電子でんし伝達でんたつけい

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かく生物せいぶつでは、ミトコンドリアの電子でんし伝達でんたつけい酸化さんかてきリン酸化さんかとなる。クエン酸くえんさん回路かいろつくられたNADHコハクさん酸化さんかされ、ATP合成ごうせい酵素こうそにエネルギーをあたえる。
かいとうけいクエン酸くえんさん回路かいろ

電子でんし伝達でんたつけい(でんしでんたつけい、えい: Electron transport chain)は、生物せいぶつこう呼吸こきゅうおこなときこす複数ふくすう代謝たいしゃけい最終さいしゅう段階だんかい反応はんのうけいであり、酸化さんか還元かんげん反応はんのうにより電子でんし供与きょうよたいから電子でんし受容じゅようたい電子でんし移動いどうする一連いちれん生物せいぶつがくてき過程かていのことである。別名べつめい水素すいそ伝達でんたつけい電子でんし伝達でんたつくさり呼吸こきゅうくさりなどともばれる。水素すいそ伝達でんたつけいという言葉ことば高校こうこう教科きょうか改定かいてい正式せいしきになくなった(ただ言葉ことばとして使つかっているひとはいる)。

概要がいよう[編集へんしゅう]

電子でんし伝達でんたつけい最終さいしゅうてき電子でんし受容じゅようたいは、酸素さんそ分子ぶんしである。電子でんし伝達でんたつけいは、光合成こうごうせいによる太陽光たいようあきらからのエネルギーの抽出ちゅうしゅつや、とう酸化さんか細胞さいぼう呼吸こきゅうひとしもちいられる。かく生物せいぶつでは、ATP合成ごうせい酵素こうそによる酸化さんかてきリン酸化さんかとなっているミトコンドリアないまく重要じゅうよう電子でんし伝達でんたつけい発見はっけんされている。また、みどりたいチラコイドまくでもられる。

電子でんし伝達でんたつけいは、電子でんし供与きょうよたいから電子でんし受容じゅようたい電子でんし移動いどうさせる酸化さんか還元かんげん反応はんのうである。電子でんし伝達でんたつけいは、空間くうかんてきはなれた酸化さんか還元かんげんけい形成けいせいし、そのなか電子でんし電子でんし供与きょうよたいから電子でんし受容じゅようたい伝達でんたつされる。これらの反応はんのう駆動くどうするちからは、反応はんのうぶつ生成せいせいぶつギブス自由じゆうエネルギーである。けい全体ぜんたいのギブス自由じゆうエネルギーをらすすべての反応はんのうは、ねつ力学りきがくてき自発じはつてきこる。電子でんし移動いどうは、まくとおしたプロトンの移動いどう共役きょうやくしており、プロトン勾配こうばいつくる。プロトン勾配こうばい仕事しごとすのにもちいられる。1つの電子でんし移動いどうからやく30単位たんい仕事しごとおこなわれる。

生体せいたいまく内側うちがわ外側そとがわプロトン(水素すいそイオン)の濃度のうどしょうじさせることが目的もくてきであり、このプロトン濃度のうど勾配こうばい利用りようして、最終さいしゅうてきATP合成ごうせい酵素こうそATP生成せいせいする。ここでいうまくとは、かく生物せいぶつ場合ばあいミトコンドリアうちまくであり、原核げんかく生物せいぶつ場合ばあい細胞さいぼうまくのことである。これらのまくじょう存在そんざいする呼吸こきゅうくさりふく合体がったい電子でんしながれることによってプロトンポンプおよびスカラー反応はんのうがおこり、プロトンがまく内側うちがわから外側そとがわされプロトン濃度のうど勾配こうばいしょうじる。

電子でんし伝達でんたつけい機能きのうは、酸化さんか還元かんげん反応はんのう結果けっかとして、まく内外ないがいにプロトン勾配こうばいつくすことである[1]。プロトンがまくとおしてもどれば、細菌さいきんむち回転かいてんとう機械きかいてき仕事しごとおこなうことができる。ATP合成ごうせい酵素こうそはこの機械きかいてき仕事しごと化学かがくエネルギーに変換へんかん細胞さいぼうのエネルギーげんとするもので、すべての生物せいぶつたか保存ほぞんせい[2]

また、光合成こうごうせいでも電子でんし伝達でんたつけい存在そんざいしており、これはみどりたいチラコイドまく存在そんざいするシトクロムb6/fふく合体がったいにておこなわれる。みどりたいでは、ひかりみずから酸素さんそNADP+からNADPHへの変換へんかん駆動くどうし、細胞さいぼうまくとおしてプロトンを移動いどうさせる。ミトコンドリアでは、プロトン勾配こうばい形成けいせい必要ひつよう酸素さんそからみずNADHからNAD+、コハクさんからフマルさんへの変換へんかんこる。

電子でんし伝達でんたつけいは、酸素さんそ電子でんしわたおもとなってちょう酸化さんかぶつしょうじ、酸化さんかストレス増加ぞうかさせる。

電子でんし伝達でんたつけいのポイントとなるのは、かいとうけいクエン酸くえんさん回路かいろしょうじた還元かんげんがた酵素こうそNADH+H^+FADH2がもっている水素すいそイオンH+と電子でんしe-である。これらがミトコンドリアをつつじゅうまくはたらくことで、最終さいしゅうてきにたくさんのATPH2Oになる。

6O2 + 10(NADH+H^+)+ 2FADH2 + 34(ADPリンさん)→12H2O+10NAD+ + 2FAD + 34ATP

呼吸こきゅうくさりふく合体がったい[編集へんしゅう]

呼吸こきゅうくさりふく合体がったい(こきゅうさふくごうたい)とは、細胞さいぼう呼吸こきゅうこう呼吸こきゅう嫌気いやけ呼吸こきゅうかかわらず)をおこなうほとんどの生物せいぶつられるまくミトコンドリアうちまくチラコイドまく原核げんかく生物せいぶつ細胞さいぼうまく)に存在そんざいする分子ぶんしりょう10まんから100まん程度ていど巨大きょだいタンパク質たんぱくしつである。呼吸こきゅうくさりふく合体がったい I, II, III, IV からなり、ATP合成ごうせい酵素こうそ呼吸こきゅうくさりふく合体がったい V とすることもある。

ミトコンドリアにおける電子でんし伝達でんたつけい[編集へんしゅう]

ほとんどのかく生物せいぶつ細胞さいぼうはミトコンドリアをち、クエン酸くえんさん回路かいろβべーた酸化さんかタンパク質たんぱくしつ代謝たいしゃ生成せいせいぶつ(NADHやFADH2)からATPを合成ごうせいする。ミトコンドリアないまくでは、NADHとコハクさん由来ゆらい電子でんし電子でんし伝達でんたつけいとおって酸素さんそわたされ、酸素さんそみず還元かんげんされる。電子でんし伝達でんたつけいには、電子でんし供与きょうよたい電子でんし受容じゅようたいかかわる一連いちれん酵素こうそふくまれる。各々おのおの電子でんし供与きょうよたいは、電気でんき陰性いんせいがよりひく電子でんし受容じゅようたい電子でんしわたし、この電子でんしつぎ電子でんし受容じゅようたいあたえられ、この一連いちれんのプロセスは、このくさりもっと電気でんき陰性いんせいひく酸素さんそ電子でんしとどくまでつづく。電子でんし供与きょうよたいから電子でんし受容じゅようたい電子でんしわたされるとエネルギーが放出ほうしゅつされ、このエネルギーによりプロトンポンプうごかすことで、ミトコンドリアまく内外ないがいにプロトン勾配こうばい形成けいせいされる。この全体ぜんたいのプロセスでは、水素すいそ酸化さんかエネルギーをもちいてADPがATPにリン酸化さんかされるため、酸化さんかてきリン酸化さんかばれる。

ミトコンドリアの電子でんし伝達でんたつけいでは、4つのまく結合けつごうふく合体がったい同定どうていされており、各々おのおの非常ひじょう複雑ふくざつまく貫通かんつう構造こうぞうによってうちまくまれている。この構造こうぞう電気でんきてきに、脂質ししつ電子でんしキャリア、みず電子でんしキャリアとつながっている。

この順番じゅんばんに、電子でんし一連いちれん酸化さんか還元かんげん反応はんのうとおしてNADHユビキノールひとし電子でんし供与きょうよたいから、最終さいしゅうてき電子でんし受容じゅようたいである酸素さんそ分子ぶんし移動いどうする。これにともない、ふく合体がったいI、ふく合体がったいIII、ふく合体がったいIVがプロトンポンプ機構きこうならびにスカラー反応はんのうこして、プロトンまくがい能動のうどう輸送ゆそうする。ふく合体がったいIIはこう呼吸こきゅうにおけるプロトン濃度のうど勾配こうばい形成けいせいには寄与きよしないが、電子でんし伝達でんたつけい一部いちぶである還元かんげんがたユビキノンしょうじる。

ふく合体がったいIは、クエン酸くえんさん回路かいろ電子でんしキャリアであるNADHから電子でんしってコエンザイムQ(ユビキノン)にわたす。ユビキノンはふく合体がったいIIからも電子でんしる。ユビキノンはふく合体がったいIIIに電子でんしわたし、いでその電子でんしシトクロムcふく合体がったいIVにじゅんわたり、ここで電子でんし水素すいそイオンは、酸素さんそ分子ぶんしみず還元かんげんするためにもちいられる。

NADH+H+ふく合体がったい I
  ↓   ← ふく合体がったい II ← コハクさん
ユビキノン
  ↓
ふく合体がったい III
  ↓
シトクロム cふく合体がったい IV
  ↓
   O2

電子でんし伝達でんたつによってられたエネルギーは、ミトコンドリアマトリックスからまくあいだ空間くうかんにプロトンをすのにもちいられ、このとき輸送ゆそうされたプロトンによりミトコンドリアないまく内外ないがいに、ΔでるたΨぷさいばれる電気でんき化学かがくてきポテンシャル(プロトンによってしょうじるpHおよび電荷でんか)がつくされる。これがプロトン駆動くどうりょく原動力げんどうりょくとなり、ATP合成ごうせい酵素こうそがマトリックスがわもどるプロトンを利用りようして、ADPと無機むきリンさんからATPを合成ごうせいする(酸化さんかてきリン酸化さんか)ことが可能かのうとなる。

一連いちれんのプロセスをず、酸素さんそ直接ちょくせつわたされる電子でんしもわずかに存在そんざいし、酸化さんかストレスをもたらし病気びょうき老化ろうかこすとかんがえられているちょう酸化さんかフリーラジカル形成けいせいする。

ふく合体がったいI[編集へんしゅう]

ふく合体がったいIのしき

ふく合体がったいIでは、かいとうけいおよびクエン酸くえんさん回路かいろからられたNADHから2つの電子でんしのぞかれ、脂質ししつ溶キャリアであるユビキノンにうつされる。ユビキノンの還元かんげん生成せいせいぶつであるユビキノールまく内部ないぶ自由じゆう拡散かくさんし、つぎふく合体がったいIIIに電子でんし伝達でんたつおこなう。ふく合体がったいIはプロトンポンプ機構きこう(プロトンがまく通過つうかする機構きこう)およびキノンサイクル機構きこうもちいて4つのプロトンをまくとおして移動いどうさせ、プロトン勾配こうばいつくる。ふく合体がったいIは、電子でんし酸素さんそに「れ」、ちょう酸化さんかぶつ形成けいせいされるおも場所ばしょである[3]

電子でんし伝達でんたつ経路けいろは、以下いかとおりである。

いち段階だんかい電子でんし反応はんのうで、NADHはNAD+に酸化さんかされ、FMNはFMNH2還元かんげんされる。FMNH2はその段階だんかいいち電子でんし反応はんのうセミキノンちゅうあいだたい酸化さんかされる。各々おのおの電子でんしは、FMNH2からてつ硫黄いおうクラスターへ、てつ硫黄いおうクラスターからユビキノンへ伝達でんたつされる。1つ電子でんし伝達でんたつによってフリーラジカル(セミキノン)がしょうじ、2つ電子でんし伝達でんたつによってセミキノンを還元かんげんし、ユビキノールがしょうじる。このプロセスの過程かていで、4つのプロトンがマトリックスがわからまくあいだ空間くうかん移動いどうされる[3]

ふく合体がったいIは NADH からユビキノン電子でんし伝達でんたつおこな反応はんのうにない、NADH を電子でんし伝達でんたつたいもちいる生物せいぶつぐんすべふく合体がったいI を所持しょじしている。ふく合体がったいI は以下いか構成こうせいしめしている。

  • 原核げんかく生物せいぶつ分子ぶんしりょうやく 50 まん、サブユニットすう:14 nuo,nqr オペロンにコードされる。
  • ミトコンドリア分子ぶんしりょうやく 100 まん、サブユニットすう:42 mtDNA に 7 かくゲノムに 35
  • みどりたい分子ぶんしりょうやく 55 まん詳細しょうさいあきらかになっていない

最小さいしょう機能きのう単位たんい原核げんかく生物せいぶつふく合体がったい I である。まく貫通かんつうがたサブユニットおよび細胞さいぼうしつ突出とっしゅつするおもてざいせいサブユニットからなり L 構造こうぞうっている。おもてざいせいサブユニットの構造こうぞうが2006ねんに、まく貫通かんつうがたサブユニットもふくめた全体ぜんたい構造こうぞうが2010ねんあきらかにされた。

おもてざいせいサブユニット
まく貫通かんつうがたサブユニット
  • てつ-硫黄いおうタンパク質たんぱくしつ
  • プロトンポンプ
  • ユビキノン酸化さんか還元かんげんタンパク質たんぱくしつ

電子でんし伝達でんたつ以下いか手順てじゅんおこなわれる。

ユビキノールまくない拡散かくさんし、ユビキノールを還元かんげんするふく合体がったいIII あるいはIV(原核げんかく生物せいぶつふく合体がったいIV はユビキノールを還元かんげんする)に電子でんし伝達でんたつをおこなう。

ふく合体がったいI はもともと水素すいそ酸化さんかがた [NiFe]-ヒドロゲナーゼを起源きげんつ。その、NADH 酸化さんかのう、フラビン (FMN) の獲得かくとくおよび NiFe 活性かっせい中心ちゅうしんうしない、現在げんざいかたちいたったとかんがえられている。シアノバクテリアにもふく合体がったい I は存在そんざいし、「NADPH:プラストキノン酸化さんか還元かんげん酵素こうそ」として稼動かどうしているとわれているが詳細しょうさいあきらかになっておらず、今後こんご研究けんきゅうたれる。

ふく合体がったいII[編集へんしゅう]

ふく合体がったいIIのしき

ふく合体がったいIIはSDHA・SDHB・SDHC・SDHDの4つのタンパク質たんぱくしつサブユニットから構成こうせいされ、コハクさん由来ゆらいする追加ついか電子でんしがキノンプールにはいり、FADかいしてキノンにうつされる。脂肪酸しぼうさんグリセロール3-リンさんひとしべつ電子でんし供与きょうよたいも、キノンに電子でんし供給きょうきゅうできる。ふく合体がったいIIはふく合体がったいIと平行へいこう電子でんし伝達でんたつ経路けいろであるが、ふく合体がったいIとはことなり、この経路けいろではまくあいだ空間くうかんにプロトンが輸送ゆそうされない。このため、ふく合体がったいIIでは電子でんし伝達でんたつけい全体ぜんたいにもたらすエネルギーがすくない。

ふく合体がったいII はコハクさん酸化さんかおよびフマルさん還元かんげん両方向りょうほうこう反応はんのうにない、以下いか役割やくわりをになう。

  • こう条件じょうけん — コハクさんからキノンへの電子でんし伝達でんたつおこなう「コハクさん:ユビキノン酸化さんか還元かんげん酵素こうそ
  • 嫌気いやけ条件じょうけん — ロドキノールからフマルさんへの電子でんし伝達でんたつおこなう「ロドキノール:フマルさん酸化さんか還元かんげん酵素こうそ

呼吸こきゅうくさりふく合体がったいでは唯一ゆいいつプロトン電気でんき化学かがくてきポテンシャル形成けいせいには関与かんよしないが、嫌気いやけ条件じょうけん反応はんのう共役きょうやくしてふく合体がったい I のプロトンポンプ機構きこう稼動かどうさせるシステムをになう。

ふく合体がったいII は以下いか構成こうせいからなる。

おもてざいせいサブユニット
  • コハクさん、フマルさん酸化さんか還元かんげんかかわるフラビンタンパク質たんぱくしつ (FAD)
まくないサブユニット
  • Fe-S タンパク質たんぱくしつ
  • シトクロム b(ユビキノン酸化さんか還元かんげんかかわる)

こうてき電子でんし伝達でんたつ以下いか手順てじゅんおこなわれる。

収支しゅうししき

嫌気いやけてき電子でんし伝達でんたつ以下いか手順てじゅんおこなわれる。

  • ふく合体がったいI 由来ゆらいのロドキノール → Fe-S クラスター → フマルさん

収支しゅうししき

  • フマルさん + 2 プロトン + ロドキノール → コハクさん + ロドキノン

ふく合体がったいIIはフマルさん還元かんげん酵素こうそ起源きげんとする。そのユビキノン酸化さんかのうなどを獲得かくとくしていき、現在げんざいかたちになったとかんがえられる。

ふく合体がったいIII[編集へんしゅう]

ふく合体がったいIIIのしき

ふく合体がったいIIIではふく合体がったいIあるいはふく合体がったいIIにてしょうじたユビキノールを酸化さんかしてスカラー反応はんのうまく内側うちがわ還元かんげん反応はんのうこり、それによってまく外側そとがわ酸化さんか反応はんのうこってプロトンを間接かんせつてき放出ほうしゅつする機構きこう)によってプロトンをまくがい放出ほうしゅつする。反応はんのうしき以下いかとおりである。

  • ユビキノール+2シトクロムc (Fe3+) +2H+in → ユビキノン+2シトクロムc (Fe2+) +4H+out

電子でんし伝達でんたつたいとしてシトクロムcの還元かんげんがたしょうじ、つぎふく合体がったいIVに電子でんし伝達でんたつおこなう。

ふく合体がったいIIIでは、ユビキノンサイクル非対称ひたいしょうなプロトンの吸収きゅうしゅう/放出ほうしゅつによってプロトン勾配こうばいつくる。QO部位ぶいのユビキノールから2つの電子でんしのぞかれ、まくあいだ空間くうかん位置いちするみず電子でんしキャリアであるシトクロムcに伝達でんたつされる。つづいてべつの2つの電子でんしはQi部位ぶいいたり、ここでユビキノンのキノン部分ぶぶんがキノールに還元かんげんされる。プロトン勾配こうばいは、QO部位ぶいでのキノールの酸化さんか形成けいせいされ、Qi部位ぶいでキノールを形成けいせいする(合計ごうけいで6つのプロトンが移動いどうする。2つがキノンをキノールに還元かんげんし、2分子ぶんしのユビキノールから2つのプロトンが放出ほうしゅつされる)。

アンチマイシンAひとし作用さよう電子でんし伝達でんたつると、ふく合体がったいIIIから酸素さんそ分子ぶんし直接ちょくせつ電子でんしわたるようになり、ちょう酸化さんかぶつ形成けいせいされる。

ふく合体がったいIIIはユビキノールからシトクロム c電子でんし伝達でんたつおこない、まさしくは「ユビキノール:シトクロムc 酸化さんか還元かんげん酵素こうそ」とばれる。こう呼吸こきゅうおこなしんかく生物せいぶつはすべてミトコンドリアないまくふく合体がったい III を所持しょじしている。また、みどりたいのシトクロム b6/f ふく合体がったいふく合体がったい III に対応たいおうする。現在げんざいウシシトクロム bc1 ふく合体がったい立体りったい構造こうぞうあきらかになっている。ふく合体がったい III の構成こうせい以下いかのようになっている。

みどりたいではシトクロム b のヘムが b6 であり、シトクロム c1わりにシトクロム f およびサブユニット IV が結合けつごうしている。

電子でんし伝達でんたつ以下いか手順てじゅんおこなわれる。

  • ユビキノール → リスケ Fe-S タンパク質たんぱくしつ → シトクロム cFe2+

ただし、シトクロム b でのスカラー反応はんのうにより、以下いか電子でんし伝達でんたつおこなわれる。

  • ユビキノール → ヘム bL → ヘム bH → リスケ Fe-S タンパク質たんぱくしつ → シトクロム cFe2+

ふく合体がったいIIIはシトクロム b起源きげんに Fe-S タンパク質たんぱくしつおよびシトクロム c付加ふかされてできたとされている。

ふく合体がったいIV[編集へんしゅう]

ふく合体がったいIVのしき

ふく合体がったいIVではふく合体がったいIIIでしょうじた還元かんげんがたシトクロムcを酸化さんかしてプロトンポンプ機構きこうによりプロトンをまくがい放出ほうしゅつすると同時どうじに、こう呼吸こきゅう最終さいしゅう電子でんし受容じゅようたいである酸素さんそ電子でんし伝達でんたつおこない、みず生成せいせいする。反応はんのうしき以下いかとおりである。

  • O2+4シトクロムc2++8H+in → 2H2O+4シトクロム3++4H+out

細菌さいきんではシトクロムcのわりにキノン(メナキノン、カルダリエラキノンなど)がもちいられている。ただし、キノール酸化さんか酵素こうそ場合ばあいはプロトンポンプ機構きこうではなくスカラー反応はんのうによってプロトンが放出ほうしゅつされる。

ふく合体がったいIVでは、4分子ぶんしのシトクロムcから4つの電子でんし酸素さんそ分子ぶんしうつされ、2分子ぶんしみず形成けいせいされる。同時どうじに、4つのプロトンがマトリックスがわからのぞかれ、プロトン勾配こうばい形成けいせいされる。シトクロムcオキシダーゼの作用さようは、シアン化物ばけものによって阻害そがいされる。

ふく合体がったいIVは還元かんげんがたシトクロムcあるいはユビキノール(かく生物せいぶつはシトクロムc一部いちぶ原核げんかく生物せいぶつはユビキノールあるいはメナキノール)から最終さいしゅう電子でんし受容じゅようたい電子でんし伝達でんたつおこなう。シトクロムc酸化さんかするものは「シトクロムcオキシダーゼ」とばれる。電子でんし伝達でんたつ最終さいしゅう反応はんのうをになう重要じゅうよう酵素こうそであり、この酵素こうそ存在そんざいがゆえにこう呼吸こきゅう成立せいりつするとっても過言かごんではない。こう呼吸こきゅうおこなぜん生物せいぶつがこのふく合体がったい所持しょじしている。現在げんざいだつ細菌さいきんである Paracoccus denitrificansふく合体がったい IV の立体りったい構造こうぞうあきらかになっている。ふく合体がったい IV の構成こうせい以下いかとおりである。

  • サブユニットI(どう原子げんし、ヘム a3aちプロトンポンプ機構きこうおよび最終さいしゅう電子でんし受容じゅよう関与かんよする)
  • サブユニットII(どう原子げんしち、還元かんげんがたシトクロムc酸化さんかおこなう)
  • サブユニットIII(立体りったい構造こうぞう安定あんてい
  • サブユニットIV(立体りったい構造こうぞう安定あんてい

サブユニットI, IIでシトクロムcオキシダーゼ活性かっせい発揮はっきすることがあきらかになっている。また、上記じょうきのサブユニット構成こうせいかく生物せいぶつのものだが、原核げんかく生物せいぶつはサブユニットI にはいされているヘム種類しゅるいことなっている(ヘムb,oなど)。

電子でんし伝達でんたつ以下いか手順てじゅんおこなわれる。

  • シトクロム c Fe2+ → ヘムa,a3 → 酸素さんそ最終さいしゅう電子でんし受容じゅようたい

ふく合体がったいIVは嫌気いやけ呼吸こきゅう硝酸塩しょうさんえん呼吸こきゅうをになう NOR(一酸化いっさんか窒素ちっそ還元かんげん酵素こうそ)および N2OR(酸化さんか窒素ちっそ還元かんげん酵素こうそ)を起源きげんつとされている。その、これらの酵素こうそ酸素さんそへのたいせい獲得かくとくしたものがふく合体がったいIVとされている。

プロトン濃度のうど勾配こうばい生成せいせい[編集へんしゅう]

ATP合成ごうせい酵素こうそにおける酸化さんかてきリン酸化さんかによってATPが生成せいせいする。

ふく合体がったいI、III、IVを電子でんし1個いっこ通過つうかすると、やく5のプロトンがまくがい放出ほうしゅつされる。したがって、クエン酸くえんさん回路かいろられたNADHやFADH2総数そうすうわせると、グルコース1分子ぶんしあたけい100以上いじょうのプロトンがまくがい放出ほうしゅつされる。これによってまく内側うちがわのpHはおよそ8.0、まく外側そとがわはpH7.0と10ばいのプロトン濃度のうど勾配こうばい形成けいせいされる。

ATP合成ごうせい酵素こうそ(ミトコンドリアor細胞さいぼうまく、F0F1)はプロトン濃度のうど勾配こうばい利用りようし、酸化さんかてきリン酸化さんかによってアデノシンさんリンさん (ATP) の合成ごうせいおこなう。ATP合成ごうせい酵素こうそのF0部分ぶぶんは、プロトンをマトリックスがわもどイオンチャネルとしてはたらく。この逆流ぎゃくりゅうにより酸化さんかがた電子でんしキャリアをさいに、自由じゆうエネルギーが放出ほうしゅつされる。自由じゆうエネルギーは、ふく合体がったいのF1部分ぶぶん触媒しょくばいされるATP合成ごうせい駆動くどうする。プロトン濃度のうど勾配こうばい電子でんし伝達でんたつけい酸化さんかてきリン酸化さんか共役きょうやくさせるというプロセスは化学かがく浸透しんとう共役きょうやくせつによって説明せつめいされるもので、これはノーベル化学かがくしょう受賞じゅしょうしゃピーター・ミッチェル提唱ていしょうしたものである。ATP合成ごうせい酵素こうそ呼吸こきゅうくさりふく合体がったいVとする教科書きょうかしょ存在そんざいしている。実際じっさい高等こうとう学校がっこう生物せいぶつがくでは酸化さんかてきリン酸化さんか電子でんし伝達でんたつけいふくんでいる場合ばあいおおい。しかしながら、おおくの専門せんもんしょでは呼吸こきゅうくさりふく合体がったいはIVまでしか存在そんざいせず、『ATP合成ごうせい酵素こうそ』として表記ひょうきされている。

また、プロトン濃度のうど勾配こうばいもちいて、ATPのまくがいへの放出ほうしゅつきょう輸送ゆそうによってまくない物質ぶっしつむこともできる。

ミトコンドリアの役割やくわり[編集へんしゅう]

ミトコンドリアはピルビンさん脂肪酸しぼうさん酸素さんそADP、Pi(リンさん)を周囲しゅうい細胞さいぼうしつからみ、ピルビンさん脂肪酸しぼうさんはマトリックスないアセチルCoAえられ、クエン酸くえんさん回路かいろ経由けいゆすることでNADH二酸化炭素にさんかたんそ分解ぶんかいされる。二酸化炭素にさんかたんそはミトコンドリアがい排出はいしゅつされる。

NADHはうちまくうつり、NADに変換へんかんされる過程かていでNADHだつ水素すいそ酵素こうそふく合体がったい、チトクロムふく合体がったい、チトクロム酸化さんか酵素こうそふく合体がったいの3呼吸こきゅう酵素こうそふく合体がったいからなる電子でんし伝達でんたつけい電子でんし供給きょうきゅうし、電子でんし伝達でんたつけいはプロトン(H+)をマトリックスがわから内外ないがいつつみまくまくあいだ部分ぶぶん放出ほうしゅつする。

3呼吸こきゅう酵素こうそふく合体がったいおなじくうちまくいたATP合成ごうせい酵素こうそまくあいだ部分ぶぶんのプロトンをマトリックスがわもどときのエネルギーによって、ADPとPiから大量たいりょうのATPを合成ごうせいする。

嫌気いやけせい分解ぶんかいでは1分子ぶんしのグルコースから2分子ぶんしのATPしかられなかったのが、ミトコンドリアによるこう気性きしょう分解ぶんかいによって、1分子ぶんしのグルコースから38分子ぶんしのATPが合成ごうせいできるようになった[4]

ミトコンドリアの遺伝子いでんし欠落けつらく[編集へんしゅう]

ミトコンドリアは自身じしん環状かんじょうDNAち、おおくのタンパク質たんぱくしつ合成ごうせいくだりなえるが、内部ないぶはたらタンパク質たんぱくしつ一部いちぶなどは、宿主しゅくしゅである細胞さいぼうタンパク質たんぱくしつ生産せいさん依存いぞんしているものがある。

ATP合成ごうせい酵素こうそ
ATP合成ごうせい酵素こうそつくため必要ひつような8つのタンパク質たんぱくしつ遺伝子いでんしうち、2つはミトコンドリアにあるが、6つは細胞さいぼうかくゲノムによって生産せいさんされており、これらの細胞さいぼうがわつくられたサブユニット・タンパク質たんぱくしつがミトコンドリアへはこばれ、のミトコンドリアせいのサブユニット・タンパク質たんぱくしつ組合くみあいわされてATP合成ごうせい酵素こうそ完成かんせいし、うちまく機能きのう発揮はっきする。
かいとうけい
こう気性きしょう細菌さいきん時代じだいにはそなえていたとかんがえられるかいとうけいは、宿主しゅくしゅである細胞さいぼうそなえているためにうしなわれている。かいとう細胞さいぼうがわおこなわれる。
tRNA
ミトコンドリアないタンパク質たんぱくしつ合成ごうせい必要ひつようなtRNAのうちのいくつかはミトコンドリアでつくれないために、宿主しゅくしゅ細胞さいぼうから完成かんせいしたtRNAをってきて使用しようしている[4]

光合成こうごうせいにおける電子でんし伝達でんたつけい[編集へんしゅう]

チラコイドまくにある光合成こうごうせい電子でんし伝達でんたつけい

シトクロムb6/fふく合体がったいでは光化学こうかがくけいIIからしょうじたプラストキノン (PQ) を酸化さんかしてスカラー反応はんのうによって4のプロトンをチラコイドまくない放出ほうしゅつする。そして、電子でんしプラストシアニン (PC) に伝達でんたつし、光化学こうかがくけいI電子でんし伝達でんたつおこなう。反応はんのうしき以下いかとおりである。

  • プラストキノール+酸化さんかがたプラストシアニン+2H+out → プラストキノン+還元かんげんがたプラストシアニン+4H+in

チラコイドない腔に放出ほうしゅつされたプロトンはプロトン濃度のうど勾配こうばい利用りようしてATP合成ごうせい酵素こうそみどりたい、CFoCF1)でATP合成ごうせいもちいられる(ひかりリン酸化さんか)。シトクロムb6/fふく合体がったい呼吸こきゅうくさりふく合体がったいIIIに該当がいとうし、反応はんのうもよくている。

酸化さんかてきリン酸化さんか反応はんのうにおいて、電子でんし電子でんし伝達でんたつけいとおって、NADHとうていエネルギーの電子でんし供与きょうよたいから酸素さんそとう電子でんし供与きょうよたいはこばれる。ひかりリン酸化さんかでは、こうエネルギーの電子でんし供与きょうよたい電子でんし受容じゅようたい形成けいせい日光にっこうのエネルギーが使つかわれる。その電子でんしべつ電子でんし伝達でんたつけいによって電子でんし供与きょうよたいから電子でんし受容じゅようたい移動いどうする。

光合成こうごうせい電子でんし伝達でんたつけいは、上述じょうじゅつ酸化さんかくさりおおくのてんている。これらは可動かどう脂質ししつ溶キャリア(キノン)と可動かどうみず溶キャリア(シトクロムとう)をもちいる。

細菌さいきんにおける電子でんし伝達でんたつけい[編集へんしゅう]

一般いっぱんてきに、細菌さいきん電子でんし伝達でんたつ経路けいろ誘導ゆうどう可能かのうである。その環境かんきょうおうじ、細菌さいきんことなるぬきまくふく合体がったい合成ごうせいし、細胞さいぼうまくないことなる電子でんし伝達でんたつけいつくす。細菌さいきんは、複数ふくすうだつ水素すいそ酵素こうそ末端まったんオキシダーゼおよ末端まったんレダクターゼをふくむDNAライブラリーから電子でんし伝達でんたつけい選択せんたくする。このことから、細菌さいきん電子でんし伝達でんたつけいは、分岐ぶんきしき、モジュールしき誘導ゆうどう可能かのうであるとわれる。

フマルさんだつ水素すいそ酵素こうそ

かく生物せいぶつでは、NADHはもっと重要じゅうよう電子でんし供与きょうよたいである。関連かんれんする電子でんし伝達でんたつけいは、以下いかとおりである。
NADH ふく合体がったい I ユビキノン ふく合体がったい III シトクロム c ふく合体がったい IV O2

ここで、ふく合体がったいI、III、IVはプロトンポンプ、ユビキノンとシトクロムcは電子でんしキャリアであり、電子でんし受容じゅようたい酸素さんそ分子ぶんしである。

細菌さいきん細菌さいきんひとし原核げんかく生物せいぶつでは、電子でんし供与きょうよたい電子でんし受容じゅようたい種類しゅるいがさらにおおいため、状況じょうきょうはより複雑ふくざつである。一般いっぱんてき細菌さいきん電子でんし伝達でんたつけいは、以下いかのようなものである。

電子でんし供与きょうよたいだつ水素すいそ酵素こうそ電子でんし供与きょうよたい→  キノン   →オキシダーゼまたはレダクターゼ→電子でんし受容じゅようたいbc1電子でんし供与きょうよたい→ シトクロム →オキシダーゼまたはレダクターゼ→電子でんし受容じゅようたい

電子でんしは、だつ水素すいそ酵素こうそ、キノンプール、シトクロム電子でんしキャリアの3つの位置いちから電子でんし伝達でんたつけいはいることができる。この3つの位置いちは、そののよりちいさな、酸化さんか還元かんげん反応はんのう全体ぜんたいたいするギブス自由じゆうエネルギーの変化へんか対応たいおうする。

個々ここ細菌さいきんは、しばしば同時どうじ複数ふくすう電子でんし伝達でんたつけいもちいる。細菌さいきんは、おおくのことなる電子でんし供与きょうよたいだつ水素すいそ酵素こうそ、オキシダーゼやレダクターゼ、電子でんし受容じゅようたいもちいることができる。たとえば、大腸菌だいちょうきんは(グルコースをエネルギーげんとしてこうてきそだてると)、2種類しゅるいことなるNADHだつ水素すいそ酵素こうそと2種類しゅるいことなるキノールオキシダーゼをもちい、合計ごうけいで4種類しゅるいことなる電子でんし伝達でんたつけい同時どうじうごいている。

すべての電子でんし伝達でんたつけい共通きょうつう特徴とくちょうは、プロトン勾配こうばいつくるためのプロトンポンプの存在そんざいである。細菌さいきん電子でんし伝達でんたつけいには、ミトコンドリアと同様どうように3つか、または1ないし2つのプロトンポンプをつ。

電子でんし供与きょうよたい[編集へんしゅう]

今日きょう生物せいぶつけんでは、もっと一般いっぱんてき電子でんし供与きょうよたい有機ゆうき分子ぶんしである。有機ゆうき分子ぶんしをエネルギーげんとしてもちいる生物せいぶつは、有機ゆうき栄養えいよう生物せいぶつばれる。動物どうぶつ菌類きんるいはら生成せいせいぶつとう有機ゆうき栄養えいよう生物せいぶつ植物しょくぶつ菌類きんるいとう光合成こうごうせい生物せいぶつで、すべての生物せいぶつだい多数たすうめる。

原核げんかく生物せいぶつなかには、無機むき物質ぶっしつをエネルギーげんとしてもちいることのできるものもあり、このような生物せいぶつ無機むき栄養えいよう生物せいぶつばれる。無機むき電子でんし供与きょうよたいには、水素すいそ一酸化いっさんか炭素たんそ、アンモニア、硝酸塩しょうさんえん硫黄いおう硫化りゅうかぶつだいいちてつイオンとうがある。無機むき栄養えいよう生物せいぶつは、地球ちきゅう表面ひょうめんからすうせんm地下ちか岩石がんせき形成けいせい領域りょういき生育せいいくしているものも発見はっけんされている。その分布ぶんぷいきひろさから、実際じっさい無機むき栄養えいよう生物せいぶつは、有機ゆうき栄養えいよう生物せいぶつ光合成こうごうせい生物せいぶつ上回うわまわかず生息せいそくしているのかもしれない。

このたね代謝たいしゃは、有機ゆうき分子ぶんし利用りようよりも先立さきだっているはずであり、エネルギーげんとしての無機むき電子でんし供与きょうよたい利用りようは、とく進化しんかがく分野ぶんや興味きょうみたれている。

だつ水素すいそ酵素こうそ[編集へんしゅう]

細菌さいきん様々さまざま電子でんし供与きょうよたいもちいることができる。有機ゆうき分子ぶんしがエネルギーげんになる場合ばあいは、電子でんし供与きょうよたいはNADHかコハクさんであり、このとき電子でんしはNADHだつ水素すいそ酵素こうそかコハクさん脱水だっすいもと酵素こうそとおして電子でんし伝達でんたつけいはいる。その様々さまざまなエネルギーげんたいし、ギ酸ぎさん脱水だっすいもと酵素こうそ乳酸にゅうさん脱水だっすいもと酵素こうそ、グリセルアルデヒド-3-リンさん脱水だっすいもと酵素こうそヒドロゲナーゼひとし様々さまざまだつ水素すいそ酵素こうそもちいられる。これらのだつ水素すいそ酵素こうそにはプロトンポンプであるものや電子でんしをキノンプールにあつめるものがある。

キノンキャリア[編集へんしゅう]

キノンは、まくまれたおおきく比較的ひかくてき不動ふどう分子ぶんしふく合体がったいとおして電子でんしとプロトンをはこ脂質ししつ溶キャリアである。細菌さいきんは、ミトコンドリアが使つかうキノンとおなじユビキノンと、関連かんれんするメナキノンひとし関連かんれんするキノンをもちいる。

プロトンポンプ[編集へんしゅう]

プロトンポンプは、まく内外ないがいにプロトン勾配こうばいつくすプロセスである。プロトンは物理ぶつりてきまくとおけることができ、この現象げんしょうはミトコンドリアのふく合体がったいIおよびIVでられる。同様どうよう作用さようは、電子でんし反対はんたいがわうごくことによってもつくされる。その結果けっか、プロトンが細胞さいぼうしつがわからえ、ペリプラズムがわあらわれたようにえる。ミトコンドリアのふく合体がったいIIIはこの2つかたのプロトンポンプで、キノン(Qサイクル)によって仲介ちゅうかいされる。

すべてではないがだつ水素すいそ酵素こうそ一部いちぶもプロトンポンプである。オキシダーゼやレダクターゼのほとんどはプロトンポンプであるが、ちがうものもある。シトクロムbc1は、すべてではないがおおくの細菌さいきんられるプロトンポンプである(大腸菌だいちょうきんではられない)。その名前なまえしめとおり、細菌さいきんのbc1は、ミトコンドリアのbc1ふく合体がったいIII)にている。

プロトンポンプは、電子でんし伝達でんたつプロセスの中心ちゅうしんであり、まく内外ないがいでの電気でんき化学かがくてき勾配こうばいつくり、ATP合成ごうせい酵素こうそがATPを合成ごうせいできるようにする。

シトクロム電子でんしキャリア[編集へんしゅう]

シトクロムは、てつふく色素しきそであり、2つの非常ひじょうことなった環境かんきょうられる。

シトクロムの一部いちぶみず溶キャリアであり、まくまれたおおきく不動ふどう分子ぶんし構造こうぞうとおして電子でんしはこぶ。ミトコンドリアない可動かどうのシトクロム電子でんしキャリアは、シトクロムcである。細菌さいきんは、おおくのことなる可動かどうのシトクロム電子でんしキャリアをもちいる。

べつ種類しゅるいのシトクロムは、ふく合体がったいIIIやIVとうおおきな分子ぶんしちゅうられる。これらの機能きのう電子でんしキャリアであるが、非常ひじょうことなるてんは、分子ぶんしない固体こたい環境かんきょう存在そんざいしているてんである。

電子でんしは、可動かどうのシトクロムかキノンのキャリアから電子でんし伝達でんたつけいないはいる。たとえば、無機むき電子でんし供与きょうよたい由来ゆらい電子でんしは、シトクロムから電子でんし伝達でんたつけいはいる。酸化さんか還元かんげんレベルがNADHよりおおきい電子でんしはいれば、電子でんし伝達でんたつけいぎゃくうごいてこうエネルギー分子ぶんしつくる。

末端まったんのオキシダーゼとレダクターゼ[編集へんしゅう]

細菌さいきんこうてき環境かんきょうそだつと、末端まったん電子でんし受容じゅようたいである酸素さんそ分子ぶんしは、オキシダーゼとばれる酵素こうそはたらきで還元かんげんされてみずとなる。細菌さいきん嫌気いやけてき環境かんきょうそだつと、末端まったん電子でんし受容じゅようたいはレダクターゼとばれる酵素こうそ還元かんげんされる。

ミトコンドリアでは、末端まったんまくふく合体がったいであるふく合体がったいIVはシトクロムオキシダーゼである。こう気性きしょう細菌さいきんは、おおくのことなる末端まったんオキシダーゼをもちいる。たとえば大腸菌だいちょうきんはシトクロムオキシダーゼもbc1ふく合体がったいたない。こうてき環境かんきょうでは、どちらもプロトンポンプである2つのことなるキノールオキシダーゼをもちいて酸素さんそみず還元かんげんする。

末端まったん電子でんし受容じゅようたい酸素さんそもちいない嫌気いやけせい細菌さいきんは、各々おのおの末端まったん電子でんし受容じゅようたいおうじたレダクターゼをつ。たとえば大腸菌だいちょうきんは、その環境かんきょう入手にゅうしゅできる受容じゅようたいおうじて、ギ酸ぎさんレダクターゼ、硝酸しょうさんレダクターゼ、硝酸しょうさんレダクターゼ、DMSOレダクターゼまたはトリメチルアミン-N-オキシドレダクターゼをもちいる。

末端まったんのオキシダーゼとレダクターゼのほとんどは誘導ゆうどう可能かのうである。これらは周囲しゅうい環境かんきょうおうじ、必要ひつようおうじて合成ごうせいされる。

電子でんし受容じゅようたい[編集へんしゅう]

嫌気いやけてき環境かんきょうでは、硝酸塩しょうさんえん硝酸塩しょうさんえんだいいちてつイオン、硫黄いおう二酸化炭素にさんかたんそギ酸ぎさんとうしょう分子ぶんし電子でんし受容じゅようたいとしてもちいられる。

電子でんし伝達でんたつけい酸化さんか還元かんげんプロセスであるため、2つの酸化さんか還元かんげんたい合計ごうけいとして記述きじゅつできる。たとえばミトコンドリアの電子でんし伝達でんたつけいは、NAD+/NADHの酸化さんか還元かんげんたいとO2/H2Oの酸化さんか還元かんげんたいとして記述きじゅつできる。NADHは電子でんし供与きょうよたい、O2電子でんし受容じゅようたいである。

ねつ力学りきがくてきに、すべての供与きょうよたい-受容じゅようたい組合くみあわせが可能かのうわけではない。受容じゅようたい酸化さんか還元かんげんポテンシャルは、供与きょうよたいのものとくらべてせいでなければならない。さらに、実際じっさい環境かんきょう条件じょうけんは、標準ひょうじゅんてき酸化さんか還元かんげんポテンシャルを適用てきようできる「標準ひょうじゅんてきな」条件じょうけん(1 mol濃度のうどぶんあつ1 atm、pH7)とはかなりことなる。たとえば、水素すいそさんせい細菌さいきん周囲しゅうい水素すいそぶんあつが10-4 atmの環境かんきょう生育せいいくする。関連かんれんする酸化さんか還元かんげん反応はんのうは、「標準ひょうじゅんてきな」条件下じょうけんかではねつ力学りきがくてき不可能ふかのうである。

関連かんれん用語ようご[編集へんしゅう]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ Murray, Robert K.; Daryl K. Granner; Peter A. Mayes; Victor W. Rodwell (2003). Harper's Illustrated Biochemistry. New York, NY: Lange Medical Books/ MgGraw Hill. pp. 96. ISBN 0-07-121766-5. https://books.google.co.jp/books?id=OJ7wAAAAMAAJ&dq=bibliogroup:%22HARPER%27S+BIOCHEMISTRY%22&ei=YwSjS8-OIYPYlQSJp93vBw&cd=2&redir_esc=y&hl=ja 
  2. ^ Karp, Gerald (2008). Cell and Molecular Biology (5th ed.). Hoboken, NJ: John Wiley & Sons. p. 194. ISBN 978-0-470-04217-5. https://books.google.co.jp/books?ei=IwGjS5T1MI2EkASTj_D6Bw&cd=5&id=-dBqAAAAMAAJ&dq=cell+molecular+biology+%22proton+gradient%22&q=%22translocation+of+protons+by+these+electron+transporting+complexes+establishes+the+proton+gradient%22&redir_esc=y&hl=ja#search_anchor 
  3. ^ a b Garrett & Grisham, Biochemistry, Brooks/Cole, 2010, pp 598-611
  4. ^ a b 黒岩くろいわつねさちちょ 『ミトコンドリアはどこからきたか』 日本にっぽん放送ほうそう出版しゅっぱん 2000ねん6がつ30にちだい1さつ発行はっこう ISBN 4140018879

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]