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ガルリ・カスパロフ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』


ガルリ・キーモヴィチ・カスパロフ
フルネーム Гарри Кимович Каспаров
くに ソビエト連邦の旗 ソビエト連邦れんぽう
ロシアの旗 ロシア
生誕せいたん (1963-04-11) 1963ねん4がつ11にち(61さい
アゼルバイジャン・ソビエト社会しゃかい主義しゅぎ共和きょうわこくバクー
タイトル だい16だい公式こうしき世界せかいチャンピオン
初代しょだいクラシカル世界せかいチャンピオン
世界せかい選手権せんしゅけん 1985ねん - 1993ねん公式こうしき世界せかいチャンピオン)
1993ねん - 2000ねん(クラシカル世界せかいチャンピオン)
FIDEレート 2812 (2022ねん11月)
最高さいこうレート 2851 (1999ねん7がつ)
最高さいこうランキング 1 (1984ねん1がつ)
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ガルリ・キーモヴィチ・カスパロフ: Га́рри Ки́мович Каспа́ров[1]えい:Garry Kimovich Kasparov、1963ねん4がつ13にち - )は、アゼルバイジャンバクー出身しゅっしんもとチェス選手せんしゅ。15ねんものあいだチェス世界せかいチャンピオンのタイトルを保持ほじつづけた人物じんぶつ。1948ねんにFIDEによる選手権せんしゅけん制度せいどはじまってからでは最長さいちょう記録きろくである。現在げんざい政治せいじ。2011ねんより、人権じんけん財団ざいだん(Human Rights Foundation)英語えいごばん会長かいちょうである[2]

ユダヤじんちちアルメニアじんははとのあいだまれ、幼時ようじはガルリ・ヴァインシュテインといった。おさなころちちともな母方ははかたられ、のちははせい「カスパリアン」をロシアふうあらためた「カスパロフ」を名字みょうじとして名乗なのるようになった。

2005ねん3がつにチェストーナメントから引退いんたい[3]現在げんざいロシア民主みんしゅ運動うんどうおこなっている政治せいじである。

現在げんざい企業きぎょうなど相手あいて講演こうえん活動かつどうおこなかたわら、ロシアの民主みんしゅ運動うんどう尽力じんりょくしており、2007ねん9がつには、野党やとう連合れんごう組織そしきもうひとつのロシア」から、2008ねんロシア大統領だいとうりょう選挙せんきょ候補こうほえらばれた。

西欧せいおうではチェス理知的りちてきなゲームの代表だいひょう、「人間にんげん知性ちせいきわみ」となされており[3]、チェス人口じんこうおおいので、カスパロフはあたま人物じんぶつ代表だいひょうとして、しばしば言及げんきゅうされる人物じんぶつでもある。

2014ねんにクロアチア国籍こくせき取得しゅとくした[4]家族かぞくつまのダーシャと息子むすこのヴァディム[3]

11さいのカスパロフ。1974ねん
1980ねん
1980ねん、ジュニア世界せかいチャンピオンになった。
1985ねん世界せかいチャンピオン決定けっていせん相手あいてアナトリー・カルポフ
1985ねん、カルポフをせいしFIDE世界せかいチャンピオンになった。

チェスかいでの来歴らいれき[編集へんしゅう]

史上しじょう最年少さいねんしょうの22さい世界せかいチャンピオンの奪取だっしゅしたことにはじまり、15ねんものあいだ世界せかいチャンピオンのタイトルを保持ほじしつづけた(FIDE:1985 - 1993, PCA:1993 - 2000)。FIDE世界せかいランキング最高さいこうは1(1984ねん1がつ)で、通算つうさん255カ月かげつ世界せかいランキング1史上しじょう最長さいちょうである。FIDE発表はっぴょうのレーティングのさい高値たかねは2851(1999ねん7がつ、2000ねん1がつ)で、これはマグヌス・カールセンが2013ねん1がつ更新こうしんするまで、13年間ねんかんにわたってFIDEレーティングのさい高値たかねであった。また22さい6ヶ月かげつでの王者おうじゃも2013ねん現在げんざい更新こうしんされていない。

カスパロフは1973ねん、10さいときミハイル・ボトヴィニク主宰しゅさいするチェスの学校がっこうはい[3]、チェスプレーヤーとしての英才えいさい教育きょういくけた。カスパロフから恩師おんし校長こうちょうにあたるボトヴィニクは、ソ連それん出身しゅっしんのチェス世界せかいチャンピオンのだい1ごうで、ふくすうかいのチャンピオンになった経歴けいれきだけでなく、工学こうがくしゃでもあったため、プロの世界せかいはなれたのち後進こうしん指導しどうやコンピュータチェスに専念せんねんしていたのである[3](このチェスの学校がっこうは1980年代ねんだい後半こうはんには、ボトヴィニクとカスパロフが共同きょうどう運営うんえいする学校がっこうになった[3]。ボトヴィニクのチェス学校がっこうは、カスパロフ以外いがいにもアナトリー・カルポフウラジーミル・クラムニクなどの世界せかいチャンピオンが輩出はいしゅつすることになった[3])。

1978ねんにはソコルスキー記念きねんトーナメントで1となり、グランドマスターとなった。1980ねんには世界せかいジュニアチェス選手権せんしゅけん優勝ゆうしょうし、だい19かいジュニア世界せかいチャンピオンとなるなど、10代からすでに将来しょうらい有望ゆうぼう若手わかてとして有名ゆうめいであった[3]

1984ねんには21さいはじめてチェス世界せかい選手権せんしゅけん出場しゅつじょうはつ出場しゅつじょうにしてすすみ、10ねんほど世界せかいチャンピオンのタイトルを保持ほじするアナトリー・カルポフに挑戦ちょうせんすることになった[3]

この試合しあいは(も)チェスのこるものであり、その激闘げきとうぶりと異例いれい展開てんかいはしばしばチェスかいではかたられている。記録きろくとしては48きょくで5しょう3はい40けのまま、当時とうじ世界せかいチェス連盟れんめい会長かいちょうカンポマネスの判断はんだんにより中止ちゅうしとされ、勝負しょうぶとなったのであり、その経過けいかつぎのようなものである。もともと「6きょく先勝せんしょうきょくすう無制限むせいげん」という条件じょうけんでの試合しあいであった。最初さいしょはカルポフが4きょく連勝れんしょうした[3]。そこでカスパロフは反省はんせいし、戦略せんりゃくあらためた[3]同時どうじ相手あいてのチャンピオンのカルポフにも様々さまざま思惑おもわくまれておりプレーのしかたに変化へんかしょうじた[3]。そのつぎおどろくことに17きょく連続れんぞくけとなった[3]だい27きょくでカスパロフがとし5-0、22けとなった[3]。やがて試合しあいは3かげつ突入とつにゅうした[3]わかきカスパロフはだい32きょくはつ勝利しょうり攻勢こうせいてんじた[3]。その5週間しゅうかんにわたりけがつづいたが、カスパロフがわのほうが調子ちょうしであった[3]世界中せかいじゅうのチェスファンはこの試合しあいわりがあるのか?と疑問ぎもんかんはじめていた[3]大会たいかい運営うんえいがわはさすがにプレーヤーに休息きゅうそく必要ひつようだと判断はんだんし、試合しあいちゅうでありながらゲームがすう日間にちかんやすみになった[3]。これは異例いれい決定けっていであった[3]やすけのだい48きょくにカスパロフは勝利しょうりし5-3とせまり、あきらかにいきおいはカスパロフがわにあった[3]。このとき国際こくさいチェス連盟れんめい(FIDE)のフロレンシオ・カンポマネス会長かいちょうたいしてソ連それんスポーツしょうから圧力あつりょくがかかり[3]、1985ねん2がつ15にちどう会長かいちょう記者きしゃ会見かいけんひらき、対戦たいせん中止ちゅうしすると発表はっぴょうした[3]試合しあいは5かげつおよんでいたにもかかわらず、結局けっきょく勝者しょうしゃいままにわりをむかえたのである[3]。6かげつ再戦さいせんめられた[3]

1985ねん再戦さいせんでは、だいいちきょくからカスパロフが勝利しょうり[3]。カスパロフはアナトリー・カルポフをやぶり(当時とうじの)史上しじょう最年少さいねんしょう世界せかいチャンピオンとなった[3]。その15年間ねんかんチャンピオンのタイトルをまもつづけたのである[3]

ディープ・ブルーとの対局たいきょく[編集へんしゅう]

カスパロフは史上しじょう最強さいきょう人間にんげんチェスプレーヤー、いわば「人類じんるい代表だいひょう」としてえらばれ、IBM開発かいはつしたチェス専用せんようコンピュータディープ・ブルー対戦たいせんした人物じんぶつ代表だいひょうとしてもられている。1989ねんにはディープ・ブルーの前身ぜんしんカーネギーメロン大学だいがく開発かいはつしたディープ・ソートに2しょうしていた[5]

1996ねん対戦たいせんしたさいは、カスパロフが3しょう1はい2けで勝利しょうりした。「人類じんるい頭脳ずのう最強さいきょうのコンピュータに勝利しょうりした」と報道ほうどうされた。

よく1997ねんにも対戦たいせんおこなわれた。結果けっかは1しょう2はい3け。僅差きんさであったが「コンピュータが世界せかい王者おうじゃのカスパロフに勝利しょうりした」と報道ほうどうされた。

カスパロフは再戦さいせんのぞんだが、IBMがわはプロジェクトを終了しゅうりょうさせてしまい、結局けっきょく再戦さいせんおこなわれることはなかった。1996ねんと1997ねんとおしての戦績せんせきはほぼ互角ごかくであり、どちらがつよいのかはっきりと判断はんだんできるものではなかった。だが「コンピュータがチェスの世界せかい王者おうじゃ勝利しょうりした」とニュースはながれ、おおきな話題わだいとなった。

カスパロフとコンピュータ[編集へんしゅう]

そもそも、カスパロフの師匠ししょうにあたる、チェス世界せかいチャンピオンにして工学こうがくしゃミハイル・ボトヴィニクがコンピュータチェスの推進すいしんしゃである[3]。カスパロフ自身じしんコンピュータチェス黎明れいめいから、局面きょくめん分析ぶんせきにデータベースを利用りようしていた。

2003ねんおこなわれた、ディープ・ジュニアとのマッチは1しょう1はい4け、X3D Fritz英語えいごばんとのマッチでは1しょう1はい2けと、現役げんえきちゅうはそのとき最強さいきょうのチェスソフトとの公開こうかい対局たいきょくつづけていた。

カスパロフは人間にんげんとコンピュータがペアをみ、そのペア同士どうし対局たいきょくするアドバンスト・チェスという変則へんそくチェス考案こうあんした。

上記じょうきのごとく、もともとコンピュータとえんがあり、現役げんえきちゅうアタリしゃがスポンサーにいたこともある。さらに近年きんねんではウォークラフトをプレイしていると著書ちょしょかしている[3]偶然ぐうぜんだが、自分じぶん弟子でしであるウラジーミル・クラムニク勝利しょうりしたディープ・フリッツ開発かいはつ会社かいしゃげにもかかわっていた。

2014ねん11月26にちドワンゴニコニコ動画どうがで、カスパロフが将棋しょうぎでんおうせんFINALこまおこなうと発表はっぴょうした[6]。カスパロフはでんおうせん企画きかくはつ来日らいにちとなった。こま結果けっかばん勝負しょうぶ人間にんげん斎藤さいとう慎太郎しんたろうだん)がだいいちきょく先手せんてまった[7]。また、11月28にち将棋しょうぎ羽生はぶ善治よしはる[8]棋士きしよんかんとチェス対局たいきょくおこなうことも発表はっぴょうされた[9]先手せんて後手ごてえるばん勝負しょうぶで、結果けっかはカスパロフが2連勝れんしょうした[10][11]

プレースタイル、トレーニング方法ほうほう[編集へんしゅう]

ダイナミックな展開てんかいこのみ、終盤しゅうばんについては序盤じょばん中盤ちゅうばんほど得意とくいではないと、みずからを分析ぶんせきしている[3]。また攻撃こうげきてきではあるが、セコンドと協議きょうぎするだけでなく、データベースソフトで相手あいて棋風きふうをチェックするなど、準備じゅんび余念よねんがなかった。体調たいちょうめんかんしても、運動うんどう選手せんしゅのように食事しょくじ管理かんりなどもけるなど、当時とうじとしては先進せんしんてきなトレーニング方法ほうほう実行じっこうしていた。

政治せいじ活動かつどう[編集へんしゅう]

カスパロフは1984ねんからソ連それん共産党きょうさんとう党員とういんでもあり、1987ねんコムソモール中央ちゅうおう委員いいんえらばれたが、1990ねんとうけた。チェス選手せんしゅ引退いんたいは、政治せいじ活動かつどう世界せかいとうじ、ロシア民主みんしゅ推進すいしんする政治せいじとして活躍かつやくはんプーチン陣営じんえい政治せいじとして活動かつどうしている。

2004ねん1がつに「2008ねん委員いいんかい - 自由じゆう選択せんたく」を共同きょうどう設立せつりつし、その委員いいんかい議長ぎちょうになった。この委員いいんかい自由じゆう主義しゅぎのメディアの人々ひとびとによるもので(政治せいじによるものではなく)、2008ねん公正こうせい大統領だいとうりょう選挙せんきょ実現じつげんすることを目的もくてきとしていた[3]

2004ねん12月にぜんロシア市民しみん会議かいぎ発足ほっそくし、カスパロフはその共同きょうどう議長ぎちょうえらばれた[3]。プーチンに対抗たいこうするための団結だんけつ基盤きばんとして構想こうそうされたこの市民しみん会議かいぎは、期待きたいどおりにはいかなかった[3]とカスパロフはかたる。かく勢力せいりょく以前いぜんからの内戦ないせん意識いしきてきれず、かつてのてきむことができずみぞうずまらなかったという[3]

かえってみれば2004ねんクレムリン圧制あっせい対抗たいこうしていた勢力せいりょく悲惨ひさん状況じょうきょうにあった[3]という。このゲーム(政治せいじ)では、対戦たいせん相手あいてがルールを頻繁ひんぱんに、自分じぶん有利ゆうりになるように勝手かって変更へんこうする[3]という。そのような予測よそく不能ふのう不公平ふこうへいたたかいでも、すぐれた戦略せんりゃくがあれば努力どりょくしだいでのぞみはてくるはず[3]かんがえ、戦略せんりゃくったという。そうこうしているうちに、ふたつのことがあきらかになったという[3]。ひとつは、プーチンの弾圧だんあつ反対はんたいする組織そしき存続そんぞくゆるされないこと、だという。ふたつめは、プーチン政権せいけん対抗たいこうする勢力せいりょく連合れんごうきず必要ひつようせいだったという[3]。プーチンに反対はんたいする運動うんどうちいさなグループが乱立らんりつ状態じょうたい統一とういつてきではなかったという。共通きょうつう目的もくてきつける必要ひつようがあり、共通きょうつうてんは、民主みんしゅ主義しゅぎこそがロシアじんすく唯一ゆいいつ手段しゅだんという認識にんしきだという[3]。もし、公正こうせい選挙せんきょ大統領だいとうりょうえらぶことができるならば、警察けいさつ国家こっか逆行ぎゃっこうさせるようなプーチンのこころみは却下きゃっかされるだろう[3]、とカスパロフは著書ちょしょべた。

2005ねん3がつチェスのプロの世界せかいから引退いんたいし、政治せいじ最前線さいぜんせん活動かつどうできるようになった[3]。この段階だんかい最大さいだい障壁しょうへきは、政府せいふ許可きょかければテレビという媒体ばいたい利用りようできないことだったという[3]。そこであらたに設立せつりつされたのがОбъединённый гражданский фронт統一とういつ市民しみん戦線せんせん英語えいごばん)という組織そしきである[3]とカスパロフはう。「統一とういつ市民しみん戦線せんせん」のはたをかかげてカスパロフは、ひがしウラジオストクから西にしカリーニングラードまでロシアをたびし、統一とういつ市民しみん戦線せんせんのメッセージをひろめ、なぜロシアでは地方ちほうまずしく中央ちゅうおうのエリートが裕福ゆうふくなのかを演説えんぜつしてまわった[3]という。つぎのようにかたることが大切たいせつだったという。「まだ手遅ておくれではないから、団結だんけつして市民しみんとしての権利けんり民主みんしゅ主義しゅぎのためにたたかおう。それらだけが、低下ていかした生活せいかつ水準すいじゅん向上こうじょうさせるのだから[3]。」と。

2006ねんなつには、サンクトペテルブルクサミットひらかれ、自由じゆう主義しゅぎ世界せかい指導しどうしゃやメディアがロシアに集結しゅうけつすることになっていたので、民主みんしゅもとめる人々ひとびとにとっては、団結だんけつ世界せかいけてメッセージを発信はっしんする絶好ぜっこう機会きかいであった[3]。そこでカスパロフらはモスクワにおいて、ある国際こくさい会議かいぎ組織そしきすることにした[3]。そして国際こくさいてきなメディア、およびクレムリンのすぐそばで民主みんしゅ主義しゅぎつよくとなえることをおそれない講演こうえんしゃ世界中せかいじゅうから招待しょうたいしたという[3]ぜんロシア市民しみん会議かいぎ共同きょうどう議長ぎちょうたちとカスパロフは、かぞれないほどの招待しょうたいじょうき、支持しじびかけたという[3]おおくの著名ちょめいじん支持しじ表明ひょうめいしてくれたという[3]。だが、G8各国かっこく政権せいけん反応はんのうかったという。カスパロフらは、この国際こくさい会議かいぎを「もうひとつのロシア会議かいぎ」とづけ、プーチンがせようとしている “安定あんていした民主みんしゅ主義しゅぎこくロシア” というのは現実げんじつのものではなく、にせものだと世界せかいうったえたという[3]

2007ねん3がつ18にち

2006ねんにはロシアでは政治せいじ混乱こんらんつづき、ジャーナリストアンナ・ポリトコフスカヤがプーチンの誕生たんじょう射殺しゃさつされ[3]、クレムリンを批判ひはんしていたアレクサンドル・リトヴィネンコが、まもなく放射ほうしゃせい物質ぶっしつ毒殺どくさつされるという事件じけんきた[3]。これにともない、独裁どくさい政治せいじ反対はんたいする運動うんどうなかでのカスパロフの役割やくわり注目ちゅうもくあつめた[3]

このような状況じょうきょうで、自分じぶんあらたかつ重要じゅうよう政治せいじじょう課題かだいは、はんプーチン勢力せいりょく活気かっきあたえる戦略せんりゃく開発かいはつすることだったという[3]。この政治せいじてき状況じょうきょうは、チェスの試合しあいたとえれば、自分じぶん陣営じんえいがどの手順てじゅんにおいてもチェックメイト(み)危機ききひんしているのをたりにしているようなものだ[3]、という。

カスパロフがこの活動かつどうにおいておおきな進歩しんぽげたとかんはじめたのは、ことあるごとにプーチン政権せいけんからいやがらせをけるようになってからだという(相手あいてがこちらを無視むしできない存在そんざいだとみとめたことになるためである。独裁どくさい政権せいけんがいやがらせをする、ということは、民主みんしゅ運動うんどう成功せいこうのひとつの尺度しゃくどともなりうる[3]。)。その意味いみで「2006ねん12月16にちおこなわれたモスクワでのデモ行進こうしん数日すうじつまえに、統一とういつ市民しみん戦線せんせん事務じむきょく治安ちあん部隊ぶたい襲撃しゅうげきされたことはほこりにしていい。」とべた[3]

2007ねん6がつ9にち、サンクトペテルブルクにて
2010ねん7がつ15にち

2007ねん4がつには、モスクワのはん政府せいふデモに参加さんかして、当局とうきょく逮捕たいほされた[3]。これはぜん世界せかい報道ほうどうされた[3]

2007ねん9がつには、カスパロフは改革かいかく野党やとうもうひとつのロシア」の党内とうない予備よびせんで、2008ねんのロシア大統領だいとうりょうせん候補者こうほしゃえらばれた[3][12]

ウォールストリート・ジャーナルかみ世界せかい情勢じょうせいかんするコラムを寄稿きこうしている[3]

2008ねん、「連帯れんたい」の創設そうせつしゃのひとりとなった。

2010ねん3がつ10日とおか、「プーチンはれ」に署名しょめい

2012ねん8がつ17にち教会きょうかいでプーチン大統領だいとうりょうたいする抗議こうぎ活動かつどうおこなったプッシー・ライオットのメンバーに判決はんけつ裁判所さいばんしょちかくで逮捕たいほされ、裁判所さいばんしょ拘留こうりゅうされた。モスクワの警察けいさつはカスパロフが警察官けいさつかんんだと主張しゅちょうしていた[13]が、カスパロフは否定ひてい警察けいさつ逮捕たいほちゅうにカスパロフを殴打おうだしており、警察犬けいさつけんんだ可能かのうせい示唆しさした。警察けいさつは「カスパロフの警察犬けいさつけん比較ひかく検討けんとうする」かまえをせていたが、同月どうげつ24にち判事はんじはカスパロフの行動こうどう行政ぎょうせい違反いはんがなかったことを理由りゆうに「警察官けいさつかんへの服従ふくじゅう」についての刑事けいじ訴訟そしょう終結しゅうけつさせた[14]

2013ねん人権じんけん団体だんたいUN Watch英語えいごばんより、モリス・B・アブラム人権じんけんしょう受賞じゅしょうした[15]同年どうねん6がつ記者きしゃ会見かいけんで、ロシアに帰国きこくしたらふたた出国しゅっこくできるか深刻しんこくうたがいがあるため、当面とうめん帰国きこくひかえると発言はつげんした[16]巨額きょがく横領おうりょう事件じけん告発こくはつしたロシアの弁護士べんごしセルゲイ・マグニツキーが2009ねん獄中ごくちゅうしたけんについて、ロシア政府せいふ関係かんけいしゃ処罰しょばつ(アメリカへの渡航とこう・アメリカの銀行ぎんこうシステムの利用りよう禁止きんし)するマグニツキーほう成立せいりつしたことにたいするプーチン大統領だいとうりょういかりに言及げんきゅうし、ロシア国内こくないはん体制たいせいへの報復ほうふく可能かのうせいがあるためであるとしている。

2022ねんロシアのウクライナ侵攻しんこうかんする発言はつげん[編集へんしゅう]

カスパロフは、2015ねん著書ちょしょ「Winter Is Coming」でロシアのウクライナ侵攻しんこう予測よそくし、警告けいこくしていた。

「ウクライナ戦争せんそうとおくに出来事できごとであり、世界せかい不安定ふあんていこすことはないと人々ひとびとは、プーチンの明確めいかく警告けいこく無視むししている。かれ発表はっぴょうした『ルースキー・ミール』の構想こうそうが、ウクライナ東部とうぶへの侵攻しんこうわるとはおもえないが、これがはじまりにぎないと確信かくしんする理由りゆう十分じゅうぶんにある。もしプーチンが勝利しょうりから勝利しょうりへとすすみ、国内こくない反対はんたい勢力せいりょく排除はいじょし、国外こくがい領土りょうど影響えいきょうりょくにぎることができれば、全面ぜんめん戦争せんそうのリスクは劇的げきてきたかまる。アドルフ・ヒトラーが1939ねんにポーランドを攻撃こうげきしたのは、連合れんごうこくがチェコスロバキアの防衛ぼうえいがったからではなく、まさにそうしなかったからだ」[17]

2022ねん2がつ24にちロシアがウクライナに侵攻しんこうするとこのようにコメントした。

「2014ねんにプーチンがクリミア併合へいごうをしたのち西側にしがわ諸国しょこくはロシアと貿易ぼうえきおこなってきた。腐敗ふはいした取引とりひきでプーチンやその友人ゆうじんもうけたかねが、今日きょう民間みんかんじん虐殺ぎゃくさつするための軍隊ぐんたいとなったのだ。今度こんどはあなたがウクライナをたすけ、あなたがつくったモンスターに反撃はんげきしてください」「プーチンは、自由じゆう世界せかいからえさあたえられたへびだ。いままた、かれあく戦争せんそうからくことはないと証明しょうめいしている。経済けいざい制裁せいさいめるしかないでしょう。ウクライナの勝利しょうり[18]

同年どうねん5がつ5にち、イベントでおとずれたブカレストルーマニア・テレビのインタビューにこたえた。ウクライナ情勢じょうせい責任せきにんがある世界せかい指導しどうしゃとしてバラク・オバマもとべい大統領だいとうりょうアンゲラ・メルケルもとドイツ首相しゅしょうげた。オバマもと大統領だいとうりょうについては、2012ねん大統領だいとうりょう選挙せんきょ討論とうろんかいミット・ロムニーが「ロシアは地政学ちせいがくてきてきである」とったのを「これは過去かこまかせなさい、もう冷戦れいせんではない、カレンダーもチェックしなさい、我々われわれは『80年代ねんだい』にはいない」とわらい、以来いらいおおくのもと首相しゅしょう外相がいしょう・ビジネスリーダー・個人こじんが、プーチンが戦争せんそう犯罪はんざいしゃであった事実じじつ無視むししてビジネスをしたとしている。メルケルもと首相しゅしょうについては、ヨーロッパをロシアのガスに依存いぞんさせることをたすけるためにあらゆることをおこない、ヨーロッパが供給きょうきゅうげんつけることをさまたげた責任せきにんであるという[19]

同年どうねん8がつ31にち、EUのボレル上級じょうきゅう代表だいひょうはプラハでの外相がいしょう会議かいぎのち記者きしゃ会見かいけんで「ロシアとのビザ発給はっきゅう円滑えんかつ協定きょうてい完全かんぜん停止ていし合意ごういした」とべた。7がつ中旬ちゅうじゅん以降いこう、ロシアから近隣きんりん諸国しょこくとの国境こっきょう通過つうか大幅おおはば増加ぞうかしており「近隣きんりん諸国しょこくにとって安全あんぜん保障ほしょうじょうのリスク」となっているほか、ロシアと国境こっきょうせっする5ヶ国かこく全面ぜんめん禁止きんしもとめていたという。しかし、フランス・ドイツなどの反対はんたいにより全面ぜんめん禁止きんしにはいたらなかった[20]

これにたいして、カスパロフはヴィリニュス主催しゅさいした自由じゆうロシア会議かいぎ終了しゅうりょうミハイル・ホドルコフスキー記者きしゃ会見かいけんし、「ロシアじんがヨーロッパじんならうには、ヨーロッパでの生活せいかつがどのようになっているのかを必要ひつようがある」とはなした。対案たいあんとして、「ロシアによる戦争せんそう犯罪はんざいおよびプーチン政権せいけん違法いほうせい、およびウクライナの主権しゅけん領土りょうど保全ほぜんみとめる宣言せんげん」に「おおやけ署名しょめいする」ことを条件じょうけんに、EUへの入国にゅうこくみとめることを提案ていあんしている[21][22]

その[編集へんしゅう]

将棋しょうぎ世界せかいの1999ねん8がつごう企画きかく将棋しょうぎしたこともあり、一部いちぶ写真しゃしん公開こうかいされている[23]

年譜ねんぷ[編集へんしゅう]

  • 1978ねん - ソコルスキー記念きねんトーナメントで1となり、グランドマスターとなる。
  • 1980ねん - 世界せかいジュニアチェス選手権せんしゅけん優勝ゆうしょうし、だい19かいジュニア世界せかいチャンピオンとなる。
  • 1984ねん - 世界せかいチャンピオン、アナトリー・カルポフ挑戦ちょうせん。「6きょく先勝せんしょうきょくすう無制限むせいげん」という条件じょうけんであったが、最初さいしょカルポフがっていたが徐々じょじょにカスパロフが攻勢こうせいてんじ、48きょくでカルポフの5しょう40け3はいとなった時点じてんで、世界せかいチェス連盟れんめい会長かいちょうカンポマネスが、当初とうしょ条件じょうけん変更へんこうし、中止ちゅうし判断はんだん勝負しょうぶとなった。
  • 1985ねん - アナトリー・カルポフをやぶ史上しじょう最年少さいねんしょう当時とうじ)の世界せかいチャンピオンとなる。翌年よくねんのリターンマッチでもカルポフを退しりぞけた。
  • 1993ねん - プロチェス協会きょうかい (PCA) を設立せつりつ挑戦ちょうせんしゃショートとともにPCAのした選手権せんしゅけんマッチをおこなう。このため2にん国際こくさいチェス連盟れんめい (FIDE) のレイティングリストから削除さくじょされ、FIDEはべつのチャンピオンをえらぶマッチをおこなった。
  • 1997ねん - IBMスーパーコンピュータ「ディープ・ブルー」と対戦たいせんしてやぶれる。
  • 2000ねん - 弟子でし新鋭しんえいのウラジーミル・クラムニクにやぶれて、世界せかいチャンピオンから転落てんらく
  • 2003ねん - 通常つうじょうのコンピュータで動作どうさするチェスソフト「DEEP JUNIOR」と対戦たいせんける。
  • 2005ねん - 「チェスの世界せかい現実げんじつてき目標もくひょうえなくなった」という理由りゆう引退いんたい今後こんご公式こうしき試合しあいには出場しゅつじょうせず、エキシビションマッチなどの非公式ひこうしき対局たいきょく執筆しっぴつ活動かつどうおこな予定よてい
  • 2007ねん - 4がつ15にちはんプーチン大統領だいとうりょうデモに参加さんか身柄みがら拘束こうそくされる。公共こうきょう秩序ちつじょみだしたとして罰金ばっきん1000ルーブルをせられて釈放しゃくほうされた。
  • 2007ねん - 10月1にち、2008ねんロシア大統領だいとうりょう選挙せんきょ出馬しゅつばすることを発表はっぴょう
  • 2007ねん - 11月24にちはんプーチン大統領だいとうりょうデモに参加さんか身柄みがら拘束こうそくされる。拘禁こうきん5にちがいいわたされた。
  • 2007ねん - 12月13にち、ロシア大統領だいとうりょう選挙せんきょ出馬しゅつば断念だんねん
  • 2009ねん - 9月、1984ねん勝負しょうぶとなったカルポフとの対戦たいせんを、12きょく限定げんていのイベントとしてった[24]
ガルリとクララ(Klara)。チューリッヒにて。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ ロシアラテンこぼし: Garry Kimovich Kasparov
  2. ^ HRF Elects Garry Kasparov as New Chairman | News | The Human Rights Foundation”. web.archive.org (2012ねん5がつ4にち). 2022ねん9がつ5にち閲覧えつらん
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at au av aw ax ay az ba bb bc bd be bf bg bh bi bj bk bl ガルリ・カスパロフ『決定けっていりょくきたえる』NHK出版しゅっぱん、2007ねん 
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  21. ^ Șahistul Garry Kasparov contestă ultima decizie a UE! Europenii ar putea face jocurile lui Putin fără voie: „Avem nevoie de ei!”” (ルーマニア). Sport.ro (2022ねん9がつ1にち). 2022ねん9がつ6にち閲覧えつらん
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  24. ^ [1]

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • ガルリ・カスパロフ『決定けっていりょくきたえる』NHK出版しゅっぱん、2007ねんASIN:B009QW63CM

関連かんれん文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • ブルース・パンドルフィーニ、鈴木すずき知道ともみち やく 『ディープブルー vs. カスパロフ』(河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ、1998ねん10がつISBN 4309263534 -- 1996ねんの 6 ゲームマッチをいちいち解説かいせつ
  • ミハイル・コダルコフスキー、レオニド・シャンコヴィチ、高橋たかはしあきら やく人間にんげんたい機械きかい - チェス世界せかいチャンピオンとスーパーコンピューターのたたかいの記録きろく』(毎日まいにちコミュニケーションズ、1998ねん4がつISBN 4839900264 --- カスパロフのセコンドによる 1997ねん対局たいきょく記録きろく

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]