2021年の野球において、メジャーリーグベースボール(MLB)のポストシーズンは10月5日に開幕した。アメリカンリーグの第52回リーグチャンピオンシップシリーズ(英語: 52nd American League Championship Series、以下「リーグ優勝決定戦」と表記)は、15日から22日にかけて計6試合が開催された。その結果、ヒューストン・アストロズ(西地区)がボストン・レッドソックス(東地区)を4勝2敗で下し、2年ぶり4回目のリーグ優勝およびワールドシリーズ進出を果たした。
アストロズは、2017年から続くリーグ優勝決定戦への連続出場を5に伸ばした。これは史上3球団目である[注 1][3]。両球団がポストシーズンで対戦するのは2018年のリーグ優勝決定戦以来3年ぶり3度目で、これはアストロズ5年連続出場の2年目にあたる。前回対戦はレッドソックスが4勝1敗で制したが、今シリーズは逆にアストロズが勝利した。シリーズMVPには、優勝を決めた第6戦で先制・決勝の適時二塁打を含む3長打を放つなど、6試合で打率.522・1本塁打・6打点・OPS 1.408という成績を残したアストロズのヨルダン・アルバレスが選出された。しかしアストロズは、ワールドシリーズではナショナルリーグ王者アトランタ・ブレーブスに2勝4敗で敗れ、4年ぶり2度目の優勝を逃した。
2021年、MLB機構が非銀行系住宅ローン会社のローンデポと契約を締結し、同社はこの年から5年間リーグ優勝決定戦の冠スポンサーとなった[4]。これにより、大会名はアメリカンリーグチャンピオンシップシリーズ presented by ローンデポ(英語: American League Championship Series presented by loanDepot)となる。
10月11日にまずレッドソックス(東地区2位=第1ワイルドカード)が、そして12日にはアストロズ(西地区優勝)が、それぞれ地区シリーズ突破を決めてリーグ優勝決定戦へ駒を進めた。
レッドソックスは2020年は地区最下位に沈んだが、編成本部長チェイム・ブルームがロースター構築の方針として "持続可能性" を掲げたため、オフの補強はFAの契約条件を期間2年以内かつ総額1400万ドル以内にとどめるなど、小さな動きに終止した[5]。2021年は開幕8戦目で単独地区首位に浮上し、そこからタンパベイ・レイズと首位争いを展開、前半戦終了時には55勝36敗でレイズに1.5ゲーム差をつけた。だが、7月30日からのレイズとの直接対決3連戦に全敗し首位を明け渡すと、8月中旬には一時ワイルドカード争いでもポストシーズン進出圏外の3位に転落[6]、27日から9月12日にかけて計12選手が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患するなど[7]、後半戦は一転して苦境に立たされた。その後は復調して同地区のニューヨーク・ヤンキースやトロント・ブルージェイズ、西地区のシアトル・マリナーズとワイルドカード2枠を争い、レギュラーシーズン最終日の10月3日に第1ワイルドカードの座を獲得した[8]。平均得点5.12はリーグ4位、防御率4.27はリーグ7位。打線はJ.D.マルティネスやラファエル・デバース、ザンダー・ボガーツら強打者を中軸に並べ、投手陣の調子が安定しないのを補ってチームを牽引した[9]。ワイルドカードゲームではヤンキースを6-2で下し[10]、地区シリーズではレイズに3勝1敗で勝利と[11]、ポストシーズンでは同地区球団を相次いで下した。
アストロズはエースのジャスティン・バーランダーをトミー・ジョン手術で、正中堅手ジョージ・スプリンガーをFA移籍で失ってシーズン開幕を迎えた。しかもこの年は、シーズンを通して敵地でブーイングを浴び続けた。というのも、2017年・2018年に電子機器を用いた不正な方法でサイン盗みをしていたことが2019年のワールドシリーズ敗退後に発覚し、2020年はCOVID-19の影響で全試合無観客開催だったため、2021年が不正発覚後に観客の前で試合をする初のシーズンだったからである[12]。それでもアストロズは勝ち星を積み重ねた。序盤はオークランド・アスレチックスに先行を許したものの、6月13日からの11連勝で逆転して地区首位に立ち、前半戦終了時には55勝36敗で2位に3.5ゲーム差をつけた。得点数と打率でリーグトップの強力打線がチームを牽引した[13]。後半戦に入ってもアスレチックスやマリナーズを寄せ付けず、9月30日に2年ぶりの地区優勝を決めた[12]。平均得点5.33はリーグ最高、防御率3.78はリーグ4位。打線はOPSリーグ上位20人中5人を擁する層の厚さで得点を奪い、投手陣もバーランダーを欠きながら先発ローテーションの陣容をほぼ固定し多くのイニングを消化していった[14]。チームはカルロス・コレアを中心に団結し、激しい憎悪を向けられた敵地でも44勝37敗と勝ち越した[15]。地区シリーズではシカゴ・ホワイトソックスを3勝1敗で下した[16]。
リーグ優勝決定戦の第1・2・6・7戦を本拠地で開催できる "ホームフィールド・アドバンテージ" は、地区優勝球団どうしが対戦する場合はレギュラーシーズンの勝率がより高いほうの球団に、地区優勝球団とワイルドカード球団が対戦する場合は地区優勝球団に与えられる。したがって今シリーズでは、アストロズがアドバンテージを得る。この年のレギュラーシーズンでは両球団は7試合対戦し、アストロズが5勝2敗と勝ち越していた[17]。
両チームの出場選手登録(ロースター)は以下の通り。
- 名前の横の★はこの年のオールスターゲームに選出された選手を、#はレギュラーシーズン開幕後に入団した選手を示す。
- 年齢は今シリーズ開幕時点でのもの。
レッドソックスは地区シリーズのロースターから救援投手を左右1枠ずつ入れ替え、右投手はマット・バーンズから澤村拓一へ、左投手はオースティン・デービスからダーウィンゾン・ヘルナンデスへ、それぞれ変更した。地区シリーズでは、バーンズは第2戦の9回裏1.0イニングを無失点で締め、デービスは第3戦の7回表二死から登板して1打者を打ち取った。澤村とD・ヘルナンデスはワイルドカードゲームでもロースター漏れしており、これが今ポストシーズン3ラウンド目で初のロースター入りである[18]。澤村はゴロを打たせる能力が、D・ヘルナンデスは対右打者の成績が、それぞれバーンズとデービスよりも良く、右の強打者を複数抱え出塁率の高いアストロズ打線に対し好相性と考えられる[19]。
アストロズは地区シリーズのロースターから先発投手のランス・マッカラーズ・ジュニアと捕手のギャレット・スタッブスを外し、いずれも投手のジェイク・オドリッジとブレイク・テイラーを加えた。マッカラーズはチームのエースであり、地区シリーズ初戦でも6.2イニング無失点で勝利投手となった。しかしそこから中4日の第4戦先発時に右腕を痛め、4回終了をもって降板した。MRI検査の結果では構造的損傷こそみられなかったものの[20]、円回内筋の張りでボールを投げられる状態にはないという[21]。マッカラーズの欠場により、新たにロースター入りしたオドリッジは、ザック・グレインキーとともに第4戦の先発候補となる[20]。スタッブスは地区シリーズでの出場機会はなかった。
ESPNが自社の記者13人にどちらがシリーズを制するか予想させたところ、アストロズ勝利予想が8人に対しレッドソックス勝利予想が5人という結果となった[22]。CBSスポーツも同様の企画を記者4人で実施し、こちらでは4人全員がアストロズを支持した[23]。『スポーツ・イラストレイテッド』の企画では、記者6人のうちレッドソックス支持はふたりにとどまり、残りの4人はアストロズ勝利と予想した[24]。
2021年のアメリカンリーグ優勝決定戦は10月15日に開幕し、途中に移動日を挟んで8日間で6試合が行われた。日程・結果は以下の通り。
日付 |
試合 |
ビジター球団(先攻) |
スコア |
ホーム球団(後攻) |
開催球場
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10月15日(金) |
第1戦 |
ボストン・レッドソックス |
4-5 |
ヒューストン・アストロズ |
ミニッツメイド・パーク |
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10月16日(土) |
第2戦 |
ボストン・レッドソックス |
9-5 |
ヒューストン・アストロズ
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10月17日(日) |
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移動日 |
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10月18日(月) |
第3戦 |
ヒューストン・アストロズ |
3-12 |
ボストン・レッドソックス |
フェンウェイ・パーク
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10月19日(火) |
第4戦 |
ヒューストン・アストロズ |
9-2 |
ボストン・レッドソックス
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10月20日(水) |
第5戦 |
ヒューストン・アストロズ |
9-1 |
ボストン・レッドソックス
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10月21日(木) |
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移動日 |
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10月22日(金) |
第6戦 |
ボストン・レッドソックス |
0-5 |
ヒューストン・アストロズ |
ミニッツメイド・パーク
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優勝:ヒューストン・アストロズ(4勝2敗 / 2年ぶり4度目)
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- ^ "League Championship Series umpires announced / Miller, Meals to Serve as Crew Chiefs As Clubs Aim for the World Series," MLB.com, October 16, 2021. 2021年10月16日閲覧。
- ^ Chandler Rome, Staff writer, "Astros hang 10 on White Sox, clinch another trip to ALCS," Houston Chronicle, October 12, 2021. 2022年10月26日閲覧。
- ^ "loanDepot named presenting sponsor of AMERICAN AND NATIONAL League Championship Series on FOX, FS1 and TBS," MLB.com, March 5, 2021. 2021年10月10日閲覧。
- ^ Alex Speier, "No one wants to say it, but it sure looks like the Red Sox are ... rebuilding," The Boston Globe, March 26, 2021. 2022年9月10日閲覧。
- ^ Ian Browne, "Sox drop G2 to rivals, cede WC: 'Frustrating'," MLB.com, August 18, 2021. 2022年9月10日閲覧。
- ^ Joon Lee, "MLB playoffs 2021: How the Boston Red Sox overcame a COVID outbreak and made it to the ALCS," ESPN.com, October 18, 2021. 2022年9月10日閲覧。
- ^ Mike Axisa & R.J. Anderson, "AL wild card: Yankees, Red Sox clinch wild-card spots on final day; Blue Jays, Mariners eliminated," CBSSports.com, October 4, 2021. 2022年9月10日閲覧。
- ^ 久保田市郎(SLUGGER編集部) 「30球団通信簿 全選手最終成績+GM通信簿 ボストン・レッドソックス コロナ禍も乗り越え予想外のプレーオフ返り咲き」 『隔月刊スラッガー』2021年12月号増刊、日本スポーツ企画出版社、2021年、雑誌15510-12、59頁。
- ^ Ian Browne, "'It's fun': Sox send rivals packing; ALDS next," MLB.com, October 6, 2021. 2022年9月10日閲覧。
- ^ Ian Browne, "Hernández walks off underdog Sox to ALCS / Cora: 'Not too many people gave us a chance from the get-go'," MLB.com, October 13, 2021. 2022年9月10日閲覧。
- ^ a b Mike Axisa, "Astros clinch fourth AL West title in past five years and will play White Sox in the ALDS," CBSSports.com, September 30, 2021. 2022年9月10日閲覧。
- ^ Kristie Rieken, "Baker settles in with Astros in second season in Houston," AP News, July 16, 2021. 2022年9月10日閲覧。
- ^ 出野哲也 「30球団通信簿 全選手最終成績+GM通信簿 ヒューストン・アストロズ 正々堂々の戦いでブーイングを跳ね返し地区V奪回」 『隔月刊スラッガー』2021年12月号増刊、日本スポーツ企画出版社、2021年、雑誌15510-12、68頁。
- ^ Chandler Rome, Staff writer, "Carlos Correa knows playoffs might be his last Astros hurrah," Houston Chronicle, October 1, 2021. 2022年9月10日閲覧。
- ^ Brian McTaggart, "'We came out hungry': Astros romp to ALCS / Correa, Bregman, Altuve get the big hits to set up date with the Red Sox," MLB.com, October 15, 2021. 2022年9月10日閲覧。
- ^ "Head-to-Head Records," Baseball-Reference.com. 2021年10月13日閲覧。
- ^ Ian Browne, "Sox's ALCS roster features 2 new relievers," MLB.com, October 16, 2021. 2021年12月12日閲覧。
- ^ Ricky Doyle, "Red Sox ALCS Roster Reaction: Thoughts On Boston's Changes Vs. Astros," NESN, October 15, 2021. 2021年12月12日閲覧。
- ^ a b Brian McTaggart, "McCullers out as Astros set ALCS roster," MLB.com, October 16, 2021. 2021年12月12日閲覧。
- ^ Kristie Rieken, "Houston ace McCullers left off ALCS roster against Red Sox," Associated Press News, October 16, 2021. 2021年12月12日閲覧。
- ^ ESPN.com, "MLB playoffs 2021: ALCS and NLCS expert predictions," ESPN.com, October 15, 2021. 2022年9月10日閲覧。
- ^ Matt Snyder, "Astros vs. Red Sox picks, ALCS predictions: CBS Sports experts unanimously favor Houston to reach World Series," CBSSports.com, October 15, 2021. 2022年9月10日閲覧。
- ^ SI Staff, "MLB Roundtable: Who's Going to Win the ALCS?," Sports Illustrated, October 15, 2021. 2022年9月10日閲覧。
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削除線が引かれた年は開催中止
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球団 | |
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歴代本拠地 | |
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文化 | |
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永久欠番 | |
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ワールドシリーズ優勝(2回) | |
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ワールドシリーズ敗退(3回) | |
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リーグ優勝(5回) | |
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できごと | |
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傘下マイナーチーム | |
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球団 | |
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歴代本拠地 | |
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文化 | |
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永久欠番 | |
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レッドソックス球団殿堂 | |
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ワールドシリーズ優勝(09回) | |
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ワールドシリーズ敗退(04回) | |
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リーグ優勝(14回) | |
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できごと | |
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傘下マイナーチーム | |
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