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脱工業化社会 - Wikipedia

だつ工業こうぎょう社会しゃかい(だつこうぎょうかしゃかい、えい: post-industrial society)とは、工業こうぎょう産業さんぎょう社会しゃかい工業こうぎょう社会しゃかい)がさらに発展はってんし、産業さんぎょう構造こうぞうにおいて情報じょうほう知識ちしきサービスなどをあつかだいさん産業さんぎょうめる割合わりあいたかまった社会しゃかいのこと[1]。「だつ工業こうぎょう社会しゃかい」、あるいは「だつ産業さんぎょう社会しゃかい」、「ポスト工業こうぎょう社会しゃかい」ともばれる。

だつ工業こうぎょう社会しゃかいろん

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だつ工業こうぎょう社会しゃかい(あるいはだつ産業さんぎょう社会しゃかい)というかたりは、1962ねんはじめてアメリカ社会しゃかいがくものダニエル・ベルによって定式ていしきされた。ベルは、それまでの伝統でんとう社会しゃかい/産業さんぎょう社会しゃかい(ないし近代きんだい社会しゃかい)の二分にぶんほうによる社会しゃかいがくてき歴史れきし区分くぶんでは当時とうじ社会しゃかい変動へんどうけないとして、だつ工業こうぎょう社会しゃかいだいさん区分くぶんとして導入どうにゅうした。その論者ろんしゃによって意味いみやニュアンスのともないながらも使用しようされるようになるが、アラン・トゥーレーヌアルビン・トフラーなどおおくの論者ろんしゃ情報じょうほう知識ちしき・サービスなどをあつか産業さんぎょう社会しゃかいにおいて重要じゅうよう役割やくわりになうにしたがい、社会しゃかい支配しはい構造こうぞう変容へんようられることを指摘してきしている。

ダニエル・ベル

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ベルのだつ工業こうぎょう社会しゃかいとは、ざい生産せいさんからサービス(高度こうど情報じょうほうサービスなど)に経済けいざい活動かつどう重心じゅうしん移行いこうし、理論りろんてき知識ちしき社会しゃかいの「中軸ちゅうじく原則げんそく」となり改革かいかく政策せいさく形成けいせい源泉げんせんとなる社会しゃかいである。ここから、「知識ちしき階級かいきゅう」とばれるせんもん技術ぎじゅつしょくそう役割やくわりおおきくなり、組織そしき運営うんえい様式ようしき経済けいざい外的がいてき要因よういん配慮はいりょする「社会しゃかいがく様式ようしき」にわっていく社会しゃかい、すなわち、「人間にんげん相互そうごあいだのゲームを基本きほんてき原理げんりとして運営うんえいされる社会しゃかい」がみちびかれる。しかし、この社会しゃかいでも、社会しゃかい計画けいかくかんしてはかならずしも合理ごうりせいだけでしとおすことはできず、最終さいしゅうてき政策せいさく決定けっていをめぐっては、効率こうりつせい追求ついきゅうするテクノクラートかく集団しゅうだん利害りがい代表だいひょうする政治せいじとのあいだ矛盾むじゅんつづくことになる。

中期ちゅうき)アラン・トゥーレーヌ

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中期ちゅうき(1968ねん〜1986ねん)アラン・トゥーレーヌによれば、だつ工業こうぎょうだつ産業さんぎょう社会しゃかいとは、なによりもあらたな形態けいたい社会しゃかい紛争ふんそう特色とくしょくとする社会しゃかいであり、『工業こうぎょう産業さんぎょう社会しゃかい特徴とくちょうが、産業さんぎょう主義しゅぎ企業きぎょう統制とうせいてき労働ろうどう組合くみあい運動うんどうふる社会しゃかい運動うんどう)との全体ぜんたい社会しゃかいのありようをめぐる対立たいりつ関係かんけいであったとすれば、だつ工業こうぎょうだつ産業さんぎょう社会しゃかい特徴とくちょうづけるのは、専門せんもん技術ぎじゅつとの関係かんけい権力けんりょく行使こうしするあらたなテクノクラシーと、そうした技術ぎじゅつ権力けんりょくから排除はいじょされることによって疎外そがいされるあらたな人々ひとびととの闘争とうそうあたらしい社会しゃかい運動うんどう)ではある』という仮説かせつもとづいている。その検証けんしょうのためにだい規模きぼ社会しゃかいがくてき介入かいにゅう調査ちょうさ実施じっしされた結果けっか、このような仮説かせつは、後期こうきトゥレーヌ(1986ねん現在げんざい自身じしんによって否定ひていされることになる。現在げんざい、トゥレーヌはモダニティ自体じたいとらかた更新こうしんすることで、だつ産業さんぎょう社会しゃかいにおける「あたらしい社会しゃかい運動うんどうろんえつつある。

アルビン・トフラー

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アルビン・トフラーは『だいさんなみ』(1980ねんかん)のなかで、しん石器せっき革命かくめい[ちゅう 1]産業さんぎょう革命かくめいつづだいさん変革へんかくを「だつ工業こうぎょう社会しゃかい」としている。情報じょうほうによって物理ぶつりてき資源しげんだい部分ぶぶんえられ、さらに効率こうりつ指揮しき系統けいとうなか人々ひとびといち箇所かしょまる官僚かんりょうてき組織そしきとは対照たいしょうてきに、目的もくてきった人々ひとびとあつまりが流動的りゅうどうてき変化へんかする「アドホクラシー」、特定とくてい人々ひとびとたいして柔軟じゅうなんかつ効率こうりつてき製品せいひん提供ていきょうする「マスカスタマイゼーション」、技術ぎじゅつ進歩しんぽによって消費しょうひしゃ生産せいさんをもおこなうようになる「生産せいさん消費しょうひしゃ」の登場とうじょうなどがえがかれている。

だつ工業こうぎょうとサービス

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今日きょうでは一般いっぱんに、だい産業さんぎょうからだいさん産業さんぎょうへの経済けいざいシフトに着目ちゃくもくしてだつ工業こうぎょうしょうし、あるいは、サービス産業さんぎょうなどが中心ちゅうしんになることに着目ちゃくもくしてサービス(たとえば「経済けいざいのサービス」「産業さんぎょう構造こうぞうのサービス」など)と呼称こしょうされている。さらに、サービス概念がいねんは、産業さんぎょう構造こうぞう全体ぜんたいではなく個別こべつ産業さんぎょう就業しゅうぎょう構造こうぞう消費しょうひ構造こうぞうなどの分析ぶんせきもちいられる場合ばあいもある。とく情報じょうほう革命かくめいだつ工業こうぎょう進展しんてんうながすため、だつ工業こうぎょう社会しゃかい情報じょうほう社会しゃかい密接みっせつ関係かんけいにある。

ペティ=クラークの法則ほうそく

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経済けいざい成長せいちょう段階だんかいによって、だいいちだいだいさん経済けいざい主力しゅりょくうつわっていく現象げんしょう初期しょき段階だんかいにおいては、農業のうぎょうなどのだいいち産業さんぎょうめる割合わりあい非常ひじょうたかい。経済けいざい成長せいちょうしていくにしたがって、やがてだいいち産業さんぎょうめる割合わりあい低下ていかし、製造せいぞうぎょうなどのだい産業さんぎょうめる割合わりあいたかくなっていく。さらに所得しょとくたかまり、経済けいざい成熟せいじゅくしていくにれてだいさん産業さんぎょう割合わりあいたかまっていく。

日本にっぽんにおいては、1980年代ねんだいにこの議論ぎろんさかんにおこなわれた。

製造せいぞうぎょう変化へんか

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製造せいぞうぎょう製品せいひん生産せいさん出荷しゅっかする産業さんぎょうではあるが、製品せいひんこう付加ふか価値かち対応たいおうするため、サービス産業さんぎょうへのアウトソーシング進展しんてんさせる場合ばあいがある。その分析ぶんせき手法しゅほうとしては、産業さんぎょう連関れんかんひょうにおいて製造せいぞうぎょう中間ちゅうかん投入とうにゅうめるサービス産業さんぎょうおおきさをみる方法ほうほうがある(たとえば、昭和しょうわ63年版ねんばん通商つうしょう白書はくしょ昭和しょうわ53年版ねんばん労働ろうどう白書はくしょ)。

また、製造せいぞうぎょう自体じたいも、企画きかく部門ぶもん販売はんばい部門ぶもんめるウエイトがおおきくなり、「製造せいぞうぎょうのサービス」が進展しんてんしている。一部いちぶ報告ほうこくしょではこのことを「2.5産業さんぎょう」と表現ひょうげんしている[2]

サービス経済けいざいのトリレンマ

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製造せいぞうぎょうでは生産せいさんせい向上こうじょうによる賃金ちんぎん向上こうじょう雇用こよう拡大かくだい見込みこめるが、サービス産業さんぎょうでは大幅おおはば生産せいさんせい向上こうじょう見込みこめないため、賃金ちんぎん抑制よくせいされなければ雇用こよう拡大かくだい実現じつげんされない。よって、トービン・アイヴァーセンらによれば、経済けいざいのサービス進展しんてんすると、所得しょとく平等びょうどう雇用こよう拡大かくだい均衡きんこう財政ざいせい(あるいは「ぜい負担ふたん抑制よくせい」)の3つすべてを同時どうじたせなくなる。イエスタ・エスピン=アンデルセン福祉ふくしレジームろん敷衍ふえんすれば、社民しゃみん主義しゅぎレジーム北欧ほくおう諸国しょこくなど)では均衡きんこう財政ざいせいが、自由じゆう主義しゅぎレジームアメリカなど)では所得しょとく平等びょうどうが、保守ほしゅ主義しゅぎレジームドイツなど)では雇用こよう拡大かくだいが、それぞれ犠牲ぎせいとなる[3]

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 訳書やくしょでは英語えいご原文げんぶんにおける“agrarian revolution”の訳語やくごとして「農業のうぎょう革命かくめい」をもちいているが、これは18世紀せいきにおける農業のうぎょう生産せいさん飛躍ひやくてき向上こうじょう付随ふずいした農業のうぎょう革命かくめいのことではなく、しん石器せっき時代じだい人類じんるいはじめて農耕のうこう開始かいししたことにともない、それまでの狩猟しゅりょう採集さいしゅう社会しゃかいから社会しゃかい構造こうぞうだい変革へんかくさせ、その文明ぶんめい形成けいせいにまで波及はきゅうした農耕のうこう革命かくめいしん石器せっき革命かくめい)をしている。

出典しゅってん

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  1. ^ 田井だい せい, 浅見あさみ りょう, 鶴田つるた 善彦よしひこ (へん)『地域ちいき経済けいざい視点してん筑後川ちくごがわ流域りゅういきけん経済けいざい社会しゃかい住民じゅうみん生活せいかつ九州大学きゅうしゅうだいがく出版しゅっぱんかい、1999ねん1がつ1にち、5ぺーじISBN 978-4873785776 
  2. ^ 国土こくど審議しんぎかい調査ちょうさ改革かいかく部会ぶかい そう広域こういきによる自立じりつ安定あんていした地域ちいき社会しゃかい形成けいせい
  3. ^ 新川しんかわ、2004ねん、209-210ぺーじ

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 佐和さわ隆光たかみつへん 『サービス経済けいざい入門にゅうもん-そのぜんデータと展望てんぼう中央公論社ちゅうおうこうろんしゃ中公新書ちゅうこうしんしょ〉、1990ねんISBN 9784121009906
  • ソフトノミックス・フォローアップ研究けんきゅうかい一連いちれん報告ほうこく
  • 新川しんかわ敏光としみつ比較ひかく政治せいじ経済けいざいがく有斐閣ゆうひかく有斐閣ゆうひかくアルマ〉、2004ねんISBN 9784641122253
  • ダニエル・ベル『だつ工業こうぎょう社会しゃかい到来とうらい-社会しゃかい予測よそくひとつのこころみ(うえした)』ダイヤモンド社だいやもんどしゃ、1975ねん
  • アラン・トゥレーヌ『だつ工業こうぎょう社会しゃかい河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ、1970ねん

関連かんれん項目こうもく

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