ヤコブ (旧約きゅうやく聖書せいしょ)

天使てんしと格闘かくとうするヤコブ。

ヤコブ（羅ら: Jacob / ヘブライ語ご: יעקב（ヤアコーブ）/アラビア語ご:يعقوب（ヤアクーブ））は、旧約きゅうやく聖書せいしょの創世そうせい記きに登場とうじょうするヘブライ人じんの族長ぞくちょう。別名べつめいをイスラエルといい、イスラエルの民みんすなわちユダヤ人じんはみなヤコブの子孫しそんを称しょうする。

聖書せいしょにおけるヤコブ

ヤコブの梯子はしご

『創世そうせい記き』25章しょうによると、父ちちはイサク（イツハク）、母はははリベカ、祖父そふは太ふとし祖そアブラハム。

ヤコブは双子ふたごの兄あにエサウを出だし抜ぬいて長子ちょうしの祝福しゅくふくを得えたため、兄あにから命いのちを狙ねらわれることになって逃亡とうぼうする。逃亡とうぼうの途上とじょう、天国てんごくに上のぼる階段かいだんの夢ゆめ（ヤコブの梯子はしご）を見みて、自分じぶんの子孫しそんが偉大いだいな民族みんぞくになるという神かみの約束やくそくを受うける。ハランにすむ伯父おじラバンのもとに身みを寄よせ、やがて財産ざいさんを築きずいて独立どくりつする。

兄あにエサウとの和解わかいを志こころざし、会あいに行いく途中とちゅう、ヤボク川がわの渡わたし（後のちに彼かれがペヌエルと名付なづけた場所ばしょ）で神かみと格闘かくとうし、勝利しょうりしたことから神かみの勝者しょうしゃを意味いみする「イスラエル」（「イシャラー（勝かつ者もの）」「エル（神かみ）」の複ふく合名ごうめい詞し）の名なを与あたえられる。これが後こうのイスラエルの国名こくめいの由来ゆらいとなった。

レア、ラケル、ビルハ、ジルパという4人にんの妻つまとの間あいだに娘むすめと12人にんの息子むすこをもうけた。その息子むすこたちがイスラエル十じゅう二に部族ぶぞくの祖そとなったとされている。晩年ばんねん、寵愛ちょうあいした息子むすこのヨセフが行方ゆくえ不明ふめいになって悲嘆ひたんにくれるが、数奇すうきな人生じんせいを送おくってエジプトでファラオの宰相さいしょうとなっていたヨセフとの再会さいかいを遂とげ、やがて一族いちぞくをあげてエジプトに移住いじゅうした。エジプトで生涯しょうがいを終おえたヤコブは遺言ゆいごんによって故郷こきょうカナン地方ちほうのマクペラの畑はたけの洞穴どうけつに葬ほうむられた。

ヤコブの子こら

ヤコブは4人にんの妻つまを持もち、12人にんの息子むすこと1人ひとりの娘むすめがいた。

• ラバンの娘むすめレアの子こ - ルベン、シメオン、レビ、ユダ、イッサカル、ゼブルン、一人娘ひとりむすめであるディナ
• ラケルの下女げじょビルハの子こ - ダン、ナフタリ
• レアの下女げじょジルパの子こ - ガド、アシェル
• レアの妹いもうとラケルの子こ - ヨセフ、ベニヤミン

彼かれらがイスラエル12部族ぶぞくの祖そとなったといわれるが、話はなしは少すこし複雑ふくざつである。まず、レビ族ぞくは祭司さいしの家系かけいであって継承けいしょうする土地とちを持もたないので12部族ぶぞくには入はいらない。またヨセフ族ぞくはなく、ヨセフの息子むすこエフライムとマナセを祖そとするエフライム族ぞく、マナセ族ぞくが加くわわることで十じゅう二に部族ぶぞくとなっている。このうちユダ族ぞくとベニヤミン族ぞく、レビ族ぞく以外いがいの10部族ぶぞくは北きたイスラエル王国おうこく滅亡めつぼう後ごに歴史れきしから姿すがたを消けし、「イスラエルの失うしなわれた10支族しぞく」（イスラエルの失うしなわれた10部族ぶぞく）と呼よばれることになる。即すなわち、この意味いみではユダヤ人じんとはイスラエルの子孫しそんすべて（イスラエル民族みんぞく）を指さすのではなく、厳密げんみつにはユダ族ぞく・ベニヤミン族ぞくの2支族しぞくにレビ族ぞくを加くわえた人ひとらを指さす。尤もっとも、現在げんざいはイスラエル民族みんぞく全般ぜんぱんと改宗かいしゅうユダヤ教徒きょうともユダヤ人じんに含ふくむ概念がいねんが一般いっぱんに浸透しんとうしている。

クルアーンにおけるヤコブ

イスラム教いすらむきょうの聖典せいてん『クルアーン』（コーラン）では、ヤコブすなわちヤアクーブは過去かこの預言よげん者しゃのひとりとして登場とうじょうする。

しかしクルアーンにおいてヤアクーブは、彼かれ自身じしんを主人公しゅじんこうとする物語ものがたりではなく、息子むすこのユースフ（聖書せいしょのヨセフ）に関連かんれんする物語ものがたりの中なかで言及げんきゅうされる。クルアーンではユースフの物語ものがたりは第だい12章しょう「ユースフ」で一いち章しょうを用もちいて詳くわしく述のべられており、ヨセフが兄あにたちによって捨すてられ悲嘆ひたんに暮くれるという物語ものがたりは共通きょうつうしている。ヤアクーブは愛息あいそくを失うしなった悲かなしみのあまり盲目もうもくとなったが、神かみ（アッラーフ）の与あたえた運命うんめいを耐たえ抜ぬいて神かみへの信頼しんらいを守まもった。のち、エジプトに渡わたって立身りっしんしたユースフと再会さいかいし、預言よげん者しゃであるユースフのもたらした神かみの奇蹟きせきにより視力しりょくを取とり戻もどす。

ヤアクーブの名なはムスリム（イスラム教徒きょうと）に好このまれる男性だんせい名めいのひとつである。ヤアクーブの名なをもつ代表だいひょう的てきな人物じんぶつは曖昧あいまいさ回避かいひヤアクーブを参照さんしょう。

関連かんれん項目こうもく

• マクペラの洞穴どうけつ
• ヤコブの梯子はしご - ヤコブの梯子はしご (旧約きゅうやく聖書せいしょ)
• 天使てんしとヤコブの闘たたかい

外部がいぶリンク

• ブリタニカ国際こくさい大だい百科ひゃっか事典じてん 小しょう項目こうもく事典じてん『ヤコブ』 - コトバンク