ドブネズミ

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ドブネズミ
分類ぶんるい
ドメイン : かく生物せいぶつ Eukaryota
さかい : 動物界どうぶつかい Animalia
もん : 脊索せきさく動物どうぶつもん Chordata
もん : 脊椎動物せきついどうぶつもん Vertebrata
つな : 哺乳ほにゅうつな Mammalia
: かじ Rodentia
: リス Sciurognathi
下目しため : ネズミ下目しため Myomorpha
うえ : ネズミうえ Muroidea
: ネズミ Muridae
ぞく : クマネズミぞく Rattus
たね : ドブネズミ R. norvegicus
学名がくめい
Rattus norvegicus
(Berkenhout, 1769)
和名わみょう
ドブネズミ
英名えいめい
Norway rat,
brown rat,
street rat,
sewer rat
(あか):生息せいそく地域ちいき

ドブネズミ溝鼠どぶねずみ)は、 ネズミかじるいネズミ クマネズミぞくぞくする大型おおがたネズミるいの1しゅ学名がくめい Rattus norvegicus。シチロウネズミ(七郎しちろうねずみ)、ミゾネズミ(溝鼠どぶねずみ)、ハトバネズミ(波止場はとばねずみ)、チャイロネズミ(茶色ちゃいろねずみ)、ダイコクネズミの別称べっしょうがある[よう出典しゅってん]家畜かちくされたものは近年きんねんペットとしても人気にんきひろまりつつある。

いえネズミ[編集へんしゅう]

野外やがい棲息せいそくするアカネズミハタネズミなどの「ネズミ」にたいして、人家じんかやその周辺しゅうへん棲息せいそくするネズミるいを「いえネズミ」とぶ。日本にっぽんのネズミるいのうちでこれにたるものは、ドブネズミ、クマネズミハツカネズミの3しゅにほぼかぎられる。

形態けいたい[編集へんしゅう]

  • あたまどうちょう: 186-280 mm
  • 尾長おなが: 149-220 mm
  • 後足あとあしちょう: 27-46 mm
  • 体重たいじゅう: 150-500 g

ドブネズミのりつ尾長おなが÷あたまどうちょう)は100パーセント以下いかのものがおおい。すなわち、尾長おながあたまどうちょうよりややみじか傾向けいこうがある(これにたいして、クマネズミは、尾長おながあたまどうちょうおなじか、それよりながい)[1]

背面はいめん褐色かっしょくがかった灰色はいいろはらめん灰色はいいろか、黄色きいろがかった白色はくしょく

みみかい比較的ひかくてきちいさく、まえたおしてもたっしない。これにより、クマネズミ(みみかい比較的ひかくてきおおきく、まえたおすとかくれる)と区別くべつすることができる。染色せんしょくたいすうは、2n=42[1]乳頭にゅうとうすうには変異へんいがあり、8-12。

生態せいたい[編集へんしゅう]

棲息せいそく[編集へんしゅう]

ロンドンのドブネズミ

下水げすいのまわりや河川かせん海岸かいがん湖畔こはん湿地しっちなど、水辺みずべ湿しめった土地とち棲息せいそくする。人家じんかからとおはなれた場所ばしょではあまりられない。およぎも得意とくいで、しばしば水中すいちゅうむ。

市街地しがいちでは、下水げすい台所だいどころながし、ゴミ捨ごみす地下街ちかがい食品しょくひん倉庫そうこなど、みず十分じゅうぶん摂取せっしゅできる、比較的ひかくてき湿しめった場所ばしょこのむ。下水げすいかんやぶれた部分ぶぶんや、コンクリートした隙間すきま公園こうえん駅前えきまえ繁華はんかがいなどのみの地中ちちゅう耕作こうさく堆肥たいひなかなどにトンネルじょうあなり、そのなかしつもうけるが、建物たてものないマンホールうち舗装ほそう道路どうろじょう物陰ものかげなどに、かみやぼろきれをあつめてとすることもある。

クマネズミとちがって、たかいところにのぼるのはあまり得意とくいではないため、おも地表ちひょう建物たてもの下層かそうかい生活せいかつし、上層じょうそうかいにはすくない。屋根裏やねうらはしまわるネズミは、たいていの場合ばあいクマネズミだが、ドブネズミは地下鉄ちかてつ線路せんろ地下街ちかがい通路つうろ不意ふいあらわれ、ひとおどろかせることがある。

野外やがいでは、河原かわはら土手どてや、田畑たはた小高こだかがったところの斜面しゃめんなどに、あなって生活せいかつする。あなは、しつ1個いっこ、トンネルが1ほんだけの単純たんじゅんなものから、3つのしつそなえ、分岐ぶんきした複数ふくすうのトンネルをもつ複雑ふくざつなものまである。くち直径ちょっけい5-10 cmと比較的ひかくてきおおきく、同時どうじ複数ふくすう個体こたい出入でいりできるようになっている。

おも薄暮はくぼせいで、活動かつどう一般いっぱん直前ちょくぜん直後ちょくごにピークとなるが、安全あんぜん場所ばしょでは昼間ひるま活動かつどうする。都市としでは、がた飲食いんしょくてんがいとくに、なまゴミのされている周辺しゅうへん)やみなども、観察かんさつのねらいである。

しょくせい[編集へんしゅう]

雑食ざっしょくせいではあるが、クマネズミと比較ひかくすると、魚介ぎょかいるいにくなど動物どうぶつしつのものをこのんでべる。ただし、その割合わりあい棲息せいそく条件じょうけんによってもおおきくわる。こう蛋白質たんぱくしつえさべ、その代謝たいしゃおわり産物さんぶつである窒素ちっそ尿にょうとして排出はいしゅつするために、水分すいぶんおお摂取せっしゅしなければならない。水辺みずべこのむのはこのためである。

また、んだ動物どうぶつしつでなく、しょう動物どうぶつ捕食ほしょくする習性しゅうせいももち、このことと関係かんけいして、あごうごかす筋肉きんにくに、捕食ほしょくにすばやく獲物えものいつくことにてきした、収縮しゅうしゅく速度そくどはやはやすじ割合わりあい非常ひじょうたかいこともられている。

繁殖はんしょく[編集へんしゅう]

1ねんちゅう繁殖はんしょくするが、春秋しゅんじゅうにピークがある。妊娠にんしん期間きかんは21-24にち胎児たいじすうは1-18で、平均へいきん8-9む。生後せいご20にちほどで離乳りにゅうし、8-12しゅうせい成熟せいじゅくする。哺乳類ほにゅうるいではヒトにいでもっと増加ぞうかしたしゅであり、人口じんこう増加ぞうか移動いどうともなって繁殖はんしょくした結果けっか南極大陸なんきょくたいりく以外いがいのすべての大陸たいりく生息せいそくするようになった。まれ例外れいがいのぞいて、ヒトの場所ばしょとく都市としにはほぼドブネズミも生息せいそくする。

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ドブネズミには、順位じゅんいせいなわばりせいみとめられている。23-116kHzちょう音波おんぱはっしてコミュニケーションをおこなう。行動こうどうけん通常つうじょう30-70m以内いない直後ちょくごおびやかすと、クマネズミはかないが、ドブネズミははげしくく。

寿命じゅみょう[編集へんしゅう]

寿命じゅみょうは、野外やがいで1-2ねん飼育しいくで3ねん。[よう出典しゅってん]

原産地げんさんち[編集へんしゅう]

原産地げんさんちは、中央ちゅうおうアジア、あるいはシベリア南部なんぶ湿地しっちたいかんがえられている[だれによって?]記録きろくによれば、1737ねんにドブネズミの大群たいぐんヴォルガがわわたってヨーロッパ侵入しんにゅう以後いご西進せいしんし、20ねん1757ねんには島国しまぐにであるイギリスロンドンにまであらわれた。アメリカ大陸あめりかたいりくでの記録きろくは、1775ねんからはじまる。[よう出典しゅってん]

ラット[編集へんしゅう]

実験じっけん動物どうぶつラットは、ドブネズミの白色はくしょくしゅ家畜かちくしてつくられた飼養しよう変種へんしゅである。ペットとしてのドブネズミについてはファンシーラット参照さんしょう

天敵てんてき[編集へんしゅう]

捕食ほしょくしゃは、ネコイタチフクロウトビノスリカラスモズアオダイショウマムシなど。

性格せいかく[編集へんしゅう]

ハツカネズミクマネズミなどとは対照たいしょうてきに、非常ひじょう気性きしょうあら凶暴きょうぼうである。 駆除くじょするさいみつかれたり、人家じんかなど建物たてものない侵入しんにゅうしてものあさって、そのもの人間にんげんづかずにべてしまったことによる感染かんせんしょうといった事例じれい報告ほうこくされている。

日本にっぽん列島れっとうのドブネズミ[編集へんしゅう]

ドブネズミの日本にっぽん列島れっとうへの渡来とらい時期じきについては、大化たいか改新かいしんのころ、室町むろまち時代ときよなど諸説しょせつがあるが、弥生やよい時代じだい遺跡いせきから、クマネズミぞくほねへん発見はっけんされており、更新こうしんにはすでに分布ぶんぷしていたとするせつもある[だれによって?]

現在げんざいは、北海道ほっかいどうとうから南西諸島なんせいしょとうまで、全国ぜんこくてき分布ぶんぷする。

ドブネズミはクマネズミとちがって低温ていおんにはつよく、北海道ほっかいどうとう富士山ふじさんなどの深雪みゆき地帯ちたいでは、人家じんかからはなれたゆきしたむこともある。

かつての日本にっぽん家屋かおくでは、天井てんじょう営巣えいそうするクマネズミと、台所だいどころ下水道げすいどう穴居けっきょするドブネズミが、生活せいかつけていた。ハツカネズミは、もともとの2しゅくらべるとすくない。その太平洋戦争たいへいようせんそう都市としとともに、地下街ちかがい下水道げすいどうなど湿しめった場所ばしょこのむドブネズミが勢力せいりょくばしたが、1970ねんごろからの高層こうそうビル建築けんちくラッシュとともに、乾燥かんそうしたたかいところをこの登攀とうはんりょくすぐれ、配管はいかんとうつたってフロアあいだ自由じゆうすることができるクマネズミが目立めだはじめた。現在げんざいいえ屋根裏やねうら生息せいそくするのはクマネズミであるが、近年きんねんさい開発かいはつ影響えいきょう地中ちちゅう生息せいそくしているドブネズミがすみかをわれて都心としんてきており、渋谷しぶや新宿しんじゅくなどの繁華はんかがいでは、ドブネズミも頻繁ひんぱんられるようになった。1977ねんには、ドブネズミが生後せいご33にち人間にんげんあかちゃんをかみころ事故じここっている[2]

ドブネズミは異常いじょう発生はっせいすることもあり、各地かくち漁村ぎょそん小島こじまのほか、北海道ほっかいどう発生はっせいれいられている。[よう出典しゅってん]

捕食ほしょくしゃは、ネコイタチフクロウノスリアオダイショウなど。伊豆諸島いずしょとうでは、ツツガムシ主要しゅようよせおもである。また、北海道ほっかいどう渡島ととう大島おおしまなどで、オオミズナギドリたまごやヒナを捕食ほしょくし、おおきな被害ひがいあたえていることがられている。

その[編集へんしゅう]

  • 毛色けいろからくら灰色はいいろいねずみいろのことをす。
  • 慣用かんようで「主人しゅじんぬすんで金品きんぴんぬす使用人しようにん」をいやしんでさいもちいられる。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b N Yigit, E Colak, M Soezen, S Ozkurt (1998). “The Taxonomy and Karyology of Rattus norvegicus (Berkenhout, 1769) and Rattus rattus (Linnaeus, 1758) (Rodentia: Muridae) in Turkey”. Tr. J. of Zoology 22: 203-212. http://journals.tubitak.gov.tr/zoology/issues/zoo-98-22-3/zoo-22-3-6-97052.pdf. 
  2. ^ 毎日新聞まいにちしんぶん1977ねん11月24にち社会しゃかいめん

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]