ヨルダン川よるだんがわ

ヨルダン川よるだんがわ נָהָר יַרְדֵּן نهر الأردن
ヨルダン川よるだんがわ
延長えんちょう	425 km
水源すいげん	ヘルモン山さん
河口かこう・合流ごうりゅう先さき	死し海うみ
流域りゅういき	流域りゅういき図ず シリア レバノン ヨルダン イスラエル パレスチナ

ヨルダン川よるだんがわ（נָהָר יַרְדֵּן Nehar ha-Yarden 、アラビア語ご: نهر الأردن‎ Nahr al-Urdunn）は、中東ちゅうとうの国際こくさい河川かせん。「下降かこうする川かわ」を意味いみする。

概要がいよう

ヘルモン山さん（標高ひょうこう2,814メートル）などの連つらなるアンチレバノン山脈さんみゃくやゴラン高原ごらんこうげん（シリア高原こうげん）などに端はしを発はっし、途中とちゅうガリラヤ湖ことなって北きたから南みなみへと流ながれ、ヤルムーク川がわ・ヤボク川がわ・アルノン川かわなどの支流しりゅうをあわせて死し海うみへと注そそぐ延長えんちょう425キロメートルの内陸ないりく河川かせんである。主しゅとしてヨルダン（ヨルダン・ハシミテ王国おうこく）とイスラエル・パレスチナ自治じち区くとの国境こっきょうになっている。また、乾燥かんそう地帯ちたいにおける貴重きちょうな水みず資源しげんとなっている。

旧約きゅうやく聖書せいしょにおけるヨルダン川よるだんがわ

旧約きゅうやく聖書せいしょでは、ヨルダンは広大こうだいな平原へいげん（「キッカル・ハ・ヤルデン」）の豊饒ほうじょうの源みなもとであり、「主おもの園えん」（創世そうせい記き13章しょう10節せつ）のように水みずが張はられていると言いわれている。その他たに聖書せいしょには、ヨルダン川よるだんがわに関かんする定型ていけい的てきな記述きじゅつはない。

ヤコブはハランからの帰途きと、ヨルダン川がわと支流しりゅうのヤボク川がわ（現代げんだいのアル・ザルカ）を渡わたった（創世そうせい記き32章しょう11節せつ、32章しょう23-24節せつ）。また、東ひがしに定住ていじゅうした「2部族ぶぞくと半はん部族ぶぞく」（民みん数すう記き34章しょう15節せつ）と、ヨシュアに率ひきいられて西にしに定住ていじゅうした「9部族ぶぞくとマナセの半はん部族ぶぞく」（ヨシュア記き13章しょう7節せつ、以下いか同様どうよう）の境界きょうかい線せんとしても記しるされている。

エリコの対岸たいがんは「エリコのヨルダン」と呼よばれた（民みん数すう記き34章しょう15節せつ; 35章しょう1節せつ）。ヨルダン川よるだんがわにはいくつもの浅瀬あさせがあり、その一ひとつはエフタによって多おおくのエフライム人ひとが殺ころされた場所ばしょとして有名ゆうめいである（士し師し記き12章しょう5-6節せつ）。ギデオンがミデヤン人じんを待まち伏ぶせた（士し師し記き7章しょう24節せつ）ベト・バラ付近ふきんの浅瀬あさせと同おなじだと思おもわれる。ヨルダン川よるだんがわの平野へいや、サコトとザルタンの間あいだには、ソロモンが真鍮しんちゅうを鋳造ちゅうぞうした粘土ねんど地ちがある（列れつ王おう記き上じょう7章しょう46節せつ）。列れつ王おう記き下か6章しょう1-4節せつでは、ヨルダン川よるだんがわ流域りゅういきは森林地帯しんりんちたいとして描えがかれている。聖書せいしょ注解ちゅうかい者しゃアルバート・バーンズは、「パレスチナのほとんどの地域ちいきで樹木じゅもくは稀まれであったが、ヨルダン渓谷けいこくでは豊富ほうふであった」と示唆しさした。

聖書せいしょの歴史れきしにおいて、ヨルダンはいくつかの奇跡きせきの舞台ぶたいとして登場とうじょうし、最初さいしょの奇跡きせきは、エリコ近ちかくのヨルダン川よるだんがわをヨシュア率ひきいるイスラエルの民みんが渡わたったときに起おこった（ヨシュア記き3章しょう15-17節せつ）。その後ご、ヨルダン川よるだんがわの東ひがしに定住ていじゅうした2部族ぶぞくと半はん部族ぶぞくは、他たの部族ぶぞくとの間あいだの「証人しょうにん」として、ヨルダン川よるだんがわのほとりに大おおきな祭壇さいだんを築きずいた（ヨシュア記き22章しょう10節せつ、22章しょう26節せつ他た）。エリヤの外套がいとうに打うたれたヨルダン川よるだんがわは二ふたつに割われ、エリヤとエリシャはこの乾かわいた土地とちを渡わたった（列れつ王おう記き下か2章しょう8節せつ、2章しょう14節せつ）。預言よげん者しゃであり不思議ふしぎな働はたらきをするエリシャは、ヨルダン川よるだんがわで二ふたつの奇跡きせきを行おこなった。ナアマンにその水みずを浴あびせ、ハンセン病はんせんびょうを癒いやし（列れつ王おう記き下か5章しょう14節せつ）、「預言よげん者しゃの子こら」の一人ひとりがなくした斧おのの頭あたまを、木片もくへんを水みずに投なげ入いれて浮うかばせた（列れつ王おう記き下か6章しょう6節せつ）。

ヨム・ハアリヤ（アリヤの日ひ、ヘブライ語ご：יום העליה）は、旧約きゅうやく聖書せいしょ『ヨシュア記き』に記しるされているように、イスラエルの民みんが契約けいやくの箱はこを携たずさえてヨルダン川よるだんがわを渡わたり、イスラエルの地ちに入はいったことを記念きねんして、毎年まいとしヘブライのニサン月がつ10日とおかに祝いわわれるイスラエルの祝日しゅくじつである。

新約しんやく聖書せいしょにおけるヨルダン川よるだんがわ

新約しんやく聖書せいしょによれば、洗礼せんれい者しゃヨハネがイエス・キリストに洗礼せんれいを授さづけたのがヨルダン川よるだんがわのベタニアであった。

洗礼せんれい者しゃヨハネはヨルダン川よるだんがわ周辺しゅうへんのすべての地域ちいきで、天てんの御国みくにが近ちかづいたこと（歴代れきだい誌上しじょう17章しょう11節せつ、イザヤ書しょ9章しょう7節せつに示しめされる永遠えいえんに続つづく神かみの王国おうこく、メシアの到来とうらいの預言よげん）、また、罪つみの悔くい改あらためによる神かみの救すくいを宣せんべ伝つたえた。この罪つみの告白こくはくの際さい、清きよめの洗礼せんれいを行おこなっていた場所ばしょがヨルダン川よるだんがわである。

イエス・キリストは洗礼せんれい者しゃヨハネが「ヨルダン川よるだんがわの向むこうのベタニア」（ベタバラとも）で洗礼せんれいを授さづけていた際さいに現あらわれ、洗礼せんれいを受うけた翌日よくじつガリラヤへおもむいた。

ヨルダン川よるだんがわを名指なざししたメシアに関かんするイザヤの預言よげん（イザヤ書しょ9章しょう1-2節せつ）は、マタイの福音ふくいん書しょ4章しょう15節せつにも記しるされている。

新約しんやく聖書せいしょには、イエス・キリストが宣教せんきょう中ちゅうにヨルダン川よるだんがわを渡わたったこと（マタイの福音ふくいん書しょ19章しょう1節せつ、マルコの福音ふくいん書しょ10章しょう1節せつ）や、信徒しんとたちがヨルダンを渡わたってイエスの説教せっきょうを聞きき、病やまいを癒いやされたこと（マタイの福音ふくいん書しょ4章しょう25節せつ、マルコの福音ふくいん書しょ3章しょう7-8節せつ）が何なん度ども記しるされている。敵てきがイエスを捕とらえようとしたとき、イエスはヨハネが最初さいしょに洗礼せんれいを授さづけた場所ばしょの川かわに避難ひなんした（ヨハネの福音ふくいん書しょ10章しょう39-40節せつ）。

学者がくしゃたちは、東側ひがしがわのアル＝マグタスと呼よばれる場所ばしょが、長ながい間あいだイエスの洗礼せんれいの場所ばしょ、巡礼じゅんれいの場所ばしょであると結論けつろんづけた。そのため、アル＝マグタスはユネスコの世界せかい遺産いさんに選えらばれ、2015年ねんに登録とうろくされている。

パレスチナ問題もんだい

詳細しょうさいは「ヨルダン川よるだんがわ西岸せいがん地区ちく」および「パレスチナ問題もんだい」を参照さんしょう

ヨルダン川よるだんがわ西岸せいがん地区ちくにはユダヤ人じん入植にゅうしょく地ちがあり、イスラエル軍ぐんの行政ぎょうせい権けん・警察けいさつ権けんがおよぶ地区ちく、パレスチナ自治じち政府せいふの支配しはいがおよぶ地区ちくが錯綜さくそうし、パレスチナ問題もんだいとして取とり上あげられることが多おおい。中東ちゅうとう問題もんだいで単たんに「東岸とうがん」・「西岸せいがん」と称しょうする場合ばあい、この川かわの東岸とうがん・西岸せいがんを指さしていうことが多おおい。

ジョーダン川かわ

英国えいこく、北米ほくべい、豪州ごうしゅうの各地かくちにあるジョーダン川かわ（英語えいご: Jordan River, River Jordan）は、この川かわにちなんで名なづけられたものである。

支流しりゅう

下流かりゅうより記載きさい

• アルノン川かわ
• ザルカ川がわ（ヤボク川がわ）
• ヤルムーク川がわ

関連かんれん項目こうもく

• ヨルダン川よるだんがわ西岸せいがん地区ちく
• イエスの洗礼せんれい
• 洗礼せんれい者しゃヨハネ
• エジプトのマリア - 伝承でんしょうの舞台ぶたいがヨルダン川よるだんがわである。
• ヨルダン座ざ
• ジョーダン、ジョルダン - ヨルダン川がわにちなむ姓せい。