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パブリックドメイン

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パブリックドメイン(public domain)とは、著作ちょさくぶつ発明はつめいなどの知的ちてき創作そうさくぶつについて、知的ちてき財産ざいさんけん発生はっせいしていない状態じょうたいまたは消滅しょうめつした状態じょうたいのことをいう。日本語にほんごわけとして公有こうゆう(こうゆう)というかたり使つかわれることがある[ちゅう 1][1]

パブリックドメインにかえした知的ちてき創作そうさくぶつについては、その知的ちてき財産ざいさんけん行使こうししうるもの存在そんざいしないことになるため、知的ちてき財産ざいさんけん侵害しんがい根拠こんきょとして利用りよう差止さしどめや損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅうなどをもとめられることはないことになる。その結果けっか知的ちてき創作そうさくぶつだれでも自由じゆう利用りようできるとかれることがおおい。しかし、知的ちてき財産ざいさんけん侵害しんがいしなくても、利用りよう所有しょゆうけん人格じんかくけんなどの侵害しんがいともな場合ばあいは、そのかぎりにおいて自由じゆう利用りようできるわけではない。また、あるしゅ知的ちてき財産ざいさんけん消滅しょうめつしたとしても、べつ知的ちてき財産ざいさんけん消滅しょうめつしているとはかぎらない場合ばあいもある(著作ちょさくぶつ商標しょうひょうとして利用りようしているものがいる場合ばあい量産りょうさん可能かのう美術びじゅつ工芸こうげいひんのように著作ちょさくけん意匠いしょうけんによって重畳ちょうじょうてき保護ほごされる場合ばあいなど)。また、かく法域ほういきによりほう内容ないようことなるため、ひとつの法域ほういき権利けんり消滅しょうめつしても、べつ法域ほういき権利けんり消滅しょうめつしているとはかぎらない。したがって、特定とくてい知的ちてき創作そうさくぶつがパブリックドメインであるとわれる場合ばあいは、どの法域ほういきでどのような権利けんり発生はっせいあるいは消滅しょうめつしたのかを、具体ぐたいてき検討けんとうする必要ひつようがある。

知的ちてき財産ざいさんけん発生はっせいまたは消滅しょうめつ原因げんいん

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そもそも創作そうさくせいくなどの理由りゆうにより保護ほごすべき知的ちてき創作そうさくぶつにならない場合ばあいたとえば、著作ちょさくけん場合ばあい思想しそうまたは感情かんじょう創作そうさくてき表現ひょうげんでなければ著作ちょさくぶつにならないので、たんなるアイデアにとどまる場合ばあいや、境界きょうかいせん海岸かいがんせんなどの記載きさいしかない地図ちずのように想定そうていされる表現ひょうげんかぎられるようなものは、そもそも創作そうさくせいくので知的ちてき財産ざいさんけん発生はっせいするかかという問題もんだい自体じたいしょうじないし、ライセンス付与ふよ本来ほんらいありえない)もあるが、著作ちょさくぶつ発明はつめい要件ようけんたしていながら、知的ちてき財産ざいさんけん発生はっせいしない場合ばあい、または発生はっせいした権利けんり消滅しょうめつする場合ばあいとしては、以下いかのようなものがある。

権利けんり発生はっせいしない場合ばあい

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権利けんり取得しゅとく必要ひつよう手続てつづき方式ほうしき不履行ふりこう

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たとえば、特許とっきょけん取得しゅとくにおいて審査しんさ主義しゅぎ採用さいようしているくににおいては、発明はつめい完成かんせいさせたとしても、その発明はつめい産業さんぎょうじょう利用りよう可能かのうせい新規しんきせい進歩しんぽせいといった特許とっきょ要件ようけんについて特許庁とっきょちょうによる審査しんさなければ、特許とっきょけん取得しゅとくできない。

また、著作ちょさくけん取得しゅとくについて方式ほうしき主義しゅぎ採用さいようしているくにベルヌ条約じょうやく加盟かめいまえアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくなど)においては、著作ちょさくぶつ創作そうさくしたとしても、必要ひつよう方式ほうしき著作ちょさくけん表示ひょうじ登録とうろくなど)を履行りこうしなければ、著作ちょさくけん発生はっせいしない。なお、日本にっぽん著作ちょさくけんほう方式ほうしき主義しゅぎ採用さいようしているので、なんらの方式ほうしきをもらず著作ちょさくけん取得しゅとくできる。

そのほう権利けんり付与ふよ否定ひていする場合ばあい

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人間にんげん以外いがい著作ちょさくけんゆうしないと判断はんだんされ、サルのはパブリックドメインにあるとされている。

著作ちょさくぶつ」、「発明はつめい」など、知的ちてき財産ざいさんけん客体かくたいとしての要件ようけんたすが、おも政策せいさくてき理由りゆうによって、ほう権利けんり付与ふよ否定ひていしている場合ばあいがある。

たとえば、くに地方ちほう公共こうきょう団体だんたい創作そうさくした著作ちょさくぶつを、著作ちょさくけん対象たいしょうとしない法制ほうせい多数たすうみられる。たとえば日本にっぽんでは、憲法けんぽうその法令ほうれいくに地方ちほう公共こうきょう団体だんたいはっする通達つうたつ裁判所さいばんしょ判決はんけつなどは、著作ちょさくけん著作ちょさくしゃ人格じんかくけん対象たいしょうにならない(日本国にっぽんこく著作ちょさくけんほう13じょう)。また、イタリアでは、イタリアおよ外国がいこくまたは官公庁かんこうちょう公文書こうぶんしょには著作ちょさくけんほう規定きてい適用てきようしないむね規定きていがある。そのアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく著作ちょさくけんほうでは、連邦れんぽう政府せいふ職員しょくいん職務しょくむじょう作成さくせいした著作ちょさくぶつは、著作ちょさくけん対象たいしょうとならない(17 U.S.C. §105)。もっとも、連邦れんぽう政府せいふ職員しょくいんではないもの著作ちょさくけん連邦れんぽう政府せいふゆずけた場合ばあい連邦れんぽう政府せいふによる著作ちょさくけん保有ほゆう否定ひていされないし(17 U.S.C. §105)、しゅう政府せいふ職員しょくいん職務しょくむじょう作成さくせいした著作ちょさくぶつたいしては、ほう著作ちょさくけん付与ふよ否定ひていしていない。

また、外国がいこくじんによる権利けんり享有きょうゆうみとめない法制ほうせい存在そんざいする場合ばあい当該とうがい外国がいこくじんによる創作そうさくぶつは(当該とうがい法域ほういきないでは)、知的ちてき財産ざいさんけんによる保護ほごけないとえる。たとえば、日本にっぽんでは外国がいこくじん権利けんり享有きょうゆう原則げんそくとしてみとめているが、特別とくべつほうによってそれを制限せいげんすることも容認ようにんしている(民法みんぽう3じょう2こう)。実際じっさいに、特許とっきょほうなどの知的ちてき財産ざいさんけんほうは、外国がいこくじんによる権利けんり享有きょうゆう制限せいげんしている(著作ちょさくけんほう6じょう特許とっきょほう25じょうなど)。もっとも、パリ条約じょうやくなどにおいて、うち国民こくみん待遇たいぐう原則げんそくられているため、これらの条約じょうやく加盟かめいこくあいだにおいては、外国がいこくじんであるというだけの理由りゆうにより知的ちてき財産ざいさんけん享有きょうゆう否定ひていされることはない。つまり、これらの条約じょうやく加盟かめいしていないくにとの関係かんけい問題もんだいになるにぎない。

権利けんり消滅しょうめつ

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保護ほご期間きかん満了まんりょう

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1902ねん映画えいが月世界げっせかい旅行りょこう』は、すで著作ちょさくけん保護ほご期間きかん終了しゅうりょうしている。

知的ちてき創作そうさくぶつ対象たいしょうとする独占どくせん排他はいたけんは、法定ほうてい存続そんぞく期間きかん満了まんりょうにより消滅しょうめつする。たとえば、特許とっきょけん特許とっきょ出願しゅつがんから20ねんをもって消滅しょうめつし、著作ちょさくけん著作ちょさくしゃ死後しご50ねんまたは70ねんをもって消滅しょうめつするものと規定きていするくにおおい(著作ちょさくけん保護ほご期間きかん)。創作そうさく活動かつどう先人せんじん成果せいかうえっていることは否定ひていできないため、創作そうさく一定いってい期間きかん経過けいかした場合ばあい恩恵おんけいけた社会しゃかい発展はってんのために公有こうゆう状態じょうたいくべきとの価値かち判断はんだんによるものである。

承継しょうけいじん存在そんざい

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相続そうぞくじんなく知的ちてき財産ざいさんけん権利けんりしゃ死亡しぼうした場合ばあいにおいて、相続そうぞく財産ざいさん清算せいさんのために相続そうぞく財産ざいさん清算せいさんじんによって著作ちょさくけん譲渡じょうとされなかった場合ばあい、あるいは権利けんりしゃである法人ほうじん解散かいさんした場合ばあいにおいて、その著作ちょさくけん帰属きぞくさせるべきもの存在そんざいしない場合ばあい一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじんおよ一般いっぱん財団ざいだん法人ほうじんかんする法律ほうりつ239じょう3こう該当がいとうする場合ばあいなど)や清算せいさん法人ほうじん財産ざいさん清算せいさんのために清算せいさんじんによって著作ちょさくけん譲渡じょうとがされなかった場合ばあいは、知的ちてき財産ざいさんけん法定ほうてい保護ほご期間きかん満了まんりょうつことなく消滅しょうめつする(著作ちょさくけんほう62じょう1こう、2こう特許とっきょほう76じょう実用じつよう新案しんあんほう意匠いしょうほうでは特許とっきょほう準用じゅんよう)。

民法みんぽうなどの原則げんそくをそのまま適用てきようすれば、知的ちてき財産ざいさんけんはいずれの場合ばあい国庫こっこ帰属きぞくするはずである(民法みんぽう959じょう一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじんおよ一般いっぱん財団ざいだん法人ほうじんかんする法律ほうりつ239じょう3こう)。しかし、著作ちょさくけんほうなど知的ちてき財産ざいさんかんする法律ほうりつでは、知的ちてき所産しょさんでありひろ国民こくみん一般いっぱん利用りようさせるのが適切てきせつとして、特別とくべつ規定きてい権利けんり消滅しょうめつさせることとしている。

相続そうぞくじん存在そんざい場合ばあい特許とっきょけんなどは、相続そうぞくじん捜索そうさく公告こうこく期間きかんない権利けんり主張しゅちょうをするものあらわれなかった場合ばあい権利けんり消滅しょうめつするのにたいし(特許とっきょほう76じょう)、著作ちょさくけんは、それにくわえて特別とくべつ縁故えんこしゃたいする相続そうぞく財産ざいさん分与ぶんよもされなかった場合ばあい民法みんぽう959じょう該当がいとうする場合ばあい)にはじめて権利けんり消滅しょうめつする(著作ちょさくけんほう62じょう)という差異さいがある。

権利けんり放棄ほうき

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原則げんそくとして権利けんり(ただし財産ざいさんけん)を放棄ほうきすることは自由じゆうなので、権利けんりしゃにより権利けんり放棄ほうきされればほうによる保護ほごみとめる必要ひつようせい消滅しょうめつする。

日本にっぽんにおいては、産業さんぎょう財産ざいさんけんほうでは、産業さんぎょう財産ざいさんけん放棄ほうきみとめる規定きてい存在そんざいする(特許とっきょほう97じょう実用じつよう新案しんあんほう26じょう意匠いしょうほう36じょう商標しょうひょうほう35じょうなど)のにたいし、著作ちょさくけんほうには、著作ちょさくけん放棄ほうきできるとする明文めいぶん規定きてい存在そんざいしない。しかし、著作ちょさくけん財産ざいさんけん一種いっしゅであり(著作ちょさくけんほう61じょう、63じょうとう参照さんしょう)、譲渡じょうと可能かのうであるため、放棄ほうきできるとほぐされる。放棄ほうき方式ほうしきについては、放棄ほうき効力こうりょく発生はっせい要件ようけんとしての登録とうろく制度せいど存在そんざいしないことから(著作ちょさくけんほう77じょう)、立法りっぽう担当たんとうしゃからは、著作ちょさくけん放棄ほうき効力こうりょく発生はっせいさせるためには、著作ちょさくけんしゃによる新聞しんぶん広告こうこくそのへの明示めいじてき放棄ほうき意思いし表示ひょうじ必要ひつようであると説明せつめいされている[2]。しかし、このような説明せつめいたいしては、そのようなきびしい要件ようけんする理由りゆう存在そんざいせず、よう証明しょうめい問題もんだいぎないとの批判ひはんもある[3]かりに、権利けんりしゃ意図いとはんして著作ちょさくけん放棄ほうき効果こうかしょうじないと評価ひょうかされた場合ばあい、その著作ちょさくけん消滅しょうめつしたことを信頼しんらいしたものたいして著作ちょさくけん行使こうしすることは、権利けんり濫用らんようまたは信義しんぎ誠実せいじつ原則げんそくはんし、みとめられない場合ばあいもある。

もっとも、権利けんり放棄ほうきすることにより他者たしゃ権利けんりがいすることはできないとほぐされているため、そのような場合ばあいには権利けんり放棄ほうきみとめられない。たとえば、著作ちょさくけんしゃから著作ちょさくぶつ独占どくせんてき利用りよう許諾きょだくているもの存在そんざいする場合ばあいは、著作ちょさくけん放棄ほうきによってだれでも著作ちょさくぶつ利用りようできることになるとすると、許諾きょだくしゃ財産ざいさんてき利益りえきそこなう結果けっかとなるため、放棄ほうきはできないとほぐされる。特許とっきょけん専用せんよう実施じっしけん設定せっていされているような場合ばあい同様どうようである。

なお、ある法域ほういき成立せいりつした知的ちてき財産ざいさんけん効力こうりょく当該とうがい法域ほういきでしかおよばないため(属地ぞくち主義しゅぎ)、知的ちてき財産ざいさんけん処分しょぶん譲渡じょうと放棄ほうきなど)は法域ほういきごとに可能かのうである。したがって、ある法域ほういき知的ちてき財産ざいさんけん放棄ほうきされ知的ちてき財産ざいさんけん消滅しょうめつしても、法域ほういきにおいて消滅しょうめつしているとはれず、もっぱ放棄ほうき当時とうじ著作ちょさくけんしゃ意思いしもとづき判断はんだんせざるをないし、おな対象たいしょうにつき法域ほういきにより権利けんりしゃことなる場合ばあいは、放棄ほうき効力こうりょく当然とうぜん法域ほういきおよぶわけではない。

以上いじょう財産ざいさんけんとしての知的ちてき財産ざいさんけん放棄ほうき可能かのうであるのが原則げんそくであるが、ドイツ著作ちょさくけんほうしたでは著作ちょさくけん放棄ほうきはできないものと理解りかいされている。ドイツにおける Urheberrecht という概念がいねん著作ちょさくけんやくされることがおおいが、実際じっさいには日本にっぽんほう著作ちょさくしゃ権利けんり相当そうとうする)は、財産ざいさんてき権利けんり人格じんかくてき権利けんり一体いったいをなす概念がいねんとして理解りかいされており、そのような権利けんり他人たにん譲渡じょうとすることはできないためである(ドイツ著作ちょさくけんほう29じょう1こう)。そのため、著作ちょさくけん放棄ほうきされた場合ばあいは、特定とくてい多数たすうものたいして著作ちょさくぶつ利用りようけん設定せっていした状態じょうたい理解りかいされることになる。

著作ちょさくけんほう特有とくゆう問題もんだい

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パブリックドメインにかえした著作ちょさくぶつであることを表示ひょうじするためにしばしば使用しようされるマークである。万国ばんこく著作ちょさくけん条約じょうやく3じょうもとづく著作ちょさくけんマーク(©)に斜線しゃせんいたものであるが、国際こくさい条約じょうやく法律ほうりつもとづく効力こうりょくはない。

著作ちょさくしゃ人格じんかくけんとの関係かんけい

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財産ざいさんけんとしての著作ちょさくけんのほか、ベルヌ条約じょうやくおおくのくに著作ちょさくけんほうにより人格じんかくけんとしての著作ちょさくしゃ人格じんかくけん保護ほごされている。そのため、著作ちょさくぶつについてパブリックドメインとえるためには著作ちょさくしゃ人格じんかくけん消滅しょうめつしていることも必要ひつようではないかとの議論ぎろんをするものもいる[だれ?]

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく著作ちょさくけんほうには、一定いってい範囲はんい視覚しかく芸術げいじゅつ著作ちょさくぶつのぞ著作ちょさくしゃ人格じんかくけん保護ほごするむね規定きてい存在そんざいしない。これにたいし、くにではベルヌ条約じょうやく要請ようせいもあり著作ちょさくけんとはべつ著作ちょさくしゃ人格じんかくけん制度せいど著作ちょさくけんほうんでいる。著作ちょさくしゃ人格じんかくけんについてはその放棄ほうきみとめているくにもあるが、日本にっぽんにおいては、反対はんたいせつもあるものの放棄ほうきはできないと伝統でんとうてきほぐされている(人格じんかくにかかわる権利けんりであるため)。そのため、日本にっぽんにおいては著作ちょさくけん放棄ほうきしただけでは著作ちょさくぶつ厳密げんみつにはパブリックドメインの状態じょうたいになったとはえないとの誤解ごかいもとづく。

しかし、アメリカにおいても、著作ちょさくしゃ人格じんかくけんは、伝統でんとうてき著作ちょさくけんほうもとづく権利けんりとは理解りかいされていなかっただけであり、同一どういつせい保持ほじけん氏名しめい表示ひょうじけん不正ふせい競争きょうそう防止ぼうしほう [よう曖昧あいまい回避かいひ]不正ふせい表示ひょうじ禁止きんしかんする規定きていなどにより実質じっしつてき保護ほごされているなど、コモン・ローにより人格じんかくけん保護ほごされているという説明せつめいがされている[4]。つまり、著作ちょさくしゃ人格じんかくけんという呼称こしょうあたえられている権利けんりが、著作ちょさくけん法制ほうせいわくないにあるかかという問題もんだいぎない。したがって、著作ちょさくしゃ人格じんかくけん問題もんだいはパブリックドメインという概念がいねんれるかかとはべつ問題もんだいである。ただし、ドイツでは著作ちょさくけん放棄ほうきができないがゆえに、ドイツほうでは著作ちょさくけん放棄ほうきもとづくパブリックドメインの状態じょうたいりたないのは、前述ぜんじゅつのとおりである。

しかし、日本にっぽんにおいては著作ちょさくしゃ人格じんかくけん相続そうぞく否定ひていされるものの(民法みんぽう896じょう但書ただしがき)、ほう一定いってい範囲はんい遺族いぞく遺言ゆいごん指定していされたものたいして故人こじん人格じんかくてき利益りえき請求せいきゅうけんゆうすることをみとめている(著作ちょさくけんほう116じょう)。さらには、著作ちょさくけん保護ほご期間きかん経過けいかしかつ遺族いぞく遺言ゆいごん指定していしたもの存在そんざいしなくなった場合ばあいでも、著作ちょさくしゃそんしているとすればその著作ちょさくしゃ人格じんかくけん侵害しんがいとなるべき行為こういをしてはならず(著作ちょさくけんほう60じょう)、違反いはんしゃたいする罰則ばっそくもあるが(著作ちょさくけんほう120じょう)、それをもって著作ちょさくぶつがパブリックドメインの状態じょうたいにはないという議論ぎろんはされていない[よう出典しゅってん]

しかし、日本にっぽんほうでは著作ちょさくしゃ人格じんかくけん制度せいどがあるから著作ちょさくけん放棄ほうきもとづくパブリックドメインはありないとの議論ぎろんは、後述こうじゅつパブリックドメインソフトウェア日本にっぽん存在そんざいるかという問題もんだい関連かんれんして、アメリカのほう制度せいど理解りかいしていないプログラマーとその周辺しゅうへん問題もんだいになったことがほとんどであり、知的ちてき財産ざいさんけん専門せんもんあいだではそのような問題もんだい自体じたい議論ぎろんされていない[よう出典しゅってん]

パブリックドメインと区別くべつされるべきもの

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日本にっぽんにおいては、1990年代ねんだい以前いぜんのいわゆるパソコン通信つうしんにおいて、ネットワークつうじて配布はいふされる(オンラインソフトウェア無料むりょうのソフトウェアをPDS (Public Domain Software) とんでいたことなどがあった。しかし、その実態じったいとしては、たん著作ちょさくぶつ利用りようかんして著作ちょさくけん行使こうししないことのみをもってパブリックドメインであると宣言せんげんしたり、著作ちょさくけん表示ひょうじおこないつつもパブリックドメインであるむね宣言せんげんをしている場合ばあいおおかった[よう出典しゅってん]。この場合ばあいは、厳密げんみつには著作ちょさくけん自体じたい存続そんぞくしており(パブリックドメインというかたり用法ようほう間違まちがえているにぎないため)、たん著作ちょさくけん行使こうしひかえるむね宣言せんげんにとどまるので、権利けんり放棄ほうきともな著作ちょさくけん消滅しょうめつがあったことにはならない。

また、日本にっぽん著作ちょさくけんほうしたでは、くに機関きかんなどが一般いっぱん周知しゅうちさせることを目的もくてきとして作成さくせいした広報こうほう資料しりょうなどは刊行かんこうぶつへの転載てんさい可能かのうであり(著作ちょさくけんほう32じょう2こう本文ほんぶん)、それゆえにパブリックドメインであるという誤解ごかいがされることがある[よう出典しゅってん]。しかし、許諾きょだくなしにみとめられるのは「転載てんさい」や転載てんさいのための「翻訳ほんやく」(著作ちょさくけんほう43じょう2ごう)だけであり、翻訳ほんやくのぞ翻案ほんあんについては許諾きょだく必要ひつようなので、著作ちょさくけん保護ほご対象たいしょうである。したがって、パブリックドメイン(=著作ちょさくけん存在そんざいしない)であるとはえない。

標示ひょうじ

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権利けんりしゃとして作品さくひんをパブリックドメインにきたい著作ちょさくしゃや、すでにパブリックドメインとなっている作品さくひんにそのむね標記ひょうきしたい場合ばあいがある。しかしながら前述ぜんじゅつのように解釈かいしゃく問題もんだい数多かずおおいため、実行じっこうかべたかい。クリエイティブ・コモンズ万国ばんこく共通きょうつうの「CC0」と「PDM」を提供ていきょうして、この障壁しょうへき低減ていげんはかっている。

問題もんだい

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著作ちょさくけんれパブリックドメインしたにもかかわらず、もと権利けんりしゃ権利けんり主張しゅちょうしたり、利用りようしゃがわが「許諾きょだく」をたり支払しはら必要ひつようのない使用しようりょう支払しはられい存在そんざいするとして、福井ふくい健策けんさく弁護士べんごし問題もんだい提起ていきしている[5]

活用かつよう事例じれい

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著作ちょさくぶつ

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著作ちょさくけん消滅しょうめつした著作ちょさくぶつ活用かつよう事例じれいとして、電子でんし図書館としょかんにおける著作ちょさくぶつ収集しゅうしゅう活動かつどうげられる。近年きんねん情報じょうほう技術ぎじゅつ発達はったつインターネット普及ふきゅうけて、著作ちょさくぶつをデジタルし、インターネットかいしてだれでも閲覧えつらんすることを可能かのうとするものがおおい。しかし、著作ちょさくけん保護ほご期間きかん延長えんちょうするほう改正かいせい各国かっこく相次あいついでいることから、その存続そんぞくあやぶまれているものも存在そんざいする。また、格安かくやすDVDソフトの製造せいぞう販売はんばいのように、著作ちょさくけん消滅しょうめつしても依然いぜんとして経済けいざいてき価値かちゆうする著作ちょさくぶつ映画えいが著作ちょさくぶつなど)の流通りゅうつうによって、収益しゅうえきはかろうとする事業じぎょう存在そんざいする。

青空あおぞら文庫ぶんこ
著作ちょさくけん消滅しょうめつした文学ぶんがく作品さくひん収集しゅうしゅう公開こうかいしているインターネットじょう電子でんし図書館としょかんである。1997ねん著述ちょじゅつ富田とみたりんせい開設かいせつした。
プロジェクト・グーテンベルク
青空あおぞら文庫ぶんこ同様どうように、著作ちょさくけん消滅しょうめつした文書ぶんしょ電子でんしし、インターネットじょう公開こうかいしようとする計画けいかくである。1971ねんマイケル・S・ハート開設かいせつした。最近さいきんでは著作ちょさくけん保護ほご期間きかん延長えんちょうするほう改正かいせい各国かっこく相次あいつぎ、オーストラリアはじ事実じじつじょう活動かつどう停止ていし大幅おおはば活動かつどう規模きぼ縮小しゅくしょういられる事例じれい相次あいついでいる。
国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんデジタルコレクション
戦前せんぜん書籍しょせき中心ちゅうしん蔵書ぞうしょをデジタル公開こうかいしている。
ウィキソース
著作ちょさくけん消滅しょうめつした著作ちょさくぶつおよびフリーライセンスのもとにある著作ちょさくぶつ集積しゅうせきし、公開こうかいするためのプロジェクトである。アメリカのウィキメディア財団ざいだん運営うんえいしている。2003ねん開設かいせつされた。ウィキクォート参照さんしょう
格安かくやすDVDソフト
ファンタジア』(1940ねん)、『ローマの休日きゅうじつ』(1953ねん)など、著作ちょさくけん消滅しょうめつした映画えいが格安かくやすDVDソフトとして販売はんばいする事例じれいがある。権利けんりしゃにライセンスりょう支払しはら必要ひつようがないため、著作ちょさくけん存続そんぞくしている映画えいがのDVDソフトと比較ひかくして、販売はんばい価格かかくは1〜2わり程度ていどおさえられている。

意匠いしょう

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ジェネリックプロダクト
意匠いしょうけん消滅しょうめつした家具かぐなどを複製ふくせいしたレプリカひん

技術ぎじゅつ

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特許とっきょれた医薬品いやくひん複数ふくすう会社かいしゃから後発こうはつ医薬品いやくひんとして販売はんばいされることで価格かかく低下ていかする。

特許とっきょけん消滅しょうめつ普及ふきゅうした工業こうぎょう技術ぎじゅつとしてフェネストロンなどがある。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 日本にっぽん法令ほうれいじょう地方ちほう公共こうきょう団体だんたい所有しょゆうする財産ざいさんのことを公有こうゆう財産ざいさんということもあり、訳語やくごとして適切てきせつではないという意見いけんがある。

出典しゅってん

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  1. ^ 文化ぶんか審議しんぎかい著作ちょさくけん分科ぶんかかい (2008ねん10がつ1にち). “過去かこ著作ちょさくぶつなどの保護ほご利用りようかんするしょう委員いいんかい ちゅうあいだ整理せいり” (PDF). e-Gov. デジタルちょう. p. 55. 2023ねん2がつ25にち閲覧えつらん
  2. ^ 戸守ともりゆき著作ちょさくけんほう逐条ちくじょう講義こうぎてい新版しんぱん)』(著作ちょさくけん情報じょうほうセンター、2006ねん)、377ぺーじ
  3. ^ 中山なかやま信弘のぶひろ著作ちょさくけんほう』(有斐閣ゆうひかく、2007ねん)、349ぺーじ
  4. ^ 山本やまもと隆司たかし『アメリカ著作ちょさくけんほう基礎きそ知識ちしき』(2004 太田出版おおたしゅっぱん ISBN 4872338316)120ぺーじ以下いか
  5. ^ [1]擬似ぎじ著作ちょさくけん: ピーターラビット、おまえ永遠えいえんいのちをあげよう 福井ふくい健策けんさく|コラム | 骨董こっとうどお法律ほうりつ事務所じむしょ For the Arts

関連かんれん項目こうもく

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