(Translated by https://www.hiragana.jp/)
ヨナ書 - Wikipedia コンテンツにスキップ

ヨナしょ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
だいさかなされたヨナ』(ギュスターヴ・ドレ

ヨナしょ』(ヨナしょ)は、旧約きゅうやく聖書せいしょ文書ぶんしょのひとつ。ユダヤきょうでは「預言よげんしゃ」に、キリスト教きりすときょうでは預言よげんしょ分類ぶんるいする。キリストきょうでいうじゅうしょう預言よげんしょの5番目ばんめ位置いちする。4しょうからなる。内容ないよう預言よげんしゃヨナかみのやりとりが中心ちゅうしんになっているが、ヨナがおおきなさかなまれるはなし有名ゆうめい著者ちょしゃ不明ふめい

このしょは、異邦いほうじん主人公しゅじんこうとしているルツおなじように、イスラエルのみん選民せんみん思想しそう特権とっけん意識いしき否定ひていしており、当時とうじのユダヤじんにはおどろくべき内容ないようであった。このてんにおいて旧約きゅうやく聖書せいしょ文書ぶんしょなか異彩いさいはなっている。

緒論しょろん[編集へんしゅう]

構成こうせい[編集へんしゅう]

構成こうせいは、おおきくけて2かれている。前半ぜんはん(1~2しょう)は、ヨナ自身じしんあらための物語ものがたりえがき、後半こうはん(3~4しょう)は、ヨナの宣教せんきょうによってニネベの人々ひとびとあらためたことと、そのにちだんえがかれている。

主人公しゅじんこう[編集へんしゅう]

旧約きゅうやく聖書せいしょれつおう14しょう25せつによると、ヨナしょ主人公しゅじんこうであるアミタイのヨナは、預言よげんしゃとして、(周囲しゅうい国々くにぐにからの圧迫あっぱくり、それによって)イスラエルの領土りょうど回復かいふくすることを預言よげんしている[1]あいだもなく、イスラエルおうヤロブアム2せい統治とうちで、イスラエルは実際じっさい失地しっち回復かいふくしている。

主題しゅだい[編集へんしゅう]

ヨナしょ主題しゅだいは3つある。宣教せんきょうしゃとしてかみ指示しじしたがわなかったことと、ニネヴェ人々ひとびとあらためたことにたいして不平ふへい不満ふまんったことにたいするヨナのあらため (=かみつかえるものとしてのかたただ) と、かみ異邦いほうじんでさえもすくおうとしておられる (=間違まちがった選民せんみん思想しそうただし、異邦いほうじんたいする偏見へんけんてる。かみつかえるものとしてのかんがかたただ) である。

神学しんがく[編集へんしゅう]

神学しんがくてきには選民せんみん思想しそう否定ひていそとに、「かみは、1ったこと(ニネヴェをほろぼす)はかなら実行じっこうする・実現じつげんする」という信仰しんこうかみ不変ふへんせい神学しんがく)にたいして、「かみは、一旦いったんったこと、めたことでも、かんがなおす、変更へんこうする」という信仰しんこうかみ可変かへんせい神学しんがく)が基盤きばんにあるとおもわれる。

成立せいりつ年代ねんだい[編集へんしゅう]

『ヨナしょ』がいつかれたのか正確せいかく年代ねんだい特定とくていすることはむずかしい。伝統でんとうてきには、預言よげんしゃヨナが実際じっさい活動かつどうした紀元前きげんぜん8世紀せいき前半ぜんはんかんがえられてきた。ニネベのあらためについてかたっていることから、どんなにおそくとも、紀元前きげんぜん612ねんニネヴェ陥落かんらくアッシリア滅亡めつぼう)のまえであることは間違まちがいない[2]。また、ニネヴェがあらためたためにほろぼされなかったという内容ないようから、ニネヴェ陥落かんらく直前ちょくぜんとはかんがえにくいことから、おそくとも、紀元前きげんぜん7世紀せいきなかごろまでであるようにおもわれる。

物語ものがたり[編集へんしゅう]

『ヨナしょ』の主人公しゅじんこうはアミタイの預言よげんしゃヨナ(イオナ)である。ヨナは、かみから、イスラエルの敵国てきこくであるアッシリア首都しゅとニネヴェって「(ニネヴェの人々ひとびとおかあくのために)40にちほろぼされる」[3]という預言よげんつたえるよう命令めいれいされる。しかし、ヨナは敵国てきこくアッシリアにくのがいやで、ふねって反対はんたい方向ほうこうタルシシュ[4]。このため、かみふねあらし遭遇そうぐうさせた。船乗ふなのりたちはだれ責任せきにんあらしこったかくじをく。そのくじはヨナにあたったので船乗ふなのりたちはかれめると、かれ自分じぶんがヘブルじんうみりくつくられたてんかみあるじおそれていることを告白こくはくする(かみからげていたことはすではなしてあった)。ヨナは自分じぶんうみげればあらしはおさまると船乗ふなのりたちにう。最初さいしょ船乗ふなのりたちはりくにたどりこうと努力どりょくしたが、はげしいあらしのためできず、ヨナのうとおりかれ手足てあしをつかんでうみんだ。ヨナはかみ用意よういしたおおきなさかなまれ3にち3ばんぎょはらうちにいたが、かみ命令めいれいによって海岸かいがんされた。

ヨナはあらため、ニネヴェにいってかみのことばをげると、意外いがいなことに人々ひとびとはすぐにあらためた。指導しどうしゃはニネヴェの人々ひとびとあらためと断食だんじきびかけ、人々ひとびと実行じっこうしたため、かみはニネヴェの破壊はかいかんがなおして、中止ちゅうしした[5]。ヨナは、1ほろぼすとったがそれを中止ちゅうしし、イスラエルのてきであるニネヴェの人々ひとびとをゆるしたかみ寛大かんだいさに激怒げきどする[6]

ヨナがそのあんててニネヴェがどうなるかるためにそこにんでいると、そのよこひょうたんトウゴマとも)がえた。ヨナはひょうたんがかげつくよけになったのでよろこぶが、かみむしおくってひょうたんをらしてしまう。ヨナが激怒げきどして、いかりのあまりにそうだとうったえると、かみはヨナにかい、ヨナがたった1ほんのひょうたんをしんだのだから、かみが12まんにん以上いじょう人間にんげん無数むすう家畜かちくがいるニネヴェをしまないことがあろうかとさと[7]

イエスの説教せっきょうにおける引用いんよう[編集へんしゅう]

新約しんやく聖書せいしょではイエスがヨナの名前なまえ言及げんきゅうする場面ばめんがみられる。たとえばマタイによる福音ふくいんしょ12: 3916: 4)やルカによる福音ふくいんしょ11: 29)で、イエスはしるしをもとめるひとにむかって「ヨナのしるし」のほかにはなんのしるしもあたえられないとっている。キリスト教きりすときょうでは伝統でんとうてきに、ヨナがさかなはらにいた3にち3ばんとイエスがんでから復活ふっかつするまでの3日間にちかん対応たいおうするものとしてとらえてきた。そのような解釈かいしゃくから福音ふくいんしょ当該とうがい部分ぶぶんはヨナの体験たいけんみずからの復活ふっかつがたとしてイエスがかたっているというふうに理解りかいされてきている[8][9][10]

後代こうだいへの影響えいきょう[編集へんしゅう]

イスラエルのかみである「唯一ゆいいつかみ」の慈悲じひが、イスラエルのみんユダヤじん)のみならず、くに人々ひとびと異邦いほうじん)におよぶことしめす。 同時どうじに、異邦いほうじんユダヤじんニネヴェ人々ひとびと)のほうかみ意思いししたがっており、むしろ、ヨナに代表だいひょうされるユダヤじんほうかみ意思いし理解りかいできていないことしめしている。

このかんがえはのちパウロがれ、(キリスト教きりすときょうとしての)かみ意思いしは、ユダヤじんにはれられず、むしろ、異邦いほうじんれられるという認識にんしきとなり、キリストきょうはそのようひろまってった。(パウロがヨナしょ影響えいきょう直接ちょくせつけていたかどうかはうたがわしい。新約しんやく聖書せいしょ使徒しと言行げんこうろくかみによる直接的ちょくせつてき介入かいにゅうがあったことをあらわしている。)

ヨナがイエスの復活ふっかつがたとらえられたことから、正教会せいきょうかい(ビザンティン典礼てんれい)においては、はやカノンの8つのうた頌のうち、だい6うた頌中のイルモスにおいてヨナを記憶きおくする。日本にっぽんハリストス正教会せいきょうかいでは教会きょうかいスラヴロシアふう再建さいけんおんって「イオナ」と祈祷きとう書中しょちゅう記載きさいされ、どう教会きょうかい聖歌せいかでも「イオナ」とうたわれる。

プロテスタントけいのキリスト教会きょうかいとく福音ふくいん)では、ヨナしょ宣教せんきょうしゃ物語ものがたりとしてまれることがおおく、よわくてもかみ援助えんじょによって宣教せんきょうするキリストしゃ姿すがたえがいていると解釈かいしゃくされている。しん聖歌せいか488ばんでも、そのようにうたわれている。

おなばなしイスラム教いすらむきょうの『クルアーン(コーラン)』にもみられ(クルアーンだい10しょうユーヌス)、ヨナは預言よげんしゃ1人ひとりユーヌスという名前なまえになっている。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ れつおうおさむ(口語こうごやく)#14:25
  2. ^ いのちのことばしゃしん聖書せいしょ辞典じてん』「ヨナしょ」のこう
  3. ^ ヨナしょ(口語こうごやく)#3:4
  4. ^ ヨナしょ(口語こうごやく)#1:3
  5. ^ ヨナしょ(口語こうごやく)#3:5-10
  6. ^ ヨナしょ(口語こうごやく)#4:1-4
  7. ^ ヨナしょ(口語こうごやく)#4:5-11
  8. ^ "Orthodox Study Bible" (正教せいきょう聖書せいしょ註解ちゅうかい) P. 1021(2008ねん
  9. ^ 村瀬むらせ俊夫としおしん聖書せいしょ注解ちゅうかい 新約しんやくだいいちかん』129ぺーじ
  10. ^ 川島かわしま貞雄さだおちょ (1991/07)『新約しんやく聖書せいしょ注解ちゅうかいしん共同きょうどうやく (1)』91ぺーじ日本にっぽん基督教きりすときょうだん出版しゅっぱんきょく ISBN 9784818400818

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]