変換 へんかん P は直線 ちょくせん m の上 うえ への直交 ちょっこう 射影 しゃえい
線型 せんけい 代数 だいすう 学 がく および函数 かんすう 解析 かいせき 学 がく における射影 しゃえい 作用素 さようそ あるいは単 たん に射影 しゃえい (しゃえい、英 えい : projection )とは、いわゆる射影 しゃえい (投影 とうえい )を一般 いっぱん 化 か した概念 がいねん である。有限 ゆうげん 次元 じげん ベクトル空間 くうかん V の場合 ばあい は、V 上 うえ の線型 せんけい 変換 へんかん P : V → V であって、冪 べき 等 とう 律 りつ P 2 = P を満 み たすものを言 い う。ベクトル v の像 ぞう Pv を v の射影 しゃえい という。射影 しゃえい 作用素 さようそ はベクトル空間 くうかん V を U ⊕W と直和 なおかず 分解 ぶんかい したときに、V の元 もと v = u + w (u ∈ U , w ∈ W ) を u に写 うつ すような変換 へんかん である。ベクトル空間 くうかん の次元 じげん が無限 むげん 次元 じげん の場合 ばあい には、連続 れんぞく 性 せい を考慮 こうりょ しなければならない。例 たと えばヒルベルト空間 くうかん
H
{\displaystyle {\mathcal {H}}}
における射影 しゃえい 作用素 さようそ とは、
H
{\displaystyle {\mathcal {H}}}
上 うえ の有界 ゆうかい 線型 せんけい 作用素 さようそ
P
∈
L
(
H
)
{\displaystyle P\in {\mathcal {L}}({\mathcal {H}})}
であって、冪 べき 等 とう 律 りつ P 2 = P を満 み たすものを言 い う。このときさらに自己 じこ 共役 きょうやく 性 せい P ∗ = P を持 も つときには直交 ちょっこう 射影 しゃえい (ちょっこうしゃえい、英 えい : orthogonal projection )という。直交 ちょっこう 射影 しゃえい のことを単 たん に射影 しゃえい と呼 よ ぶこともある。
この定義 ていぎ は抽象 ちゅうしょう 的 てき ではあるが、投影 とうえい 図法 ずほう の考 かんが え方 かた を一般 いっぱん 化 か し、定式 ていしき 化 か したものになっている。 幾何 きか 学 がく 的 てき 対象 たいしょう 上 うえ の射影 しゃえい の影響 えいきょう は、その対象 たいしょう の各 かく 点 てん における射影 しゃえい の影響 えいきょう を調 しら べることでわかる。
直交 ちょっこう 射影 しゃえい [ 編集 へんしゅう ]
例 たと えば、三 さん 次元 じげん 空間 くうかん R 3 の点 てん (x , y , z ) を点 てん (x , y , 0) へ写 うつ す写像 しゃぞう は xy -平面 へいめん の上 うえ への射影 しゃえい である。この写像 しゃぞう は行列 ぎょうれつ
P
=
[
1
0
0
0
1
0
0
0
0
]
{\displaystyle P={\begin{bmatrix}1&0&0\\0&1&0\\0&0&0\end{bmatrix}}}
によって表現 ひょうげん される。実際 じっさい 、この行列 ぎょうれつ P の任意 にんい のベクトルへの作用 さよう は
P
[
x
y
z
]
=
[
x
y
0
]
{\displaystyle P{\begin{bmatrix}x\\y\\z\end{bmatrix}}={\begin{bmatrix}x\\y\\0\end{bmatrix}}}
となり、これが射影 しゃえい を定 さだ めること(つまり P = P 2 を満 み たすこと)は
P
2
[
x
y
z
]
=
P
[
x
y
0
]
=
[
x
y
0
]
{\displaystyle P^{2}{\begin{bmatrix}x\\y\\z\end{bmatrix}}=P{\begin{bmatrix}x\\y\\0\end{bmatrix}}={\begin{bmatrix}x\\y\\0\end{bmatrix}}}
なる計算 けいさん によって確 たし かめられる。
(定義 ていぎ は後述 こうじゅつ するが)直交 ちょっこう でない(斜 はす 交)射影 しゃえい の簡単 かんたん な例 れい として
P
=
[
0
0
α あるふぁ
1
]
{\displaystyle P={\begin{bmatrix}0&0\\\alpha &1\end{bmatrix}}}
を挙 あ げることができる。行列 ぎょうれつ の積 せき の定義 ていぎ に従 したが って計算 けいさん すれば
P
2
=
[
0
0
α あるふぁ
1
]
[
0
0
α あるふぁ
1
]
=
[
0
0
α あるふぁ
1
]
=
P
{\displaystyle P^{2}={\begin{bmatrix}0&0\\\alpha &1\end{bmatrix}}{\begin{bmatrix}0&0\\\alpha &1\end{bmatrix}}={\begin{bmatrix}0&0\\\alpha &1\end{bmatrix}}=P}
故 ゆえ に P が実際 じっさい に射影 しゃえい となることが分 わ かる。
この射影 しゃえい P が直交 ちょっこう 射影 しゃえい となるのは α あるふぁ = 0 のときであり、かつそのときに限 かぎ る。
以下 いか 、本節 ほんぶし において考 かんが えるベクトル空間 くうかん はすべて有限 ゆうげん 次元 じげん であるものと仮定 かてい する(この場合 ばあい 、射影 しゃえい の連続 れんぞく 性 せい などを気 き にしなくともすむ)。
変換 へんかん T は k に沿 そ った m の上 うえ への射影 しゃえい である。T の値域 ちいき は m であり、T の零 れい 空間 くうかん は k に等 ひと しい。
本 ほん 項 こう 冒頭 ぼうとう の導入 どうにゅう 文 ぶん で述 の べたとおり、射影 しゃえい P は冪 べき 等 とう 律 りつ すなわち P 2 = P を満 み たすような線型 せんけい 変換 へんかん である。
もととなるベクトル空間 くうかん を W とする。W の部分 ぶぶん 線型 せんけい 空間 くうかん U および V が、それぞれ P の値域 ちいき および零 れい 空間 くうかん (核 かく )であるものと仮定 かてい すると、基本 きほん 的 てき な性質 せいしつ として
P は U 上 うえ に恒等 こうとう 作用素 さようそ I として作用 さよう する。つまり、
∀
x
∈
U
,
P
x
=
x
.
{\displaystyle \forall x\in U,\quad Px=x.}
直和 なおかず 分解 ぶんかい W = U ⊕ V が成立 せいりつ する。すなわち、W の各 かく ベクトル x は U の元 もと u と V の元 もと v を用 もち いて x = u + v なる形 かたち に一意的 いちいてき に表 あらわ される。これには
u
=
P
x
,
v
=
x
−
P
x
=
(
I
−
P
)
x
{\displaystyle u=Px,\quad v=x-Px=(I-P)x}
とすればよい。
などが成 な り立 た つことがわかる。射影 しゃえい の値域 ちいき と核 かく は互 たが いに「相補 そうほ 的 てき 」なもので、P と Q = I − P も同 おな じく「相補 そうほ 的 てき 」である。すなわち、作用素 さようそ Q もやはり射影 しゃえい を定 さだ め、Q の値域 ちいき は P の核 かく 、Q の核 かく は P の値域 ちいき となる。逆 ぎゃく もまた然 しか り。
このとき P を(核 かく )V に沿 そ った(値域 ちいき )U の上 うえ への射影 しゃえい と言 い い、また Q を U に沿 そ った V の上 うえ への射影 しゃえい と呼 よ ぶ。
ベクトル空間 くうかん の、部分 ぶぶん 空間 くうかん の直 ちょく 和 わ への分解 ぶんかい は一般 いっぱん には一意的 いちいてき でない。従 したが って、部分 ぶぶん 空間 くうかん V が与 あた えられたとき、その値域 ちいき (もしくは核 かく )が V となるような射影 しゃえい は一般 いっぱん に複数 ふくすう 存在 そんざい しうる。
射影 しゃえい のスペクトル が {0, 1} に含 ふく まれることは
(
λ らむだ
I
−
P
)
−
1
=
1
λ らむだ
I
+
1
λ らむだ
(
λ らむだ
−
1
)
P
{\displaystyle (\lambda I-P)^{-1}={\frac {1}{\lambda }}I+{\frac {1}{\lambda (\lambda -1)}}P}
から分 わ かる。射影 しゃえい の固有値 こゆうち となれるのは 0 および 1 に限 かぎ られるが、それらに対応 たいおう する固有 こゆう 空間 くうかん は射影 しゃえい の核 かく および値域 ちいき に他 た ならない。
自明 じめい でない射影 しゃえい は最小 さいしょう 多項式 たこうしき が
X
2
−
X
=
X
(
X
−
I
)
{\displaystyle X^{2}-X=X(X-I)}
となり、これは相 あい 異 こと なる一 いち 次 じ 因子 いんし の積 せき となっているから、P は対 たい 角 かく 化 か 可能 かのう である。
直交 ちょっこう 射影 しゃえい [ 編集 へんしゅう ]
考 かんが えているベクトル空間 くうかん に内積 ないせき が定義 ていぎ されていれば、直交 ちょっこう 性 せい や(線型 せんけい 作用素 さようそ の自己 じこ 共軛 きょうやく 性 せい )といったような内積 ないせき に付随 ふずい するさまざまな概念 がいねん を用 もち いることができるようになる。直交 ちょっこう 射影 しゃえい は、値域 ちいき U と核 かく V とが互 たが いに直交 ちょっこう する部分 ぶぶん 空間 くうかん になっているような射影 しゃえい をいう。射影 しゃえい が直交 ちょっこう 射影 しゃえい であるための必要 ひつよう 十 じゅう 分 ふん 条件 じょうけん は、それが自己 じこ 共軛 きょうやく であること、即 すなわ ち実 じつ ベクトル空間 くうかん の場合 ばあい には、ある直交 ちょっこう 基底 きてい に関 かん する表現 ひょうげん 行列 ぎょうれつ P が対称 たいしょう 行列 ぎょうれつ (P = P T )であり、複素 ふくそ ベクトル空間 くうかん の場合 ばあい には、表現 ひょうげん 行列 ぎょうれつ P がエルミート行列 ぎょうれつ (P = (P * )T ))となることである。実際 じっさい に、x , y が射影 しゃえい の定義 ていぎ 域 いき に属 ぞく するベクトルのとき、 Px ∈ U , y − Py ∈ V であり、かつ
⟨
∙
,
∙
⟩
{\displaystyle \langle \bullet ,\bullet \rangle }
を正 せい 定値 ていち 内積 ないせき として
⟨
P
x
,
y
−
P
y
⟩
=
(
P
x
)
⊤
(
y
−
P
y
)
=
x
⊤
(
P
⊤
−
P
⊤
P
)
y
=
x
⊤
(
P
−
P
⊤
P
)
⊤
y
{\displaystyle \langle Px,y-Py\rangle =(Px)^{\top }(y-Py)=x^{\top }(P^{\top }-P^{\top }P)y=x^{\top }(P-P^{\top }P)^{\top }y}
が成 な り立 た つから、Px と y − Py とが任意 にんい の x , y に関 かん して互 たが いに直交 ちょっこう するのは、P = P T P (これは P = P T かつ P = P 2 に同値 どうち )のときであり、かつそのときに限 かぎ る。
直線 ちょくせん の上 うえ への直交 ちょっこう 射影 しゃえい の場合 ばあい が最 もっと も簡単 かんたん であろう。直線 ちょくせん 上 じょう の単位 たんい ベクトル u をとれば、当該 とうがい の射影 しゃえい は
P
u
=
u
u
⊤
{\displaystyle P_{u}=uu^{\top }}
で与 あた えられる。この作用素 さようそ は u を変 か えないし、また u に直交 ちょっこう する全 すべ てのベクトルを零 れい 化 か する。このことは、u を含 ふく むどんな直線 ちょくせん の上 うえ への射影 しゃえい についても正 ただ しい。これを見 み るのに簡単 かんたん な方法 ほうほう は、勝手 かって なベクトル x を直線 ちょくせん 上 じょう の成分 せいぶん (つまり射影 しゃえい されたベクトルを考 かんが える)とそれに垂直 すいちょく な成分 せいぶん との和 わ
x
:=
x
∥
+
x
⊥
{\displaystyle x:=x_{\parallel }+x_{\perp }}
と考 かんが えることである。これに射影 しゃえい を施 ほどこ せば、平行 へいこう なベクトル同士 どうし の内積 ないせき と垂直 すいちょく なベクトル同士 どうし の内積 ないせき の性質 せいしつ から
P
u
x
=
u
u
⊤
x
∥
+
u
u
⊤
x
⊥
=
u
|
x
∥
|
+
u
0
=
x
∥
{\displaystyle P_{u}x=uu^{\top }x_{\parallel }+uu^{\top }x_{\perp }=u|x_{\parallel }|+u0=x_{\parallel }}
を得 え る。
この等式 とうしき は任意 にんい 次元 じげん の部分 ぶぶん 空間 くうかん の上 うえ への直交 ちょっこう 射影 しゃえい にも拡張 かくちょう することができる。u 1 , ..., u k を部分 ぶぶん 空間 くうかん U の正規 せいき 直交 ちょっこう 基底 きてい とし、各 かく 列 れつ ベクトルが u 1 , ..., u k になっている k -次 じ 正方 せいほう 行列 ぎょうれつ を A と書 か けば、所期 しょき の射影 しゃえい が
P
A
=
A
A
⊤
{\displaystyle P_{A}=AA^{\top }}
で表 あらわ される。これは内積 ないせき を使 つか えば
P
A
=
∑
i
⟨
u
i
,
∙
⟩
u
i
{\displaystyle P_{A}=\sum _{i}\langle u_{i},\bullet \rangle u_{i}}
と書 か くこともできる。行列 ぎょうれつ A T は U の直交 ちょっこう 成分 せいぶん が消 き える部分 ぶぶん 等 とう 距変換 へんかん であり、A は U を考 かんが えている全体 ぜんたい 空間 くうかん へ埋 う め込 こ む等 ひとし 長 ちょう 変換 へんかん になっている。従 したが って PA の値域 ちいき は A の終 おわり 空間 くうかん (final space ) であり、また A T A が U 上 うえ の恒等 こうとう 変換 へんかん であることは明 あき らかである。
上記 じょうき の議論 ぎろん で正規 せいき 直交 ちょっこう 条件 じょうけん は落 お とすこともできる。即 すなわ ち、u 1 , …, u k を(必 かなら ずしも正規 せいき 直交 ちょっこう でない)基底 きてい とし、それらを列 れつ ベクトルに持 も つ行列 ぎょうれつ を A と書 か けば、求 もと める射影 しゃえい は
P
A
=
A
(
A
⊤
A
)
−
1
A
⊤
{\displaystyle P_{A}=A(A^{\top }A)^{-1}A^{\top }}
と書 か ける。この場合 ばあい も行列 ぎょうれつ A は U の全体 ぜんたい 空間 くうかん への埋 う め込 こ みになっているが、しかし一般 いっぱん にはもはや等 とう 距変換 へんかん ではない。ここで行列 ぎょうれつ (A T A )−1 はノルムを回復 かいふく する「正規 せいき 化 か 因子 いんし 」である。実際 じっさい 、階数 かいすう 1 の作用素 さようそ uu T は ‖u ‖ ≠ 1 のとき射影 しゃえい にならないが、これをu T u = ‖u ‖2 で割 わ って得 え られる u (u T u )−1 u T は u で張 は られる部分 ぶぶん 空間 くうかん の上 うえ への射影 しゃえい になる。
この射影 しゃえい の値域 ちいき となるベクトル空間 くうかん が(基底 きてい ではなくて)枠 わく (frame) で張 は られているとき(つまり生成 せいせい 元 もと の数 かず が次元 じげん の値 ね よりも大 おお きいとき)には、上記 じょうき の公式 こうしき は
P
A
=
A
(
A
⊤
A
)
+
A
⊤
{\displaystyle P_{A}=A(A^{\top }A)^{+}A^{\top }}
という形 かたち になる。ここで
A
+
{\displaystyle A^{+}}
はムーア・ペンローズ擬似 ぎじ 逆 ぎゃく 行列 ぎょうれつ を表 あらわ す。このような場合 ばあい には、射影 しゃえい 作用素 さようそ を構成 こうせい する方法 ほうほう は無数 むすう にあり、これはその無数 むすう の可能 かのう 性 せい のうちの一 ひと つに過 す ぎないことに注意 ちゅうい すべきである。
あるいは、行列 ぎょうれつ
[
A
B
]
{\displaystyle [A\ B]}
が正則 せいそく で A T B = 0(つまり、B は A の零 れい 空間 くうかん 行列 ぎょうれつ )のときには
I
=
A
(
A
⊤
A
)
−
1
A
⊤
+
B
(
B
⊤
B
)
−
1
B
⊤
{\displaystyle I=A(A^{\top }A)^{-1}A^{\top }+B(B^{\top }B)^{-1}B^{\top }}
が成 な り立 た つ。直交 ちょっこう 条件 じょうけん を強 つよ めて、正則 せいそく 行列 ぎょうれつ W に対 たい して A T WB = A T W T B = 0 が成 な り立 た つものとすれば、
I
=
[
A
B
]
[
(
A
⊤
W
A
)
−
1
A
⊤
(
B
⊤
W
B
)
−
1
B
⊤
]
W
{\displaystyle I={\begin{bmatrix}A&B\end{bmatrix}}{\begin{bmatrix}(A^{\top }WA)^{-1}A^{\top }\\(B^{\top }WB)^{-1}B^{\top }\end{bmatrix}}W}
が成立 せいりつ する。
これらの公式 こうしき は(転置 てんち 行列 ぎょうれつ を随伴 ずいはん 行列 ぎょうれつ に取 と り替 か えれば)複素 ふくそ 内積 ないせき 空間 くうかん でも成立 せいりつ する。
直交 ちょっこう 射影 しゃえい でないような射影 しゃえい のことを、斜 はす 交射影 しゃえい と呼 よ ぶこともある。直交 ちょっこう 射影 しゃえい ほど頻繁 ひんぱん ではないが、この種 たね の射影 しゃえい は二 に 次元 じげん に描画 びょうが された空間 くうかん 図形 ずけい を表 あらわ すのにも用 もち いられる。
斜 はす 交射影 しゃえい はその値域 ちいき と核 かく によって定 さだ まり、与 あた えられた値域 ちいき と核 かく を持 も つ射影 しゃえい の行列 ぎょうれつ 表現 ひょうげん の式 しき は次 つぎ のように求 もと められる。まず射影 しゃえい の値域 ちいき の基底 きてい を成 な すベクトルを u 1 , …, u k とし、それらを列 れつ ベクトルとして並 なら べた n × k 行列 ぎょうれつ を A と書 か く。射影 しゃえい の値域 ちいき と核 かく とは互 たが いに補 ほ 空間 くうかん になっているから、核 かく の次元 じげん は n − k である。従 したが って、射影 しゃえい の核 かく の直交 ちょっこう 補 ほ 空間 くうかん の次元 じげん は k であり、v 1 , …, v k がその基底 きてい を成 な すものとして、それらを並 なら べた行列 ぎょうれつ を B と書 か く。このとき、当該 とうがい の射影 しゃえい は
P
=
A
(
B
⊤
A
)
−
1
B
⊤
{\displaystyle P=A(B^{\top }A)^{-1}B^{\top }}
によって定 さだ まる。この公式 こうしき を、上 うえ で直交 ちょっこう 射影 しゃえい に対 たい してやったように拡張 かくちょう することもできる。
体 からだ 上 じょう の d -次元 じげん ベクトル空間 くうかん 上 じょう の射影 しゃえい P = P 2 は、その最小 さいしょう 多項式 たこうしき が x 2 − x で相 あい 異 こと なる一 いち 次 じ 因子 いんし の積 せき に分解 ぶんかい されるから、対 たい 角 かく 化 か 可能 かのう である。従 したが って、適当 てきとう な基底 きてい を選 えら べば P は、r を P の階数 かいすう として
P
=
I
r
⊕
0
d
−
r
{\displaystyle P=I_{r}\oplus 0_{d-r}}
なる形 かたち に表 あらわ すことができる。ここで、I r は r -次 じ 単位 たんい 行列 ぎょうれつ 、0d −r は次数 じすう d − r の零 れい 行列 ぎょうれつ である。複素 ふくそ ベクトル空間 くうかん で内積 ないせき を持 も つ場合 ばあい には、適当 てきとう な正規 せいき 直交 ちょっこう 基底 きてい を選 えら んで、P の表現 ひょうげん 行列 ぎょうれつ を
P
=
[
1
σ しぐま
1
0
0
]
⊕
⋯
⊕
[
1
σ しぐま
k
0
0
]
⊕
I
m
⊕
0
s
{\displaystyle P={\begin{bmatrix}1&\sigma _{1}\\0&0\end{bmatrix}}\oplus \cdots \oplus {\begin{bmatrix}1&\sigma _{k}\\0&0\end{bmatrix}}\oplus I_{m}\oplus 0_{s}}
なる形 かたち にすることができる[8] 。ただし、σ しぐま 1 ≥ σ しぐま 2 ≥ … ≥ σ しぐま k > 0 とする。また、k , s , m は整数 せいすう で、実数 じっすう σ しぐま i は一意 いちい に定 さだ まる。2k + s + m = d であることに注意 ちゅうい せよ。このときの、I m ⊕ 0s なる因子 いんし は、その上 うえ に P が直交 ちょっこう 射影 しゃえい として作用 さよう する最大 さいだい の不変 ふへん 空間 くうかん に対応 たいおう しており(故 ゆえ に P 自体 じたい が直交 ちょっこう 射影 しゃえい となるのは k = 0 のとき、かつそのときに限 かぎ る)、かつ σ しぐま i -ブロックが P の斜 はす 交成分 せいぶん に対応 たいおう している。
ノルム空間 くうかん 上 じょう の射影 しゃえい 作用素 さようそ [ 編集 へんしゅう ]
考 かんが えるベクトル空間 くうかん X が(有限 ゆうげん 次元 じげん とは限 かぎ らない)ノルム空間 くうかん のとき、(有限 ゆうげん 次元 じげん の場合 ばあい には関係 かんけい ないが)解析 かいせき 学 がく 的 てき なことも考 かんが えないといけないので、ここでは X はバナッハ空間 くうかん であることを仮定 かてい する。
先 さき に述 の べた代数 だいすう 的 てき な概念 がいねん の多 おお くはこの文脈 ぶんみゃく においても有効 ゆうこう である。例 たと えば、互 たが いに補 ほ 空間 くうかん となるような部分 ぶぶん 空間 くうかん への X の直和 なおかず 分解 ぶんかい が与 あた えられればやはり射影 しゃえい が定 さだ まるし、逆 ぎゃく に射影 しゃえい からそのような直和 なおかず 分解 ぶんかい が得 え られる。実際 じっさい 、X が直和 なおかず 分解 ぶんかい X = U ⊕ V を持 も つとき、P (u + v ) = u で定義 ていぎ される作用素 さようそ はやはり値域 ちいき U および核 かく V の射影 しゃえい である(P 2 = P は明 あき らかである)。一方 いっぽう P が X 上 うえ の射影 しゃえい 、即 すなわ ち P 2 = P を満 み たすならば (I − P )2 = (I − P ) は容易 ようい に確 たし かめられ、即 すなわ ち (I − P ) もまた射影 しゃえい となる。関係 かんけい 式 しき I = P + (I − P ) から X が Ran(P ) ⊕ Ran(I − P ) なる直和 なおかず に分解 ぶんかい されることが従 したが う。
しかし、有限 ゆうげん 次元 じげん の場合 ばあい とは対照 たいしょう 的 てき に、射影 しゃえい は一般 いっぱん に連続 れんぞく とは限 かぎ らない。実際 じっさい 、X の部分 ぶぶん 空間 くうかん U がノルムの定 さだ める位相 いそう に関 かん して閉でないときは U の上 うえ への射影 しゃえい は連続 れんぞく でない。同 おな じことだが、連続 れんぞく な射影 しゃえい P の値域 ちいき は必 かなら ず閉部分 ぶぶん 空間 くうかん でなければならない。更 さら には、連続 れんぞく 射影 しゃえい の(実 じつ は一般 いっぱん の連続 れんぞく 線型 せんけい 作用素 さようそ の)核 かく は閉部分 ぶぶん 空間 くうかん である。従 したが って、連続 れんぞく 射影 しゃえい P は X の互 たが いに補 おぎなえ 空間 くうかん となる閉部分 ぶぶん 空間 くうかん の直 ちょく 和 わ への分解 ぶんかい X = Ran(P ) ⊕ Ker(P ) = Ran(P ) ⊕ Ran(I − P ) を与 あた える。
逆 ぎゃく は、適当 てきとう な仮定 かてい を追加 ついか すれば成 な り立 た つ。U を X の閉部分 ぶぶん 空間 くうかん とすると、X = U ⊕ V となる閉部分 ぶぶん 空間 くうかん V が存在 そんざい する場合 ばあい に限 かぎ り 、値域 ちいき が U , 核 かく が V となる射影 しゃえい P は連続 れんぞく である。これは閉グラフ定理 ていり から従 したが う。即 すなわ ち、xn → x かつ Pxn → y とするとき、Px = y が示 しめ されればよい。U が閉で、{Pxn } ⊂ U だから y は U に属 ぞく し、Py = y が成 な り立 た つ。また、xn − Pxn = (I − P )xn → x − y である。このとき、V は閉で {(I − P )xn } ⊂ V だったから、x − y ∈ V 即 すなわ ち P (x − y ) = Px − Py = Px − y = 0 を得 え て、主張 しゅちょう が示 しめ される。
今 いま の議論 ぎろん では U , V がともに閉であるという仮定 かてい が効 き いているが、閉部分 ぶぶん 空間 くうかん U が与 あた えられたときにその閉補空間 くうかん V の存在 そんざい は一般 いっぱん には保証 ほしょう されない。ただし、ヒルベルト空間 くうかん では直交 ちょっこう 補 ほ 空間 くうかん をとることで常 つね にそれができる。バナッハ空間 くうかん の場合 ばあい には、一 いち 次元 じげん 部分 ぶぶん 空間 くうかん が常 つね に閉補空間 くうかん を持 も つことが、ハーン・バナッハの定理 ていり から直 ただ ちに従 したが う。実際 じっさい 、U を u が張 は る一 いち 次元 じげん 部分 ぶぶん 空間 くうかん とすると、ハーン・バナッハから、有界 ゆうかい 線型 せんけい 汎 ひろし 函数 かんすう φ ふぁい で φ ふぁい (u ) = 1 なるものがとれる。このとき、作用素 さようそ P (x ) := φ ふぁい (x )u は P 2 = P を満足 まんぞく し、射影 しゃえい となる。φ ふぁい の有界 ゆうかい 性 せい から P の連続 れんぞく 性 せい が出 で るから、従 したが って Ker(P ) = Ran(I − P ) が U の閉補空間 くうかん となる。
そうは言 い うものの、開 ひらけ 写像 しゃぞう 定理 ていり により、バナッハ空間 くうかん 上 じょう の任意 にんい の連続 れんぞく 射影 しゃえい は開 ひらけ 写像 しゃぞう であることが言 い える。
応用 おうよう およびさらに進 すす んだ議論 ぎろん [ 編集 へんしゅう ]
射影 しゃえい (直交 ちょっこう 射影 しゃえい とその他 た )は、線形 せんけい 代数 だいすう の問題 もんだい でのいくつかの計算 けいさん アルゴリズム において、重要 じゅうよう な役割 やくわり を果 は たす。
上 うえ で述 の べたように、射影 しゃえい というのは冪 べき 等 とう 作用素 さようそ の特別 とくべつ なものであり、解析 かいせき 学的 がくてき には直交 ちょっこう 射影 しゃえい は特性 とくせい 函数 かんすう の非 ひ 可 か 換 かわ な一般 いっぱん 化 か になっている。可 か 測 はか 集合 しゅうごう の特性 とくせい 函数 かんすう を考 かんが えることから測度 そくど 論 ろん が始 はじ まったように、冪 べき 等 とう 作用素 さようそ は(例 たと えば半 はん 単純 たんじゅん 多元 たげん 環 たまき などの)分類 ぶんるい にも用 もち いられ、それゆえ想像 そうぞう のつくとおり、射影 しゃえい 作用素 さようそ も作用素 さようそ 環 たまき 論 ろん の文脈 ぶんみゃく で極 きわ めて頻繁 ひんぱん に用 もち いられる。特 とく に、フォン・ノイマン環 たまき はその射影 しゃえい の成 な す完備 かんび 束 たば によって生成 せいせい される。
物理 ぶつり への応用 おうよう [ 編集 へんしゅう ]
量子 りょうし 論 ろん では,ある条件 じょうけん を満 み たす状態 じょうたい の全体 ぜんたい は状態 じょうたい 空間 くうかん (英語 えいご 版 ばん ) の部分 ぶぶん 空間 くうかん と考 かんが えることができるので,量子力学 りょうしりきがく 的 てき な命題 めいだい と部分 ぶぶん 空間 くうかん ,すなわち射影 しゃえい 演算 えんざん 子 こ とを対応 たいおう させることができる(量子 りょうし 論理 ろんり ).
統計 とうけい 力学 りきがく では、運動 うんどう の粗 あら 視 し 化 か を射影 しゃえい 演算 えんざん 子 こ を使 つか って定式 ていしき 化 か する方法 ほうほう (射影 しゃえい 演算 えんざん 子 こ の方法 ほうほう )がある.
分子 ぶんし 対称 たいしょう 性 せい 、分子 ぶんし 振動 しんどう 、格子 こうし 振動 しんどう 、結晶 けっしょう の波動 はどう 関数 かんすう では、任意 にんい の関数 かんすう からある対称 たいしょう 性 せい に従 したが う関数 かんすう のみを作 つく りたい時 とき に、射影 しゃえい 演算 えんざん 子 こ が用 もち いられる。たとえば射影 しゃえい 演算 えんざん 子 こ を用 もち いれば、既 すんで 約 やく 表現 ひょうげん の表現 ひょうげん 行列 ぎょうれつ からその基底 きてい 関数 かんすう (基準 きじゅん 振動 しんどう 、基準 きじゅん モードなど)を求 もと めることができる。
より一般 いっぱん に、ノルム空間 くうかん の間 あいだ の写像 しゃぞう T : V → W が与 あた えられたとき、同 おな じようにこれが核 かく の直交 ちょっこう 補 ほ 空間 くうかん 上 じょう の等 とう 距写像 ぞう となることを要求 ようきゅう することができる。その
(
ker
T
)
⊥
→
W
{\displaystyle (\ker T)^{\perp }\to W}
は等 とう 距であり、特 とく に全 ぜん 射 しゃ でなければならない。直交 ちょっこう 射影 しゃえい の場合 ばあい というのは W が V の部分 ぶぶん 空間 くうかん であるときである。リーマン幾何 きか 学 がく においてこのことはリーマン沈 しず め込 こ み の定義 ていぎ に使 つか われている。