スター・ストーキング

スター・ストーキング（英語えいご: star stalking）は著名ちょめい人じんへの執拗しつような追おっかけや介入かいにゅうを行おこなうストーキングの一種いっしゅ。マスメディアの発達はったつによって広ひろがった問題もんだい行動こうどうで、テレビが普及ふきゅうした1970年代ねんだいには先駆せんく者しゃが存在そんざいした。被害ひがいに遭あいやすい職業しょくぎょうに歌手かしゅ、俳優はいゆう、タレント、アイドルといった芸能人げいのうじんの他ほか、政治せいじ家か、評論ひょうろん家かなどが挙あげられる。

ストーカー自身じしんの承認しょうにん欲求よっきゅうの充足じゅうそくや、報道ほうどうによる知名度ちめいどの向上こうじょうを目的もくてきに行おこなわれる。そのため、スター・ストーカーは被害ひがい者しゃに忍しのび寄よるのではなく、公然こうぜんと接近せっきんする。上智大学じょうちだいがく教授きょうじゅの福島ふくしま章あきらは、著名ちょめい人じんの職業病しょくぎょうびょうとして捉とらえ、回避かいひには転職てんしょく以外いがいに手段しゅだんがないと述のべている。それに対たいしてサバイバーで作家さっかの遙はるか洋子ようこは、ソーシャル・ネットワーキング・サービスの広ひろがった時代じだいにおいて、一般人いっぱんじんとスターの区別くべつは曖昧あいまいなものになったと述のべている。被害ひがいを受うけたKARAのパク・ギュリは、ストーカーをファンとは認みとめないと訴うったえている。

社会しゃかい背景はいけい

ストーキングのかつての定義ていぎとして、マスメディアが用もちいていた。1995年ねんに出版しゅっぱんされたロウニーとベストの著作ちょさくによると、1989年ねんから1991年ねんにアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにて多発たはつした。1970年代ねんだいから80年代ねんだいにかけて、パパラッチを初はじめとしたマスメディアに著名ちょめい人じんの一挙一動いっきょいちどうが報ほうじられるようになった。また、コミュニティにおける隣人りんじんとの距離きょり感かんが広ひろがった。こうした社会しゃかいの変化へんかの中なかで、ジョン・レノンの殺害さつがいやレーガン大統領だいとうりょう暗殺あんさつ未遂みすい事件じけんなど、多おおくのスター・ストーキングが発生はっせいした。1989年ねんに発生はっせいしたレベッカ・シェーファーの殺害さつがいを機きに、1990年ねん全米ぜんべい初はつの反はんストーキング法ほう（英えい: anti-stalking law）がカリフォルニア州しゅうにて成立せいりつした。同どう法ほうは大衆たいしゅう、マスメディア、娯楽ごらく産業さんぎょうなどがストーキングに反応はんのう・消費しょうひした結果けっか、立法りっぽう機関きかんによって定さだめられた。また、成立せいりつ当初とうしょは著名ちょめい人じんが被害ひがい者しゃであることを想定そうていした法律ほうりつだった。それ以降いこうに制定せいていされた反はんストーキング法ほうは女性じょせいの保護ほごを優先ゆうせんする法律ほうりつだったが、ストーカーを被害ひがい者しゃとの関係かんけい性せいに基もとづいて限定げんていする法律ほうりつも存在そんざいした。ロサンゼルスの治安ちあん問題もんだいの専門せんもん家かであるガヴィン・デベッカーは、スター・ストーカーに関かんする論文ろんぶんで、スターにとっては日常にちじょう茶飯事さはんじだが、メディアではほとんど取とり上あげられないと述のべている。それどころか、誇張こちょうされた報道ほうどうにより、ストーキングを助長じょちょうすることさえあると述のべている。パパラッチによるストーキングは「ストーカーラッチ」という造語ぞうごを生うみ出だすまでに至いたった。

加害かがい者しゃ

スター・ストーカーは元々もともとスターである被害ひがい者しゃたちの熱狂ねっきょう的てきなファンで、大衆たいしゅうへのスターの対応たいおうを自身じしんへのものと勘違かんちがいし、スターと自身じしんの間あいだに個人こじん的てきな関係かんけいを求もとめるようになる。スター・ストーカーによる傷害しょうがい事件じけんを調査ちょうさした精神せいしん科か医いのパーク・ディエツは、スター・ストーカーの9割わり以上いじょうが境界きょうかい性せい人格じんかく障害しょうがいや精神病せいしんびょうに分類ぶんるいできると述のべている。アメリカではロバート・ジョン・バルドをはじめ、マーク・チャップマンやジョン・ヒンクリー、マドンナの自宅じたくに侵入しんにゅうしたロバート・ヂューイ・ホスキンズなどが知しられる。

亜種あしゅ

スター・ストーキングの亜種あしゅに「エグゼクティブ・ストーキング」が存在そんざいする。これは社会しゃかい的てき階層かいそうが異ことなる人々ひとびとの間あいだで発生はっせいし、社会しゃかい的てき地位ちいが高たかい人物じんぶつや人ひとの相談そうだんに乗のる対人たいじんサービスを生業せいぎょうとする人ひとが被害ひがい者しゃとなる。具体ぐたい的てきには、医師いし、神父しんぷ、教授きょうじゅ、会社かいしゃ役員やくいん、団体だんたい組織そしきの幹部かんぶなどが挙あげられる。特とくに精神せいしん科か医いは最もっとも被害ひがいに遭あいやすいとサバイバーでもある福島ふくしまは述のべている。スター・ストーキングとは個人こじん的てきな関係かんけいの中なかで発生はっせいすることや、マスメディアの発達はったつ以前いぜんから存在そんざいするという点てんにおいて異ことなる。また、第三者だいさんしゃから見みて加害かがい者しゃと被害ひがい者しゃの判別はんべつがつきにくいケースも存在そんざいする。

患者かんじゃや相談そうだん者しゃが保険ほけん・医療いりょう・福祉ふくし関係かんけい者しゃのストーカーの場合ばあい、影響えいきょうが及およぶのは被害ひがい者しゃ本人ほんにんと周囲しゅういの人間にんげんの他ほか、被害ひがい者しゃが所属しょぞくしている組織そしきとその機関きかんを利用りようする他ほかの利用りよう者しゃが含ふくまれる。精神せいしん科か医いの數すう川がわ悟さとるは、迷惑めいわく行為こういかどうか早期そうきの見極みきわめが重要じゅうようで、依存いぞんという性質せいしつ上じょう説得せっとくや説諭せつゆは効果こうかがないとしている。また、ストーカーの対処たいしょは個人こじんでできるものではないため、組織そしきとして協議きょうぎと対応たいおうが必要ひつようとしている。そして迷惑めいわく行為こういと判断はんだんした場合ばあい、援助えんじょの打うち切きりと警察けいさつへの相談そうだんを考慮こうりょすべきとしている。

参考さんこう文献ぶんけん

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• 秋岡あきおか史ふみ『ストーカー犯罪はんざい 被害ひがい者しゃが語かたる実態じったいと対策たいさく』（新装しんそう版ばん）、2003年ねん6月がつ12日にち。ASIN 4250202399。ISBN 4-250-20317-4。 NCID BA62555052。OCLC 676092723。JAN 4250203174 全国ぜんこく書誌しょし番号ばんごう:20480781。 
• 數すう川がわ悟さとる『なぜ「援助えんじょ者しゃ」は燃もえ尽つきてしまうのか バーンアウトを跳はねのけるリーディング・サプリ』（1版はん）南山みなみやま堂どう、2019年ねん8月がつ12日にち。ASIN 4525431814。ISBN 978-4-525-43181-5。 NCID BB28912959。OCLC 1121079883。JAN 9784525431815 全国ぜんこく書誌しょし番号ばんごう:23266316。 
• 福島ふくしま章あきら『ストーカーの心理しんり学がく』（第だい1版はん）PHP研究所けんきゅうじょ〈PHP新書しんしょ 018〉、1997年ねん5月がつ6日にち。ASIN 4569555942。ISBN 4569555942。 NCID BA70531843。OCLC 675931632。全国ぜんこく書誌しょし番号ばんごう:97075433。