アゾフ海うみ

アゾフ海うみ（アゾフかい、ウクライナ語ご: Азовське море；ロシア語ご: Азовское море；クリミア・タタール語ご: Азакъ денъизи）は、ケルチ海峡かいきょうによって黒海こっかいの北端ほくたんと結むすばれている内海うつみである。

地理ちり

黒海こっかいの周辺しゅうへん地図ちず。アゾフ海うみは、黒海こっかいの北東ほくとうの奥おくまった場所ばしょ。

アゾフ海うみ（中央ちゅうおう） 西にしはクリミア半島くりみあはんとう。南みなみの黒海こっかいと結むすぶケルチ海峡かいきょうも見みえる。

アゾフ海うみの大おおきさは東西とうざい340 km、南北なんぼく135 km、面積めんせき37,555 km²である。西岸せいがんに約やく110 kmにわたって伸のびているアラバト・スピットと呼よばれる砂洲さすが見みられる。アゾフ海うみの主要しゅような海流かいりゅうは反はん時計とけい周まわりに、渦うずを巻まく流ながれである。

東ひがしのタマン半島はんとう、西にしのクリミア半島くりみあはんとうに挟はさまれており、ケルチ海峡かいきょうによって黒海こっかいと結むすばれている状態じょうたいである。黒海こっかい自体じたいも閉鎖へいさ性せいの高たかい海域かいいきだが、このような地理ちり条件じょうけんのアゾフ海うみは非常ひじょうに閉鎖へいさ性せいの高たかい海域かいいきと言いえる。このような閉鎖へいさ性せいの高たかい海域かいいきは、一般いっぱんに海水かいすいが交換こうかんされ難がたいために、一旦いったん汚染おせんされると回復かいふくは簡単かんたんでない。アゾフ海うみでも海洋かいよう汚染おせんは重大じゅうだいな問題もんだいの1つである。

アゾフ海うみへと流ながれ込こむ主要しゅような河川かせんの1つであるドン川がわ河口かこうのある北東ほくとう部ぶは、タガンログ湾わんと呼よぶ。ドン川がわ以外いがいにアゾフ海うみへ流ながれ込こむ主要しゅよう河川かせんとしてはクバン川がわが挙あげられる。非常ひじょうに閉鎖へいさ性せいの高たかい水域すいいきであるため、これらの河川かせんによって海洋かいようとしては比較的ひかくてき低ひくい塩分えんぶん濃度のうどが保たもたれている場所ばしょが多おおい。例外れいがいは腐海ふかい（ウクライナ語ご: Сиваш）と呼よばれる湿地しっちであり、この場所ばしょは塩分えんぶん濃度のうどが高たかい。

閉鎖へいさ性せいの高たかい海域かいいきであるアゾフ海うみの水みずの新鮮しんせんさは、流入りゅうにゅうする河川かせんの水みずの要素ようそも大おおきく、特とくにドン川がわとクバン川がわの影響えいきょうは強つよい。これらの川かわはまたシルトと呼よばれる土どを、上流じょうりゅうから運はこんでくる。アゾフ海うみは平均へいきんして水深すいしんが13 mしかない地球ちきゅう上じょうで最もっとも浅あさい海うみだが、これらの河川かせんによって運搬うんぱんされてきたシルトが沈積ちんせきしたタガンログ湾わんの水深すいしんは1 mにも満みたない。ただし、アゾフ海かいで観測かんそくされる潮しおの満みち引びきは大おおきく、満潮まんちょう時じには水深すいしん5 mに達たっする所ところもある。

水深すいしんが浅あさい上うえに、塩分えんぶん濃度のうどが低ひくいために、比較的ひかくてき凍こおり易やすく、冬期とうきはアゾフ海うみの大だい部分ぶぶんが氷こおりに閉とざされる。

周辺しゅうへん地域ちいき

アゾフ海うみの北岸ほくがんはウクライナであり、東岸とうがんと西岸せいがんはロシア連邦れんぽう領りょうである。アゾフ海うみに面めんする主要しゅような港みなとは、ベルジャーンシク、マリウポリ、ロストフ・ナ・ドヌー、タガンログ、エイスクが挙あげられる。また、カスピ海かすぴかいやバルト海ばるとかいなどと通つうじるヴォルガ・ドン運河うんがと、カスピ海かすぴかいにつながるクマ＝マヌィチ運河うんがが有ある。

この地域ちいきには、地下ちか資源しげんとして天然てんねんガスや原油げんゆが存在そんざいするため、これらの採掘さいくつが行おこなわれてきた。

生物せいぶつ相しょう

アゾフ海うみには、多た種類しゅるいの海洋かいよう生物せいぶつが棲息せいそくし、無む脊椎動物せきついどうぶつは300種類しゅるい以上いじょう、魚類ぎょるいは80種類しゅるい以上いじょうを数かぞえた。しかし、これらの中なかには水産すいさん資源しげんと見みなされて乱獲らんかくされたり、人為じんい的てきな海洋かいよう汚染おせんなどのために、種たねや数かずの減少げんしょうが起おきた。