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アシドーシスとアルカローシス

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アルカローシスから転送てんそう

生体せいたい血液けつえきさん塩基えんき平衡へいこう一定いっていpH (7.4) になるようにたもたれている。平衡へいこう酸性さんせいがわにしようとする状態じょうたいアシドーシス (en:acidosis)、平衡へいこう塩基えんきせいがわにしようとする状態じょうたいアルカローシス (en:alkalosis) とう。

血清けっせいpHが7.4未満みまんになった(低下ていかした)状態じょうたいアシデミア、7.4よりうえになった(上昇じょうしょうした)状態じょうたいアルカレミアう。ともに全身ぜんしん細胞さいぼうにとっての環境かんきょう異常いじょうであり、上昇じょうしょう低下ていかりょう増大ぞうだいすると、いたることもあるとともに、これらのpH異常いじょう呼吸こきゅう不全ふぜん腎不全じんふぜんなどじゅうあつし疾患しっかん結果けっかとしてしょうじるため治療ちりょう指標しひょうになる。このpHの測定そくてい血液けつえきガス分析ぶんせきによってなされる。

  • 代謝たいしゃせいアシドーシスしょうじると、嘔吐おうと疲労ひろうがよくこるほか、呼吸こきゅう通常つうじょうよりはやく、ふかくなる。
  • 呼吸こきゅうせいアシドーシスをしょうじると、頭痛ずつう錯乱さくらんがみられ、呼吸こきゅうあさく、おそくなる。

緩衝かんしょうけい[編集へんしゅう]

通常つうじょうさん塩基えんき厳密げんみつたもたれているのは血液けつえきちゅうふくまれる緩衝かんしょうけいはたらきによる。これはホメオスタシス代表だいひょうてきれいである。

緩衝かんしょうけい代表だいひょうし、もっとおおきな緩衝かんしょう効果こうかっているのがじゅう炭酸たんさんイオン HCO
3
である。水素すいそイオンH+をうけとって

二酸化炭素にさんかたんそかたち排出はいしゅつすることができるからである。

このじゅう炭酸たんさんイオンをさんしているのはおも腎臓じんぞう尿にょう細管さいかんである。

ヘンダーソン・ハッセルバルヒのしき[編集へんしゅう]

さん塩基えんき平衡へいこう理論りろんとしては物理ぶつり化学かがくヘンダーソンハッセルバルヒによるしき有名ゆうめいであり、ヘンダーソン・ハッセルバルヒのしきといわれる。

アシドーシス[編集へんしゅう]

アシドーシスは、体内たいないさん塩基えんき平衡へいこうさんがわかたぶかせようとするちからはたらいている状態じょうたい軽症けいしょうであったり、重症じゅうしょうであってもアルカローシスと合併がっぺいすれば、ホメオスタシスによってアシデミアにならないこともある。

呼吸こきゅうせいアシドーシス[編集へんしゅう]

呼吸こきゅうせいアシドーシスは呼吸こきゅう不全ふぜんによって二酸化炭素にさんかたんそ体内たいない蓄積ちくせきしたためにこるアシドーシスである。これはPaCO2上昇じょうしょうする病態びょうたい存在そんざいかんがえられる。これははい胞低換気かんき病態びょうたいひとしく、呼吸こきゅう疾患しっかん神経しんけい筋肉きんにく疾患しっかん循環じゅんかん疾患しっかん人工じんこう呼吸こきゅう調節ちょうせつ不全ふぜんこりえる。呼吸こきゅう中枢ちゅうすうから換気かんき指令しれい十分じゅうぶんおこなわれない場合ばあい、これは延髄えんずい呼吸こきゅう中枢ちゅうすう障害しょうがい鎮静ちんせいざいよる呼吸こきゅう抑制よくせい効果こうか代謝たいしゃせいアルカローシスの代償だいしょうによっておこる。呼吸こきゅう中枢ちゅうすう命令めいれいおうじられない病態びょうたいとしては神経しんけい障害しょうがい横隔膜おうかくまくをはじめとする呼吸こきゅうすじ障害しょうがい呼吸こきゅうすじ疲労ひろうかんがえられる。また、はいのレベルで呼吸こきゅうおこなっていても、閉塞へいそくせいはいなどしも気道きどう閉塞へいそくこっているときも代謝たいしゃせいアシドーシスとなる。肺気腫はいきしゅ喘息ぜんそくでも同様どうよう病態びょうたいしょうじる。アシデミアが存在そんざいし、その原因げんいん呼吸こきゅうせいアシドーシスである場合ばあい基本きほんてきがた呼吸こきゅう不全ふぜん状態じょうたいであり緊急きんきゅう事態じたい可能かのうせいがある。生命せいめい維持いじのためには気管きかん挿管のうえ人工じんこう呼吸こきゅう使用しようする必要ひつようがある。なお、たんこう濃度のうど酸素さんそのみ投与とうよすると、てい酸素さんそ刺激しげきがなくなるため呼吸こきゅう中枢ちゅうすう抑制よくせいされむしろ呼吸こきゅう停止ていしをきたす(CO2ナルコーシス)おそれがあり危険きけんである。そのためSpO290%を目安めやす酸素さんそ濃度のうど調節ちょうせつする[1]軽症けいしょう場合ばあいじゅう炭酸たんさんイオンの増大ぞうだいのみがられてpHは正常せいじょう範囲はんいないにとどまることがあり、補正ほせいされた呼吸こきゅうせいアシドーシスばれる。これは緩衝かんしょうけいによる代償だいしょうせい代謝たいしゃせいアルカローシスがこったためであり、慢性まんせい疾患しっかん可能かのうせい示唆しさする。

代謝たいしゃせいアシドーシス[編集へんしゅう]

代謝たいしゃせいアシドーシスとは酸性さんせい物質ぶっしつ排泄はいせつされない、不揮発ふきはつせい酸性さんせい物質ぶっしつ過剰かじょうさんされている、じゅう炭酸たんさんイオンが排泄はいせつされているなどの理由りゆうからきるアシドーシスである。なお不揮発ふきはつせい酸性さんせい物質ぶっしつとは呼吸こきゅうによって排泄はいせつされないさんのことである。代謝たいしゃせいアシドーシスによるアシデミアが存在そんざいする場合ばあい緩衝かんしょうけいはたらきとして二酸化炭素にさんかたんそ排泄はいせつする呼吸こきゅうせいアルカローシスをもちいてアシドーシスをそうとする。よって呼吸こきゅうはげしくなり、自覚じかく症状しょうじょうとして呼吸こきゅう困難こんなんかんおぼえることもある。

代謝たいしゃせいアシドーシスにはアニオンギャップ(AG)が増加ぞうかするものと、増加ぞうかしないこうクロールせい代謝たいしゃせいアシドーシスがある。AGの増加ぞうかはそれだけで代謝たいしゃせいアシドーシスが存在そんざいするといえる重要じゅうよう所見しょけんである。をつけなければいけないこととしてAGは低下ていかする病態びょうたい存在そんざいすることである。具体ぐたいてきにはていアルブミンしょう、IgG多発たはつせい骨髄腫こつづいしゅ、ブロマイド中毒ちゅうどくこうカルシウムしょうこうマグネシウムしょうこうカリウムしょう存在そんざいする。とくていアルブミンしょうのためAGの増加ぞうかがマスクされることはよくあり、アルブミンが1mg/dL低下ていかするごとにAGは2.5~3mEq/L低下ていかすることがられている。これはアルブミンがアニオンであるためである。もしAGが増加ぞうかしていたら補正ほせいじゅう炭酸たんさんイオンを計算けいさんする。これは補正ほせいじゅう炭酸たんさんイオン=じゅう炭酸たんさんイオン+ΔでるたAG(ΔでるたAG=AG-12である)で計算けいさんされ、これは代謝たいしゃせいアシドーシスをたしたかげイオンの増加ぞうかぶんがなかったと仮定かていした場合ばあいじゅう炭酸たんさんイオンのである。そしてそのをもとに代償だいしょうせい変化へんか予測よそく範囲はんいないにあるかどうかを検討けんとうし、予測よそく範囲はんいがいならばどのような病態びょうたい合併がっぺいしたのかをかんがえる。

AG増加ぞうかせい代謝たいしゃせいアシドーシス[編集へんしゅう]

AGの増加ぞうか不揮発ふきはつさん蓄積ちくせきしめす。人間にんげん身体しんたい電気でんきてき中性ちゅうせいである。すなわち、イオンのあたいすうだけかげイオンが存在そんざいする。イオンはおもにナトリウムイオンでありかげイオンはクロールイオン、じゅう炭酸たんさんイオン、有機ゆうきさんである。よってAGを以下いかのように定義ていぎすると大雑把おおざっぱ有機ゆうきさんがどれあるのかを把握はあくすることができる。AG=ナトリウムイオン-(クロールイオン+じゅう炭酸たんさんイオン)である。正常せいじょうは12±2mEq/Lである。カリウムイオンを考慮こうりょすることもあるがその場合ばあい正常せいじょうが16前後ぜんこうとなる。

内因ないいんせい物質ぶっしつ代謝たいしゃによるもの
乳酸にゅうさんアシドーシスやケトアシドーシス、尿毒症にょうどくしょうこる。ケトアシドーシスの原因げんいんとしては糖尿とうにょうびょうせいケトアシドーシス、アルコールせいケトアシドーシス、飢餓きがによるものがられている。また重要じゅうよう原因げんいんとしては痙攣けいれん発作ほっさ代謝たいしゃせいアシドーシスもAG増加ぞうかせい代謝たいしゃせいアシドーシスである。これは痙攣けいれん発作ほっさによって筋肉きんにくから乳酸にゅうさん放出ほうしゅつされるためとかんがえられている。救急きゅうきゅう現場げんばではAG増加ぞうかせい代謝たいしゃせいアシドーシスはKUSSMALとおぼえられる。これは糖尿とうにょうびょうせいケトアシドーシス、尿毒症にょうどくしょうサリチル酸さりちるさん中毒ちゅうどく敗血症はいけつしょうメタノールアルコール中毒ちゅうどくアスピリン中毒ちゅうどく乳酸にゅうさんアシドーシスである。
外因がいいんせい
メタノール、エチレングリコールサリチル酸さりちるさんパラアルデヒドによる中毒ちゅうどくこる。
とく外因がいいんせいのAG増加ぞうかせい代謝たいしゃせいアシドーシスをうたが場合ばあい浸透しんとうあつギャップを計算けいさんしてみるとあきらかになることもある。

こうクロールせい代謝たいしゃせいアシドーシス[編集へんしゅう]

AGが増加ぞうかしない代謝たいしゃせいアシドーシスである。頻度ひんどとしてはこちらのほうあきらかにおおい。じゅう炭酸たんさんイオン喪失そうしつ尿にょう細管さいかんでの水素すいそイオン分泌ぶんぴつ障害しょうがい塩酸えんさん投与とうよといった原因げんいんによってこる。呼吸こきゅうせいアルカローシス代償だいしょうもこのじょこる。

じゅう炭酸たんさんイオンの喪失そうしつ
下痢げり尿にょうかんSじょう結腸けっちょう吻合ふんごう、アセタゾラミドの投与とうよによってじゅう炭酸たんさんイオンは喪失そうしつされる。またきん尿にょう細管さいかんせいアシドーシスでもじゅう炭酸たんさんイオンの喪失そうしつこる場合ばあいがある。
尿にょう細管さいかんでの水素すいそイオン分泌ぶんぴつ障害しょうがい
きん尿にょう細管さいかんせいアシドーシスとおくらい尿にょう細管さいかんせいアシドーシス尿にょう細管さいかんじんあいだしつ疾患しっかんていアルドステロンしょうでは尿にょう細管さいかんでの水素すいそイオンの分泌ぶんぴつ障害しょうがいがおき代謝たいしゃせいアシドーシスにいたる。なお尿にょう細管さいかんせいアシドーシスではしばしばていカリウムしょうともなうことが特徴とくちょうである。

代謝たいしゃせいアシドーシスとカリウムの関係かんけい[編集へんしゅう]

アシドーシスはこうカリウムしょうともない、アルカローシスはていカリウムしょうともなう。代謝たいしゃせいアシドーシスをしょうじるような病態びょうたいでは組織そしき細胞さいぼう傷害しょうがいじん機能きのう低下ていかしょうじていることがおおく、こうカリウムしょうになりやすい。それにくわえて、代謝たいしゃせいアシドーシスではカチオンバランスの維持いじのため細胞さいぼうないから細胞さいぼうがいにカリウムが移動いどうするといわれている。このじょではpHが0.1低下ていかするごとに血清けっせいカリウム濃度のうどが0.6mEq/L上昇じょうしょうするといわれている。しかしこの細胞さいぼうないからの移動いどうかんしてはメカニズムによってことなることがられている。こうクロールせい代謝たいしゃせいアシドーシスではクロールイオンが細胞さいぼうないはいりにくいため水素すいそイオンが細胞さいぼうないはいわりにカリウムが細胞さいぼうがい排出はいしゅつされるが、AG増加ぞうかせい代謝たいしゃせいアシドーシスでは水素すいそイオンが細胞さいぼうないはいさい、アニオンである有機ゆうきさん一緒いっしょ細胞さいぼうないはいるため、カチオンバランスがくずれることがなく、カリウムの排出はいしゅつこらないといわれている。ただし頻度ひんどとしては圧倒的あっとうてきこうクロールせい代謝たいしゃせいアシドーシスのほうおおいため、格言かくげん一概いちがいあやまりとはえない。アシドーシスなのにていカリウムしょうをきたす疾患しっかんとしては下痢げり尿にょう細管さいかんせいアシドーシスがられている。

代謝たいしゃせいアシドーシスの尿にょう所見しょけん[編集へんしゅう]

アシデミアがあり血清けっせいじゅう炭酸たんさんイオン濃度のうど低下ていかしているような状態じょうたいでは代償だいしょう機構きこうとして尿にょう酸性さんせいし、体内たいないをアルカリにたもとうとする。じん機能きのう障害しょうがいがなければ尿にょうpH は5以下いか低下ていかするはずである。しかし尿にょう酸性さんせい障害しょうがい尿にょう細管さいかんアシドーシスがある場合ばあいはそのような代償だいしょう機構きこうはたらかないとされている。腎臓じんぞう水素すいそイオン排出はいしゅつりょく調しらべるには尿にょうアニオンギャップを計算けいさんすればよい。UAG=Na+K‐Clを定義ていぎする。正常せいじょうは0である。水素すいそイオン排出はいしゅつ亢進こうしんしているとき、たとえば下痢げりときはUAGは-30程度ていどまけかたむくがとおくらい尿にょう細管さいかんせいアシドーシスなど水素すいそイオン排出はいしゅつりょく低下ていかした病態びょうたいでは25程度ていど増加ぞうかしている。

アルカローシス[編集へんしゅう]

アルカローシスは体内たいないさん塩基えんき平衡へいこう塩基えんきがわかたぶかせようとするちからはたらいている状態じょうたいである。軽症けいしょうであったり、重症じゅうしょうであってもアシドーシスと合併がっぺいすれば、ホメオスタシスによってアルカレミアにならないこともある。アシドーシス同様どうよう成因せいいんによって種類しゅるい分類ぶんるいする。アルカローシスの状態じょうたいではちゅうカルシウムイオンが血漿けっしょう蛋白たんぱく結合けつごうしてしまって濃度のうど低下ていかし、テタニーしびれなどのていカルシウムしょう症状しょうじょうられる。

呼吸こきゅうせいアルカローシス[編集へんしゅう]

呼吸こきゅうせいアルカローシスははげしい呼吸こきゅうのためにこるアルカローシスである。PaCO2下降かこうする病態びょうたい存在そんざいかんがえられる。これははい胞過換気かんき病態びょうたいひとしく、中枢ちゅうすう神経しんけい疾患しっかん精神せいしん疾患しっかんてい酸素さんそしょう薬剤やくざい、レスピレーターの調節ちょうせつ不全ふぜんこりえる。換気かんき症候群しょうこうぐん、ARDSなどが代表だいひょうてき疾患しっかんである。二酸化炭素にさんかたんそ過剰かじょう排泄はいせつされてさん塩基えんき平衡へいこう塩基えんきせいかたむく。この状態じょうたいではむしろ呼吸こきゅう困難こんなん自覚じかくするためさらに呼吸こきゅうはげしくなると悪循環あくじゅんかんおちいることがある。これが換気かんき症候群しょうこうぐん病態びょうたいかんがえられている。てい酸素さんそしょうともなうとがた呼吸こきゅう不全ふぜんとなる。

代謝たいしゃせいアルカローシス[編集へんしゅう]

代謝たいしゃせいアルカローシスは、呼吸こきゅう以外いがい代謝たいしゃによって、水素すいそイオンを喪失そうしつする、とうこるアルカローシスのことである。代謝たいしゃせいアルカローシスは一時いちじてきにはちゅうHCO3-濃度のうどげるような異常いじょうのプロセスが存在そんざいすることである。しかし、HCO3-本来ほんらいいと球体きゅうたい濾過ろかされて尿にょう細管さいかんにてさい吸収きゅうしゅうされるのだがさい吸収きゅうしゅうりょういきがあるため正常せいじょうじんでは大量たいりょうにHCO3摂取せっしゅしても代謝たいしゃせいアルカローシスにはおちいらない。すなわち代謝たいしゃせいアルカローシスをみたら、HCO3-産出さんしゅつ機構きこうほかにHCO3-排出はいしゅつできない病態びょうたい、すなわち代謝たいしゃせいアルカローシス維持いじ機構きこう存在そんざいしているとかんがえなければならない。

代謝たいしゃせいアルカローシスの原因げんいん[編集へんしゅう]

これらはちゅうHCO
3
濃度のうど上昇じょうしょうさせる因子いんしである。代謝たいしゃせいアルカローシス維持いじ機構きこう存在そんざいしなければ、これらの原因げんいん代謝たいしゃせいアルカローシスが持続じぞくすることはかんがえにくい。

水素すいそイオンの喪失そうしつ
頻度ひんどとしておおいのは嘔吐おうとかん長期ちょうき留置りゅうちによる胃液いえき吸引きゅういんなどである。胃液いえき排出はいしゅつすることで水素すいそイオンが消化しょうかかんから喪失そうしつされる。また尿にょうちゅうへの排出はいしゅつされることもある。頻度ひんどとしては利尿りにょうやく投与とうよこうしつコルチコイド過剰かじょうなどがあげられる。こうカルシウムしょうやペニシリン誘導体ゆうどうたい投与とうよでもこりえる。また重要じゅうよう法則ほうそくとして、ていカリウムしょうでおこるアルカローシスは水素すいそイオンの細胞さいぼうない移動いどうによってちゅうからは水素すいそイオンがうしなわれるものである。
HCO
3
投与とうよ
大量たいりょう輸血ゆけつクエン酸くえんさんふくんでいる)や炭酸たんさん水素すいそナトリウムの投与とうよによる。
代償だいしょうせい変化へんか

代謝たいしゃせいアルカローシスの維持いじ機構きこう[編集へんしゅう]

尿にょうちゅうHCO
3
排出はいしゅつ抑制よくせいするものがアルカローシスの維持いじには必要ひつようである。頻度ひんどとしては有効ゆうこう循環じゅんかん血漿けっしょうりょう低下ていかによることがもっとおおい。

GFRの低下ていか
いと球体きゅうたい濾過ろかりょう低下ていかであり、腎不全じんふぜんでおこる。
HCO
3
さい吸収きゅうしゅう亢進こうしん
有効ゆうこう循環じゅんかん血漿けっしょうりょう低下ていかていカリウムしょうこる。
腎臓じんぞうにおけるHCO
3
産出さんしゅつ増加ぞうか
こうしつコルチコイド過剰かじょう利尿りにょうやく使用しようこうカルシウムしょう、ペニシリン誘導体ゆうどうたい投与とうよはアルカローシスの発生はっせいついでもあり維持いじ機構きこうでもある。

代謝たいしゃせいアルカローシスの尿にょう所見しょけん[編集へんしゅう]

じん機能きのう正常せいじょう場合ばあい尿にょうちゅうのクロールイオン濃度のうど測定そくていすることで原因げんいんがわかることもある。尿にょうちゅうCl濃度のうどが10mEq/L以下いか場合ばあい循環じゅんかん血漿けっしょうりょう低下ていかつようたがわれる。このような代謝たいしゃせいアルカローシスのおおくは生理せいりしょく塩水えんすい輸液によって改善かいぜん見込みこめ、Cl反応はんのうせいアルカローシスといわれている。利尿りにょうやくもちいていないにもかかわらず、尿にょうちゅうCl濃度のうどが20mEq/L以上いじょうである場合ばあい生理せいりしょく塩水えんすいの輸液では改善かいぜん見込みこめないためClおうせいアルカローシスといわれている。Clおうせいアルカローシスの原因げんいんとしては膠質こうしつコルチコイド過剰かじょうであることがおおい。

嘔吐おうとによる代謝たいしゃせいアルカローシス[編集へんしゅう]

嘔吐おうとがおこりHClが体内たいないからうしなわれると、細胞さいぼうがいえき減少げんしょうし、脈拍みゃくはく増加ぞうかなどの臨床りんしょう所見しょけんがみられるにもかかわらず、尿にょうちゅうNa濃度のうどは20mEq/L以上いじょうである。通常つうじょう有効ゆうこう循環じゅんかん血液けつえきりょう減少げんしょうすると尿にょうちゅうNa濃度のうどは10mEq/L未満みまんとなるのだが、嘔吐おうとではこのような反応はんのうがマスクされる。これはHCO3-排泄はいせつのためにとおくらい尿にょう細管さいかんでNaやKを分泌ぶんぴつするためとかんがえられている。わりに嘔吐おうとでは尿にょうちゅうCl濃度のうどが10mEq/L以下いかとなるのが特徴とくちょうてきである。嘔吐おうとまると、HCO
3
排出はいしゅつしなくなるので、まずはNaのさい吸収きゅうしゅう正常せいじょうもどり、その結果けっか水素すいそイオンが分泌ぶんぴつされるため、体内たいないはアルカローシスにもかかわらず酸性さんせい尿にょうつくられるようになる。この状態じょうたいでは尿にょうちゅうNa濃度のうどは10mEq以上いじょうとなるがClは依然いぜんていのままである。有効ゆうこう循環じゅんかん血漿けっしょうりょう改善かいぜんするとようやく代謝たいしゃせいアルカローシスが改善かいぜんしてくる。通常つうじょう尿にょうちゅうClの意義いぎ尿にょうちゅうNaと同様どうようであるが、代謝たいしゃせいアルカローシスの場合ばあい尿にょうちゅうNaが体液たいえきりょう指標しひょうにならず、尿にょうちゅうClが指標しひょうとなる。

アルドステロンしょうによる代謝たいしゃせいアルカローシス[編集へんしゅう]

アルドステロンしょうではアルドステロン過剰かじょうのため、尿にょうちゅうのカリウムイオンのりょうきわめておおくなり、また酸性さんせい尿にょう生成せいせいされる。アルドステロンしょう代謝たいしゃせいアルカローシスはていカリウムしょうによるものとかんがえられている。カリウムの欠乏けつぼうがなければ、アルドステロンしょうであっても代謝たいしゃせいアルカローシスがこらないか、こっても比較的ひかくてき軽度けいどである。アルドステロンしょうによる代謝たいしゃせいアルカローシスはClおうせいアルカローシスである。

利尿りにょうやくによる代謝たいしゃせいアルカローシス[編集へんしゅう]

頻度ひんどとしてはたかいのはループ利尿りにょうやくたとえばフロセミド多用たようによる代謝たいしゃせいアルカローシスである。このような状態じょうたいではていカリウムしょうにもかかわらず、尿にょうちゅうK濃度のうど比較的ひかくてきたかい(10mEq/L以下いかならばてい、こういったときは下剤げざい乱用らんようかんがえる)のが特徴とくちょうである。尿にょうちゅうCl濃度のうどたかければ利尿りにょうやく乱用らんよう可能かのうせいたかまる。しかしそうでなければ、かなりまれではあるがバーター症候群しょうこうぐん可能かのうせいがある。バーター症候群しょうこうぐん臨床りんしょうぞうていする疾患しっかんとしてギテルマン症候群しょうこうぐんがある。両者りょうしゃ鑑別かんべつには尿にょうちゅうCa濃度のうど測定そくていすればよい。バーター症候群しょうこうぐんでは尿にょうちゅうのCa濃度のうど上昇じょうしょうしていることがおおい。フロセミドの乱用らんようにせせいバーター症候群しょうこうぐん)、バーター症候群しょうこうぐんともに尿にょうちゅうCa濃度のうど上昇じょうしょうする。これは尿にょうからのカルシウムイオンの排出はいしゅつ促進そくしんするからである。こうカルシウムしょうではその効果こうか期待きたいして、尿にょうであるにもかかわらずフロセミドを治療ちりょうとしてもちいる。利尿りにょうやくによる代謝たいしゃせいアルカローシスの場合ばあいアセタゾラミド投与とうよ改善かいぜんしうる。副作用ふくさようとしてはこうアンモニアしょうである。アセタゾラミドを250~500mg/day投与とうよする。

代謝たいしゃせいアルカローシスによる血圧けつあつ降下こうか作用さよう[編集へんしゅう]

代謝たいしゃせいアルカローシスは、あきらかな血圧けつあつ降下こうか作用さよう惹起じゃっきすると指摘してきされている。この作用さようがチアジドけい降圧こうあつざい降圧こうあつじょいち因子いんしであることが指摘してきされている[2]

混合こんごうせいさん塩基えんき障害しょうがい検出けんしゅつ[編集へんしゅう]

さん塩基えんき障害しょうがいこす病体びょうたい数多かずおおくあり、それらは合併がっぺいすることが非常ひじょうおおい。そのためにはまさしく血液けつえきガス分析ぶんせきおこな必要ひつようがある。以下いかにその方法ほうほういちれいをまとめる。

まずアシデミアがあるのかアルカレミアがあるのかを調しらべる。基本きほんてき代償だいしょう機構きこうではアシデミアがアルカレミアになるようなおおきな代償だいしょうこらない。アシデミアがある時点じてんで、呼吸こきゅうせいアシドーシスか代謝たいしゃせいアシドーシス、あるいはその両方りょうほう最初さいしょこったとかんがえてよい。

アシデミアあるいはアルカレミアが代謝たいしゃせいのものなのか、あるいは呼吸こきゅうせいのものなのかをかんがえる。

AG=ナトリウムイオン-(じゅう炭酸たんさんイオン+クロールイオン)を計算けいさんする。AGが増加ぞうかしていればそれだけで代謝たいしゃせいアシドーシスの存在そんざい意味いみする。注意ちゅういすべきはAGは低下ていかする病態びょうたい存在そんざいすることである。具体ぐたいてきにはていアルブミンしょう、IgG多発たはつせい骨髄腫こつづいしゅ、ブロマイド中毒ちゅうどくこうカルシウムしょうこうマグネシウムしょうこうカリウムしょう存在そんざいする。とくていアルブミンしょうのためAGの増加ぞうかがマスクされることはよくあり、アルブミンが1mg/dL低下ていかするごとにAGは2.5~3mEq/L低下ていかすることがられている。これはアルブミンがアニオンであるためである。またAGが増加ぞうかしていれば補正ほせいじゅう炭酸たんさんイオンを計算けいさんする。これは補正ほせいじゅう炭酸たんさんイオン=じゅう炭酸たんさんイオン+ΔでるたAG(ΔでるたAG=AG-12である)で計算けいさんされ、これは代謝たいしゃせいアシドーシスをたしたかげイオンの増加ぞうかぶんがなかったと仮定かていした場合ばあいじゅう炭酸たんさんイオンのである。

代償だいしょうせい変化へんかいちせいさん塩基えんき平衡へいこう異常いじょうたいして予測よそくされた範囲はんいないにあるかどうかを検討けんとうする。この代償だいしょうせい変化へんか予測よそく範囲はんいはずれている場合ばあいさん塩基えんき平衡へいこう異常いじょうをきたす病態びょうたい存在そんざいすることを意味いみする。代償だいしょうせい変化へんか以外いがい混合こんごうせいさん塩基えんき異常いじょうというものは比較的ひかくてきありふれた病態びょうたいであり、代償だいしょうせい変化へんか予測よそくもちいることでそれらを検出けんしゅつすることができ、血液けつえきガス分析ぶんせき診断しんだん能力のうりょくをあげることができる。代償だいしょうせい変化へんか予測よそくつぎのような経験けいけんそくられている。ΔでるたHCO
3
補正ほせいHCO
3
ではなく、測定そくていされたHCO
3
計算けいさんすることに注意ちゅういする。

代謝たいしゃせいアシドーシスの呼吸こきゅうせい代償だいしょう
ΔでるたpCO2 = 1~1.3 × ΔでるたHCO
3
MAX:pCO2 = 15mmHg
代謝たいしゃせいアルカローシスの呼吸こきゅうせい代償だいしょう
ΔでるたpCO2 = 0.6~0.7 × ΔでるたHCO
3
MAX:pCO2 = 60mmHg
呼吸こきゅうせいアシドーシスの代謝たいしゃせい代償だいしょう
急性きゅうせい ΔでるたHCO
3
= 0.1 × ΔでるたpCO2 MAX:HCO
3
= 30
慢性まんせい ΔでるたHCO
3
= 0.3~0.35 × ΔでるたpCO2 MAX:HCO
3
=42
呼吸こきゅうせいアルカローシスの代謝たいしゃせい代償だいしょう
急性きゅうせい ΔでるたHCO
3
= 0.2 × ΔでるたpCO2 MAX:HCO
3
= 18
慢性まんせい ΔでるたHCO
3
= 0.4~0.5 × ΔでるたpCO2 MAX:HCO
3
= 12

なお、通常つうじょうΔでるた計算けいさんをおこなうときはHCO
3
は24、pCO2は40、AGは12を正常せいじょうとして差分さぶんをとることがおおい。AGの計算けいさんかくれているAG増大ぞうだいせい代謝たいしゃせいアシドーシスを検出けんしゅつすることである。慢性まんせい腎不全じんふぜんのようにAG増大ぞうだいせい代謝たいしゃせいアシドーシスとこうClせい代謝たいしゃせいアシドーシスは合併がっぺいすることがられており、それを見落みおとさせように補正ほせいHCO3を計算けいさんする。またアシデミア、アルカレミアにたいしては代償だいしょうせい機構きこうはたらく。すべてのアシドーシス、アルカローシスにはたらくわけではない。その範囲はんい予測よそくすることで範囲はんいがいにあった場合ばあいはそれ以外いがいのアシドーシスかアルカローシスが存在そんざいするとかんがえる。これが基本きほんてきかんがかたである。

たとえば、慢性まんせい腎不全じんふぜん患者かんじゃ嘔吐おうとをし、脱水だっすいこし、アルカレミアとなったときその原因げんいん代謝たいしゃせいアルカローシスであり、代償だいしょうせい呼吸こきゅうせいアシドーシスがこるのだが、上記じょうきプロトコールにてはめると、AG増大ぞうだいせい代謝たいしゃせいアシドーシスとこうClせい代謝たいしゃせいアシドーシスを検出けんしゅつできる。また代償だいしょうせい呼吸こきゅうせいアシドーシスの予測よそく範囲はんいないにパラメータがはいっていなければ、それ以外いがい呼吸こきゅう障害しょうがい合併がっぺいかんがえることができる。このように血液けつえきガス分析ぶんせきまさしくおこなうことで診断しんだん精度せいどたかめることができ、治療ちりょうのマネジメントの選択肢せんたくしやすこともできる。たとえば、オピオイド投与とうよちゅう患者かんじゃ呼吸こきゅうせいアルカローシスの合併がっぺいをみたら、まだ呼吸こきゅう抑制よくせいこっても呼吸こきゅう改善かいぜんするだけなのでオピオイドを増量ぞうりょうできるといったことである。

治療ちりょう[編集へんしゅう]

基本きほんてきにはアシドーシス、アルカローシスは病態びょうたいであり、病名びょうめいではないため、治療ちりょうげん疾患しっかん治療ちりょうである。

呼吸こきゅうせいアシドーシスの場合ばあいてい酸素さんそしょう治療ちりょうとして酸素さんそ療法りょうほう人工じんこう呼吸こきゅうなどの治療ちりょうほうえらぶこともある。

代謝たいしゃせいアシドーシスの治療ちりょうにはアルカリざい投与とうよおこなわれる。HCO
3
不足ふそくおぎなうため炭酸たんさん水素すいそナトリウムの投与とうよおこなわれることがおおい。

  • 不足ふそくHCO
    3
    (mEq/L) = 体重たいじゅう(Kg) × 0.2 ×(24-測定そくていHCO
    3
  • 不足ふそくHCO
    3
    (mEq/L) = 体重たいじゅう(Kg) × 0.2 × B.E

から計算けいさんされ、まず半分はんぶんりょう投与とうよしpHをみながら追加ついかしていく。メイロン(炭酸たんさん水素すいそナトリウムの商品しょうひんめい)でおこな場合ばあい単位たんい換算かんさん必要ひつようである。7%メイロン20mLでは17mEq/Lであり、8.4%メイロン20mLでは20mEq/Lで計算けいさんする。一過いっかせいにPaCO2上昇じょうしょうするため、十分じゅうぶん換気かんき確保かくほされた状態じょうたいおこなう。

呼吸こきゅう不全ふぜん呼吸こきゅうせいアシドーシスがられたときかつてはアシドーシスの補正ほせいのためにじゅう炭酸たんさんナトリウム溶液ようえき点滴てんてきするなどの処置しょちがとられていたこともあったが、治療ちりょう成績せいせき変化へんかはなくたんなる補正ほせい意義いぎちいさいことが判明はんめいしてきた。尿にょう細管さいかんアシドーシスは根本こんぽんてき治療ちりょうほうがないため、経口けいこうてきじゅう炭酸たんさんナトリウムを投与とうよつづけることで補正ほせいおこなっていく。

出典しゅってん脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 血液けつえきガステキスト だい2はん ISBN 4830614153
  • みず電解でんかいしつさん塩基えんき平衡へいこう 改訂かいていだい2はん ISBN 452422422X
  • レジデントのためのじん疾患しっかん診療しんりょうマニュアル ISBN 4260000497
  • 血液けつえきガスをめぐる物語ものがたり ISBN 9784498031722

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]