との約束やくそく

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との約束やくそく
Appointment with Death
著者ちょしゃ アガサ・クリスティー
訳者やくしゃ 高橋たかはしゆたか
発行はっこう イギリスの旗1938ねん5月2にち
日本の旗1988ねん5月31にち
発行はっこうもと イギリスの旗Collins Crime Club
日本の旗早川書房はやかわしょぼう
ジャンル 推理すいり小説しょうせつ
くに イギリスの旗 イギリス
前作ぜんさく ナイルに
つぎさく ポアロのクリスマス
ウィキポータル 文学ぶんがく
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との約束やくそく』(しとのやくそく、原題げんだいAppointment with Death)は、イギリス小説しょうせつアガサ・クリスティ1938ねん発表はっぴょうした長編ちょうへん推理すいり小説しょうせつである。

エルキュール・ポアロシリーズの作品さくひんのひとつであるとともに、中近東ちゅうきんとうシリーズの長編ちょうへんだい3さくである[1]

エルサレムおとずれたポアロみみにしたのは、「いいかい、彼女かのじょころしてしまわなきゃいけないんだよ」という男女だんじょささやきだった。やがて、ヨルダン古都ことペトラ舞台ぶたい殺人さつじん事件じけんこる。

物語ものがたりは2構成こうせいで、だい一部いちぶ殺人さつじんこるまで、だいでその顛末てんまつえがかれる。ポアロが登場とうじょうするのは(プロローグと)だいのみである。

あらすじ[編集へんしゅう]

小説しょうせつは、サラ・キングとジェラール医師いし視点してんとおして、一家いっか被害ひがいしゃ紹介しょうかいされ、一家いっか行動こうどうについてはなわれるところからはじまる。ボイントン夫人ふじん以前いぜん刑務所けいむしょ所長しょちょうという職業しょくぎょうであったせいか、サディスティックで支配しはいてきである。サラは彼女かのじょ息子むすこレイモンド・ボイントンにかれ、ジェファーソン・コープは友人ゆうじんのナディーン・ボイントンをおっとのレノックス・ボイントンや義母ぎぼ影響えいきょうからはなしたいとおもっている。わかいボイントン夫妻ふさい自由じゆうにしたいというねがいを阻止そしされたサラは、ボイントン夫人ふじんるが、夫人ふじんは「わたしは、行動こうどう名前なまえかおも、なにわすれたことはない。」という奇妙きみょうおどしをかける。一行いっこうがペトラにくと、ボイントン夫人ふじんめずらしく家族かぞく一時いちじてきとおざける。その彼女かのじょ手首てくびはりされた死体したい発見はっけんされる。

ポアロは、容疑ようぎしゃからはなしくだけで、24時間じかん以内いないなぞくことができると主張しゅちょうする。かれはききこみをしながらタイムラインをいていくが、サラ・キングが推定すいていした死亡しぼう時刻じこくは、何人なんにんかの家族かぞく被害ひがいしゃ最後さいご時刻じこくよりもかなりまえだった。注目ちゅうもくされるのは、ジェラード医師いしのテントからぬすまれ、のちにすりえられたとおもわれる注射ちゅうしゃである。被害ひがいしゃ投与とうよされたどくはジギトキシンとおもわれ、彼女かのじょ生前せいぜんくすりとしてそれを服用ふくようしていた。

ポアロは会議かいぎ招集しょうしゅうし、家族かぞくそれぞれがボイントン夫人ふじん発見はっけんし、たがいに家族かぞくうたがいながらもだまっていたと指摘してきする。しかしかれ家族かぞく彼女かのじょ服用ふくようしていたくすり過剰かじょう摂取せっしゅさせることができたはずだから、わざわざ注射ちゅうしゃころ必要ひつようはなかったはずだ。このことから、容疑ようぎしゃ部外ぶがいしゃ一人ひとりしぼられる。

犯人はんにんはウエストホルムきょう夫人ふじんで、彼女かのじょ結婚けっこんまえ被害ひがいしゃがかつて所長しょちょうつとめていた刑務所けいむしょ収監しゅうかんされていたことがあきらかになる。ボイントン夫人ふじんがあの奇妙きみょうおどしをかけたのは、サラにたいしてではなく、そのうしろにっていた彼女かのじょたいしてだった。彼女かのじょは、ボイントン夫人ふじん自分じぶん犯罪はんざいれき暴露ばくろし、政治せいじとしてのキャリアを崩壊ほうかいさせることをおそれた。アラブじん使用人しようにん変装へんそうして殺人さつじんおかし、アマベル・ピアスの暗示あんじりょくたよって、自分じぶん殺人さつじん関与かんよしたことをかくす2つのミスディレクションを仕掛しかけたのだ。隣室りんしつからポアロのはなしぬすきしていたウェストホルム夫人ふじんは、自分じぶん犯行はんこう世間せけんあきらかにされようとしていることをみみにし、っていた拳銃けんじゅう自殺じさつする。ようやく自由じゆうとなった一家いっかは、しあわせな生活せいかつはじめる:サラはレイモンドと結婚けっこん、キャロルはジェファーソンと結婚けっこん、ジネヴラは舞台ぶたい女優じょゆうとして成功せいこうし、ジェラード医師いし結婚けっこんする。

登場とうじょう人物じんぶつ[編集へんしゅう]

  • エルキュール・ポアロ
  • ボイントン夫人ふじん - 金持かねもちのろう婦人ふじん
    原作げんさくでは名前なまえ明記めいきされていない。下記かき映画えいがばんにおいてはエミリー・ボイントンと呼称こしょうされる。
  • レノックス・ボイントン - ボイントン夫人ふじん長男ちょうなん
  • ネイディーン・ボイントン - レノックスのつま
  • レイモンド・ボイントン - ボイントン夫人ふじん次男じなん
  • キャロル・ボイントン - ボイントン夫人ふじん長女ちょうじょ
  • ジネヴラ・ボイントン - ボイントン夫人ふじん次女じじょ
  • ジェファーソン・コープ - アメリカじん、ネイディーンの友人ゆうじん
  • サラ・キング - 女医じょい
  • テオドール・ジェラール - フランスじん心理しんり学者がくしゃ
  • ウエストホルムきょう夫人ふじん - 下院かいん議員ぎいん
  • アマベル・ピアス - 保母ほぼ
  • カーバリ大佐たいさ - アンマン警察けいさつ署長しょちょう、ポアロの旧友きゅうゆう

日本語にほんごやく[編集へんしゅう]

ほん作品さくひんは、早川書房はやかわしょぼう日本語にほんごばん翻訳ほんやくけん独占どくせん作品さくひんとなっている。

出版しゅっぱんねん タイトル 出版しゅっぱんしゃ 文庫ぶんこめい 訳者やくしゃ 巻末かんまつ ページすう ISBNコード カバーデザイン 備考びこう
1957ねん
7がつ31にち
との約束やくそく 早川書房はやかわしょぼう 世界せかい探偵たんてい小説しょうせつ全集ぜんしゅう343 高橋たかはしゆたか 218
1978ねん
5月31にち
との約束やくそく 早川書房はやかわしょぼう ハヤカワ・ミステリ文庫ぶんこ HM1-33 高橋たかはしゆたか 311 ISBN 4-15-070033-8 真鍋まなべひろし
2004ねん
5月14にち
との約束やくそく 早川書房はやかわしょぼう ハヤカワ・クリスティー文庫ぶんこ 16 高橋たかはしゆたか 「だって、彼女かのじょころされるんでしょ?」
東野とうのさやか
384 ISBN 978-4151300165 Hayakawa Design

翻案ほんあん作品さくひん[編集へんしゅう]

演劇えんげき[編集へんしゅう]

  • 1945ねん"Appointment with Death"題名だいめいでクリスティ自身じしん戯曲ぎきょくした。ポアロは登場とうじょうせず、また結末けつまつ原作げんさくとはことなる。国内こくないではろんそうしゃから刊行かんこうされた『じゅうにんちいさなインディアン』に収録しゅうろくされている。

映画えいが[編集へんしゅう]

テレビドラマ[編集へんしゅう]

めい探偵たんていポワロとの約束やくそく
シーズン11 エピソード4(通算つうさんだい61イギリスの旗 イギリス2009ねん放送ほうそう[2]
シリア発掘はっくつ現場げんば舞台ぶたいになっており、登場とうじょう人物じんぶつ一部いちぶやその経歴けいれき殺人さつじん動機どうき方法ほうほう結末けつまつなど随所ずいしょ原作げんさくから変更へんこうされている。
スペシャルドラマ『との約束やくそく
日本の旗 日本にっぽん2021ねん放送ほうそう
めい探偵たんてい 勝呂かつろたけしみことシリーズだい3だんとしてフジテレビで放送ほうそうされた[3]三谷幸喜みたにこうき脚本きゃくほん。ポアロにあたる勝呂かつろたけしみこと(すぐろ たける)を野村のむらまんときえんじた[3]

ラジオドラマ[編集へんしゅう]

  • ラジオドラマが、BBC Radio 4放送ほうそうされている。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ 中近東ちゅうきんとうシリーズのだい1さくは『メソポタミヤの殺人さつじん』、(1936ねん長編ちょうへんだい2さくは『ナイルに』(1937ねん)。
  2. ^ Appointment with Death”. IMDB. 2023ねん9がつ16にち閲覧えつらん
  3. ^ a b 三谷みたに作品さくひんはつ参加さんか松坂まつさか慶子けいこ常連じょうれん鈴木すずき京香きょうか野村のむらまんとき主演しゅえんとの約束やくそくかえる”. 映画えいがナタリー. (2021ねん2がつ26にち). https://natalie.mu/eiga/news/417788 2021ねん2がつ26にち閲覧えつらん 

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]