ハッブル–ルメートルの法則ほうそく

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現代げんだい宇宙うちゅう論ろん
宇宙うちゅう
ビッグバン・ブラックホール
宇宙うちゅうの年齢ねんれい
宇宙うちゅうの年表ねんぴょう

ハッブル–ルメートルの法則ほうそく[1]（旧称きゅうしょう「ハッブルの法則ほうそく」）とは、現代げんだい宇宙うちゅう論ろんにおいて観測かんそくされる以下いかの法則ほうそくのことを指さす[2][3]。

  1. 10メガパーセク以上いじょう離はなれた位置いちに観測かんそくされる天体てんたいには、地球ちきゅうとの相対そうたい速度そくどと解釈かいしゃくされる赤あか方偏かたへん移うつりが見みられる。
  2. このドップラー効果こうかから計算けいさんされる、様々さまざまな銀河ぎんがの地球ちきゅうからの後退こうたい速度そくどは、数すう百ひゃくメガパーセク程度ていどの銀河ぎんがまでは地球ちきゅうからの距離きょりにほぼ比例ひれいする。

を天体てんたいが我々われわれから遠とおざかる速はやさ（後退こうたい速度そくど）、 を我々われわれからその天体てんたいまでの距離きょりとすると、

となる。ここで比例ひれい定数ていすう はハッブル定数ていすう (Hubble constant) と呼よばれ、現在げんざいの宇宙うちゅうの膨張ぼうちょう速度そくどを決きめる。ハッブル定数ていすうは時間じかんの逆数ぎゃくすうの次元じげん T−1 をもち、通常つうじょうはキロメートル毎まい秒びょう毎まいメガパーセク（記号きごう: km/s/Mpc）が単位たんいとして用もちいられる。この発見はっけんは、宇宙うちゅうは膨張ぼうちょうしているものであるとする説せつを強力きょうりょくに支持しじするものとなった。

1929年ねんにエドウィン・ハッブルが論文ろんぶんで発表はっぴょうした[4]ため、この法則ほうそくは「ハッブルの法則ほうそく」の名称めいしょうで広ひろく世よに知しられたが、1922年ねんに現在げんざい「フリードマン方程式ほうていしき」として知しられている一連いちれんの方程式ほうていしきを発表はっぴょうしたアレクサンドル・フリードマンによって一般いっぱん相対性理論そうたいせいりろんの式しきから導みちびき出だされたのが最初さいしょである。1927年ねんにはジョルジュ・ルメートルも宇宙うちゅうの膨張ぼうちょうを提案ていあんし、膨張ぼうちょう率りつの推定すいてい値ちを提示ていじしていたが[5]、フランス語ふらんすごのマイナーな雑誌ざっしに掲載けいさいされたため、その時点じてんではまだ注目ちゅうもくされていなかった[6][7][8]。なお、ルメートルはスライファーとハッブルの観測かんそくデータを用もちいている[6][7]。2018年ねん8月がつに開催かいさいされた第だい30回かい国際こくさい天文学てんもんがく連合れんごう総会そうかいで、ルメートルの功績こうせきを顕彰けんしょうするため、ハッブルの法則ほうそくを「ハッブル＝ルメートルの法則ほうそく」 (Hubble-Lemaître law) と呼よぶことを推奨すいしょうする決議けつぎ案あんが提出ていしゅつされた[9][10]。2018年ねん10月がつ26日にちに締しめ切きられた投票とうひょうの結果けっか、この決議けつぎ案あんは約やく78%の賛成さんせい多数たすうを以もって採択さいたくされた[11]。

ハッブルパラメータの変化へんか[編集へんしゅう]

ハッブル定数ていすうは、定数ていすうと呼よばれているが、時間じかんと共ともに変化へんかしうる。時間じかんの関数かんすうとしてのハッブル定数ていすうはハッブルパラメータ (Hubble parameter) と呼よび、 や で表あらわす。観測かんそくで求もとめられるハッブル定数ていすう

は、正確せいかくには「現在げんざいのハッブルパラメータ」である。

エドワード・アーサー・ミルンが導出どうしゅつした、宇宙うちゅう膨張ぼうちょうが加速かそくも減速げんそくもしないミルン宇宙うちゅうでは、ハッブルパラメータはビッグバンからの経過けいか時間じかんに反比例はんぴれいして減少げんしょうする。速度そくど が一定いっていのまま距離きょり だけが増加ぞうかするからである。

一方いっぽう、定常ていじょう宇宙うちゅう論ろんではハッブルパラメータは一定いっていである。宇宙うちゅう膨張ぼうちょうは指数しすう関数かんすう的てきに加速かそくし（過去かこにさかのぼると減速げんそくし）、過去かこにいくらさかのぼってもビッグバンは起おこらない。

「距離きょり」「速度そくど」の定義ていぎ[編集へんしゅう]

近ちかくの銀河ぎんがだけを見みているときは「距離きょり」と「速度そくど」の定義ていぎは自明じめいだが、遠とおくの銀河ぎんがについてはそれらの定義ていぎが問題もんだいとなる。

ハッブル=ルメートルの法則ほうそくが成なり立たつ「距離きょり」とは、共きょう動どう距離きょり、つまり、その銀河ぎんがの現在げんざい位置いちまでの距離きょりである。「速度そくど」とは、その時間じかん微分びぶんである[12]。観測かんそく上じょう、遠方えんぽうの天体てんたいほど、ハッブル=ルメートルの法則ほうそくに従したがわなくなる。これは光速こうそくが有限ゆうげんなため観測かんそく上じょう遠方えんぽうの天体てんたいが過去かこの距離きょり（宇宙うちゅう論ろん的てき固有こゆう距離きょり）と速度そくどを表あらわし、かつ過去かこのハッブル定数ていすうが現在げんざいのハッブル定数ていすうと異ことなるからである。

銀河ぎんがまでの共きょう動どう距離きょりを で表あらわすと、ハッブル=ルメートルの法則ほうそくは次つぎのように表あらわせる[12]。

距離きょりとして光ひかり路ろ距離きょり、つまり、光ひかりが届とどく所要しょよう時間じかんに光ひかり速度そくどを掛かけた値ねを使つかうと、

（ は赤あか方偏かたへん移うつり）が成立せいりつするが、ミルンの宇宙うちゅう以外いがいでは遠とおくの銀河ぎんがの光ひかり路ろ距離きょりに対たいしてハッブル=ルメートルの法則ほうそくは成なりたない[12]。

ハッブル定数ていすうの値ね[編集へんしゅう]

銀河ぎんがの後退こうたい速度そくどは銀河ぎんがからの光ひかりのスペクトルの赤あか方偏かたへん移うつりを調しらべることによって容易よういに決定けっていできるが、距離きょりの決定けっていは、現在げんざいのところ、様々さまざまな算出さんしゅつ方法ほうほうを総合そうごうして割わり出だすしかないため、正確せいかくな値ねを求もとめることは困難こんなんである。そのためハッブル定数ていすうは不確ふたしかなものとなっている。

つい最近さいきんまで、ハッブル定数ていすうの見積みつもりには 50–100 km/s/Mpc という非常ひじょうに大おおきな不ふ確かくかさがあった。

2008年ねんに公表こうひょうされた WMAP による初期しょきの観測かんそくでは、70.5±1.3 km/s/Mpc という値ねが与あたえられていた[13]。その後ご、NASAの赤外線せきがいせん宇宙うちゅう望遠鏡ぼうえんきょうスピッツァーによる遠とお赤外線せきがいせんの観測かんそくから 74.3±2.1 km/s/Mpc という値ねが得えられた[14]が、2012年ねんに、NASAの人工じんこう衛星えいせいWMAPなどの観測かんそくによる 69.32±0.80 km/s/Mpc という値ねが与あたえられた[15]。

2013年ねんには、プランクの観測かんそく結果けっかにより 67.15±1.2 km/s/Mpc という新あたらしい値ねが与あたえられた[16][17]。

2017年ねん現在げんざい、70.0+12.0
−8.0 km/s/Mpc という値ねが公表こうひょうされている（下記かきの表おもて参照さんしょう）。

ハッブル定数ていすうの公表こうひょう値ちの変遷へんせん（2017年ねん現在げんざい）
公表こうひょう日び ハッブル定数ていすう
(km/s)/Mpc 		観測かんそく者しゃ 引用いんよう 特記とっき事項じこう / 観測かんそく方法ほうほう
2017-10-16 70.0+12.0
−8.0 		LIGO科学かがくコラボレーション、
Virgo interferometer Collaboration 		[18] 重力じゅうりょく波はの解析かいせきで得えられた値ね。重力じゅうりょく波はからは宇宙うちゅうの距離きょり梯子はしごを使つかわずに宇宙うちゅう論ろん的てきな光度こうど距離きょりを直接ちょくせつ推計すいけいすることができる。
2016-11-22 71.9+2.4
−3.0 		ハッブル宇宙うちゅう望遠鏡ぼうえんきょう [19] 時間じかんをおいて撮影さつえいした複数ふくすうの重力じゅうりょくレンズ効果こうかの画像がぞうの時間じかん差さから得えられた値ね。
2016-07-13 67.6+0.7
−0.6 		スローン・デジタル・スカイサーベイ -III 「バリオン音響おんきょう振動しんどうスペクトルサーベイ」 [20] バリオン音響おんきょう振動しんどう（英語えいご版ばん）の観測かんそくから得えられた値ね。
2016-05-17 73.00±1.75 ハッブル宇宙うちゅう望遠鏡ぼうえんきょう [21] Ia型がた超新星ちょうしんせいの観測かんそくから得えられた値ね。この値ねは今後こんごのガイア計画けいかくの進展しんてんによって精度せいどは２倍ばい以上いじょうは上あがる見込みこみ。
2015-02 67.74±0.46 2015年ねんのプランクミッション [22][23]
2013-10-01 74.4±3.0 Cosmicflows-2 [24] タリー・フィッシャー関係かんけい、セファイド変光星へんこうせい、Type I超新星ちょうしんせいの観測かんそくなどから得えられた赤あか方偏かたへん移うつりを比較ひかくして得えられた値ね。
2013-03-21 67.80±0.77 2013年ねんのプランクミッション [25][26][27][28][29]
2012-12-20 69.32±0.80 WMAP (9年ねん目め) [30]
2010 70.4+1.3
−1.4 		WMAP (7年ねん目め)、その他た [31]
2010 71.0±2.5 WMAP (7年ねん目め) [31]
2009-02 70.1±1.3 WMAP (5年ねん目め)、その他た [32]
2009-02 71.9+2.6
−2.7 		WMAP (5年ねん目め) [32]
2007 70.4+1.5
−1.6 		WMAP (3年ねん目め) [33]
2006-08 77.6+14.9
−12.5 		チャンドラX線せん観測かんそく衛星えいせい [34]
2001-05 72±8 ハッブル宇宙うちゅう望遠鏡ぼうえんきょう [35] スニヤエフ・ゼルドビッチ効果こうか の観測かんそくを多おおくの銀河ぎんが団だんについて行いった結果けっか。
prior to 1996 50–90 [36]
early 1970s ~55 アラン・サンデージ [37] アラン・サンデージによる値ねの修正しゅうせい。サンデージはこの値ねを使つかって、宇宙うちゅうの年齢ねんれいを約やく180億おく年ねんと推測すいそくした[注ちゅう 1]。
1958 75 アラン・サンデージ [38] ハッブル定数ていすうを最初さいしょに精度せいどよく見積みつもったものだったが、当初とうしょは信頼しんらいが得えられなかった。
1956 180 ヒューメイソン、メイオール、サンデージ [37]
1929 500 エドウィン・ハッブル、フッカー望遠鏡ぼうえんきょう [39][37][40]
ハッブル定数の公表値の変化を表したグラフ。最新値は左端。
ハッブル定数ていすうの公表こうひょう値ちの変化へんかを表あらわしたグラフ。最新さいしん値ちは左端ひだりはし。(横よこ軸じくは時間じかんに比例ひれいしていない)

ハッブル時間じかんとハッブル距離きょり[編集へんしゅう]

ハッブル定数ていすうの逆数ぎゃくすうは（時間じかん）の次元じげんを持もち、ハッブル時間じかんと呼よばれる。

先さきのハッブル定数ていすうの値ねを使つかうと、ハッブル時間じかんは138億おく年ねんである。宇宙うちゅうの年齢ねんれい は、ミルン宇宙うちゅうではハッブル時間じかんに等ひとしいが、実際じっさいは加速かそくや減速げんそくがあるので、ハッブル時間じかんとは異ことなる。観測かんそくで得えられた宇宙うちゅう論ろんパラメータを使つかうと、実際じっさいの宇宙うちゅうは加速かそくと減速げんそくを繰くり返かえした結果けっか、宇宙うちゅうの年齢ねんれいはハッブル時間じかんとほとんど同おなじ137億おく年ねんとなる。ただし、ハッブル時間じかんそのものに物理ぶつり的てき意味いみはない。

光ひかり速度そくどをハッブル定数ていすうで割わった値ね、つまり、光ひかり速度そくどとハッブル時間じかんの積せきを、ハッブル距離きょり

といい、138億おく光年こうねんである。ハッブル距離きょりそのものも物理ぶつり的てき意味いみはないが、光ひかり速度そくどと宇宙うちゅうの年齢ねんれいの積せき の138億おく光年こうねんは、宇宙うちゅうの地平ちへい面めん（宇宙うちゅうの果はて）までの光ひかり路ろ距離きょりである。ただし、地平ちへい面めんまでの共きょう動どう距離きょり（こちらのほうが通常つうじょうの意味いみでの距離きょりである[12]）は466億おく光年こうねんで、かなり異ことなる。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 等ひとし速そく膨張ぼうちょうであると仮定かていし、により、速度そくどvが光速こうそくcに達たっする距離きょりDを求もとめた。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

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  40. ^ “Hubble's Constant”. Skywise Unlimited - Western Washington University. 2017年ねん12月19日にち閲覧えつらん。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

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