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アミノ酸あみのさん代謝たいしゃ分解ぶんかい

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
クエン酸くえんさん回路かいろ(TCA回路かいろ)。アミノ酸あみのさん分解ぶんかいされるとクエン酸くえんさん回路かいろじょうかく物質ぶっしつまたはその前駆ぜんくたいになる。

アミノ酸あみのさん代謝たいしゃ分解ぶんかい(アミノさんのたいしゃぶんかい)とは、タンパク質たんぱくしつ構成こうせいする個々ここアミノ酸あみのさん分解ぶんかいされ、クエン酸くえんさん回路かいろのおのおのの物質ぶっしつ転換てんかんされるまでの代謝たいしゃ経路けいろである。

アミノ酸あみのさん最終さいしゅうてき二酸化炭素にさんかたんそみず分解ぶんかいされるか、とう新生しんせい使用しようされる。動物どうぶつ代謝たいしゃでは、アミノ酸あみのさんからのエネルギー供給きょうきゅう全体ぜんたいの10 - 15%である。

しょうじる代謝たいしゃちゅうあいだたいによるアミノ酸あみのさん分類ぶんるい

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アミノ酸あみのさんは、ピルビンさん2-オキソグルタルさんスクシニルCoAフマルさんオキサロ酢酸さくさんアセチルCoAアセト酢酸さくさんの7物質ぶっしつのうちのどれかに分解ぶんかいされ、これらのうちどれになるかで分類ぶんるいされる。

とう新生しんせいなかあいだたいであるピルビンさん2-オキソグルタルさんスクシニルCoAフマルさんオキサロ酢酸さくさんしょうじるアミノ酸あみのさんとうばらせいアミノ酸あみのさんである。アラニンアルギニンアスパラギンセリンアスパラギンさんシステイングルタミングルタミン酸ぐるたみんさんグリシンプロリンメチオニンバリンヒスチジン該当がいとうする。

ロイシンリシン炭素たんそ骨格こっかく分解ぶんかいでアセチルCoAかアセト酢酸さくさんしょうじるのでケトばらせいアミノ酸あみのさんである。動物どうぶつはアセチルCoAおよびアセト酢酸さくさんからとう合成ごうせいすることはできない。

イソロイシンチロシントリプトファントレオニンフェニルアラニンとうとケトンたい両方りょうほうわることができるためとうばらせいアミノ酸あみのさん、ケトばらせいアミノ酸あみのさん両方りょうほうねるアミノ酸あみのさんである。

アラニン、グリシン、システイン、セリン、トレオニン

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アラニンとグリシン、システイン、セリン、そしてトレオニンはピルビンさん分解ぶんかいされる。なお、トリプトファンはアラニンにも分解ぶんかいするためここにも分類ぶんるいされる。

セリンは、セリンデヒドラターゼによって脱水だっすいし、ピルビンさんあたえる。この酵素こうそはPLP酵素こうそだつアミノ反応はんのう参照さんしょう)であり、PLPシッフ塩基えんき形成けいせいしてαあるふぁ水素すいそ解離かいりさせ、さらにβべーたヒドロキシもとだつはなれする。ここでしょうじた生成せいせいぶつアミノアクリルさんで、これは酵素こうそてきにピルビンさんアンモニア加水かすい分解ぶんかいする。

システインは様々さまざま経路けいろでピルビンさん分解ぶんかいされる。システインのチオールもと硫化りゅうか水素すいそ亜硫酸ありゅうさんイオン、硫酸りゅうさんイオン、チオシアンさんイオンなどで放出ほうしゅつされる。

グリシンはセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼでセリンにえられる。この酵素こうそ因子いんしとして5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸ようさん(5,10-メチレンTHF)がもちいられる。

反応はんのう概略がいりゃく 酵素こうそとう
アラニン、グリシン、システイン、セリン、トレオニンのピルビン酸への分解経路。
アラニン、グリシン、システイン、セリン、トレオニンのピルビンさんへの分解ぶんかい経路けいろ
(1) - アラニントランスアミナーゼ
(2) - セリンデヒドラターゼ
(3) - グリシンひらききれけい
(4),(5) - セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ
(6) - L-トレオニン-3-デヒドロゲナーゼ
(7) - グリシン-C-アセチルトランスフェラーゼ
メチオニン及びシステインの代謝経路
メチオニンおよびシステインの代謝たいしゃ経路けいろ

アスパラギン、アスパラギンさん

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アスパラギンさんトランスアミナーゼでアミノ転移てんいされてオキサロ酢酸さくさんしょうじる。アスパラギンはアスパラギナーゼ加水かすい分解ぶんかいされてアスパラギンさん変換へんかんされてから同様どうようにオキサロ酢酸さくさん分解ぶんかいされる。

アルギニン、グルタミン、グルタミン酸ぐるたみんさん、ヒスチジン、プロリン

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アルギニン、グルタミン、ヒスチジン、プロリンはグルタミン酸ぐるたみんさん分解ぶんかいされ、グルタミン酸ぐるたみんさんグルタミン酸ぐるたみんさんデヒドロゲナーゼによって2-オキソグルタルさん酸化さんかされる。

グルタミンはグルタミナーゼ加水かすい分解ぶんかいされてグルタミン酸ぐるたみんさん変換へんかんされる。

ヒスチジンは、酸化さんかてきだつアミノのちイミダゾールたまきひらけたまきしてN-ホルムイミノグルタミンさんしょうじ、ホルムイミノもとテトラヒドロ葉酸ようさん(THF)に転移てんいしてグルタミン酸ぐるたみんさん5-ホルムイミノテトラヒドロ葉酸ようさん(5-ホルムイミノTHF)に分解ぶんかいされる。

アルギニンおよびプロリンはともグルタミン酸ぐるたみんさん 5-セミアルデヒドグルタミン酸ぐるたみんさんしょうじる。

反応はんのう概略がいりゃく 酵素こうそとう
アルギニン、グルタミン、ヒスチジン、プロリン、グルタミン酸の2-オキソグルタル酸への分解経路
アルギニン、グルタミン、ヒスチジン、プロリン、グルタミン酸ぐるたみんさんの2-オキソグルタルさんへの分解ぶんかい経路けいろ
(1) - グルタミン酸ぐるたみんさんデヒドロゲナーゼ
(2) - グルタミナーゼ
(3) - アルギナーゼ
(4) - オルニチン 5-トランスアミナーゼ
(5) - グルタミン酸ぐるたみんさんセミアルデヒドデヒドロゲナーゼ
(6) - プロリンオキシダーゼ
(7) - 酵素こうそ反応はんのう
(8) - ヒスチジンアンモニアリアーゼ
(9) - ウロカニンさんヒドラターゼ
(10) - イミダゾロンプロピオナーゼ
(11) - グルタミン酸ぐるたみんさんホルムイミノトランスフェラーゼ

メチオニン

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メチオニンははじめ、アデノシンさんリンさん(ATP)と反応はんのうしてS-アデノシルメチオニン(SAMもしくはAdoMet)にわる。SAMはつよいメチルもと供与きょうよたいであり、ホスファチジルエタノールアミンホスファチジルコリンにしたり、アドレナリンノルアドレナリンにしたりする。SAMは基質きしつメチルもと供与きょうよするとS-アデノシルホモシステインとなる。S-アデノシルホモシステインはアデノシンとホモシステイン加水かすい分解ぶんかいされ、そのうちホモシステインはメチルもと再生さいせいされてメチオニンにもど経路けいろとセリンと結合けつごうしてシスタチオニンになる経路けいろとにかれる。

反応はんのう概略がいりゃく 酵素こうそとう
メチオニンのスクシニルCoAまでの分解経路
メチオニンのスクシニルCoAまでの分解ぶんかい経路けいろ
(1) - メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ
(2) - メチルトランスフェラーゼ
(3) - アデノシルホモシステイナーゼ
(4) - 5-メチルTHF-ホモシステインメチルトランスフェラーゼ(メチオニンシンターゼ)
(5) - シスタチオニンβべーた-シンターゼ(PLP酵素こうそ
(6) - シスタチオニンγがんま-リアーゼ(PLP酵素こうそ
(7) - αあるふぁ-ケトさんデヒドロゲナーゼ
(8) - プロピオニルCoAカルボキシラーゼ
(9) - メチルマロニルCoAエピメラーゼ
(10) - メチルマロニルCoAムターゼ
(11) - グリシンひらききれけい
(12) - 5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸ようさんレダクターゼ

メチオニン分解ぶんかいけい異常いじょう

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ホモシステインの生成せいせい分解ぶんかいのバランスがくずれることによってこうホモシステインしょうこる。こうホモシステインしょうは、出生しゅっしょう乳児にゅうじしん血管けっかんびょう認識にんしき障害しょうがい神経しんけいかん損傷そんしょう脊椎せきついきれ脳症のうしょう原因げんいん)といった重大じゅうだい疾患しっかんこさせる。こうホモシステインしょうにんへのビタミンB6B12葉酸ようさん摂取せっしゅ予防よぼうすることができる。

ぶんえだくさりアミノ酸あみのさん

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イソロイシンとバリン

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イソロイシンとバリンの分解ぶんかいはじめの4ステップは共通きょうつうの4酵素こうそ反応はんのうする。

反応はんのう概略がいりゃく 酵素こうそとう
イソロイシンとバリンの分解経路
イソロイシンとバリンの分解ぶんかい経路けいろ
(1) - ぶんえだくさりアミノ酸あみのさんトランスアミナーゼ
(2) - ぶんえだαあるふぁケトさんデヒドロゲナーゼ(BCKDH)
(3) - アシルCoAデヒドロゲナーゼ
(4) - エノイルCoAヒドラターゼ

イソロイシン由来ゆらいの3-ヒドロキシ-2-メチルブチリルCoAの分解ぶんかい経路けいろではプロピオニルCoAのほかにアセチルCoAも生成せいせいする。

反応はんのう概略がいりゃく 酵素こうそとう
イソロイシンとバリンの分解経路
イソロイシンとバリンの分解ぶんかい経路けいろ
(1) - 3-ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼ
(2) - アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ
(3) - 3-ヒドロキシイソブチリルCoAヒドロラーゼ
(4) - 3-ヒドロキシイソ酪酸デヒドロゲナーゼ
(5) - メチルマロンさんセミアルデヒドデヒドロゲナーゼ

ロイシン

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反応はんのう概略がいりゃく 酵素こうそとう
イソロイシンとバリンの分解経路
イソロイシンとバリンの分解ぶんかい経路けいろ
(1) - ぶんえだくさりアミノ酸あみのさんトランスアミナーゼ
(2) - ぶんえだαあるふぁ-ケトさんデヒドロゲナーゼ
(3) - イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼ
(4) - メチルクロトニルCoAカルボキシラーゼ
(5) - 3-メチルグルタコニルCoAヒドラターゼ
(6) - HMG-CoAリアーゼ

ぶんえだくさりアミノ酸あみのさん分解ぶんかいけい異常いじょう

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ぶんえだαあるふぁ-ケトさんデヒドロゲナーゼ(BCKDH)が欠損けっそんすることによってメープルシロップ尿にょうしょう(えいMaple syrup urine disease,MSUD)がこる。この名称めいしょうは、酵素こうそ欠損けっそん過剰かじょうとなったぶんえだαあるふぁ-ケトさん尿にょう排出はいしゅつされ、尿にょうがメープルシロップのような芳香ほうこうていすることに由来ゆらいする。メープルシロップ尿にょうしょうつね染色せんしょくたい劣性れっせい遺伝いでんびょうであり、生後せいごすぐに治療ちりょうしなければまもなくいたる。

リシンは、全部ぜんぶで11の反応はんのうでアセト酢酸さくさんとアセチルCoAに分解ぶんかいされる。リシンには複数ふくすう代謝たいしゃ経路けいろ存在そんざいするが、哺乳類ほにゅうるい肝臓かんぞうではサッカロピンを中間ちゅうかんからだとした経路けいろおこなわれる。ぜん11の反応はんのううち反応はんのう4はPLP酵素こうそによる反応はんのう反応はんのう5はαあるふぁ-ケトさんによる酸化さんかてきだつ炭酸たんさん反応はんのう6,8,9はβべーた酸化さんか反応はんのう10,11はケトンたい生成せいせい反応はんのうである。

反応はんのう概略がいりゃく 酵素こうそとう
イソロイシンとバリンの分解経路
イソロイシンとバリンの分解ぶんかい経路けいろ
(1),(2) - サッカロピンデヒドロゲナーゼ
(3) - アミノアジピンさんセミアルデヒドデヒドロゲナーゼ
(4) - 2-アミノアジピンさんトランスアミナーゼ(PLP酵素こうそ
(5) - αあるふぁ-ケトさんデヒドロゲナーゼ
(6) - グルタリルCoAデヒドロゲナーゼ
(7) - デカルボキシラーゼ
(8) - エノイルCoAヒドラターゼ
(9) - 3-ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼ
(10) - HMG-CoAシンターゼ
(11) - HMG-CoAリアーゼ

リシン分解ぶんかいけい異常いじょう

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リシン分解ぶんかいけい最初さいしょ酵素こうそ欠損けっそんしてサッカロピンが合成ごうせいされないと、こうリシンしょうこうリシン尿にょうしょうとなる。このため、哺乳類ほにゅうるいはサッカロピンを経路けいろでリシンが分解ぶんかいされているということが解明かいめいされた。

トリプトファン

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トリプトファンは16の反応はんのうでアラニンとアセト酢酸さくさん分解ぶんかいする。1 - 5の反応はんのうキヌレニン経路けいろ一部分いちぶぶん、10 - 16の反応はんのうはリシンの分解ぶんかい経路けいろの5 - 11とおなじである。また、反応はんのう5ではベンゼンたまきひらけたまきする。

反応はんのう概略がいりゃく 酵素こうそとう
イソロイシンとバリンの分解経路
イソロイシンとバリンの分解ぶんかい経路けいろ
(1) - トリプトファン-2,3-ジオキシゲナーゼ
(2) - アリールホルムアミダーゼ
(3) - キヌレニン-3-モノオキシゲナーゼ
(4) - キヌレニナーゼ(PLP酵素こうそ
(5) - 3-ヒドロキシアントラニルさん-3,4-ジオキシゲナーゼ
(6) - アミノカルボキシムコンさんセミアルデヒドデカルボキシラーゼ
(7) - アミノムコンさんセミアルデヒドデヒドロゲナーゼ
(8) - ヒドラターゼ
(9) - デヒドロゲナーゼ
(10) - (16)はリシン分解ぶんかい経路けいろの5 - 11におなじ。

フェニルアラニン、チロシン

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フェニルアラニンはチロシンを経由けいゆしてアセト酢酸さくさんフマルさん分解ぶんかいされる。

反応はんのう概略がいりゃく 酵素こうそとう
イソロイシンとバリンの分解経路
イソロイシンとバリンの分解ぶんかい経路けいろ
(1) - フェニルアラニン 4-モノオキシゲナーゼ
(2) - チロシントランスアミナーゼ
(3) - 4-ヒドロキシフェニルピルビンさんジオキシゲナーゼ
(4) - ホモゲンチジンさん 1,2-ジオキシゲナーゼ
(5) - マレイルアセト酢酸さくさんイソメラーゼ
(6) - フマリルアセトアセターゼ

フェニルアラニン分解ぶんかいけい異常いじょう

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フェニルアラニン分解ぶんかいけい異常いじょうがあるとアルカプトン尿にょうしょうまたはフェニルケトン尿にょうしょう(PKU)が発症はっしょうする。アルカプトン尿にょうしょうは、ホモゲンチジンさん1,2-ジオキシゲナーゼの欠損けっそんこされ、多量たりょうのホモゲンチジンさん尿にょう混入こんにゅうする。ホモゲンチジンさん空気くうき酸化さんかするため尿にょう黒色こくしょくになる。一方いっぽう、フェニルケトン尿にょうしょうはフェニルアラニンが最初さいしょヒドロキシルされないことでこる。これによってちゅうのフェニルアラニンの濃度のうど上昇じょうしょうし、フェニルアラニンしょうていする。過剰かじょうとなったフェニルアラニンはべつ経路けいろフェニルピルビンさん変換へんかんされ、それが尿にょう排出はいしゅつされる。

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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