この記述きじゅつ以前いぜんにも、平安へいあん時代じだい編纂へんさんされた仏教ぶっきょう史書ししょ扶桑ふそう略記りゃっき』には、推古天皇すいこてんのう33ねん(625ねん)のじょうに、こううららそうめぐみ灌にめいじて雨乞あまごいの儀式ぎしきおこなわせたという記述きじゅつがある[4]

仏教ぶっきょう浸透しんとうとともに読経どきょう法会ほうえによるいのりさかんとなり、天武天皇てんむてんのう4ねん(675ねん)には天皇てんのう命令めいれいいのり法会ほうえおこなわれている。やがて密教みっきょう隆盛りゅうせいとともに、いのり儀式ぎしき読経どきょう法会ほうえよりも修法しゅほうおもんじられるようになる[4]神泉苑しんせんえん空海くうかい雨乞あまごいをおこなった場所ばしょとしてられる。真言宗しんごんしゅう小野おのずいしんいんひらけそうした仁海にんかいは、9雨乞あまごいの要請ようせいこたえて9かいらせ「あめ僧正そうじょう」の異名いみょうった。日蓮にちれん真言しんごんりつむね良観りょうかん雨乞あまご対決たいけつをしたとつたわる[5]

雨乞あまご信仰しんこう由来ゆらいする名字みょうじとしては、雨宮あまみやられる。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 雨乞あまごいのりゅう”. 香川かがわみず事情じじょう 香川かがわみず伝説でんせつ. 香川かがわけん (2016ねん3がつ22にち). 2016ねん12月9にち閲覧えつらん
  2. ^ クルーティエ 1996, pp. 73–74.
  3. ^ 南方みなかたじゅう支考しこう岩波いわなみ文庫ぶんこ上巻じょうかんp345「うまかんする民俗みんぞく伝説でんせつ[よう文献ぶんけん特定とくてい詳細しょうさい情報じょうほう][ようページ番号ばんごう]
  4. ^ a b c 藤山ふじやま 2001, pp. 101–107.
  5. ^ 仏教ぶっきょう質問しつもんばこ 法華宗ほっけしゅう (陣門じんもんりゅう)

参考さんこう文献ぶんけん

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  • クルーティエアルヴ・リトル しる武者むしゃ圭子けいこ やくみず温泉おんせん文化ぶんか三省堂さんせいどう、1996ねんISBN 978-4-385-35503-0 
  • 清水しみず眞澄ますみ読経どきょう世界せかいのう読の誕生たんじょう吉川弘文館よしかわこうぶんかん歴史れきし文化ぶんかライブラリー〉、2001ねんISBN 4642055215 

関連かんれん資料しりょう

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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