東京大学とうきょうだいがく (1877-1886)

東京大学とうきょうだいがく（とうきょうだいがく）は、明治めいじ政府せいふによって1877年ねん（明治めいじ10年ねん）4月がつに設立せつりつされた日本にっぽん最初さいしょの（官立かんりつ）大学だいがくであり、1886年ねん3月がつに帝国ていこく大学だいがく（のち東京とうきょう帝国ていこく大学だいがくと改称かいしょう）に改編かいへんされるまで存続そんぞくした。この時期じきの「東京大学とうきょうだいがく」を、現在げんざいの新制しんせい東京大学とうきょうだいがくと区別くべつするため、特とくに「旧きゅう東京大学とうきょうだいがく」と称しょうする場合ばあいもある。

加藤かとう弘之ひろゆき。東京大学とうきょうだいがく法理ほうり文ぶん三さん学部がくぶ綜理、ついで初代しょだい東京とうきょう大学だいがく「総理そうり」。事実じじつ上じょうの初代しょだい東大とうだい学長がくちょうである。

池田いけだ謙けん斎とき。東京大学とうきょうだいがく医学部いがくぶ綜理。加藤かとうと並ならぶもう一人ひとりの「初代しょだい東大とうだい学長がくちょう」。

概要がいよう

開成かいせい学校がっこうと東京とうきょう医い学校がっこうが統合とうごうして発足ほっそくした、当時とうじ日本にっぽんで唯一ゆいいつの「大学だいがく」であった。組織そしきは、専門せんもん課程かていとして修業しゅうぎょう年限ねんげん4年ねんの法理ほうり文ぶん医い4学部がくぶ（のち工芸こうげい学部がくぶが新設しんせつされ5学部がくぶ）、および学部がくぶ進学しんがく課程かていたる予備よび門もん（修業しゅうぎょう年限ねんげん4年ねん）からなり、のちに今日きょうの大学院だいがくいんに相当そうとうする学士がくし研究けんきゅう科かも設置せっちされた。

当初とうしょは上記じょうき2学校がっこうの連合体れんごうたいに過すぎなかったが、1881年ねん以降いこう全学ぜんがく部ぶを統括とうかつする「総理そうり」職しょく（今日きょうの学長がくちょうに相当そうとう）が新設しんせつされた前後ぜんごから組織そしき的てき統合とうごうが進すすみ、4学部がくぶの校こう地ちも現在げんざいの東大とうだい本郷ほんごうキャンパスへと統合とうごうされた。学部がくぶ制せい・評議ひょうぎ会かい（当時とうじは「諮詢しじゅん会かい」）など、東大とうだいのみならず現在げんざいの日本にっぽんの大学だいがく組織そしきの原型げんけいがこの時期じきに形作かたちづくられた一方いっぽうで、日本人にっぽんじん教官きょうかんの養成ようせいが未いまだ進すすんでいなかったため、主おもだった教官きょうかんは欧米おうべい人じん教師きょうしによって賄まかなわれていた（このため予備よび門もんの授業じゅぎょうの大半たいはんは授業じゅぎょうで使用しようされる外国がいこく語ごの修得しゅうとくに費ついやされていた）。

沿革えんかく

開成かいせい学校がっこうと医い学校がっこうの統合とうごう

開成かいせい学校がっこう（1873年ねん）

東京とうきょう医い学校がっこう本館ほんかん（現げん：東京大学とうきょうだいがく総合そうごう研究けんきゅう博物館はくぶつかん小石川こいしかわ分館ぶんかん）

「東京大学とうきょうだいがく発祥はっしょうの地ち」の碑いしぶみ。かつての開成かいせい学校がっこうの所在地しょざいち、すなわち発足ほっそく当初とうしょの法理ほうり文ぶん三さん学部がくぶの所在地しょざいちに建立こんりゅうされている。

明治めいじ政府せいふが設立せつりつした2つの官立かんりつ洋よう学校がっこうの東京とうきょう開成かいせい学校がっこう（開成かいせい所しょ⇒大学南だいがくみなみ校こうの後身こうしん）および東京とうきょう医い学校がっこう（医学いがく所しょ⇒大学だいがく東ひがし校こうの後身こうしん）は、それぞれ旧ふる江戸えど幕府ばくふ以来いらいの独自どくじの歴史れきしを持もっていたが、1877年ねん4月がつ12日にちに統合とうごうされ文部省もんぶしょう管轄かんかつの官立かんりつ「東京大学とうきょうだいがく」が設立せつりつされた（現在げんざいの東京大学とうきょうだいがくはこれをもって「大学だいがく設立せつりつ」、日付ひづけを「東京大学とうきょうだいがく記念きねん日び」とし、毎年まいとしこの日ひに入学にゅうがく式しきを挙行きょこうしている）。この時点じてんで東京大学とうきょうだいがくは法ほう・理り・文ぶん・医いの4学部がくぶからなり修業しゅうぎょう年限ねんげんは4年ねんとされた。

しかしこれは直ただちに上記じょうき2学校がっこうの組織そしき的てき統合とうごうを意味いみしたのではなく、両校りょうこうは統合とうごうされてもその校こう地ちは錦にしき町まち（法理ほうり文ぶん3学部がくぶ＝旧きゅう・開成かいせい学校がっこう）と本郷ほんごう本ほん富士ふじ町まちの旧きゅう加賀かが藩はん上屋敷かみやしき跡地あとち（医学部いがくぶ＝旧きゅう・医い学校がっこう）とで離はなれており、職制しょくせいや事務じむ章程しょうていも別々べつべつに定さだめられていた。さらにかつて大だい学校がっこうとして統合とうごうする構想こうそうがあったものの、ついに実現じつげんしなかったという経緯けいいがあった。このこともあって医学部いがくぶは池田いけだ謙けん斎とき、法理ほうり文ぶん3学部がくぶは加藤かとう弘之ひろゆきと、それぞれ異ことなる「綜理」（現在げんざいの東大とうだい総長そうちょうに相当そうとう）を頂いただいており、実態じったいは2校こうの連合体れんごうたいに過すぎなかった。『東京とうきょう大学だいがく100年ねん史し』においても、1877年ねんの統合とうごうについて単たんなる名称めいしょう変更へんこうに過すぎず大学だいがく建設けんせつへの積極せっきょく的てきな方針ほうしんや抱負ほうふはみられないとしている。東京大学とうきょうだいがく時代じだいの1880年ねん以降いこう、毎年まいとし全学ぜんがく部ぶ合計ごうけいで50人にん前後ぜんこう（うち約やく半数はんすうが医学部いがくぶ）ではあるが、全ぜん学部がくぶが継続けいぞく的てきに卒業生そつぎょうせいを出だし続つづけるようになったのが、開成かいせい学校がっこう・東京とうきょう医い学校がっこう時代じだいとの最大さいだいの違ちがいである。

1881年ねんの機構きこう改革かいかくにより、同年どうねん7月がつ6日にち以降いこう、東大とうだいは初はじめて単一たんいつの「総理そうり」（初代しょだいは加藤かとう弘之ひろゆき）を持もつことになり（同時どうじに4学部がくぶに「学部がくぶ長ちょう」職しょくが新設しんせつされた）、2校こうはようやく名実めいじつともに統合とうごうされ、総合大学そうごうだいがくとしての東京大学とうきょうだいがくが実質じっしつ的てきに成立せいりつすることになった。また、神田かんだ錦にしき町まちに所在しょざいしていた法理ほうり文ぶん3学部がくぶは、東京とうきょう大学だいがく設立せつりつ以降いこう1885年ねんにかけて医学部いがくぶに隣接りんせつする本郷ほんごうの新しん校舎こうしゃに移転いてんして校こう地ちの統合とうごうが完了かんりょうし、現在げんざいの東大とうだい本郷ほんごうキャンパスの原型げんけいが形成けいせいされた。

制度せいど・組織そしきの整備せいび

まず1880年ねん（明治めいじ13年ねん）には現在げんざいの大学院だいがくいんに相当そうとうする「学士がくし研究けんきゅう科か」が初はじめて設置せっちされた。翌よく1881年ねん（明治めいじ14年ねん）には総理そうり職しょく新設しんせつに伴ともない学内がくない運営うんえいのための常設じょうせつ審議しんぎ機関きかんとして「諮詢しじゅん会かい」が設もうけられた。この諮詢しじゅん会かいは総理そうりの諮問しもん機関きかんとしての「総会そうかい」および各かく学部がくぶ長ちょうの諮問しもん機関きかんである「部会ぶかい」からなり、教授きょうじゅ・助教授じょきょうじゅ・講師こうし・予備よび門もん教諭きょうゆを会員かいいんとし学科がっか課程かてい・学位がくい・試験しけん規則きそく・学制がくせい関係かんけい規則きそくなど広範こうはんな事項じこうを審議しんぎするものとされ、今日きょうの評議ひょうぎ会かい・教授きょうじゅ会かいの先駆せんくと見みなされている。1885年ねん（明治めいじ18年ねん）には理学部りがくぶから分離ぶんりして「工芸こうげい学部がくぶ」が第だい5の学部がくぶとして新設しんせつされるなど、制度せいどの整備せいびが進すすんだ。また1880年ねん（明治めいじ13年ねん）から1883年ねん（明治めいじ16年ねん）までに、医学部いがくぶ・法学部ほうがくぶにおいて、日本語にほんご授業じゅぎょうを通つうじて専門せんもん家かの「簡易かんい速成そくせい」を目指めざす「別べつ課か」「教場きょうじょう」が設置せっちされた。既成きせいの官立かんりつ教育きょういく機関きかんの統合とうごうも進すすみ、1885年ねん（明治めいじ18年ねん）には司法省しほうしょう法ほう学校がっこうの後身こうしんたる東京とうきょう法ほう学校がっこうを法学部ほうがくぶに併合へいごうした。

教官きょうかんは洋学ようがく派はで占しめられ、特とくに上席じょうせきの教官きょうかんの大半たいはんは欧米おうべい出身しゅっしんの外国がいこく人じん教師きょうしで彼かれらの授業じゅぎょうは当然とうぜん欧米おうべい語ごで行おこなわれた。しかし法学部ほうがくぶの日本にっぽん法学ほうがく関係かんけい科目かもく、文学部ぶんがくぶの「和漢わかん古典こてん講習こうしゅう科か」などについては日本人にっぽんじん教官きょうかんが担当たんとうした。また出身しゅっしん国こくの点てんから見みると、1881年ねん（明治めいじ14年ねん）以降いこうは国くにの独逸どいつ学がく重視じゅうし方針ほうしんもあって次第しだいに英えい米べい人ひと教師きょうしに代かわり独逸どいつ人じん教師きょうしが増加ぞうかしており、さらに外国がいこく人じん教師きょうしの全体ぜんたい数すうが減少げんしょうに向むかっていった。

東大とうだい法学部ほうがくぶ成立せいりつに至いたるまでの期間きかん、フランス法ほう学習がくしゅう者しゃで特とくに成績せいせき優秀ゆうしゅうなものは司法省しほうしょう法ほう学校がっこうへ転学てんがくしたり、フランスに留学りゅうがくしたりして流出りゅうしゅつした結果けっか、法学部ほうがくぶでは一部いちぶの学科がっかを除のぞき教授きょうじゅ言語げんごを英語えいごに統一とういつするなどしたため、イギリス法学ほうがく系けいの色いろが強つよくなり、このことが後のちに民法みんぽう典てん論争ろんそうを引ひき起おこすことになった。

大学だいがく予備よび門もん

1877年ねん4月がつの東京とうきょう大学だいがく発足ほっそくに際さいし、前身ぜんしん機関きかんの一ひとつである開成かいせい学校がっこうの「普通ふつう科か」（予よ科か）は別個べっこの中等ちゅうとう教育きょういく機関きかん「官立かんりつ東京とうきょう英語えいご学校がっこう」とまとめられ、修業しゅうぎょう年限ねんげん4年ねんの「（東京大学とうきょうだいがく）予備よび門もん」として再編さいへんされた。法理ほうり文ぶん三さん学部がくぶへの進学しんがく者しゃはこの予備よび門もんでの課程かてい履修りしゅう（すなわち教授きょうじゅ言語げんごである欧米おうべい語ごの修得しゅうとく）が義務ぎむづけられ、その組織そしきは三さん学部がくぶの管轄かんかつ下かに置おかれた。1882年ねんには医学部いがくぶの予よ科かも予備よび門もんに統合とうごうされ、予備よび門もんは全学ぜんがく共通きょうつうの予備よび課程かていへと拡充かくじゅうされた。

地方ちほうの中学校ちゅうがっこうが未み整備せいびだった当時とうじの状況じょうきょう下かでは、予備よび門もんはほとんど唯一ゆいいつの大学だいがく（この時点じてんでは東京大学とうきょうだいがくのみ）予備よび教育きょういく機関きかんとなっていたが、1885年ねんには東京大学とうきょうだいがくに統合とうごうされた先述せんじゅつの「東京とうきょう法ほう学校がっこう」予よ科か、および東京とうきょう外国がいこく語ご学校がっこう（旧きゅう外語がいご）のうち仏語ふつご科か・独語どくご科かを併合へいごうするに及およんで、東京とうきょう大学だいがくのみならず他ほかの「専門せんもん学校がっこう」（高等こうとう教育きょういく機関きかん）への予備よび教育きょういくにも進出しんしゅつすることになった。

帝国ていこく大学だいがくへの移行いこう

第だい一いち高等こうとう中学校ちゅうがっこう（旧きゅう東京とうきょう開成かいせい学校がっこうの校舎こうしゃを受うけ継つぎ、1889年ねんまで使用しようされた）

1886年ねん3月がつ1日にちの帝国ていこく大学だいがく令れい制定せいていにより、東京大学とうきょうだいがくは工こう部ぶ大だい学校がっこうを併合へいごうすると同時どうじに、5分科ぶんか大学だいがく（「学部がくぶ」の後身こうしん）および大学院だいがくいんをもつ全国ぜんこく唯一ゆいいつの「帝国ていこく大学だいがく」に改編かいへん（その後ご1897年ねん京都きょうと帝国ていこく大学だいがくの設置せっちに伴ともない「東京とうきょう帝国ていこく大学だいがく」と改称かいしょう）され、この際さい、医学いがく・法学ほうがくの「別べつ課か」および諮詢しじゅん会かいは廃止はいし、予備よび門もんを第だい一いち高等こうとう中学校ちゅうがっこうとして分離ぶんり独立どくりつ（のち第一高等学校だいちこうとうがっこうと改称かいしょう）させるなど大幅おおはばな改革かいかくがなされた。ここに東京大学とうきょうだいがくの初期しょき形態けいたいとしての旧きゅう「東京大学とうきょうだいがく」の時代じだいは終焉しゅうえんし、続つづく「（東京とうきょう）帝国ていこく大学だいがく」の時代じだいへと引ひき継つがれることになった。なお、「（東京とうきょう）帝国ていこく大学だいがく」時代じだい長ながらくの間あいだ、創立そうりつ記念きねん日びは帝国ていこく大学だいがく令れい公布こうふ日びである1886年ねん3月がつ1日にちとされた。

その後ご、東京とうきょう帝国ていこく大学だいがくは、1947年ねん（昭和しょうわ22年ねん）10月がつ、現げん名称めいしょうである「東京大学とうきょうだいがく」（ただしこの時点じてんでは旧制きゅうせい大学だいがく）に改称かいしょう、ついで1949年ねん5月31日にち、新制しんせい大学だいがくへと移行いこう、現在げんざいに至いたっている。

年表ねんぴょう

• 1877年ねん
  • 4月がつ12日にち：東京とうきょう開成かいせい学校がっこう・東京とうきょう医い学校がっこうを合併がっぺいし「東京大学とうきょうだいがく」が発足ほっそく。（明治めいじ10年ねん4月がつ12日にち文部省もんぶしょう布達ふたつ第だい2号ごう）

    法ほう・理り・医い・文ぶんの4学部がくぶが置おかれ、同時どうじに東京とうきょう開成かいせい学校がっこう普通ふつう科かと官立かんりつ東京とうきょう英語えいご学校がっこうを併合へいごうし予備よび門もんを設置せっち。

  • 4月がつ13日にち：法理ほうり文ぶん三さん学部がくぶ綜理には加藤かとう弘之ひろゆき、法文学部ほうぶんがくぶ綜理補ほに服部はっとり一三かずみ（兼けん主幹しゅかん）・濱尾はまお新しん（兼けん主幹しゅかん）、医学部いがくぶ綜理には池田いけだ謙けん斎ときが就任しゅうにん（ともに1881年ねん6月がつ15日にちまで在任ざいにん）。
  • 9月8日にち：修学しゅうがく年限ねんげんを4年ねんとして法理ほうり文ぶん三さん学部がくぶの学科がっか編成へんせいを認可にんか

    法学部ほうがくぶは従来じゅうらいの法学ほうがく科かに相当そうとうする

    理学部りがくぶは従来じゅうらいの化学かがく科か、工学科こうがっかに加くわえて、「数学すうがく物理ぶつり学がく及および星ほし学科がっか」、「生物せいぶつ学科がっか」、「地質ちしつ学がく及および採鉱さいこう学科がっか」の計けい5学科がっか

    文学部ぶんがくぶは「史学しがく哲学てつがく及および政治せいじ学科がっか」と「和漢わかん文学ぶんがく科か」の2学科がっか

• 1878年ねん12月：文部省もんぶしょうより学位がくい（学士がくし号ごう）授与じゅよ権けんを付与ふよされる。
• 1879年ねん4月がつ：東京とうきょう大学だいがく授与じゅよの学士がくし号ごうを法学ほうがく士し・理学りがく士し・文学ぶんがく士し・医学いがく士し・製薬せいやく士しとする。
• 1880年ねん
  • 4月がつ：医学部いがくぶに修業しゅうぎょう年限ねんげん3年ねんの製薬せいやく学がく教場きょうじょうを設置せっち（製薬せいやく学科がっかの前身ぜんしん）。
  • 6月がつ：法理ほうり文ぶん三さん学部がくぶ綜理に服部はっとり一三かずみが就任しゅうにん。
  • 8月がつ7日にち：法理ほうり文ぶん三さん学部がくぶに学士がくし研究けんきゅう科かを設置せっち。
  • 10月：医学部いがくぶに修業しゅうぎょう年限ねんげん3年ねん半はんの別べつ課か医学いがく教場きょうじょうを設置せっち（1886年ねん4月がつに廃止はいし）。
• 1881年ねん
  • 7月がつ6日にち：「東京大学とうきょうだいがく職制しょくせい」制定せいてい、総理そうり職しょくを置おき加藤かとう弘之ひろゆきが初代しょだい総理そうりに就任しゅうにん。
  • 1881年ねん7月がつ14日にち：学部がくぶ長ちょう職しょくを設置せっち。医学いがく部長ぶちょうに池田いけだ謙けん斎とき、法学部ほうがくぶ長ちょうに服部はっとり一三かずみ（初代しょだい予備よび門もん長ちょう兼務けんむ）、文学ぶんがく部長ぶちょうに外山とやま正一しょういち、理学部りがくぶ長ちょうに菊池きくち大麓だいろくがそれぞれ就任しゅうにん。
  • 諮詢しじゅん会かいを設置せっち。

• 1882年ねん
  • 5月：文学部ぶんがくぶに古典こてん講習こうしゅう科かを設置せっち（1888年ねん7月がつに廃止はいし）。
  • 医学部いがくぶ予よ科かを予備よび門もんに併合へいごう。
  • 12月末まつ現在げんざいの学生がくせい数すうは、法ほう48、理り82、文ぶん41、医い138、古典こてん講習こうしゅう科か36、医いの別べつ課か684、製薬せいやく70、合計ごうけい1,099。
• 1883年ねん6月がつ：法学部ほうがくぶに修業しゅうぎょう年限ねんげん3年ねんの別べつ課か法ほう学科がっかを設置せっち（1886年ねん4月がつに廃止はいし）。
• 1884年ねん
  • 10月：副ふく総理そうりを置おく。
  • 法ほう・文学部ぶんがくぶ、本郷ほんごう校こう地ちに移転いてん。
• 1885年ねん
  • 8月がつ
    • 予備よび門もんが東京大学とうきょうだいがくの管理かんりを解とかれる（翌年よくねん第だい一いち高等こうとう中学校ちゅうがっこうに改組かいそ）。
    • （官立かんりつ）東京とうきょう法ほう学校がっこうを法学部ほうがくぶ、同どう予よ科かを予備よび門もんに併合へいごう。
    • 東京とうきょう外国がいこく語ご学校がっこう仏ふつ学科がっか・独どく学科がっかを予備よび門もんに併合へいごう。
  • 9月：工芸こうげい学部がくぶ設置せっち。
  • 12月：政治せいじ学科がっか・理財りざい学科がっかを文学部ぶんがくぶから法学部ほうがくぶに移うつし法学部ほうがくぶを法政ほうせい学部がくぶと改称かいしょう。
  • 医学部いがくぶに学士がくし研究けんきゅう科かを設置せっち。
  • 理学部りがくぶ、本郷ほんごう校こう地ちに移転いてん。
• 1886年ねん3月がつ1日にち：「帝国ていこく大学だいがく令れい」公布こうふ。「東京大学とうきょうだいがくト工こう部ぶ大だい学校がっこうノ事業じぎょうヲ更正こうせいシテ、帝国ていこく大学だいがくヲ創設そうせつ」。同時どうじに予備よび門もんは第だい一いち高等こうとう中学校ちゅうがっこうとして分離ぶんり。

役職やくしょく

法理ほうり文ぶん三さん学部がくぶ綜理

• 加藤かとう弘之ひろゆき（1877年ねん4月がつ13日にち - 1881年ねん6月がつ15日にち）
• 服部はっとり一三かずみ（1880年ねん6月がつ4日にち - ）

医学部いがくぶ綜理

• 池田いけだ謙けん斎とき（1877年ねん4月がつ13日にち - 1881年ねん6月がつ15日にち）

総理そうり

• 加藤かとう弘之ひろゆき（1881年ねん7月がつ6日にち - 1886年ねん1月がつ10日とおか）
• 外山とやま正一しょういち（1881年ねん1月がつ11日にち - 3月1日にち、事務じむ取扱とりあつかい）

予備よび門もん主幹しゅかん・予備よび門もん長ちょう

• 服部はっとり一三かずみ（1877年ねん4月がつ13日にち - 1879年ねん4月がつ4日にち、1880年ねん4月がつ20日はつか - 1882年ねん2月がつ14日にち）

1881年ねん7月がつ14日にち以降いこう「予備よび門もん長ちょう」。

• 杉浦すぎうら重剛しげたけ（1882年ねん2月がつ15日にち - 1885年ねん8月がつ14日にち）

歴史れきし的てき位置いち

東京とうきょう帝国ていこく大学だいがく

帝国ていこく大学だいがく成立せいりつ以前いぜんのこの「（旧きゅう）東京大学とうきょうだいがく」の時期じきには、工こう部ぶ省しょうには工こう部ぶ大だい学校がっこう、司法省しほうしょうには司法省しほうしょう法ほう学校がっこう、開拓かいたく使しには札幌さっぽろ農のう学校がっこう、内務省ないむしょうには駒場こまば農みのり学校がっこうがあり、各かく官庁かんちょうは独自どくじに専門せんもん官僚かんりょうを養成ようせいしていた。そしてこの時期じきの東京大学とうきょうだいがくの性格せいかくとしては、教員きょういん養成ようせい所しょのような性格せいかくであり、卒業生そつぎょうせいで行政ぎょうせい官かんになる者ものはあまりおらず、多おおくが学校がっこうの教員きょういん（医い学校がっこう教員きょういんを含ふくむ）となっており、実質じっしつ的てきには「専門せんもん学校がっこう」（学制がくせい二に編へん追加ついかにより規定きていされた高等こうとう教育きょういく機関きかんであり、後年こうねんの専門せんもん学校がっこう令れい準拠じゅんきょの旧制きゅうせい専門せんもん学校がっこうとは異ことなる）に相当そうとうする機関きかんに過すぎなかった。さらに行政ぎょうせい官かんになった数少かずすくない卒業生そつぎょうせいの相当そうとう数すうが、東京とうきょう専門せんもん学校がっこうなどの反はん政府せいふ的てきと目めされる私学しがく（法律ほうりつ学校がっこう）の教員きょういんに転てんじていった（このため設立せつりつ当初とうしょの東京とうきょう専門せんもん学校がっこうには政府せいふによりさまざまな迫害はくがいが加くわえられることになった）。また各省かくしょうの専門せんもん官僚かんりょう養成ようせい学校がっこうにも優秀ゆうしゅうな学生がくせいが集あつまっており、この時代じだいの東京大学とうきょうだいがくが高等こうとう教育きょういく機関きかんの頂点ちょうてんだったわけではない。

優秀ゆうしゅうな学生がくせいがこの学校がっこうに集中しゅうちゅうするようになるのは、司法省しほうしょう法ほう学校がっこうと工こう部ぶ大だい学校がっこうを吸収きゅうしゅうし、1886年ねん、帝国ていこく大学だいがく令れいによる「国家こっかノ須要しゅよう」を目的もくてきとする帝国ていこく大学だいがくに改組かいそされた後のちである。また卒業生そつぎょうせいが就職しゅうしょく先さきとして行政ぎょうせい官かんに殺到さっとうするようになるのは、1887年ねんに官僚かんりょう任用にんよう試験しけん制度せいどが制定せいていされ帝国ていこく大学だいがく卒業生そつぎょうせいが優遇ゆうぐうされてからである。

関連かんれん文献ぶんけん

単行たんこう書しょ

• 寺崎てらさき昌男まさお『東京大学とうきょうだいがくの歴史れきし：大学だいがく制度せいどの先駆さきがけ』講談社こうだんしゃ学術がくじゅつ文庫ぶんこ、2007年ねん ISBN 9784061597990
• 天野あまの郁夫いくお『大学だいがくの誕生たんじょう（上うえ）：帝国ていこく大学だいがくの時代じだい』中公新書ちゅうこうしんしょ、2009年ねん ISBN 9784121020048
• 橘たちばな木き俊しゅん詔みことのり『東京大学とうきょうだいがく：エリート養成ようせい機関きかんの盛衰せいすい』岩波書店いわなみしょてん、2009年ねん ISBN 9784000241465

事典じてん項目こうもく

• 小林こばやし哲也てつや「東京大学とうきょうだいがく」『日本にっぽん近代きんだい教育きょういく史し事典じてん』平凡社へいぼんしゃ、1971年ねん
• 同どう「東京大学とうきょうだいがく予備よび門もん」同上どうじょう
• 寺崎てらさき昌男まさお「東京大学とうきょうだいがく諮詢しじゅん会かい」同上どうじょう
• 尾崎おざきムゲン「東京大学とうきょうだいがく」『日本にっぽん近きん現代げんだい史し辞典じてん』東洋経済新報社とうようけいざいしんぽうしゃ、1979年ねん
• 宮崎みやざきふみ子こ「東京とうきょう帝国ていこく大学だいがく」『洋学ようがく史し事典じてん』雄松おまつ堂どう出版しゅっぱん、1984年ねん
• 鳥海とりうみ靖やすし「東京大学とうきょうだいがく」『国史こくし大だい辞典じてん』第だい10巻かん 吉川弘文館よしかわこうぶんかん、1989年ねん
• 寺崎てらさき昌男まさお「東京大学とうきょうだいがく」『日本にっぽん史し大だい事典じてん』第だい5巻かん 平凡社へいぼんしゃ、1993年ねん
• 同どう「東京大学とうきょうだいがく」『日本にっぽん歴史れきし大だい事典じてん』第だい3巻かん 小学館しょうがくかん、2001年ねん

関連かんれん項目こうもく

• 国家こっか学会がっかい
• アーネスト・フェノロサ - エドワード・S・モース - グイド・フルベッキ - エルヴィン・フォン・ベルツ：旧きゅう東京大学とうきょうだいがく時代じだいの外国がいこく人じん教師きょうし。
• 大久おおひさ保利ほり謙けん：『東京とうきょう帝国ていこく大学だいがく五ご十じゅう年ねん史し』の編纂へんさんに関与かんよし、初期しょきの東京大学とうきょうだいがくの歴史れきしを初はじめて実証じっしょう的てきに研究けんきゅうした。

外部がいぶリンク

• 東京大学とうきょうだいがく百ひゃく年ねん史し
• 発祥はっしょうの地ちコレクション「東京大学とうきょうだいがく発祥はっしょうの地ち」