アフガニスタン紛争ふんそう (2001年ねん-2021年ねん)

対たいテロ戦争せんそう > アフガニスタン紛争ふんそう (2001年ねん-2021年ねん)

アフガニスタン紛争ふんそう（パシュトー語ご: د افغانستان کورنۍ جګړه‎）とは、2001年ねんから2021年ねんにかけてアフガニスタンで勃発ぼっぱつした紛争ふんそうである。 この紛争ふんそう、または戦争せんそうではアメリカ軍ぐんやそれに支援しえんされたアフガニスタン・イスラム共和きょうわ国こく新しん政府せいふと、ターリバーンやアルカーイダなどの武装ぶそう勢力せいりょくが争あらそった。

アフガニスタン紛争ふんそう
ターリバーンが潜伏せんぷくしていると考かんがえられるアフガニスタン東部とうぶの洞窟どうくつに空爆くうばくを行おこなうアメリカ空軍くうぐんのF-15E戦闘せんとう爆撃ばくげき機き 同国どうこく東部とうぶのクナル州しゅうでターリバーンと銃撃じゅうげき戦せんを展開てんかいするアメリカ陸軍りくぐんの部隊ぶたい 同国どうこく東部とうぶのパルヴァーン州しゅうゴルバンド地区ちくの山間さんかん部ぶの渓谷けいこくを偵察ていさつするアフガニスタン新しん政府せいふ陸軍りくぐんの兵士へいし トル・シェザダ作戦さくせん中なかにCH-47ヘリコプターに乗のり込こむイギリス陸軍りくぐんの兵士へいしたち 訓練くんれん任務にんむの一環いっかんとしてハンヴィーに乗のって測量そくりょうを行おこなうアフガニスタン新しん政府せいふ軍ぐんの兵士へいし カーブル陥落かんらくで同国どうこくの首都しゅとカブールを陥落かんらくさせ制圧せいあつするハンヴィーに乗のったターリバーンの戦士せんしたち。
戦争せんそう：アフガニスタン紛争ふんそう／対たいテロ戦争せんそう
年月日ねんがっぴ：2001年ねん10月7日にち － 2021年ねん8月がつ31日にち
場所ばしょ：アフガニスタン全土ぜんど、同国どうこく南部なんぶ・東部とうぶのパキスタンとの国境こっきょう地帯ちたい周辺しゅうへん等とう。また、インド洋いんどよう上うえでは海上かいじょう阻止そし行動こうどうを実施じっし。
結果けっか：ターリバーン側がわの勝利しょうり。開戦かいせん当初とうしょは米べい英軍えいぐんや北部ほくぶ同盟どうめいが勝利しょうりし、アフガニスタンのターリバーン政権せいけんは崩壊ほうかいし全面ぜんめん降伏ごうぶく・組織そしき壊滅かいめつに追おい込こまれた。またアルカーイダの指導しどう者しゃウサーマ・ビン・ラーディンも米べい軍ぐんによって発見はっけんされ殺害さつがいされた。そしてアフガニスタンでは国連こくれん等ひとしの支援しえんを受うけて民主みんしゅ化かが行おこなわれ、暫定ざんてい政府せいふが成立せいりつし新しん政府せいふに移行いこうしたが、その一方いっぽうで米べい英軍えいぐんは国際こくさい治安ちあん支援しえん部隊ぶたいと名なを変かえて駐留ちゅうりゅう・占領せんりょうを続つづけた。しかしその後ご同国どうこくの治安ちあんは極端きょくたんに悪化あっかし、戦闘せんとうも終結しゅうけつせず泥沼どろぬま化かした。その後ごも一向いっこうに戦闘せんとうが収おさまらなかったためアメリカとターリバーンはドーハ合意ごういを締結ていけつし停戦ていせん。米べい軍ぐんや多た国籍こくせき軍ぐんはアフガニスタンから完全かんぜん撤退てったいした。しかしその後ごも戦闘せんとうは続つづき、ターリバーンはアフガニスタン軍ぐんに対たいして大だい攻勢こうせいをかけ、最終さいしゅう的てきに同国どうこくの首都しゅとカーブルを制圧せいあつし陥落かんらくさせ、アフガニスタンは政権せいけん崩壊ほうかい。ターリバーンが政権せいけんを掌握しょうあくし、勝利しょうり宣言せんげんを行おこなった。
交戦こうせん勢力せいりょく
アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく イギリス カナダ オーストラリア イタリア ニュージーランド イラン ドイツ フランス 北部ほくぶ同盟どうめい アフガニスタン 北大西洋きたたいせいよう条約じょうやく機構きこう ISAF RSM	アフガニスタン ターリバーン アルカーイダ
指導しどう者しゃ・指揮しき官かん
ジョージ・W・ブッシュ バラク・オバマ ドナルド・トランプ ジョー・バイデン トニー・ブレア ゴードン・ブラウン デーヴィッド・キャメロン テリーザ・メイ ボリス・ジョンソン ジャン・クレティエン ポール・マーティン スティーヴン・ハーパー ジャスティン・トルドー ジョン・ハワード ケビン・ラッド ジュリア・ギラード トニー・アボット マルコム・ターンブル スコット・モリソン シルヴィオ・ベルルスコーニ ロマーノ・プローディ マリオ・モンティ エンリコ・レッタ マッテオ・レンツィ パオロ・ジェンティローニ ジュゼッペ・コンテ マリオ・ドラギ ヘレン・クラーク ジョン・キー ビル・イングリッシュ ジャシンダ・アーダーン ゲアハルト・シュレーダー アンゲラ・メルケル ブルハーヌッディーン・ラッバーニー ハーミド・カルザイ アシュラフ・ガニー アムルッラー・サーレハ	ムハンマド・オマル アブドゥル・ガニ・バラダル アフタル・ムハンマド・マンスール ハイバトゥラー・アクンザダ シラジュディン・ハッカーニ ムハンマド・ヤクーブ アブドゥル・ガニ・バラダル ウサーマ・ビン・ラーディン アイマン・ザワーヒリー
戦力せんりょく
開戦かいせん時じ アメリカ軍ぐん3,000人にん 占領せんりょう時じ ISAF総そう兵員へいいん102,052人にん うち米まい軍ぐん68,000人にん 後のちに米べい軍ぐん30,000人にん増派ぞうは NATO軍ぐん7,000人にん増派ぞうは アフガニスタン軍ぐん 総そう兵力へいりょく181,000人にん 陸軍りくぐん174,000人にん 空軍くうぐん7,000人にん	開戦かいせん時じ ターリバーン約やく30,000人にん 別べつ説せつ50,000人にん－60,000人にん アルカーイダ3,000人にん－5,000人にん前後ぜんこう 占領せんりょう時じ ターリバーン戦闘せんとう員いん58,000人にん－100,000人にん アルカーイダ戦闘せんとう員いん数すう十じゅう－500人にん
損害そんがい
アメリカ軍ぐん2,448人にん戦死せんし アフガニスタン軍ぐん66,000人にん戦死せんし 民間みんかん人じん47,245人にん犠牲ぎせい	ターリバーン51,191人にん戦死せんし
アフガニスタン紛争ふんそう (2001年ねん-2021年ねん) リスト 不朽ふきゅうの自由じゆう クレセント・ウィンド アフガン侵攻しんこう ライノー マザーリシャリーフ クンドゥーズ1 へラート タリバン政権せいけん崩壊ほうかい タリン・コート カンダハール カラーイバシール トラボラ アナコンダ タクル・ガー ジャカナ作戦さくせん マウンテン・バイパー マウンテン・リゾルブ アズベリーパーク レッド・ウィング パース作戦さくせん ラシュカガル マウンテン・スラスト ヘルマンド州しゅう (サンギン) (ナウザッド) (アキレス) (ピックアックス＝ハンドル) (ムサカラ) (ガルムシール) (イーグルス・サミット) (レッドダガー) (ディーゼル) (パンサーズ・クロー) (ストライク・オブ・ザ・ソード) カイカ パンジュワイ メデューサ マウンテン・フューリー ファルコン・サミット フーバー カミン チョーラ ハンマー アナコンダ前線ぜんせん拠点きょてん ナスラット ハレカト・ヨロ カレーズ ゴラプライ サルポサ刑務所けいむしょ アルガンダブ ワナト オカブ作戦さくせん カカラク シーワン チヌーク撃墜げきつい ウズビン バラムルガブ シャーヒタンダル アルザイ チャハルダラ ダヘイナ カムデッシュ 自由じゆうの番人ばんにん クンドゥーズ2 クンドゥーズ3 カブールテロ事件じけん クンドゥーズ4 病院びょういん誤爆ごばく 2021年ねんターリバーン攻勢こうせい ドーハ合意ごうい カンダハール ザランジュ カーブル陥落かんらく

結果けっかとして、一時いちじ的てきには米こめ英軍えいぐんと北部ほくぶ同盟どうめいが勝利しょうりし、アフガニスタンのターリバーン政権せいけんは崩壊ほうかいして降伏ごうぶくし、また、アメリカ同時どうじ多発たはつテロ事件じけんを起おこした被疑ひぎ者しゃで行方ゆくえ不明ふめいとなっていたアルカーイダのウサーマ・ビン・ラーディンはその後ご米べい軍ぐんにより発見はっけんされ、殺害さつがいされた。
また、ターリバーン政権せいけん崩壊ほうかい後ごの同国どうこくでは、ボン合意ごういに基もとづき国連こくれん主導しゅどうでの国くにづくりや復興ふっこう、民主みんしゅ化かが行おこなわれ、暫定ざんてい政権せいけんから新しん政府せいふが成立せいりつした。

しかしその後ご、同国どうこくの治安ちあんは極端きょくたんに悪化あっかし、ターリバーンによる攻撃こうげきが続つづいたため、アメリカとターリバーンの和平わへい合意ごういであるドーハ合意ごういが締結ていけつされ、米べい軍ぐんは撤退てったい。その後ごターリバーンは大だい攻勢こうせいをかけ、首都しゅとカーブルを陥落かんらくさせ、ガニー政権せいけんは崩壊ほうかい。ターリバーンが政権せいけんを掌握しょうあくした事ことで終結しゅうけつした。

この紛争ふんそうは、ベトナム戦争せんそう（1955年ねん - 1975年ねん）を約やく5か月げつ上回うわまわり、米国べいこく軍事ぐんじ史し上うえ最長さいちょうの戦争せんそうとなった。

概要がいよう

要約ようやく

反米はんべいテロを繰くり返かえすアルカーイダの活動かつどう拠点きょてんの破壊はかいと、アルカーイダの庇護ひご者しゃとみなされたターリバーン政権せいけんの転覆てんぷくを試こころみる米国べいこくと同盟どうめい国こくがアフガニスタンに侵攻しんこうしたことで始はじまった。当初とうしょの目的もくてきが達成たっせいされた後のち、NATO加盟かめい国こくを含ふくむ40カ国かこく以上いじょうの連合れんごう国こくは、国際こくさい治安ちあん支援しえん部隊ぶたい（ISAF）と呼よばれる安全あんぜん保障ほしょうミッションを同国どうこくに編成へんせいし、そのうちの一部いちぶはアフガニスタン政府せいふと同盟どうめいして戦闘せんとうに参加さんかした。紛争ふんそうは主おもに多た国籍こくせき軍ぐんと共和きょうわ国軍こくぐんが旧きゅう支配しはい勢力せいりょくとなったターリバーンと戦たたかうもので、ISAF/RSの兵士へいしや人員じんいんの大半たいはんはアメリカ人じんである。この紛争ふんそうのコードネームは、米国べいこくでは「不朽ふきゅうの自由じゆう作戦さくせん」（2001年ねん〜14年ねん）、「自由じゆうの番人ばんにん作戦さくせん」（2015年ねん〜2021年ねん）と呼よばれている。傀儡かいらい政権せいけん樹立じゅりつ後ごもタリバンの反乱はんらんは続つづき、多た国籍こくせき軍ぐんは一般いっぱん市民しみんにも危害きがいを加くわえたことで協力きょうりょくを得えられなかった。20年ねんと数すう百ひゃく兆ちょう円えんを費ついやした後のち、最終さいしゅう的てきに米べい軍ぐんを筆頭ひっとうに多た国籍こくせき軍ぐんが撤退てったいを開始かいしすると、ターリバーンは急速きゅうそくに勢力せいりょくを回復かいふくして再ふたたび政権せいけんを奪還だっかんした。

経緯けいい

2001年ねんの9.11同時どうじ多発たはつテロ発生はっせい後ご、米国べいこく大統領だいとうりょうのジョージ・W・ブッシュは、当時とうじアフガニスタンの支配しはい勢力せいりょくであったターリバーンに、オサマ・ビンラディンの引ひき渡わたしを要求ようきゅうした。ターリバーン政権せいけんの副ふく首相しゅしょうアブドゥル・カビールはこれに対たいし、9.11同時どうじ多発たはつテロがオサマ・ビンラディンによるものであるという証拠しょうこを求もとめ、事実じじつであれば第三国だいさんごくに出国しゅっこくさせるとの返答へんとうをした。ブッシュはカビール副ふく首相しゅしょうの提案ていあんを拒否きょひし「不朽ふきゅうの自由じゆう作戦さくせん」の開始かいしを指示しじした。

2001年ねん末まつまでにターリバーンとアルカーイダは、米べい軍ぐんと北部ほくぶ同盟どうめい軍ぐんによって国内こくないでほぼ壊滅かいめつしたとみられ、ボン合意ごういでは新あらたなアフガン暫定ざんてい当局とうきょく（主おもに北部ほくぶ同盟どうめい）がハミド・カルザイをアフガン暫定ざんてい行政ぎょうせい長官ちょうかんに選出せんしゅつした。国連こくれん安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かいは、新しん政権せいけんがカーブルを確保かくほすることを支援しえんするために国際こくさい治安ちあん支援しえん部隊ぶたい（ISAF）を設立せつりつした。また、ターリバーン政権せいけんの崩壊ほうかいに伴ともない、全国ぜんこく的てきな復興ふっこうが図はかられた(国連こくれんアフガニスタン支援しえんミッション)。

一方いっぽうで政権せいけんの座ざから追おい出だされたターリバーンはオマル師しによって再さい編成へんせいされ、2003年ねんから多た国籍こくせき軍ぐんとその傀儡かいらいとみなすアフガニスタン政府せいふに対たいする反乱はんらんを開始かいしした。ターリバーン等とうの反はん政府せいふ勢力せいりょくは、地方ちほうでのゲリラ的てきな襲撃しゅうげきや待まち伏ぶせ、都市とし部ぶでの標的ひょうてきに対たいする自爆じばく攻撃こうげき、連合れんごう軍ぐんに対たいする裏切うらぎり者ものの殺害さつがいなど、非対称ひたいしょう戦争せんそうを繰くり広ひろげた。ターリバーンは次第しだいにアフガニスタン南部なんぶと東部とうぶの農村のうそん地域ちいきで影響えいきょう力りょくを取とり戻もどし、ISAFは村むらを「クリア＆ホールド」するための対たい反乱はんらん作戦さくせんに兵力へいりょくを増強ぞうきょうして対応たいおうした。2007年ねんから2009年ねんにかけて、暴力ぼうりょく行為こういは拡大かくだいした。2009年ねんには兵力へいりょくが急増きゅうぞうし、2011年ねんまで増加ぞうかし続つづけ、ISAFと米国べいこくの指揮しき下かで約やく14万まん人にんの外国がいこく軍ぐんがアフガニスタンで活動かつどうした。2012年ねんにNATO首脳しゅのうは軍ぐんの撤退てったい戦略せんりゃくを開始かいしし、その後ご、米国べいこくは主要しゅような戦闘せんとう活動かつどうを2014年ねん12月に終了しゅうりょうし、国内こくないに残存ざんそん兵力へいりょくを残のこすことを発表はっぴょうした。2014年ねん12月28日にち、NATOはアフガニスタンにおけるISAFの戦闘せんとう活動かつどうを正式せいしきに終了しゅうりょうし、安全あんぜん保障ほしょう上じょうの全ぜん責任せきにんをアフガニスタン政府せいふに正式せいしきに移管いかんした。同日どうじつ、ISAFの後継こうけい組織そしきとしてNATO主導しゅどうのレゾリュート・サポート作戦さくせんが発足ほっそくした。

ターリバーンに掌握しょうあくされる地域ちいきが徐々じょじょに増加ぞうかする中なか、2020年ねん2月がつ29日にち、米国べいこくとターリバーン（アフガニスタン・イスラム首長しゅちょう国こく）はドーハで条件じょうけん付づけ和平わへい協定きょうていに署名しょめいした。ターリバーンが協定きょうていの条件じょうけんに協力きょうりょくする限かぎり、米べい軍ぐんは14カ月かげつ以内いないにアフガニスタンから撤退てったいすることが求もとめられた。この合意ごういは、アフガニスタン政府せいふ抜ぬきで米国べいこく政府せいふとタリバン間あいだで直接ちょくせつ行おこなわれた。また、インド亜あ大陸たいりくのアルカーイダやISIL-Kに属ぞくする反はん政府せいふ勢力せいりょくが、国内こくないの一部いちぶで活動かつどうを続つづけていた。2021年ねん4月がつ、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく大統領だいとうりょうジョー・バイデンが、同年どうねん9月11日にちまでに駐留ちゅうりゅう米まい軍ぐんを完全かんぜん撤退てったいさせると発表はっぴょう。すると、2021年ねん5月がつからターリバーンは大だい攻勢こうせいを開始かいしし、共和きょうわ国軍こくぐんは3か月げつほどで各かく州都しゅうとに点てんとなって散ちらばるまで弱体じゃくたい化かした。8月に入はいると続々ぞくぞくと各州かくしゅうの州都しゅうとにターリバーンが入城にゅうじょうし、15日にちまでにパンジシール州しゅうを除のぞくすべての州しゅうが陥落かんらくした。2021年ねん8月がつ15日にち、ターリバーンはアフガニスタン全土ぜんどを支配しはい下かにおいたと宣言せんげんし、内務相ないむしょう代行だいこうが平和へいわ裏うらに権力けんりょくの移行いこうを進すすめると表明ひょうめいした。30日にちに米べい軍ぐんは撤退てったいを完了かんりょうし、31日にちにバイデンも戦争せんそう終結しゅうけつを宣言せんげんした。これをもって、米国べいこく史上しじょう最長さいちょうの戦争せんそうは幕まくを閉とじた。

全体ぜんたいとして、この戦争せんそうでは 46,319 人にんの民間みんかん人じんを含ふくむ約やく176,000 人にんが死亡しぼうした。2001年ねんのアメリカの侵攻しんこうとタリバン政権せいけん打倒だとうの後のち、570万まん人にん以上いじょうの難民なんみんがアフガニスタンに帰還きかんしたが、タリバンが2021年ねんに権力けんりょくの座ざに戻もどったとき、260万まん人にんのアフガニスタン人じんがまだ難民なんみんであり、さらに400 万まん人にんが国内こくない避難ひなん民みんであった。

黒くろ：ターリバーンの支配しはい地域ちいき
赤あか：反はんターリバーン派はの支配しはい地域ちいき
黄き：紛争ふんそう地帯ちたいまたは帰属きぞく不明ふめいの地域ちいき

前史ぜんし

2001年ねん時点じてんのアフガニスタンの勢力せいりょく地図ちず。赤あかの部分ぶぶんが北部ほくぶ同盟どうめいの支配しはい下か。

ターリバーンに破壊はかいされ消滅しょうめつしたバーミヤン大仏だいぶつ

「アフガニスタン紛争ふんそう (1978年ねん-1989年ねん)」、「アフガニスタン紛争ふんそう (1989年ねん-2001年ねん)」、および「ターリバーン」も参照さんしょう

1978年ねんの共産きょうさん政権せいけんの成立せいりつにともない、全土ぜんどでムジャーヒディーンと呼よばれる武装ぶそう勢力せいりょくが蜂起ほうきした。これを受うけて1979年ねんにはソビエト連邦れんぽうが軍事ぐんじ介入かいにゅうを行おこなったが、東側ひがしがわ社会しゃかい以外いがいの支援しえんを受うけたムジャーヒディーンを駆逐くちくすることはできず、1989年ねんにソ連それん軍ぐんは撤退てったいした。

しかしソ連それん軍ぐんの撤退てったい以降いこうはムジャーヒディーン同士どうしが内戦ないせんを起おこし、軍閥ぐんばつを形成けいせいして戦闘せんとうが続つづいた。1994年ねん頃ころからパキスタン軍ぐんの支援しえんを受うけたパシュトゥーン人じんの武装ぶそう勢力せいりょくであるターリバーンが勢力せいりょくを拡張かくちょうし、国土こくどの大半たいはんを制圧せいあつした。しかし、ターリバーン政権せいけんはイスラム原理げんり主義しゅぎ的てき政権せいけんであり、同様どうように原理げんり主義しゅぎ的てき思想しそうを持もつウサーマ・ビン＝ラーディンとアル・カーイダを国内こくないに保護ほごし、テロリストの訓練くんれんキャンプを設置せっちしていた。

このためターリバーン政権せいけんを承認しょうにんしたのはパキスタン、サウジアラビア、アラブ首長しゅちょう国こく連邦れんぽうの三さん国こくに留とまり、アフガニスタンの国際こくさい連合れんごうにおける代表だいひょう権けんはブルハーヌッディーン・ラッバーニーを大統領だいとうりょうとするアフガニスタン・イスラム国こくが保持ほじしていた。ラッバーニーをはじめとする旧きゅうムジャーヒディーン勢力せいりょくはターリバーンに対たいして同盟どうめいを組くみ、通称つうしょう「北部ほくぶ同盟どうめい」として北部ほくぶで抵抗ていこうを続つづけたが、ターリバーンに押おされつつあった。

1998年ねん、タンザニアとケニアの米国べいこく大使館たいしかんがアル・カーイダにより爆破ばくはされる事件じけんが発生はっせいし、米国べいこくは報復ほうふくとしてアフガニスタン国内こくないの訓練くんれんキャンプをトマホークで攻撃こうげきした。このため12月がつ8日にちには国際こくさい連合れんごう安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かいで国際こくさい連合れんごう安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かい決議けつぎ1214が採択さいたくされ、テロリストの国際こくさい司法しほう機関きかんへの引ひき渡わたしが要求ようきゅうされ、1999年ねんには国際こくさい連合れんごう安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かい決議けつぎ1267で、アル・カーイダとビン＝ラーディンらを名指なざししての引ひき渡わたしが要求ようきゅうされた。しかしターリバーン政権せいけんは従したがわず、決議けつぎに基もとづく経済けいざい制裁せいさいが行おこなわれた（米国べいこく同時どうじ多発たはつテロ事件じけん後ごはこの狙ねらい撃うち制裁せいさいが拡大かくだいされ、カディ事件じけんやサヤディ事件じけんで人権じんけん侵害しんがいが問題もんだい化かする）。

アル・カーイダの攻撃こうげきは引ひき続つづき起おこり、2000年ねん10月がつには米べい艦かんコール襲撃しゅうげき事件じけんが発生はっせいした。このため12月がつに国際こくさい連合れんごう安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かい決議けつぎ1333が採択さいたくされ、再度さいどアル・カーイダの引ひき渡わたしが求もとめられたがターリバーン政権せいけんはこれにも従したがわなかった。ターリバーンとしては、アフガニスタンの客人きゃくじん歓待かんたいの伝統でんとう、ウサマ・ビン・ラーディンからの資金しきん援助えんじょ等とうの事情じじょうから、犯罪はんざいの証拠しょうこが示しめされることなく、ウサマ・ビン・ラーディンを引ひき渡わたすことはできなかった。

2001年ねん2月がつ26日にちにターリバーン政権せいけんは偶像ぐうぞう破壊はかいを名目めいもくにバーミヤンの大仏だいぶつを破壊はかいした。大仏だいぶつは6世紀せいき頃ごろに造立ぞうりゅうされた、非常ひじょうに文化ぶんか的てき価値かちの高たかいものであった。この破壊はかいは、当然とうぜんのことながら諸しょ外国がいこく（非ひイスラム諸国しょこく）から強つよい批判ひはんを受うけたが、イスラム諸国しょこくからの批判ひはんも受うけることになり、ターリバーン政権せいけんは孤立こりつ状態じょうたいにあった。

開戦かいせんまでの経緯けいい

炎上えんじょうする世界せかい貿易ぼうえきセンタービル

2001年ねん9月がつ11日にち、アメリカ同時どうじ多発たはつテロ事件じけんが発生はっせいした。12日にち、米国べいこくのジョージ・W・ブッシュ大統領だいとうりょうはテロとの戦たたかいを宣言せんげんした。またこの中なかで、ターリバーン政権せいけんの関与かんよが示唆しさされ、ドナルド・ラムズフェルド国防こくぼう長官ちょうかんはウサーマ・ビン＝ラーディンが容疑ようぎ者しゃであり、また単独たんどくの容疑ようぎ者しゃではないと発言はつげんした。また同日どうじつ、第だい56回かい国連こくれん総会そうかいでも米国べいこく政府せいふと市民しみんに哀悼あいとうと連帯れんたいを表あらわして国連こくれんも本部ほんぶを置おくニューヨークなどへのテロ攻撃こうげきに対たいして速すみやかに国際こくさい協力きょうりょくすべきとする決議けつぎ56/1を当時とうじの全ぜん加盟かめい国こく189カ国かこくが全会ぜんかい一致いっちで採択さいたくし、国際こくさい連合れんごう安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かいでも国際こくさい連合れんごう安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かい決議けつぎ1368が採択さいたくされた。

この決議けつぎ1368は9月11日にちのテロ攻撃こうげきを「国際こくさいの平和へいわ及および安全あんぜんに対たいする脅威きょうい」と認みとめ、「テロリズムに対たいしてあらゆる手段しゅだんを用もちいて闘たたかう」というものであった。また前段ぜんだんには「個別こべつ的てき又または集団しゅうだん的てき自衛じえいの固有こゆうの権利けんりを認識にんしき」という言葉ことばがあり、これは同日どうじつにNATOが創設そうせつ以来いらい初はじめての北大西洋きたたいせいよう条約じょうやく第だい5条じょうの集団しゅうだん防衛ぼうえい条項じょうこうによる集団しゅうだん的てき自衛じえい権けんの発動はつどうを決定けっていする根拠こんきょとなった。(#開戦かいせんの正当せいとう性せいに対たいする論議ろんぎ)。

この後のち米国べいこくはターリバーン政権せいけんにビン＝ラーディンらの引ひき渡わたしを要求ようきゅうした。しかしターリバーン政権せいけんはビン＝ラーディン及およびアルカーイダが犯人はんにんである証拠しょうこを提示ていじするよう求もとめ、引ひき渡わたしに応おうじなかった。

9月14日にち、オーストラリアも太平洋たいへいよう安全あんぜん保障ほしょう条約じょうやく第だい4条じょうに当あたるとして集団しゅうだん的てき自衛じえい権けんの発動はつどうを表明ひょうめいした。9月15日にち、米国べいこくのコリン・パウエル国務こくむ長官ちょうかんはパキスタンがアフガニスタン攻撃こうげきに協力きょうりょくすると声明せいめいした。16日にち、湾岸わんがん協力きょうりょく会議かいぎを構成こうせいするアラブ諸国しょこくはテロ攻撃こうげきを批判ひはんし、アフガニスタン攻撃こうげきを支持しじする声明せいめいを出だした。ターリバーンを承認しょうにんしてきたアラブ首長しゅちょう国こく連邦れんぽう、パキスタン、サウジアラビアも国交こっこうを解消かいしょうした。しかし16日にちにターリバーンの情報じょうほう相しょうは重要じゅうよう拠点きょてんを要塞ようさい化かしたと声明せいめいし、徹底てってい抗戦こうせんの姿勢しせいを示しめした。17日にち、イランのモハンマド・ハータミー大統領だいとうりょうはテロを非難ひなんしたが、アラブ連盟れんめいやイスラム諸国しょこく会議かいぎ機構きこうと同おなじようにアフガニスタン攻撃こうげきの際さいは民間みんかん人じんの被害ひがいを最小限さいしょうげんにするよう要請ようせいした。

9月18日にち、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく議会ぎかいでテロを計画けいかく、承認しょうにん、実行じっこう、支援しえんしたと大統領だいとうりょうが判断はんだんした国家こっか、組織そしき、個人こじんに対たいしてあらゆる必要ひつようかつ適切てきせつな力ちからを行使こうしする権限けんげんを与あたえるとする合同ごうどう決議けつぎが上院じょういん98対たい0、下院かいん420対たい1で通とおる。9月21日にち、ラムズフェルド国防こくぼう長官ちょうかんは北部ほくぶ同盟どうめいと共同きょうどうして作戦さくせんに当あたることを発表はっぴょうした。また欧州おうしゅう連合れんごう外相がいしょう会議かいぎも全会ぜんかい一致いっちで攻撃こうげきを支持しじした。

9月28日にち、国際こくさい組織そしき法ほうで初はつの「立法りっぽう行為こうい」とされる国際こくさい連合れんごう安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かい決議けつぎ1373が採択さいたくされ、「全すべての国くに」に国連こくれん憲章けんしょう第だい7章しょうに基もとづく強制きょうせい措置そちとして厳罰げんばつ化かや情報じょうほう交換こうかんおよび資金しきん援助えんじょ禁止きんしなどのテロ対策たいさくとその報告ほうこくが義務ぎむ化かされ、11月12日にちには国際こくさい連合れんごう安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かい決議けつぎ1377ではテロは「全ぜん国家こっかと全ぜん人類じんるいへの挑戦ちょうせん」とまで非難ひなんされた。

米国べいこくはこの間あいだに協力きょうりょくする国々くにぐにと連合れんごうを組くみ、攻撃こうげきの準備じゅんびに入はいった。これらの国くには有志ゆうし連合れんごう諸国しょこくと呼よばれ、ラムズフェルド国防こくぼう長官ちょうかんは「人類じんるい史上しじょう最大さいだいの連合れんごう」であるとした。有志ゆうし連合れんごう諸国しょこくは不朽ふきゅうの自由じゆう作戦さくせんという統一とういつ作戦さくせん名めいで、アフガニスタンを含ふくむテロ組織そしき勢力せいりょく地域ちいきへの作戦さくせんを実行じっこうした。

開戦かいせんの正当せいとう性せいに対たいする論議ろんぎ

米国べいこくはイギリス・フランス・カナダ・ドイツ等ひとしと共同きょうどうでアフガニスタンに攻撃こうげきを行おこなった。これは国際こくさい連合れんごう憲章けんしょうに定さだめられた国連こくれん軍ぐんではなく、国連こくれん憲章けんしょう第だい51条じょうによって定さだめられ、事前じぜんに国連こくれん決議けつぎを必要ひつようとしない集団しゅうだん的てき自衛じえい権けんの発動はつどうによるという論理ろんりであった。この論理ろんりは米州べいしゅう機構きこう、EU、そして日本にっぽんを含ふくむ同盟どうめい国こくと法学ほうがく者しゃに広ひろく認みとめられた。

しかし、テロ攻撃こうげきに対たいして自衛じえい権けんは発動はつどう出来できないという法学ほうがく者しゃも少すくなからずおり、議論ぎろんが発生はっせいしている。また、これらは後ごのテロ対策たいさく特別とくべつ措置そち法ほうや自衛隊じえいたいインド洋いんどよう派遣はけんをめぐる国会こっかい論議ろんぎでも取とり上あげられている。

以下いか、『テロ特措法とくそほうの期限きげん延長えんちょうをめぐる論点ろんてん』に沿そった争点そうてんの整理せいりを行おこなう。

自衛じえい権けん

「テロ攻撃こうげき」は自衛じえい権けんの対象たいしょうとなる「武力ぶりょく攻撃こうげき」にあたるかという問題もんだいである。また、自衛じえい権けんは急迫きゅうはく不正ふせいの侵害しんがいに対たいして自国じこくを防衛ぼうえいするための権利けんりであり、テロ攻撃こうげきが今後こんごも続つづく「除去じょきょしなければならない脅威きょうい」にあたるかという議論ぎろんがあった。

• 肯定こうてい派は
  • 安保理あんぽり決議けつぎ1373は国連こくれん憲章けんしょう第だい7章しょうのもとに行動こうどうすることを定さだめている。これは個別こべつ的てき又または集団しゅうだん的てき自衛じえい権けんを確認かくにんするものであり、テロ攻撃こうげきに自衛じえい権けんが発動はつどう出来できるということを示しめしている。
  • 派遣はけんされる武装ぶそう集団しゅうだんの規模きぼや影響えいきょうが武力ぶりょく攻撃こうげきに匹敵ひってきするほどであれば武力ぶりょく攻撃こうげきを構成こうせいしうるという国際司法裁判所こくさいしほうさいばんしょの判例はんれいがある（ニカラグア事件じけん判決はんけつ）。
  • アル・カーイダの以前いぜんからの活動かつどうを見みると今後こんごの攻撃こうげきも予想よそうされ、除去じょきょしなければならない脅威きょういにあたる。
• 否定ひてい派は
  • 安保理あんぽり決議けつぎ1373にあげられた「すべての国くにがとるべき行動こうどう」には武力ぶりょく行使こうし自体じたいは書かかれていない。
  • テログループは「私人しじん」であり、国際こくさい法ほう上じょうの主体しゅたいではなく、その行動こうどうは「武力ぶりょく攻撃こうげき」 (armed attack)ではなく「武力ぶりょく行使こうし」 (use of force)であり、自衛じえい権けんの対象たいしょうにならない。
  • 有志ゆうし連合れんごう諸国しょこくによる攻撃こうげきは一いちヶ月かげつ以上いじょう後ごであり、自衛じえい権けんの要件ようけんの一ひとつである「時間じかん的てき要件ようけん」（差さし迫せまった脅威きょういを取とり除のぞくため）に該当がいとうしない。
  • 安保理あんぽり決議けつぎ1378にあげられた必要ひつような措置そちに、武力ぶりょく行使こうしは含ふくめられない。

ターリバーンへの攻撃こうげき

テロ攻撃こうげきを行おこなったのは、ターリバーン政権せいけん自体じたいではなく、その庇護ひご下かにあるアル・カーイダである。この場合ばあい、ターリバーン政権せいけんに攻撃こうげきを行おこなうのは正当せいとうかという問題もんだいがある。

• 肯定こうてい派は
  • 安保理あんぽり決議けつぎ1368および1373はテロ組織そしき援助えんじょ禁止きんしを規定きていしており、ターリバーン政権せいけんのアル・カーイダへの援助えんじょは問題もんだいがある。
  • ターリバーン政権せいけんは1996年ねん以来いらい、安保理あんぽり決議けつぎ1267および1333によるアル・カーイダ引ひき渡わたしの要求ようきゅうを再三さいさん拒否きょひしており、アル・カーイダの擁護ようご者しゃである。
  • 友好ゆうこう関係かんけい原則げんそく宣言せんげんでは、テロ組織そしきの育成いくせいを禁きんじており、ターリバーン政権せいけんの行為こういはこれにあたる。
  • 11月14日にちに定さだめられた国際こくさい連合れんごう安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かい決議けつぎ1378は「ターリバーン政権せいけんを交代こうたいさせようとするアフガニスタン国民こくみんの努力どりょくを支援しえん」するとあり、ターリバーン政権せいけんの打倒だとうを明確めいかくに支持しじしている。
• 否定ひてい派は
  • ターリバーン政権せいけんはアル・カーイダに対たいする兵站へいたん支援しえんや武器ぶき供与きょうよを行おこなったにすぎず、直接ちょくせつ攻撃こうげきを行おこなっていない。
  • 一いちテロ組織そしきの行動こうどうをターリバーン政権せいけんの責任せきにんとするのは問題もんだいがある。
  • 政権せいけん崩壊ほうかいに至いたるというターリバーン政権せいけんが受うけた結果けっかは、自衛じえい権けんの要件ようけんである均衡きんこう性せい要件ようけんを欠かく。

アルカーイダ問題もんだい

同時どうじ多発たはつテロ当時とうじ、アルカーイダによる犯行はんこう声明せいめいなどは行おこなわれておらず、アルカーイダを犯人はんにんと推定すいていしたのはアメリカ当局とうきょくによるものであった。明確めいかくな関与かんよが判明はんめいしていない以上いじょう、攻撃こうげきを行おこなうのは正当せいとうかという点てんも問題もんだいとなった。

開戦かいせん

2001年ねん

オマーン海かいで「不朽ふきゅうの自由じゆう」作戦さくせんを行おこなう5カ国かこく空母くうぼ艦隊かんたい（2002年ねん4月がつ18日にち）

2001年ねん9月がつのアメリカ同時どうじ多発たはつテロ事件じけんは不意打ふいうちだった為ため、米べい軍ぐんはアフガニスタンで戦争せんそうを行おこなうプランを持もっていなかった。急せきょ作戦さくせんが立たてられ、アフガニスタンのムジャーヒディーン軍閥ぐんばつにアルカーイダやターリバーンを攻撃こうげきさせること、レーザー目標もくひょう指示しじ装置そうちを装備そうびした特殊とくしゅ部隊ぶたいを派遣はけんして空爆くうばくを支援しえんさせることなどが決きまった。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく政府せいふはこの作戦さくせんを対たいテロ戦争せんそうの一環いっかんと位置いちづけ、国際こくさい的てきなテロの危機ききを防ふせぐための防衛ぼうえい戦せんであると主張しゅちょうし、作戦さくせん名めいを不朽ふきゅうの自由じゆう作戦さくせん (OEF: Operation Enduring Freedom)」と名付なづけた。なお英国えいこくでは「ヘリック作戦さくせん」 (Operation Herrick)と呼よんでいる。米国べいこくは同時どうじ多発たはつテロの前まえからウズベキスタンの空軍くうぐん基地きちで無人むじん偵察ていさつ機きを運用うんようしていたので、無人むじん偵察ていさつ機きにミサイルを積つんで攻撃こうげき機きとしても使つかえるようにした。10月2日にち、NATOは集団しゅうだん自衛じえい権けんを発動はつどうし、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくとイギリスを始はじめとした有志ゆうし連合れんごう諸国しょこくは10月7日にちから空爆くうばくを開始かいしした。米べい軍ぐんは米国べいこく本土ほんどやクウェート、インド洋いんどようのディエゴガルシア島とう、航空こうくう母艦ぼかんから発着はっちゃくする航空機こうくうきやミサイル巡洋艦じゅんようかんを動員どういんして、アフガニスタンに1万まん2000発はつの爆ばく弾だんを投下とうかした。米国べいこくは軍事ぐんじ目標もくひょうだけを攻撃こうげきしていると発表はっぴょうしていたが、実際じっさいには投下とうかした爆ばく弾だんの４割わりは非ひ誘導ゆうどう型がた爆ばく弾だんであり民間みんかん人じんに多おおくの犠牲ぎせいが出でたと言いわれている。11月13日にちには北部ほくぶ同盟どうめい軍ぐんが首都しゅとカーブルを制圧せいあつした。

開戦かいせん当初とうしょ、ターリバーンの指導しどう者しゃのムハンマド・オマルはカンダハールの自宅じたくに居いたので、空爆くうばくによって殺害さつがいする機会きかいはあった。しかし米国べいこくは民間みんかん人じんの被害ひがいを恐おそれてオマルの逃亡とうぼうを許ゆるした。オマルはハーミド・カルザイを通つうじて降伏ごうぶくに同意どういしたが、米国べいこくは降伏ごうぶくを認みとめなかった。米国べいこくは数すう千せん人にんのターリバーンを殺害さつがいしたので、ターリバーンは自然しぜん消滅しょうめつすると考かんがえていた。

アルカイーダのアラブ人じんやチェチェン人ひと、ウズベク人じんやアフリカ人じんなどの外国がいこく人じん兵士へいしはカーブルが陥落かんらくすると都市とし部ぶを放棄ほうきして、対たいソ戦せん時代じだいに建設けんせつされたパキスタン国境こっきょうの地下ちか要塞ようさいトラボラに立たてこもった（トラボラの戦たたかい）。対たいソ戦せん時代じだい、ソ連それん軍ぐんは爆ばく撃げきで地下ちか要塞ようさいを破壊はかいしようとしたが上手うまくいかなかった。米べい軍ぐんも同様どうように爆ばく撃げきを行おこなったが地下ちか要塞ようさいを破壊はかいすることは出来できなかった。トラボラ周辺しゅうへんの国境こっきょう地帯ちたいは広大こうだいだったが、2000～3000人にんの米べい軍ぐんが包囲ほういすればビンラディンを捕とらえることが出来できたと考かんがえられている。しかし米べい軍ぐんは派遣はけんできる部隊ぶたいが存在そんざいしていたにもかかわらずリスクを恐おそれてトラボラ周辺しゅうへんに部隊ぶたいを派遣はけんしなかった。代かわりに派遣はけんされたアフガニスタン軍閥ぐんばつの戦意せんいは低ひくく、パキスタン軍ぐんはヘリコプターが揃そろわないため十じゅう分ふんに兵力へいりょくを展開てんかいすることが出来できなかった。ビンラディンは死しを覚悟かくごしていたが、国境こっきょうを越こえてパキスタンに脱出だっしゅつすることが出来できた。米国べいこくのブッシュ政権せいけんは最小限さいしょうげんの被害ひがいでターリバーン政権せいけんを崩壊ほうかいさせたことに満足まんぞくし、戦後せんごの国家こっか建設けんせつや平和へいわ維持いじには興味きょうみを示しめさなかった。アフガニスタンの国家こっか建設けんせつや平和へいわ維持いじは国連こくれんに託たくされた。

ハーミド・カルザイ大統領だいとうりょう

2001年ねん11月、ドイツのボン近郊きんこうのケーニヒスヴィンターにおいて北部ほくぶ同盟どうめいを含ふくむアフガニスタンの4つのグループの代表だいひょうを国際こくさい連合れんごうが招集しょうしゅうして会議かいぎが開ひらかれた。ボン会合かいごう当時とうじ、ターリバーンとの戦闘せんとうは継続けいぞくしていたが、すでに北部ほくぶ同盟どうめい軍ぐんがカーブルを占領せんりょうしており、早急そうきゅうに暫定ざんてい政府せいふの設立せつりつ、国際こくさい的てきな部隊ぶたいによる治安ちあん維持いじを決きめる必要ひつようが生しょうじたので、急遽きゅうきょ、ボン会合かいごうが招集しょうしゅうされることとなった。これにより暫定ざんてい政府せいふの成立せいりつ、ロヤ・ジルガの招集しょうしゅう、国際こくさい治安ちあん支援しえん部隊ぶたい (ISAF)の成立せいりつと国連こくれんアフガニスタン支援しえんミッション (UNAMA)の設立せつりつが合意ごういされ、翌日よくじつ国連こくれん安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かいにおいて承認しょうにんされた（国際こくさい連合れんごう安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かい決議けつぎ1383）。これをボン合意ごういといい、以降いこうのアフガニスタン復興ふっこう計画けいかくのスタートとなった。

同月どうげつ、国際こくさい連合れんごう安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かい決議けつぎ1378が採択さいたくされ、国際こくさい連合れんごう安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かいはターリバーンを非難ひなんし、有志ゆうし連合れんごう諸国しょこくと北部ほくぶ同盟どうめいによるターリバーン政権せいけんの打倒だとうを支持しじした。また、その後ごの国内外こくないがいの軍事ぐんじ行動こうどうは1510、1386、1746等とう複数ふくすうの決議けつぎによって承認しょうにんされており、国連こくれんアフガニスタン支援しえんミッション等ひとしと連携れんけいして行おこなわれている。

12月、ISAFは国際こくさい連合れんごう安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かい決議けつぎ1386、UNAMAは国際こくさい連合れんごう安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かい決議けつぎ1401によって正式せいしきに承認しょうにんされ、以降いこうのカーブル周辺しゅうへんの治安ちあん維持いじ活動かつどうはISAFが担になうこととなった。しかし、ターリバーンはボン合意ごういに参加さんかしておらず、また、ボン合意ごういに基もとづき成立せいりつした暫定ざんてい政府せいふにタジク人じんが多おおかったため、パシュトゥン人じんの不満ふまんが高たかまり、ターリバーンが復活ふっかつする一因いちいんとなった。

2001年ねん12月22日にちにはハーミド・カルザイを議長ぎちょうとする暫定ざんてい政府せいふ、アフガニスタン暫定ざんてい行政ぎょうせい機構きこうが成立せいりつし、正式せいしきな政府せいふ成立せいりつまでの行政ぎょうせいを行おこなった。同月どうげつ、テロ対策たいさく特別とくべつ措置そち法ほうに基もとづいて日本にっぽんの海上かいじょう自衛隊じえいたいが海上かいじょう阻止そし行動こうどうに参加さんかし、2010年ねんまでインド洋いんどようで給油きゅうゆ活動かつどうを行おこなった（自衛隊じえいたいインド洋いんどよう派遣はけん）。

2002年ねん

2002年ねん1月がつ、アルカーイダには数すう百ひゃく人にんから2000人にんほどの兵力へいりょくがあり、パクティーカー州しゅうの都市としガルデーズ付近ふきんのシャーヒーコート渓谷けいこくに潜伏せんぷくしていた。シャーヒーコート渓谷けいこくにはハッカーニ・ネットワークの基地きちがあり、主おもにウズベキスタン・イスラム運動うんどうの兵士へいしが立たてこもっていた。3月、米べい軍ぐんは「アナコンダ作戦さくせん」を行おこない、シャーヒーコート渓谷けいこくを掃討そうとうした。この作戦さくせんで米べい軍ぐんは150人にん～800人にんほどのアルカーイダを殺害さつがいしたと考かんがえられているが、米べい軍ぐんの損害そんがいも比較的ひかくてき多おおかった。生いき残のこったアルカーイダの兵士へいしはパキスタンの連邦れんぽう直轄ちょっかつ部族ぶぞく地域ちいきに撤退てったいした。

米国べいこくのブッシュ政権せいけんはアフガニスタンに深入ふかいりすることを恐おそれて、少数しょうすうの部隊ぶたい（5200人にん）しか派遣はけんしていなかった。ブッシュ政権せいけんはアフガニスタンの国家こっか建設けんせつも各国かっこくの分担ぶんたんで行おこなうことを主張しゅちょうし、アフガニスタン軍ぐんの再建さいけんは米国べいこく、警察けいさつの再建さいけんはドイツ、司法しほうの再建さいけんはイタリア、麻薬まやく取とり締しまりはイギリスに任まかせて、国連こくれんに統括とうかつさせた。6月11日にちから8日間にちかん、カーブルにおいて緊急きんきゅうロヤ・ジルガが開催かいさいされた。会議かいぎの結果けっか、暫定ざんてい行政ぎょうせい機構きこうに代かわり、カルザーイを大統領だいとうりょうとするアフガニスタン・イスラム移行いこう政府せいふが成立せいりつした。ブッシュ政権せいけんはターリバーンは打倒うちたおされたと考かんがえており、今後こんごは敗残はいざん兵へいの掃討そうとうを行おこなえばよいと考かんがえていた。米国べいこくのアフガニスタンに対たいする予算よさんは極きわめて少すくなく、援助えんじょを期待きたいしていた地方ちほう住民じゅうみんは失望しつぼうした。また少すくない予算よさんの中なかから学校がっこうの建設けんせつが行おこなわれたが、アフガニスタンの特とくに田舎いなかでは女学校じょがっこうの建設けんせつは社会しゃかいの急進きゅうしん的てきな変化へんかや欧米おうべいの価値かち観かんの押おし付つけとみなされ、一部いちぶの住民じゅうみんが反発はんぱつした。

パキスタンではムッラー・ダードゥッラーなどのターリバーンの幹部かんぶがクエッタ郊外こうがいで公然こうぜんと暮くらしており、結婚式けっこんしきに州しゅうの幹部かんぶや軍人ぐんじんを招まねくほどだった。米国べいこくはいずれ撤退てったいするとターリバーンや周辺しゅうへん諸国しょこくは考かんがえており足元あしもとを見みていた。ターリバーンはパキスタンから近隣きんりんのカンダハールに出撃しゅつげきして迫撃はくげき砲ほうで攻撃こうげきし、「夜よるの手紙てがみ」（シャブナーマ）を使つかって住民じゅうみんを脅迫きょうはくし支配しはい下かに組くみ入いれた。

2003年ねん

2003年ねん、アフガニスタンで戦闘せんとうは続つづいていたが、ブッシュ政権せいけんはアフガニスタンについてほとんど何なにも考かんがえていなかった。特とくにラムズフェルド国防こくぼう長官ちょうかんは戦争せんそうは終結しゅうけつしたと公言こうげんしており、コソボ紛争ふんそうを教訓きょうくんに外国がいこく軍ぐんの長期ちょうき的てきな駐留ちゅうりゅうを避さけようとしていた。米べい軍ぐんもイラクで次つぎの戦争せんそうを始はじめようとしていた（イラク戦争せんそう）。8月11日にち、国連こくれんとアフガニスタン政府せいふの要請ようせいにより、ISAFの指揮しき権けんがNATOに委譲いじょうされた。10月13日にちの国際こくさい連合れんごう安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かい決議けつぎ1510においてISAFの活動かつどう範囲はんいがアフガニスタン全土ぜんどに拡大かくだいされ、OEF-A参加さんか部隊ぶたいの指揮しき権けんはISAFに移譲いじょうされることとなった。また武装ぶそう解除かいじょ・動員どういん解除かいじょ・社会しゃかい復帰ふっきが行おこなわれ、アフガニスタン北部ほくぶでは伊勢崎いせさき賢治けんじなどが中心ちゅうしんとなり軍閥ぐんばつから武器ぶきを取とり上あげた。

パキスタンは米国べいこく同時どうじ多発たはつテロ事件じけんの後のち、米国べいこく政府せいふから「空爆くうばくして石器せっき時代じだいに戻もどす」と脅迫きょうはくされ、米国べいこくに協力きょうりょくしていた。しかしパキスタンは19世紀せいきのグレート・ゲームや20世紀せいきのインド・パキスタン分離ぶんり独立どくりつなどの結果けっか、パンジャーブ人じんやパシュトゥーン人じんなどの複数ふくすうの民族みんぞくが相互そうご不干渉ふかんしょうの微妙びみょうなバランスの下したで１ひとつの国家こっかを形成けいせいしているだけで、パンジャーブ人じんが主体しゅたいとなる中央ちゅうおう政府せいふがパシュトゥーン人じんの領域りょういき（連邦れんぽう直轄ちょっかつ部族ぶぞく地域ちいき）を支配しはいしている訳わけではなかった。大だい英えい帝国ていこくの時代じだいから連邦れんぽう直轄ちょっかつ部族ぶぞく地域ちいき（FATA）はパシュトゥーン部族ぶぞくの自治じちが認みとめられており、中央ちゅうおう政府せいふの法律ほうりつは現在げんざいでも及およんでいない。また中央ちゅうおう政府せいふの軍隊ぐんたいが連邦れんぽう直轄ちょっかつ部族ぶぞく地域ちいきに入はいったことも無なかった。パキスタンは建国けんこく後ごも苦難くなんの歴史れきしが続つづき、印しるしパ戦争せんそうで３回かいインドに敗北はいぼくし、東ひがしパキスタン（バングラデシュ）を失うしない、現在げんざいもカシミール地方ちほうをいつ失うしなうか分わからない状態じょうたいが続つづいている。インド軍ぐんはパキスタン軍ぐんの２倍ばいの戦力せんりょくを誇ほこりパキスタンは通常つうじょう戦力せんりょくでは歯はが立たたない為ため、軍ぐん統合とうごう情報じょうほう局きょく（ISI）がターリバーンやカシミール過激かげき派はを養成ようせいして、インド軍ぐんに対たいしてゲリラ戦せんやテロ攻撃こうげきを仕掛しかけることを黙認もくにんしている。またパキスタンは国家こっか統一とういつを図はかり、インドのヒンドゥー・ナショナリズムに対抗たいこうするためにイスラム化かを進すすめたので、パキスタン国民こくみんの大半たいはんはオサマ・ビン・ラディンを英雄えいゆうだと思おもっていた。パキスタンが国内こくないでターリバーンやアルカーイダを取とり締しまることは困難こんなんであり、また将来しょうらいの印しるしパ戦争せんそうやカシミール紛争ふんそうに向むけてターリバーンを取とり締しまりすぎることは国益こくえきに合致がっちしない。米国べいこくに対たいする協力きょうりょくは国内こくないの反発はんぱつを生うみ、2003年ねん12月にカシミール過激かげき派はがムシャラフ大統領だいとうりょうの暗殺あんさつ未遂みすい事件じけんを起おこした。パキスタン政府せいふは重おもい腰こしを上あげ、建国けんこく以来いらい初はじめて南みなみワジリスタンに軍ぐんを派遣はけんした（ワジリスタン紛争ふんそう）。しかしパキスタンは国内こくないのターリバーンの存在そんざいは否認ひにんしており、米べい軍ぐんの無人むじん攻撃こうげき機きや特殊とくしゅ部隊ぶたいもクエッタなどの大都市だいとしには手てを出だせないでいた。連邦れんぽう直轄ちょっかつ部族ぶぞく地域ちいきの国境こっきょう警備けいびは現地げんち採用さいようの辺境へんきょう部隊ぶたいが担当たんとうしているが、辺境へんきょう部隊ぶたいの兵士へいしはターリバーンと同おなじ民族みんぞくであり思想しそう的てきにも近ちかいため、取とり締しまりには非ひ協力きょうりょく的てきでありターリバーンの越境えっきょう時じに援護えんご射撃しゃげきを行おこなう場合ばあいすらあった。

2004年ねん

カンダハール

2003年ねん12月14日にちから2004年ねん1月がつ4日にちにかけて、カーブルにおいて憲法けんぽう制定せいていロヤ・ジルガが開催かいさいされた。これによりアフガニスタン憲法けんぽうが成立せいりつし、2004年ねん1月がつ26日にちから施行しこうされた。10月9日にちにはアフガニスタン全土ぜんどおよびイラン・パキスタンを投票とうひょう地域ちいきとする大統領だいとうりょう選挙せんきょが行おこなわれ、カルザイが55.4%の票ひょうを獲得かくとく。アフガニスタン・イスラム共和きょうわ国こく初代しょだい大統領だいとうりょうに選出せんしゅつされた。カルザイは12月に大統領だいとうりょうに就任しゅうにんし、アフガニスタン・イスラム共和きょうわ国こくが正式せいしきに成立せいりつした。しかし地方ちほうの政治せいじは軍閥ぐんばつに委ゆだねられており、住民じゅうみんサービスを行おこなうどころか住民じゅうみんに対たいして州しゅう知事ちじがゆすり集たかりを行おこない、敵対てきたい部族ぶぞくをターリバーンとみなして米べい軍ぐんに攻撃こうげきさせていた。カルザイ大統領だいとうりょうの異母弟いぼていのアフマド・ワリー・カルザイもカンダハール州しゅうの実力じつりょく者しゃとして権勢けんせいをふるい、麻薬まやく取引とりひきにも関かかわっていたと言いわれている。

同年どうねん、ターリバーンの最高さいこう評議ひょうぎ会かい（クエッタ・シューラ）が軍事ぐんじ作戦さくせんの再開さいかいに向むけた文書ぶんしょを作成さくせいしたと言いう。アルカーイダはパキスタンの南みなみワジリスタンのワナやシカイ渓谷けいこくに拠点きょてんを持もっていた。ワナはワズィール族ぞくの武装ぶそう組織そしき指導しどう者しゃのネーク・ムハンマドが支配しはいしていたが、米国べいこくは無人むじん攻撃こうげき機きを使つかって爆殺ばくさつした。

同年どうねん、米国べいこくで大統領だいとうりょう選挙せんきょが行おこなわれ、ブッシュ大統領だいとうりょうが再選さいせんした。ブッシュ政権せいけんはパキスタンに協力きょうりょくを求もとめる一方いっぽうで、パキスタンの主しゅ敵てきであるインドと米べい印しるし原子力げんしりょく協力きょうりょくについて協議きょうぎを行おこなうなど政策せいさくが首尾しゅび一貫いっかんしていなかった。米国べいこくはアフガニスタンの国家こっか建設けんせつが順調じゅんちょうに進すすんでいるため、ターリバーンの復活ふっかつの可能かのう性せいは低ひくいと考かんがえており、アフガニスタンの治安ちあん維持いじをNATO軍ぐんに任まかせて、イラク戦争せんそうに専念せんねんした。

医師いしの中村なかむら哲あきらと漫画まんが家かの小林こばやしよしのりによれば、アフガニスタン戦争せんそうは以下いかのような様子ようすだという。米べい英軍えいぐんの攻撃こうげきによってタリバン政権せいけんは崩壊ほうかいし、民主みんしゅ国家こっかとされるカルザイ政権せいけんが成立せいりつしたが、中村なかむらが同国どうこくで20年間ねんかん医療いりょう活動かつどうを行おこなってきた中なかでは治安ちあんはタリバン政権せいけん時代じだいよりも悪化あっかしており現在げんざいが最悪さいあくの状態じょうたいである。そもそもタリバンと一言ひとことで言いっても決けっして特別とくべつな組織そしきではなく身近みぢかな街まち中ちゅうで見みかける人ひともタリバンの一員いちいんである場合ばあいがあり、アフガニスタン人じんを見みただけでは見分みわけがつかない。とは言いえ表向おもてむきには「タリバン」と「反はんタリバン」があるのだが地下ちかでは皆みな繋つながっており、アフガニスタン人じんとして生活せいかつしていくという共通きょうつうした認識にんしきがあるのだ。そのためアメリカ軍ぐんの兵士へいしも誰だれが味方みかたでだれが敵てきかの見分みわけがつかず、かつてのベトナム戦争せんそうでのゲリラ戦せんと同様どうようかそれ以上いじょうに悲惨ひさんな状況じょうきょうになっている。ベトナム戦争せんそうの場合ばあいは米べい軍ぐんは少すくなくとも前線ぜんせんで戦闘せんとうを行おこなっていたがアフガニスタンでは戦闘せんとう機きやヘリコプターに乗のって空中くうちゅう戦せんをしているか、基地きちに留とどまっているかのどちらかである。地上ちじょうを移動いどうすると事件じけんが起おこる危険きけんがあるため動うごくことができないのだ。そのため地上ちじょうでの任務にんむをアフガニスタン人じんの請負うけおいに頼たのむとその請負うけおいが反乱はんらんを起おこす場合ばあいがあるため米べい軍ぐんにとっては憂鬱ゆううつである。例たとえば以前いぜんには米べい軍ぐんの傭兵ようへいが日当ひなたとライフル銃じゅうを受うけ取とり、その仕事しごとの帰かえりに米兵べいへいを狙撃そげきしたことまであったという。

第だい一いち回かい大統領だいとうりょう選挙せんきょとターリバーン復活ふっかつ

2005年ねん

ターリバーンの勢力せいりょく拡大かくだい（2002年ねん～2006年ねん）

2005年ねん9月がつ18日にち、下院かいん議員ぎいん選挙せんきょと県けん会議かいぎ員いん選挙せんきょが行おこなわれた。

2005年ねん後半こうはんからターリバーンを中心ちゅうしんとした武装ぶそう勢力せいりょくが南部なんぶ各地かくちで蜂起ほうきした。このターリバーンの蜂起ほうきは国際こくさい治安ちあん支援しえん部隊ぶたい（ISAF）が南部なんぶや東部とうぶに展開てんかいし始はじめた時期じきと重かさなっている。当時とうじ、ISAF側がわはターリバーンの攻撃こうげき増加ぞうかはターリバーンがISAFに追おい込こまれた結果けっかとして抵抗ていこうするためのものである、という強気つよきの見方みかたを示しめしていた。しかし、ISAFの説明せつめいとは異ことなりアフガニスタンの治安ちあんは急速きゅうそくに悪化あっかしていった。対たいソ連それん戦争せんそうや軍閥ぐんばつ内戦ないせん時代じだいにもなかった自爆じばく攻撃こうげき（2005年ねん27件けん、2006年ねん139件けん）が行おこなわれるようになったことから、イラク戦争せんそうで伸張しんちょうし数すう多おおくの自爆じばくテロを行おこなってきたアル・カーイダの影響えいきょうを指摘してきする声こえもある。

同年どうねん、パキスタン軍ぐんは南みなみワジリスタンで和平わへいを結むすび、北きたワジリスタンに進軍しんぐんした。一方いっぽう、軍ぐん統合とうごう情報じょうほう局きょく（ISI）はサウジアラビアの支援しえんを受うけて、ターリバーンに対たいする支援しえんを積極せっきょく化かさせたと言いう意見いけんがある。軍ぐん統合とうごう情報じょうほう局きょくは2万まん5千せん人にんの職員しょくいんを擁ようし、秘密ひみつ工作こうさくを行おこなうS局きょくなど様々さまざまな部門ぶもんがあり統制とうせいが取とれていなかった。米国べいこくはビンラディンの探索たんさくを続つづけていたが難航なんこうしていた。米国べいこくは連邦れんぽう直轄ちょっかつ部族ぶぞく地域ちいきにターリバーンやアルカーイダが潜伏せんぷくしてアフガニスタンを攻撃こうげきしていることを理解りかいしていたが、核兵器かくへいき保有ほゆう国こくのパキスタンに対たいする遠慮えんりょがあり越境えっきょう攻撃こうげきをためらっていた。また住民じゅうみんの協力きょうりょくも得えられないため攻撃こうげきを強行きょうこうしても成果せいかが出でなかった。

ターリバーンやアルカーイダは「アッ＝サハーブ」や「トラボラ」などのウェブサイトやネットマガジンを使つかって宣伝せんでん戦せんを積極せっきょく的てきに行いっており、イギリス在住ざいじゅうのパキスタン人じんなどがテロを行おこなっていた（ロンドン同時どうじ爆破ばくは事件じけん）。

2006年ねん

有志ゆうし連合れんごうの月別つきべつの損害そんがい（2002年ねん～2015年ねん）

2006年ねん、アフガニスタン南部なんぶに国際こくさい治安ちあん支援しえん部隊ぶたい（ISAF）が展開てんかいし、「マウント・スラスト作戦さくせん」を実施じっしした。イギリス軍ぐんは手付てつかずだったヘルマンド州しゅうに展開てんかいしたが、ターリバーンに包囲ほういされて苦戦くせんした。カンダハール州しゅうではターリバーンが攻勢こうせいに転てんじてカナダ軍ぐんに塹壕ざんごう戦せんを挑いどんだが、カナダ軍ぐんに撃退げきたいされた（マウント・スラスト作戦さくせん、メデューサ作戦さくせん）。ウルーズガーン州しゅうではオーストラリア国防こくぼう軍ぐんがパース作戦さくせんを実行じっこうした。連合れんごう軍ぐんはターリバーンの最高さいこう指導しどう評議ひょうぎ委員いいんの１人にんムラー・アフタル・ウスマーニを殺害さつがいするなどの戦果せんかを挙あげたものの、アフガニスタンの治安ちあんは大幅おおはばに悪化あっかし、アフガニスタンにおける治安ちあん事件じけんの数かずは2003年ねんの10倍ばいに達たっした。またアヘンの収穫しゅうかく量りょうが急増きゅうぞうし、国連こくれん薬物やくぶつ犯罪はんざい事務所じむしょ (UNODC) が警告けいこくを発はっした。アヘンの大半たいはんはヘルマンド州しゅうで生産せいさんされており、ターリバーンの資金しきん源げんとなっていると言いう。またアヘン生産せいさん者しゃが国内こくないの混乱こんらんを継続けいぞくさせるためにターリバーンに献金けんきんを行おこなっているという意見いけんもある。

アフガニスタンのアヘンの生産せいさん量りょう（1994年ねん～2016年ねん）

同年どうねん、パキスタンではパキスタンの特殊とくしゅ部隊ぶたいがハッカーニ・ネットワークの複数ふくすうの拠点きょてんを攻撃こうげきしたことに地元じもと武装ぶそう勢力せいりょくが反発はんぱつしたことなどにより、パキスタン軍ぐんの被害ひがいが増大ぞうだいした。ハッカーニ・ネットワークは北きたワジリスタンのミランシャー郊外こうがいのダンデ・ダルパヘイルにある大だい規模きぼな神学校しんがっこうを拠点きょてんにしている。パキスタン軍ぐんは北西ほくせい辺境へんきょう州しゅうのオークラザイ知事ちじの提案ていあんで、ワジリスタンの部族ぶぞく長ちょうやターリバーン、外国がいこく人じん戦闘せんとう員いんと和平わへい協定きょうていを結むすんだ（ワジリスタン和平わへい合意ごうい）。パキスタン軍ぐんは連邦れんぽう直轄ちょっかつ部族ぶぞく地域ちいきから撤退てったいしたので、ターリバーンはアフガニスタンに自由じゆうに越境えっきょうできるようになった。パキスタン政府せいふは数すう千せん人にんの戦闘せんとう員いんを擁ようし政府せいふに対たいして好戦こうせん的てきなマスード族ぞくに対抗たいこうするために、ワズィール族ぞくと手てを結むすぼうとしていた。一方いっぽう、パキスタンの軍ぐん統合とうごう情報じょうほう局きょく（ISI）はISAFの展開てんかいは米べい軍ぐん撤退てったいの兆きざしであると考かんがえ、米国べいこく撤退てったい後ごのターリバーン政権せいけんの樹立じゅりつについて真剣しんけんに考かんがえていたという意見いけんがある。米国べいこくでは中間ちゅうかん選挙せんきょで民主党みんしゅとうが勝利しょうりし、アフガニスタンに対たいする予算よさんがようやく増加ぞうかした。

2007年ねん

2007年ねん、アフガニスタンでは自爆じばくテロや無む差別さべつ爆撃ばくげきによってISAFや民間みんかん人じんに多数たすうの犠牲ぎせい者しゃが出でていた。ターリバーンはカーブルで自爆じばくテロを開始かいしした。歩兵ほへい戦せんも続つづき、国際こくさい治安ちあん支援しえん部隊ぶたい（ISAF）はアフガニスタン南部なんぶでクリプトナイト作戦さくせん（ヘルマンド州しゅう）やフーバー作戦さくせん（カンダハール州しゅう）などを行おこなった。またウルーズガーン州しゅうではターリバーンが攻勢こうせいに出でてオランダ軍ぐんと戦闘せんとうを行おこなった（チョーラの戦たたかい）。アフガニスタン北部ほくぶではドイツ軍ぐんなどがハレカテ・ヨロ作戦さくせんを実施じっしした。連合れんごう軍ぐんはターリバーンの最高さいこう指導しどう評議ひょうぎ委員いいんの１人ひとりムラー・オバイドゥラー・アクンドを拘束こうそくし、ムラー・ダードゥラーを殺害さつがいするなどの戦果せんかを挙あげたがターリバーンの勢いきおいは衰おとろえなかった。ガズニー州しゅうではターリバーンの力ちからが州都しゅうとのすぐそばの幹線かんせん道路どうろにまで及およんでおり、州しゅう内ないの3分ぶんの2の郡ぐんでは職場しょくば放棄ほうきが起おき、郡ぐん裁判所さいばんしょなどが業務ぎょうむを停止ていししていた。アフガニスタン大統領だいとうりょうのハーミド・カルザイはターリバーンに和平わへいを提案ていあんしたが、ターリバーンは外国がいこく軍ぐんの存在そんざいを理由りゆうに拒絶きょぜつした。ターリバーンは外国がいこく人じんを敵視てきししており2007年ねんターリバーン韓国かんこく人じん拉致らち事件じけんが起おきた。

パキスタンではラール・マスジッド籠城ろうじょう事件じけんが起おき、ワジリスタン和平わへい合意ごういが破やぶれ戦闘せんとうが再開さいかいした。米国べいこくは権力けんりょくを失うしないつつあるムシャラフ大統領だいとうりょうに代かわってブット元もと首相しゅしょうを再さい登板とうばんさせようと考かんがえたが選挙せんきょ中ちゅうに爆殺ばくさつされた。

9月、ISAFの活動かつどう期限きげん延長えんちょうを主題しゅだいとし、不朽ふきゅうの自由じゆう作戦さくせん (OEF)に対たいする謝意しゃいが前文ぜんぶんに盛もり込こまれた国際こくさい連合れんごう安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かい決議けつぎ1776が採択さいたくされたが、ロシアが棄権きけんにまわった。

2008年ねん

2008年ねん、アフガニスタン北部ほくぶでは雨あめ不足ふそくによる穀物こくもつの不作ふさくにより出稼でかせぎや難民なんみんが発生はっせいした。アフガニスタン南部なんぶではGarmsirの戦たたかい（カンダハール州しゅう）、Eagle's Summit作戦さくせん（ヘルマンド州しゅう）などが行おこなわれた。ウルズガーン州しゅうではヘルト・ウィルダースの製作せいさくした反はんイスラム的てきな短編たんぺん映画えいがに対たいする報復ほうふくと称しょうしてターリバーンがオランダ軍ぐんにIED攻撃こうげきや自爆じばく攻撃こうげき、待まち伏ぶせ攻撃こうげきを行おこなった（Khaz Oruzganの戦たたかい）。アフガニスタン東部とうぶのワナトの戦たたかいなどの結果けっか、米べい軍ぐんの戦死せんし者しゃは155人にんに及および（３割わり増ぞう）、NATO軍ぐんの戦死せんし者しゃも増加ぞうかした。アフガニスタンにはNATO軍ぐんを主力しゅりょくとする39か国こく5万まん5千せん人にんの部隊ぶたいが展開てんかいしていたが、統一とういつした指揮しきがなく各かく部隊ぶたいがバラバラに戦たたかっていた。ターリバーンは効果こうかの薄うすい自爆じばく攻撃こうげきや空爆くうばくを招まねく大だい規模きぼな歩兵ほへい戦せんを避さけて、即席そくせき爆発ばくはつ装置そうち（IED）による攻撃こうげきを増加ぞうかさせた。ターリバーンはアルカーイダやパキスタン軍ぐんの訓練くんれんによって練度れんどを上あげ、迫撃はくげき砲ほうの命中めいちゅう精度せいどを向上こうじょうさせた。またアフガニスタン政府せいふの支配しはいが地方ちほうまで及およばないため、ターリバーンがもめごとの仲裁ちゅうさいなどの住民じゅうみんサービスを行おこなって住民じゅうみんの心しんをつかんだ。ターリバーンと同おなじようにNPOやNGOがアフガニスタン政府せいふに代かわって住民じゅうみんサービスを担になったが、ターリバーンはNPOを攻撃こうげきしアフガニスタン日本人にっぽんじん拉致らち事件じけんが起おきた。米国べいこくのマコネル国家こっか情報じょうほう長官ちょうかんは「ターリバーンはアフガニスタンの約やく10～11％を支配しはいしている」と述のべた。

パキスタンではパキスタン・ターリバーンが首都しゅとから240キロのスワート地区ちくを占領せんりょうした。軍ぐん統合とうごう情報じょうほう局きょく（ISI）が後援こうえんするカシミール過激かげき派ははインドとの戦たたかいを続つづけていた（ムンバイ同時どうじ多発たはつテロ）。アルカーイダは連邦れんぽう直轄ちょっかつ部族ぶぞく地域ちいきでパキスタン・ターリバーンとも連携れんけいを取とり、両国りょうこくのターリバーンと行動こうどうを共ともにするようになった。米べい軍ぐんは無人むじん攻撃こうげき機きや特殊とくしゅ部隊ぶたいを使つかって連邦れんぽう直轄ちょっかつ部族ぶぞく地域ちいきのアルカーイダを攻撃こうげきしたが、アルカーイダもイスラマバード・マリオット・ホテル爆破ばくはテロ事件じけんなどで反撃はんげきした。また無人むじん攻撃こうげき機きの活用かつようにより民間みんかん人じんの被害ひがいが急増きゅうぞうした。事態じたいは緊迫きんぱくし、もはや単たんなるテロ対策たいさくではなく反乱はんらん鎮圧ちんあつを真剣しんけんに行おこなう必要ひつようがあると米国べいこくも認みとめざるを得えなかった。一方いっぽう、イラクでは戦争せんそうがようやく落おち着つきつつあった。アメリカ大統領だいとうりょう選挙せんきょではオバマ候補こうほがアフガニスタンへの関与かんよを拡大かくだいする考かんがえを示しめし、米べい軍ぐんも新しん大統領だいとうりょうの下したで増派ぞうはを行おこなう決意けついを固かためた。

2008年ねん9月がつ20日はつか、OEF参加さんか諸国しょこく、海上かいじょう阻止そし行動こうどうへの謝意しゃいを前文ぜんぶんに盛もり込こんだ国際こくさい連合れんごう安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かい決議けつぎ1833が採択さいたくされ、全会ぜんかい一致いっちで採択さいたくされた。

2009年ねん

ヘルマンド州しゅうサンギン郡ぐんのジャックソン前線ぜんせん基地きち

1月がつ、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくではバラク・オバマが大統領だいとうりょうに就任しゅうにんし、アフガニスタンでは二に回かい目めの大統領だいとうりょう選挙せんきょが迫せまっていた。アフガニスタンでは2008年ねんからデービッド・マキャナン将軍しょうぐんが正規せいき戦せんによって敵てき兵へいを殺害さつがいするテロ対策たいさくを行おこなっていた。しかし米べい軍ぐんはアフガニスタン東部とうぶでは勝利しょうりしていたものの、アフガニスタン南部なんぶで劣勢れっせいだった。米国べいこくはイラクに15万まん人にんを派兵はへいしていたが、アフガニスタンには3万まん8千せん人にんしか派兵はへいしていなかった。アフガニスタンにはその他たにNATO軍ぐん2万まん9千せん人にんや現地げんち人じんで構成こうせいされた3千せん人にんの対たいテロ追撃ついげきチーム（CTPT）などが居いた。2月、オバマ大統領だいとうりょうはアフガニスタンの大統領だいとうりょう選挙せんきょを支援しえんするために戦闘せんとう部隊ぶたい1万まん7000人にんと訓練くんれん要員よういん4000人にんを派兵はへいした。増派ぞうはした海兵かいへい遠征えんせい旅団りょだん（8000人にん）は手薄てうすだったヘルマンド州しゅうに配置はいちされ、ナウザドの戦たたかいやストライク・ソード作戦さくせんが行おこなわれた。しかし、そこはケシの大だい生産せいさん地ちではあるものの過疎かそ地帯ちたいの「死しの砂漠さばく」であり、カンダハールのような大都市だいとしは手薄てうすなままだった。5月、オバマ大統領だいとうりょうはマキャナン将軍しょうぐんを事実じじつ上じょう更迭こうてつして、スタンリー・マクリスタル将軍しょうぐんを後任こうにんに任命にんめいした。アメリカの軍部ぐんぶはイラクで成功せいこうした反はん政府せいふ活動かつどう鎮圧ちんあつをアフガニスタンでも行おこなおうとしていた。反はん政府せいふ活動かつどう鎮圧ちんあつとはイラク駐留ちゅうりゅう米まい軍ぐん司令しれい官かんのデヴィッド・ペトレイアス将軍しょうぐんが考案こうあんした作戦さくせんで、「敵てきを殺ころしても戦争せんそうを終おわらせることは出来できない」「住民じゅうみんを守まもり、人心じんしんを収攬しゅうらんし、ともに生活せいかつし、安定あんていした有能ゆうのうな政府せいふが栄さかえるように治安ちあんを維持いじしなければならない」と言いう考かんがえに基もとづく作戦さくせんである（対たい反乱はんらん作戦さくせん）。8月、マクリスタル将軍しょうぐんは反はん政府せいふ活動かつどう鎮圧ちんあつを行おこなうためにオバマ大統領だいとうりょうに4万まん人にんの増派ぞうはを要求ようきゅうした。

しかしオバマ大統領だいとうりょうは大統領だいとうりょう選挙せんきょではアフガニスタンに増派ぞうはすべきと主張しゅちょうしたものの、際限さいげんのない駐留ちゅうりゅうや出費しゅっぴには反対はんたいだった。反はん政府せいふ活動かつどう鎮圧ちんあつを行おこなうには40～50人にんの住民じゅうみんを守まもるために軍人ぐんじんや警察官けいさつかんが１人ひとり必要ひつようで、理論りろん上じょうは米べい軍ぐんが10万まん人にん必要ひつようだった。また10年ねん以上いじょうの長期ちょうき的てきな国家こっか建設けんせつを行おこない、アフガニスタンの警察けいさつや軍ぐんを40万まん人にん養成ようせいする必要ひつようがあり、その場合ばあいの経費けいひは8890億おくドルに及およぶと予想よそうされた。しかしソビエト連邦れんぽうはかつてアフガニスタンに10万まん人にんを派兵はへいし、100万まん人にんのアフガニスタン人じんを殺害さつがいしたが戦争せんそうに勝利しょうりすることは出来できなかった。米国べいこく政府せいふは反はん政府せいふ活動かつどう鎮圧ちんあつや国家こっか建設けんせつに深入ふかいりして、アフガニスタンから撤退てったい出来できなくなることを恐おそれていた。

米国べいこくの軍部ぐんぶはアフガニスタンに4万まん人にんを増派ぞうはして、時間じかんをかけて反はん政府せいふ活動かつどう鎮圧ちんあつを行おこないターリバーンを撃滅げきめつしたいと考かんがえており、共和党きょうわとうもそれを支持しじしていた。しかしオバマ大統領だいとうりょうは短期間たんきかんで迅速じんそくに軍事ぐんじ行動こうどうを行おこなって撤退てったいすることが出来できる出口いでぐち戦略せんりゃくを求もとめていた。軍部ぐんぶや政権せいけん内ないで議論ぎろんが行おこなわれ、結局けっきょくオバマ大統領だいとうりょうは本格ほんかく的てきな反はん政府せいふ活動かつどう鎮圧ちんあつやアフガニスタン軍ぐんの長期ちょうき的てきな養成ようせいは行おこなわず、一時いちじ的てきに3万まん人にんの増派ぞうはを行おこなってアフガニスタンの軍ぐんや警察けいさつが治安ちあんを管理かんりできる程度ていどにターリバーンの戦闘せんとう能力のうりょくを弱体じゃくたい化かさせ、2011年ねん7月がつから撤退てったいを始はじめる「掃討そうとう・堅守けんしゅ・建設けんせつ・転移てんい」を行おこなうと決断けつだんした。12月1日にち、オバマ大統領だいとうりょうはニューヨーク州しゅうの陸軍りくぐん士官しかん学校がっこうで新しん戦略せんりゃくを発表はっぴょうし、残のこりの1万まん3000人にんを派兵はへいした。

米国べいこくの軍部ぐんぶはオバマ大統領だいとうりょうの決断けつだんに従したがったが本心ほんしんでは納得なっとくしておらず、不足ふそくした兵力へいりょくをNATO軍ぐんの増派ぞうはで補おぎなって反はん政府せいふ活動かつどう鎮圧ちんあつを行おこなおうとした。一方いっぽう、NATO加盟かめい国こくには様々さまざまな国情こくじょうがあり、例たとえばドイツでは戦争せんそう継続けいぞくについて国論こくろんが分裂ぶんれつしていた。ターリバーンやイスラム聖戦せいせん連合れんごう（IJU）はドイツ軍ぐんを撤退てったいに追おい込こむため、クンドゥーズ州しゅう駐留ちゅうりゅうのNATO軍ぐんに数すうか月げつ間あいだ攻撃こうげきを加くわえた。その結果けっか、巻まき添ぞえで民間みんかん人じんに死傷ししょう者しゃが出でて（クンドゥーズ空爆くうばく事件じけん）、ドイツの閣僚かくりょうが辞任じにんした。イギリスはアフガニスタンに9000人にんを派兵はへいしていたが、更さらに500人にんの増派ぞうはを発表はっぴょうした。マクリスタル将軍しょうぐんは兵力へいりょく不足ふそくに対応たいおうするために、アフガニスタン全土ぜんどでの反はん政府せいふ活動かつどう鎮圧ちんあつは諦あきらめて400郡ぐん中ちゅう80郡ぐんを重点じゅうてん地域ちいきに指定していし、ヘルマンド州しゅうやカンダハール州しゅう、カーブル周辺しゅうへんやパキスタン国境こっきょうなどで反はん政府せいふ活動かつどう鎮圧ちんあつを行おこなって支配しはい地域ちいきを広ひろげることにした。戦争せんそうは激はげしさを増まし、2008年ねんと比くらべて米兵べいへいの死者ししゃが急増きゅうぞうした。

アフガニスタンの大統領だいとうりょう選挙せんきょはカルザイが再選さいせんしたものの、選挙せんきょ不正ふせいや汚職おしょくが酷ひどく米国べいこくの言いう事ことを聞きかなくなっていた。パキスタンではパキスタン・ターリバーンが首都しゅとから100～160キロにまで迫せまり、核兵器かくへいき備蓄びちく基地きちのタルベラを脅おどかした。パキスタン政府せいふは連邦れんぽう直轄ちょっかつ部族ぶぞく地域ちいき（FATA）に14万まん人にんの軍ぐんを派遣はけんしてパキスタン・ターリバーンと戦たたかった。パキスタン軍ぐんの戦死せんし者しゃは2006年ねん以降いこうの5年間ねんかんで2300人にんに及およんだ。この戦たたかいの中なかで注目ちゅうもくされたのがマララ・ユスフザイである。一方いっぽう、パキスタンはアフガニスタン・ターリバーンに対たいしては複雑ふくざつな態度たいどをとっていた。パキスタン政府せいふはアフガニスタン・ターリバーンと戦たたかう米べい軍ぐんやNATO軍ぐんに対たいする軍需ぐんじゅ物資ぶっしの通過つうかを認みとめ、連邦れんぽう直轄ちょっかつ部族ぶぞく地域ちいきに対たいする無人むじん機き攻撃こうげきも認みとめていた。一方いっぽう、軍ぐん統合とうごう情報じょうほう局きょく（ISI）はハッカーニ・ネットワークやターリバーン指導しどう部ぶとの関係かんけいを継続けいぞくしており、連邦れんぽう直轄ちょっかつ部族ぶぞく地域ちいきは米べい軍ぐんやNATO軍ぐんや諜報ちょうほう機関きかんが侵入しんにゅうできない安全あんぜん地帯ちたいと化かしていた。アフガニスタン・ターリバーンはアフガニスタン東部とうぶや南部なんぶに2万まん5千せん人にんの兵力へいりょくを展開てんかいし、パキスタンの連邦れんぽう直轄ちょっかつ部族ぶぞく地域ちいきで十分じゅうぶんな休息きゅうそくを取とって戦争せんそうを続つづけていた。

ヘルマンド州しゅうマルージャ郡ぐん

第だい二に回かい大統領だいとうりょう選挙せんきょ後ご

2010年ねん

アルガンダーブ川がわ

米べい軍ぐんやオバマ政権せいけんはターリバーン発祥はっしょうの地ちであるカンダハール州しゅうや麻薬まやく取引とりひきの中心ちゅうしん地ちであるヘルマンド州しゅうを戦争せんそうの重心じゅうしんとみなしていた。2010年ねん2月がつ、国際こくさい治安ちあん支援しえん部隊ぶたい（ISAF）はヘルマンド州しゅうのマルージャ郡ぐんでモシュタラク作戦さくせんを行おこなった。マクリスタル将軍しょうぐんはマルージャ郡ぐんにアフガニスタン政府せいふの公務員こうむいんを派遣はけんして住民じゅうみんにサービスを行おこなう移動いどう政府せいふを試こころみたがうまく行いかなかった。同月どうげつ、米べい軍ぐんはカンダハール州しゅうに精鋭せいえい部隊ぶたいである第だい101空挺くうてい師団しだんの第だい二に旅団りょだん（4800人にん）を投入とうにゅうした。ターリバーンはアルガンダーブ川かわ沿ぞいの灌漑かんがい地帯ちたいに潜ひそみ、米べい軍ぐんを即席そくせき爆発ばくはつ装置そうち（IED）で攻撃こうげきし、地下水ちかすい路ろから奇襲きしゅう攻撃こうげきを行おこなったので、米べい軍ぐんの損害そんがいが増大ぞうだいした。6月、マクリスタル将軍しょうぐんが兵力へいりょく不足ふそくを嘆なげき、マクリスタル将軍しょうぐんの部下ぶかがバイデン副ふく大統領だいとうりょうなどを批判ひはんしたことをローリング・ストーン誌しが面白おもしろおかしく報道ほうどうし、マクリスタル将軍しょうぐんが辞任じにんした。9月、国際こくさい治安ちあん支援しえん部隊ぶたい（ISAF）はドラゴン・ストライク作戦さくせんを実施じっしして、ターリバーンを灌漑かんがい地帯ちたいから一掃いっそうした。

辞任じにんしたマクリスタル将軍しょうぐんの後任こうにんには、反はん政府せいふ活動かつどう鎮圧ちんあつ理論りろんの考案こうあん者しゃであるペトレイアス将軍しょうぐんが就任しゅうにんした。ペトレイアス将軍しょうぐんは統合とうごう特殊とくしゅ作戦さくせんコマンドによる夜間やかん襲撃しゅうげきを前年ぜんねんの5倍ばいに増ふやし、365人にんのターリバーン指揮しき官かんを殺害さつがいし、1400人にんのターリバーンを捕虜ほりょにした。また国際こくさい治安ちあん支援しえん部隊ぶたい（ISAF）は重点じゅうてん地域ちいきを96郡ぐんに増ふやしてターリバーンを攻撃こうげきした。しかし戦況せんきょうに劇的げきてきな変化へんかは生しょうじなかった。

10月、北大西洋きたたいせいよう条約じょうやく機構きこう（NATO）の首脳しゅのう会議かいぎがリスボンで開ひらかれ、国際こくさい治安ちあん支援しえん部隊ぶたい（ISAF）からアフガニスタン治安ちあん軍ぐんへの段階だんかい的てきな治安ちあん維持いじ権限けんげんの移譲いじょう（撤退てったい）が決きまった。

パキスタンでは連邦れんぽう直轄ちょっかつ部族ぶぞく地域ちいき（FATA）がタイムズスクエア爆破ばくは未遂みすい事件じけん（5月がつ）のような米国べいこく本土ほんどに対たいするテロ攻撃こうげきの温床おんしょうになっていた。CIAは連邦れんぽう直轄ちょっかつ部族ぶぞく地域ちいきに対たいして無人むじん攻撃こうげき機きで122回かいの攻撃こうげきを行おこない、アフガニスタン人じんで構成こうせいされた対たいテロ追撃ついげきチーム（CTPT）を越境えっきょうさせた。9月、米べい軍ぐんの攻撃こうげきヘリコプターがパキスタンに領空りょうくう侵犯しんぱんし、パキスタン軍ぐんの検問けんもん所しょと交戦こうせんした。パキスタンは抗議こうぎのためトールハムを一時いちじ的てきに封鎖ふうさし、NATOの補給ほきゅう路ろを妨害ぼうがいした。ハッカーニ・ネットワークもクエッタなどでNATOの燃料ねんりょう輸送ゆそう車しゃを攻撃こうげきした。

2011年ねん

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのオバマ大統領だいとうりょうは2009年ねんの増派ぞうはの際さい、2011年ねん7月がつから撤退てったいを始はじめると決きめていた。撤退てったい開始かいしが間近まぢかに迫せまった5月、米べい軍ぐんの特殊とくしゅ部隊ぶたいがパキスタンの首都しゅとイスラマバード郊外こうがいのアボタバードにあった邸宅ていたくを急襲きゅうしゅうし、 ウサーマ・ビン・ラーディンを殺害さつがいした。一方いっぽう、「掃討そうとう・堅守けんしゅ・建設けんせつ・転移てんい」戦略せんりゃくの進展しんてんは思おもわしくなかった。ターリバーンは米べい軍ぐんと互角ごかくの戦たたかいを行おこない、カルザイ政権せいけんの汚職おしょくは改善かいぜんせず、アフガニスタン軍ぐんの規模きぼ拡大かくだいも計画けいかく通どおりには進すすまなかった。

7月がつ、カンダハールから米べい軍ぐんとカナダ軍ぐんが撤退てったいを開始かいしした。同月どうげつ、カンダハールの実力じつりょく者しゃアフマド・ワリー・カルザイが暗殺あんさつされた。

パキスタンでは米べい軍ぐんが前線ぜんせん基地きちを設置せっちするために米べい軍ぐんの関係かんけい者しゃ285人にんを非公式ひこうしきに活動かつどうさせていたが臨時りんじ職員しょくいんのモラルは低ひくく、１月がつにレイモンド・デイビス事件じけんが起おきた。11月、NATO軍ぐんが再ふたたびパキスタン軍ぐんと交戦こうせん・誤爆ごばくしたので、パキスタンはトールハムを一時いちじ的てきに封鎖ふうさし、NATOの補給ほきゅう路ろを妨害ぼうがいした。

2012年ねん

2012年ねん7月がつ、「アフガニスタンに関かんする東京とうきょう会合かいごう」が開催かいさいされた。アフガニスタン治安ちあん軍ぐんの年間ねんかん予算よさん（41億おくドル）の負担ふたん割合わりあい（米国べいこく24億おくドル、欧州おうしゅう12億おくドル、アフガニスタン政府せいふ5億おくドル）などが決きまった。

2013年ねん

2013年ねん6月がつ、国際こくさい治安ちあん支援しえん部隊ぶたい（ISAF）からアフガニスタン治安ちあん軍ぐんへの治安ちあん権限けんげんの委譲いじょうが完了かんりょうした。

同年どうねん11月がつ、米べい軍ぐんはパキスタン・ターリバーンの指導しどう者しゃハキームッラー・マフスードを空爆くうばくし殺害さつがいした。

2014年ねん

2014年ねん12月、国際こくさい治安ちあん支援しえん部隊ぶたい（ISAF）及および「不朽ふきゅうの自由じゆう作戦さくせん」が終了しゅうりょうし、最盛さいせい期きには約やく13万まん人にんにも及およんだ外国がいこく軍ぐんの多おおくが国外こくがいに撤退てったいした。多た国籍こくせき軍ぐんは「確固かっこたる支援しえん任務にんむ」及および「自由じゆうの番人ばんにん作戦さくせん」に移行いこうし、治安ちあんはアフガニスタン軍ぐんや警察けいさつが独力どくりょくで維持いじすることになった。

同年どうねん5月がつ、トルクメニスタン軍ぐんがバードギース州しゅうゴールマーチ郡ぐんから越境えっきょうしてきた武装ぶそう集団しゅうだんに襲撃しゅうげきされた。ウズベキスタン人じんやトルクメニスタン人じんなどで構成こうせいされた武装ぶそう集団しゅうだんはISAF撤退てったいを機きに永世えいせい中立ちゅうりつ国こくであるトルクメニスタンからアフガニスタンを攻撃こうげきしようとしていた。

同年どうねん4月がつ、ジンナー国際こくさい空港くうこうに対たいする攻撃こうげきの報復ほうふくとして、パキスタン軍ぐんが北きたワジリスタンを攻撃こうげきした（Zarb-e-Azb作戦さくせん）。12月、パキスタン・ターリバーンは軍ぐんが運営うんえいする学校がっこうを襲撃しゅうげきし、140人にん以上いじょうの生徒せいとを殺害さつがいした（2014年ねんペシャーワル学校がっこう襲撃しゅうげき事件じけん）。

第だい三さん回かい大統領だいとうりょう選挙せんきょとターリバーンの分裂ぶんれつ危機きき

2015年ねん欧州おうしゅう難民なんみん危機きき

2015年ねん

2015年ねん、イスラム国こくはパリ同時どうじ多発たはつテロ事件じけんなどを起おこし、世界せかいに活動かつどうの輪わを広ひろげていた。1月、ターリバーンの一部いちぶがイスラム国こくに寝返ねがえって「ホラサン州しゅう」（ISIL-K）の設置せっちを宣言せんげんした。5月、アフガニスタン政府せいふとターリバーンとの間あいだで非公式ひこうしき協議きょうぎが行おこなわれ、ターリバーンの政治せいじ事務所じむしょをカタールのドーハに開設かいせつすることで合意ごういした。7月、パキスタンの仲介ちゅうかいでアフガニスタン政府せいふとターリバーンとの間あいだで公式こうしきの和平わへい協議きょうぎが行おこなわれ、ターリバーンの最高さいこう指導しどう者しゃムハンマド・オマルが声明せいめいを発表はっぴょうした。ところがその直後ちょくごオマルが2013年ねんに病死びょうししていたことが明あきらかとなり交渉こうしょうは中断ちゅうだんした。ターリバーンの内部ないぶで抗こう争そうが勃発ぼっぱつし、武力ぶりょく衝突しょうとつが起おきた。その後ご、ターリバーンの最高さいこう指導しどう者しゃにアフタル・ムハンマド・マンスールが就任しゅうにんした。一方いっぽう、ウズベキスタン・イスラム運動うんどうの指導しどう者しゃであるウスマン・ガーズィはイスラム国こくに寝返ねがえったが、ターリバーンに攻せめられて死亡しぼうした。9月、ターリバーンはアフガニスタン第だい六ろくの都市としクンドゥーズを短期たんき的てきに占領せんりょうした（クンドゥーズの戦たたかい）。10月、衝撃しょうげきを受うけたアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのバラク・オバマ大統領だいとうりょうは米べい軍ぐんの完全かんぜん撤退てったいを断念だんねんした。同年どうねん、多おおくのアフガン難民なんみんが欧州おうしゅうに避難ひなんしようとして、2015年ねん欧州おうしゅう難民なんみん危機ききの一因いちいんになった。

2016年ねん

2016年ねん3月がつ、ターリバーンの内部ないぶ抗争こうそうが勃発ぼっぱつし、ヘラート州しゅうで150人にんが死亡しぼうする大だい規模きぼな戦闘せんとうが行おこなわれた。5月、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくはターリバーンの最高さいこう指導しどう者しゃアフタル・ムハンマド・マンスールを殺害さつがいした。一説いっせつによるとアフタルは和平わへい協議きょうぎには否定ひてい的てきだったと言いう。後任こうにんの最高さいこう指導しどう者しゃにはハイバトゥラー・アクンザダが就任しゅうにんした。

2017年ねん

2017年ねん10月がつ、イスラム国こくの首都しゅとラッカが陥落かんらくした。アフガニスタンでもイスラム国こくの最高さいこう指導しどう者しゃが米べい軍ぐんによる空爆くうばくで死亡しぼうし、後継こうけい者しゃ争あらそいにより組織そしきが２ふたつに割われ、ムアウィア・ウズベキスタ派はがアフガニスタン北部ほくぶに移動いどうした。同月どうげつ、アフガニスタン政府せいふの支配しはい地域ちいきは407郡ぐん中ちゅう231郡ぐん（57％）にすぎないことが判明はんめいした。政府せいふとターリバーンは122郡ぐん（30％）の支配しはいを争あらそっており、ターリバーンが54郡ぐん（13％）を支配しはいしていることが分わかった。ターリバーンの支配しはい地域ちいきは2015年ねん11月から2017年ねん8月がつの間あいだに倍増ばいぞうしており、紛争ふんそう地域ちいきも1.4倍ばいに増加ぞうかした。特とくにウルズガーン州しゅう（7郡ぐん中ちゅう5郡ぐん）やクンドゥーズ州しゅう（7郡ぐん中ちゅう5郡ぐん）、ヘルマンド州しゅう（14郡ぐん中ちゅう9郡ぐん）は大半たいはんをターリバーンに支配しはいされていた。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのドナルド・トランプ大統領だいとうりょうは状況じょうきょうの悪化あっかを防ふせぐために増派ぞうはを決定けっていした。一説いっせつによると2017年ねん以降いこう、空爆くうばくによる民間みんかん人じんの死者ししゃが急増きゅうぞうし、2019年ねんには2016年ねんの３倍ばい（700人にん）に達たっしたと言いう。

12月、約やく200人にんのイスラム国こくの部隊ぶたいがジョウズジャーン州しゅうダルザーブ郡ぐん（Darzab）を支配しはい下かに置おき、基地きちを建設けんせつしていた。部隊ぶたいにはシリアから逃にげてきたアルジェリア人ひとやフランス人ひとなども居いた。

2018年ねん

2018年ねん2月がつ、米べい軍ぐんはジョウズジャーン州しゅうのイスラム国こく部隊ぶたいをB52で爆撃ばくげきし、特殊とくしゅ部隊ぶたいで急襲きゅうしゅうして現地げんち司令しれい官かんを殺害さつがいした。ターリバーンもイスラム国こくと交戦こうせんし、大だい打撃だげきを受うけたイスラム国こくの部隊ぶたいは8月がつにアフガニスタン政府せいふに投降とうこうした。投降とうこうしたイスラム国こくの部隊ぶたいは約やく250人にんでフランス人じんの他ほかにインドネシア人ひとやウズベキスタン人じんやタジキスタン人じん、パキスタン人じんなども加くわわっており、女性じょせいや子供こどもの戦闘せんとう員いんも居いた。一方いっぽう、イスラム国こくは戦闘せんとう員いんにアフガニスタンへの入国にゅうこくを呼よび掛かけており、アフガニスタン北部ほくぶに潜伏せんぷく中ちゅうの戦闘せんとう員いんは5000人にんに達たっするという説せつがあった。

8月がつ、バードギース州しゅうゴールマーチ郡ぐんのチャイニーズ・キャンプ基地きちが1000人にんのターリバーンに包囲ほういされ、孤立こりつ無援むえんで陥落かんらくした。基地きちには106人にんの守備しゅび隊たいが居いたが、アフガニスタン軍ぐんはガズニ州しゅうの攻防こうぼう戦せんやジョウズジャーン州しゅうのイスラム国こく部隊ぶたいの降伏ごうぶくなどに忙殺ぼうさつされてヘリコプターが足たりず、ゴールマーチ郡ぐんまで支援しえんの手てが回まわらなかった。

同年どうねん5月がつ、パキスタンは連邦れんぽう直轄ちょっかつ部族ぶぞく地域ちいきを廃止はいしし、カイバル・パクトゥンクワ州しゅうに併合へいごうした。国連こくれんによると連邦れんぽう直轄ちょっかつ部族ぶぞく地域ちいきに対たいする軍事ぐんじ作戦さくせんにより、アルカーイダ系けいの武装ぶそう集団しゅうだんがアフガニスタンに退避たいひした。2018年ねん現在げんざいアフガニスタンには1万まん人にん～1万まん5000人にんの外国がいこく人じん戦闘せんとう員いんが居おり、そのうちアルカーイダは265人にん～400人にんだった。アルカーイダはターリバーンの保護ほごの下したでザーブル州しゅうに訓練くんれん基地きちを設もうけており、ウサマ・ビン・ラディンの息子むすこハムザ・ビン・ラーディンに統率とうそつされている部隊ぶたいもあった。同年どうねん6月がつ、米べい軍ぐんはパキスタン・ターリバーンの指導しどう者しゃマウラナ・ファズルッラーをアフガニスタン領内りょうないで空爆くうばくし殺害さつがいした。

2019年ねん

国連こくれんによるとターリバーンの戦闘せんとう員いんは5万まん5000人にん〜8万まん5000人にんであり、非ひ戦闘せんとう員いんを含ふくめると総そう兵力へいりょくは10万まん人にんに達たっする。2019年ねん3月がつ、ファーリヤーブ州しゅうでは州都しゅうとマイーマナをはじめ州しゅう内ないの大半たいはんの郡ぐんがターリバーンに包囲ほういされ、アフガニスタン軍ぐんに多数たすうの戦死せんし者しゃが出でた。ガニー大統領だいとうりょうによると2014年ねんから5年間ねんかんで4万まん5000人にん以上いじょうのアフガニスタン治安ちあん部隊ぶたい員いんが殺害さつがいされた。8月、ハムザ・ビン・ラーディンの死亡しぼうが発表はっぴょうされた。9月、四よん回かい目めの大統領だいとうりょう選挙せんきょが行おこなわれた。同月どうげつ、米べい軍ぐんとアフガニスタン軍ぐんはヘルマンド州しゅうでインド亜あ大陸たいりくのアルカーイダ（AQIS）の指導しどう者しゃのアシム・ウマルを殺害さつがいした。国連こくれんによるとアフガニスタン国内こくないのアルカーイダは400人にん〜600人にんであり、ターリバーンの保護ほご下かでヘルマンド州しゅうなど12州しゅうで活動かつどうしていた。アルカーイダはターリバーンと頻繁ひんぱんに会合かいごうを持もち、作戦さくせん計画けいかくや訓練くんれんについて話はなし合あっている。またアルカーイダはハッカーニ・ネットワークに資金しきんや訓練くんれんを提供ていきょうして共同きょうどうで2000人にんの部隊ぶたいを編成へんせいし前線ぜんせんに送おくり出だした。ウマルの死後しご、アルカーイダはターリバーンの最高さいこう指導しどう者しゃの指示しじでアフガニスタン東部とうぶに移動いどうしたと言いう。12月、ナンガルハル州しゅうでNPO活動かつどうを行おこなっていた中村なかむら哲あきら (医師いし)が殺害さつがいされた。

同年どうねん2月がつ、インドは2019年ねんプルワマ襲撃しゅうげき事件じけんの報復ほうふくのために、パキスタン領内りょうないのカシミール過激かげき派はの拠点きょてんを爆撃ばくげきした（バーラーコート空爆くうばく）。8月、インドはパキスタンのテロを防ふせぐためにジャンムー・カシミール州しゅうの自治じち権けんを廃止はいし・はく奪だつし直轄ちょっかつ領りょう化かした（ジャンムー・カシミール連邦れんぽう直轄ちょっかつ領りょう）。

和平わへい合意ごうい成立せいりつと戦闘せんとうの激化げきか

2020年ねん

詳細しょうさいは「アフガニスタン和平わへいプロセス」および「アフガニスタンからのアメリカ軍ぐんの撤退てったい (2020年ねん-2021年ねん)」を参照さんしょう

カタールのドーハで和平わへい合意ごういに署名しょめいするターリバーンの代表だいひょうアブドゥル・ガニ・バラダル、米国べいこくの特使とくしザルメイ・ハリルザド（2020年ねん2月がつ29日にち）

2月がつ29日にち、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくとターリバーンの間あいだで和平わへい合意ごういが成立せいりつした（ドーハ合意ごうい）。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくは135日にち以内いないに駐留ちゅうりゅう軍ぐんを縮小しゅくしょうし、14ヶ月かげつ後ごの2021年ねん4月がつ末まつまでにNATO軍ぐんと共ともに完全かんぜん撤退てったいすること、ターリバーンがアルカーイダなどを取とり締しまりアフガニスタンをテロの拠点きょてんにしないことが決きまった。また合意ごういにはアフガニスタン政府せいふが5000人にん、ターリバーンが1000人にんの捕虜ほりょを解放かいほうすることも盛もり込こまれた。しかし和平わへい合意ごういに参加さんかしていないアフガニスタン政府せいふは5000人にんの解放かいほうに同意どういせず、1500人にんの解放かいほうしか認みとめなかった。アフガニスタン政府せいふの関与かんよなしに結むすんだこの合意ごういは、専門せんもん家かに「史上しじょう最もっとも不名誉ふめいよな外交がいこう交渉こうしょうの一ひとつ 」と呼よばれた。

3月、ガニー大統領だいとうりょうが再選さいせんし大統領だいとうりょう就任しゅうにんを宣言せんげんしたが、対立たいりつ候補こうほのアブドラ行政ぎょうせい長官ちょうかんは納得なっとくせず、混乱こんらんが続つづいた。

4月がつ、アフガニスタン政府せいふは合計ごうけい300人にんの捕虜ほりょを解放かいほうしたが、ターリバーンは納得なっとくせずアフガニスタン政府せいふとの交渉こうしょうを打うち切きった。また交渉こうしょう中ちゅうも戦闘せんとうは継続けいぞくしており、ターリバーンは3月がつから4月がつ中旬ちゅうじゅんまでに2804回かいの攻撃こうげきを行おこない、789人にんの民間みんかん人じんが死傷ししょうした。

5月、ガニー大統領だいとうりょうとアブドラ行政ぎょうせい長官ちょうかんの交渉こうしょうが成立せいりつし、再ふたたび両者りょうしゃで権力けんりょくを分わけ合あうことになった。またガニー大統領だいとうりょうはターリバーンに対たいしてもラマダン明あけのイード・アル＝フィトルの停戦ていせんが実現じつげんしたことを評価ひょうかし、2000人にんの捕虜ほりょ釈放しゃくほうを発表はっぴょうした。

6月がつ、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくは駐留ちゅうりゅう軍ぐん縮小しゅくしょうの約束やくそくを果はたして駐留ちゅうりゅう軍ぐんを1万まん2000人にんから8600人にんに削減さくげんし、11月までに4500人にんにすると発表はっぴょうした。ターリバーンは米べい軍ぐんや都市とし部ぶに対たいする攻撃こうげきは控ひかえているが、地方ちほうで戦闘せんとうを続つづけている。

9月、アフガニスタン政府せいふとターリバーンの初はつの和平わへい交渉こうしょうがカタールで開催かいさいされた。アフガニスタン政府せいふは民主みんしゅ主義しゅぎの維持いじを主張しゅちょうしたが、ターリバーンはイスラム政体せいたい樹立じゅりつを要求ようきゅうした。一方いっぽう、ターリバーンは和平わへい協議きょうぎ中ちゅうにもかかわらず34州しゅう中ちゅう28州しゅうで攻撃こうげきをしかけた。

10月、ヘルマンド州しゅうでは州都しゅうと周辺しゅうへんの複数ふくすうの検問けんもん所しょやカンダハール州しゅうに向むかう基幹きかん道路どうろの一部いちぶがターリバーンに占領せんりょうされ、変電へんでん所しょの破壊はかいにより大だい規模きぼな停電ていでんが発生はっせいした。州都しゅうと陥落かんらくの危機ききに対たいして、米べい軍ぐんはターリバーンの攻撃こうげきをドーハ合意ごうい違反いはんと断定だんていして空爆くうばくを行おこない、ターリバーンを撃退げきたいした。攻撃こうげきを首謀しゅぼうしたターリバーンの影かげの副ふく知事ちじは捕虜ほりょ交換こうかんによりアフガニスタン政府せいふから解放かいほうされたばかりだった。国連こくれんはこの攻撃こうげきをどの程度ていど和平わへい合意ごういを破やぶれば米べい軍ぐんが出でてくるかを試ためすための攻撃こうげきだったと見み做している。

同月どうげつ、アフガニスタン政府せいふは即時そくじ停戦ていせんを要求ようきゅうしたが、ターリバーンは応おうじずに戦闘せんとうが続つづいた。カーブルではイスラム国こくがシーア派は地区ちくの病院びょういんや学校がっこうを襲撃しゅうげきして子供こどもや妊にん婦ふを殺害さつがいし、ナンガハール州しゅうの刑務所けいむしょを襲撃しゅうげきして囚人しゅうじんを解放かいほうした。一説いっせつによると刑務所けいむしょの襲撃しゅうげき者しゃは多た国籍こくせきであり、イスラム国こくはアフガニスタンだけでなくインドからタジキスタンまで広域こういきに活動かつどうしていると言いう。

同月どうげつ、FBIが最さい重要じゅうよう指名しめい手配てはいしていたアルカーイダのアブ・ムシン・アル・マスリーをアフガニスタン治安ちあん軍ぐんがガズニー州しゅうで殺害さつがいした。

11月、ターリバーンの攻撃こうげきが続つづく中なかでトランプ大統領だいとうりょうは撤退てったいを急いそいだ。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくは駐留ちゅうりゅう軍ぐんを2021年ねん1月がつまでに2500人にんにすると発表はっぴょうし、一方いっぽう的てきに1年間ねんかんで約やく1万まん人にんの兵力へいりょくを削減さくげんした。なおアフガン治安ちあん軍ぐんはアフガニスタン軍ぐんが約やく18万まん7000人にん、警察けいさつが約やく11万まん8000人にんである。一方いっぽう、ターリバーンの兵力へいりょくは約やく5万まん8千せん人にんから10万まん人にんである。

12月、カンダハール州しゅうではアフガニスタン軍ぐんの一部いちぶが193もの検問けんもん所しょを放棄ほうきして勝手かってに撤退てったいしたことが問題もんだいになった。ターリバーンは過去かこ数すう年ねんに渡わたって検問けんもん所しょを重点的じゅうてんてきに攻撃こうげきし、アフガニスタン軍ぐんや警察けいさつに被害ひがいを与あたえてきた。そのためアフガニスタン軍ぐんや警察けいさつは防備ぼうびが手薄てうすな検問けんもん所しょを廃止はいしして、防備ぼうびの硬かたい基地きちに部隊ぶたいを移動いどうさせる政策せいさくを取とっているが、地元じもとの反対はんたいも根強ねづよい。一方いっぽう、ターリバーンは道路どうろを占領せんりょうして補給ほきゅう線せんを寸断すんだんすることで、アフガニスタン軍ぐんや警察けいさつを検問けんもん所しょや基地きちから撤退てったいさせている。

和平わへい交渉こうしょう再開さいかい後ごの9月がつ以降いこう、ターリバーンは攻撃こうげきを激化げきかさせており、例年れいねん戦闘せんとうが小康しょうこう状態じょうたいになる冬季とうきも異例いれいのペースで攻撃こうげきを続つづけた。また暗殺あんさつを強化きょうかしており、政府せいふや軍ぐん・警察けいさつ関係かんけい者しゃだけでなく、NPOや医療いりょう従事じゅうじ者しゃ、ジャーナリスト、裁判官さいばんかんや検察官けんさつかん、知識ちしき人じんや著名ちょめいな女性じょせいなども殺害さつがいした。またターリバーンに対たいして批判ひはん的てきな宗教しゅうきょう学者がくしゃの暗殺あんさつも行おこなっており、国連こくれんはアフガニスタンで起おきた暗殺あんさつ事件じけんの8割わり以上いじょうはターリバーンによるものと見み做していた。結局けっきょく、和平わへい合意ごういが成立せいりつした2020年ねんも戦闘せんとうは続つづき、ターリバーンとアフガニスタン治安ちあん軍ぐんの双方そうほうに多数たすうの死傷ししょう者しゃが出でた。

2021年ねん

アフガニスタンの大都市だいとし（2015年ねん）

順位じゅんい	都市とし名めい	人口じんこう
1	カーブル	約やく367.8万まん人にん
2	ヘラート	約やく47.7万まん人にん
3	カンダハール	約やく43.5万まん人にん
4	マザーリシャリーフ	約やく40.2万まん人にん
5	ジャララバード	約やく22.6万まん人にん
6	クンドゥーズ	約やく15.7万まん人にん
7	プレ・フムリー	約やく10.8万まん人にん
8	マイーマナ	約やく8.4万まん人にん
9	シェベルガーン	約やく8.2万まん人にん
10	タールカーン	約やく7.4万まん人にん

1月がつ、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく大統領だいとうりょうにジョー・バイデンが就任しゅうにんした。アフガニスタンではターリバーンの攻撃こうげきが続つづき、民間みんかん人じんに多数たすうの死傷ししょう者しゃが出でていた。またターリバーンとアルカーイダの協力きょうりょく関係かんけいも続つづいていた。バイデン政権せいけんやアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの議員ぎいん団だんはターリバーンが和平わへい合意ごういを順守じゅんしゅしていないとみなし、トランプ政権せいけんによる性急せいきゅうな撤退てったい政策せいさくを見直みなおすことにした。

2月がつ、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくや北大西洋きたたいせいよう条約じょうやく機構きこう（NATO）は4月がつ末まつの完全かんぜん撤退てったいを断念だんねんし、撤退てったい期限きげんを延長えんちょうした。

3月、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくは駐留ちゅうりゅう軍ぐん撤退てったい後ごのターリバーンの勢力せいりょく拡大かくだいやカーブル陥落かんらくの可能かのう性せいに危機きき感かんを表あらわし、アフガニスタン政府せいふやターリバーンに国連こくれんやロシア、中国ちゅうごく、インドなどの地域ちいき大国たいこくを交まじえた多国たこく間あいだによる和平わへい交渉こうしょうの実施じっしやトルコ軍ぐんなどによる新あらたな国際こくさい平和へいわ維持いじ活動かつどうの設立せつりつ、アフガニスタン政府せいふとターリバンによる連立れんりつ政権せいけんの樹立じゅりつなどを勧すすめた。しかし一説いっせつによると連立れんりつ政権せいけんについてアフガニスタン政府せいふは難色なんしょくを示しめしていたと言いう。

同月どうげつ、ターリバーンはアフガニスタン各地かくちで攻撃こうげきを継続けいぞくし、ファーリヤーブ州しゅうアルマール郡ぐんやローガル州しゅうのシャルフ郡ぐんなどを占領せんりょうした。またバードギース州しゅうムルガーブ郡ぐんはアフガニスタン軍ぐんの撤退てったいにより、ターリバーンの手てに落おちた。

4月がつ、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくは9月11日にちまでに駐留ちゅうりゅう軍ぐんを完全かんぜん撤退てったいすると発表はっぴょうした。しかし米国べいこくの軍部ぐんぶは撤退てったい後ごの情勢じょうせいについて不安ふあんを表明ひょうめいしている。同月どうげつ、トルコで和平わへい会議かいぎが予定よていされていたが、ターリバーンの参加さんか拒絶きょぜつにより5月がつ以降いこうに延期えんきになった。一説いっせつによるとターリバーンは民主みんしゅ主義しゅぎに反対はんたいしており、女性じょせいの人権じんけんについてもシャリーアで十分じゅうぶんと考かんがえている。ターリバーンはイスラム教いすらむきょうに基もとづく中央ちゅうおう集権しゅうけん国家こっかを望のぞんでおり、民主みんしゅ政府せいふとの連合れんごう政権せいけんには否定ひてい的てきであり、細部さいぶは無視むしするように求もとめている。

6月がつ、国連こくれんによると５割わり〜７割わりの州都しゅうとで周辺しゅうへん部ぶの郡ぐんを巡めぐってターリバーンとアフガニスタン政府せいふ軍ぐんが戦闘せんとうを行おこなっており、州都しゅうと周辺しゅうへんの一部いちぶの郡ぐんはターリバーンが占領せんりょうしている。また郡ぐん庁ちょう所在地しょざいちの約やく６割わり（57％）はターリバーンに占領せんりょうされている。

ターリバーンは幹線かんせん道路どうろや国境こっきょう検問けんもん所しょ・税関ぜいかんを手中しゅちゅうに収おさめるためにバダフシャーン州しゅうやバグラーン州しゅう、クンドゥーズ州しゅうやタハール州しゅう、ジョズジャーン州しゅうなどアフガニスタン北部ほくぶに兵力へいりょくを移動いどうさせた。ターリバーンによる北部ほくぶ道路どうろ網もうの支配しはいは2001年ねん以降いこう最大さいだいレベルに達たっしており、ターリバーンは高速こうそく道路どうろに検問けんもん所しょを設置せっちして、アフガニスタン治安ちあん軍ぐんや政府せいふ関係かんけい者しゃの移動いどうを妨害ぼうがいし、通行つうこう税ぜいの徴収ちょうしゅうや麻薬まやくや鉱物こうぶつ資源しげんの輸出ゆしゅつを行おこなっている。また一説いっせつによると2020年ねんの戦闘せんとうにより予あらかじめ州都しゅうと周辺しゅうへんに対たいする軍事ぐんじ的てきなプレッシャーを強つよめてあるため、外国がいこく軍ぐんが撤退てったいして対応たいおうできなくなる頃ころを見計みはからって軍事ぐんじ作戦さくせんを行おこなうつもりだと言いう。

6月1日にちから6月がつ11日にちの間あいだに、327人にんのアフガニスタン治安ちあん部隊ぶたいが戦死せんしし、民間みんかん人じん82人にんが戦闘せんとうに巻まき込こまれ死亡しぼうした。また、同おなじ期間きかんに少すくなくとも11の郡ぐんがターリバーンに陥おちいった。

6月16日にち、ファーリヤーブ州しゅうダウラターバード郡ぐんに進出しんしゅつしたアフガニスタン軍ぐんコマンド部隊ぶたいがターリバーンに包囲ほういされ壊滅かいめつ、隊員たいいんのうち少すくなくとも24人にんが戦死せんしした。

6月18日にち、ターリバーンはクンドゥーズ州しゅうの州都しゅうと近郊きんこうに部隊ぶたいを集結しゅうけつさせたが、結局けっきょく攻撃こうげきは行おこなわなかった。6月22日にち、クンドゥーズ州しゅうの他ほかにバグラーン州しゅうやサーレポル州しゅう、ファーリヤーブ州しゅうは州都しゅうと近郊きんこうまでターリバーンが迫せまっていた。米べい軍ぐんは人口じんこうが10万まん人にんを超こえるバグラーン州しゅうの州都しゅうとプレフムリーやクンドゥーズ州しゅうの州都しゅうとクンドゥーズに対たいしては支援しえんを行おこなっているようである。6月25日にち、バイデン大統領だいとうりょうとガニ大統領だいとうりょうの会談かいだんに合あわせて、米べい軍ぐんはバグラーン州しゅうやクンドゥーズ州しゅうでドローンによる空爆くうばくを行おこなった。また一説いっせつによると、ターリバーンは米べい軍ぐんを刺激しげきしないように州都しゅうとなど都市とし部ぶへの攻撃こうげきを自粛じしゅくしていると言いう。

6月19日にち、ガーニ大統領だいとうりょうは国防こくぼう大臣だいじん代行だいこうにビスミッラー・ハーン・モハンマディを任命にんめいした。前任ぜんにん者しゃのアサデュッーラ・カリード大臣だいじんは長期間ちょうきかん不在ふざいだった。同月どうげつ、陸軍りくぐんの参謀さんぼう総長そうちょうにワリー・アフマドザイ将軍しょうぐん（Wali Ahmadzai）が任命にんめいされたが、下院かいんの国内こくない治安ちあん委員いいん会かいによるとターリバーンと戦たたかうより報復ほうふく人事じんじに夢中むちゅうになっていると言いう。

6月23日にち、ターリバーンはジョウズジャーン州しゅうアンドホイ郡ぐんを占領せんりょうした。25日にちにアフガニスタン軍ぐんは同どう郡ぐんに進出しんしゅつし奪還だっかんを宣言せんげんしたものの、翌よく26日にちには1000人にん以上いじょうのターリバーン戦闘せんとう員いんが現あらわれ、激はげしい戦闘せんとうや空爆くうばくでバザールや家屋かおくが破壊はかいされたのち、再ふたたびターリバーン側がわに陥落かんらくした。一説いっせつによるとアフガニスタン軍ぐんは農村のうそん部ぶに対たいする増派ぞうはが遅おくれていると言いう。またターリバーンは兵力へいりょくや他たの地域ちいきへの進軍しんぐんを誇張こちょうして宣伝せんでんするため、ターリバーンに包囲ほういされた部隊ぶたいが動揺どうようして撤退てったいしてしまうと言いう。ターリバーンは動画どうがニュースを作成さくせいし、アフガニスタン軍ぐんが逃にげたと言いう主張しゅちょうを広ひろめている。またターリバーンは6月がつ1日にちから23日にちまでに戦車せんしゃ8台だい、迫撃はくげき砲ほうや重砲じゅうほう56機きを鹵獲ろかくしたと主張しゅちょうしており、米べい軍ぐんのドローンが鹵獲ろかくされた重火器じゅうかきを破壊はかいして回まわっている。

7月がつ3日にち、バグラム空軍くうぐん基地きちから米べい軍ぐんとNATO軍ぐんの全すべての部隊ぶたいが撤退てったいした。7月8日にち、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのバイデン大統領だいとうりょうは撤退てったい期限きげんを前倒まえだおしして8月がつ末まつまでに米べい軍ぐんの撤退てったいが完了かんりょうすると発表はっぴょうした。またドイツ軍ぐんやイタリア軍ぐん、ポーランド軍ぐんは6月がつ末まつまでにアフガニスタンから撤退てったいしている。一方いっぽう、トルコ軍ぐんは撤退てったいせず、カーブルのハーミド・カルザイ国際こくさい空港くうこうを警備けいびしている為ため、ターリバーンは反発はんぱつしている。

ターリバーンの攻勢こうせいは続つづいており、「中東ちゅうとうかわら版ばん」によると5月がつから7月がつの約やく2ヶ月かげつ間あいだに407郡ぐん中ちゅう114郡ぐんを陥落かんらくさせたと言いう。アフガニスタン軍ぐんが奪還だっかんした郡ぐんもあるため、全すべてがターリバーンの支配しはい地ちになったとは言いえないが、バダフシャーン州しゅう（28郡ぐん中ちゅう26郡ぐん）やタハール州しゅうのように州都しゅうと以外いがいは全すべてターリバーンに占領せんりょうされている州しゅうも存在そんざいする。ターリバーンは国境こっきょうの通関つうかんを重点的じゅうてんてきに占領せんりょうしており、6月がつから7月がつの間あいだにタジキスタン国境こっきょうのシルハンバンダル、イラン国境こっきょうのイスラム・カラ、トルクメニスタン国境こっきょうのトルグンディ、パキスタン国境こっきょうのスピンボルダックがターリバーンの手てに落おちた。

アフガニスタン軍ぐんはバダフシャーン州しゅうやタハール州しゅうで大敗たいはいを喫きっしており、タジキスタン政府せいふによると、アフガニスタンからタジキスタンに敗走はいそうしたアフガニスタン兵へいは2週間しゅうかんで1600人にんに及およんでいると言いう。タジキスタンは国境こっきょう防衛ぼうえいのために2万まん人にんの予備よび役やく兵へいを動員どういんすると共ともに、集団しゅうだん安全あんぜん保障ほしょう条約じょうやくを通つうじてロシアに援助えんじょを求もとめた。ロシアは要請ようせいに応おうじてタジキスタン内ないのロシア軍ぐん基地きちの使用しよう準備じゅんびを開始かいしした。7月9日にち、上海しゃんはい協力きょうりょく機構きこうと欧州おうしゅう安全あんぜん保障ほしょう協力きょうりょく機構きこうの合同ごうどう会議かいぎはアフガニスタン北部ほくぶで様々さまざまなテロリストや過激かげき派はグループの存在そんざい感かんが急激きゅうげきに増ましており、アフガニスタン政府せいふと連携れんけいして国境こっきょう地帯ちたいの脅威きょういの封ふうじ込こめや麻薬まやくの製造せいぞう・通過つうかに対たいする実質じっしつ的てきな対策たいさくを行おこなうとした。またアタ・モハマド・ヌールやラシッド・ドスタムなどの北部ほくぶ軍閥ぐんばつがアフガニスタン政府せいふの要請ようせいに応おうじて数すう千せん人にんの民兵みんぺいを動員どういんした。

7月がつ上旬じょうじゅん、ターリバーンはガズニー州しゅうやカンダハール州しゅうの州都しゅうとを激はげしく攻撃こうげきした。7月7日にち、ターリバーンはバードギース州しゅうの州都しゅうとを攻撃こうげきした。しかしアフガニスタン軍ぐんや民兵みんぺいが反撃はんげきし、7月がつ16日にちに停戦ていせんした。

7月がつ17日にち、ターリバーンとパキスタン当局とうきょくはスピンボルダックの国境こっきょう封鎖ふうさを解除かいじょした。アフガニスタンのアムルッラー・サレー第だい一いち副ふく首相しゅしょうは、パキスタン空軍くうぐんがスピンボルダックのターリバーンを警護けいごしているとしてパキスタンを非難ひなんした。またガーニ大統領だいとうりょうは推定すいていによると先月せんげつパキスタンなどから1万まん人にん以上いじょうのジハード戦士せんしがアフガニスタンに侵入しんにゅうしたとしてパキスタンを非難ひなんした。7月21日にち、アフガニスタンの駐ちゅうパキスタン大使たいしの娘むすめが拉致らちされる事件じけんが発生はっせいし、アフガニスタンとパキスタンの関係かんけいがさらに悪化あっかした。

ターリバーンの全土ぜんど攻勢こうせい

詳細しょうさいは「2021年ねんターリバーン攻勢こうせい」を参照さんしょう

陥落かんらくした州都しゅうと

日付ひづけ	州しゅう	都市とし名めい
8月がつ6日にち	ニームルーズ州しゅう	ザランジュ
8月がつ7日にち	ジョウズジャーン州しゅう	シェベルガーン
8月がつ8日にち	クンドゥーズ州しゅう	クンドゥーズ
8月がつ8日にち	サーレポル州しゅう	サレプル
8月がつ8日にち	タハール州しゅう	タールカーン
8月がつ9日にち	サマンガーン州しゅう	アイーバク
8月がつ10日とおか	ファラー州しゅう	ファラー
8月がつ10日とおか	バグラーン州しゅう	プリ・フムリー
8月がつ11日にち	バダフシャーン州しゅう	ファイザーバード
8月がつ12日にち	ガズニー州しゅう	ガズニー
8月がつ12日にち	ヘラート州しゅう	ヘラート
8月がつ12日にち	バードギース州しゅう	カラエナウ
8月がつ12日にち	カンダハール州しゅう	カンダハール
8月がつ13日にち	ヘルマンド州しゅう	ラシュカルガー
8月がつ13日にち	ゴール州しゅう	チャグチャラーン
8月がつ13日にち	ローガル州しゅう	プリアラム
8月がつ13日にち	ザーブル州しゅう	カラート
8月がつ13日にち	ウルーズガーン州しゅう	タリーン・コート
8月がつ14日にち	パクティヤー州しゅう	ガルデーズ
8月がつ14日にち	パクティーカー州しゅう	シャラナ
8月がつ14日にち	クナル州しゅう	アサダーバード
8月がつ14日にち	ファーリヤーブ州しゅう	マイーマナ
8月がつ14日にち	ラグマーン州しゅう	メフタルラーム
8月がつ14日にち	ダーイクンディー州しゅう	ニリ
8月がつ14日にち	バルフ州しゅう	マザーリシャリーフ
8月がつ15日にち	ナンガルハール州しゅう	ジャラーラーバード
8月がつ15日にち	ヴァルダク州しゅう	マイダーンシャー
8月がつ15日にち	ホースト州しゅう	ホースト
8月がつ15日にち	バーミヤーン州しゅう	バーミヤーン
8月がつ15日にち	カーピーサー州しゅう	マフムーディラーキー
8月がつ15日にち	パルヴァーン州しゅう	チャーリーカール
8月がつ15日にち	ヌーリスターン州しゅう	パールーン
8月がつ15日にち	カーブル州しゅう	カーブル

7月がつ17日にちと7月がつ18日にち、イード・アル＝アドハー（犠牲ぎせい祭さい）を前まえにアフガニスタン政府せいふとターリバーンの和平わへい協議きょうぎがドーハで行おこなわれた。アフガニスタン政府せいふは従来じゅうらいにない高位こういの要人ようじんを交渉こうしょう団だんに参加さんかさせて、ターリバーンを説得せっとくしようとした。7月18日にち、ターリバーンの指導しどう者しゃのハイバトゥラー・アクンザダは真剣しんけんに和平わへい交渉こうしょうを行おこなっていると述のべ、イスラム体制たいせいの確立かくりつ・平和へいわ・治安ちあんの構築こうちく、世界せかいとの良好りょうこうかつ強固きょうこな外交がいこう的てき・経済けいざい的てき・政治せいじ的てきな関係かんけいの構築こうちく、他国たこくの治安ちあんを脅おびやかす者ものに対たいする領土りょうどの使用しよう禁止きんし、内政ないせい不干渉ふかんしょうによる独立どくりつ、大使館たいしかん・外国がいこく組織そしき・投資とうし家かの保護ほご、イスラム教いすらむきょうと国益こくえきの範囲はんい内ないでのジャーナリズムの自由じゆうを約束やくそくした。しかし結局けっきょく、2021年ねんはイード・アル＝アドハーの停戦ていせんが実現じつげんしなかった。ガーニ大統領だいとうりょうによるとアフガニスタン政府せいふはターリバーンの要求ようきゅうに応おうじて5000人にんの捕虜ほりょを解放かいほうして来きたが、ターリバーンには有意義ゆういぎな交渉こうしょうを行おこなう準備じゅんびが無なかった。ガーニ大統領だいとうりょうは最後さいご通牒つうちょうとして高位こういの和平わへい交渉こうしょう団だんを送おくり出だしたが、和平わへい交渉こうしょう団だんを率ひきいるアブドラ・アブドラ議長ぎちょうからターリバーンには和平わへいの意思いしがないという報告ほうこくを受うけた。今後こんごは優先ゆうせん順位じゅんいをつけて防衛ぼうえいを行おこない、国民こくみんの団結だんけつと断固だんこたる態度たいどを示しめして3〜6ヶ月かげつで状況じょうきょうを打開だかいすると述のべた。

7月がつ22日にち、米べい軍ぐんのミリー統合とうごう参謀さんぼう本部ほんぶ議長ぎちょうは420地区ちく中ちゅう210地区ちく余あまりを反はん政府せいふ軍ぐんが支配しはいしており、ターリバーンが優勢ゆうせいであることを認みとめた。しかし州都しゅうとはどこも陥落かんらくしておらず、アフガニスタン軍ぐんは人口じんこうの多おおいカーブルや州都しゅうとの防衛ぼうえいのために兵力へいりょく調整ちょうせいをしており、このままターリバーンが勝利しょうりできるとは限かぎらない。和平わへいか敗戦はいせんか色々いろいろな可能かのう性せいがあり、状況じょうきょうを注視ちゅうしして対応たいおうしたいと述のべた。また米べい軍ぐんの撤退てったいは95％完了かんりょうしており、撤退てったい後ごは近隣きんりん国こくに地域ちいきの治安ちあん評価ひょうか拠点きょてんを設置せっちし、地平線ちへいせんの向むこう側がわから空爆くうばくなどの軍事ぐんじ的てき・財政ざいせい的てきな支援しえんを行おこなうと述のべた。

実じつはアメリカ国防情報局こくぼうじょうほうきょくは2020年ねん末まつの報告ほうこく書しょで、ターリバーンは米べい軍ぐんを確実かくじつに完全かんぜん撤退てったいさせるために形かたちだけ立派りっぱな交渉こうしょう団だんを送おくって和平わへい交渉こうしょうに参加さんかしているが、譲歩じょうほや妥協だきょうをする気きが無ない可能かのう性せいが高たかく、軍事ぐんじ的てきな勝利しょうりを狙ねらっており、2021年ねん中ちゅうの停戦ていせんは無なく、撤退てったいが停滞ていたいした場合ばあいは米べい軍ぐんへの攻撃こうげきを再開さいかいすると報告ほうこくしていた。バイデン大統領だいとうりょうはアフガニスタンの将来しょうらいを自己じこ決定けっていに委ゆだね、アフガニスタン政府せいふを応援おうえんすることにした。一説いっせつによると今後こんごの展開てんかいとしては1) アフガニスタン政府せいふが州都しゅうとなどの支配しはいを維持いじする、2) アフガニスタン政府せいふが崩壊ほうかいし、ターリバーンが支配しはいする領域りょういきとそれ以外いがいに分裂ぶんれつする、3) アフガニスタン政府せいふが長期間ちょうきかん持もちこたえることでターリバーンが諦あきらめて政治せいじ的てきに妥協だきょうするという３みっつの可能かのう性せいがあると言いう。

7月がつ25日にち、ターリバーンの報道ほうどう官かんはガーニ大統領だいとうりょうの解任かいにんを要求ようきゅうした。同日どうじつ、アフガニスタン政府せいふはカーブル州しゅう、パンジシール州しゅう、ナンガハール州しゅうを除のぞく34州しゅう中ちゅう31州しゅうに夜間やかん外出がいしゅつ禁止きんし令れいを発令はつれいした。

8月がつ3日にち、ターリバーンはヘラート州しゅうやヘルマンド州しゅうの州都しゅうとを激はげしく攻撃こうげきしている。

8月がつ6日にち、政府せいふメディア情報じょうほうセンターの責任せきにん者しゃがターリバーンによって殺害さつがいされた。ターリバーンは空爆くうばくの報復ほうふくとして今後こんごも政府せいふ高官こうかんのを標的ひょうてきにすると警告けいこくした。ターリバーンはニームルーズ州しゅうの州都しゅうとを占領せんりょうした。首都しゅとカーブルから直線ちょくせん距離きょりで800km離はなれた辺境へんきょうの州しゅうであるが、ターリバーンはついに州都しゅうとの占領せんりょうに成功せいこうした。SNSでは戦闘せんとう員いんが鹵獲ろかくしたSUVや軍用ぐんようハンビーを運転うんてんし、地元じもとの住民じゅうみんが歓迎かんげいする様子ようすが伝つたえられた。国連こくれん特使とくしは「致命ちめい的てきな段階だんかい」に入はいったと警告けいこくし、英国えいこく及および米べい政府せいふはアフガニスタンからの自じ国民こくみんの「退去たいきょ」を勧告かんこくした。

8月がつ7日にち、ターリバーンはジョウズジャーン州しゅうの州都しゅうとシェベルガーン市しを占領せんりょうした。シェベルガーンは人口じんこうが多おおく戦略せんりゃく上じょう重要じゅうような都市としだった。またドスタム派はの中心ちゅうしん地ちであり政府せいふ側がわ民兵みんぺいの働はたらきが大おおいに期待きたいされていたが、期待きたいはずれに終おわった。地元じもとの有力ゆうりょく者しゃであり元もと将軍しょうぐんのラシッド・ドスタムが政府せいふ唯一ゆいいつの支配しはい地区ちく Du Koh Districtに退避たいひした。ターリバーンはクンドゥーズ州しゅうやタハール州しゅう、バダフシャーン州しゅうの州都しゅうとも攻撃こうげきしている。同日どうじつ夜よる、米べい軍ぐんのB52がジョウズジャーン州しゅうやヘルマンド州しゅうの州都しゅうとを爆撃ばくげきした。

8月がつ8日にち、ターリバーンはクンドゥーズ州しゅうの州都しゅうとを制圧せいあつした。同どうグループは警察けいさつ本部ほんぶ、知事ちじの敷地しきち、市内しないの刑務所けいむしょを占拠せんきょし、アフガニスタン軍ぐんが実効じっこう支配しはいする領域りょういきは基地きちと空港くうこうに限かぎられている。同日どうじつ、クンドゥーズ州しゅうの東ひがし隣となりにあるタハール州しゅうの州都しゅうともターリバーンに占領せんりょうされた。更さらに同日どうじつ、ターリバーンはシェベルガーン市しを流ながれるサフィード川かわの上流じょうりゅうにあるサーレポル州しゅうの州都しゅうとも制圧せいあつした。同日どうじつ、ターリバーンはクンドゥーズ州しゅうの西にし隣となりにあり北部ほくぶ最大さいだいの都市としであるバルフ州しゅうの州都しゅうとにも迫せまった。ターリバーンの急速きゅうそくな前進ぜんしんはアフガニスタン軍ぐんの士気しきの低下ていかと脱走だっそうを招まねいた。

8月がつ9日にち、アフガニスタン軍ぐんが撤退てったいした為ため、ターリバーンはサマーンガン州しゅうの州都しゅうとを占領せんりょうした。一方いっぽう、タハール州しゅうやクンドゥーズ州しゅうのアフガニスタン軍ぐんは州都しゅうとやその周辺しゅうへんでターリバーンと戦たたかっている。同日どうじつ、ガーニ大統領だいとうりょうはラシッド・ドスタムの提案ていあんを受うけ入いれて民兵みんぺいを統括とうかつする公衆こうしゅう蜂起ほうき軍ぐん統合とうごう指令しれいセンターを設立せつりつし、民兵みんぺいの動員どういんや武器ぶきの供給きょうきゅうを行おこなうことを発表はっぴょうした。内務ないむ大臣だいじんによると政府せいふ軍ぐんの敗走はいそうにより道路どうろの支配しはいを失うしなったため、補給ほきゅうや負傷ふしょう者しゃの後送こうそうはヘリコプター頼たのみになっている。その上うえ、米べい軍ぐんの突然とつぜんの撤退てったいにより全国ぜんこく400箇所かしょで戦闘せんとうが始はじまってしまった。アフガニスタン政府せいふは地元じもとの指導しどう者しゃに民兵みんぺいの動員どういんや戦闘せんとうの権限けんげんを移譲いじょうして、政府せいふ軍ぐんの敗走はいそうを止とめ、都市としを取とり囲かこむ防衛ぼうえい線せんに再さい集結しゅうけつし、攻勢こうせいに転てんじるという三さん段階だんかいの作戦さくせんを考かんがえていると言いう。一方いっぽう、これは2003年ねんに日本にっぽんが主導しゅどうして行いった武装ぶそう解除かいじょ・動員どういん解除かいじょ・社会しゃかい復帰ふっきの終焉しゅうえんでもあった。

8月がつ10日とおか、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくがパキスタンに対たいして国境こっきょう沿ぞいのターリバーンの安全あんぜん地帯ちたいを閉鎖へいさするように依頼いらいしたので、パキスタンは通関つうかんするアフガニスタン人じんにパスポートやビザを要求ようきゅうして、スピンボルダックを閉鎖へいさに追おい込こんだ。同日どうじつ、ターリバーンはクンドゥーズ州しゅうの南みなみにあるバグラーン州しゅうの州都しゅうとを占領せんりょうした。バグラーン州しゅうはサラン峠とうげの北側きたがわに位置いちする戦略せんりゃく的てきに重要じゅうような州しゅうであり、クンドゥーズ州しゅうへの増援ぞうえんや首都しゅとカーブルの防衛ぼうえいにとって大おおきなマイナスとなった。同日どうじつ、ターリバーンはニームルーズ州しゅうの北きたにあるファラー州しゅうの州都しゅうとも占領せんりょうした。同日どうじつ、アフガニスタン政府せいふの財務ざいむ大臣だいじんが辞任じにんして出国しゅっこくした。

8月がつ11日にち、ターリバーンはバダフシャーン州しゅうの州都しゅうとを占領せんりょうした。この都市としは北部ほくぶ同盟どうめいの本拠地ほんきょちだった。

米べい軍ぐん主導しゅどうの首都しゅと撤退てったい

詳細しょうさいは「Operation Allies Refuge」および「Operation Pitting」を参照さんしょう

8月がつ12日にち、ターリバーンはクンドゥーズ空港くうこうを占領せんりょうした。同日どうじつ、ガズニー州しゅうやカンダハール州しゅうやヘルマンド州しゅうやヘラート州しゅうの州都しゅうとでも激はげしい戦闘せんとうが続つづいた。またバードギース州しゅうの停戦ていせんも破やぶれた。同日どうじつ、州しゅう知事ちじが勝手かってに交渉こうしょうして退却たいきゃくしたため、ターリバーンはガズニー州しゅうの州都しゅうとを占領せんりょうした。ガズニーはカーブルの南みなみの入口いりくちのような場所ばしょにあり、首都しゅとカーブルの防衛ぼうえいにとって大おおきなマイナスとなった。同日どうじつ、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのバイデン大統領だいとうりょうは団結だんけつして戦たたかうように呼よびかけた。しかし一説いっせつによるとアフガニスタン軍ぐんの士気しきは低下ていかしていると言いう。8月12日にち、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくはカーブルの大使館たいしかんの縮小しゅくしょうと撤退てったい支援しえんの為ために3000人にんの増派ぞうはを発表はっぴょうした。英国えいこくは600人にんの軍ぐんをカーブル空港くうこうに配備はいびすることを発表はっぴょうした。当局とうきょく者しゃは、展開てんかいは24〜48時じ間あいだで行おこなわれ、月つき末まつまでに完了かんりょうすると述のべた。計画けいかくはチャーター機きを使用しようし、カーブル空港くうこうを利用りようして避難ひなんする。ただし、それが不可能ふかのうになった場合ばあいは軍用ぐんよう機きを使用しようする。英国えいこく政府せいふによると避難ひなんは長ながい間あいだ計画けいかくされていたが、治安ちあん状況じょうきょうが急速きゅうそくに悪化あっかしたためタイミングが早はやめられたと述のべた。3000人にんの米べい軍ぐんに加くわえて、武力ぶりょく紛争ふんそうがエスカレートした場合ばあいに備そなえて、さらに3500人にんがクウェートで待機たいきする。カナダは、過去かこにカナダのスタッフと一緒いっしょに働はたらいたアフガニスタンの家族かぞくの収容しゅうよう、カーブルの大使館たいしかん職員しょくいんを避難ひなんさせるために、カナダの特殊とくしゅ部隊ぶたいが配備はいびされると発表はっぴょうした。デンマーク政府せいふとノルウェー政府せいふは、カーブルにある大使館たいしかんが安全あんぜん上じょうの理由りゆうで閉鎖へいさされることを発表はっぴょうし、彼かれらの外交がいこうスタッフと彼かれらと一緒いっしょに働はたらいていたアフガニスタン人じんを避難ひなんさせる計画けいかくを立たてている。

8月がつ12日にちから13日にちにかけて、ターリバーンはヘラート州しゅうとカンダハール州しゅうの州都しゅうとを占領せんりょうした。ヘラートとカンダハールは人口じんこう40万まん人にん以上いじょうの大都市だいとしであり、アフガニスタンで二に番目ばんめと三さん番目ばんめに人口じんこうが多おおい大都市だいとしである。大都市だいとしには軍団ぐんだんの司令しれい部ぶや空港くうこうがあり、周辺しゅうへんの州しゅうに対たいする航空こうくう支援しえんを行おこなっている。そのため大都市だいとしが陥落かんらくすると周辺しゅうへん州しゅうの戦況せんきょうも悪化あっかし、ヘラート州しゅうに隣接りんせつするバードギース州しゅう、カンダハール州しゅうに隣接りんせつするヘルマンド州しゅうやザーブル州しゅうが陥落かんらくした。一説いっせつによると地元じもとの長老ちょうろうが住民じゅうみんの被害ひがいや公共こうきょう施設しせつの破壊はかいを避さけるように政府せいふ軍ぐんやターリバーンに陳情ちんじょうし、それに応おうじて政府せいふ軍ぐんが撤退てったいしていると言いう。

8日にち13日にち、カーブル州しゅうの南みなみに隣接りんせつするロガール州しゅうが陥落かんらくした。ターリバーンは8月がつ6日にち以降いこうの約やく8日間にちかんで第だい2位い・第だい3位いの大都市だいとしを含ふくむ34州しゅう中ちゅう18州しゅうを占領せんりょうし、首都しゅとカーブルの近郊きんこうまで到達とうたつした。地方ちほうの軍ぐんや国民こくみんはターリバーンに対たいして徹底てってい抗戦こうせんする気きがない事ことが分わかった。

8月がつ14日にち、ターリバーンは国内こくない第だい四よん位いの大都市だいとしであるバルフ州しゅうの州都しゅうとマザーリシャリーフ市しを占領せんりょうした。一説いっせつによるとアフガニスタン軍ぐんがあっさり降伏ごうぶくした為ため、民兵みんぺいも戦意せんいを失うしない、アタ・モハマド・ヌールやラシッド・ドスタムは州しゅう外がいに逃亡とうぼうした。同日どうじつ、ターリバーンはナンガハール州しゅうの州都しゅうとジャララバード市しを占領せんりょうした。一説いっせつによると地元じもとの長老ちょうろうの依頼いらいにより州しゅう政府せいふや軍ぐんは無抵抗むていこうで市しを引ひき渡わたした。ジャララバードは国内こくない第だい五ご位いの大都市だいとしであり、カイバル峠とうげを擁ようする戦略せんりゃく上じょう重要じゅうような都市としである。ターリバーンは西部せいぶ（ヘラート）・南部なんぶ（カンダハール）・北部ほくぶ（マザーリシャリーフ）・北東ほくとう部ぶ（クンドゥーズ）・東部とうぶ（ジャララバード）を占領せんりょうし、首都しゅとカーブルは完全かんぜんに孤立こりつした。

カーブル陥落かんらく

詳細しょうさいは「カーブル陥落かんらく (2021年ねん)」を参照さんしょう

アメリカ大使館あめりかたいしかんの壁かべに描えがかれたターリバーンのシャハーダ

8月がつ15日にち、ターリバーンは首都しゅとカーブルを包囲ほういし、アフガニスタン政府せいふは政権せいけん移譲いじょうの意思いしを示しめした。同おなじ日び、「武力ぶりょくで首都しゅとを取とる計画けいかくはない」との声明せいめいを出だしたにもかかわらずカーブルの郊外こうがいに入はいり、Kalakan地区ちく、Qarabagh地区ちく、およびPaghman地区ちく。プル・エ・チャルキ刑務所けいむしょでの都市とし全体ぜんたいの停電ていでんと暴行ぼうこうおよび囚人しゅうじんの暴行ぼうこうの可能かのう性せいが報告ほうこくされた。ボーイングCH-47チヌークとシコルスキーUH-60ブラックホークヘリコプターが避難ひなんを実行じっこうするためにカーブルのアメリカ大使館あめりかたいしかんに着陸ちゃくりくし始はじめ、外交がいこう官かんが機密きみつ文書ぶんしょを慌あわただしく処分しょぶんしていると報告ほうこくされた。

アフガン内務省ないむしょうはガニー大統領だいとうりょうが国外こくがいに脱出だっしゅつしたこと、ターリバーンが率ひきいる暫定ざんてい政府せいふが樹立じゅりつされることを発表はっぴょうした。カルザイ前ぜん大統領だいとうりょうは交渉こうしょうチームの一員いちいんとなることになっていた。ターリバーンは、政権せいけん交代こうたいを待まち、無理矢理むりやりカーブルに入はいらないように戦闘せんとう員いんに命めいじた。治安ちあん部隊ぶたいはバグラム空軍くうぐん基地きちをターリバーンに降伏ごうぶくさせた。空軍くうぐん基地きちには、約やく5000人にんのターリバーンとイラクのISILの囚人しゅうじんが収容しゅうようされている。後のちに、ガニー大統領だいとうりょうがタジキスタンに去さったことが報告ほうこくされた。

カーブル陥落かんらく後ご

詳細しょうさいは「2021年ねんアフガニスタンからの避難ひなん」を参照さんしょう

事実じじつ上じょう、政権せいけんは崩壊ほうかいしたものの、アフマド・マスード、アムルッラー・サーレハ第だい一いち副ふく大統領だいとうりょうを中心ちゅうしんにパンジシール渓谷けいこくで抵抗ていこう運動うんどうが展開てんかいされている。

詳細しょうさいは「パンジシール紛争ふんそう」を参照さんしょう

8月がつ30日にち、米べい軍ぐんはアフガニスタンからの撤退てったいを完了かんりょう。8月31日にち、ジョー・バイデン大統領だいとうりょうは国民こくみん向むけの演説えんぜつで戦争せんそう終結しゅうけつを正式せいしきに宣言せんげん。一方いっぽう、ターリバーンは米国べいこくに対たいする勝利しょうりを宣言せんげん。20年間ねんかん続つづいたアフガニスタン紛争ふんそうはターリバーンの勝利しょうりに終おわった。その後ご、ターリバーンに対たいする抗議こうぎが8月がつ17日にちに始はじまった。抗議こうぎグループはタリバーン政府せいふによる女性じょせいの扱あつかいに懸念けねんを表明ひょうめいしており、それを差別さべつ的てきであると見みなしている。アフガニスタンの民族みんぞくレジスタンス戦線せんせんに支ささえられて、抗議こうぎ者しゃたちは地方ちほう分権ぶんけん化か、多た文化ぶんか主義しゅぎ、社会しゃかい正義まさよし、仕事しごと、教育きょういく、そして食糧しょくりょうも要求ようきゅうしている。

タリバーンは時じが経たつにつれて暴力ぼうりょくの増加ぞうかとともに抗議こうぎを抑制よくせいし、活動かつどう家かを誘拐ゆうかいし始はじめた。この政策せいさくは最終さいしゅう的てきに抗議こうぎ行動こうどうを徐々じょじょに終おわらせ、カブールでの最後さいごの抗議こうぎ行動こうどうは2022年ねん1月がつ16日にちに起おこった。

詳細しょうさいは「2021-2022年ねんアフガニスタンの抗議こうぎ」を参照さんしょう

米国べいこくは撤退てったい後ごも敵対てきたい姿勢しせいは崩くずさず、経済けいざい制裁せいさいを行おこなった。しかし、これはアフガン市民しみんの生活せいかつ困窮こんきゅうを招まねき、国連こくれんは人口じんこうの半数はんすう以上いじょうである約やく2500万まん人にんが貧困ひんこんの状況じょうきょうにあるとした。薬物やくぶつ汚染おせんも問題もんだいとなった。人権じんけん問題もんだいを建前たてまえにした経済けいざい制裁せいさいが、人道じんどう危機ききの原因げんいんとなる矛盾むじゅんに批判ひはんが高たかまったことで、米国べいこくは人道じんどう支援しえんを例外れいがいとした。

被害ひがい

ブラウン大学だいがくの「コスト・オブ・ウォー」プロジェクトによると、2021年ねん4月がつ時点じてんで、アフガニスタンでの死者ししゃは17万まん1,000〜17万まん4,000人にん、アフガン民間みんかん人じんが4万まん7,245人にん、アフガン軍ぐん・警察けいさつが6万まん6,000〜6万まん9,000人にん、反対はんたい派はの戦闘せんとう員いんが少すくなくとも5万まん1,000人にんとなっている。しかし、"病気びょうき、食料しょくりょう・水みず・インフラへのアクセスの喪失そうしつ、その他たの間接かんせつ的てきな影響えいきょう "による死者ししゃ数すうが不明ふめいであるため、死者ししゃ数すうはもっと多おおい可能かのう性せいがある。国連こくれんによると、2001年ねんの侵攻しんこう以降いこう、570万まん人にん以上いじょうの元もと難民なんみんがアフガニスタンに帰還きかんしたが、2021年ねん現在げんざい、260万まん人にんのアフガニスタン人じんが難民なんみんとして残のこっているか、主おもにパキスタンやイランに逃のがれており、さらに400万まん人にんのアフガニスタン人じんが国内こくないでの避難ひなん民みんとして残のこっている。一方いっぽう、2001年ねん以降いこう、アフガニスタンでは、健康けんこう、教育きょういく、女性じょせいの権利けんりなどが改善かいぜんされた面めんもある。

戦争せんそう犯罪はんざい

米べい軍ぐん兵士へいしによって殺害さつがいされたアフガニスタン人じんの少年しょうねん

アフガニスタン紛争ふんそうにおいて、数すう多おおくの重大じゅうだいな人権じんけん侵害しんがいが発生はっせいしていることが人権じんけん団体だんたいにより報告ほうこくされている。戦争せんそう犯罪はんざい及および人道じんどうに対たいする罪つみを取とり扱あつかう国際こくさい刑事けいじ裁判所さいばんしょ(ICC)も2007年ねんから予備よび調査ちょうさを始はじめ、2013年ねんに「アフガニスタンで、戦争せんそう犯罪はんざい及および人道じんどうに対たいする罪つみが過去かこそして今いまも犯おかされている」と結論けつろんづけている。しかし、主おもな対象たいしょうとなる米国べいこくが猛もう反発はんぱつし、ICCに圧力あつりょくをかけたことで、本ほん調査ちょうさは後回あとまわしにされている。欧米おうべいの傀儡かいらい政権せいけんであったカルザイ政権せいけんは、戦争せんそう犯罪はんざい恩赦おんしゃ法ほうを施行しこうしたり、人権じんけん団体だんたいによる報告ほうこく書しょ公表こうひょうを阻止そししたりした。復権ふっけんしたタリバンもまた、米国べいこくと戦争せんそう犯罪はんざいを追及ついきゅうしない密約みつやくを結むすんだという報道ほうどうがある。

夜襲やしゅう作戦さくせん

連合れんごう軍ぐん支配しはい下かのアフガニスタンでは、農村のうそん部ぶに逃にげ込こんだターリバーン戦闘せんとう員いんを見みつけ出だすため、「夜襲やしゅう作戦さくせん」と呼よばれる"ターリバーン狩かり"が行おこなわれた。深夜しんや、突然とつぜん襲来しゅうらいして家いえをしらみつぶしに回まわり、返事へんじのない家いえのドアは爆ばく弾だんを使つかって押おし破やぶった。氷点下ひょうてんかの寒さむさの中なか、大人おとなの男性だんせいたちは全員ぜんいん、着きの身着みきのまま一いち軒けんの民家みんかの中庭なかにわに集あつめられ、尋問じんもんされたという。当初とうしょ米べい軍ぐんが単独たんどくで行おこなっていたが、2006年ねんごろからアフガン政府せいふ軍ぐんとの共同きょうどう作戦さくせんとなり、数すう千せん回かい実施じっしされた。作戦さくせんはタリバン封ふうじ込こめに効果こうかを上あげる一方いっぽう、民間みんかん人じんの犠牲ぎせい者しゃを多おおく出だし、物議ぶつぎを醸かもした。あまりの不評ふひょうにカルザイ大統領だいとうりょうが「夜襲やしゅう作戦さくせんをやめない限かぎり、外国がいこく部隊ぶたいの駐留ちゅうりゅう延長えんちょうを認みとめない」と主張しゅちょうして禁止きんししたが、ガニー次期じき大統領だいとうりょうは復活ふっかつを認みとめた。その後ごも、CIAから直接ちょくせつ支援しえんを受うけていた国家こっか保安ほあん局きょくの01ユニットにより、マドラサで寝泊ねとまりしていた子供こどもらが虐殺ぎゃくさつされる、医療いりょう施設しせつが襲撃しゅうげきに遭あい医療いりょう従事じゅうじ者しゃと民間みんかん人じんが殺害さつがいされる等とうの事件じけんが発生はっせいした。

白はくリン弾だん

連合れんごう軍ぐんはカピサ州しゅうの民間みんかん人じんの居住きょじゅう地域ちいきで化学かがく兵器へいき「白はくリン弾だん」を使用しようし、1発はつが民家みんかに命中めいちゅう。その家いえの住民じゅうみんである8歳さいの少女しょうじょが顔かおに大だい火傷かしょうを負おった。

捕虜ほりょの大量たいりょう処刑しょけい

2001年ねん、北部ほくぶ同盟どうめいの軍閥ぐんばつであるドスタム派はは降伏ごうぶくしたターリバーン旧きゅう政権せいけん軍ぐんの兵士へいし8,000人ひとをコンテナに閉とじ込こめ収容しゅうよう所しょへ輸送ゆそうし、結果けっか5,000人にんが「行方ゆくえ不明ふめい」になった。行方ゆくえ不明ふめい者しゃの大半たいはんは窒息ちっそく死しした者もので、生いき残のこった者ものは射殺しゃさつされたと証言しょうげんする者ものもいる。コンテナ1つに200人にんの捕虜ほりょが詰つめ込こまれていた。北部ほくぶ同盟どうめいの将軍しょうぐんはアメリカ兵へいが捕虜ほりょに対たいして刺とげ突・身体しんたいを切断せつだんする等ひとし、危害きがいを加くわえていたと証言しょうげんした。米国べいこく国防省こくぼうしょう並ならびに国務省こくむしょうは1,500人にんから2,000人にんがダシュテ・レイリで殺害さつがいされたことを示しめす文書ぶんしょを公開こうかいした。

各種かくしゅテロ行為こうい

連合れんごう軍ぐんに対たいし軍事ぐんじ力りょくで劣おとっていたターリバーンは、対抗たいこう手段しゅだんとして住民じゅうみんを脅迫きょうはくし、連合れんごう軍ぐんに協力きょうりょく的てきな者ものは暗殺あんさつした。連合れんごう軍ぐん側がわに利りするとみなした民間みんかん施設しせつ等とうのインフラストラクチャーに対たいして自爆じばく攻撃こうげきを行おこなうなど、ソフトターゲットを標的ひょうてきにテロを繰くり返かえした。

年表ねんぴょう

• 2001年ねん9月がつ11日にち - アメリカ同時どうじ多発たはつテロ事件じけんが発生はっせい。
• 2001年ねん10月がつ2日にち - 北大西洋きたたいせいよう条約じょうやく機構きこうが集団しゅうだん的てき自衛じえい権けんを発動はつどう。
• 2001年ねん10月がつ7日にち - 有志ゆうし連合れんごう諸国しょこくによるアフガニスタン領内りょうないへの攻撃こうげき開始かいし。
• 2001年ねん10月がつ6日にち - クレセント・ウィンド作戦さくせん開始かいし、連合れんごう国軍こくぐんの制空権せいくうけんを確立かくりつ。
• 2001年ねん11月14日にち - カーブル陥落かんらく (2001年ねん)。
• 2001年ねん12月6日にち- ボン合意ごうい、国際こくさい治安ちあん支援しえん部隊ぶたい（ISAF）の設立せつりつ、アフガニスタン暫定ざんてい行政ぎょうせい機構きこうが発足ほっそく。トラボラの戦たたかい。
• 2002年ねん1月がつ - アフガニスタン復興ふっこう支援しえん国際こくさい会議かいぎ（東京とうきょう）。
• 2002年ねん3月がつ - 国連こくれんアフガニスタン支援しえんミッション（UNAMA）が発足ほっそく。
• 2002年ねん6月がつ - アフガニスタン・イスラム移行いこう政府せいふが成立せいりつ。
• 2003年ねん2月がつ - アフガニスタン「平和へいわの定着ていちゃく」会議かいぎ（東京とうきょう）。日本にっぽん政府せいふ主導しゅどうの軍閥ぐんばつ兵士へいしの武装ぶそう解除かいじょ・社会しゃかい復帰ふっき計画けいかく (DDR)を開始かいし。
• 2004年ねん1月がつ - 新しん憲法けんぽう公布こうふ。
• 2004年ねん3月がつ16日にち - パキスタン軍ぐんによるアル・カーイダへの攻撃こうげきが開始かいし（ワジリスタン紛争ふんそうの始はじまり）。
• 2004年ねん10月がつ - 第だい一いち回かい大統領だいとうりょう選挙せんきょ。
• 2004年ねん12月 - ハーミド・カルザイが初代しょだい大統領だいとうりょうに就任しゅうにんし、正式せいしきに新しん政府せいふが発足ほっそく。
• 2005年ねん6月がつ - DDRが完了かんりょう。
• 2006年ねん6月がつ18日にち - サルポサ刑務所けいむしょ攻撃こうげきによりターリバーン達たち約やく1000〜1200人にんを解放かいほう。
• 2006年ねん10月がつ - アフガニスタン東部とうぶの指揮しき権けんを米べい軍ぐんから国際こくさい治安ちあん支援しえん部隊ぶたいに移管いかん。
• 2006年ねん12月 - 治安ちあんが大幅おおはばに悪化あっか。
• 2009年ねん1月がつ - アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおいてバラク・オバマ政権せいけん発足ほっそく。
• 2009年ねん2月がつ - 米べい軍ぐん増派ぞうは。
• 2009年ねん8月がつ - 第だい二に回かい大統領だいとうりょう選挙せんきょ。
• 2009年ねん12月 - 米べい軍ぐん増派ぞうは。テロ対策たいさくから反はん政府せいふ活動かつどう鎮圧ちんあつに方針ほうしんを転換てんかん。
• 2011年ねん5月がつ - ウサーマ・ビン・ラーディンの殺害さつがい。
• 2014年ねん4月がつ - 第だい三さん回かい大統領だいとうりょう選挙せんきょ。
• 2014年ねん9月がつ - アシュラフ・ガニーが大統領だいとうりょうに就任しゅうにん。
• 2014年ねん12月 - 国際こくさい治安ちあん支援しえん部隊ぶたいが終了しゅうりょう。
• 2015年ねん1月がつ - イスラム国こくがホラサン州しゅうの設置せっちを宣言せんげん。
• 2015年ねん7月がつ - ターリバーンの最高さいこう指導しどう者しゃムハンマド・オマルの死亡しぼうが発表はっぴょうされる。
• 2015年ねん9月がつ - クンドゥーズの戦たたかい。
• 2017年ねん1月がつ - アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおいてドナルド・トランプ政権せいけん発足ほっそく。
• 2017年ねん8月がつ - 米べい軍ぐん増派ぞうは。
• 2019年ねん9月がつ - 第だい四よん回かい大統領だいとうりょう選挙せんきょ。
• 2020年ねん2月がつ29日にち - アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくとターリバーンの和平わへい合意ごうい、米べい軍ぐんの翌年よくねん４月がつ末まつ撤退てったいを発表はっぴょう。
• 2021年ねん1月がつ - アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおいてジョー・バイデン政権せいけん発足ほっそく。
• 2021年ねん2月がつ - 米べい軍ぐんの４月がつ末まつの撤退てったいを延期えんき。
• 2021年ねん4月がつ - 米べい軍ぐんの９月くがつ撤退てったいを発表はっぴょう。
• 2021年ねん6月がつ13日にち - ターリバーン政権せいけんの崩壊ほうかい以降いこう、初はじめてターリバーン勢力せいりょくが支配しはいする郡ぐんの数かずが政府せいふ軍ぐんのそれを上回うわまわった。
• 2021年ねん7月がつ8日にち - 米べい軍ぐんの８月がつ末まつの撤退てったいを発表はっぴょう。
• 2021年ねん7月がつ24日にち - アフガニスタン政府せいふが全国ぜんこくに夜間やかん外出がいしゅつ禁止きんし令れいを発令はつれい。
• 2021年ねん8月がつ6日にち - ターリバーンが初はつの州都しゅうと占領せんりょうに成功せいこう。
• 2021年ねん8月がつ12日にち - ターリバーンがカンダハールを占領せんりょう。
• 2021年ねん8月がつ15日にち - ターリバーンがカーブルに到達とうたつ、ガニー政権せいけん崩壊ほうかい。
• 2021年ねん8月がつ30日にち - 米べい軍ぐんがアフガニスタンからの撤退てったいを完了かんりょう、米べい軍ぐんによるアフガニスタン駐留ちゅうりゅうは終了しゅうりょう。
• 2021年ねん8月がつ31日にち - バイデン米まい大統領だいとうりょうが戦争せんそう終結しゅうけつを宣言せんげん。
• 2021年ねん9月がつ8日にち - ハッサン・アフンドを首相しゅしょうとするアフガニスタン・ターリバーン暫定ざんてい政権せいけんが発足ほっそくした。

脚注きゃくちゅう

関連かんれん項目こうもく

• 国際こくさい連合れんごう安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かい決議けつぎ1378
• 国際こくさい連合れんごう安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かい決議けつぎ1776
• アフガニスタン紛争ふんそう
  • アフガニスタン紛争ふんそう (1978年ねん-1989年ねん)
  • アフガニスタン紛争ふんそう (1989年ねん-2001年ねん)
• 対たいテロ戦争せんそう
  • イラク戦争せんそう
• グァンタナモ米まい軍ぐん基地きち
• ブッシュ・ドクトリン
• 第だい十じゅう次じ十字軍じゅうじぐん
• Category:アフガニスタン紛争ふんそう (2001年ねん-2021年ねん)を題材だいざいとした作品さくひん

外部がいぶリンク

• テロ対策たいさく特別とくべつ措置そち法ほうに関かんする資料しりょう 衆議院しゅうぎいん調査ちょうさ局きょく・国際こくさいテロリズムの防止ぼうし及および我わが国くにの協力きょうりょく支援しえん活動かつどう並ならびにイラク人道じんどう復興ふっこう支援しえん活動かつどう等とうに関かんする特別とくべつ調査ちょうさ室しつ編纂へんさん資料しりょう。アフガニスタン関連かんれんの安保理あんぽり決議けつぎの邦訳ほうやく、関連かんれん年表ねんぴょうが記載きさいされている。
• 「同時どうじ多発たはつテロから16年ねん、米べい史上しじょう最長さいちょうの戦争せんそう｢アフガニスタン紛争ふんそう｣を振ふり返かえる」（2017年ねん）
• 国際こくさい連合れんごう広報こうほうセンター「アフガニスタン」