学生がくせい帽ぼう

日本にっぽんの学校がっこうで一般いっぱん的てきな形かたちの学生がくせい帽ぼう（鹿児島かごしま県立けんりつ甲南こうなん高等こうとう学校がっこうの制帽せいぼう）

学生がくせい帽ぼう（がくせいぼう）とは、学校がっこうに在籍ざいせきする児童じどう、生徒せいと、学生がくせいが被こうむる帽子ぼうしで、通常つうじょうは男子だんし用ようのものを指さす。省略形しょうりゃくけいは学帽がくぼう。その学校がっこうで定さだめられている形式けいしきを意味いみする場合ばあいには制帽せいぼうとも呼よばれる。なお、現代げんだいの小学生しょうがくせいが通学つうがくなどの際さいにかぶる黄色きいろい帽子ぼうしは、通学つうがく帽ぼうと呼よばれる。

英国えいこくの学生がくせい帽ぼう

オックスフォおっくすふぉード大学どだいがくやケンブリッジ大学けんぶりっじだいがくには大学だいがく服ふくの長ながい伝統でんとうがある。大学だいがく服ふくであるsub fuskの正装せいそうではフォーマルなガウンを着用ちゃくようした上うえで学帽がくぼうを被こうむる。入学にゅうがく式しき、学位がくい記き授与じゅよ式しき、フォーマル・ホール（晩ばんさん会かい）などで着用ちゃくようされる。

「アカデミックドレス」を参照さんしょう

日本にっぽんの学生がくせい帽ぼう

歴史れきし

モルタルボード型がたの角帽かくぼう。レンガ職人しょくにんがモルタルを載のせる板いたに似にていることに由来ゆらい。

東京とうきょう帝国ていこく大学だいがく在学ざいがく時代じだいの生田長江いくたちょうこう。帝みかど大だいが制定せいていした角帽かくぼうを被こうむっている。

日本にっぽん初はつの学生がくせい帽ぼうの例れいとしては、開成かいせい学校がっこうが1873年ねん（明治めいじ6年ねん）に制定せいていしたものが挙あげられる。大学だいがくの角帽かくぼう（モルタルボード型がた）を最初さいしょに着用ちゃくようして都内とないを闊歩かっぽしたのは、1883年ねん（明治めいじ16年ねん）に米国べいこく式しきカレッジとして設立せつりつされた立教大りっきょうだい学校がっこうの学生がくせいといわれる。また1886年ねん（明治めいじ19年ねん）に東京大学とうきょうだいがくが帝国ていこく大学だいがくに改組かいそされた際さい、制服せいふくとともに角帽かくぼうが公式こうしきな制帽せいぼうとして制定せいていされたといわれる。もっとも明治めいじ時代じだい前期ぜんきは、学校がっこう教育きょういく制度せいどの試行錯誤しこうさくごが続つづいており、その過程かていで様々さまざまな制服せいふく・制帽せいぼうが現あらわれた。東京とうきょう美術びじゅつ学校がっこうでは1889年ねんに、奈良なら時代じだいの役人やくにんの服ふく制せいを参考さんこうにしたという、闕腋袍ほうと冠かんむりよりなる復古ふっこ主義しゅぎ的てきな服装ふくそうが考案こうあんされ、工こう部ぶ大だい学校がっこうでは、船底ふなそこ形がたで庇ひさしのない、グレンガリー帽ぼうと呼よばれるスコットランド発祥はっしょうの帽子ぼうしが採用さいようされた。

洋服ようふくが高価こうかだった近代きんだい初期しょきには制帽せいぼうを制服せいふくより先さきに定さだめる学校がっこうが多おおく、生徒せいとの格好かっこうは、着物きものと袴はかま姿すがたに洋式ようしきの学生がくせい帽ぼうを合あわせたものが多おおかったが、近代きんだい化かの進展しんてんとともに洋服ようふくが普及ふきゅうすると、学生がくせい帽ぼうと学生がくせい服ふくは学生がくせい・生徒せいとの象徴しょうちょうとして定着ていちゃくしていった。

なお、旧制きゅうせいの高等こうとう教育きょういく機関きかんでは、旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこう・大学だいがく予よ科かが2条じょうまたは3条じょうの白線はくせんを巻まいた丸まる帽ぼう、大学だいがく本科ほんか（学部がくぶ）・大学だいがく専せん門部かとべ・旧制きゅうせい医学いがく専門せんもん学校がっこうが角帽かくぼう、旧制きゅうせい専門せんもん学校がっこう・一部いちぶの私立しりつ大学だいがく予よ科かが黒くろ蛇へび腹巻はらまき丸まる帽ぼうをよく用もちいていた（法令ほうれいなどで決きめられていた訳わけではなく、各校かくこうの規則きそくで決きまっていたが、概おおむね以上いじょうのように分わかれていた）。

大正たいしょうから昭和しょうわ初期しょきにかけては、成城せいじょう高等こうとう学校がっこうや東京とうきょう高等こうとう工芸こうげい学校がっこう、昭和しょうわ医学いがく専門せんもん学校がっこうのようにお釜がま帽ぼうやソフト帽そふとぼうを制帽せいぼうに指定していした学校がっこうも登場とうじょうしたが、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんや太平洋戦争たいへいようせんそうの激化げきかにより物資ぶっしの統制とうせいが厳きびしくなると、男子だんし学生がくせい・生徒せいとの服装ふくそうは国民こくみん服ふくに戦闘帽せんとうぼうというスタイルが終戦しゅうせんまで続つづいた。戦後せんご、経済けいざいが復興ふっこうすると学生がくせい服ふくや学生がくせい帽ぼうも再ふたたび普及ふきゅうしだし、小学校しょうがっこうから大学だいがくまで広ひろく着用ちゃくようされていたが、社会しゃかい人じんも含ふくめた帽子ぼうし着用ちゃくようの習慣しゅうかんが廃すたれるに伴ともない、校則こうそく等とうによる定さだめのない学校がっこう、特とくに大学だいがくにおいては昭和しょうわ40年代ねんだいごろから殆ほとんど着用ちゃくようされなくなった。また、小学校しょうがっこうでは通学つうがく帽ぼうが広ひろまったこと、高等こうとう学校がっこうや中学校ちゅうがっこうにおいては生徒せいとの頭髪とうはつや制服せいふくが自由じゆう化かされていく中なかで徐々じょじょに廃すたれていったことなどの要因よういんが重かさなり、現在げんざいでは通学つうがくの際さいに着き帽ぼうを義務付ぎむづける（＝制定せいていされている）学校がっこうは全国ぜんこく的てきにもごく少数しょうすうのみとなっている。1970年ねん、消費しょうひ者しゃ物価ぶっか指数しすうの対象たいしょう品目ひんもくから除外じょがいされた。

形状けいじょう・種類しゅるい

日本にっぽんの学生がくせい帽ぼうは、革かわまたはビニール製せいのつばと顎あご紐ひも（あごひも）を設もうけ、前面ぜんめんには校章こうしょうを打うち出だした帽章ぼうしょうを付つける形かたちが一般いっぱん的てきである。大別たいべつして、天井てんじょうの形かたちが丸まるい丸まる帽ぼうと、四角形しかっけいをなす角帽かくぼうがある。素材そざいは黒くろのラシャ地ちが多おおいが、少数しょうすうながら例外れいがいもある。夏季かきには白しろの覆おおい布ぬのを被かぶせる場合ばあいもある。

丸まる帽ぼう

小学生しょうがくせいから高校生こうこうせいまでの間あいだで広ひろく着用ちゃくようされたタイプである。天井てんじょうの縁えんを平滑へいかつに仕上しあげた一いち高だか型かたや、逆ぎゃくに波打なみうたせた形かたちにする三高さんこう型かたなどのバリエーションが存在そんざいする。慶應義塾けいおうぎじゅくでは、詰襟つめえり制服せいふくを指定していする学校がっこう（普通ふつう部ぶ、日吉ひよし高校こうこう、志木しき高校こうこう、大学だいがく）に、塾じゅく帽ぼうと呼よばれる独自どくじの丸まる帽ぼうを合あわせて定さだめている。

角帽かくぼう

早稲田大学わせだだいがくの角帽かくぼう（1904年ねん制定せいてい）

1883年ねん（明治めいじ16年ねん）にアメリカ式しきカレッジとして東京とうきょう・築地つきじに設立せつりつされた立教大りっきょうだい学校がっこう（現げん・立教大学りっきょうだいがく）の学生がくせいが、最初さいしょに角帽かくぼう（モルタルボード型がた）を着用ちゃくようしたとされる。大学だいがく帽ぼうの頂いただきには赤あかと黒くろの房ぼうがあり、学生がくせいたちはそれをたらして意気揚々いきようようと都大路みやこおおじを闊歩かっぽしていたという。制服せいふくは金きむボタンがついた制服せいふくであった。 1884年ねん（明治めいじ17年ねん）10月がつには、東京大学とうきょうだいがくの学生がくせいだった山口やまぐち鋭するど之これ助すけと和田わだ義よし睦あつしが学生がくせい帽ぼうとして大学だいがくに提案ていあんし、当時とうじの総長そうちょう加藤かとう弘之ひろゆきから許可きょかを得えて製作せいさく、数すう人にんの有志ゆうし学生がくせいが着用ちゃくようした。それが、1886年ねん（明治めいじ19年ねん）4月がつ28日にちに帝国ていこく大学だいがく令れいにより東京大学とうきょうだいがくが帝国ていこく大学だいがくと改称かいしょうされたとき、公式こうしきの制帽せいぼうとして採用さいようされている。頂上ちょうじょうが四角しかくであるところからこの名ながつけられ、角帽かくぼうは帝国ていこく大学生だいがくせいの代名詞だいめいしとなった。

角帽かくぼうの4つの角かくは、哲学てつがく・法学ほうがく・天文学てんもんがく・薬学やくがくを表あらわしている。東京大学とうきょうだいがくから全国ぜんこくの大学だいがくに広ひろまった結果けっか、一般いっぱんに大学生だいがくせいの着用ちゃくようするものとされ、転てんじて大学生だいがくせいを指さす語かたりとしても使つかわれた。東京とうきょう大学だいがくで定さだめられた規格きかくは帝みかど大型おおがたの名なで呼よばれ、他た大学だいがくの角帽かくぼうもこれに準じゅんじた形かたちが多おおい。一方いっぽう早稲田大学わせだだいがく・同志社大学どうししゃだいがくで用もちいられる角帽かくぼうは、生地きじの裁断さいだんや縫製ほうせいが帝みかど大型おおがたと違ちがい、仕上しあがりは四角形しかっけいの角かくがより鋭するどく、天井てんじょうが平たいらになることから、座布団ざぶとん帽ぼうのあだ名なが付つく。

装飾そうしょく

帽子ぼうしの天井てんじょうの縁えんを波打なみうたせたり、腰こしに白線はくせんや蛇腹じゃばら織お布ぬのを巻まいたりするなどの、学校がっこう・帽子ぼうし店てん・地域ちいきごとの違ちがいが数多かずおおくある。例たとえば熊本くまもと県立けんりつ済々黌せいせいこう高等こうとう学校がっこうの制帽せいぼうの腰こしには、黄色おうしょくの線せんが1本ほん入はいる。

学生がくせい文化ぶんかとの関かかわり

長期間ちょうきかんの使用しようを経へると、当然とうぜんながら帽子ぼうしも服ふくのように生地きじが擦すり切きれ、ほころびが出でて、形かたちが崩くずれていくが、これを特とくに新調しんちょうもせず、ぼろぼろになった制服せいふくと共ともに着き続つづける慣習かんしゅうが旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこうの学生がくせいを中心ちゅうしんにして行おこなわれた。バンカラまたは弊衣破帽へいいはぼうとも呼よばれるこの行為こういは、質実しつじつ剛健ごうけんなど、身みなりに執着しゅうちゃくせずに学業がくぎょうその他たに没頭ぼっとうする学生がくせいの心意気こころいきを積極せっきょく的てきにアピールするものでもあった。バンカラの風潮ふうちょうが高たかまると、時ときに新品しんぴんの学生がくせい帽ぼうも年季ねんきの入はいったものに見みせるよう、意図いと的てきに傷いためつけることが一部いちぶの学生がくせいの間あいだで行おこなわれた。正当せいとうな行為こういではないため、傷いため加工かこうの方法ほうほうは伝承でんしょうによるところが多おおいが、順序じゅんじょの例れいを以下いかに挙あげる。

1. 手てで揉もんだり折おり畳たたんだりして、帽子ぼうしから張はりや堅かたさを取とり去さって柔やわらかくする。
2. ラシャ地ちの表面ひょうめんをガスコンロの火ひであぶったり、アイロンで押おさえつけたりして表面ひょうめんの毛羽けば立だちをなくす。
3. 次つぎの工程こうていの下しも準備じゅんびとして、卵白らんぱくや蝋ろうなどを表面ひょうめんに隈くまなく塗ぬるか、油あぶらで揚あげたり炒いためたりする。
4. 上記じょうきの作業さぎょう後ご、帽子ぼうしが乾かわいたら靴墨くつづみを数すう回かい重かさね塗ぬりし、「汚よごれ」を付つけていく。原型げんけいを留とめなくなるまで帽子ぼうし全体ぜんたいに汚よごれが馴染なじむとよいとされる。

• 以上いじょうの手順てじゅんの他ほかに、つばを折おり曲まげたり、生地きじへの切きり込こみや穴あな開あけ加工かこうが施ほどこされたりする。

キャラクター

学生がくせい帽ぼうと関係かんけいが深ふかいと考かんがえられる、漫画まんがやアニメーションのキャラクター。

• フクちゃん - 早稲田大学わせだだいがくのキャラクターでもあり、東京とうきょう六ろく大学だいがく野球やきゅうの早慶そうけい戦せん時ときには早大そうだい応援おうえん席せきのデコレーションに登場とうじょうした。
• 磯野いそのカツオ（サザエさん） - 登とう下校げこう時じに学生がくせい帽ぼうを被こうむっているシーンが多おおい。連載れんさい開始かいし当時とうじの日本にっぽんでは一般いっぱん的てきな小学生しょうがくせいの姿すがたである。
• 岩いわ鬼おに正美まさみ（ドカベン） - 野球やきゅうの試合しあいでも、ユニフォームたる野球やきゅう部ぶのベースボールキャップを使つかわず、学生がくせい帽ぼうのままである。
• 九条くじょう歩あゆみ（ヌードファイター柚ゆず希まれ） - 下克上げこくじょう高校こうこう1年生ねんせい。普段ふだんから着用ちゃくようしている。
• 空そら条じょう承うけたまわ太郎たろう（ジョジョの奇妙きみょうな冒険ぼうけん） - 常つねに帽子ぼうしと厚手あつでのコート（Part3においては学まなべラン）を身みに着つけている。帽子ぼうしは滅多めったなことが無ない限かぎり脱ぬがず、全ぜんシリーズ中ちゅうで3度どしか脱ぬいだ事ことがない。
• 高校生こうこうせい（ドラえもん） - “その他た大勢おおぜい”の一人ひとり。藤子とうこマンガでは高校生こうこうせいは必かならず詰襟つめえり学生がくせい服ふく姿すがたで登場とうじょうする。

脚注きゃくちゅう

注釈ちゅうしゃく

出典しゅってん

参考さんこう文献ぶんけん

• 太田おおた臨一郎ろう『日本にっぽん服ふく制せい史し』文化出版局ぶんかしゅっぱんきょく〈上うえ・中なか・下した〉、1989年ねん。ISBN 9784579501366。 NCID BN03407746。全国ぜんこく書誌しょし番号ばんごう:89028168。 

関連かんれん項目こうもく

• 日本にっぽんの学校がっこう制服せいふく
• 学生がくせい服ふく
• 通学つうがく帽ぼう
• 紅白こうはく帽ぼう
• 帽子ぼうし
• 制帽せいぼう
• アカデミックドレス#帽子ぼうし（モルタルボード、学士がくし帽ぼう）