シカ

シカ（鹿しか、英語えいご: Deer）は、鯨くじら偶蹄ぐうてい目めシカ科か (Cervidae) に属ぞくする哺乳類ほにゅうるいの総称そうしょうである。ニホンジカ、トナカイ、ヘラジカなどが属ぞくしており、約やく16属ぞく36種しゅが世界中せかいじゅうの森林しんりんなどに生息せいそくしている。

シカ科か（Cervidae）
生息せいそく年代ねんだい: ルペリアン–現世げんせい PreЄ Є O S D C P T J K Pg N
アカシカ Cervus elaphus
分類ぶんるい
ドメイン : 真ま核かく生物せいぶつ Eukaryota 界さかい : 動物界どうぶつかい Animalia 門もん : 脊索せきさく動物どうぶつ門もん Chordata 亜あ門もん : 脊椎動物せきついどうぶつ亜あ門もん Vertebrata 綱つな : 哺乳ほにゅう綱つな Mammalia 目め : 鯨くじら偶蹄ぐうてい目め Cetartiodactyla 亜あ目め : 反芻はんすう亜あ目め Ruminantia 科か : シカ科か Cervidae
学名がくめい
Cervidae Goldfuss, 1820

特徴とくちょう

オスは枝分えだわかれしたツノを持もち、枝えだ角かく（アントラー）と呼よばれる。多おおくのシカ科かのメスはツノを持もたないがトナカイはオスメス共どもにツノを持もつ。ウシ科かの動物どうぶつのツノ（洞ほら角かく）は骨ほねの芯しんを角質かくしつが覆おおっており生はえ替かわらずに一生いっしょう伸のび続つづけるが、シカのツノ（枝えだ角かく）は骨ほね組織そしきからなり、毎年まいとし生はえ替かわる。春季しゅんきの生はえたばかりの角かくは柔やわらかく表皮ひょうひに覆おおわれているが、秋季しゅうきの骨ほね化かした角かくは固かたく、表皮ひょうひは脱落だつらくする。

体からだの大おおきさは体重たいじゅう6-8kg程度ていどのプーズー (チリに生息せいそく) から、体重たいじゅう800kgにも及およぶヘラジカ (ムース) まで様々さまざまである。

草食そうしょく性せいで、ウシのように4つに分わかれた胃いを持もち、反芻はんすうによる消化しょうかを行おこなう。

分類ぶんるい

ヘラジカ Alces alces

ダマジカ Dama dama

オジロジカ Odocoileus virginianus

シカ科かには現生げんなまのもので約やく17–19属ぞく、三さん十じゅう数すう種しゅが属ぞくする。次つぎのような分類ぶんるい体系たいけいが提唱ていしょうされている。

• シカ亜あ科か Cervinae Goldfuss, 1820
  • ホエジカ族ぞく Muntiacini Pocock, 1923
    • マエガミジカ属ぞく Elaphodus - マエガミジカのみ
    • ホエジカ属ぞく Muntiacus - インドキョン、キョン、マエガミホエジカなど
  • シカ族ぞく Cervini Goldfuss, 1820
    • アクシスジカ属ぞく Axis -アクシスジカ、ホッグジカなど
    • バラシンガ属ぞく Rucervus - バラシンガ、ションブルクジカ
    • ダマジカ属ぞく Dama - ダマジカ、ペルシアダマジカ
    • †メガロケロス属ぞく Megaloceros - ギガンテウスオオツノジカなど
    • †シノメガケロス属ぞく Sinomegaceros - ヤベオオツノジカなど
    • ターミンジカ属ぞく Panolia - ターミンジカ
    • シフゾウ属ぞく Elaphurus - シフゾウ
    • サンバー属ぞく Rusa - サンバー、ルサジカ等ひとし
    • シカ属ぞく Cervus - アカシカ、ニホンジカ、ワピチ、クチジロジカ
• オジロジカ亜あ科か Capreolinae Brookes, 1828
  • ヘラジカ族ぞく Alceini Brookes, 1828
    • ヘラジカ属ぞく Alces - ヘラジカのみ
    • †Cervalces ケルヴァルケス
  • ノロジカ族ぞく Capreolini Brookes, 1828
    • †Procapreolus
    • ノロジカ属ぞく Capreolus - ノロジカ、シベリアノロジカ
    • キバノロ属ぞく Hydropotes - キバノロのみ
  • オジロジカ族ぞく Odocoileini Pocock, 1923
    • †Pavlodaria
    • トナカイ属ぞく Rangifer - トナカイのみ
    • オジロジカ属ぞく Odocoileus - オジロジカ、ミュールジカなど
    • アメリカヌマジカ属ぞく Blastocerus - アメリカヌマジカのみ
    • ゲマルジカ属ぞく Hippocamelus
    • マザマ属ぞく Mazama - アカマザマ等ひとし
    • パンパスジカ属ぞく Ozotoceros - パンパスジカのみ
    • プーズー属ぞく Pudu - プーズー、オナシプーズー

なお、カモシカはウシ科か、ジャコウジカはジャコウジカ科かであり、真しんのシカではない。

ニホンジカ

詳細しょうさいは「ニホンジカ」を参照さんしょう

日本にっぽん国内こくないで単たんにシカと言いうときは、ニホンジカ Cervus nippon を指さすことが多おおい。1980年ねん（昭和しょうわ55年ねん）頃ごろに房総半島ぼうそうはんとうで野生やせい化かした外来がいらい種しゅのキョンを除のぞき、ニホンジカは日本にっぽんに分布ぶんぷする唯一ゆいいつのシカ科か動物どうぶつであり、大おおきな哺乳類ほにゅうるいの少すくない日本にっぽんではニホンカモシカと並ならぶ代表だいひょう的てきな大型おおがた動物どうぶつである。

なお、ニホンジカは、他国たこくに分布ぶんぷする亜種あしゅも含ふくめ、英語えいごでは一般いっぱん的てきに「sika deer」（「sika」は日本語にほんごの「シカ」に由来ゆらい）と呼よばれる。

奥日光おくにっこうより望のぞむ男体山なんたいさん（右側みぎがわ）と戦場ヶ原せんじょうがはらの鹿しか。

関連かんれんする文化ぶんか

日本にっぽんの文化ぶんかにおけるシカについては「ニホンジカ#日本人にっぽんじんと鹿しか」の項こうも参照さんしょう。

伝説でんせつ・逸話いつわ

世界せかい各地かくちの山野さんやに数多かずおおく生息せいそくしていたシカ科かの動物どうぶつはほとんどの民族みんぞくの文化ぶんかに対たいして古ふるくから重要じゅうような影響えいきょうを与あたえていたと思おもわれる。後世こうせいの文化ぶんかにおいては、シカは「俊敏しゅんびん」「非力ひりき」などの象徴しょうちょうとして、また時ときには峻険しゅんけんな山岳さんがく地ちの象徴しょうちょうとして用もちいられることがある（カモシカも参照さんしょう）。

• ギリシア神話しんわでは、月つきの女神めがみアルテミスの水浴すいよくを見みたアクタイオーンが鹿しかに姿すがたを変かえられている。
• 道教どうきょうの伝承でんしょうに登場とうじょうする仙人せんにんがしばしば乗じょう騎きとするのが白しろ鹿しかである。太ふとし上じょう老ろう君きみは青あお牛うしを乗じょう騎きとするが、白しろ鹿しかを乗じょう騎きとしたという伝承でんしょうもある。
• トナカイは古来こらいソリを引ひく使役しえきや荷役にやくにも利用りようされ、クリスマスにサンタクロースのソリを引ひく『赤鼻あかばなのトナカイ』の伝説でんせつにもなった。
• 鹿島かしま神宮じんぐう・春日大社かすがたいしゃなどで神かみ使しとされる。古事記こじきにおいて、オオクニヌシに国くに譲ゆずりをさせる際さい、アマテラスは使者ししゃとしてアメノオハバリを選えらび、その伝令でんれいにアメノカク（天てん迦久）を派遣はけんしたとあり、このアメノカクが鹿しかの神かみとされる（「迦久」は鹿児かこを意味いみする）。アメノオハバリは自分じぶんの代かわりに息子むすこのタケミカヅチをオオクニヌシのもとに差さし向むけ国こく譲ゆずりを承諾しょうだくさせるが、このタケミカヅチが鹿島かしま神宮じんぐうの祭神さいじんであり、その後ご平城京へいじょうきょう鎮護ちんごのために春日大社かすがたいしゃにも分霊ぶんれいされた。
• 鵯越ひよどりごえ：12世紀せいき末すえ、治ち承うけたまわ・寿ことぶき永ひさしの乱らん（源平げんぺい合戦かっせん）の折おりに一ノ谷いちのたにに陣じんを構かまえた平家へいけの軍ぐんを攻せめるため源みなもと氏しは、海岸かいがん沿ぞいから正面しょうめんを攻せめる軍勢ぐんぜいと背後はいごの山地さんちから奇襲きしゅうを行おこなう軍勢ぐんぜいの二に手てに分わかれた。源義経みなもとのよしつね率ひきいる奇襲きしゅう部隊ぶたいが目指めざした平たいら氏しの背後はいごの山やまは「鵯越ひよどりごえ（ひよどりごえ）」と呼よばれる崖がけのごとき急坂きゅうざかで、とても軍ぐんの主軸しゅじくである騎馬きばを下おろせるルートではないと思おもわれた。しかし現地げんちの者ものからこの鵯越ひよどりごえをシカが通かよっていることを聞きいた義経よしつねは「鹿しかも四よつ足あし、馬うまも四よつ足あし、鹿しかが越こす坂さかならば、馬うまも越こせぬ道理どうりはない」とこの急坂きゅうざかを駆かけ下おりるよう軍勢ぐんぜいに指示しじした。これが「鵯越ひよどりごえの逆ぎゃく落おとし」である。このルートからの奇襲きしゅうなど全まったく念頭ねんとうになかった平家へいけは3千せん騎きとも言いわれる源氏げんじの奇襲きしゅうに慌あわてふためき、一気いっきに総崩そうくずれとなった。ただし現在げんざいの六甲山ろっこうざんには鹿しかは生息せいそくしていない。また過去かこに生息せいそくしていたかどうかも不明ふめい。
• 児玉こだま党とうの武士ぶしである富田とみた親ちかし家かは、和田わだ合戦かっせん時とき、和田わだ氏し軍ぐんに味方みかたし、幕府ばくふ軍ぐんに捕とらえられるも、源実朝みなもとのさねともの御前ごぜんで奥州おうしゅう産さんの大鹿おおしかの角かくを一いち度どに2本ほんへし折おる力ちから芸げいを見みせたことで、助命じょめいされ、領地りょうちまで与あたえられている。
• 鹿しかの遠音とおね：古来こらい。鹿しかの遠音とおねを愛めでるのは、文化ぶんか人じん・風流ふうりゅう人じんの嗜たしなみであった。1835年ねん（天保てんぽう6）刊行かんこうの『鳩翁きゅうおう道話どうわ』（柴田しばた鳩翁きゅうおう 口述こうじゅつ）にはこんな逸話いつわが載のる。ある秋あきの夜よる、男おとこ数すう人にんが連つれ立だって知しり合あいの和尚おしょうのいる山寺やまでらを訪たずね、鹿しかの音おとを愛めでる酒宴しゅえんを催もよおした。和歌わかを詠よんだり詩しを作つくったりして待まち侘わびたが、その夜よるに限かぎって鹿しかが一向いっこうに鳴なかない。そのうち、ひとりが「ウチの二に十じゅう二に歳さいの息子むすこときたら、遊ゆう所しょ通がよいばかりして商売しょうばいは上うわの空そら。先行さきゆきが心配しんぱいで、今宵こよいの酒さけは飲のんでも飲のんでもちっとも酔よえない」と愚痴ぐちった。すると別べつの男おとこは「あなたの稼かせいだ銭ぜに金きんを実みの息子むすこさんがお使つかいになる、大おおいに結構けっこうじゃございませんか。あたしなぞは長年ながねん、信しんをおいてきた使用人しようにんに、つい先さきごろ店てんの金かねを持もち逃にげされました」と嘆なげいた。これを聞きいた別べつのひとりは「所詮しょせんカネで解決かいけつできるんだから、お二に人にんはまだマシですよ。ウチは嫁よめ姑しゅうとの仲なかが悪わるく、間あいだに立たたされた私わたしは毎日まいにち辛からくて・・・」と号泣ごうきゅうした。やがて、ある人ひとがはっと我がに返かえり「皆みなさん、私わたしたちはこんな話ばなしをするために今宵こよいここへ集あつまったのではありません。それにしても、いつになったら鹿しかが鳴ないてくれるのか」とぼやきながら障子しょうじを開あけると、庭にわには一いち頭とうの大鹿おおしかがぬっと立たっていた。驚おどろいた男おとこが「お前まえさん、ここで一体いったい何なにをしておる？」と訊たずねると、大鹿おおしかが言いうには「人間にんげんがなくのを聴きいておりました。」
• 本多ほんだ忠勝ただかつ - 鹿しかの角かくを象かたどった「鹿角かつの脇立わきだち兜かぶと」で知しられる。

創作そうさく等とう

• 『バンビ』- フェーリックス・ザルテン作さくの童話どうわおよびディズニーのアニメ。転てんじて、仔こ鹿しかの俗称ぞくしょうとしても用もちいられる。
• 『子鹿こじか物語ものがたり』- マージョリー・キナン・ローリングス作さくの児童じどう文学ぶんがくおよび1946年ねんのアメリカ映画えいが、1983年ねん（昭和しょうわ58年ねん）の日本にっぽんのアニメ
• 『仔こ鹿しか物語ものがたり』- 釧路くしろ湿原しつげんを舞台ぶたいとした1991年ねん（平成へいせい3年ねん）の日本にっぽん映画えいが
• 『片耳かたみみの大だいシカ』（椋むく鳩ばと十じゅう）
• 『シートン動物どうぶつ記き -サンドヒル・スタッグ-』（谷口たにぐちジロー/シートン）
• しかお、しかこ、アントン - Jリーグ・鹿島かしまアントラーズのマスコット
• 『鹿しか男おとこあをによし』 - 万城目まんじょうめ学まなぶ作さくのファンタジー小説しょうせつおよびそれを基もとにした2008年ねん（平成へいせい20年ねん）のテレビドラマ
• CI-CA - 奈良交通ならこうつうで使用しようできるIC交通こうつうカード
• 『奈良ならの春日野かすがの』 - 吉永よしなが小百合さゆりが歌唱かしょうした楽曲がっきょく。
• しずてつジャストライン小鹿おしか営業えいぎょう所しょ - 営業えいぎょう所しょの所在地しょざいちの知名ちめいに因ちなみ、営業えいぎょう所しょのペットマークに鹿しかが描えがかれている
• 日本にっぽんの道路どうろ標識ひょうしきでは警戒けいかい標識ひょうしきとして「動物どうぶつが飛とび出だすおそれあり」の標識ひょうしきにシカのシルエットがデザインされている。

派生はせいした俗語ぞくご

しかと

しらばっくれたり知しらないふりをすること。花札はなふだの10月がつの札さつに描えがかれている鹿しかが横よこを向むいていることから。「鹿しか十じゅう（しかとう）」。博徒ばくとの隠語いんごに由来ゆらいする洒落しゃれ言葉ことばである。

利用りよう

鹿しか肉にく

「鹿しか肉にく」も参照さんしょう

日本にっぽんでは鹿しか肉にくのことを「もみじ」と呼よび、様々さまざまな肉にく料理りょうりに調理ちょうりされる。味あじは一般いっぱんに柔やわらかい牛肉ぎゅうにくに近ちかい。「もみじ」という呼よび名なは馬肉ばにくを「さくら」、イノシシ肉にくを「ぼたん」と呼よぶのと同様どうようの隠語いんごで、鹿しか肉にくは「鹿しか」が秋あきの季語きごであることから紅葉こうようを連想れんそうしたもの、あるいは花札はなふだの「鹿しかにもみじ」の絵え札さつから連想れんそうしたものとされる。

皮革ひかく

鹿しかの皮かわは細こまかい繊維せんいが緻密ちみつに絡からみ合あった独特どくとくな構造こうぞうをしており柔やわらかで滑なめらかである。鹿しか革かわ（ディアスキン）は通気つうき性せいや保温ほおん性せいに優すぐれ手袋てぶくろや衣料いりょうに用もちいられる。日本にっぽんでは武具ぶぐの材料ざいりょうとしてよく用もちいられた。

また、油あぶらでなめしたものをセーム革かわといいカメラのレンズや宝飾ほうしょく品ひんの汚よごれ落おとし、洗車せんしゃ用品ようひん、ガソリンのろ過かなどに用もちいられる。

鹿角かつの

枝えだ角かくはナイフの柄えやボタンなどに用もちいられている。鹿しかの枝えだ角かくは、アントラ（Antler）と呼よばれている。鹿しかの角かく（鹿しか茸だけ）は乾燥かんそう粉末ふんまつや黒焼くろやき末まつは様々さまざまな効能こうのうを持もつとして民間みんかん療法りょうほうで用もちいられる。

見みることのできる名所めいしょ

子供こどもの鹿しか

• 奈良公園ならこうえん・若草山わかくさやま - 「奈良ならの鹿しか」として天然記念物てんねんきねんぶつに指定していされている。
• 宮島みやじま - 宮島みやじまの鹿しか
• 牡鹿半島おしかはんとう・金きむ華山かざん

衝突しょうとつ事故じこ

車道しゃどうに現あらわれたシカ（2012年ねん、群馬ぐんま県けん）

体重たいじゅうが1トン前後ぜんこうになるヘラジカは道路どうろで交通こうつう事故じこに遭あうことがある。その体重たいじゅうゆえに衝突しょうとつ衝撃しょうげきで車両しゃりょうに乗車じょうしゃしている人間にんげん及および車両しゃりょうに多大ただいな影響えいきょうを与あたえる。視界しかいの悪わるい屈曲くっきょく部ぶなどで衝突しょうとつした車両しゃりょうにあっては、時ときに運行うんこうできなくなるほど大破たいはする。北欧ほくおうでは事故じこに遭あったヘラジカ（エルグ、エルク）により雪上せつじょうに数かずmにわたって路面ろめんが血ちにそまり、観光かんこう客きゃくを驚おどろかすことがある。したがって日本にっぽん国内こくないにおける野生やせい動物どうぶつ保護ほごにおける小しょう動物どうぶつの警告けいこくや注意ちゅうい喚起かんきとは若干じゃっかん主旨しゅしが異ことなる。群むれのいる地域ちいきや生息せいそくが確認かくにんされている地域ちいきでは「野生やせい動物どうぶつに注意ちゅうい」と共ともに「エルグに注意ちゅうい」との交通こうつう標識ひょうしきがありヘラジカの絵えが描えがかれ衝突しょうとつ事故じこへの注意ちゅういを喚起かんきしている。

シカ注意ちゅういの標識ひょうしき

日本にっぽん国内こくないにおいても、エゾシカが増加ぞうかしている道東どうとう・道北みちきたでは群むれが活発かっぱつに移動いどうする春はるや秋あきを中心ちゅうしんに衝突しょうとつ事故じこが多発たはつするため、ビラなどで注意ちゅうい喚起かんきが行おこなわれる。エゾシカはニホンジカの中なかでも成体せいたいが100キログラムを超こえる大型おおがたの亜種あしゅであり、衝突しょうとつすると車両しゃりょうが大破たいはすることがあり注意ちゅういが必要ひつようである。なお、競馬けいば用ようの競走きょうそう馬ばの体重たいじゅうは500キログラム程度ていどである。

シカと鉄道てつどう車両しゃりょうとの衝突しょうとつ事故じこは長年ながねんの懸案けんあんであるが、ライオンの糞尿ふんにょうを線路せんろに散布さんぷする方法ほうほうが考案こうあん実用じつよう化かされてから事故じこは激減げきげんした。シカがライオンの匂においに怯おびえて線路せんろに立たち寄よらなくなるからである。しかし、減少げんしょうしたとはいえ個体こたい数すうが多おおいために、北海道ほっかいどうでは根室本線ねむろほんせんを中心ちゅうしんに毎日まいにちのように衝突しょうとつ事故じこが発生はっせいすることがある。自動車じどうしゃとエゾシカの衝突しょうとつ例れいも非常ひじょうに多おおい。エゾシカは自動車じどうしゃを怖こわがらず、クラクションを鳴ならしても逃にげなかったり、路上ろじょうで立たち止どまる性質せいしつがあり、高速こうそくで正面しょうめんから近ちかづいても逃にげずに正面しょうめん衝突しょうとつにいたる事例じれいが多おおい。特とくに北海道ほっかいどうでは自動車じどうしゃもスピードを出だすため、エゾシカに気きづいてからクラクションを鳴ならしてもエゾシカは逃にげず、衝突しょうとつする事例じれいが多おおい。根室ねむろ管内かんないだけでも、1年間ねんかんに300から400件けんの衝突しょうとつ事故じこがあり、平均へいきんすると1日にち1件けん以上いじょうとなる。

シカと列車れっしゃの衝突しょうとつ事故じこの原因げんいんが究明きゅうめいされるなかで、シカは鉄分てつぶんを摂取せっしゅするために鉄道てつどう敷地しきち内ないへ入はいり、線路せんろを舐なめるのが原因げんいんで列車れっしゃと衝突しょうとつすることが発見はっけんされ、シカの誘引ゆういん材ざいが開発かいはつされ、2016年度ねんどグッドデザイン賞しょうを受賞じゅしょうした。

近鉄きんてつ全線ぜんせんにおいても、2008年ねん（平成へいせい20年ねん）の鹿しかとの接触せっしょく事故じこが129件けん、2015年ねん（平成へいせい27年ねん）には288件けんと増加ぞうか傾向けいこうにあった。そこで近鉄きんてつは京三製作所きょうさんせいさくしょ、モハラテクニカと共同きょうどうでシカとの共存きょうぞんをコンセプトに「シカ踏切ふみきり」を開発かいはつした。2016年ねん（平成へいせい28年ねん）5月がつに大阪おおさか線せん東青山ひがしあおやま駅えき（三重みえ県けん津つ市し）付近ふきんにおよそ1km、2017年ねん（平成へいせい29年ねん）3月がつに榛原はいばら駅えき（奈良なら県けん宇陀うだ市しから室生むろう口大野くちおおの駅えき（奈良なら県けん宇陀うだ市し）の間あいだにおよそ1km設もうけられた。「シカ踏切ふみきり」とは、線路せんろ内ない侵入しんにゅう防止ぼうしシステムであり、列車れっしゃ運行うんこう時じはシカの嫌きらう超ちょう音波おんぱを発出はっしゅつしてシカの線路せんろ内ない侵入しんにゅうを防止ぼうしする。このシステムを導入どうにゅうののち、シカとの接触せっしょくはほぼなくなったという。

出典しゅってん

福井ふくい栄一えいいち『日本にっぽんの奇談きだん・珍談ちんだん101　古典こてんの玉手箱たまてばこから』2022年ねん、共栄きょうえい書房しょぼう、ISBN 978-4763411044。

関連かんれん項目こうもく

• 鹿しかのさご
• 鹿しか肉にく
• 鹿しか踊おどり
• 「鹿しか」で始はじまるページの一覧いちらん
• タイトルに「鹿しか」を含ふくむページの一覧いちらん

外部がいぶリンク

• 『芸術げいじゅつ資料しりょう. 第だい三さん期き 第だい十じゅう册さつ「鹿しか」金井かない紫雲しうん編へん (芸げい艸そうこう堂どう, 1941)』 - 国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんデジタルコレクション
• 『シカ』 - コトバンク