出典 しゅってん : フリー百科 ひゃっか 事典 じてん 『ウィキペディア(Wikipedia)』
フランス海軍 かいぐん の2本 ほん マストスクーナー、エトワール
スクーナーの帆 ほ 装 そう 図 ず 。1)バウスプリット 、2)ジブ 、3)フォア ガフ トップセイル 、4)フォアセイル 、5)メイン ガフトップセイル、6)メインセイル 、7)ブーム
スクーナー (英語 えいご : schooner )とは、2本 ほん 以上 いじょう のマスト に張 は られた縦 たて 帆 ほ 帆 ほ 装 そう を特徴 とくちょう とする、帆船 はんせん の一種 いっしゅ である。スクーナーは、最初 さいしょ にオランダ で16世紀 せいき から17世紀 せいき にかけて用 もち いられ、アメリカ独立 どくりつ 戦争 せんそう の時期 じき に北米 ほくべい でさらに発展 はってん した。日本 にっぽん では幕末 ばくまつ に君沢 きみざわ 形 がた と呼 よ ばれた。
ブリタニカ百科 ひゃっか 事典 じてん 第 だい 11版 はん によると、建築 けんちく 業者 ぎょうしゃ アンドリュー・ロビンソンによって建造 けんぞう され、1713年 ねん にグロスター で進水 しんすい したものが最初 さいしょ のスクーナーと呼 よ ばれた船 ふね であるという。「スクーナー」という名前 なまえ は、見物人 けんぶつにん が叫 さけ んだ「Oh how she scoons [注 ちゅう 1] 」という言葉 ことば が由来 ゆらい であるという。それに対 たい しロビンソンは「A schooner let her be」と言 い ったという[1] 。ウォルター・ウィリアム・スキート によると、sch の綴 つづ りがオランダ語 ご やドイツ語 ご のスペルから取 と り入 い れられるまでは「scoon 」であったという。
ただし、アメリカ の帆船 はんせん 研究 けんきゅう 家 か チャベルによると、「それ以前 いぜん に同様 どうよう の帆船 はんせん (スクーナー)の絵 え が発見 はっけん されており、アンドリュー・ロビンソンがスクーナーを発明 はつめい した」というのは「後世 こうせい の作 つく り話 ばなし だろう」とする。理由 りゆう は、その絵 え は縦 たて 帆 ほ だけの船 ふね で、「スクーナー」と呼 よ ばれていたかは不明 ふめい であるが、18世紀 せいき の始 はじ めにはアメリカ沿岸 えんがん 用 よう として使用 しよう されていたのであるから、少 すく なくともアンドリュー・ロビンソンが「スクーナー」の発明 はつめい 者 しゃ ではない。と推察 すいさつ している。[2]
君沢 きみざわ 形 がた 一 いち 番 ばん 船 せん 「ヘダ号 ごう 」の絵図 えず
1855年 ねん (安政 あんせい 2年 ねん )、開国 かいこく の目的 もくてき で来日 らいにち したロシア のエフィム・プチャーチン 一 いち 行 ぎょう の喪失 そうしつ した乗艦 じょうかん 「ディアナ号 ごう 」の代 かわ りに「ヘダ(戸田 とだ )号 ごう 」(75トン)がロシア人 じん 船員 せんいん (帆船 はんせん 乗員 じょういん は航海 こうかい 中 ちゅう の船体 せんたい 損傷 そんしょう 修理 しゅうり のため造船 ぞうせん 技術 ぎじゅつ も全般 ぜんぱん に習得 しゅうとく していることが多 おお かった)に加 くわ えて、日本人 にっぽんじん 船大工 ふなだいく を交 まじ えて幕府 ばくふ により建造 けんぞう された。その後 ご 、幕府 ばくふ は戸田 とだ 村 むら で6隻 せき 、石川 いしかわ 島 とう で4隻 せき のスクーナーを建造 けんぞう した。この船型 せんけい を建造 けんぞう 地 ち が「伊豆 いず 君沢 きみざわ 郡 ぐん 戸田 とだ 村 むら 」であったことから「君沢 きみざわ 形 がた 」と名付 なづ けた。ちなみに戸田 とだ 号 ごう 建造 けんぞう からスクーナー建造 けんぞう までの現場 げんば 責任 せきにん 者 しゃ は江川 えがわ 英龍 ひでたつ で、(当時 とうじ 江川 えがわ に弟子 でし 入 い りしていた)桂 かつら 小五郎 こごろう は江川 えがわ の許可 きょか の下地 したじ 元長 もとなが 州 しゅう から船大工 ふなだいく を現場 げんば に招 まね き、長州 ちょうしゅう に君沢 きみざわ 型 がた の建造 けんぞう 技術 ぎじゅつ を伝 つた えている(後 のち に桂 かつら はこの件 けん で長州 ちょうしゅう 藩 はん から表彰 ひょうしょう されている)。
その後 ご 、同型 どうけい ではなくともスクーナー一般 いっぱん に対 たい する呼称 こしょう として、君沢 きみざわ 形 がた の名 な が使 つか われることがあった。
アメリカの2本 ほん マストトップスルスクーナー、プライド・オブ・ボルチモア
イギリス海軍 かいぐん の3本 ほん マストバミューダ帆 ほ 装 そう スクーナー、スピリット・オブ・バミューダ
1984年 ねん 建造 けんぞう のボルチモアクリッパー・カリフォルニアン (英語 えいご 版 ばん )
7本 ほん マストのトーマス・W・ローソン
スクーナーは2本 ほん 以上 いじょう のマスト を持 も ち、最後 さいご 部 ぶ のマストが最 もっと も高 たか いか、もしくは全 すべ て同 おな じ高 たか さとなっている。最前 さいぜん 部 ぶ のマストが最 もっと も高 たか い船 ふね をケッチ といい、スクーナーとは分 わ けている。伝統 でんとう 的 てき なスクーナーは最前 さいぜん のマストにガフセイル を持 も つ。まれにガフセイルと同時 どうじ に、上部 じょうぶ に横 よこ 帆 ほ のフォアコースセイルが張 は られる。フォアマストのみに横 よこ 帆 ほ を持 も つスクーナーをトップスルスクーナー (Topsail Schooner )、フォア・メインの両方 りょうほう のマストに横 よこ 帆 ほ を持 も つスクーナーをツートップスルスクーナー (Two-topsail Schooner )あるいはジャッカスブリッグ (Jackass brig )と呼 よ ぶ。
最 もっと も一般 いっぱん 的 てき なスクーナー
トップスルスクーナー
ツートップスルスクーナー
縦 たて 帆 ほ はガフセイルであることが多 おお いが、前衛 ぜんえい 的 てき なスクーナーはバミューダ帆 ほ 装 そう を持 も つものも存在 そんざい する。バミューダ諸島 しょとう では、17世紀 せいき 初頭 しょとう にバミューダ帆 ほ 装 そう されたスループ (バミューダスループ)が現 あらわ れ、2,3本 ほん マストのバミューダ帆 ほ 装 そう スクーナーも登場 とうじょう して19世紀 せいき 前半 ぜんはん まで使用 しよう された。それらは併 あわ せて、バリフースクーナー(Ballyhoo schooners )と呼 よ ばれていた。そういったタイプの有名 ゆうめい な船 ふね は、英国 えいこく 軍艦 ぐんかん のピッキー (英語 えいご 版 ばん ) である。また、一部 いちぶ のスクーナーはメインマストにバミューダ帆 ほ 装 そう をもち、フォアマストにはガフセイルを持 も っていた。ステイスルスクーナーはフォアセイルを持 も たない代 か わりにキャリーセイルとメインステイセイルを持 も つ。
スクーナーは、アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく で多用 たよう され、また北 きた ヨーロッパ でも人気 にんき を得 え ていた。中 なか でも2本 ほん マストのスクーナーが一般 いっぱん 的 てき で、少数 しょうすう の船員 せんいん で帆 ほ の操作 そうさ が行 おこな えるのが大 おお きな特徴 とくちょう である。また、逆風 ぎゃくふう 時 じ の速度 そくど (海流 かいりゅう の強 つよ い海域 かいいき での陸 りく 岸 がん に対 たい して)が要求 ようきゅう される場面 ばめん 、沿岸 えんがん 航行 こうこう の商船 しょうせん や漁船 ぎょせん などの用途 ようと で広 ひろ く使 つか われた。チェサピーク湾 わん 周辺 しゅうへん では、ボルチモアクリッパー など複数 ふくすう の特徴 とくちょう 的 てき なスクーナータイプへと進化 しんか を遂 と げた。小型 こがた のスクーナーは2本 ほん または3本 ほん のマストであることが一般 いっぱん 的 てき であったが、これらの船 ふね は6本 ほん または7本 ほん のマストを持 も つこともあった。特 とく に1902年 ねん に建造 けんぞう されたトーマス・W・ローソン (英語 えいご 版 ばん ) は最大 さいだい である7本 ほん マストを持 も つ唯一 ゆいいつ の船 ふね で、鋼 はがね の船体 せんたい は全長 ぜんちょう 120m高 たか さ47mと帆船 はんせん では最大 さいだい 級 きゅう で、25枚 まい もの帆 ほ を持 も ちその面積 めんせき は4,000m²にも及 およ んだ。
マサチューセッツ州 しゅう のエセックス (英語 えいご 版 ばん ) は、スクーナー建造 けんぞう の重要 じゅうよう 拠点 きょてん であった。1850年代 ねんだい までに、15箇所 かしょ の造船 ぞうせん 所 しょ で1年 ねん に50隻 せき 以上 いじょう のペースで建造 けんぞう された。エセックスは、北 きた アメリカの漁業 ぎょぎょう 用 よう スクーナー製造 せいぞう の中心 ちゅうしん 地 ち として認 みと められていた。合計 ごうけい で4,000隻 せき 以上 いじょう を進水 しんすい させ、その多 おお くはマサチューセッツ州 しゅう の漁業 ぎょぎょう の中心地 ちゅうしんち グロスター向 む けであった[3] 。
スクーナーは、遠洋 えんよう 航海 こうかい から沿岸 えんがん や内陸 ないりく 水域 すいいき まで、幅広 はばひろ い環境 かんきょう で船荷 ふなに の輸送 ゆそう に使用 しよう されている。スクーナーは北 きた アメリカ大陸 あめりかたいりく で広 ひろ く使用 しよう されており、1800年代 ねんだい の全盛期 ぜんせいき には、2000隻 せき を越 こ えるスクーナーがアメリカ五大 ごだい 湖 みずうみ を横断 おうだん して船荷 ふなに を運 はこ んでいた。3本 ほん マストの「ターン」は、カナダ の沿岸 えんがん 諸 もろ 州 しゅう で好 この まれていた艤装 ぎそう である。2本 ほん マストのスクーナー・ブルーノーズ (英語 えいご 版 ばん ) は、極 きわ めて有名 ゆうめい である。
^ scoon : スコットランド語 ご で、「スキップする」あるいは「氷 こおり の上 うえ を進 すす むように」という意味 いみ である。
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スクーナー に
関連 かんれん するカテゴリがあります。
2本 ほん のマストを持 も つ帆 ほ 装 そう
ブリッグ - 両方 りょうほう に横 よこ 帆 ほ を持 も つ。
ブリガンティン - 前 ぜん マストに横 よこ 帆 ほ 、後 こう マストに縦 たて 帆 ほ を持 も つ。
3本 ほん 以上 いじょう のマストを持 も つ帆 ほ 装 そう
シップ - 全 すべ てに横 よこ 帆 ほ を持 も つ。
バーク - ミズンマストにのみ縦 たて 帆 ほ 、残 のこ りに横 よこ 帆 ほ を持 も つ。
ジャッカスバーク - 横 よこ 帆 ほ ・縦 たて 帆 ほ を半々 はんはん ずつ持 も つ。
バーケンティン - フォアマストにのみ横 よこ 帆 ほ 、残 のこ りに縦 たて 帆 ほ を持 も つ。
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