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茶色ちゃいろふくおとこ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

茶色ちゃいろふくおとこ』(ちゃいろのふくのおとこ、原題げんだいThe Man in the Brown Suit)は、1924ねんイギリス小説しょうせつアガサ・クリスティ発表はっぴょうした4さく長編ちょうへん推理すいり小説しょうせつ

レイス大佐たいさはつ登場とうじょう作品さくひんである。

解説かいせつ[編集へんしゅう]

ほん作品さくひんは、アン・ベディングフェルドの手記しゅきとサー・ユースタス・ペドラーの日記にっき構成こうせいされ、2人ふたりかたによりストーリーが進行しんこうする形式けいしきとなっている。基本きほん冒険ぼうけんミステリだが、もっと有名ゆうめいぼう作品さくひんのトリックを先取さきどりしてためしているてんで、なぞ小説しょうせつとしても注目ちゅうもくされる作品さくひんである[1]。このトリックの先取さきどりは、ディクスン・カーによりEQMM書評しょひょうらん指摘してきされている[1]

作者さくしゃは33さいのときにだいえい帝国ていこく博覧はくらんかい英語えいごばん宣伝せんでん使節しせつおっと同行どうこうして世界せかい一周いっしゅう旅行りょこうをしており、主人公しゅじんこうのアンの旅行りょこう描写びょうしゃはその経験けいけんもとえがかれている[1]

あらすじ[編集へんしゅう]

考古こうこ学者がくしゃちちくしたアン・ベディングフェルドは、仕事しごとつかるまでという条件じょうけん弁護士べんごしのフレミング夫妻ふさいられてロンドンにた。1がつはじめのあるしょくさがしをするアンは、地下鉄ちかてつホームのはしナフタリンにおいをオーバーから発散はっさんさせたおとこが、アンの背後はいごにいた人物じんぶつおどろおそれたかのようにかおきつらせてあとずさりし、線路せんろじょう転落てんらくして感電かんでんするのを目撃もくげきした。おとこ確認かくにんした医者いしゃ名乗なの茶色ちゃいろふくおとこさい紙切かみきれをとしていった。ナフタリンのにおいがみついたその紙切かみきれには「1 7・1 22 Kilmorden Castle」と暗号あんごうのようなものがしるされていた。

アンは翌朝よくあさんだおとこ後日ごじつ検死けんし審問しんもんでL・B・カートンという名前なまえ判明はんめいする)のポケットから下院かいん議員ぎいんのサー・ユースタス・ペドラーのいえであるマーロウのミル・ハウスへの紹介しょうかいじょうはいっていたこと、そのいえの2かいの1しつ外国がいこくじんおもわれるわか美人びじん絞殺こうさつ死体したい発見はっけんされたこと、そのいえには「茶色ちゃいろふくおとこ」もていたことを新聞しんぶん記事きじる。

興味きょうみにかられたアンは、暗号あんごう手紙てがみしるされていた「Kilmorden Castle」がケープタウンかう客船きゃくせん「キルモーデン・キャッスル」であることをると、事件じけんなぞくために父親ちちおやのこしてくれたぜん財産ざいさんって切符きっぷい、単身たんしんみなみアフリカきのふねった。偶然ぐうぜんにもそのふねにはサー・ユースタス・ペドラーも乗船じょうせんしていた。

ペドラーの秘書ひしょのパジェットとチチェスター牧師ぼくしと17ごうしつあらそ部屋へやったアンは、暗号あんごうの「1 7・1 22」が「17ごうしつ 1 22にち」とかんがえ、部屋へやで22にち1つ。すると1に「たすけてくれ。われている。」といながらかたされたおとこ部屋へやんできた。けしたかおほお傷跡きずあとはしらせ、危険きけんかおりのするそのおとこは、アンに介抱かいほうされたあと、今夜こんやのことはだれにもわないようにと口止くちどめしてる。アンはそのおとこをひとまず除外じょがいして、監視かんし必要ひつようがある人物じんぶつを3にんしぼる。1人ひとりはサー・ユースタス・ペドラー、アンと17ごうしつあらそったペドラーの秘書ひしょのパジェットとチチェスター牧師ぼくしのこ2人ふたりで、前者ぜんしゃ不吉ふきつ容貌ようぼうをしており、後者こうしゃはにせの牧師ぼくしのようだった。

あと1週間しゅうかんみなみアフリカにこうというころ、アンたちは諜報ちょうほう機関きかん所属しょぞくではないかとうわさされているレイス大佐たいさから、戦争せんそう直前ちょくぜんみなみアフリカできたダイヤモンド盗難とうなん事件じけんはなしく。鉱山こうざんおうのサー・ローレンス・アーズリーの息子むすこのジョン・アーズリーとその友人ゆうじんのハリー・ルーカスが、南米なんべいでかなりおおきなダイヤモンドの原石げんせきつけ、鑑定かんていのためにキンバリーおとずれたところ、ちょうどそのころきたダイヤモンド盗難とうなん事件じけん嫌疑けんぎがかけられ、ジョンは逮捕たいほされる。サー・ローレンスがぬすまれたダイヤに相当そうとうする金額きんがくはらったため、ダイヤの行方ゆくえからぬままジョンは釈放しゃくほうされ、軍隊ぐんたいはい戦場せんじょう戦死せんしする。そしてサー・ローレンスは遺言ゆいごんじょうのこさずに心臓しんぞう発作ほっさに、莫大ばくだい遺産いさんもっとちか血縁けつえんしゃ、すなわちレイス大佐たいさゆずられたという。そのときアンは、ほお傷跡きずあとのあるおとこあおざめた表情ひょうじょうをしているのをかけ、ペドラーからふね直前ちょくぜんあたらしくやとった秘書ひしょのレイバーンだとく。

仮装かそう舞踏ぶとうかいばん、アンはしたしくなった社交しゃこうかい花形はながたのブレア夫人ふじん(スーザン)にこれまでの経緯けいいをすべてけ、れい暗号あんごう数字すうじは「1 7・1 22」ではなく「1 71 22」、すなわち「1 71ごうしつ 22にち」で、スーザンの船室せんしつである71ごうしつなにかがこるというものであったことにおもいたる。この71号室ごうしつはミセズ・グレイの名前なまえ予約よやくされていたもので、その名前なまえロシア有名ゆうめい美人びじんダンサーのマダム・ナディナの変名へんめいであった。スーザンがレイス大佐たいさからいたはなしでは、彼女かのじょ強力きょうりょく国際こくさい犯罪はんざい組織そしき手先てさき1人ひとりで、組織そしき首謀しゅぼう悪魔あくまのようにずるがしこい人物じんぶつで「大佐たいさ」とばれているらしい。

そのはなしいたアンは、マーロウのミル・ハウスでころされたわか美人びじん外国がいこくじんがナディアで、そのため乗船じょうせんできなかったのだとおもいたる。22にちの1に71ごうしつには通風つうふうあなから写真しゃしんのフィルムがれられており、スーザンはしつくしたフィルムを給仕きゅうじとどけにたものだとおもっていたが、調しらべてみるとそのフィルムの容器ようきなかにはダイヤモンドの原石げんせきはいっていた。アンは、それがレイス大佐たいさはなしていた行方ゆくえ不明ふめいのダイヤモンドの一部いちぶだとおもいたる。

スーザンは、「茶色ちゃいろふくおとこ」がレイバーンで、えきんだカートンがナディアにダイヤモンドをわたそうとしていた、それをレイバーンがダイヤをれようとしてカートンから暗号あんごう紙切かみきれをれ、そのあとナディアをころし、ペドラーにはたらきかけて秘書ひしょとしてふねんでイギリスを脱出だっしゅつするとともに22にち1に17ごうしつにゅうろうとした、そこをにせの牧師ぼくしのチチェスターにされたのだと推理すいりする。しかし、レイバーンにかれていたアンは、「茶色ちゃいろふくおとこ」がレイバーンであることはみとめるものの、殺人さつじんについては無実むじつ主張しゅちょうする。

翌朝よくあさ、アンはレイス大佐たいさから、んだジョン・アーズリーとその友人ゆうじんのハリー・ルーカスが戦争せんそう負傷ふしょう行方ゆくえ不明ふめいになっていることをく。さらに夜勤やきん給仕きゅうじから、ケープタウンからイギリスにかう船旅ふなたび乗客じょうきゃくからフィルムをあずかり、ケープタウンにもどる1がつ22にち午前ごぜん1婦人ふじんきゃくのいる71ごうしつ寝台しんだいうえにフィルムをとすようにたのまれたこと、その乗客じょうきゃくがカートンであったことをききだし、ダイヤモンドについてのスーザンの推理すいりただしかったことを確認かくにんする。

船旅ふなたび最後さいごよる、アンはパジェットにかまをかけ、かれがミル・ハウスの事件じけんがあったときにマーロウにいたことをる。アンは今後こんご作戦さくせんとして、スーザンにローデシアかうペドラーにいてかれとパジェットを見張みはっているようにたのみ、アンはダーバンかうチチェスターののちうことにする。その真夜中まよなか、アンが寝付ねつけずに甲板かんぱんにあがっていると、何者なにものかが彼女かのじょくびめながらうみとそうとしたところにレイバーンがけつけて、その襲撃しゅうげきしゃなぐたおして彼女かのじょすくった。げる襲撃しゅうげきしゃうレイバーンののちってアンがけつけたところ、食堂しょくどう入口いりくち何者なにものかになぐられたパジェットがたおれていた。アンはがわにいたレイバーンに、本当ほんとう名前なまえはルーカスであり、また「茶色ちゃいろふくおとこ」で、さらにマーロウのおんなころしたのだろうと指摘してきすると、かれおんなころ気持きもちがあったことをみとめ、パジェットをそのままにしてそのわかれる。

よく早朝そうちょう、ケープタウンの街並まちなみを目前もくぜん甲板かんぱんつアンにレイバーンは、連中れんちゅうはアンがなにかをっているとおもんでおり、前夜ぜんや襲撃しゅうげきもありすで危険きけんにさらされており、つね危険きけんひからせるよう警告けいこくする。そして2うことはないだろうとってわかれる。ケープタウンに上陸じょうりく、スーザンの宿泊しゅくはくするホテルで彼女かのじょったアンは、パジェットがまわりにあざをこしらえていることをき、かれうみとされそうになったことをげる。

ダーバンきのふね翌朝よくあさ出航しゅっこうのため時間じかんいたアンは、アンのちち尊敬そんけいしていたという博物館はくぶつかん館長かんちょうからの手紙てがみけ、ミューゼンバーグの別荘べっそうでおちゃ招待しょうたいしたいとのもうおうじて別荘べっそうかったところ、かまえていたのは一見いっけんしてオランダじんかるほのおのようなオレンジしょくあごひげをしたおとこであった。アンはてきわなにかかったのだった。

登場とうじょう人物じんぶつ[編集へんしゅう]

  • アン・ベディングフェルド - 考古こうこ学者がくしゃむすめ
  • マダム・ナディナ - ロシアおど
  • L・B・カートン - 地下鉄ちかてつんだおとこ
  • サー・ユースタス・ペドラー - ミル・ハウスの所有しょゆうしゃ下院かいん議員ぎいん
  • ガイ・パジェット - ユースタスの秘書ひしょ陰気いんき不吉ふきつ容貌ようぼうをしている。
  • ハリー・レイバーン - ユースタスの秘書ひしょほお傷跡きずあとがある。
  • ミス・ペティグルー - ユースタスの秘書ひしょ
  • ナスビーきょう - 『デイリー・バジェット』の社主しゃしゅ
  • クラレンス・ブレア夫人ふじん(スーザン) - 社交しゃこうかい花形はながた
  • レイス - 大佐たいさ
  • エドワード・チチェスター - 宣教師せんきょうし
  • サー・ローレンス・アーズリー - みなみアフリカ鉱山こうざんおう
  • ジョン・アーズリー - ローレンスの息子むすこ
  • ハリー・ルーカス - ジョンの親友しんゆう
  • 大佐たいさ - ?
  • 茶色ちゃいろふくおとこ - ?

補足ほそく[編集へんしゅう]

  • 作者さくしゃ長編ちょうへん作品さくひんちゅうで、主犯しゅはんきたままみずからのげおおせることに成功せいこうしているのは、『なぜ、エヴァンズにたのまなかったのか?』とほんさくのみである[2]

出版しゅっぱん[編集へんしゅう]

題名だいめい 出版しゅっぱんしゃ 文庫ぶんこめい 訳者やくしゃ 巻末かんまつ カバーデザイン 初版しょはん年月日ねんがっぴ ページすう ISBN 備考びこう
茶色ちゃいろふくおとこ 早川書房はやかわしょぼう ハヤカワ・ポケット・ミステリ265 桑原くわばら千恵子ちえこ 1956ねん 253 絶版ぜっぱん
茶色ちゃいろふくおとこ 角川書店かどかわしょてん 角川かどかわ文庫ぶんこあか502-5 あか冬子どんこ[3] 上原うえはらとおる 1964ねん 330 絶版ぜっぱん
茶色ちゃいろふくおとこ 東京とうきょうそうもとしゃ つくもと推理すいり文庫ぶんこ 105-21 向後こうご英一ひでかず 1967ねん 369 978-4488105211 絶版ぜっぱん
茶色ちゃいろふくおとこ 早川書房はやかわしょぼう ハヤカワ・ミステリ文庫ぶんこ1-68 中村なかむらのうさん 数藤すとう康雄やすお冒険ぼうけんクリスティー」 真鍋まなべひろし 1982ねん 342 4-15-070068-0 絶版ぜっぱん
茶色ちゃいろふくおとこ 早川書房はやかわしょぼう クリスティー文庫ぶんこ72 中村なかむらのうさん 解説かいせつ 村上むらかみ貴史たかし Hayakawa Design 2004ねん 442 978-4-15-130072-1 絶版ぜっぱん
茶色ちゃいろふくおとこ 早川書房はやかわしょぼう クリスティー文庫ぶんこ72 深町ふかまち眞理子まりこ 解説かいせつ 村上むらかみ貴史たかし 2011ねん4がつ5にち 528 978-4-15-131072-0

児童じどうしょ

題名だいめい 出版しゅっぱんしゃ 文庫ぶんこめい 訳者やくしゃ 巻末かんまつ カバーデザイン 初版しょはん年月日ねんがっぴ ページすう ISBN 備考びこう
茶色ちゃいろふくおとこ 集英社しゅうえいしゃ ジュニアばん世界せかい推理すいり13 塩谷しおや太郎たろう イラスト:斎藤さいとう寿夫としお 1972ねん 211 絶版ぜっぱん
茶色ちゃいろふくおとこ 早川書房はやかわしょぼう クリスティー・ジュニア・ミステリ 10 深町ふかまち眞理子まりこ イラスト:モリタ ケンゴ 2008ねん8がつ25にち 430 978-4-15-208946-5 絶版ぜっぱん
茶色ちゃいろふくおとこ 早川書房はやかわしょぼう ハヤカワ・ジュニア・ミステリ 10 深町ふかまち眞理子まりこ 2020ねん8がつ26にち 440 978-4-15-209930-3

映像えいぞう作品さくひん[編集へんしゅう]

  • ほんさくは、1988ねんに『アガサ・クリスティ/ころしのブラウン・スーツ』というタイトルでテレビ映画えいがされており、ステファニー・ジンバリストがアンをえんじた。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c ハヤカワ文庫ぶんこ茶色ちゃいろふくおとこ』(1982年版ねんばん巻末かんまつ数藤すとう康雄やすおによる解説かいせつ冒険ぼうけんクリスティー」参照さんしょう
  2. ^ 探偵たんていえて犯人はんにん見逃みのがした作品さくひん(『オリエント急行きゅうこう殺人さつじん』)、犯人はんにん自殺じさつ逃走とうそうちゅう事故じこなどで死亡しぼうした作品さくひん前者ぜんしゃは『そしてだれもいなくなった』『ナイルに』など、後者こうしゃは『魔術まじゅつ殺人さつじん』)、過去かこ事件じけん逮捕たいほするには証拠しょうこそろわない、あるいはすで犯人はんにん死亡しぼうしている作品さくひん前者ぜんしゃは『ひきぶた』、後者こうしゃは『ぞうわすれない』など)をのぞく。
  3. ^ 現在げんざいグーテンベルク21電子でんし書籍しょせきしている。

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]