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ななつの大罪だいざい

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヒエロニムス・ボスななつの大罪だいざいよんおわり』。1485ねんごろプラド美術館びじゅつかん所蔵しょぞう

ななつの大罪だいざい(ななつのたいざい、ラテン語らてんご: septem peccata mortaliaえい: seven deadly sins)は、キリスト教きりすときょう西方せいほう教会きょうかい、おもにカトリック教会きょうかいにおける用語ようごラテン語らてんご英語えいごでの意味いみは「ななつのいたつみ」だが、つみそのものというより、人間にんげんつみみちび可能かのうせいがあると做されてきた欲望よくぼう感情かんじょうのことをすもので、日本にっぽんのカトリック教会きょうかいではななつのつみげん(ななつのざいげん)とやくしている[1]

歴史れきし

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ななつの大罪だいざいななつのつみげん)は、4世紀せいきエジプト修道しゅうどうエヴァグリオス・ポンティコス著作ちょさく修行しゅぎょうろん』にやっつの「人間にんげん一般いっぱん想念そうねん」としてあらわれたのが起源きげんである。キリストきょうせいてんである聖書せいしょなかななつのつみげんについて直接ちょくせつ言及げんきゅうされてはいない。やっつの想念そうねんはエヴァグリオスによると、下記かきのとおりである[2]

  • 貪食どんしょく
  • 淫蕩いんとう
  • 金銭きんせんよく
  • 悲嘆ひたん心痛しんつう)」
  • いかり」
  • 「アケーディア(嫌気いやけ霊的れいてき怠惰たいだ)」
  • 虚栄きょえいこころ自惚うぬぼれ)」
  • 傲慢ごうまん

それを5世紀せいきはじめ(420ねんごろ-430ねんごろ)にカッシヌアスが「やっつの主要しゅよう悪徳あくとく」としてラテン語らてんご世界せかいつたえた。一覧いちらんよん番目ばんめ番目ばんめわり、順序じゅんじょが<1>貪食どんしょく、<2>淫蕩いんとう、<3>金銭きんせんほっ強欲ごうよく)、<4>いかり、<5>かなしみ、<6>倦怠けんたい、<7>虚栄きょえい、<8>高慢こうまん、となった[3]

6世紀せいき後半こうはんには、グレゴリウス1せい(540ねんごろ-604ねん)がそのうちの「高慢こうまん」をすべてのあくとして別格べっかくあつかいとし一覧いちらんからはずし、高慢こうまんからまれる「ななつの主要しゅよう悪徳あくとく」としてつぎのものをげた。<1>虚栄きょえい、<2>嫉妬しっと、<3>いかり、<4>悲嘆ひたん、<5>強欲ごうよく、<6>はら貪食どんしょく、<7>淫蕩いんとう、である。カッシアヌスのつたえた一覧いちらんの「怠惰たいだ(アケーディア)」は「悲嘆ひたん」にふくめてまとめられ、あらたに「嫉妬しっと」がくわわった。順序じゅんじょは「虚栄きょえい」が先頭せんとう移動いどうし、つぎに「嫉妬しっと」がくわわり、「貪食どんしょく」、「淫蕩いんとう」が最初さいしょから最後さいご移動いどうした。グレゴリウスの一覧いちらんは、精神せいしんてきなものがまえに、身体しんたいてき物質ぶっしつてき悪徳あくとくうしろにならんでいるのが特徴とくちょうである。[3]

13世紀せいきトマス・アクィナス(1225ねん-1274ねん)も、その著作ちょさくなかで、キリスト教徒きりすときょうとななつの枢要すうようとく対比たいひするかたちななつの「枢要すうようわる」をあげている。<1>虚栄きょえい(inanis gloria)<2>嫉妬しっと(invidia)<3>倦怠けんたい(acedia)<4>いかり(ira)<5>強欲ごうよく(avaritia)<6>貪食どんしょく(gula)<7>淫蕩いんとう(luxuria)となっており、グレゴリウスがはずした怠惰たいだ(アケーディア)が悲嘆ひたんわって復活ふっかつしている[3]

カトリック教会きょうかいななつのつみげん

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現代げんだいの『カトリック教会きょうかいのカテキズム』では、「ななつのつみげん」について、ヨハネス・カッシアヌス英語えいご: Johannes Cassianusグレゴリウス1せい以来いらい伝統でんとうてきつみみなもととみなされてきたものとして言及げんきゅうされている。それは以下いかななつである[4]

ななつの掲載けいさいじゅんは、『カトリック教会きょうかいのカテキズム』のラテン語らてんご規範きはんばん[5]日本語にほんごばん(2002ねん[4]一部いちぶことなるが、ここではラテン語らてんご規範きはんばんおよび『カトリック教会きょうかいのカテキズム 要約ようやく(コンペンディウム)』日本語にほんごばん(2010ねん[1]かれている順番じゅんばんによる。教会きょうかいのカテキズム 要約ようやく(コンペンディウム)』日本語にほんごばん(2010ねん)では訳語やくごことなるものがあるが[1]、ここではそれを()ない付記ふきする。

日本語にほんご ラテン語らてんご 英語えいご[6]
傲慢ごうまん superbia pride
強欲ごうよく avaritia greed
嫉妬しっと invidia envy[ちゅう 1]
憤怒ふんぬ ira wrath
色欲しきよく luxuria lust
暴食ぼうしょく gula gluttony
怠惰たいだ pigritia/acedia sloth

中世ちゅうせいキリスト教きりすときょう世界せかいかんもっともよくあらわされているダンテ・アリギエーリ叙事詩じょじし、『かみきょく煉獄れんごくへんにおいても、煉獄れんごくやまななつのかんむりにおいて、死者ししゃがこのつみきよめることになっている(煉獄れんごくへん参照さんしょう)。

ななつの大罪だいざい関連かんれん

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1589ねんドイツペーター・ビンスフェルト英語えいご: Peter Binsfeldは、つみ悪魔あくま関係かんけいしるした著作ちょさくあらわしたが、そのなかで、ななつの大罪だいざい特定とくてい悪魔あくまとの関連付かんれんづけている。このようなななつの大罪だいざい悪魔あくまとの関連かんれんづけは、キリストきょう本質ほんしつてき部分ぶぶん無関係むかんけいだが、通俗つうぞくてきグリモワールにおいて引用いんようされることとなった。

ななつの大罪だいざい悪魔あくま関連かんれん最初さいしょ表現ひょうげんしたのは、16世紀せいき版画はんがハンス・ブルクマイアーである。これには、悪魔あくまがそれぞれ自分じぶんしるされたリボンをにしている姿すがたえがかれていた。また、ブルクマイアーは傲慢ごうまんあらわ悪魔あくま孔雀くじゃくはねあたえている。中世ちゅうせいには悪魔あくまでなく動物どうぶつ姿すがたあらわしているものもられる。傲慢ごうまん獅子しし嫉妬しっとへび憤怒ふんぬのユニコーン、怠惰たいだくま強欲ごうよくきつね暴食ぼうしょくぶた欲情よくじょうさそりである[7]

ななつの大罪だいざいとそれに比肩ひけんする悪魔あくままぼろしじゅう動物どうぶつ
大罪だいざい 対応たいおう悪魔あくま まぼろしじゅう 動物どうぶつ
傲慢ごうまん ルシファー[ちゅう 2] グリフォン[よう出典しゅってん] 獅子しし孔雀くじゃく[7]ふくろう蝙蝠かわほりペンギン
憤怒ふんぬ サタン オーガ[よう出典しゅってん]ユニコーン[7]ドラゴン おおかみさるいたち
嫉妬しっと レヴィアタン(リヴァイアサン) マーメイド[よう出典しゅってん] へび[7]いぬねこ土竜むぐらもち蜻蛉とんぼ
怠惰たいだ ベルフェゴール[ちゅう 3] フェニックス[よう出典しゅってん] くま[7]うし驢馬ろばナマケモノ蝸牛かぎゅう
強欲ごうよく マモン ゴブリン[よう出典しゅってん] きつね[7]たぬき針鼠はりねずみがらす蜘蛛くも
暴食ぼうしょく ベルゼブブ ケルベロス[よう出典しゅってん] ぶた[7]とらリスわにはえ
色欲しきよく アスモデウス サキュバス[よう出典しゅってん]インキュバス 山羊やぎさそり[7]うさぎにわとり

プルデンティウス(348‐405以後いご)の「プシュコマキア英語えいご: Psychomachia」によれば、ななつの大罪だいざいは、それぞれ美徳びとく対応たいおうしているという。

あたらしいななつの大罪だいざい

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2008ねん3月、ローマ教皇きょうこうちょうは、いままでの7つの大罪だいざいはやや個人こじん主義しゅぎてき側面そくめんがあったため、これまでとはちが種類しゅるい大罪だいざいもあるということを信者しんじゃたちにつたえ、理解りかいさせるために以下いかのようにあたらしいななつの大罪だいざい発表はっぴょうした[8]

遺伝子いでんし改造かいぞうなどは、はいせいみき細胞さいぼうへの牽制けんせいとみられる[9]

ななつの社会しゃかいてきざい

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マハトマ・ガンディー1925ねん10月22にち雑誌ざっしヤング・インディア英語えいごばん』にて、「ななつの社会しゃかいてきざい」(Seven Social Sins)としてつぎななつを指摘してきした[10]

  • 理念りねんなき政治せいじ(Politics without Principle)
  • 労働ろうどうなきとみ(Wealth without Work)
  • 良心りょうしんなき快楽かいらく(Pleasure without Conscience)
  • 人格じんかくなき学識がくしき(Knowledge without Character)
  • 道徳どうとくなき商業しょうぎょう(Commerce without Morality)
  • 人間にんげんせいなき科学かがく(Science without Humanity)
  • 献身けんしんなき信仰しんこう(Worship without Sacrifice)

ななつの社会しゃかいてきざい」はインドラージ・ガートにあるガンディーの慰霊いれい外壁がいへきにもきざまれている。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ ななつの大罪だいざいにおいて、そのもと言葉ことばはいくつかの日本語にほんご翻訳ほんやくすることができるが、そのいちれいとしてenvyがげられる。envyは「羨望せんぼう嫉妬しっとうらやみ、ねたみ」とう翻訳ほんやくすることができる。それらは心理しんりがく領域りょういきでは嫉妬しっと(jealousy)と羨望せんぼう(envy)という近似きんじした、しかしことなる感情かんじょうとして議論ぎろんされることがあるが、ななつの大罪だいざいななつのつみげん)における元々もともと言葉ことばはenvy(ラテン語らてんごのinvidia)ひとつであり、そうした議論ぎろんとは無縁むえんであるてん注意ちゅうい必要ひつようである。
  2. ^ 傲慢ごうまんベリアルとするせつがある。
  3. ^ 怠惰たいだアスタロスとするせつがある。

出典しゅってん

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  1. ^ a b c 『カトリック教会きょうかいのカテキズム 要約ようやく(コンペンディウム)』207ぺーじ カトリック中央ちゅうおう協議きょうぎかい ISBN 978-4877501532
  2. ^ 中世ちゅうせい思想しそう原典げんてん集成しゅうせい3 後期こうきギリシャ教父きょうふ・ビザンティン思想しそう』p.38
  3. ^ a b c 倦怠けんたいかなしみ-トマス・アクィナスのacediaについて松根おうね伸治しんじ、2018ねん10がつ10日とおか閲覧えつらん
  4. ^ a b カトリック教会きょうかいのカテキズム』 #1866(日本語にほんごばん556 - 557ぺーじ) カトリック中央ちゅうおう協議きょうぎかい ISBN 978-4877501013
  5. ^ Catechismus Catholicae Ecclesiae_Articulus 8: Peccatum #1866(『カトリック教会きょうかいのカテキズム』ラテン語らてんご規範きはんばんローマ教皇きょうこうちょう公式こうしきサイト
  6. ^ Catechism of the Catholic Church_Article 8 SIN_V. The Proliferation of Sin #1866(『カトリック教会きょうかいのカテキズム』英語えいごばん) ローマ教皇きょうこうちょう公式こうしきサイト
  7. ^ a b c d e f g h フレッド・ゲティングズ しる大瀧おおたき啓裕けいすけ やく悪魔あくま辞典じてん青土おうづちしゃ、1992ねん6がつ30にち、288-289ぺーじ 
  8. ^ バチカンがあたらしい「7つの大罪だいざい」を発表はっぴょう、リサイクルしないもの地獄じごくきに Gigazine 2008ねん03がつ11にち
  9. ^ Recycle or go to Hell, warns Vatican”. 2014ねん10がつ30にち閲覧えつらん
  10. ^ ガンジーのう「ここのつの社会しゃかいてきざい(Nine Social Sins)」とは?”. 2014ねん2がつ2にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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