ヤマブキ

ヤマブキ
ヤマブキ（八重やえ）
分類ぶんるい
界さかい : 植物しょくぶつ界かい Plantae 階級かいきゅうなし : 被子植物ひししょくぶつ angiosperms 階級かいきゅうなし : 真正しんしょう双そう子葉しよう類るい Eudicots 階級かいきゅうなし : バラ類るい rosids 階級かいきゅうなし : マメ類るい fabids 目め : バラ目め Rosales 科か : バラ科か Rosaceae 亜あ科か : サクラ亜あ科か Amygdaloideae 属ぞく : ヤマブキ属ぞく Kerria] 種たね : ヤマブキ K. japonica
学名がくめい
Kerria japonica (L.) DC. (1818)
和名わみょう
ヤマブキ（山吹やまぶき）
英名えいめい
Japanese kerria

ヤマブキ（山吹やまぶき、学名がくめい: Kerria japonica）は、バラ科かヤマブキ属ぞく（本ほん種しゅのみの一いち属ぞく一いち種しゅ）の落葉らくよう低木ていぼく。別名べつめいはヤマブリ。黄金おうごん色しょくに近ちかい黄色おうしょくの花はなをつける。春はるの季語きご。

名称めいしょう

和名わみょうヤマブキの語源ごげんは、古ふるくは「山やま振ふ（やまぶり）」と書かかれ、これが転訛てんかしたものとされる。ヤマブリの由来ゆらいは、細ほそくしなやかな枝えだが、風ふうに振ふられて揺ゆれ動うごく姿すがたにちなむといわれる。中国ちゅうごく名めいは「棣棠（ていとう）」と称しょうする。

学名がくめいはスコットランドの植物しょくぶつ学者がくしゃのウィリアム・カーに由来ゆらいする。

分布ぶんぷ・生育せいいく地ち

日本にっぽんでは北海道ほっかいどう南部なんぶ、本州ほんしゅう、四国しこく、九州きゅうしゅうに分布ぶんぷし、国外こくがいでは朝鮮半島ちょうせんはんとう、中国ちゅうごくに産さんする。低てい山やまの渓流けいりゅう沿ぞいや山やまの斜面しゃめん、やや湿しめり気けのある明あかるい林はやしの木陰こかげなどに群生ぐんせいする。古ふるくから親したしまれた花はなで、庭にわにもよく植うえられる。

特徴とくちょう

落葉らくよう広葉樹こうようじゅの低木ていぼくで、樹木じゅもくではあるが、茎くきは細ほそく、柔やわらかい。背丈せたけは1 - 2メートル (m) 程度ていどで、立たち上あがるが先端せんたんはやや傾かたむき、往々おうおうにして山腹さんぷくでは麓ふもと側がわに垂たれる。地下茎ちかけいを横よこに伸のばし、根元ねもとから叢生そうせいして株立かぶだち状じょうになる。幹みきの根元ねもとの太ふといところは灰はい褐色かっしょくで皮かわ目めが目立めだつ。若わかい枝えだは鮮あざやかな緑色みどりいろで稜りょうがあり滑なめらかで、ややジグザグに伸のびる。枝えだはその後ご、次第しだいに木質もくしつ化かして褐色かっしょくになり、3 - 4年ねんで枯かれる。幹みきの中心ちゅうしんの髄ずいは、水分すいぶんを多おおく含ふくんだスポンジ状じょうで白しろい。葉はは互生ごせいし、長ながさ4 - 8センチメートル (cm) の倒卵形とうらんけいで、葉は縁えんは重おも鋸歯きょしがはっきりしており、葉は身みが薄うすく、表面ひょうめんにしわがある。秋あきになると黄葉こうようし、花はなと同様どうように山吹やまぶき色しょくに染そまり、初冬しょとうまで見みられる。

花期かきは4 - 5月。直径ちょっけい30 - 50ミリメートル (mm) の鮮あざやかな黄色おうしょくの花はなを、当年とうねん枝えだの先さきに多数たすうつける。花はなは一いち重じゅうのものと八はち重じゅうのものがあり、特とくに八重咲やえざき品種ひんしゅ（K. japonica f. plena）が好このまれ、よく栽培さいばいされる。一重ひとえのものは花弁はなびらは5枚まい。多数たすうの雄蕊おしべと5個こから8個この離はなれ生せい心こころ皮かわがある。心こころ皮かわは熟じゅくして分ぶん果はてになる。

果はて期きは9 - 10月。果実かじつは長ながさ4 mmの広こう楕円だえん形がたで、ヤマブキには実みがつかないと思おもわれがちであるが、実際じっさいには一いち重じゅうの基本きほん種しゅには立派りっぱに実みがつく。園芸えんげい種しゅヤエヤマブキの場合ばあいは雌めしべが退化たいかし、雄蕊おしべが変化へんかして花弁はなびらになっているため、実みを結むすぶことがない。日本にっぽんで昔むかしから栽培さいばいされてきたヤマブキの多おおくが実みをつけない八重咲やえざき種しゅであったため、ヤマブキは実みをつけないと言いわれるようになった。

冬ふゆは落葉らくようして、緑色みどりいろの枝えだが茂しげる様子ようすが見みられる。冬芽とうがは側がわ芽めが枝えだに互生ごせいして、長ながさ4 - 7 mmの長ちょう卵たまご形がたで緑色みどりいろや紅紫こうし色しょく、芽め鱗うろこ5 - 12枚まいに包つつまれている。横よこに副ふく芽めがつくこともある。側がわ芽めの下したにある葉は痕こんは半円はんえん形がたで、維管束たば痕あとが3個こある。

• ヤマブキのギャラリー
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  ヤエヤマブキ
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  ヤエヤマブキ
  （天龍寺てんりゅうじ庭園ていえん）
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  ヤマブキ（一いち重じゅう）
  （再度さいど公園こうえん）
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  ヤマブキ（一いち重じゅう）
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  葉は

品種ひんしゅ

現在げんざい残のこっている品種ひんしゅは以下いかのとおりとされている。

• 八はち重じゅう - ヤエヤマブキ（学名がくめい: Kerria japonica (L.) DC. f. plena C.K.Schneid.）
• 斑入ふいり
• 白はく花はな - シロバナヤマブキ（学名がくめい: Kerria japonica (L.) DC. f. albescens (Makino ex Koidz.) Ohwi）
• 菊きく咲ざき - キクザキヤマブキ（学名がくめい: Kerria japonica (L.) DC. f. stellata (Makino) Ohwi）

なお、シロヤマブキ（学名がくめい: Rhodotypos scandens (Thumb.) Makino）はよく似にていてヤマブキの一種いっしゅと思おもわれがちであるが、ヤマブキとは関係かんけいのない別べつ属ぞくの種たねである。日本にっぽんでは岡山おかやま県けんにのみ自生じせいしているが、花木はなきとして庭にわで栽培さいばいされることが珍めずらしくない。花弁はなびらは4枚まいである。

薬用やくよう

葉はや花はなには利尿りにょう成分せいぶんが含ふくまれ、漢方かんぽうの利尿りにょう薬やくになる。花はなは棣棠花はな（ていとうか）と称しょうする生薬きぐすりになり、天日てんじつ乾燥かんそうして調製ちょうせいする。民間みんかん療法りょうほうでは、咳せき、関節かんせつ炎えん、むくみに、茎葉けいようを1日にち量りょう5グラム、花はなは1日にち量りょう3グラムを400 ccの水みずに入いれて煎せんじた汁しるを、3回かいに分わけて服用ふくようする用法ようほうが知しられている。昔むかしは、切きり傷きずの止血しけつに乾燥かんそうした花はなを揉もんでつけたといわれている。

文化ぶんか

ヤマブキの花言葉はなことばは、「気品きひん」である。ヤマブキの鮮あざやかな黄色きいろい花はなの色いろは、山吹やまぶき色しょくという色いろ名めいのもととなっている。

『万葉集まんようしゅう』でたびたび登場とうじょうするほど栽培さいばいの歴史れきしは古ふるく、古こ歌うたにも好このんで詠よまれ親したしまれてきた。平安へいあん時代じだいに入はいると蛙かえる（かわず（旧きゅうかな表記ひょうきでは「かはづ」））とともに詠よみ合あわせられることが多おおくなった。太田おおた道灌どうかんと八はち重じゅう山吹やまぶきの話はなしはよく知しられている。詳細しょうさいは、太田おおた道灌どうかん#逸話いつわを参照さんしょう。なお、件けんの歌うたについては、普通ふつうは八重咲やえざき山吹やまぶきには実みがつかないことを述のべた歌うたとされるが、「七なな重じゅう八はち重じゅう」を山吹やまぶきが積つみ重かさなるように咲さく様子ようすを述のべたと解かいし、ヤマブキの果実かじつが堅かたくて食くえないので、「山やまほど花はなが咲さくのに、食くえる実みがつかないのは情なさけない」とする解釈かいしゃくもあるらしい。

ヤマブキの髄ずいを用もちいた子こどもの玩具おもちゃに「山吹やまぶき鉄砲てっぽう」がある。山吹やまぶき鉄砲てっぽうは、シノダケを中空ちゅうくうの筒つつを銃身じゅうしんに、ヤマブキの髄ずいを弾たまにして両りょう端はしに詰つめ込こんで、一方いっぽうから棒ぼうで突ついて圧縮あっしゅく空気くうきの勢いきおいで先端せんたんから弾たまが音おとを立たて飛とび出だしていくのを遊あそぶものである。

市区しく町村ちょうそんの花はなに指定していされている自治体じちたい

• 檜原ひのはら村むら（東京とうきょう都と）
• 白石しらいし市し（宮城みやぎ県けん）
• 川越かわごえ市し（埼玉さいたま県けん）
• 常陸太田ひたちおおた市し（茨城いばらき県けん）
• 島本しまもと町まち（大阪おおさか府ふ）
• みなかみ町まち（群馬ぐんま県けん）
• 宇治うじ市し（京都きょうと府ふ）
• 井手いで町まち（京都きょうと府ふ）
• 川上かわかみ村むら（奈良なら県けん）
• 山北さんぽく町まち（神奈川かながわ県けん）
• さいたま市し岩槻いわつき区く（埼玉さいたま県けん）

地名ちめい

埼玉さいたま県けん越生おごせ町まちには梅林ばいりんの他ほか、山吹やまぶきの里さとがある。

山吹やまぶき色しょく

山吹やまぶき色しょく（やまぶきいろ）とは、オレンジ色しょくと黄色おうしょくの中間色ちゅうかんしょくのことである。暖色だんしょくの一ひとつ。下したのような色いろである。

往々おうおうにして小判こばんの黄金おうごん色しょくをこれにたとえる。初等しょとう・中等ちゅうとう教育きょういくに使用しようされる絵えの具ぐに用もちいられている色いろ名めいであることから、色いろ名めい自体じたいは知しられている。学生がくせいを主おもな対象たいしょうとして行おこなわれた調査ちょうさでは、9割わり以上いじょうの回答かいとう者しゃがこの色いろ名めいを知しっており、かつ色いろ名めいからイメージが可能かのうと回答かいとうした。しかし、この色いろ名めいがどのような色相しきそう・彩いろどり度ど・明度めいどを持もつ色いろを指さしているかのイメージには個人こじん差さがある。また、色いろ名めいについては本来ほんらいは植物しょくぶつのヤマブキの色いろの意いであるが、誤あやまって「やまぶ黄色おうしょく」と解かいしている例れいもある。京都大学霊長類研究所きょうとだいがくれいちょうるいけんきゅうしょの中村なかむら克樹かつきも小学生しょうがくせいの頃ころはこのように解釈かいしゃくしており、「やまぶ」とはどういう意味いみなのか悩なやんだという。

近似きんじ色しょく

• 金色きんいろ
• ゴールデンイエロー
• 琥珀こはく色しょく
• 鬱うつ金色きんいろ
• オレンジ色しょく
• 橙色だいだいいろ
• 黄土おうど色しょく
• 黄色おうしょく

参考さんこう文献ぶんけん

• 貝津かいづ好孝よしたか『日本にっぽんの薬草やくそう』小学館しょうがくかん〈小学館しょうがくかんのフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年ねん7月がつ20日はつか、114頁ぺーじ。ISBN 4-09-208016-6。 
• 亀田かめだ龍吉りゅうきち『落おち葉ばの呼よび名な辞典じてん』世界文化社せかいぶんかしゃ、2014年ねん10月がつ5日にち、120頁ぺーじ。ISBN 978-4-418-14424-2。 
• 鈴木すずき庸夫みちお・高橋たかはし冬ふゆ・安やす延のべ尚文なおふみ『樹皮じゅひと冬芽とうが：四季しきを通つうじて樹木じゅもくを観察かんさつする 431種しゅ』誠まこと文ぶん堂どう新光しんこう社しゃ〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年ねん10月がつ10日とおか、158頁ぺーじ。ISBN 978-4-416-61438-9。 
• 田中たなか潔きよし『知しっておきたい100の木き：日本にっぽんの暮くらしを支ささえる樹木じゅもくたち』主婦しゅふの友社ともしゃ〈主婦しゅふの友ともベストBOOKS〉、2011年ねん7月がつ31日にち、152頁ぺーじ。ISBN 978-4-07-278497-6。 
• 平野ひらの隆久たかひさ監修かんしゅう 永岡書店ながおかしょてん編へん『樹木じゅもくガイドブック』永岡書店ながおかしょてん、1997年ねん5月がつ10日とおか、35頁ぺーじ。ISBN 4-522-21557-6。 
• 西田にしだ尚道なおみち監修かんしゅう 学習がくしゅう研究けんきゅう社しゃ編へん『日本にっぽんの樹木じゅもく』学習研究社がくしゅうけんきゅうしゃ〈増補ぞうほ改訂かいていベストフィールド図鑑ずかん 5〉、2000年ねん4月がつ7日にち、49頁ぺーじ。ISBN 978-4-05-403844-8。 
• 長谷川はせがわ哲雄てつお『森もりのさんぽ図鑑ずかん』築地つきじ書しょ館かん、2014年ねん3月がつ10日とおか、35頁ぺーじ。ISBN 978-4-8067-1473-6。 

関連かんれん項目こうもく

• 木きの一覧いちらん
• 日本にっぽんの普通ふつう切手きって - 2015年ねん（平成へいせい27年ねん）2月がつ2日にちから日本にっぽん郵便ゆうびんが発行はっこうしている140円えん普通ふつう切手きってのデザインに採用さいようされている。