経済同友会けいざいどうゆうかい

公益社こうえきしゃ団だん法人ほうじん経済同友会けいざいどうゆうかい（けいざいどうゆうかい、英えい称しょう：Japan Association of Corporate Executives）は、日本にっぽんの企業きぎょう経営けいえい者しゃによる経済けいざい団体だんたい（利益りえき団体だんたい）。日本にっぽん経済けいざい団体だんたい連合れんごう会かい、日本にっぽん商工しょうこう会議かいぎ所しょと並ならぶ「経済けいざい三さん団体だんたい」の一ひとつである。

公益社こうえきしゃ団だん法人ほうじん経済同友会けいざいどうゆうかい
Japan Association of Corporate Executives

日本にっぽん工業こうぎょう倶楽部くらぶ別館べっかん（写真しゃしん後うしろ）
団体だんたい種類しゅるい	公益社こうえきしゃ団だん法人ほうじん
設立せつりつ	1946年ねん4月がつ30日にち
所在地しょざいち	東京とうきょう都と千代田ちよだ区く丸まるの内うち一いち丁目ちょうめ4番ばん6号ごう 日本にっぽん工業こうぎょう倶楽部くらぶ別館べっかん5階かい
法人ほうじん番号ばんごう	7010005015184
主要しゅよう人物じんぶつ	新しん浪なみ剛史たけし（代表だいひょう幹事かんじ）
活動かつどう地域ちいき	日本にっぽん
主眼しゅがん	経済けいざい人じんが個人こじんとしての自由じゆうで責任せきにんある立場たちばから、わが国くにの社会しゃかいと経済けいざいの進歩しんぽと安定あんてい、並ならびに世界せかい経済けいざいの調和ちょうわある発展はってんに寄与きよする。
従業じゅうぎょう員数いんずう	84名めい（出向しゅっこう者しゃ等とう含ふくむ）（2023年ねん7月がつ21日にち現在げんざい）
会員かいいん数すう	1,526人にん （2023年ねん7月がつ21日にち現在げんざい）
ウェブサイト	経済同友会けいざいどうゆうかい

組織そしき概要がいよう

代表だいひょう幹事かんじと内閣ないかく総理そうり大臣だいじんとの会談かいだんのバックパネルにシンボルマークが描えがかれている

企業きぎょう経営けいえい者しゃが個人こじんの資格しかくで参加さんかし、国内外こくないがいの経済けいざい社会しゃかいの諸しょ問題もんだいについて一いち企業きぎょうや特定とくてい業界ぎょうかいの利害りがいにとらわれない立場たちばから自由じゆうに議論ぎろんし、見解けんかいを社会しゃかいに提言ていげんすることを特色とくしょくとしていた。政府せいふと協調きょうちょう路線ろせんを取とることが多おおい経団連けいだんれんに比くらべて、物言ものいう姿勢しせいを重視じゅうししている。

発足ほっそくは第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんの敗戦はいせん直後ちょくごで、占領せんりょう軍ぐんによる財界ざいかいの粛清しゅくせいまたは一掃いっそうが背景はいけいにあった（公職こうしょく追放ついほう）。その結果けっか各かく企業きぎょうでは旧きゅう経営けいえい陣じんが一掃いっそうされ、部長ぶちょうクラスの中堅ちゅうけん幹部かんぶがいきなり経営けいえいの舵取かじとりを担になうこととなった。戦後せんごの混乱こんらん状じょう況きょうが続つづく中なか、若手わかて経営けいえい者しゃたちが互たがいに切磋琢磨せっさたくましながら親交しんこうを深ふかめる団体だんたいが必要ひつようであるということから、永野ながの重雄しげお（日本にっぽん製鐵せいてつ常務じょうむ）、諸井もろい貫一かんいち（秩父ちちぶセメント常務じょうむ）、堀田ほった庄三しょうぞう（住友銀行すみともぎんこう頭取とうどり）、水野みずの成夫しげお（国策こくさくパルプ常務じょうむ）、桜田さくらだ武たけし（日清紡績にっしんぼうせき社長しゃちょう）、藤井ふじい丙午ひのえうま（日本にっぽん製鐵せいてつ常務じょうむ）、郷司ごうし浩平こうへい（重要じゅうよう産業さんぎょう協議きょうぎ会かい事務じむ局長きょくちょう）、大塚おおつか万丈ばんじょう（日本にっぽん特殊とくしゅ鋼管こうかん社長しゃちょう）らを中心ちゅうしんに、米国べいこくの青年せいねん会議かいぎ所しょ（Junior Chamber International）や全米ぜんべい製造せいぞう業者ぎょうしゃ協会きょうかいを参考さんこうにしながら骨子こっしをまとめ、1946年ねん4月がつ30日にちに東京とうきょう丸まるの内うちの日本にっぽん工業こうぎょう倶楽部くらぶ2階かい食堂しょくどうにて設立せつりつ総会そうかいが開ひらかれた。司会しかいを務つとめたのは当時とうじは全まったく無名むめいの日本にっぽん電子でんし工業こうぎょう常務じょうむで36歳さいの鹿内しかない信隆のぶたか。鹿内しかないは「財界ざいかい四天王してんのう」からの信任しんにんを得えての抜擢ばってき。鹿内しかないは、1971年ねん4月がつ14日にち、同おなじ場所ばしょで開催かいさいされた経済同友会けいざいどうゆうかい創立そうりつ25周年しゅうねん総会そうかいでは、フジサンケイグループ会議かいぎ初代しょだい議長ぎちょうとして開会かいかいの挨拶あいさつに立たち、感激かんげきに満みちた一語いちご一いち語ごに昔むかしを知しる者ものは、深ふかい感慨かんがいに胸むねを打うたれた。

2010年ねんに社団しゃだん法人ほうじんから公益社こうえきしゃ団だん法人ほうじんに移行いこうした。

創立そうりつ時じの幹事かんじ

氏名しめい	肩書かたがき	年齢ねんれい
青木あおき均一きんいつ	品川白煉瓦しながわしろれんが社長しゃちょう	48
磯村いそむら乙おつ巳み	保土谷化学工業ほどがやかがくこうぎょう社長しゃちょう	41
岩井いわい雄二郎ゆうじろう	岩井いわい産業さんぎょう社長しゃちょう	43
牛尾うしお健治けんじ	神戸銀行こうべぎんこう取締役とりしまりやく	47
大塚おおつか万丈ばんじょう	日本にっぽん特殊とくしゅ鋼管こうかん社長しゃちょう	49
金井かない寛人ひろと	日本にっぽん塩しお扱社長ちょう	48
川勝かわかつ傳つたえ	寺田てらだ合名ごうめい理事りじ	44
川北かわきた禎一ていいち	日本銀行にっぽんぎんこう理事りじ	49
栗本くりもと順三じゅんぞう	栗本くりもと鐵工てっこう所しょ顧問こもん	44
小池こいけ厚あつし之これ助すけ	山一證券やまいちしょうけん社長しゃちょう	47
郷司ごうし浩平こうへい	重要じゅうよう産業さんぎょう協議きょうぎ会かい事務じむ局長きょくちょう	45
櫻田さくらだ武たけし	日清紡績にっしんぼうせき社長しゃちょう	42
鹿内しかない信隆のぶたか	日本にっぽん電子でんし工業こうぎょう常務じょうむ	34
島田しまだ藤ふじ	島しま藤ふじ組ぐみ社長しゃちょう	50
清水しみず康雄やすお	清水しみず組ぐみ社長しゃちょう	45
鈴木すずき治雄はるお	昭和電工しょうわでんこう常務じょうむ	33
鈴木すずき万平まんぺい	東洋紡績とうようぼうせき社長しゃちょう	42
武富たけとみ英一ひでかず	大成建設たいせいけんせつ会長かいちょう	59
寺田てらだ栄吉えいきち	大だい日本にっぽん紡績ぼうせき常務じょうむ	44
永野ながの重雄しげお	日本にっぽん製鐵せいてつ取締役とりしまりやく	45
野田のだ信夫しのぶ	三菱重工業みつびしじゅうこうぎょう調査ちょうさ役やく	53
萩尾はぎお直ただし	東芝とうしば柳やなぎ町まち工場こうじょう副ふく工場こうじょう長ちょう	48
藤井ふじい丙午ひのえうま	鉄鋼てっこう協議きょうぎ会かい事務じむ局長きょくちょう	40
帆足ほあし計はかる	日本にっぽん産業さんぎょう協議きょうぎ会かい創立そうりつ委員いいん	40
堀田ほった庄三しょうぞう	住友銀行すみともぎんこう東京とうきょう支店してん長ちょう	47
松本まつもと幹みき一郎いちろう	明治めいじ鉱業こうぎょう社長しゃちょう	51
森もり暁あきら	昭和電工しょうわでんこう社長しゃちょう	38
諸井もろい貫一かんいち	秩父ちちぶセメント常務じょうむ	50
渡辺わたなべ忠雄ただお	三和銀行さんわぎんこう常務じょうむ	47

設立せつりつ総会そうかい後ご、幹事かんじ会かいが委任いにんを受うけて次つぎの13名めいを幹事かんじに追加ついかした。

氏名しめい	肩書かたがき
刀根とね文雄ふみお	三井精機工業みついせいきこうぎょう社長しゃちょう
今井いまい一三かずみ	三井物産みついぶっさん常務じょうむ
二宮にのみや善よし基もと	日本興業銀行にほんこうぎょうぎんこう理事りじ
藤本ふじもと輝夫てるお	理研りけん工業こうぎょう社長しゃちょう
水野みずの成夫しげお	国策こくさくパルプ常務じょうむ
正田しょうだ英三郎えいざぶろう	日清製粉にっしんせいふん社長しゃちょう
堀ほり武芳たけよし	日本にっぽん勧業かんぎょう銀行ぎんこう理事りじ
麻生あそう太賀たが吉きち	麻生あそうセメント社長しゃちょう
熊沢くまさわ貞夫さだお	王子製紙おうじせいし取締役とりしまりやく
寺岡てらおか恭次郎きょうじろう	芝浦しばうら工こう機き理事りじ
瀬戸せと弥わたる三さん	日本鋼管にほんこうかん取締役とりしまりやく
永井ながい仙吉せんきち	日興証券にっこうしょうけん取締役とりしまりやく
中村なかむら隆一りゅういち	日立製作所ひたちせいさくしょ総務そうむ部長ぶちょう

企業きぎょう民主みんしゅ化か提案ていあんと大塚おおつか万丈ばんじょう

戦後せんごGHQはポツダム宣言せんげんに基もとづき、経済けいざいの民主みんしゅ化かを推おし進すすめていった。同友会どうゆうかいとしても議論ぎろん・見解けんかいを整理せいりする必要ひつように迫せまられ、1947年ねん1月がつに大塚おおつか万丈ばんじょうを委員いいん長ちょうとする経済けいざい民主みんしゅ化か委員いいん会かいを発足ほっそくさせた。大塚おおつかは精力せいりょく的てきに調査ちょうさ活動かつどうを進すすめ、企業きぎょう活動かつどうの中心ちゅうしんは株主かぶぬしでなく経営けいえい者しゃに置おかれるべきであるとしたジェームズ・バーナムの『経営けいえい者しゃ革命かくめい』などを参考さんこうにして試案しあんをまとめ、同年どうねん8月がつに「修正しゅうせい資本しほん主義しゅぎの構想こうそう」という表題ひょうだいで起草きそうされた。

大塚おおつか試案しあんは企業きぎょうの民主みんしゅ化か改革かいかくを大胆だいたんに謳うたったもので、

1. 企業きぎょうは経営けいえい、資本しほん、労働ろうどうの三さん者しゃで構成こうせいされる協同体きょうどうたいとする
2. 企業きぎょうの最高さいこう意思いし決定けってい機関きかんとして「企業きぎょう総会そうかい」を置おき、経営けいえい、資本しほん、労働ろうどうの三さん者しゃの代表だいひょうで構成こうせいする
3. 企業きぎょう利潤りじゅんの分配ぶんぱいは、経営けいえい、資本しほん、労働ろうどうの三さん者しゃが対等たいとうの権利けんりを有ゆうする

という画期的かっきてきな内容ないようであった。しかし、あまりにもラディカルであったため、財界ざいかいの保守ほしゅ派はから資本しほん主義しゅぎの否定ひていにつながると批判ひはんを浴あび、同友会どうゆうかい内部ないぶでも青木あおき均一きんいつや磯村いそむら乙おつ巳みらの保守ほしゅ派はは激はげしく反発はんぱつした。事態じたい収拾しゅうしゅうのため、大塚おおつか試案しあんについては同友会どうゆうかい見解けんかいとして機関きかん決定けっていしないこととした。全体ぜんたいの合意ごういを得えるには至いたらなかったものの、流行りゅうこう語ごとなった「修正しゅうせい資本しほん主義しゅぎ」という言葉ことばとともに、同友会どうゆうかいの進歩しんぽ性せいを大おおきく世間せけんに印象いんしょう付つけることとなった。またこれ以後いご、労使ろうし協調きょうちょうをベースに問題もんだいの解決かいけつを図はかる姿勢しせいが同友会どうゆうかいに定着ていちゃくすることとなり、大塚おおつか試案しあんが果はたした役割やくわりは決けっして小ちいさいものではなかったといえる。

主おもな活動かつどう・提言ていげん

発足ほっそく以来いらい、同友会どうゆうかいは様々さまざまな提言ていげんや活動かつどうを行おこなってきた。ここでは以下いかに主おもなものを紹介しょうかいする。

生産せいさん性せい運動うんどう

第だい二に次じ大戦たいせん後ごの西欧せいおう諸国しょこくでは疲弊ひへいした経済けいざいを再建さいけんするため、米国べいこくの生産せいさん性せいの高たかさに学まなぶべきだという気運きうんが高たかまり、各国かっこくで生産せいさん性せい向上こうじょう運動うんどうが展開てんかいされていた。日本にっぽんにおいても1950年代ねんだい初頭しょとうに大だい争議そうぎを経験けいけんし、労使ろうしが対決たいけつし合あうだけでなく経営けいえい者しゃの側がわから新あたらしい経営けいえい理念りねんを提示ていじして状況じょうきょうの打開だかいを図はかるべきであるという意見いけんが強つよまっていた。

1953年ねんにヨーロッパ視察しさつを行おこなった郷司ごうし浩平こうへいは、ただちに各かく方面ほうめんに生産せいさん性せい運動うんどうの導入どうにゅうを働はたらきかけていった。経済けいざいの復興ふっこうと成長せいちょうによる資本しほん主義しゅぎ体制たいせいの安定あんてい化かを期待きたいした米国べいこくの支援しえんもあって、1955年ねん3月1日にちに、

1. 雇用こようの維持いじ拡大かくだい
2. 労使ろうしの協力きょうりょくと協議きょうぎ
3. 成果せいかの公平こうへいな分配ぶんぱい

の三さん原則げんそくを柱はしらとして日本にっぽん生産せいさん性せい本部ほんぶが発足ほっそくした。初代しょだい会長かいちょうに石坂いしざか泰三たいぞう（東芝とうしば社長しゃちょう）、副ふく会長かいちょうに永野ながの重雄しげお（富士ふじ製鐵せいてつ社長しゃちょう）と中山なかやま伊知郎いちろう（一橋大学ひとつばしだいがく教授きょうじゅ）、専務せんむ理事りじに郷司ごうしが就任しゅうにんした。郷司ごうしは後のちに第だい3代だい会長かいちょうとなる。

生産せいさん性せい運動うんどうについての労働ろうどう界かいの反応はんのうは、同盟どうめいは「日本にっぽん経済けいざいの自立じりつと国民こくみん生活せいかつの向上こうじょうを目指めざす総合そうごう的てき施策しさくに貫つらぬかれた運動うんどうである」と好意こうい的てきであったが、総評そうひょうは「経営けいえい者しゃ側がわが労使ろうし協力きょうりょく、生産せいさん性せい向上こうじょうの美名びめいの下したに、労働ろうどう強化きょうかと賃金ちんぎん抑制よくせいを図はかる」目論見もくろみであるとして批判ひはん的てきであった。日本にっぽん生産せいさん性せい本部ほんぶは1994年ねん4月がつ1日にちに社会しゃかい経済けいざい国民こくみん会議かいぎと統合とうごうされ、社会しゃかい経済けいざい生産せいさん性せい本部ほんぶ（現げん・日本にっぽん生産せいさん性せい本部ほんぶ）に改組かいそされて現在げんざいに至いたっている。

「経営けいえい者しゃの社会しゃかい的てき責任せきにんの自覚じかくと実践じっせん」

1955年ねん頃ごろ、政争せいそうや汚職おしょくによる政治せいじ不信ふしんの蔓延まんえんと労働ろうどう攻勢こうせいに危機きき感かんを抱だいていた大原おおはら総一郎そういちろう（倉敷くらしきレイヨン社長しゃちょう）は、議会ぎかい制せい民主みんしゅ主義しゅぎ擁護ようごのために経済けいざい界かいも積極せっきょく的てきに働はたらきかけを行おこなわなければならないと訴うったえ、財界ざいかい関係かんけい者しゃに同調どうちょうを呼よびかけていた。声望せいぼうの高たかい大原おおはらの問題もんだい意識いしきに触発しょくはつされ、同友会どうゆうかいも創立そうりつ10年ねんを期きに、企業きぎょうの社会しゃかい的てきな存在そんざい意義いぎとかくあるべき経営けいえい理念りねんのあり方かたについて、研究けんきゅうを進すすめることとなった。1956年ねん3月から8ヶ月かげつにも及およぶ研究けんきゅうと議論ぎろんを経へて、同年どうねん11月21日にちに「経営けいえい者しゃの社会しゃかい的てき責任せきにんの自覚じかくと実践じっせん」として機関きかん承認しょうにんされた。

概要がいようをまとめると、経営けいえい者しゃは「経済けいざい体質たいしつの改造かいぞう」と「企業きぎょう経営けいえいの近代きんだい化か」が最大さいだい任務にんむとされ、前者ぜんしゃにおいては

1. 社会しゃかい平衡へいこう力りょくの形成けいせい（各かく経済けいざい勢力せいりょく間あいだのチェック・アンド・バランスの確立かくりつ）
2. 公正こうせい競争きょうそうルールの確立かくりつ

が重要じゅうような方策ほうさくであり、後者こうしゃでは

1. 技術ぎじゅつ革新かくしんと市場いちば開拓かいたくを中心ちゅうしんとする企業きぎょう所得しょとくの増大ぞうだい
2. 企業きぎょう所得しょとくの公正こうせいな分配ぶんぱい
3. 後継こうけい経営けいえい者しゃの養成ようせい

が企業きぎょうが維持いじ発展はってんによって社会しゃかい的てき責任せきにんを果はたすための基本きほん的てき対策たいさくであるとしている。これを機きに、「経営けいえい者しゃ（企業きぎょう）の社会しゃかい的てき責任せきにん」という言葉ことばが広ひろく知しられるようになった。またこの理念りねんをバックボーンとして、後のちに木き川田かわた一隆かずたからによって「民間みんかん主体しゅたいの自主じしゅ調整ちょうせい」が経済けいざい人じんの社会しゃかい的てき責任せきにんとして唱となえられるようになる。

産業さんぎょう問題もんだい研究けんきゅう会かい

1965年ねん頃ころの日本にっぽん経済けいざいは、貿易ぼうえきの自由じゆう化かに伴ともなう国際こくさい収支しゅうしの悪化あっかと、過剰かじょう設備せつび投資とうしに起因きいんする需給じゅきゅうバランスの崩くずれにより不ふ況きょうに陥おちいり、山陽特殊製鋼さんようとくしゅせいこうの倒産とうさんや山一證券やまいちしょうけんへの日銀にちぎん特別とくべつ融資ゆうしの発動はつどうなどの大だい事件じけんが連発れんぱつし、経済けいざい界かいは深刻しんこくな危機きき意識いしきを持もっていた。折おりしも当時とうじ「ミスター通産省つうさんしょう」の異名いみょうを取とっていた佐橋さはし滋しげる通産省つうさんしょう企業きぎょう局長きょくちょうのイニシアティブにより、貿易ぼうえき・資本しほんの自由じゆう化かに備そなえ、競争きょうそう力りょく強化きょうかのために企業きぎょう再編さいへんを官僚かんりょう主導しゅどうで推進すいしんすることを狙ねらった「特定とくてい産業さんぎょう振興しんこう臨時りんじ措置そち法案ほうあん」が国会こっかいに提出ていしゅつされ、財界ざいかいに衝撃しょうげきを与あたえた。

各かく経済けいざい団体だんたいは猛もう反発はんぱつして法案ほうあん成立せいりつ阻止そしに動うごき、結局けっきょく廃案はいあんに終おわったが、この経緯けいいから当時とうじの代表だいひょう幹事かんじ・木き川田かわた一隆かずたか（東京電力とうきょうでんりょく社長しゃちょう）らは「石坂いしざか泰三たいぞう流りゅうのレッセ・フェール（自由じゆう放任ほうにん主義しゅぎ）では危機ききを乗のり切きるには限界げんかいがあり、政府せいふの介入かいにゅうを防ふせぐためにも、産業さんぎょう界かいが自主じしゅ的てきに調整ちょうせいを行おこなうべきだ」との思おもいを強つよくしていた。木川田きかわだと中山なかやま素もと平ひらた（日本興業銀行にほんこうぎょうぎんこう頭取とうどり）、岩佐いわさ凱実（富士銀行ふじぎんこう頭取とうどり）を中心ちゅうしんに民間みんかん版ばん産業さんぎょう調整ちょうせい会議かいぎの発足ほっそくに動うごき、1966年ねん頃ころから徐々じょじょに会合かいごうを重かさね、「産業さんぎょう経済けいざい研究けんきゅう会かい」（略称りゃくしょう「産さん研けん」）の名称めいしょうの下したで本格ほんかく的てきな活動かつどうを行おこなうこととなった。永野ながの、土光どこう敏夫としお（東芝とうしば社長しゃちょう）ら財界ざいかいの実力じつりょく者しゃが結集けっしゅうし、マスメディアは「財界ざいかい参謀さんぼう本部ほんぶ」などと書かきたてた。

国際こくさい競争きょうそうに立たち向むかうための産業さんぎょう再さい編成へんせいと経済けいざい構造こうぞうの改革かいかくについて論議ろんぎされ、積極せっきょく的てきに社会しゃかいに提言ていげんされた。代表だいひょう的てきなものとしては、投資とうしの効率こうりつ的てきな投入とうにゅうにより競争きょうそう力りょくの向上こうじょうが期待きたいできるとして八幡やはた製鐵せいてつと富士ふじ製鐵せいてつの合併がっぺいを支持しじした「『八幡やはた・富士ふじ合併がっぺいについて』の見解けんかい採択さいたく」（1968年ねん）や、1974年ねん参議院さんぎいん選挙せんきょでの自由民主党じゆうみんしゅとう大敗たいはいを期きに別働隊べつどうたいとして立たち上あげられた「政治せいじ資金しきんと議会ぎかい政治せいじの近代きんだい化か委員いいん会かい」（今里いまさと広ひろ記き委員いいん長ちょう）による「自民党じみんとうへの政治せいじ資金しきん献金けんきんを取とり止やめる絶縁ぜつえん提言ていげん」の発表はっぴょうがある。 産さん研けんは一時期いちじきは財界ざいかい五ご団体だんたい（同友会どうゆうかいのほか経団連けいだんれん、日商にっしょう、日経連にっけいれん、関経連かんけいれん）のトップがメンバーとして顔かおを揃そろえ、日本にっぽんの財界ざいかいをリードする組織そしきとして君臨くんりんするものと思おもわれたが、皮肉ひにくなことに主要しゅよう団体だんたいの協調きょうちょう体制たいせいが進すすむ一方いっぽうで、革新かくしん的てきな提言ていげんや行動こうどうは次第しだいに影かげを潜ひそめていった。木川田きかわだは1977年ねんに逝去せいきょ、後継こうけい者しゃの河野こうの文彦ふみひこ（三菱重工業みつびしじゅうこうぎょう会長かいちょう）も1982年ねんに亡なくなり、以後いご事実じじつ上じょう活動かつどうは停止ていしした。

政治せいじへの関かかわり

長年ながねん自由民主党じゆうみんしゅとうを支持しじしてきたが、2007年ねん頃ごろから民主党みんしゅとうを容認ようにんするようになり、民主党みんしゅとうへの政権せいけん交代こうたい後こうは、内閣ないかくの相談役そうだんやくに登用とうようされるようになった。しかし、自民党じみんとうの政権せいけん復帰ふっき後ごは、代表だいひょう幹事かんじの長谷川はせがわ閑史が内閣ないかくの産業さんぎょう競争きょうそう力りょく会議かいぎの一員いちいんになっている。 稀まれな例れいとしては、終身しゅうしん幹事かんじを務つとめた品川しながわ正治しょうじが「平和へいわ・民主みんしゅ・革新かくしんの日本にっぽんをめざす全国ぜんこくの会かい」（全国ぜんこく革新かくしん懇こん）代表だいひょう世話人せわにんとして日本にっぽん共産党きょうさんとうと連携れんけいしていたということがある。会員かいいんのメンバーは三極さんきょく委員いいん会かいの出席しゅっせき者しゃと重複じゅうふくすることがある。

三極さんきょく委員いいん会かいの出席しゅっせき者しゃは、経済同友会けいざいどうゆうかいや経団連けいだんれんを中心ちゅうしんとした経済けいざい三さん団体だんたいが決きめているという指摘してきがある。

歴代れきだい代表だいひょう幹事かんじ

複数ふくすう代表だいひょう幹事かんじ制せいをとっていた時期じきがあるため、在任ざいにん期間きかんが一部いちぶ重複じゅうふくしている。2010年ねんに公益社こうえきしゃ団だん法人ほうじんとなった後のちは、法律ほうりつ的てきにいう代表だいひょう理事りじを代表だいひょう幹事かんじが務つとめている。

氏名しめい	所属しょぞく（当時とうじ）	在任ざいにん期間きかん
諸井もろい貫一かんいち	秩父ちちぶセメント常務じょうむ	1946年ねん4月～1947年ねん3月がつ
大塚おおつか万丈ばんじょう	日本にっぽん特殊とくしゅ鋼管こうかん社長しゃちょう	1947年ねん4月がつ～1948年ねん4月がつ
堀田ほった庄三しょうぞう	住友銀行すみともぎんこう常務じょうむ	1947年ねん4月がつ～1948年ねん4月がつ
永野ながの重雄しげお	日本にっぽん製鐵せいてつ常務じょうむ	1948年ねん4月がつ～1950年ねん4月がつ
工藤くどう昭四郎しょうしろう	物価ぶっか庁ちょう次長じちょう	1948年ねん4月がつ～1952年ねん4月がつ 1955年ねん4月～1957年ねん4月がつ
浅尾あさお新しん甫はじめ	日本郵船にっぽんゆうせん社長しゃちょう	1950年ねん4月がつ～1951年ねん4月がつ
藤山ふじやま愛一郎あいいちろう	日東化学工業にっとうかがくこうぎょう社長しゃちょう	1951年ねん4月がつ～1952年ねん4月がつ
山際やまぎわ正道せいどう	日本輸出入銀行にほんゆしゅつにゅうぎんこう専務せんむ理事りじ	1952年ねん4月がつ～1955年ねん4月がつ
東海林しょうじ武雄たけお	旭電化工業あさひでんかこうぎょう専務せんむ	1952年ねん4月がつ～1955年ねん4月がつ
岸きし道三どうさん	同和鉱業どうわこうぎょう副ふく社長しゃちょう	1955年ねん4月がつ～1958年ねん4月がつ
中山なかやま素もと平ひらた	日本興業銀行にほんこうぎょうぎんこう副ふく頭取とうどり	1957年ねん4月～1959年ねん4月がつ
井上いのうえ英えい煕ひろし	日本にっぽんセメント社長しゃちょう	1958年ねん4月がつ～1960年ねん4月がつ
岩佐いわさ凱実	富士銀行ふじぎんこう副ふく頭取とうどり	1959年ねん4月がつ～1961年ねん4月がつ
木き川田かわた一隆かずたか	東京電力とうきょうでんりょく副ふく社長しゃちょう	1960年ねん4月がつ～1962年ねん4月がつ 1963年ねん4月～1975年ねん4月がつ
水上みずかみ達三たつぞう	三井物産みついぶっさん社長しゃちょう	1961年ねん4月がつ～1963年ねん4月がつ
二宮にのみや善よし基もと	東洋とうよう曹達そうだ工業こうぎょう社長しゃちょう	1962年ねん4月がつ～1963年ねん4月がつ
佐々木ささき直ただし	前ぜん日本銀行にっぽんぎんこう総裁そうさい	1975年ねん4月がつ～1985年ねん4月がつ
石原いしはら俊しゅん	日産自動車にっさんじどうしゃ社長しゃちょう	1985年ねん4月がつ～1991年ねん4月がつ
速水はやみ優ゆう	日商岩井にっしょういわい会長かいちょう	1991年ねん4月がつ～1995年ねん4月がつ
牛尾うしお治朗じろう	ウシオ電機うしおでんき会長かいちょう	1995年ねん4月がつ～1999年ねん4月がつ
小林こばやし陽太郎ようたろう	富士ふじゼロックス（現げん:富士ふじフイルムビジネスイノベーション）会長かいちょう	1999年ねん4月がつ～2003年ねん4月がつ
北城ほくじょう恪つとむ太郎たろう	日本にっぽんIBM会長かいちょう	2003年ねん4月がつ～2007年ねん4月がつ
桜井さくらい正ただし光こう	リコー会長かいちょう	2007年ねん4月がつ～2011年ねん4月がつ
長谷川はせがわ閑史	武田薬品工業たけだやくひんこうぎょう社長しゃちょう	2011年ねん4月がつ～2015年ねん4月がつ
小林こばやし喜光よしみつ	三菱みつびしケミカルホールディングス会長かいちょう	2015年ねん4月がつ～2019年ねん4月がつ
櫻田さくらだ謙けん悟さとる	SOMPOホールディングス社長しゃちょう	2019年ねん4月がつ〜2023年ねん4月がつ
新しん浪なみ剛史たけし	サントリーホールディングス社長しゃちょう	2023年ねん4月がつ〜

脚注きゃくちゅう

参考さんこう文献ぶんけん

• 山下やました静一せいいち『戦後せんご経営けいえい者しゃの群像ぐんぞう 私わたしの「経済同友会けいざいどうゆうかい」史し』日本経済新聞社にほんけいざいしんぶんしゃ、1992年ねん。ISBN 4-532-16045-6。 
• 岡崎おかざき哲二てつじ・菅山すがやま真しん次じ・西沢にしざわ保たもつ・米倉よねくら誠一郎せいいちろう『戦後せんご日本にっぽん経済けいざいと経済同友会けいざいどうゆうかい』（岩波書店いわなみしょてん、1996年ねん ISBN 4-00-002996-7）

関連かんれん項目こうもく

• 財界ざいかい
• 三極さんきょく委員いいん会かい
• 日本にっぽんの経済けいざい
• 高度こうど成長せいちょう
• 公職こうしょく追放ついほう
• 財閥ざいばつ解体かいたい
• 中小ちゅうしょう企業きぎょう家か同友会どうゆうかい - 類似るいじする名称めいしょうの団体だんたいだが、中小ちゅうしょう企業きぎょうが主体しゅたい。

外部がいぶリンク

• 公益社こうえきしゃ団だん法人ほうじん 経済同友会けいざいどうゆうかい
• 公益こうえき財団ざいだん法人ほうじん 日本にっぽん生産せいさん性せい本部ほんぶ