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漆 - Wikipedia

うるし(うるし)とは、日本にっぽん中国ちゅうごく朝鮮半島ちょうせんはんとうではウルシウルシぞく落葉らくよう高木たかぎのウルシ(うるし学名がくめい: Toxicodendron vernicifluum) から採取さいしゅした樹液じゅえきであり、ウルシオール主成分しゅせいぶんとする天然てんねん樹脂じゅし塗料とりょうおよび接着せっちゃくざいである。そのベトナムなどの東南とうなんアジア、ミャンマー、ブータンにも成分せいぶん用途ようとことなるものの一般いっぱんてきうるしばれる天然てんねん樹脂じゅし存在そんざいする。うるし出来でき工芸こうげいひん漆器しっきい、とりわけ日本にっぽん漆器しっきはそのたか品質ひんしつにより中世ちゅうせいころから南蛮なんばん貿易ぼうえきかいして世界中せかいじゅう輸出ゆしゅつされていた。

うるし

成分せいぶん

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ビルマウルシGluta usitata

主成分しゅせいぶんうるしじゅによってことなり、しゅとして日本にっぽん中国ちゅうごくさんうるしじゅウルシオール (urushiol)、台湾たいわんベトナムさんうるしじゅラッコール (laccol)、タイミャンマーさんうるしじゅ[ちゅう 1]チチオール (thitsiol) を主成分しゅせいぶんとする。うるしあぶらちゅう水球すいきゅうがたエマルションで、有機ゆうき溶媒ようばい溶な成分せいぶんみず溶な成分せいぶん、さらにどちらにも不溶ふよう成分せいぶんとにけることができる。

空気くうきちゅう水蒸気すいじょうき酸素さんそもちい、生漆きうるしふくまれる酵素こうそ(ラッカーゼ)の触媒しょくばい作用さようによって常温じょうおん重合じゅうごうする酵素こうそ酸化さんか、および空気くうきちゅう酸素さんそによる自動じどう酸化さんかにより硬化こうかする。酵素こうそ酸化さんかは、水酸基すいさんき部位ぶいによる反応はんのうで、自動じどう酸化さんかはアルキル部位ぶい架橋かきょうである。酵素こうそ酸化さんかにはある程度ていど温度おんど湿度しつど必要ひつようであり、これがうまく進行しんこうしないとまったく硬化こうかしない。硬化こうかするときわめて丈夫じょうぶなものになるが、じゅう結合けつごうふくんでいるため、紫外線しがいせんによって劣化れっかする。液体えきたい状態じょうたい加熱かねつすると酵素こうそしつかつするためかたまらなくなり、また、樟脳しょうのうぜると表面張力ひょうめんちょうりょくおおきくなるため、これを利用りようしてうるし塗料とりょうとして使用しようするさい油絵あぶらえのように筆跡ひっせきげること出来できる。また、マンガン化合かごうぶつふくむ『こな』とばれる珪藻土けいそうどそうから採取さいしゅされるぜることであつりしても硬化こうかしやすくなり、螺鈿らでん分厚ぶあつ素材そざい使つかさいにこれがもちいられる。

金属きんぞくなどにった場合ばあいひゃくすうじゅうまで加熱かねつすることで焼付やきつ塗装とそうすることもできる。

漆器しっき塗料とりょう

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輪島塗わじまぬり

現在げんざいもっと一般いっぱんてき用途ようと道具どうぐ工芸こうげいひん美術びじゅつひん塗料とりょうとしてもちいることであり、うるしられた道具どうぐ工芸こうげいひん漆器しっきという。うるしりは伝統でんとう工芸こうげいとしてそのうつくしさと強靱きょうじんさを評価ひょうかされ、食器しょっき高級こうきゅう家具かぐかべゆかざい楽器がっきなどにもちいられる。楽器がっき表面ひょうめんうるしりすることで、ひびきや音色ねいろくなるとはなサクソフォンヴァイオリン奏者そうしゃもいる。単色たんしょくるだけでなく、うるしそれ自体じたい塗料とりょう顔料がんりょうわせて模様もようえがくことや、金粉きんぷん銀粉ぎんぷんらした蒔絵まきえ貝殻かいがらをはめんだ螺鈿らでん仕上しあげることもおこなわれる[3]

うるし一旦いったん硬化こうかするとねつ湿気しっけさんアルカリ、アルコール、あぶらにもつよい。腐敗ふはい防止ぼうし防虫ぼうちゅう効果こうかもあるため、食器しょっき家具かぐてきしている。一方いっぽう紫外線しがいせんけると劣化れっかする。また、極度きょくど乾燥かんそう状態じょうたい長期間ちょうきかんさらすと、ひびれたり、むくれたり、くずれたりする。

うるしもちいた日本にっぽん工芸こうげいひんではきょう漆器しっきがよくられており、うるしりの食器しょっきでは、輪島塗わじまぬりなどが有名ゆうめいたけ細工ざいくかごうるしかためるもの(籃胎)や、かさねたうるし彫刻ちょうこくほどこ工芸こうげいひんうるし)もある。

碁盤ごばん将棋しょうぎばんも、伝統でんとうてきしなではつぶしたかたなくろうるしけて盤上ばんじょうろす「太刀たちざか」という技法ぎほうかれる。

伝統でんとうてき将棋しょうぎこま黄楊つげ書体しょたいわせてり、くろうるしられる。った表面ひょうめんうるしこまくろうるし調合ちょうごうしてりをめるうめこまうめ表面ひょうめんにさらにうるしかさねたもり上駒かみこまがある。

うるしいろ

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塗料とりょうとしてのうるし伝統でんとうてきいろくろしゅであり、くろ酸化さんかてつこなすすしゅうるしにはべんがらたつすななどが顔料がんりょうとしてもちいられる。くろうるししゅうるしもちいてけることもおこなわれる。

じゅんしゅ(うるみ)うるしは、はん透明とうめいとおるうるしわきまえもちいて、茶色ちゃいろ系統けいとう栗色くりいろから小豆色あずきいろまでなど)を技法ぎほうである。なお、すうひゃくねん褪色たいしょくしたくろうるしちゃしょくになることもある。

江戸えど時代じだいはいってからはうるしあおうるし開発かいはつされた。うるしとおるうるしいしくわえたものである。あおうるしうるしあいなどをくわ発色はっしょくさせたもので、実際じっさいいろあおではなく緑色みどりいろである。伝統でんとうしょくひとつ「あおうるし(せいしつ)いろ」もふか緑色みどりいろす。

金箔きんぱくうえとおるうるしり、金属きんぞく光沢こうたくのあるあか金色きんいろかがやかせる技法ぎほう白檀びゃくだんぬりばれ、安土あづち桃山ももやま時代じだい武将ぶしょう甲冑かっちゅうにもれいられる。

昭和しょうわ以後いご酸化さんかチタンけい顔料がんりょうレーキ顔料がんりょう)の登場とうじょうにより、あかくろ以外いがいいろもかなり自由じゆうせるようになった。

福井ふくいけん工業こうぎょう技術ぎじゅつセンターが、うるしどうりょうぜることで、カラフルで透明とうめいかんのある仕上しあがりになる塗料とりょう開発かいはつする[4]など、うるし応用おうようした塗料とりょう塗装とそう技術ぎじゅつ研究けんきゅう現在げんざいすすんでいる。

接着せっちゃくざい

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縄文じょうもん時代じだいからうるし固定こていされたじりが出土しゅつどしており、人類じんるいはまず接着せっちゃくざいとしての用途ようと発見はっけんしていたとかんがえられる。江戸えど時代じだいなどには、うるし接着せっちゃくざいとしてもちいることもよくおこなわれた。たとえば、小麦粉こむぎこうるしわせて、れた磁器じき接着せっちゃくするれいがある。硬化こうかには2週間しゅうかん程度ていどようする。接着せっちゃく接着せっちゃく部分ぶぶんうえくろうるしってかわかし、さらにあかうるしり、金粉きんぷんをまぶす手法しゅほうきむといい、鑑賞かんしょうこたえる、ないしは工芸こうげいてき価値かちたかめるものとしてあつかわれる。

製法せいほう

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樹液じゅえき採取さいしゅ

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日本にっぽんではうるし職人しょくにん対象たいしょうとするみき表面ひょうめん地面じめんたい平行へいこう方向ほうこうみをれ、樹液じゅえきいちてきづつみをなぞってすくいり、タカッポとばれる木製もくせい容器ようきあつめる。地域ちいきではⅤみをいれ、貝殻かいがらかん、プラスチックばんなどを自然しぜんしだれてきた樹液じゅえきざらめる。

うるしきの方法ほうほうは、いちねん樹幹じゅかん全体ぜんたいきずけ、うるしえきり、その萌芽ほうが更新こうしんのためたおしてしまう「ころせき(ころしがき)ほう」が現在げんざい日本にっぽんでは主流しゅりゅうである。うえづけ4-5ねんないし6-7ねんしゅうが20cm内外ないがいになるころ、また、樹齢じゅれいおおきいものでは樹液じゅえきさかんに流動りゅうどうする5-6がつごろから11がつ中旬ちゅうじゅんえきおこな[5]には、すうねんわたってつづける「養生ようじょうほう」がある。

以下いかころせきの採取さいしゅほうについてしるす。まず外皮がいひけずり、樹幹じゅかん地上ちじょう25cmの箇所かしょからこずえかたに35cmほどの間隔かんかく樹幹じゅかんいち側面そくめんながさ2cmあまり横溝よこみぞをつけ(これをけんづけという)、つぎ反対はんたいめんにもまた表面ひょうめんけんづけあいだのほぼ中央ちゅうおうからけんづけほどこし、こずえかたかって表面ひょうめん同様どうようおこない、螺旋らせんじょうきずける(みきかこえ22-25cmのでは一方いっぽう側面そくめんからのみえきし、これを「一腹いっぷく掻」といい、みきかこえ27-45cmくらいのものは両面りょうめんよりえきし、これを「はら掻」といい、みきかこえのさらにおおきいものはさんはら掻をおこなう)。

きずながさは2-3cm、ふかさは6mm、けんづけかずは、周囲しゅうい22-25cmくらいのものでは9-11箇所かしょけんづけおわればみぞ上部じょうぶ6-9mmばかりの箇所かしょにさらに横溝よこみぞけ、つぎざいにまでたっするきずあたえ、流出りゅうしゅつする灰白色かいはくしょく乳状にゅうじょうえきうるしつぼない採集さいしゅうする。掻工は、いちにちぜん担当たんとうじゅの4ぶんの1をえきし、ぜんえきわったらもとかえり、きゅうけんづけ上方かみがた6-9mmばかりの箇所かしょ横溝よこみぞほどこしてえきし、以上いじょう作業さぎょういくかいかえす。

みぞながさはかいごとにながくし、あき彼岸ひがんまでにじゅうすうかいからじゅうすうかい横溝よこみぞかくしてえきする(これをあたり掻またはほん掻という)。

さい下部かぶは、表裏ひょうり両面りょうめんともにけんづけ上下じょうげ横溝よこみぞほどこし、するときず配列はいれつ中央ちゅうおうのくびれたじょうをなすので、つづみ掻といい、あたり掻と区別くべつされる。

あたり掻でえきはつうるし(6がつ中旬ちゅうじゅんから7がつ中旬ちゅうじゅんまでに採集さいしゅうしたもの)、もりうるし(7がつ中旬ちゅうじゅんから9がつ中旬ちゅうじゅんまでに採集さいしゅうしたもの)、すえうるし(9がつ初旬しょじゅんからあき彼岸ひがんまでに採集さいしゅうしたもの)に区別くべつされる。

あたりづけわったら、けんづけ下部かぶおよびみきほそ部分ぶぶんからえきし(このえきうらあるいはうらうるしという)、さらにみきめんきずえらんでえきし(このえきとめあるいはとめうるしという)、またえだ伐採ばっさい小刀こがたなきずえきする。

えきがことごとく終了しゅうりょうしたら、樹幹じゅかん伐採ばっさい根株ねかぶから発芽はつがさせしんはやしそなえることとする。

えき収量しゅうりょうは、樹幹じゅかん18cmのもの110g内外ないがい樹幹じゅかん21cmのもの125g内外ないがい樹幹じゅかん24cmのもの140g内外ないがい樹幹じゅかん27cmのもの190g内外ないがい樹幹じゅかん30cmのもの245g内外ないがい樹幹じゅかん36cmのもの375g内外ないがい樹幹じゅかん42cmのもの490g内外ないがい樹幹じゅかん51cmのもの750g内外ないがい樹幹じゅかん66cmのもの1,540g内外ないがいである。ただし、樹齢じゅれい土質どしつ気候きこう、掻方などにより多少たしょうことなる。

うるし精製せいせい

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あらみには、樹皮じゅひやゴミなどがざっているので、まずすこ加熱かねつして流動りゅうどうせいげてから濾過ろかをする。現在げんざいは、綿めんくわえたうえで、遠心えんしん分離ぶんり分離ぶんりする方法ほうほう使つかわれている。濾過ろかわったものは生漆きうるし(きうるし)ぶ。

生漆きうるし精製せいせいは、攪拌して成分せいぶん均一きんいつにして粒子りゅうしこまかくする「なやし」と天日てんじつなどで低温ていおん水分すいぶん蒸発じょうはつさせる「くろめ」という2つの工程こうてい分類ぶんるいされる。また、これらの工程こうてい用途ようと品質ひんしつわせて油分ゆぶん鉄分てつぶんとう添加てんかざいくわえられて精製せいせいうるしとなる。

精製せいせい鉄分てつぶんくわえると、ウルシオールなどとの化学かがく反応はんのうで、くろいろことができ、くろうるし(くろうるし)となるが、鉄分てつぶんくわえないといろうすとおるうるし(すきうるし)となる。

精製せいせいうるしにはゆうあぶらけいあぶらけいの2系統けいとうおおきく分類ぶんるいされる。一般いっぱんゆうあぶらけい発色はっしょく・つやがかざり上塗うわぬりにもちいられる。あぶらけい研磨けんましや蝋色ろいろ仕上しあげなど)にいている。

精製せいせいわったとおるうるしには、必要ひつようおうじて朱色しゅいろたつすな)などの顔料がんりょうくわえていろけて使用しようする。

おもうるし種類しゅるい

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基本きほんてき用途ようと品質ひんしつ等級とうきゅう)によって分類ぶんるいされる。地域ちいき業者ぎょうしゃによって名称めいしょうことなる場合ばあいもある。

  • 生漆きうるしけい生漆きうるしふねうるしさび下地したじうるしなまうえあじうるしこう品質ひんしつなもの)
  • あぶらけい黒目くろめうるし木地きじりょうるしあかりょうるしくろりょしょくうるし梨地なしじうるし
  • ゆうあぶらけいしゅごううるしはくうるし春慶しゅんけいうるし

日本にっぽん国内こくない需給じゅきゅう

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日本にっぽん国内こくないうるし生産せいさんりょうは、需要じゅようりょうの1%程度ていどでしかなく、のこりは中国ちゅうごくからの輸入ゆにゅうによりまかなわれている。その輸入ゆにゅうりょうも1990ねん前後ぜんこうが300トン以上いじょうであったのにたいし、2007ねん以降いこうは100トンを傾向けいこうにある。日本にっぽん国内こくない生産せいさんは、現在げんざい生産せいさんりょうるとやく7わり浄法寺じょうほうじうるし代表だいひょうされる岩手いわてけんさんやく2わり茨城いばらきけんさんやく1わり栃木とちぎけんさんとなっている。うるし生産せいさんでは、うるしかき職人しょくにん減少げんしょうつづけており、今後こんご文化財ぶんかざい修復しゅうふく必要ひつよう国内産こくないさんうるし確保かくほ支障ししょうしょうじることから後継こうけいしゃ育成いくせい課題かだいとなっている[6]

うるしとかぶれ

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なまうるしはだにつくとかぶれるが、これはウルシオールによるアレルギーはんおうである。ウルシオールのアレルギーをひとは、うるしちかくを通過つうかしただけでもかぶれることがある。果物くだものマンゴーウルシ植物しょくぶつで、ひとによってはかぶれることがある。かぶれの程度ていど症状しょうじょうは、ひとによってじつにさまざまである。はじめはうるし付着ふちゃくした部分ぶぶんのみであるが、いたり刺激しげきすることで徐々じょじょ蔓延まんえんし、ひどい場合ばあいには全身ぜんしんにまでひろがる。効果こうかのある薬剤やくざいなどはいまのところなく、うるしれないことが重要じゅうようである。うるし職人しょくにんなど業務ぎょうむじょううるしあつか必要ひつようがあるものあいだでは、うるしのかぶれにはたいせいしょうじることが経験けいけんてきられている。そのため、新規しんき入門にゅうもんしゃにはうるしをなめさせるなどして重度じゅうどのかぶれを人為じんいてき経験けいけんさせる対処たいしょほう伝統でんとうてき存在そんざいする。

漆器しっきではかぶれることはいが、まれに、つくられてあいだもない場合ばあい、かぶれることもある。これは重合じゅうごうされのこったウルシオールが揮発きはつするためである。十分じゅうぶん重合じゅうごうすすんでいれば、かぶれることはない。

うるしにかぶれた場合ばあいは、ワラビせんじたしる沢蟹さわがにしる硼酸ほうさんみずなどを患部かんぶ民間みんかん療法りょうほうがある。

うるしにまつわる歴史れきし伝承でんしょう

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うるし利用りよう

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日本にっぽん列島れっとうにおけるうるし利用りよう縄文じょうもん時代じだいから開始かいしされ、土器どき接着せっちゃく装飾そうしょく使つかわれているほか、木製品もくせいひんうるしったものや、クシなど装身具そうしんぐったものも出土しゅつどしている。うるし製品せいひん縄文じょうもん早期そうきから出土しゅつどし、縄文じょうもん時代じだいつうじて出土しゅつど事例じれいられる。2000ねん北海道ほっかいどう函館はこだて実施じっしされたかきしま遺跡いせき調査ちょうさで、出土しゅつどしたうるしりの副葬品ふくそうひんやく9000ねんまえつくられたものであったことがあきらかになった。これが現在げんざい世界せかい最古さいこうるし製品せいひんである[7]弥生やよい時代じだい遺跡いせきからはうるし製品せいひん出土しゅつどすくなく、塗装とそう技術ぎじゅつ縄文じょうもん段階だんかいことなる簡略かんりゃくされたものがおおい。弥生やよい時代じだいからは武器ぶきへのうるし塗装とそうられ、古墳こふん時代じだいには皮革ひかく製品せいひんてつ製品せいひんなどへの加工かこうおこなわれている。古墳こふん時代じだいいたるとかんうるし塗装とそうしたうるしかん存在そんざいられる。

古代こだいにはうるし容器ようきぶた廃棄はいき文書ぶんしょ転用てんようすることがおこなわれているが、うるし浸潤しんじゅんした廃棄はいき文書ぶんしょうるし文書ぶんしょばれる。うるし文書ぶんしょ土中どちゅうにおいてものこそんしやすくなり、木簡もっかん墨書ぼくしょ土器どきなら出土しゅつど文字もじ資料しりょうとして注目ちゅうもくされている。

奈良なら時代じだいにはうるし製品せいひん存在そんざいし、良質りょうしつうるしえきもち手間てまをかけて製作せいさくしたけん漆器しっき貴重きちょうひんとして貴族きぞく階級かいきゅうもちい、一方いっぽううるし使用しようりょうらしすみしぶすみ柿渋かきしぶぜた下地したじ)をもち大量たいりょう生産せいさんされた普及ふきゅうがた漆器しっき庶民しょみんもちいたが、うるし蒔絵まきえ装飾そうしょくしたものもられる。

中世ちゅうせいには林産りんさん資源しげんのひとつとしてうるし採取さいしゅおこなわれており、甲斐かいこくでは守護しゅご武田たけだうるし納入のうにゅうもとめている文書ぶんしょのこされ(えいろく3ねん武田たけだ朱印しゅいんじょう桑原くわばら文書ぶんしょ」『山梨やまなしけん資料しりょうへん4(県内けんない文書ぶんしょ所載しょさい)、『きのえようぐんかん』では武田たけだ信玄しんげん織田おだ信長のぶながうるし贈答ぞうとうした逸話いつわしるされている[8]

うるしぬり起源きげん伝承でんしょう

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『以呂るいしょう』に、日本にっぽんにおけるうるしぬり起源きげんとしてつぎのようなはなしっている。

やまとたけ皇子おうじ(やまとたけるのみこ)は、宇陀うだおもねやまりょうをしていたときだいいのししたが、仕留しとめることができなかった。うるしってそのしる矢先やさきってふたたると、とどめをすことができた。そのときしる皇子おうじくろまった。部下ぶかしるあつめさせ、っていたものるとうつくしくまった。そこでこのうるし河原かわはら現在げんざい奈良ならけん宇陀うだ大宇陀おおうだ嬉河原うれしがわら(うれしがわら))とめいけ、うるし自生じせいしている曽爾そにきょううるしづくり(ぬりべのみやつこ)をいた。

そくほとけうるし

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自分じぶん自身じしんミイラ仏像ぶつぞう、すなわちそくほとけとした修行しゅぎょうしゃたち身体しんたい防腐ぼうふのためにあらかじタンパク質たんぱくしつ含有がんゆうりょうすくないのみをしょくする「しょく」をおこなうとともに、「入定にゅうじょう」(してそくふつとなること)の直前ちょくぜんうるしんでその防腐ぼうふ作用さよう利用りようしたという。[よう出典しゅってん]

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ ウルシ落葉らくよう高木たかぎビルマウルシ学名がくめい: Gluta usitataシノニム: Melanorrhoea usitata)、ビルマ: သစ်စေးIPA: /sɪʔsí~t̪ɪʔsí/[1] スィッスィーあるいはティッスィー。ビルマ現代げんだいにおけるつづりと実際じっさい発音はつおんとの乖離かいりはげしく、ALA-LCこぼしほう英語えいごばんつづどおりに転写てんしゃすれば sacʻce" となるが、西欧せいおう文献ぶんけんでは thitsi などの表記ひょうきられる[2]

出典しゅってん

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  1. ^ 大野おおの, とおる『ビルマ(ミャンマー)辞典じてん大学だいがく書林しょりん、2000ねん、734ぺーじISBN 4-475-00145-5 
  2. ^ 熱帯ねったい植物しょくぶつ研究けんきゅうかい へん熱帯ねったい植物しょくぶつ要覧ようらん』(だい4はんよう賢堂かしこどう、1996ねん、270ぺーじISBN 4-924395-03-X 
  3. ^ うるしつやつつまれて「JAPAN」と国名こくめいでもばれたうるし日本経済新聞にほんけいざいしんぶん朝刊ちょうかん2018ねん12月9にち(NIKKEI The STYLE)。
  4. ^ 透明とうめいせいたかうるしえき 福井ふくいけんこうわざセンター、パステル調ちょう可能かのう日本経済新聞にほんけいざいしんぶん朝刊ちょうかん2018ねん3がつ13にち北陸ほくりく経済けいざいめん)。
  5. ^ うるしつくかた,林野庁りんやちょう
  6. ^ 情報じょうほう 林野りんや 12がつごう」p5 林野庁りんやちょう 2017ねん
  7. ^ 遺跡いせき紹介しょうかいかきしまA・B遺跡いせき函館はこだて”. 公式こうしきウェブサイト). 北海道ほっかいどう. 2016ねん7がつ21にち閲覧えつらん
  8. ^ 白水しろうずさとし産業さんぎょう発達はったつ物資ぶっし流通りゅうつう」『山梨やまなしけん通史つうしへん2(中世ちゅうせい

関連かんれん文献ぶんけん

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  • 永瀬ながせ喜助きすけ神谷かみや幸男ゆきお穂積ほづみ賢吾けんご宮腰みやこし哲雄てつおうるしえき反復はんぷく「くろめ」によるウルシオールの変化へんかてい湿度しつど環境かんきょうにおける自然しぜん乾燥かんそうせい発現はつげん関係かんけい」『日本にっぽん学会がっかいだい2002かんだい3ごう日本にっぽん学会がっかい、2002ねん、377-384ぺーじdoi:10.1246/nikkashi.2002.377 
  • 大藪おおやぶやすしうるし特性とくせい最近さいきん研究けんきゅう」『高分子こうぶんしだい48かんだい8ごう高分子こうぶんし学会がっかい、1999ねん、586-589ぺーじdoi:10.1295/kobunshi.48.586 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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