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ニクズク

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ニクズク

(うえ) 1a. Gymnacranthera canaricaはな
(した) 1b. ニクズク果実かじつ断面だんめん
分類ぶんるい
さかい : 植物しょくぶつかい Plantae
階級かいきゅうなし : 被子植物ひししょくぶつ angiosperms
階級かいきゅうなし : モクレンるい magnoliids
: モクレン Magnoliales
: ニクズク Myristicaceae
学名がくめい
Myristicaceae Diels (1917)
タイプぞく
ニクズクぞく Myristica Gronov. (1755)[1]
英名えいめい
nutmeg family[1][2]
下位かい分類ぶんるい

ニクズク(ニクズクか、学名がくめい: Myristicaceae)は、モクレンの1つである。常緑じょうりょくせい木本もくほんであり、樹液じゅえき有色ゆうしょく通常つうじょう赤色あかいろ)。はなちいさくたんせいはなへんはふつう3まい合生あいおい1a)、多数たすうしべごうした単体たんたいしべをもち、しべ1個いっこ種子しゅしはふつう派手はでかり種皮しゅひつつまれ(1b)、胚乳はいにゅうには虫食むしくじょうおちいいれがある。世界中せかいじゅう熱帯ねったいいき分布ぶんぷし、やく20ぞく500しゅほどがられる。ニクズクMyristica fragrans)の種子しゅしは、香辛料こうしんりょうナツメグやメースとしてひろ利用りようされている。

特徴とくちょう

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常緑じょうりょくせいまれに落葉らくようせい[ちゅう 1]高木たかぎから低木ていぼくであり、まれにつるせい藤本ふじもと)、精油せいゆふくみ、ときに芳香ほうこうをもつ[4][3]下図したず2a)。えだはしばしばせいじょうよこびる[3][5][2]下図したず2b)。有色ゆうしょく(ふつう赤色あかいろ)の樹液じゅえきをもつ[4][3][6][5][2]下図したず2c)。いち維管たば管状かんじょう[4][5]木部きべタンニンふくかんをもつ[5]かん色素しきそたいはS-type[4]ふしたんすき、3あとせい[4]

2c. Virola gardneri樹液じゅえきあか

はふつう2れつ互生ごせいする[4][5][2]下図したず2d–f)。葉柄ようへいをもち、たくき、単葉たんようぜんえん革質かくしつ葉脈ようみゃくはねじょう、ときにせんてんをもつ[4][3][2]下図したず2d–f)。ふつう分泌ぶんぴつどうをもつ[4]気孔きこう平行へいこうがた[4]もうじょう突起とっき)は多様たようだが、基本きほんてきかりじくぶんえだしたたんれつ[4][5]

2d. Horsfieldia costulata果実かじつ
2e. Myristica insipida花序かじょ
2f. Myristica malabarica

はなちいさくたんせい雄花おばな雌花めばなべつ)、ふつう雌雄しゆうかぶだがまれに雌雄しゆうどうかぶ[4][3][6][5][2]下図したず2g–i)。花序かじょわきせい(ときに幹生みきお)、またはいただきせいする[4][3]はな放射ほうしゃ相称そうしょう漏斗ろうとがたかねがた、つぼかたちさらがたなど、はなへんは(2–)3(–5)まい、ときに肉質にくしつ白色はくしょく緑色みどりいろ黄色おうしょくなど、1りん敷石しきいしじょう基部きぶ合生あいおい[4][3][6][5][2]下図したず2g–i)。しべは(2–)3–30(–40)、1りんおおくははないとごうして単体たんたいしべとなる[4][3][6][5][2]下図したず2i)。外向がいこうたてきれひらけする[4][3]しょう胞子ほうし形成けいせい同時どうじがたタペート組織そしき分泌ぶんぴつがた[4]花粉かふんたんみぞつぶたんあなつぶまたはあなつぶ、2細胞さいぼうせい[4][2]しべ1個いっこ、1しんかわせい不完全ふかんぜんしんがわ柱頭ちゅうとうはしばしば2きれし、子房しぼう上位じょういで1胚珠はいしゅふくみ、基底きてい胎座[4][3][6][5][2]たおせなま胚珠はいしゅ、2たまかわせいあつそうたましんたまあなうち種皮しゅひせい[4][3][5]はい形成けいせいはタデがた胚乳はいにゅう形成けいせい遊離ゆうりかくがた[4]みつせん[2]

2g. Virola surinamensis花序かじょ
2h. ニクズクはな
2i. Knema attenuata雄花おばな

果実かじつえきしつから革質かくしつ、ふつうはらぬいせんぬいせい両方りょうほうきれひらけするふくろはて(まれにきれひらく[4][3][2]下図したず2j, k)。種子しゅし1個いっこおおきく、ふつう派手はでいろかり種皮しゅひつつまれている[4][3][6][5]下図したず2j, k)。うち胚乳はいにゅうにはふつう虫食むしくじょうんだおちいいれ(錯道)があり(下図したず2l)、ふつうあぶらしつ[4][3][6][2]はいはよく分化ぶんかしているが、非常ひじょうちいさい[4][3][2]地下ちか子葉しようせい[4]

2j. Knema globulariaきれひらけした果実かじつ種子しゅしあかかり種皮しゅひつつまれている)
2k. ニクズクきれひらけした果実かじつ種子しゅし網状もうじょうあかかり種皮しゅひつつまれている)
2l. ニクズクの種子しゅし断面だんめん

幻覚げんかく誘発ゆうはつせいのフェノール化合かごうぶつミリスチシンなど)をもつ[2]アルカロイドプロアントシアニジンフラボノールケンペロールクェルセチン)をゆうし、シアン化物ばけものイソキノリンイリドイド[4][5]染色せんしょくたいかずn = 20, 22, 25, 26[4]

分布ぶんぷ生態せいたい

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3. ニクズクぞく支柱しちゅうしょうじている)をおもとする湿地しっちりんインド

アジアからオーストラリアアフリカアメリカ熱帯ねったいいき分布ぶんぷしており、おもに低地ていち熱帯ねったい雨林うりん生育せいいくしている[6][5][2]3)。

すくなくとも東南とうなんアジアでは、小型こがた甲虫かぶとむしによっておくこなされるれいおお[5]。またニクズクぞく雌花めばな花粉かふん形成けいせいしないが、花粉かふんあつめるハナバチるいだましておくこなさせることが示唆しさされている[5]

かり種皮しゅひうすいが栄養分えいようぶんんでおり、これを報酬ほうしゅうとしてきゅう世界せかいではサイチョウるいハトるいフウチョウるいが、しん世界せかいではオオハシるい霊長れいちょうるい種子しゅし散布さんぷおこな[5]

人間にんげんとのかかわり

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4. ナツメグ

ニクズクMyristica fragrans)の種子しゅし全体ぜんたいをすりつぶしたものはナツメグ(nutmeg)、かり種皮しゅひメース(mece)とよばれ、香辛料こうしんりょうとしてひろ利用りようされている[6][7][8]4)。ニクズクやチョウジフトモモ)、コショウコショウ)、シナモンクスノキ)などの香辛料こうしんりょうたいする需要じゅようが、15–16世紀せいきだい航海こうかい時代じだいがねの1つとなった[6]。ニクズクぞく種子しゅしは、薬用やくようもちいられることもある[7][8]

StaudtiaVirola は、木材もくざいとして利用りようされることがある[2]。また Virola のいくつかのたねは、幻覚げんかく誘発ゆうはつざい原料げんりょうとされることがある[6][2]

系統けいとう分類ぶんるい

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古典こてんてき被子植物ひししょくぶつ分類ぶんるい体系たいけいであるしんエングラー体系たいけいクロンキスト体系たいけいでは、ニクズクモクレン分類ぶんるいされていた[9][10][11][12]。その一般いっぱんてきとなったAPG分類ぶんるい体系たいけいでも、ニクズクはモクレン分類ぶんるいされている[13]。モクレンなかでは、ニクズク最初さいしょ分岐ぶんきしたグループであるとかんがえられている[5]

ニクズクなかには、やく20ぞく500しゅほどがられている[5]。ニクズクなかでは、少数しょうすう例外れいがいのぞいてアフリカ、アジア(オーストリアをふくむ)、中南米ちゅうなんべい分布ぶんぷするものからなる系統けいとうぐんかれることが示唆しさされている[14]下図したず5)。このうちアジアと中南米ちゅうなんべい系統けいとうぐんたん系統けいとうぐん(myristicoid clade)を構成こうせいし(下図したず5)、これにぞくするたね発芽はつがあなみぞじょうでエキシンが網目あみめじょう花粉かふんをもつのにたいして、アフリカの系統けいとうぐん(mauloutchioid clade)にぞくするたね花粉かふんは、発芽はつがあな円形えんけいでエキシンが網目あみめじょうである[2]

ニクズク
African clade

Otoba中南米ちゅうなんべい

Coelocaryon(アフリカ)

Pycnanthus(アフリカ)

Staudtia(アフリカ)

Brochoneura(アフリカ)

Maloutchia(マダガスカル)

Neobrochoneura(マダガスカル)

Asian clade

ホルスフィエルディアぞく Horsfieldia(アジア)

Gymnacranthera(アジア)

Endocomia(アジア)

クネマぞく Knema(アジア)

ニクズクぞく Myristica(アジア)

South American clade

Bicuiba南米なんべい

ウィロラぞく Virola南米なんべい

Compsoneura南米なんべい

Osteophloeum南米なんべい

Haematodendron(マダガスカル)

Iryanthera南米なんべい

5. ニクズクない系統けいとう仮説かせつ[3][14][15](カッコない分布ぶんぷいき

ひょう1. ニクズク分類ぶんるい体系たいけいいちれい[3][14]

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ Virolaすうしゅ[3]

出典しゅってん

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  1. ^ a b Myristicaceae R. Br.”. Tropicos v3.3.2. Missouri Botanical Garden. 2022ねん8がつ10日とおか閲覧えつらん
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s Judd, W.S., Campbell, C.S., Kellogg, E.A., Stevens, P.F. & Donoghue, M.J. (2015). “Myristicaceae”. Plant Systematics: A Phylogenetic Approach. Academic Press. p. 255. ISBN 978-1605353890 
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r Myristicaceae”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2022ねん7がつ12にち閲覧えつらん
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa Watson, L. & Dallwitz, M. J. (1992 onwards). “Myristicaceae R. Br.”. The families of flowering plants: descriptions, illustrations, identification, and information retrieval.. 2022ねん7がつ12にち閲覧えつらん
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s Stevens, P. F. (2001 onwards). “MYRISTICACEAE”. Angiosperm Phylogeny Website. 2022ねん7がつ12にち閲覧えつらん
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o トーマス・ウィルソン & 植田うえだ邦彦くにひこ (1997). “ニクズク”. 週刊しゅうかん朝日あさひ百科ひゃっか 植物しょくぶつ世界せかい 9. pp. 98–100. ISBN 9784023800106 
  7. ^ a b 星川ほしかわ清親きよちか, 堀田ほったみつる, 新田にったあや (1989). “ニクズクぞく”. In 堀田ほったみつるほか. 世界せかい有用ゆうよう植物しょくぶつ事典じてん. 平凡社へいぼんしゃ. pp. 700–701. ISBN 9784582115055 
  8. ^ a b ナツメグ. コトバンクより2022ねん8がつ9にち閲覧えつらん
  9. ^ 加藤かとうまさあきら (へん) (1997). “分類ぶんるいひょう”. バイオディバーシティ・シリーズ (2) 植物しょくぶつ多様たようせい系統けいとう. はなぼう. p. 270. ISBN 978-4-7853-5825-9 
  10. ^ 井上いのうえひろし, 岩槻いわつき邦男くにお, 柏谷かしわや博之ひろゆき, 田村たむら道夫みちお, 堀田ほったみつる, 三浦みうらひろし一郎いちろう & 山岸やまぎしだか旺 (1983). “モクレン”. 植物しょくぶつ系統けいとう分類ぶんるい基礎きそ. きたたかしかん. pp. 219–222 
  11. ^ Melchior, H. (1964). A. Engler's Syllabus der Pflanzenfamilien mit besonderer Berücksichtigung der Nutzpflanzen nebst einer Übersicht über die Florenreiche und Florengebiete der Erde. I. Band: Allgemeiner Teil. Bakterien bis Gymnospermen 
  12. ^ Cronquist, A. (1981). An integrated system of classification of flowering plants. Columbia University Press. ISBN 9780231038805 
  13. ^ Chase, M. W., Christenhusz, M. J. M., Fay, M. F., Byng, J. W., Judd, W. S., Soltis, D. E., ... & Stevens, P. F. (2016). “An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG IV”. Botanical Journal of the Linnean Society 181 (1): 1-20. doi:10.1111/boj.12385. 
  14. ^ a b c Shivaprakash, K. N., Rajanna, J. M., Gunaga, S. V., Ravikanth, G., Vasudeva, R., Shaanker, R. U. & Dayanandan, S. (2022). “The flooded habitat adaptation, niche differentiation, and evolution of Myristicaceae trees in the Western Ghats biodiversity hotspot in India”. Biotropica. doi:10.1111/btp.13078. 
  15. ^ Doyle, J. A., Sauquet, H., Scharaschkin, T. & Le Thomas, A. (2004). “Phylogeny, molecular and fossil dating, and biogeographic history of Annonaceae and Myristicaceae (Magnoliales)”. International Journal of Plant Sciences 165: 555-567. doi:10.1086/421068. 

外部がいぶリンク

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  • Kabeya, Y. & Hasebe, M.. “モクレンるい/モクレン/ニクズク”. 陸上りくじょう植物しょくぶつ進化しんか. 基礎きそ生物せいぶつがく研究所けんきゅうじょ. 2022ねん7がつ12にち閲覧えつらん
  • Stevens, P. F. (2001 onwards). “MYRISTICACEAE”. Angiosperm Phylogeny Website. 2022ねん7がつ12にち閲覧えつらん英語えいご
  • Watson, L. & Dallwitz, M. J. (1992 onwards). “Myristicaceae R. Br.”. The families of flowering plants: descriptions, illustrations, identification, and information retrieval.. 2022ねん7がつ12にち閲覧えつらん英語えいご
  • Myristicaceae”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2022ねん7がつ12にち閲覧えつらん英語えいご