菟うさぎ原はら郡ぐん

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兵庫ひょうご県けん菟うさぎ原はら郡ぐんの位置いち

菟うさぎ原はら郡ぐん（うばらぐん）は、かつて兵庫ひょうご県けん（摂津せっつ国こく）にあった郡ぐん。兎うさぎ原はら郡ぐんと表記ひょうきすることもある。1896年ねん、兵庫ひょうご県けん武庫むこ郡ぐんに合併がっぺい後ご廃止はいし。

郡ぐん域いき

1879年ねん（明治めいじ12年ねん）に行政ぎょうせい区画くかくとして発足ほっそくした当時とうじの郡ぐん域いきは、概おおむね下記かきの区域くいきにあたる。

• 芦屋あしや市しの全域ぜんいき
• 神戸こうべ市し
  • 東灘ひがしなだ区くの全域ぜんいき
  • 灘なだ区くの大だい部分ぶぶん（六甲山ろっこうさん町まちの一部いちぶを除のぞく）
  • 中央ちゅうおう区く東部とうぶ（旧きゅう葺合ふきあい区く地域ちいき）

歴史れきし

古代こだい

菟うさぎ原はら郡ぐんがはじめて歴史れきしに見みえたのは769年ねん（神護かんご景けい雲くも3年ねん）である（『続ぞく日本にっぽん紀き』）。菟うさぎ原ばらの名なは『和名わみょう抄しょう』では「宇波うなみ良りょう」、『伊勢物語いせものがたり』では「むはら」、『延喜えんぎ式しき』では「菟うさぎ原ばら」、『拾ひろえ芥あくた抄しょう』では「兎うさぎ原ばら」とも書かいた。地名ちめいの由来ゆらいは「海原うなばら」が転てんじたという説せつと六甲ろっこう山さんの野原のはらに兎うさぎが多おおく駆かけ巡めぐっていたからという説せつがある（道谷どうたに、1998[1]）。

『和名わみょう抄しょう』には「摂津せっつ国こく菟うさぎ原はら郡ぐん宇波うなみ良りょう（うはら）」とある一方いっぽう、『万葉集まんようしゅう』には「菟うさぎ原ばら」の表記ひょうきの他ほかに「菟うさぎ名めい日び」、「宇名比ひ」（うなひ、うない）との表記ひょうきがある。

式内しきない社しゃ

『延喜えんぎ式しき』神かみ名めい帳ちょうに記しるされる郡ぐん内ないの式内しきない社しゃ。

神かみ名めい帳ちょう				比定ひてい社しゃ			集成しゅうせい
社名しゃめい	読よみ	格かく	付記ふき	社名しゃめい	所在地しょざいち	備考びこう
菟うさぎ原はら郡ぐん 3座ざ（並なみ小しょう）
河内かわうち国こく魂たましい神社じんじゃ	カウチクニタマノ カフチ-	小しょう	鍬くわ靫うつぼ	河内かわうち国こく魂たましい神社じんじゃ	兵庫ひょうご県けん神戸こうべ市し灘なだ区く国玉通くにたまどおり		[2]
大だい国主こくしゅ西にし神社じんじゃ	オホクニヌシノ -ニシ	小しょう	鍬くわ靫うつぼ	（論ろん）大だい国主こくしゅ西にし神社じんじゃ	兵庫ひょうご県けん西宮にしのみや市し社家しゃけ町まち	西宮にしのみや神社じんじゃ境内けいだい末社まっしゃ
				（論ろん）越えつ木き岩がん神社じんじゃ	兵庫ひょうご県けん西宮にしのみや市し越こし木き岩いわ町まち
保ほ久良ひさよし神社じんじゃ	ホクラノ	小しょう	鍬くわ靫うつぼ	保ほ久良ひさよし神社じんじゃ	兵庫ひょうご県けん神戸こうべ市し東灘ひがしなだ区く本山町北畑もとやまちょうきたはた
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近世きんせい以降いこうの沿革えんかく

• 「旧きゅう高こう旧領きゅうりょう取調とりしらべ帳ちょう」に記載きさいされている明治めいじ初年しょねん時点じてんでの支配しはいは以下いかの通とおり。●は村むら内ないに寺社じしゃ領りょうが、○は寺社じしゃ除じょ地ちが存在そんざい。幕府ばくふ領りょうは谷町たにまち代官だいかん所しょが管轄かんかつ。（51村むら）

知行ちぎょう		村むら数すう	村むら名めい
幕府ばくふ領りょう	幕府ばくふ領りょう	30村むら	生田いくた村むら、脇浜わきのはま村むら、熊内くもち村むら、中尾なかお村むら、筒井つつい村むら、●岩屋いわや村むら、稗田ひえだ村むら、小野おの新田にった村むら、水車新田すいしゃしんでん、鍜冶かじ屋や村むら、畑原はたはら村むら、河原かわはら村むら、九郎くろう右みぎ衛門えもん新田にった、味泥みどろ村むら、○新在家しんざいけ村むら、徳井とくい村むら、東明とうめい村むら、御影みかげ村むら、石屋いしや村むら、住吉すみよし村むら、魚崎うおざき村むら、横屋よこや村むら、田中たなか村むら、田林たばやし新田にった、西青木にしあおき村むら、東ひがし青木あおき村むら、青木あおき村むら、深江ふかえ村むら、打出うちいで村むら、芦屋あしや村むら
藩はん領りょう	摂津せっつ尼崎あまがさき藩はん	17村むら	中村なかむら、原田はらだ村むら、上野うえの村むら、五毛ごもう村むら、森村もりむら、高羽たかは村むら、平野ひらの村むら、郡家ぐげ村むら、野寄のより村むら、田辺たなべ村むら、岡本おかもと村むら、小路こうじ村むら、北畑きたばたけ村むら、森村もりむら、津知つち村むら、三条さんじょう村むら、○滝寺たきでら村むら
幕府ばくふ領りょう・藩はん領りょう	幕府ばくふ領りょう・尼崎あまがさき藩はん	2村むら	大石おおいし村むら、中野なかの村むら
	幕府ばくふ領りょう・下総しもうさ古河ふるかわ藩はん	1村むら	篠原しのはら村むら
	旗はた本領ほんりょう・尼崎あまがさき藩はん	1村むら	八幡やはた村むら

11.精道せいどう村むら 12.本山もとやま村むら 13.本庄ほんじょう村むら 14.魚さかな崎さき村むら 15.住吉すみよし村むら 16.御影みかげ町まち 17.六甲ろっこう村むら 18.都賀つが浜はま村むら 19.都賀つが野村のむら（紫むらさき：神戸こうべ市し 青あお：芦屋あしや市し 1 - 10は武庫むこ郡ぐん 21 - 24は八はち部ぶ郡ぐん）

• 慶応けいおう4年ねん
  • 2月がつ2日にち（1868年ねん2月がつ24日にち） - 幕府ばくふ領りょうが兵庫ひょうご裁判所さいばんしょの管轄かんかつとなる。
  • 5月23日にち（1868年ねん7月がつ12日にち） - 兵庫ひょうご裁判所さいばんしょの管轄かんかつ地域ちいきが兵庫ひょうご県けんの管轄かんかつとなる。
• 明治めいじ4年ねん
  • 7月がつ14日にち（1871年ねん8月がつ29日にち） - 廃藩置県はいはんちけんにより、藩はん領りょうが尼崎あまがさき県けんの管轄かんかつとなる。
  • 11月20日にち（1871年ねん12月31日にち） - 第だい1次じ府県ふけん統合とうごうにより、全域ぜんいきが兵庫ひょうご県けんの管轄かんかつとなる。
• 明治めいじ初年しょねん - このころ九きゅう郎ろう右みぎ衛門えもん新田しんでんが上野うえの村むらに、田林たばやし新田にったが八幡やはた村むらにそれぞれ合併がっぺいしたとされるが不ふ詳しょう。（49村むら）
• 明治めいじ5年ねん（1872年ねん） - 郡ぐん区画くかく一覧いちらんに摩耶山まやさんの名なが見みられる。（50村むら）
• 明治めいじ8年ねん（1875年ねん） - 平野ひらの村むらが高羽たかは村むらに合併がっぺい。（49村むら）
• 明治めいじ9年ねん（1876年ねん）（42村むら）
  • 生田いくた村むら・脇浜わきのはま村むら・熊内くもち村むら・中尾なかお村むら・小野おの新田にった村むら・中村なかむら・滝寺たきでら村むらが合併がっぺいして葺合ふきあい村むらとなる。
  • 東ひがし青木あおき村むらが青木あおき村むらに合併がっぺい。
• 明治めいじ12年ねん（1879年ねん）1月がつ8日にち - 郡こおり区く町村ちょうそん編制へんせい法ほうの兵庫ひょうご県けんでの施行しこうにより、行政ぎょうせい区画くかくとしての菟うさぎ原はら郡ぐんが発足ほっそく。郡ぐん役所やくしょが住吉すみよし村むらに設置せっち。
• 明治めいじ13年ねん（1880年ねん）9月 - 郡ぐん役所やくしょが武庫むこ郡ぐん役所やくしょと統合とうごうのうえ改称かいしょうして「武庫むこ菟うさぎ原はら郡ぐん役所やくしょ」となる。
• 明治めいじ20年ねん（1887年ねん） - 筒井つつい村むらが葺合ふきあい村むらに合併がっぺい。（41村むら）
• 明治めいじ22年ねん（1889年ねん）4月がつ1日にち - 町村ちょうそん制せいの施行しこうにより、以下いかの町村ちょうそんが発足ほっそく。▲は飛地とびちを除のぞく。△は飛地とびちのみ。（1町まち8村むら）
  • 精道せいどう村むら ← 打出うちいで村むら、芦屋あしや村むら、三条さんじょう村むら、▲津知つち村むら、△深江ふかえ村むら（現げん・芦屋あしや市し）
  • 本庄ほんじょう村むら ← ▲深江ふかえ村むら、青木あおき村むら、▲西青木にしあおき村むら、△津知つち村むら、△横屋よこや村むら、△田中たなか村むら（現げん・神戸こうべ市し東灘ひがしなだ区く）
  • 本山もとやま村むら ← ▲田中たなか村むら、岡本おかもと村むら、田辺たなべ村むら、北畑きたばたけ村むら、小路こうじ村むら、中野なかの村むら、森村もりむら、▲野寄のより村むら、△深江ふかえ村むら、△西青木にしあおき村むら、△横屋よこや村むら（現げん・神戸こうべ市し東灘ひがしなだ区く）
  • 魚崎うおざき村むら ← ▲魚崎うおざき村むら、▲横屋よこや村むら、△西青木にしあおき村むら、△野寄のより村むら、△田中たなか村むら（現げん・神戸こうべ市し東灘ひがしなだ区く）
  • 住吉すみよし村むら ← 住吉すみよし村むら（現げん・神戸こうべ市し東灘ひがしなだ区く）、△魚崎うおざき村むら（現げん・神戸こうべ市し東灘ひがしなだ区く）
  • 御影みかげ町まち ← 御影みかげ村むら、▲石屋いしや村むら、▲東明とうめい村むら、郡家ぐげ村むら、△高羽たかは村むら（現げん・神戸こうべ市し東灘ひがしなだ区く）
  • 六甲ろっこう村むら ← 八幡やはた村むら、新生しんせい村むら、水車新田すいしゃしんでん、徳井とくい村むら、△石屋いしや村むら、△東明とうめい村むら（現げん・神戸こうべ市し灘なだ区く）、篠原しのはら村むら、▲高羽たかは村むら（現げん・神戸こうべ市し灘なだ区く）
  • 都賀つが浜村はまむら ← 新在家しんざいけ村むら、大石おおいし村むら（現げん・神戸こうべ市し灘なだ区く）
  • 都賀つが野村のむら ← 森村もりむら、原田はらだ村むら、稗田ひえだ村むら、上野うえの村むら、五毛ごもう村むら、畑原はたはら村むら、鍛冶屋かじや村むら、味泥みどろ村むら、岩屋いわや村むら、河原かわはら村むら、摩耶山まやさん（現げん・神戸こうべ市し灘なだ区く）
  • 葺合ふきあい村むらが神戸こうべ市しの一部いちぶとなる。
• 明治めいじ28年ねん（1895年ねん）11月11日にち - 都賀つが野村のむらが改称かいしょうして西にし灘なだ村むらとなる。
• 明治めいじ29年ねん（1896年ねん）4月がつ1日にち - 郡ぐん制せいの施行しこうのため、武庫むこ郡ぐん・菟うさぎ原はら郡ぐん・八はち部ぶ郡ぐんの区域くいきをもって、改あらためて武庫むこ郡ぐんが発足ほっそく。同日どうじつ菟うさぎ原はら郡ぐん廃止はいし。

地名ちめいの由来ゆらい

地名ちめいの由来ゆらいはうさぎではなく、一説いっせつによれば南みなみに広ひろがる「海原うなばら」が転てんじて「莵原」になったといわれている。

地名ちめいと文学ぶんがく

莵原という地名ちめいは、『万葉集まんようしゅう』や『伊勢物語いせものがたり』にも登場とうじょうする。中なかでも莵原処女しょじょ（うないおとめ）の悲恋ひれんの伝説でんせつは、『平安へいあん時代じだい』の『大和やまと物語ものがたり』や室町むろまち時代ときよの謡曲ようきょく『求もとめ塚づか』、さらには森もり鴎外おうがいや菊池きくち寛ひろしの作品さくひんのモチーフとしても知しられる。

郡ぐん消滅しょうめつ後ごの影響えいきょう

菟うさぎ原はら郡ぐんは1896年ねんに武庫むこ郡ぐんに合併がっぺい後ごも「うはら」という名称めいしょうは東灘ひがしなだ区くに多おおくの施設しせつやイベント名めいなどに存在そんざいする（例れい:「うはらホール」、「東灘ひがしなだうはらまつり」など。）

行政ぎょうせい

菟うさぎ原はら郡ぐん長ちょう

代だい	氏名しめい	就任しゅうにん年月日ねんがっぴ	退任たいにん年月日ねんがっぴ	備考びこう
1		明治めいじ12年ねん（1879年ねん）1月がつ8日にち
			明治めいじ13年ねん（1880年ねん）9月がつ	廃はい官かん

武庫むこ・菟うさぎ原はら郡ぐん長ちょう

代だい	氏名しめい	就任しゅうにん年月日ねんがっぴ	退任たいにん年月日ねんがっぴ	備考びこう
1		明治めいじ13年ねん（1880年ねん）9月がつ
			明治めいじ29年ねん（1896年ねん）3月がつ31日にち	武庫むこ郡ぐん・八はち部ぶ郡ぐんとの合併がっぺいにより菟うさぎ原はら郡ぐん廃止はいし

参考さんこう文献ぶんけん

• 「角川かどかわ日本にっぽん地名ちめい大だい辞典じてん」編纂へんさん委員いいん会かい 編へん『角川かどかわ日本にっぽん地名ちめい大だい辞典じてん』 28 兵庫ひょうご県けん、角川書店かどかわしょてん、1988年ねん9月がつ1日にち。ISBN 4040012801。 
• 旧きゅう高こう旧領きゅうりょう取調とりしらべ帳ちょうデータベース
• 魚崎うおざき町まち誌し編纂へんさん委員いいん会かい 編へん『魚崎うおざき町まち誌し』魚崎うおざき町まち誌し編纂へんさん委員いいん会かい、1957年ねん。 

関連かんれん項目こうもく

• 菟うさぎ原ばら(うない、うなひ)
• 消滅しょうめつした郡ぐんの一覧いちらん

先代せんだい -----

行政ぎょうせい区くの変遷へんせん - 1896年ねん

次代じだい 武庫むこ郡ぐん