ダーチャ

ダーチャ（ロシア語ご: дачаダーチャ listen^{[ヘルプ/ファイル]}、英語えいご: dacha）は、ロシア・旧きゅうソ連それん圏けんで一般いっぱん的てきな菜園さいえん付つきセカンドハウスである^[1]。

概要がいよう

ロシア語ごでダーチャはダーチ（与あたえる）という動詞どうしに由来ゆらいし名詞めいしダーチャは（与あたえられたもの）の意味いみである。これは1700年代ねんだいにピョートル大帝たいていが庭園ていえん付つき別荘べっそうを家臣かしんの貴族きぞくたちに下賜かししたことに由来ゆらいする。現在げんざいのような大衆たいしゅう的てきダーチャは第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中ちゅうから大戦たいせん後ごの食糧しょくりょう不足ふそくの対策たいさくとして、市民しみんに対たいし土地とちを与あたえるように州しゅう政府せいふや国くにに要求ようきゅうする運動うんどうが起おこり、1960年代ねんだいにフルシチョフ政権せいけんが一いち家族かぞくに最低さいてい600ソートック（平米へいべい）の土地とちを与あたえるよう法制ほうせい化かしたものである。当初とうしょは物置ものおき小屋こや程度ていどのものが多おおかったが最近さいきんのダーチャはインフラが整備せいびされ、電気でんき、ガス、水道すいどう、舗装ほそう道路どうろまで完備かんびしているものがある。サンクトペテルブルク郊外こうがいにはダーチャ行ぎょうの専用せんよう鉄道てつどうまである。ダーチャの家屋かおくも次第しだいに贅沢ぜいたくになりサウナやプール、本格ほんかく的てきキッチン、子供こどもの家いえまで備そなえたものもある。普段ふだんは近隣きんりんの都会とかい（車くるまで30分ふん - 1時じ間あいだ程度ていど）に居住きょじゅうし、週末しゅうまつのみ利用りようする持もち主ぬしが多おおい。特とくに夏なつの間あいだは盛さかんに利用りようされ、夏休なつやすみに家族かぞくそろって長期間ちょうきかんダーチャで過すごすケースも多おおい。かつての貴族きぞくの別邸べっていから掘ほっ立たて小屋こやのようなものまで、規模きぼや質しつはさまざまである。

ソ連それん崩壊ほうかい後ご、最近さいきんではダーチャが盛さかんに売買ばいばいされるようになってきて専せん門もんの不動産ふどうさん業者ぎょうしゃまで現あらわれている。

ダーチャ所有しょゆう者しゃは、ダーチニック（дачник）と呼よばれることもある。所有しょゆう者しゃは、この近ちかくで菜園さいえん（огород：個人こじん所有しょゆうの菜園さいえんのこと、国有こくゆうのものはполе）を営いとなんだり家畜かちくを飼かったりしている。

歴史れきし

ダーチャは11世紀せいきにその起源きげんがあるが、本格ほんかく的てきにはサンクトペテルブルクに帝都ていとを開ひらいたピョートル1世せい＝ピョートル大帝たいてい時代じだいに始はじまった。

1930年代ねんだい、スターリン時代じだいに農業のうぎょう集団しゅうだん化かで強制きょうせい的てきに土地とちを奪うばわれた農民のうみんが「自じ留とめ地ち」を要求ようきゅう（要ようは農民のうみんの生産せいさん物ぶつを根ねこそぎ徴収ちょうしゅうしようとしたスターリン政権せいけんに対たいして農民のうみんたちが「自分じぶん達たちの食料しょくりょうの自給じきゅう」を求もとめた）、獲得かくとくしこれが今日きょうの大衆たいしゅう的てきダーチャの発端ほったんとなった。

ソ連それん時代じだいになると、労働ろうどう者しゃが農民のうみんに倣ならってダーチャを要求ようきゅう、ダーチャは労働ろうどう者しゃの保養ほよう施設しせつとして都市とし近郊きんこうに多数たすう整備せいびされていった。ダーチャの土地とち用益ようえき権けんは国家こっかや企業きぎょう組合くみあいから希望きぼう者しゃに安価あんかで支給しきゅうされ、土地とち用益ようえき権けんを与あたえられた市民しみんは自分じぶんたちで協力きょうりょくし合あって菜園さいえんや小屋こやなどを整備せいびした。ソ連それんでは土地とちは国有こくゆうであったため土地とち用益ようえき権けんのみが与あたえられ、その権利けんりは世帯せたい主ぬし一いち代だい限かぎりとされた。現在げんざいは相続そうぞくも認みとめられている。

ソ連それん時代じだい、菜園さいえんで栽培さいばいした農作物のうさくもつを町まちに持もっていき売うる事ことは禁止きんしされていたが、実際じっさいには行おこなわれていた。経済けいざいが著いちじるしく混乱こんらんしていたソ連それん末期まっきやロシア共和きょうわ国こく初期しょき、ハイパーインフレーションや給与きゅうよ支払しはらいが半年はんとし、一いち年ねんも滞とどこおり疲弊ひへいし切きって、日々ひびの食料しょくりょう調達ちょうたつもままならなかったロシア国民こくみんにとって、自活じかつ（自給自足じきゅうじそく）という最終さいしゅう手段しゅだんで食料しょくりょう、現金げんきん収入しゅうにゅうを得える（自力じりきで瓶詰びんづめ加工かこうなど保存ほぞん食しょくも製造せいぞう・保管ほかんしていた）最後さいごの場ばでもあった。これがロシアの知しられざる力ちからとなっている。^{[独自どくじ研究けんきゅう?]}今いまでは郊外こうがいの自然しぜん保護ほご、自力じりきで無む農薬のうやくの安全あんぜんな食料しょくりょうを確保かくほする手段しゅだんとしても重要じゅうよう視しされている。最近さいきんでは若わかい人ひとたちが野菜やさいではなく花はなを栽培さいばいし、ガーデニングを楽たのしんだり、年金ねんきん生活せいかつ者しゃが都心としんを離はなれて自然しぜん豊ゆたかな郊外こうがい住宅じゅうたくとして利用りようしたり、民宿みんしゅくを建たてて営業えいぎょうするなど様々さまざまな利用りよう方法ほうほうが見みられる。^{[誰だれによって?]}ダーチャの売買ばいばいも盛さかんに行おこなわれている。^{[要よう出典しゅってん]}

2020年ねんに流行りゅうこうしたCOVID-19によってロシアでは、外出がいしゅつ禁止きんし令れいが出だされたことにより、通勤つうきん・通院つういん・物資ぶっしの買かい出だし(医薬品いやくひん、衛生えいせい用品ようひん、食料しょくりょう品ひん、生活せいかつ用品ようひん)・ペットを伴ともなった散歩さんぽなどの理由りゆうがないと警察けいさつの取とり締しまり対象たいしょうとなったが、ダーチャへ赴おもむく事ことは不要ふよう不急ふきゅうの移動いどうとは見み做されず、公式こうしきに許可きょかされていた。

類似るいじする住居じゅうきょ

ダーチャに類似るいじする住居じゅうきょ。

脚注きゃくちゅう

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

^ 西城さいじょう潔きよし「「ロシアのおばさんはなぜ太ふとっているのか?」という問といへの回答かいとうとしての地誌ちし学がく」『季刊きかん地理ちり学がく』第だい48巻かん第だい1号ごう、東北とうほく地理ちり学会がっかい、1996年ねん3月がつ15日にち、47-48頁ぺーじ。
^ wikt:en:хата#Russianも参照さんしょう。