安田やすだ講堂こうどう

東京大学とうきょうだいがく大だい講堂こうどう
情報じょうほう
旧きゅう名称めいしょう	東京とうきょう帝国ていこく大学だいがく大だい講堂こうどう
用途ようと	講堂こうどう
設計せっけい者しゃ	内田うちだ祥三しょうぞう、岸田きしだ日出刀ひでと
施工しこう	清水しみず組ぐみ（現げん清水建設しみずけんせつ）
延のべ床ゆか面積めんせき	6,990 m² ※8,360 平方へいほうヤード、2,115坪つぼ
階数かいすう	地下ちか1階かい、地上ちじょう7階かい
高たかさ	39.7 m (130.2 ft)
着工ちゃっこう	1921年ねん（大正たいしょう10年ねん）
竣工しゅんこう	1925年ねん（大正たいしょう14年ねん）7月がつ6日にち
改築かいちく	1988年ねん（昭和しょうわ63年ねん） - 1994年ねん（平成へいせい6年ねん） 2012年ねん（平成へいせい24年ねん） - 2014年ねん（平成へいせい26年ねん）
所在地しょざいち	東京とうきょう都と文京ぶんきょう区く本郷ほんごう7丁目ちょうめ3-1
座標ざひょう	北緯ほくい35度ど42分ふん48秒びょう 東経とうけい139度ど45分ふん43秒びょう
文化財ぶんかざい	国くにの登録とうろく有形ゆうけい文化財ぶんかざい
指定してい・登録とうろく等とう日び	1996年ねん12月がつ20日はつか登録とうろく

東京大学とうきょうだいがく大だい講堂こうどう（とうきょうだいがくだいこうどう）、通称つうしょうで安田やすだ講堂こうどう（やすだこうどう）は、日本にっぽんの東京大学とうきょうだいがく本郷ほんごう地区ちくキャンパスにある講堂こうどうである。7,000平米へいべい弱じゃくの面積めんせきで、収容しゅうよう人数にんずうは1,144人にん（3階かい席せき・728席せき / 4階かい席せき・416席せき）。

沿革えんかく

安田やすだ財閥ざいばつの創始そうし者しゃ・安田やすだ善次郎ぜんじろうの匿名とくめいを条件じょうけんでの寄付きふにより建設けんせつされたが、安田やすだの死後しごに寄付きふを行おこなっていたことが知しられるようになったことで安田やすだを偲しのび、一般いっぱんに安田やすだ講堂こうどうと呼よばれるようになる。当時とうじ、東京帝大とうきょうていだいには天皇てんのう行幸ぎょうこうに際きわする正式せいしきな便殿びんでんがなく、文学部ぶんがくぶ教授きょうじゅ村上むらかみ専精せんじょうからこれを聞ききつけた安田やすだは、大だい講堂こうどうと便殿びんでんの建設けんせつ資金しきんとして100万まん円えんの寄付きふを行おこなった。東京大学とうきょうだいがく建築けんちく学科がっかの建築けんちく家か、内田うちだ祥三しょうぞう（のちの総長そうちょう）が基本きほん設計せっけいを行おこない、弟子でしの岸田きしだ日出刀ひでとが担当たんとうした。

ボリューム感かんのあるフォルムにゴシックを基調きちょうとする垂直すいちょく性せいを強調きょうちょうした外観がいかんのデザインで、この時期じきを代表だいひょうする建築けんちくである。意匠いしょうおよび構造こうぞうについては伊東いとう忠太ちゅうた、佐野さの利器りきに協議きょうぎ員いんを依よ嘱しょく、建築けんちく設計せっけいの大綱たいこうに参画さんかく・協議きょうぎ。壁面へきめん、音響おんきょうなどについては、姉崎あねざき正治しょうじ、瀧たき精一せいいち、坂さか静雄しずおらが協議きょうぎ員いんとして加くわわった。設計せっけいした内田うちだはケンブリッジ大学けんぶりっじだいがくの門もん塔とうに着想ちゃくそうを得えたようだが、力感りきかん漲みなぎるデザインは独特どくとくである。

1921年ねん（大正たいしょう10年ねん）に起工きこう、関東大震災かんとうだいしんさいによる工事こうじ中断ちゅうだんを経へて1925年ねん（大正たいしょう14年ねん）7月がつ6日にちに竣工しゅんこうした（起工きこうは1922年ねん（大正たいしょう11年ねん）12月とされることもある）。震災しんさい後ごに建たてられた学内がくないの建築けんちくが茶色ちゃいろのスクラッチタイルで統一とういつされているのに対たいし、本ほん講堂こうどうが理学部りがくぶ旧きゅう1号館ごうかんと同おなじ赤あかレンガなのはこのためである。

1968年ねん（昭和しょうわ43年ねん）の東大とうだい紛争ふんそうでは全学ぜんがく共闘きょうとう会議かいぎによって占拠せんきょされ、最終さいしゅう的てきには機動きどう隊たいにより強制きょうせい排除はいじょされた（東大とうだい安田やすだ講堂こうどう事件じけん）。その後ご長期ちょうきにわたり大だい講堂こうどうは荒廃こうはい状態じょうたいのまま閉鎖へいさされていたが（事務じむ室しつは順次じゅんじ「学生がくせい部ぶ」等とうとして使つかわれるなどしていた）、富士銀行ふじぎんこうをはじめとする旧きゅう安田やすだ財閥ざいばつゆかりの企業きぎょうの寄付きふもあり1988年ねん（昭和しょうわ63年ねん）から1994年ねん（平成へいせい6年ねん）に改修かいしゅう工事こうじが行おこなわれ再度さいど供用きょうようされている。

1990年ねんの大だい改修かいしゅうを機きに、東大とうだいの届出とどけで学生がくせい団体だんたい等とうによる演奏えんそう会かいなどにも使用しようできるようになった。

1991年ねんより卒業そつぎょう式しき・学位がくい記き授与じゅよ式しきが再ふたたび安田やすだ講堂こうどうで行おこなわれるようになったが、収容しゅうよう人員じんいんの関係かんけいから対象たいしょう者しゃ全員ぜんいんを一いち度どに収容しゅうようすることができず、現在げんざいは文系ぶんけい学部がくぶ・理系りけい学部がくぶで時間じかん帯たいを分わけて開催かいさいしている。また、父母ちちはは等とうについては近隣きんりんの施設しせつ（御ご殿下でんか記念きねん館かん等とう）でライブ中継ちゅうけいを見みる形かたちになる。 2013年度ねんどから2014年度ねんどにかけて、耐震たいしん補強ほきょうを含ふくめた全面ぜんめん改修かいしゅうが行おこなわれたため、2012年度ねんどからは有明ありあけコロシアムで卒業そつぎょう式しき・学位がくい記き授与じゅよ式しきが行おこなわれていたが、改修かいしゅう完了かんりょうによって2014年度ねんどの学位がくい記き授与じゅよ式しき（2015年ねん3月がつ24日にち）・卒業そつぎょう式しき（2015年ねん3月がつ25日にち）は安田やすだ講堂こうどうで行おこなわれた。2021年ねん6月がつには入学にゅうがく式しきが行おこなわれなかった2020年ねん入学にゅうがく者しゃに対たいする「入学にゅうがく歓迎かんげい式典しきてん」が本ほん講堂こうどうにおいて執とり行おこなわれた。

1996年ねん12月20日にちに国くにの登録とうろく有形ゆうけい文化財ぶんかざいに登録とうろくされた。

施設しせつ

正門せいもんを入はいって銀杏いちょう並木なみきを軸じく線せんにした正面しょうめんに位置いちし、東大とうだいのシンボルとなっている。

内田うちだの基本きほん設計せっけいを基もとに当時とうじ、若手わかて営繕えいぜん課か技師ぎしであった岸田きしだ日出刀ひでとが大幅おおはばに手てを入いれた。安田やすだ講堂こうどう敷地しきちは急峻きゅうしゅんな崖がけ下かにあり、崖がけの高低こうてい差さを利用りようして大だい講堂こうどうは崖がけ上じょうの3、4階かい部分ぶぶんとし、崖がけ下かに1、2階かいの軸じく部ぶを置おき、大学だいがくの中央ちゅうおう事務じむ室しつの集中しゅうちゅうを予算よさん外がいで計画けいかくした。基礎きそ工事こうじ中ちゅうに、関東大震災かんとうだいしんさいが発生はっせいしたことで、構造こうぞうの強化きょうかと予算よさんの増額ぞうがくがなされた。半円はんえん形がた平面へいめんの講堂こうどうを崖がけ下かの1、2階かいの上うえに置おき、外周がいしゅうには一定いっていの高たかさを持もつ壁面へきめんを配はいす。ピナクルを壁面へきめん最さい上部じょうぶのコーニスより突出とっしゅつさせ、上昇じょうしょう性せいの強つよいバットレスを配はいした。この壁面へきめんの様式ようしきは内田うちだが学内がくないで展開てんかいしていく独特どくとくのネオ・ゴシック様式ようしきの先駆せんくとみなされる。正面しょうめん中央ちゅうおうの四隅よすみに閉鎖へいさ的てきな八はち角柱かくちゅうを配はいしたゴシックの塔とうは高たかさ約やく30ⅿあり、エントランスにはポルティコを持もつなど典型てんけい的てきなゴシックの外観がいかんが施ほどこされていた。

3階かいと4階かいの大だい講堂こうどうの他ほか、多おおくの事務じむ室しつがあり東大とうだい紛争ふんそう以前いぜんは大学だいがくの本部ほんぶ事務じむ棟とうとして使用しようされ総長そうちょう室しつもこの建物たてものにあった。正面しょうめんと背面はいめんは地盤じばんの高低こうてい差さがあり、正面しょうめん玄関げんかんは建物たてものの3階かいに当あたる。現在げんざいでは、1階かい部分ぶぶんの北側きたがわに学生がくせい課か、南側みなみがわに保健ほけんセンターがある。

紛争ふんそう後ごの安田やすだ講堂こうどう

東大とうだい安田やすだ講堂こうどう事件じけんにおける講堂こうどう上部じょうぶでの占拠せんきょおよび機動きどう隊たいとの衝突しょうとつにより、講堂こうどう内部ないぶは投石とうせきの痕あとや落書らくがきなどが残のこっていた。その後ご改修かいしゅう前まえまでは完全かんぜんに廃墟はいきょになっていたわけではなく、一部いちぶ施設しせつが残存ざんそんしていた。大だい講堂こうどう前まえの広場ひろばには中庭なかにわが造つくられ、地下ちかには大学だいがく生協せいきょうが運営うんえいする食堂しょくどうが設置せっちされた。以前いぜんのように集会しゅうかいを開ひらいて練ねり歩あるくことのできない場所ばしょとなっている。

主おもな改修かいしゅう工事こうじ

小規模しょうきぼな模様替もようがえや補修ほしゅうは頻繁ひんぱんに行おこなわれていたが、大だい規模きぼな修理しゅうりは以下いかの5回かいである。

補ほ工こう工事こうじ (1927 - 1928)

補ほ工こう工事こうじでは関東大震災かんとうだいしんさい以前いぜんの設計せっけいに対たいする補強ほきょうとして、主おもに1、2階かいの壁かべを追加ついかする工事こうじが行おこなわれた。ただし、1925年ねん7月がつの竣工しゅんこう後ごも工事こうじは続つづいており、講堂こうどうが初はじめて使用しようされた同年どうねん9月がつ28日にちの総長そうちょう選挙せんきょのときはまだ内部ないぶに足場あしばが残のこり、1、2階かい及および塔とうの内部ないぶ工事こうじなど建設けんせつ工事こうじの延長線えんちょうせん上じょうにある。

各所かくしょ模様替もようがえ修繕しゅうぜん工事こうじ (1964 - 1965)

竣工しゅんこう後ご約やく40年ねんが経たち、劣化れっかした内装ないそうの更新こうしんや部屋へやの配置はいち変更へんこうが行おこなわれた。

昭和しょうわの大だい改修かいしゅう (1970 - 1971)

東大とうだい紛争ふんそう後ごの大だい規模きぼの修復しゅうふく工事こうじが行おこなわれた。それまでは講堂こうどう周辺しゅうへんの廊下ろうかを事務じむ室しつとして利用りようするための仮かり修復しゅうふくにとどまっていた。投石とうせき用ように砕くだかれた大理石だいりせき製せいの階段かいだんや、破壊はかいされたり放水ほうすいにより被害ひがいを受うけた建具たてぐが更新こうしんされた。

平成へいせいの大だい改修かいしゅう (1989 - 1990)

講堂こうどうとして使つかうための改修かいしゅう工事こうじが行おこなわれた。

耐震たいしん改修かいしゅう工事こうじ (2013 - 2014)

2011年ねん3月がつの東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいで建物たてものに被害ひがいが生しょうじたことをきっかけとして、2013年ねん6月がつ11日にちから2014年ねん12月24日にちにかけて全面ぜんめん改修かいしゅうが実施じっしされた。耐震たいしん・防災ぼうさい機能きのう強化きょうかの他ほか、創建そうけん時じに近ちかい形かたちへの復元ふくげんやバリアフリー化かも行おこなわれた。躯むくろ体たい強化きょうかのため鉄筋てっきんコンクリート耐震たいしん壁かべが214枚まい設置せっちされた。吊つり下さげられていた天井てんじょうを建物たてものと繋つなげて準じゅん構造こうぞう化かすると共ともに、天井てんじょう材ざいを従来じゅうらいの1/6の重おもさのグラスファイバー補強ほきょうの石膏せっこう天井板てんじょういたに変かえた。小屋こや組ぐみに追加ついかされた鉄骨てっこつ827本ほんは既存きそんのオレンジ色しょくの鉄骨てっこつと区別くべつするために灰色はいいろに塗装とそうされている。また、破損はそん時じの飛散ひさんを防ふせぐため、単たん板いたのガラスを樹脂じゅしフィルムを挟はさんだ合あわせガラスに変更へんこうした。部屋へやに仕切しきられていた4階かい通路つうろを復活ふっかつさせ、小杉こすぎ未醒みせいが描えがいた舞台ぶたい上じょうの壁画へきが「湧水わきみず」と「採と果はて」を修復しゅうふく、音響おんきょう特性とくせいについても短みじかくなっていた残響ざんきょう時間じかんを創建そうけん時じに戻もどした。プロジェクタ使用しようのために遮光しゃこうされていた窓まどには電動でんどうカーテンが設置せっちされた。

画像がぞう

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  側面そくめんから見みた安田やすだ講堂こうどう
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  理学部りがくぶ一いち号館ごうかんより。裏側うらがわはドーム状じょうになっている。
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  入にゅう口脇くちわき
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  入口いりくち前まえの原はらっぱ
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  入いり口くち内側うちがわから見みた眺ながめ。正門せいもんから続つづくイチョウ並木なみき
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  入いり口くちの上うえに飾かざられているステンドグラス
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  廊下ろうか
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  廊下ろうか
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  大だい講堂こうどう
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  大だい講堂こうどう
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  大だい講堂こうどう。4階かい席せきからの眺ながめ
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  演えんじ台だい
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  椅子いす
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  1932年ねん以前いぜんに撮影さつえいされた安田やすだ講堂こうどうの内部ないぶ

参考さんこう文献ぶんけん

• （執筆しっぴつ者しゃ名めい記載きさい無なし）, 「東京とうきょう帝國ていこく大學だいがく大だい講堂こうどう建築けんちく工事こうじ概要がいよう」『建築けんちく雑誌ざっし』475号ごう pp.60-62, 1925-01, NAID 11000378742

関連かんれん項目こうもく

• 東京大学とうきょうだいがく - 東京大学とうきょうだいがくの建造けんぞう物ぶつ
• 表現ひょうげん主義しゅぎ (建築けんちく)
• 日本にっぽんの学生がくせい運動うんどう

外部がいぶリンク

• 本郷ほんごうキャンパス大だい講堂こうどう（安田やすだ講堂こうどう） - アクセスマップ
• 東京大学とうきょうだいがく大だい講堂こうどう・安田やすだ記念きねん講堂こうどう - 東京とうきょうの建築けんちく遺産いさん50選せん：社団しゃだん法人ほうじん東京とうきょう建築けんちく士し会かい