穴あな穂ほ部ぶ間あいだ人じん皇女おうじょ

穴あな穂ほ部ぶ間あいだ人じん皇女おうじょ
第だい31代だい天皇てんのう后きさき
在位ざいい期間きかん 用よう明天めいてん皇すめらぎ元年がんねん1月がつ1日にち - 用よう明天めいてん皇すめらぎ2年ねん4月がつ9日にち
皇后こうごう	用よう明天めいてん皇すめらぎ元年がんねん1月がつ1日にち（大だい后きさき）
崩御ほうぎょ	推古天皇すいこてんのう29年ねん12月21日にち（622年ねん2月がつ7日にち）
諱いみな	穴あな穂ほ部ぶ間あいだ人じん（あなほべのはしひと）
別称べっしょう	異い表記ひょうき：穴太あのう部ぶ間あいだ人じん王おう、孔あな部ぶ間あいだ人じん公おおやけ王おう、間あいだ人じん穴太あのう部ぶ王おう 鬼おに前ぜん太ふとし后きさき
父親ちちおや	欽明天皇てんのう
母親ははおや	蘇我そが小しょう姉あね君くん
配偶はいぐう者しゃ	用よう明天めいてん皇すめらぎ
	田た目め皇子おうじ
結婚けっこん	敏さとし達たち天皇てんのう3年ねん（574年ねん）以前いぜん
子女しじょ	用よう明天めいてん皇すめらぎとの間あいだに：厩戸皇子うまやどのおうじ（聖徳太子しょうとくたいし）、来き目め皇子おうじ、殖栗うえぐり皇子おうじ、茨いばら田た皇子おうじ 田た目め皇子おうじとの間あいだに：佐さ富とみ女王じょおう

橘たちばな大だい郎女いらつめが聖徳太子しょうとくたいしと太子たいしの母はは穴あな穂ほ部ぶ間あいだ人じん皇女おうじょのために編あんだといわれる天寿てんじゅ国こく繡帳

穴あな穂ほ部ぶ間あいだ人じん皇女おうじょ（あなほべのはしひとのひめみこ、? - 推古天皇すいこてんのう29年ねん12月21日にち（622年ねん2月がつ7日にち））は、飛鳥あすか時代ときよの皇族こうぞく。用よう明天めいてん皇すめらぎの皇后こうごう。欽明天皇てんのうの第だい三さん皇女おうじょ。母ははは蘇我稲目そがのいなめの娘むすめ・小しょう姉あね君くん。同母どうぼ弟おとうとに穴あな穂ほ部ぶ皇子おうじ・崇たかし峻たかし天皇てんのうがいる。

聖徳太子しょうとくたいしの生母せいぼとして知しられる。

略歴りゃくれき

生年せいねんは不明ふめい。

婚姻こんいんと出産しゅっさん

異母いぼ兄けい・用よう明天めいてん皇すめらぎの皇后こうごう。厩戸皇子うまやどのおうじ（聖徳太子しょうとくたいし）・来き目め皇子おうじ・殖栗うえぐり皇子おうじ・茨いばら田た皇子おうじを産うむ。

用よう明天めいてん皇すめらぎ崩御ほうぎょ後こうは、用よう明天めいてん皇すめらぎの第だい一いち皇子おうじ・田た目め皇子おうじ（多米ため王おう、聖徳太子しょうとくたいしの異母いぼ兄けい）に嫁かし佐さ富とみ女王じょおう（長谷ながたに王おう妃ひ、葛城王かつらぎおう・多た智さとし奴やつ女王じょおうの母はは）を産うんだ（『聖徳太子しょうとくたいし平たいら氏し伝でん雑ざつ勘かん文ぶん』 上じょうノ三さん 上宮かみみや太子たいし御ご子孫しそん竝なみ后きさき等とう事ごと条じょう 所しょ引にある『上宮かみみや記き』逸文いつぶんに「多米ため王おう 父ちちﾊ用よう明あきら 母ははﾊ蘇我そが女おんな也 父ちち天皇てんのう崩くずし後ご 娶めと庶母間あいだ人じん孔あな部ぶ王おう生せい兒じ 佐さ富とみ女王じょおう 一也かずや」とある）。

聖徳太子しょうとくたいしの生母せいぼ

橘たちばな豊ゆたか日にち尊皇そんのう子こ（のちの用よう明天めいてん皇すめらぎ）の妃ひであった時ときに、諸しょ司つかさ巡行じゅんこう中ちゅう、厩うまやの戸口とぐちで厩うまや戸と王おう（聖徳太子しょうとくたいし）を難なんなく出産しゅっさんしたという『日本書紀にほんしょき』の逸話いつわは有名ゆうめいであるが、これは中国ちゅうごくに伝来でんらいしたキリスト教きりすときょうの異端いたん派はである「景けい教きょう」（ネストリウス派は）がもたらした新約しんやく聖書せいしょの福音ふくいん書しょにある「キリストの降誕こうたん」を元もとにしたとの説せつがあるなど、史実しじつかどうか疑うたがわれている。実際じっさい厩うまや戸どは地名ちめいに由来ゆらいするとの説せつもある。なお、天寿てんじゅ国こく繡帳左上ひだりうえの亀かめ形がたに「部ぶ間あいだ人じん公おおやけ」の4字じが確認かくにんできるが、これは人名じんめい「孔あな部ぶ間あいだ人じん公主こうしゅ」の一部いちぶで、穴あな穂ほ部ぶ間あいだ人じん皇女おうじょのことだと考かんがえられる。

名な

穴太あのう部ぶ間あいだ人じん王おう、孔あな部ぶ間あいだ人じん公おおやけ王おう、間あいだ人じん穴太あのう部ぶ王おう、鬼おに前ぜん太ふとし后きさき、間あいだ人じん皇后こうごうとも称しょうされる。 「穴あな穂ほ部ぶ」の名なは、石上いしがみ穴あな穂ほ宮みや（いそのかみのあなほのみや）で養育よういくされたことに由来ゆらいすると考かんがえられている。

なお「間あいだ人じん」（はしひと、もしくは　はしうど）の名なを持もつ皇女おうじょは他たに舒明天皇てんのう皇女おうじょ（孝徳天皇こうとくてんのう皇后こうごう）がいるが単たんに間あいだ人じん皇女おうじょ（はしひとのひめみこ）と呼よばれることが多おおい。

系譜けいふ

• 父ちち：欽明天皇てんのう
• 母はは：蘇我そが小しょう姉あね君くん
• 同母どうぼ兄弟きょうだい：茨城いばらき皇子おうじ・葛城かつらぎ皇子おうじ・穴あな穂ほ部ぶ皇子おうじ・泊とまり瀬部せべ皇子おうじ（崇たかし峻たかし天皇てんのう）

• 伯はく叔母おば：蘇我そが堅けん塩しお媛ひめ・蘇我そが石せき寸すん名めい（母方ははかた）
• 伯はく叔父おじ：安閑天皇あんかんてんのう・宣せん化か天皇てんのう（以上いじょう父方ちちかた）・蘇我馬子そがのうまこ・境さかい部ぶ摩ま理り勢ぜい（以上いじょう母方ははかた）

• 夫おっと：用よう明天めいてん皇すめらぎ・田た目め皇子おうじ
• 子女しじょ：厩戸皇子うまやどのおうじ・来き目め皇子おうじ・殖栗うえぐり皇子おうじ・茨いばら田た皇子おうじ（以上いじょう用よう明天めいてん皇すめらぎとの子こ）・佐さ富とみ女王じょおう（田た目め皇子おうじとの子こ）
• 孫まご：山やま背せ大兄たいけい王おう・財ざい王おう・日置ひおき王おう・片岡かたおか女王じょおう・白髪はくはつ部ぶ王おう・手島てじま女王じょおう・長谷ながたに王おう・三枝さえぐさ王おう・伊い止どめ志こころざし古いにしえ王おう・麻呂まろ古いにしえ王おう・春はる米まい女王じょおう・久ひさ波は太ふとし女王じょおう・波なみ止とめ利り女王じょおう・馬屋うまや古こ女王じょおう（以上いじょう用よう明天めいてん皇すめらぎとの孫まご）・葛城王かつらぎおう・多た智さとし奴やつ女王じょおう（以上いじょう田た目め皇子おうじとの孫まご）

各地かくちの伝承でんしょう

奈良なら県けん

中宮なかみや寺てら金堂こんどう

大和やまと国こく斑鳩いかるに所在しょざいし、現在げんざいは法隆寺ほうりゅうじと隣接りんせつする中宮なかみや寺てらは、聖徳太子しょうとくたいしが母ははのために建たてたといわれているが、中世ちゅうせい以前いぜんは現在地げんざいちより550メートルほど東ひがしにあったといわれる。この地ちはかつて穴あな穂ほ部ぶ間あいだ人じん皇女おうじょの宮みやであったという伝承でんしょうがあり、そのい伝いつたえによれば、葦あし垣かき宮みや、飛鳥あすか岡本おかもと宮みや、斑鳩いかる宮みやを結むすんだほぼ中央ちゅうおうにあったゆえに「中宮ちゅうぐう」と呼称こしょうされたというが、詳細しょうさいは不明ふめいである。

京都きょうと府ふ

京都きょうと府ふ京きょう丹後たんご市し丹後たんご町まちにある「間人はしひと（たいざ）」という地名ちめいは、穴あな穂ほ部ぶ間あいだ人じん皇女おうじょに因ちなむものと伝つたえられている。京きょう丹後たんご市し丹後たんご町まち間あいだ人じんの後のちヶ浜はま海岸かいがんには聖徳太子しょうとくたいしとともに像ぞうが建たっている。穴あな穂ほ部ぶ間あいだ人じん皇女おうじょは蘇我そが氏しと物部ものべ氏しとの争乱そうらんを避さけて丹後たんごに身みを寄よせ、宮みやに戻もどる際さいに自分じぶんの名なを贈おくったが、人々ひとびとは「皇后こうごうの御名ぎょめいをそのままお呼よびするのは畏おそれ多おおい」として、皇后こうごうが（その地ちを）退座たいざしたことにちなみ「たいざ」と読よむことにしたという。ただし、『日本書紀にほんしょき』『古事記こじき』などの文献ぶんけん資料しりょうには穴あな穂ほ部ぶ間あいだ人じん皇女おうじょが丹後たんご国こくに避難ひなんしたとの記述きじゅつはない。

出典しゅってん

• 坂本さかもと太郎たろう・平野ひらの邦雄くにお監修かんしゅう『日本にっぽん古代こだい氏族しぞく人名じんめい辞典じてん』吉川弘文館よしかわこうぶんかん、1900年ねん11月。ISBN 4-642-02243-0
• 狩野かの久ひさ「6・7世紀せいきの支配しはい構造こうぞう」『岩波いわなみ講座こうざ 日本にっぽん通史つうし第だい2巻かん 古代こだい1』岩波書店いわなみしょてん、1993年ねん9月がつ。ISBN 4-00-010552-3