嫌いやがらせ

嫌いやがらせ（いやがらせ）とは、相手あいてを不快ふかいにさせたり不利益ふりえきを与あたえたりするなど、肉体にくたい的てき・精神せいしん的てきな苦痛くつうを与あたえ、人間にんげんとしての尊厳そんげんを侵害しんがいする行為こういの総称そうしょうである。ハラスメント（英えい: harassment）とも呼よばれる。

後述こうじゅつのようにハラスメントの種類しゅるいは多岐たきにわたるが、代表だいひょう的てきな例れいとしてはパワハラやセクハラ、マタハラなどがある。

概要がいよう

類似るいじの概念がいねんにいたずら、いじめ等ひとしがあるが、多おおくの場合ばあい、それらは加害かがい者しゃ側がわに悪意あくいがあることを想定そうていして使つかわれる言葉ことばである。それに対たいして、嫌いやがらせやハラスメントは、他者たしゃからの何なんらかの行為こういによって被害ひがい者しゃが心しんの傷きずや精神せいしん的てきショックを受うけたという結果けっかに注目ちゅうもくしており（参考さんこう：結果けっか犯はん）、故意こい・過失かしつなど加害かがい者しゃの意図いとや主観しゅかんは必かならずしも重要じゅうようではない。また、加害かがい者しゃは「嫌いやがらせをしている」という自覚じかくを持もたず、無知むち・無自覚むじかくまたは当人とうにんなりの善意ぜんいに基もとづいて行為こういに及およんでいる場合ばあいもある。ただし、パワハラの場合ばあいに関かんしては、受うけ手てが不快ふかいだと思おもっても業務ぎょうむ上じょうの注意ちゅういなど業務ぎょうむの適正てきせい範囲はんいであればハラスメントに該当がいとうしない。

行為こういの内容ないようによっては犯罪はんざいに該当がいとうする可能かのう性せいがある。このほか、民事みんじ訴訟そしょうや被害ひがい者しゃの告発こくはつ・自殺じさつなどに発展はってんするなどして、加害かがい者しゃとその管理かんり者しゃなどが法的ほうてき責任せきにんを問とわれたり、社会しゃかい的てき制裁せいさいを受うけたりするケースもある。労使ろうし関係かんけいの紛争ふんそうに発展はってんした例れいは、厚生こうせい労働省ろうどうしょうが11項目こうもくで絞しぼり込こめるようにしたほか、「中央ちゅうおう労働ろうどう委員いいん会かい命令めいれい・裁判さいばん例れいデータベース」があり、検索けんさく機能きのうを利用りようして閲覧えつらんができる。また、差別さべつも嫌いやがらせに含ふくむ場合ばあいがある。

種類しゅるい

時代じだいとともに「嫌いやがらせ」の類型るいけいは変化へんかする。詳細しょうさいは各かくページを参考さんこう。

• パワーハラスメント（パワハラ）

地位ちいや人間にんげん関係かんけいなどの優位ゆうい性せいをもとに、適正てきせいな範囲はんいを超こえて、精神せいしん的てき・身体しんたい的てき苦痛くつうを与あたえるまたは職場しょくば環境かんきょうを悪化あっかさせる行為こうい。欧米おうべいでは1990年代ねんだい以降いこう法制ほうせい化かされ、日本にっぽんでは2011年ねんに厚生こうせい労働省ろうどうしょうがワーキンググループを結成けっせいし、具体ぐたい的てきな措置そちと行為こうい者しゃと被害ひがい者しゃに対たいする対策たいさくを示しめした。

• セクシャルハラスメント（セクハラ）

「相手あいての意いに反はんする性的せいてき言動げんどうによって、働はたらく上うえで不利益ふりえきを被こうむったり、『性的せいてきな言動げんどう』によって就業しゅうぎょう環境かんきょうが妨さまたげられること」を指さす。女性じょせいの社会しゃかい的てき地位ちい改善かいぜんに伴ともなって問題もんだいとなった。

• マタニティハラスメント（マタハラ）

妊にん婦ふに対たいする職場しょくばからの嫌いやがらせ行為こうい。

• モラルハラスメント（モラハラ）

モラルを根拠こんきょとする嫌いやがらせ。法制ほうせい化かによって禁止きんししている国くにもある。

• アルコールハラスメント（アルハラ）

飲酒いんしゅに絡からむ迷惑めいわく行為こうい、特とくに一気いっき飲のみの強要きょうようによって死者ししゃも出でたことから問題もんだい視しされるようになった。

• スモークハラスメント（スモハラ）

タバコの煙けむりによる健康けんこう被害ひがいが意識いしきされ、受動じゅどう喫煙きつえん防止ぼうしを怠おこたることや受動じゅどう喫煙きつえん対策たいさくを求もとめた者ものに対たいする不当ふとう解雇かいこや嫌いやがらせ等とうが問題もんだいとなった。

• スメルハラスメント（スメハラ）

ニオイによるハラスメント。サービス業ぎょうの規定きていやマナーブックに記載きさいされるようになっており、特とくに口臭こうしゅうや体臭たいしゅうが問題もんだい視しされている。他ほかにも香水こうすいや柔軟じゅうなん剤ざいの強つよい香かおりに対たいしても不快ふかいに思おもう人ひとが増ふえてきている。

• レリジャスハラスメント

特定とくていの宗教しゅうきょうを信仰しんこうする人ひとに対たいする嫌いやがらせ行為こうい。宗教しゅうきょうや信仰しんこうを理由りゆうとすることから問題もんだいとなっている。

• レイシャルハラスメント（レイハラ）

出自しゅつじや国籍こくせきを理由りゆうとする嫌いやがらせ行為こうい。

• ブラッドタイプ・ハラスメント

血液けつえき型がたを理由りゆうに差別さべつが起おこること。日本語にほんご圏けんの言葉ことば。

• エレクトロニック・ハラスメント（エレハラ）

電子でんし技術ぎじゅつを使用しようした嫌いやがらせ行為こうい。

• ソーシャルハラスメント（ソーハラ）

SNS上うえでの嫌いやがらせ行為こうい。

• ロジカルハラスメント（ロジハラ）

正論せいろんを言いうことによって相手あいてを不快ふかいにする行為こうい。

• ガスライティング

相手あいてに事実じじつと異ことなる情報じょうほうを渡わたしたり、嘘うそを吐はいたり、相手あいてを全ぜん否定ひていしたり等ひとして行おこなう精神せいしん的てき虐待ぎゃくたい行為こうい。

• カスタマーハラスメント（カスハラ）

就業しゅうぎょう者しゃに対たいする暴言ぼうげんや正当せいとうな理由りゆうがない過度かどな要求ようきゅうなどの不当ふとうな行為こういで就業しゅうぎょう環境かんきょうを害がいする行為こうい。東京とうきょう都とは2024年ねん5月がつにこのカスハラに関かんする条例じょうれいの制定せいていを目指めざすことを発表はっぴょうした。

• ドクターハラスメント（ドクハラ）

医師いしによる患者かんじゃに対たいするハラスメント。インフォームド・コンセントのような医者いしゃと患者かんじゃの関係かんけいが問とい直なおされる議論ぎろんに関連かんれんして問題もんだいとなった。

• ペイシェント・ハラスメント（ペイハラ）

ドクハラと逆ぎゃくに、患者かんじゃから医師いしや看護かんご師しなどへのハラスメント行為こうい

• パタニティハラスメント（パタハラ）

育児いくじ休暇きゅうかを取得しゅとくする男性だんせいに対たいする嫌いやがらせ行為こうい。

• タメ口こうハラスメント（タメハラ）

タメ口こうを不快ふかいに思おもう人ひとに対たいするハラスメント行為こうい。

• カラオケハラスメント（カラハラ）

カラオケで強制きょうせい的てきに歌うたわせる行為こうい。

• 就活しゅうかつ終おわれハラスメント（オワハラ）

就活しゅうかつ生せいに対たいして企業きぎょうの人事じんじ担当たんとう者しゃが採用さいよう内定ないていを出だすから「就活しゅうかつを終おわらせて、ウチにしぼれ」と嫌いやがらせをする行為こうい。

• テクノロジー・ハラスメント（テクハラ）

IT関連かんれんの知識ちしきが高たかい人ひとが、低ひくい人ひとに対たいして不遜ふそんな態度たいどで接せっするなどして周囲しゅういに不快ふかいな思おもいをさせる行為こうい。

• バルクハラスメント

ジムなどにおいて、筋すじ量りょう（バルク）の差さで上下じょうげ関係かんけいのような空気くうき感かんを作つくり出だす行為こうい。

• セカンドハラスメント（セカハラ）

上記じょうきハラスメントの相談そうだんを、社内しゃないの上司じょうしや同僚どうりょうに相談そうだんすることで逆ぎゃくに責せめられたり、相談そうだんしたことから嫌いやがらせを受うける状態じょうたいとなること。

• ハラスメント・ハラスメント（ハラハラ）

ハラスメント意識いしきの高たかまりから様々さまざまなハラスメントの概念がいねんが提唱ていしょうされ、なんでもかんでもハラスメントにされてしまうこと。

• リストラ・ハラスメント（リスハラ）

リストラ対象たいしょう者しゃに無理むり難題なんだいを押おし付つけたり、望のぞまない部署ぶしょへの異動いどうを命めいじたりするなどの嫌いやがらせ行為こういを行おこない、自主じしゅ退職たいしょくに追おい込こむ行為こうい。

• ジェンダー・ハラスメント（ジェンハラ）

「女おんなのくせに」「男おとこのくせに」などの発言はつげんや、女性じょせい従業じゅうぎょう員いんにだけお茶ちゃくみをさせる行為こういなど、性別せいべつ（ジェンダー）に関かんするハラスメント。

場所ばしょ

学校がっこう

学校がっこうにおいて、特とくに嫌いやがらせの相互そうご関係かんけいになりやすいのは生徒せいと（もしくは後輩こうはい）である。生徒せいと間あいだ同士どうしの嫌いやがらせでは「仲間なかまはずれ（仲間なかまはずし）」や、「無視むし（シカト）」などがあるが、もっとも多おおいのが「いじめ」である。殴なぐる蹴けるといった直接ちょくせつ相手あいてに危害きがいを与あたえる暴力ぼうりょく行為こういや悪口わるぐちだけでなく、直接ちょくせつ危害きがいを与あたえない陰湿いんしつな行為こういも嫌いやがらせに当あたる。また近年きんねんでは、学校裏がっこううらサイトなどネット上じょうでの嫌いやがらせも問題もんだいとなっている。そして、最近さいきんでは学校がっこうでも嫌いやがらせを経験けいけんしていながら、社会しゃかいに出でてからもこういった内容ないようの嫌いやがらせが学校がっこうの延長えんちょうで社会しゃかい人じんとなってもなお会社かいしゃ内ないでも長引ながびいて続つづく場合ばあいも起おこっている。この場合ばあい、人格じんかく障害しょうがいなどに突つき当あたるという問題もんだいもある。

学校がっこうにおけるセクハラは特とくにスクールセクハラと呼よばれ、逮捕たいほや教育きょういく委員いいん会かいからの処分しょぶんを受うける教育きょういく職員しょくいんもいる。例たとえば2016年度ねんどに「わいせつ行為こうい及およびセクシュアル・ハラスメント」で懲戒ちょうかい処分しょぶんを受うけた教育きょういく職員しょくいんは226人にんであった（男性だんせい223人にん・女性じょせい3人にん）。

大学だいがく・大学院だいがくいんなど教育きょういく研究けんきゅう機関きかんでは教員きょういんの立場たちばや権利けんりを悪用あくようし、学生がくせいに対たいし、単位たんいを認定にんていしない、就職しゅうしょくを不利ふりにさせる、学位がくい論文ろんぶんを受理じゅりしない、推薦すいせん状じょうを書かかない、などの嫌いやがらせもある。学生がくせい以外いがいに、職員しょくいんに、研究所けんきゅうじょや職場しょくばにおいて、上司じょうしである教授きょうじゅから退職たいしょくを強要きょうようされたり昇任しょうにん差別さべつを受うけたり、授業じゅぎょう研究けんきゅうの妨害ぼうがいされたりなどの嫌いやがらせを受うけることがある。こうした教育きょういく現場げんばにおける権力けんりょくを濫用らんようした嫌いやがらせは、しばしば「アカデミックハラスメント」（アカハラ）と呼よばれる（性的せいてきな嫌いやがらせを伴ともなう場合ばあいもある）。

職場しょくば

「職場しょくばいじめ」も参照さんしょう

第だい1条じょう 1

(a) 仕事しごとの世界せかいにおける「暴力ぼうりょく及およびハラスメント」とは、一いち回かい限かぎりのものであるか反復はんぷくするものであるかを問とわず、身体しんたい的てき、心理しんり的てき、性的せいてき又または経済けいざい的てき損害そんがいを目的もくてきとし、又またはこれらの損害そんがいをもたらし、若もしくはもたらすおそれのある一定いっていの容認ようにんすることができない行動こうどう及および慣行かんこう又またはこれらの脅威きょういをいい、ジェンダーに基もとづく暴力ぼうりょく及およびハラスメントを含ふくむ。

(b) 「ジェンダーに基もとづく暴力ぼうりょく及およびハラスメント」とは、性せい若もしくはジェンダーを理由りゆうとして個人こじんに向むけられた暴力ぼうりょく及およびハラスメント又または特定とくていの性せい若もしくはジェンダーの個人こじんに対たいして不ふ均衡きんこうに影響えいきょうを及およぼす暴力ぼうりょく及およびハラスメントをいい、セクシュアル・ハラスメントを含ふくむ。

—  国際こくさい労働ろうどう機関きかん 2019年ねんの暴力ぼうりょく及およびハラスメント条約じょうやく（第だい190号ごう）

嫌いやがらせでよくメディアなどで取とり上あげられるセクハラは有名ゆうめいである。職場しょくばなどの男性だんせい上司じょうしによる対たい女性じょせい部下ぶかのケースが多おおい。例たとえば、スキンシップとして女性じょせいの体からだに触ふれたり、「○○ちゃん」と呼よんでみたり、いかにも興味きょうみのあるように扱あつかうという行為こういもセクハラにあたるとされている。

また、職場しょくばで社会しゃかい問題もんだいになっている嫌いやがらせがもう一ひとつある。それはパワハラである。上司じょうし・上位じょういにある者ものが、その職務しょくむ権限けんげん・権力けんりょくを悪用あくようし、部下ぶかを精神せいしん的てきに追おい詰つめることである。例たとえば、他たの部下ぶかのいる前まえで大声おおごえで叱責しっせきしたり、あからさまにある部下ぶかだけを無視むししたり、明あきらかに一人ひとりでこなせない量りょうの仕事しごとを押おし付つけ、終おわらせられなかったその部下ぶかを罵ののしったりという行為こういがそれに当あたる。これには周囲しゅういから部下ぶかの側がわが悪わるいと認識にんしきされ、そのために被害ひがい者しゃを追おいつめることがある。

同僚どうりょうや上司じょうし・部下ぶかからのみならず、商品しょうひん・サービスの利用りよう者しゃからの暴言ぼうげん、暴力ぼうりょくも社会しゃかい問題もんだい化かしている（「クレーム」「モンスターカスタマー」参照さんしょう）。特定とくていの職種しょくしゅについて、学校がっこうでは「モンスターペアレント」、医療いりょう機関きかんでは「モンスターペイシェント」、介護かいごではケアハラなどと呼よばれることもある。

宴会えんかいの席せきでアルハラも問題もんだいとなる。飲のめない酒さけを断ことわることができないのはパワハラとも関連かんれんする権力けんりょく関係かんけいを巡めぐる問題もんだいである一方いっぽう、酒さけ（アルコール）を飲のめない体質たいしつは多おおくの場合ばあい遺伝いでん性せいのものであり、飲酒いんしゅを強要きょうようするのは嫌いやがらせを超こえて人権じんけん侵害しんがい行為こうい、あるいは傷害しょうがい行為こういであるとの指摘してきもある。企業きぎょうや大学だいがくサークルなどでは、かつてのアルハラは減少げんしょうしてきている。

インターネット

代表だいひょう的てきな嫌いやがらせに「荒あらし」がある。これは、あるウェブサイト内ないの掲示板けいじばんに無意味むいみかつ長大ちょうだいな文字もじの羅列られつを何なん度ども貼はり付つけたり、掲示板けいじばんの趣旨しゅしとはそぐわない内容ないようの議論ぎろんをいつまでも続つづけたり、管理人かんりにんやその他たの利用りよう者しゃを中傷ちゅうしょうするような書かき込こみなどを指さす。2ちゃんねるに代表だいひょうされる匿名とくめい掲示板けいじばんのように、ほとんどのユーザーがハンドルネームを持もたない名無ななしさんであるというような場所ばしょでも、他者たしゃへの誹謗ひぼう中傷ちゅうしょうを繰くり返かえす者もの（粘着ねんちゃく）は存在そんざいする。

不ふ特定とくてい多数たすうのインターネット利用りよう者しゃの目めに触ふれるような場所ばしょに、ある人物じんぶつの不利益ふりえきとなるような情報じょうほうを書かき込こむ嫌いやがらせもある。個人こじん情報じょうほうを暴露ばくろするプライバシーの侵害しんがいや、名誉めいよ毀損きそんなどがそれに該当がいとうする。この嫌いやがらせは上記じょうきの「荒あらし」と重かさなる部分ぶぶんもあるが、完全かんぜんに同義どうぎというわけでもない。例たとえば、ある掲示板けいじばんの管理人かんりにんに対たいする名誉めいよ毀損きそんは同時どうじに荒あらしでもあるが、他者たしゃのプライバシーの侵害しんがいを目的もくてきとするウェブサイトそのものを、荒あらしとは呼よばない。

また、実在じつざいの人物じんぶつが直接的ちょくせつてきな被害ひがいを被こうむるわけではないが、アニメなどの特定とくていのキャラクターをターゲットにし、徹底的てっていてきかつ執拗しつような誹謗ひぼう中傷ちゅうしょうを、そのキャラクターのファン（もしくは、その作品さくひんのファン）が見みているであろうスレッド（主おもに2ちゃんねるや5ちゃんねる）に張はり付つける行為こういを行おこなう者ものがおり、それだけならまだ良よいが、悪質あくしつな者ものだと、そのキャラクターが残酷ざんこく且かつ猟奇りょうき的てきな方法ほうほうで虐待ぎゃくたいされている様子ようすを描えがいたアスキーアート(AA)やSS(Short story)などの二に次じ創作そうさく物ものを張はり付つけることを繰くり返かえす場合ばあいもあり、これらの行為こういは「虐待ぎゃくたい」、それを行おこなう者ものは「虐待ぎゃくたい厨くりや」（「～厨くりや」は、好このましくないとされる人物じんぶつを指さすネットスラング）と呼よばれる。この結果けっか、知しらずにスレッドを開ひらいたファンが、自分じぶんの好すきなキャラクターが誹謗ひぼう中傷ちゅうしょうや「虐待ぎゃくたい」を受うけている様子ようすを見みてしまい精神せいしん的てきショックを受うけたり、キャラクターのイメージダウンにつながり企業きぎょうが間接かんせつ的てきに損害そんがいを被こうむったりする可能かのう性せいがある。

このような行為こういは最悪さいあくの場合ばあいでも掲示板けいじばんの書かき込こみ削除さくじょや投稿とうこうブロックを受うけるなどの処分しょぶんで済すむことがほとんどであるが、一方いっぽうで、キャラクターのイメージダウンを恐おそれた著作ちょさく権けん保有ほゆう者しゃから民事みんじ訴訟そしょうを起おこされた例れいもあり、法的ほうてきリスクが全まったくないとは言いえない。

その他たの嫌いやがらせとしては、不正ふせいなプログラムの散布さんぷが挙あげられる。その効果こうかは千差万別せんさばんべつで、中なかにはコンピュータに深刻しんこくな不具合ふぐあいをもたらすものもある。詳細しょうさいは「コンピュータウイルス」参照さんしょう。

メールボムという嫌いやがらせもある。この行為こういは、ターゲットのメールアドレスを無断むだんで出会であい系けいサイトやメールマガジンに登録とうろくしたり、専用せんようのソフトウェアを使つかったりして、ターゲットに大量たいりょうのメールを送おくりつける嫌いやがらせのことである。

このほか、インターネット上じょうで他人たにんの写真しゃしんや付随ふずいする情報じょうほう（本名ほんみょう・自宅じたく住所じゅうしょなど）の無断むだん公開こうかいや漏洩ろうえいが「フォトハラ」と呼よばれるようになっている。

これらの行為こういは、特定とくていの人物じんぶつへの私怨しえんや嫌悪けんお感かんから行おこなわれることもあれば、相手あいてを選えらばず面白おもしろ半分はんぶんで行おこなわれることもある。

近隣きんりん

近隣きんりん関係かんけいでは、相手あいての言動げんどうを不快ふかいな嫌いやがらせとして認識にんしきしやすい。

騒音そうおんを出だしている住人じゅうにんの多おおくは意識いしきせずその音おとを出だしていることが多おおい。そのため、苦情くじょうを指摘してきされてもかえってその人ひとが憤いきどおるなど、近隣きんりんや自治じち会かいなど深刻しんこくな問題もんだいに発展はってんしやすい。

その他たにも、「（近所きんじょの住民じゅうみんに）挨拶あいさつしても無視むしされる」「仲間外なかまはずれ」などの嫌いやがらせも存在そんざいし、「村八分むらはちぶ」にあたるような行為こういは現在げんざいでも見みられることがある。

家庭かてい

家庭かてい内ないでの嫌いやがらせも存在そんざいする。

特とくに、親子おやこの相互そうご関係かんけいにある。子こから親おやへの場合ばあい、多おおくは自分じぶんを見みて欲ほしいといった甘あまえたかったり、反抗はんこう期きから来くる自立じりつ心しんの芽生めばえによるものである場合ばあいが多おおい。

もっぱら問題もんだいとなっているのが、児童じどう虐待ぎゃくたいである。自身じしんの子供こどもに手てを上あげる、全まったく子供こどもについて興味きょうみがないネグレクト、性的せいてき虐待ぎゃくたいなどがある。こういった行為こういは、子供こどもの将来しょうらいに重大じゅうだいな傷きずを残のこす。児童じどう虐待ぎゃくたいの派生はせいとして、兄弟きょうだい姉妹しまいの相互そうご関係かんけいによる嫌いやがらせ（兄弟きょうだい姉妹しまい間あいだの虐待ぎゃくたい）がある。

配偶はいぐう者しゃ同士どうしで一方いっぽうから他方たほうへの嫌いやがらせも存在そんざいする。物理ぶつり的てきな暴行ぼうこうや傷害しょうがい、無視むしやその他たの言葉ことばや態度たいどでの精神せいしん的てきな嫌いやがらせのどちらもがドメスティック・バイオレンス(DV)である。

特定とくていの企業きぎょうおよび団体だんたいに対たいして

特定とくていの企業きぎょうや団体だんたいに対たいして、爆破ばくは予告よこく等とうの嫌いやがらせ事件じけんが起おきる場合ばあいがある。たいていは警察けいさつが捜査そうさしても爆ばく弾だんは仕掛しかけられておらず愉快ゆかい犯はんによるイタズラのままで終おわる場合ばあいが多おおいが、三菱重工みつびしじゅうこう爆破ばくは事件じけんのように、イタズラではなく本当ほんとうに起おきてしまったケースもある。

公共こうきょう交通こうつう機関きかん

日本にっぽん民営みんえい鉄道てつどう協会きょうかいが2019年ねんに行いったアンケート調査ちょうさによると、迷惑めいわく行為こういランキングの1位いは「座席ざせきの座すわり方かた」であり、特とくに「座席ざせきを詰つめて座すわらない」ことを迷惑めいわくと感かんじているという。この他ほかには、「乗降じょうこう時じのマナー」、「荷物にもつの持もち方かた・置おき方かた」、「スマートフォン等とうの使つかい方かた」、「騒々そうぞうしい会話かいわ」などが上位じょういであった。

1位いとなった開ひらく脚あし座ずわりは特とくに男性だんせいに多おおく、別べつの調査ちょうさでは8割わりの人ひとが「かなり迷惑めいわく」と答こたえた。この迷惑めいわく行為こういは国際こくさい的てきに認知にんちされており、公共こうきょう交通こうつう機関きかんにおいて男性だんせいが開ひらけ脚あし座ずわりを行おこなうことはマンスプレッディングと呼よばれている。

また、主おもに駅えき構内こうないにおいて意図いと的てきに女性じょせいに体当たいあたりを行おこなうぶつかり男おとこも存在そんざいする。電車でんしゃ内ないにおいてドアの横よこの位置いちを陣取じんどり、乗降じょうこう客きゃくがいても動うごこうとしない人ひとはドア横よこキープマンと言いう。

統計とうけい

認知にんち度ど

保険ほけんクリニックの2016年ねんの調査ちょうさでは、聞きいたことのあるハラスメントとして、1位いはセクハラ、パワハラ（69.3%）、3位いがマタハラ（58.8%）、4位いがモラハラ（56.3%）となっており、全体ぜんたい的てきに男性だんせいよりも女性じょせいからの認知にんちの方ほうが高たかかった。

2019年度ねんどにおける都道府県とどうふけん労働ろうどう局きょく等とうへの相談そうだん件数けんすうは、87,570件けん（前年度ぜんねんど比ひ5.8%増ぞう）であった。労働ろうどう局きょく等とうへの相談そうだんにおいて「いじめ・嫌いやがらせ」に関かんするものは最もっとも多おおく、しかも年々ねんねん増加ぞうか傾向けいこうにある。そのうち、セクハラは7,323件けん、婚姻こんいん、妊娠にんしん・出産しゅっさん等とうを理由りゆうとする不利益ふりえき取扱とりあつかいは4,769件けん、育児いくじ休業きゅうぎょうに係かかる不利益ふりえき取扱とりあつかいは4,124件けんなどとなっている。

厚生こうせい労働省ろうどうしょうの2016年ねんの調査ちょうさでは、パワハラを受うけたことがあると回答かいとうした者ものは32.5%、パワハラを見みたり相談そうだんを受うけたことがあると回答かいとうした者ものは30.1%、パワハラをしたと感かんじたり、したと指摘してきされたことがあると回答かいとうした者ものは11.7%であった。

加害かがい者しゃ・被害ひがい者しゃ

前述ぜんじゅつの保険ほけんクリニックの調査ちょうさでは、加害かがい者しゃの性別せいべつは、男性だんせいが67.6%、女性じょせいが15.0%、両方りょうほうが17.3%であった。また、立場たちばは上司じょうしが最もっとも多おおく、70.4%であった。

被害ひがい者しゃの性別せいべつは、女性じょせいが29.5%、男性だんせいが23.7%であった。被害ひがいを受うけた場所ばしょは職場しょくばが最もっとも多おおく、68.2%であった。具体ぐたい的てきな内容ないようとしてはパワハラが最もっとも多おおく、60.1%であった。女性じょせいの場合ばあいはパワハラとセクハラがほぼ同数どうすうであった。

対策たいさく

各国かっこく政府せいふなど

日本にっぽん

日本にっぽん政府せいふの政策せいさくは、雇用こよう機会きかいにおける男女だんじょ格差かくさの均等きんとうから性別せいべつを問とわないハラスメントまで、対応たいおうの範囲はんいを広ひろげつつある。厚生こうせい労働省ろうどうしょうが専門せんもん家かを集あつめ「職場しょくばにおけるパワーハラスメント防止ぼうし対策たいさくについての検討けんとう会かい」（座長ざちょう：佐藤さとう博樹ひろき中央大学ちゅうおうだいがく教授きょうじゅ）を設もうけるなど、パワハラの法ほう規定きていの検討けんとうは2017年ねんに入はいってからである。セクハラ対策たいさくは1997年ねんと2004年ねんに改正かいせいされた男女だんじょ雇用こよう機会きかい均等きんとう法ほうにより規定きていし事じ業主ぎょうしゅの責任せきにんを明文化めいぶんか、2006年ねんに大臣だいじん指針ししん10項目こうもくを定さだめ、労働ろうどう者しゃを雇用こようもしくは派遣はけんする事業じぎょう主ぬしに「男女だんじょ労働ろうどう者しゃへのセクシュアルハラスメント防止ぼうしのための雇用こよう管理かんり上じょうの措置そち」を義務付ぎむづけ責任せきにんを明確めいかく化か。また2012年ねんには労働ろうどう環境かんきょうにおけるパワハラの意識いしき啓発けいはつと解決かいけつに向むけたポータルサイトを公開こうかいした。2017年ねんにはマタハラについても同様どうようの指針ししんが定さだめられ、2019年ねんには、労働ろうどう施策しさく推進すいしん法ほう改正かいせいによるパワハラ対策たいさくの法制ほうせい化かと、男女だんじょ雇用こよう機会きかい均等きんとう法ほう改正かいせいによるセクハラ対策たいさくの強化きょうかが公布こうふされた。2020年ねんには女性じょせい活躍かつやく・ハラスメント規制きせい法ほうが施行しこうされ、大だい企業きぎょうにパワハラ相談そうだん窓口まどぐちの設置せっちなどが義務付ぎむづけられたが、禁止きんし規定きていはなく、就活しゅうかつ生せいやインターンなどは被害ひがい者しゃとして法律ほうりつに明記めいきされなかった。

ILO

国際こくさい労働ろうどう機関きかん (ILO)は2019年ねん6月がつ22日にち、職場しょくばでの暴力ぼうりょくやハラスメントを全面ぜんめん的てきに禁止きんしする条約じょうやくを採択さいたくした。同どう条約じょうやくは、ハラスメントを「身体しんたい的てき、精神せいしん的てき、性的せいてき、経済けいざい的てき危害きがいを引ひき起おこす行為こういと慣行かんこう」などと定義ていぎし、それらを「法的ほうてきに禁止きんしする」と明記めいき。労働ろうどう者しゃだけでなく、求職きゅうしょく中ちゅうの学生がくせいやフリーランスなども保護ほごの対象たいしょうとした。日本にっぽんは、この採択さいたくには賛成さんせいしたものの、批准ひじゅんはしていない。

フランス

フランスでは、ハラスメント、とりわけセクハラ対策たいさくがいち早はやく進すすんでおり、1992年ねんに刑法けいほうで「セクハラ罪ざい」が定義ていぎされ、罰則ばっそく規定きていが設もうけられた。その後ご、法ほう改正かいせいを経へて、2012年ねんには「セクハラ法ほう」が制定せいていされ、セクハラ定義ていぎの一層いっそうの明確めいかく化かに加くわえ、刑罰けいばつも「最長さいちょう3年ねんの拘禁こうきん刑けい」「最高さいこう4万まん5千せんユーロの罰金ばっきん」に厳罰げんばつ化かされた。また、2001年ねんには、職場しょくばにおけるモラハラ防止ぼうし策さくを盛もり込こんだ「社会しゃかい近代きんだい化か法ほう」が成立せいりつした。

スウェーデン

スウェーデンでは、1993年ねんに雇用こよう環境かんきょう法体ほうたい系けいの中なかで、「職場しょくばにおける虐待ぎゃくたいに対たいする措置そちに関かんする政令せいれい」として、世界せかいで初はじめて職場しょくばいじめの予防よぼうが法制ほうせい化かされた。職場しょくばいじめは、被用者ひようしゃに対たいして行おこなわれる直接的ちょくせつてきで繰くり返かえし行おこなわれる非難ひなんされるべき、明あきらかな敵対てきたい的てき行為こういと定義ていぎされ、いじめ予防よぼうの責務せきむは使用しよう者しゃにあるとも定さだめられており、労使ろうし間あいだにおいてハラスメント行為こういが禁止きんしされている。

韓国かんこく

韓国かんこくでは、2019年ねん、改正かいせい労働ろうどう基準きじゅん法ほうが施行しこうされ、職場しょくばでのいじめ行為こういの禁止きんしが法制ほうせい化かされた。ハラスメント対策たいさくが不十分ふじゅうぶんな雇用こよう主ぬしには最長さいちょう3年ねんの禁錮きんこ刑けいや最高さいこう3千せん万まんウォンの罰金ばっきんが科かせられる可能かのう性せいがあり、ハラスメントによって労働ろうどう者しゃに健康けんこう被害ひがいが生しょうじた場合ばあいの賠償ばいしょう請求せいきゅう権けんも保障ほしょうされている。韓国かんこくにおいては、「カプチル」と呼よばれる職場しょくばでのハラスメント被害ひがいが深刻しんこくな社会しゃかい問題もんだいであり、労働ろうどう者しゃの7割わりがいじめ被害ひがいに遭あっているとの報告ほうこくもある。

アメリカ

アメリカでは、ハラスメント禁止きんし対策たいさく法ほうのような法制ほうせい化かはされていない。これは、公民こうみん権けん法ほう703条じょうの、性別せいべつを理由りゆうとして雇用こようを拒否きょひまたは解雇かいこする、もしくは報酬ほうしゅうや条件じょうけんなどを差別さべつ待遇たいぐうすることを禁止きんしする規定きていに、セクハラの禁止きんしが含ふくまれると解釈かいしゃくされているためである。判例はんれいでは、職場しょくばでセクハラが発生はっせいした場合ばあいや、しかるべき措置そちを講こうじなかった場合ばあいについて、使用しよう者しゃの責任せきにんを認みとめている。アメリカにおいては、パワハラに相当そうとうする行為こういは「mobbing」「bulling」などと呼よばれ、職場しょくばでの集団しゅうだんいじめとして認識にんしきされており、セクハラや人種じんしゅ差別さべつの4倍ばいも見みられる深刻しんこくな問題もんだいとされている。

芸能げいのう界かい

リスペクト・トレーニング

リスペクト・トレーニングは、職場しょくばでのハラスメントの防止ぼうしのための取とり組くみで、ハラスメントに対たいしての理解りかいを深ふかめると同時どうじに、「相手あいてにリスペクトを持もって接せっすることができているか」と自問じもんし、考かんがえる力ちからを養やしなうことを目的もくてきとしたトレーニングである。

セクハラなどの被害ひがい体験たいけんを共有きょうゆうする#MeToo運動うんどうを受うけてアメリカで導入どうにゅうが広ひろがり、日本にっぽんでは、『全裸ぜんら監督かんとく』以降いこうに撮影さつえいされたすべてのNetflix作品さくひんで実施じっしされているほか、NHK大河たいがドラマ『鎌倉かまくら殿どのの13人にん』でも導入どうにゅうされた。

インティマシー・コーディネーター

詳細しょうさいは「インティマシー・コーディネーター」を参照さんしょう

アメリカでは、リスペクト・トレーニングのほかに「インティマシー・コーディネーター」の導入どうにゅうが広ひろがっている。インティマシー・コーディネーターは、肌はだを露出ろしゅつする場面ばめんやベッドシーンなどの撮影さつえいで、役者やくしゃと演出えんしゅつ側がわとの間あいだに入はいって調整ちょうせいをするための専門せんもん家かのことであり、事前じぜんに演出えんしゅつ側がわと撮影さつえいの詳細しょうさいについてすり合あわせることで、台本だいほんに書かかれていないキスシーンなど、役者やくしゃが不本意ふほんいな演技えんぎを強しいられることを防止ぼうしするためのものである。

2017年ねんにアメリカで導入どうにゅうが始はじまり、日本にっぽんでは、2021年ねんのNetflix作品さくひん『彼女かのじょ』で、水原みずはら希子のりこの提案ていあんにより初はじめて導入どうにゅうされた。アメリカでの専せん門もんの講習こうしゅうやトレーニングを受うけた日本にっぽんの公式こうしきのインティマシー・コーディネーターは、2022年ねん時点じてんで浅田あさだ智さとし穂ほと西山にしやまももこの2人ふたりである。

2022ユーキャン新語しんご・流行りゅうこう語ご大賞たいしょうの候補こうほにノミネートされた。

関連かんれん項目こうもく

• スパイト、ダークトライアド

私怨しえん目的もくてき

• いじめ
• 家父長制かふちょうせい
• 機能きのう不全ふぜん家族かぞく
• 逆恨さかうらみ
• 逆ぎゃくギレ
• 嫉妬しっと
• パターナリズム
• 迫害はくがい
• 犯罪はんざい
  • 職場しょくばいじめ
  • 性せい犯罪はんざい
  • サイバー犯罪はんざい
  • 愉快ゆかい犯はん
  • 職権しょっけん濫用らんよう
  • 騒音そうおん
  • 民事みんじ不ふ介入かいにゅう

金銭きんせん目的もくてき

• 村社そんしゃ会かい
• 悪徳あくとく商法しょうほう
• 地上じあげ屋や
• 営利えいり主義しゅぎ
• 利益りえき誘導ゆうどう

その他た

• パワーハラスメント
• セクシャルハラスメント
• マタニティーハラスメント
• カスタマーハラスメント
• ヴェクサシオン：ピアノ曲きょく。ヴェクサシオンとは「嫌いやがらせ」の意味いみ。
• ハラスメント禁止きんし条約じょうやく
• 日本にっぽんハラスメントリスク管理かんり協会きょうかい