クナール

クナール（英語えいご: knaarまたはknarr,knorr,knörr）は9世紀せいきにヴァイキングが使つかっていた船ふねである。クナールは、ロングシップやカーヴ（英語えいご版ばん）、フェーリング（英語えいご版ばん）と同おなじく鎧よろい張はり（英語えいご版ばん）で造つくられていた。

クナールは、元々もともとセイウチの牙きば、羊毛ようもう、木材もくざい、小麦こむぎ、毛皮けがわ、生皮なまかわ、鎧よろい、奴隷どれい、蜂蜜はちみつ、それに武器ぶきなどの貿易ぼうえき品ひんを運はこぶために使つかわれた。また、バルト海ばるとかいや地中海ちちゅうかい、その他たの海うみを行いく戦士せんしや商人しょうにんに食料しょくりょう、飲料いんりょう、武器ぶき、鎧よろいを供給きょうきゅうするためにも使つかわれた。クナールは北大西洋きたたいせいようを幾度いくども横断おうだんしてノルウェーの植民しょくみん地ちであったアイスランドやグリーンランドに家畜かちくやその他たの資材しざいを運はこび、またブリテン諸島しょとうやヨーロッパ大陸たいりく、さらにおそらくは中東ちゅうとうの貿易ぼうえき拠点きょてんに貿易ぼうえき品ひんを運はこんだ。

構造こうぞう[編集へんしゅう]

クナールの船体せんたいは戦闘せんとうに使つかわれたノルウェーのロングシップよりも短みじかく、幅はばが広ひろく、船ふね梁はりが広ひろく、また喫水きっすいが深ふかかった。ヴァイキングのロングシップに比くらべると重量じゅうりょうがあった。クナールは1本ほんマストの貿易ぼうえき船せんで、その推進すいしん力りょくは単たんに1枚まいの横よこ帆ほに頼たよっていた。甲板かんぱんは半分はんぶんだけあり、通常つうじょうは伝統でんとう的てきな組立くみたて式しきの船尾せんび楼ろうと丸まるい船尾せんび、船尾せんび柱ばしらがあった。横よこ帆船はんせんであること、及および竜骨りゅうこつがないことは間切まぎり（風上かざかみに向むかって帆走はんそうすること）時じに弱点じゃくてんとなったが、推進すいしん力りょくとしてオールに頼たよらないで済すんだ。

それぞれの船ふねにまつわる逸話いつわがある。サガによれば、レイフ・エリクソンが北きたアメリカに航海こうかいした時とき、彼かれはビアルニ・ヘリオルフソン（英語えいご版ばん）の船ふねを買かった。この船ふねはビアルニが風ふうに流ながされてグリーンランドから西にしに北きたアメリカに運はこばれた時ときと同おなじものであるという。ある船ふねの竜骨りゅうこつが何なん代だいもの間あいだ受うけ継つがれ、それを元もとに新あらたな船ふねが再度さいど造つくられた、というようなことが海洋かいようを行いく特別とくべつの船ふねの神話しんわとなっている。別べつの考かんがえ方かたをすれば、ある船ふねの竜骨りゅうこつを使つかうことは造船ぞうせんの時間じかん、金きむ、エネルギーを節約せつやくすることになったのかもしれない。

クナールは、ハンザ同盟どうめいによってバルト海ばるとかいで使つかわれたコグ船せんの構造こうぞうにも影響えいきょうを与あたえた。ただし、コグ船せんの全体ぜんたい構造こうぞうはかなり異ことなっている。

クナールの歴史れきし[編集へんしゅう]

クナールは、1962年ねんにデンマークのロスキレ・フィヨルドの浅あさい海峡かいきょうで、保存ほぞん状態じょうたいも良よく発見はっけんされた。このときは他ほかにも2隻せきの戦闘せんとう艦かん、バルト海ばるとかいの商船しょうせんおよび瀬せ渡わたし船ぶねが発見はっけんされている。考古こうこ学者がくしゃの見解けんかいでは、これらの船ふねは敵てきの来襲らいしゅうに備そなえて海峡かいきょうを封鎖ふうさするために沈しずめられたということである。スカルデレフ船せん（英語えいご版ばん）として知しられるこの5隻せきの船ふねは、ロスキレのヴァイキング船せん博物館はくぶつかん（英語えいご版ばん）に保管ほかんされている。

クナールはアイスランド、グリーンランド、およびニューファンドランド島とうへの植民しょくみんに使つかわれた可能かのう性せいがある。北きたアメリカに渡わたった最初さいしょのヨーロッパ人じんが使つかったのもおそらく同おなじタイプの帆船はんせんであろう。

現代げんだいのクナール (Knarr)[編集へんしゅう]

現代げんだいのクナールは、バミューダ帆ほ装そうで長ながい竜骨りゅうこつのヨットである。1943年ねんにノルウェーのエアリング・L・クリストファーセンによって設計せっけいされた。伝統でんとう的てきに木造もくぞうであり、船体せんたいを完成かんせいさせた後のちに固定こてい枠わくの上うえに上下じょうげをひっくり返かえして置おき、鉄製てつせいの竜骨りゅうこつを取とり付つけられた。船腹せんぷくの板材いたざいは端はしを凹凸おうとつ溝みぞにしておき、突つき合あわせて接着せっちゃくされる。1973年ねん以降いこうはガラス繊維せんい強化きょうかプラスチック(FRP)で造つくられている。ただし、木製もくせいのクナールと同おなじ重量じゅうりょう分布ぶんぷになるように施ほどこされている。クナールの多おおくはノルウェー、デンマーク、およびアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのサンフランシスコで見みることができる。北きたドイツには年代ねんだい物ぶつのクナールがあり、歴史れきし的てきなスカンジナビアの帆船はんせん番号ばんごうクラシックスを付つけている。1969年ねん以来いらい、毎年まいとし国際こくさい大会たいかいが開ひらかれている。現在げんざい、クナールはドイツの造船ぞうせん会社かいしゃにより作つくられている。

仕様しよう:

全長ぜんちょう	9.28 m
喫水線きっすいせん長ちょうさ	6.21 m
全幅ぜんぷく	2.12 m
喫水きっすい	1.30 m
乾いぬい舷ふなばた	0.60 m
全ぜん重量じゅうりょう	2,250 kg
竜骨りゅうこつ重量じゅうりょう	1,300 kg
帆ほの広ひろさ（ジブ）	9.00 m²
帆ほの広ひろさ（主しゅ帆ほ）	17.60 m²

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]